説明

自動分析装置

【課題】検体の分析の処理能力を低下させず、正常な分析結果を得ることができる自動分析装置を提供することを目的とする。
【解決手段】分析前の検体容器11a内の検体Laとの接触による電気的な信号変化を検出し、信号変化の変化量に基づいて検体Laの液面に泡が発生しているか否かを判定する泡発生判定部12と、泡発生判定部12によって泡の発生がないと判定された液面を有する検体Laの分析を実行する制御を行う制御部31と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体と試薬とを反応容器に分注し、この反応容器内で生じる反応液の吸光度を測定することによって検体を分析する自動分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、検体と試薬とを反応容器に分注し、この反応容器内で生じる反応液の吸光度を測定することによって検体を分析する自動分析装置が知られている。この自動分析装置は、検体または試薬を分注するために、分注ノズルや分注ポンプ等によって実現される分注装置を備えている。
【0003】
この分注装置は、検体または試薬などの液体を分注する際に、規定量の液体を吸引したり、分注ノズルが液体へ過剰に侵入することによって生じるコンタミネーションを回避したりするため、容器に収容された液体の液面を検知する液面検知装置を備えている。
【0004】
この液面検知装置としては、例えば、光ビーム発生部とこの光ビーム反射光を受光するセンサ部とを設け、光ビーム発生部が液体の液面に向けて光ビームを照射した時間からセンサ部が液体の液面で反射した光ビーム反射光を受光した時間を引いた時間差に基づいて液体の液面の高さを算出し、液面を検知する液面検知装置が知られている(特許文献1参照)。
【0005】
しかし、特許文献1に記載の液面検知装置は、容器内に収容された液体の液面上方に泡が発生した場合、この泡によって光ビームが反射されるため、液面の高さを誤って算出し、泡を液面と誤って検知する場合があった。この場合、分注装置は、分注ノズル内に泡や空気を吸い込むため、規定量の液体を吸引することができず、正確な分注処理を行うことができないという問題点があった。
【0006】
そこで、導電性材料で形成された電極と分注ノズルとを用いて液体の導電性あるいは静電容量の変化に基づいて液体の液面と液面上方に発生した泡とを区別する液面検知装置が知られている(特許文献2参照)。この液面検知装置によれば、泡を区別できるので、正確な分注処理を行うとともに、正常な分析結果を得ることができる。
【0007】
【特許文献1】特開2005−221392号公報
【特許文献2】特開2008−026222号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2に記載の液面検知装置は、容器に収容された液体を吸引する際に分注ノズルが泡を突き抜けて液体に潜り込むため、分注ノズルの外側面あるいは分注ノズルの内側面のうち、通常の洗浄処理で洗浄を行わない箇所に泡が付着してしまい、コンタミネーションを生じる恐れがあった。泡の付着によるコンタミネーションを防止するには分注ノズルから泡を除去する処理を行えばよいが、通常の洗浄処理で泡が除去できないため、泡の除去処理を行う間は分析動作を停止しなければならず、分析の処理能力が低下してしまうという問題があった。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、分析の処理能力を低下させず、正常な分析結果を得ることができる自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる自動分析装置は、検体容器に収容された検体と試薬容器に収容された試薬とを反応容器へ分注し、該反応容器内で前記検体と前記試薬と反応させた反応液の吸光度を測定することによって該検体の成分の分析を行う自動分析装置において、分析前の前記検体容器内の前記検体との接触による電気的な信号変化を検出し、該信号変化の変化量に基づいて前記検体の液面に泡が発生しているか否かを判定する泡発生判定手段と、前記泡発生判定手段によって泡の発生がないと判定された液面を有する前記検体の分析を実行する制御を行う制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記泡発生判定手段は、逐次受付される前記検体の分析項目に対応する前記試薬が前記反応容器に分注される前に、該検体の液面に泡が発生しているか否かを判定することを特徴とする。
【0012】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記泡発生判定手段は、互いに他の近傍に離間して設けられ、前記検体容器に収容された前記検体と接触可能な第1および第2の電極と、前記第2の電極に接続され、所定の周波数の信号を発生する発振回路と、前記発振回路、前記第2の電極および前記検体を介して前記第1の電極から出力される出力電圧の変化を検出し、該出力電圧の変化量と、互いに異なる第1および第2の基準電圧とをそれぞれ比較することによって前記検体の液面に泡が発生しているか否かを判定する判定部と、を有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記泡発生判定手段は、前記検体容器に収容された前記検体と接触可能な第1の電極と、前記検体容器と一体にまたは前記検体容器の近傍に設けられた第2の電極と、所定の周波数の信号を発生し、この発生した信号を少なくとも前記第1の電極に供給する発振回路と、前記第1の電極と前記発振回路との間に直列に介在して接続される抵抗と、前記第1の電極が前記検体と接触することによって生じる前記第1の電極と第2の電極との間の静電容量の変化に起因した前記抵抗の両端からの出力電圧の差を検出し、該出力電圧の差と、互いに異なる第1および第2の基準電圧とをそれぞれ比較することによって前記検体の液面に泡が発生しているか否かを判定する判定部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、分析前の検体容器内に収容された検体の液面に泡が発生しているか否かを判定し、泡の発生がないと判定された液面を有する検体の分析を実行しているため、液面に泡が発生している検体については分析を行わない。したがって、泡の除去処理に伴う分析処理の処理能力の低下を防止することができる。また、検体の液面における泡の発生に起因した分析異常を生じることがないため、正常な分析結果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して、この発明にかかる自動分析装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によって発明は限定されるものではない。また、図面の記載において、同一の部分には同一の符号を付している。
【0016】
(実施の形態1)
図1は、この実施の形態1における自動分析装置の概略構成を示す模式図である。図1に示すように、この実施の形態1にかかる自動分析装置1は、反応容器22に第1試薬、検体および第2試薬を分注し、反応容器22内で反応させ、この反応液の吸光度を測定する測定機構2と、測定機構2を含む自動分析装置1全体の制御を行うとともに測定機構2における測定結果の分析を行う制御機構3とを備える。自動分析装置1は、これらの二つの機構が連携することによって複数の検体の分析を自動的に行う。
【0017】
まず、測定機構2について説明する。図1に示すように、測定機構2は、血液や尿等の液体である検体を収容した複数の検体容器11aを保持する検体ラック11bを図中の矢印方向に順次移送する検体移送機構11と、反応容器22に分注される前の検体容器11aにおける検体との接触による電気的な信号変化を検出し、この信号変化の変化量に基づいて検体の液面に泡が発生しているか否かを判定する泡発生判定部12と、泡発生判定部12で検体と接触した部分の洗浄を行う洗浄部12aと、検体移送機構11の検体容器11aから検体を吸引して反応容器22に検体を吐出して分注を行う検体分注機構13と、反応容器22への検体や試薬の分注、攪拌、測光および洗浄を行うために反応容器22を所定の位置まで移送する反応槽14と、反応容器22内に分注される第1試薬が収容された試薬容器15aを複数収容する第1試薬庫15と、第1試薬庫15内の試薬容器15aから第1試薬を吸引して反応容器22に第1試薬を吐出して分注を行う第1試薬分注機構16と、反応容器22内に分注される第2試薬が収容された試薬容器17aを複数収容する第2試薬庫17と、第2試薬庫17内の試薬容器17aから第2試薬を吸引して反応容器22に第2試薬を吐出して分注を行う第2試薬分注機構18と、反応容器22に分注された液体を攪拌する攪拌部19と、反応容器22に分注された液体の吸光度を測定する測光部20と、測光部20による測定が終了した反応容器22を洗浄する洗浄部21と、を備える。
【0018】
また、検体容器11aおよび検体ラック11bには、内部に収容する検体を識別する識別情報をバーコードまたは2次元コード等の情報コードにコード化して記録した情報コード記録媒体がそれぞれ貼付されている(図示せず)。同様に、試薬容器15aおよび試薬容器17aにも、内部に収容する試薬を識別する識別情報をバーコードまたは2次元コード等の情報コードにコード化して記録した情報コード記録媒体がそれぞれ貼付されている(図示せず)。このため、測定機構2には、検体容器11aおよび検体ラック11bに貼付された情報コードを読み取る検体容器読取部11cと、試薬容器15aに貼付された情報コードを読み取る試薬容器読取部15bと、試薬容器17aに貼付された情報コードを読み取る試薬容器読取部17bとが設けられている。
【0019】
つぎに、制御機構3について説明する。制御機構3は、制御部31、入力部32、分析部33、記憶部34、出力部35および送受信部36を備える。測定機構2および制御機構3が備えるこれらの各部は、制御部31に接続されている。
【0020】
制御部31は、CPU等によって実現され、自動分析装置1の各部の処理および動作を制御する。制御部31は、これらの各構成部位に入出力される情報について所定の入出力制御を行い、かつ、この情報に対して所定の情報処理を行う。また、制御部31は、記憶部34に記憶されて処理情報に基づいて検体および試薬の分注動作を制御する。
【0021】
入力部32は、キーボート、マウス、入出力機能を備えたタッチパネル等によって実現され、検体の分析に必要な諸情報や分析動作の指示情報等を外部から取得する。また、入力部32は、図示しない通信ネットワークを介して制御部31への指示情報を取得し、送信する。
【0022】
分析部33は、測光部20によって測定された吸光度の測定結果に基づいて検体の成分分析等を行う。
【0023】
記憶部34は、情報を磁気的に記憶するハードディスクと、自動分析装置1が処理を実行する際にこの処理にかかる各種プログラムをハードディスクからロードして電気的に記憶するメモリとを用いて実現され、検体の分析結果等を含む諸情報を記憶する。また、記憶部34は、泡発生判定部12が検体の液面に泡が生じていると判定した場合、該検体の分析処理の処理情報に泡を付加して記憶する。記憶部34は、CD−ROM、DVD−ROM、PCカード等の記憶媒体に記憶された情報を読み取ることができる補助記憶装置を備えてもよい。
【0024】
出力部35は、ディスプレイ、プリンタ、スピーカ等によって実現され、検体の分析結果を含む諸情報を出力する。
【0025】
送受信部36は、図示しない通信ネットワークを介して所定の形式にしたがって情報の送受信を行うインターフェースとしての機能を有する。
【0026】
以上のように構成された自動分析装置1では、列をなして順次搬送される複数の反応容器22に対して、第1試薬分注機構16が試薬容器15a内の第1試薬を分注後、検体分注機構13が検体容器11a内の検体を分注し、第2試薬分注機構18が試薬容器17a内の第2試薬を分注する。さらに、測光部20が第1試薬、検体および第2試薬を反応させた状態の反応液の吸光度を測定し、この測定結果を分析部33が分析することによって検体の成分分析等が自動的に行われる。また、洗浄部21が測光部20による測定が終了した後に搬送される反応容器22を搬送させながら洗浄し、反応容器22を再利用する。その後、洗浄された反応容器22を再利用し、複数の分析処理を行う。
【0027】
ここで、泡発生判定部12についてより詳細に説明する。泡発生判定部12は、検体移送機構11における検体ラック11bの移送途上で検体分注機構13よりも前に通過する位置に設けられ、検体分注機構13によって分注される前の検体を収容した検体容器11aの液面の泡の発生の有無を判定する。また、泡発生判定部12が泡発生判定処理を行うタイミングは、判定対象の検体の分析項目に対応する第1試薬が第1試薬分注機構16によって反応容器22に分注されるタイミングよりも前である。
【0028】
図2は、この発明の実施の形態に用いられる泡発生判定部12の概略構成を示す模式図である。泡発生判定部12は、二つの電極が、検体容器の検体と接触したときに検体を介して導通するのを検出することによって検体の液面を検知する。なお、この発明の実施の形態1における検体は、導電性を有するものとする。
【0029】
泡発生判定部12は、金属等の導電性材料からなり、検体容器11a内に収容された検体Laに接触する棒状の電極41(第1の電極)と、電極41と同様の導電性材料からなり、電極41の近傍に電極41に対して離間して設けられ、電極41との相対位置を変えずに電極41と連動可能な棒状の電極42(第2の電極)と、電極41および電極42が装着されるアーム43と、連結部44を介して鉛直方向の昇降動作や水平方向の回転動作を行わせることによってアーム43を移送する駆動部45と、電極42に接続され、所定の周波数の交流信号を発生する発振回路46と、電極41の導通状態に応じて検体Laの液面における泡の発生の有無を判定する判定部47と、を備える。
【0030】
判定部47は、電極41および電極42が所定の泡判定位置Aで検体Laと接触し、この接触した検体Laを介して電極41と電極42とが導通したときに、電極41から出力される出力電圧を、互いに異なる第1および第2の基準電圧をそれぞれ比較する比較回路51(第1の比較回路)および比較回路52(第2の比較回路)と、比較回路51および52からの出力に所定の信号処理を施す信号処理回路53と、を有する。
【0031】
図3は、比較回路51の構成を示す図である。図3に示すように、比較回路51は、逆相端子(−)側で電極41に接続され、電極41からの出力電圧Vを入力する比較器511と、比較器511の正相端子(+)側に接続され、所定の電圧Vrefを抵抗512および抵抗513によって分圧する分圧回路514とを有する。分圧回路514は、比較器511に対して第1の基準電圧である基準電圧V1(>0)を入力する。また、比較回路52も比較回路51と同様の構成を有している。比較回路52では、正相端子側に接続される分圧回路から第2の基準電圧である基準電圧V2(>0)を入力している。2つの基準電圧V1およびV2の値は異なっており、V1<V2を満たしている。これらの基準電圧V1およびV2の値は、比較回路51および52がそれぞれ有する分圧回路の抵抗値を調整することによって定められる。
【0032】
判定部47は、基準電圧V1およびV2を用いることによって電極41が検体Laの液面と接触したか、または電極41が検体Laの液面上方に生じた泡と接触したかを判定し、判定結果を制御部31へ出力する。具体的には、電極41が検体Laの液面と接触した場合、図4に示すように、電極41の先端は、液面から所定量だけ下降し、もぐり込むように設定されている。このため、電極41が検体Laの液面と接触した場合には、この分だけ電極41と検体Laとの接触面積も多くなる。これに対して、電極41が検体Laの液面上方に生じた泡と接触した場合、図5に示すように、泡Bbは、表面が薄膜状であってこの内部(泡Bbと泡Bbとの間または泡Bbと検体Laとの間)には空気が介在しているため、電極41の先端には薄い膜状の検体Laが付着するだけである。この結果、電極41と検体Laとの接触面積は、電極41が検体Laの液面と接触する場合よりも顕著に小さい。なお、電極42と検体Laとの接触面積についても、電極41と検体Laとの接触面積と同じことがいえる。
【0033】
検体Laとの接触によって電極41と電極42とが導通したときの電極41と電極42との間の抵抗値は、電極41と検体Laの液面とが接触した場合の方が、電極41と泡Bbとが接触した場合よりも小さいことがわかる。したがって、電極41の出力電圧Vの振幅V0は、電極41と検体Laの液面と接触した場合の方が、電極41と泡Bbとが接触する場合よりも大きくなる。このため、2つの基準電圧V1およびV2は、電極41と検体Laとの接触状態、すなわち、電極41が検体Laの液面と接触しているのか、検体Laの液面上方に生じた泡Bbと接触しているのかを峻別可能な値として設定される。
【0034】
図6および図7は、電極41の出力電圧Vの時間変化を示す図である。これらの図においては、横軸が時間tを示し、縦軸が電極41からの出力電圧Vを示している、また、図6および図7では、時間t1に検体Laとの接触し始めた場合を示している。
【0035】
図6は、電極41が検体Laの液面と接触した場合を示す図であり、接触後の出力電圧Vの振幅V0は、比較回路52の基準電圧V2よりも大きい(V0>V2)。これに対して、図7は、電極41が泡Bbと接触した場合を示す図であり、接触後の出力電圧Vの振幅V0は、比較回路51の基準電圧V1よりも大きく、比較回路52の基準電圧V2よりも小さい(V2>V0>V1)。なお、図6および図7では、発振回路46から正弦波が供給される場合を模式的に示しているが、発振回路46から矩形波を供給するようにしてもよい。
【0036】
信号処理回路53は、比較回路51および比較回路52からの出力に対して所定の信号処理を施すことによって、判定結果に対応する検知信号を、制御部31に出力する。具体的には、出力電圧Vの振幅V0がV0>V2を満たす場合、すなわち、図6に示すような時間変化をする場合には、「液面」という判定結果に対応した検知信号を制御部31に出力する。また、出力電圧Vの振幅V0がV2>V0>V1を満たす場合、すなわち、図7に示すような時間変化をする場合には、「泡」という判定結果に対応した検知信号を制御部31に出力する。
【0037】
ここで、図8に示すフローチャートを参照して、自動分析装置1が行う泡発生判定処理について説明する。なお、以下では、一つの検体Laの泡発生判定処理を行う場合の一連の処理を説明する。
【0038】
まず、制御部31は、新たに受付された検体があるか否かを判定する。具体的には、検体容器11aが検体容器読取部11cを横切った際に、検体容器読取部11cが検体容器11aに貼付された情報を読み込んだ情報が記憶部34に記憶されているか、または操作者によって入力部32に入力された情報に基づいて新たな検体が受付されたか否かを判定する。制御部31は、新たに受付された検体がないと判定した場合(ステップS101:No)、このステップS101の判定処理を繰り返す。一方、制御部31は、新たに受付された検体ありと判定した場合(ステップS101:Yes)、制御部31は、駆動部45を駆動させ、検体分注機構13によって反応容器22に分注される前の泡判定位置Aに静止している検体容器11aに対して電極41、42を下降させる(ステップS102)。
【0039】
その後、制御部31は、電極41が検体の液面と接触することによって判定部47から検知信号が出力されているか否かを判定する(ステップS103)。判定部47が検知信号を出力した場合(ステップS103:Yes)、制御部31は、検体の液面と接触したとして電極41の下降を停止させる(ステップS104)。一方、判定部47が検知信号を出力しない場合(ステップS103:No)、ステップS102へ移行し、制御部31は、電極41の下降を続けさせる。
【0040】
判定部47が出力した検知信号が「液面」という判定結果に対応する検知信号である場合(ステップS105:No)、ステップS107へ移行する。
【0041】
これに対して、判定部47が出力した検知信号が「泡」という判定結果に対応する検知信号である場合(ステップS105:Yes)、制御部31は、記憶部34に記憶されている分析処理の処理情報に「泡」が生じていることを示す泡発生情報を付加する(ステップS106)。図9は、処理情報の構成を示す図である。図9に示す処理情報テーブルR1には、検体ごとに分析に必要な第1および第2試薬の情報に加えて、検体容器11aにおける泡発生情報が記載されている。例えば、検体「1」については、分析に必要な試薬が第1試薬「a」および第2試薬「c」であるという情報と、検体容器11a内に泡が発生していない(×)という情報が記載されている。また、検体「2」については、第1試薬「a」および第2試薬「c」であるという情報と、検体容器11a内に泡が発生している(○)という情報が記載されている。なお、処理情報テーブルR1を出力部35で表示出力してもよい。
【0042】
その後、制御部31は、駆動部45を駆動させ、電極41を洗浄部12aまで移送し、電極41の洗浄(ステップS107)を行い、一連の処理を終了する。
【0043】
ここで、図9に示す処理情報テーブルR1に基づいて自動分析装置1が実行する分析処理の概要を説明する。制御部31は、処理情報テーブルR1を参照することにより、検体容器11aの液面に泡が発生していない検体「1」、「5」、「6」の分析処理を実行する制御を行う一方、泡発生情報が付加されている検体「2」、「3」、「4」を分析処理から除外する制御を行う。
【0044】
図10は、処理情報テーブルR1に基づいて自動分析装置1が検体、第1および第2試薬を分注した後の反応槽14の状態を示す図である。以下、(検体、第1試薬、第2試薬)の組によって反応容器22が収容する混合液を特定する。また、検体等の反応容器22への分注処理は、処理情報テーブルR1の記載順にしたがって反応槽14上で時計回りに行うものとする。図10において、反応槽14上には、混合液(1,a,c),(5,a,c),(6,b,d)をそれぞれ収容する反応容器22が時計回りに隣接して並んでいる。これに対して、本来なら混合液(1,a,c)を収容する反応容器22と混合液(5,a,c)を収容する反応容器22との間に位置する反応容器22にそれぞれ収容されるべき混合液(2,a,c),(3,b,d),(4,b,d)は、検体容器11a内での泡の発生によって分析処理から除外されたため、反応槽14上に存在していない。このようにして、自動分析装置1は、分析前の検体容器11aの液面に泡が発生していない検体に対する分析動作のみを実行する。なお、泡の発生によって分析処理を除外された検体は、操作者によって泡を除去後、再度、検体移送機構11に収容することによって分析を行う。
【0045】
この実施の形態1では、分析前の検体容器11a内の検体との接触に起因する電気的な信号変化の変化量に基づいて泡発生判定部12が検体Laの液面に泡が発生しているか否かを判定し、泡の発生がないと判定された液面を有する検体の分析を実行する。したがって、検体Laの液面に泡が発生した場合であっても、この検体Laの分析を実行せず、次の検体の分析を実行することによって検体分注機構13の分注ノズルに泡が付着することを防止することができる。この結果、検体の液面上方に生じた泡に起因する分注異常、および特別な洗浄処理を行わずに済むため、洗浄時間の増加を抑制し、分析処理能力の低下を防止することができる。さらに、泡が生じている検体Laに対応した試薬の分注動作を行わないため、試薬の無駄を防止することができる。
【0046】
(実施の形態2)
つぎに、本発明の実施の形態2について説明する。上述した実施の形態1では、泡発生判定部12が導通方式で検体容器11a内の検体の液面を検知していたが、本発明の実施の形態2では、泡発生判定部が静電容量方式で検体容器11aの検知の液面を検知する。
【0047】
図11は、この実施の形態2に係る泡発生判定部の概略構成を示す模式図である。図11に示す泡発生判定部60は、導電性材料からなる棒状の電極61(第1の電極)と検体を収容する検体容器の近傍に設けられた電極67(第2の電極)との間の静電容量の変化に基づいて、電極と検体の液面との接触を検知する。なお、図11において、上記実施の形態1で説明した泡発生判定部12と同じ構成を有する部位については、同一の符号を付している。
【0048】
この実施の形態2に係る泡発生判定部60は、金属等の導電性材料からなり、検体容器11a内に収容された検体Laに接触する棒状の電極61と、所定の周波数の交流信号を発生し、この発生した信号を電極61へ供給する発振回路62と、電極61と発振回路62との間に、直列に介在する抵抗63と、抵抗63の端部であって発振回路62と接続される側の端部に発振回路62の側から抵抗63と並列に接続される基準回路64と、抵抗63の端部であって電極61と接続される側の端部に電極61の側から抵抗63と並列に接続され、基準回路64と同様の構成を有する電圧変化回路65と、基準回路64の出力電圧と電圧変化回路65の出力電圧との差を用いて検体Laの液面における泡の発生の有無を判定する判定部66と、検体Laを収容する検体容器11aの近傍に設けられた電極67と、を備える。
【0049】
抵抗63の抵抗値は、電極61が検体Laの液面と接触したときに基準回路64の出力と電圧変化回路65の出力との間に十分な差が生じるように設定されている。
【0050】
基準回路64および電圧変化回路65は同じ構成を有しており、具体的には、整流器と平滑コンデンサとを備え、直流化した信号を判定部66に出力する。
【0051】
判定部66は、基準回路64の出力電圧と電圧変化回路65の出力電圧との差動増幅を行う差動増幅器71と、差動増幅器71の出力を互いに異なる第1および第2の基準電圧とそれぞれ比較する比較回路72(第1の比較回路)および比較回路73(第2の比較回路)と、比較回路72および73からの出力に対して所定の信号処理を施す信号処理回路74と、を有する。差動増幅器71の正相端子側は基準回路64に接続され、差動増幅器71の逆相端子側は電圧変化回路65に接続される。このような構成を有する判定部66によれば、抵抗63の前段に配置された基準回路64の出力とその抵抗63の後段に配置された電圧変化回路65の出力との差を差動増幅器71によって差動増幅することにより、検体Laの液量が微量であっても静電容量の変化を適確に検知することができ、高精度な液面検知を実現することが可能となる。
【0052】
比較回路72および73の構成は、上記実施の形態1における比較回路51の構成と同様である(図3を参照)。比較回路72は、差動増幅器71からの出力を逆相端子側に入力し、正相端子側に入力される第1の基準電圧である基準電圧ΔV1(>0)との大小を比較する。また、比較回路73は、差動増幅器71からの出力を逆相端子側に入力し、正相端子側に入力される第2の基準電圧である基準電圧ΔV2(>0)との大小を比較する。基準電圧ΔV1および基準電圧ΔV2の値は異なっており、ΔV1<ΔV2を満たしている。これらの基準電圧ΔV1および基準電圧ΔV2の値は、比較回路72および73がそれぞれ有する分圧回路の抵抗値を調整することによって定められる。
【0053】
判定部66では、基準電圧ΔV1および基準電圧ΔV2を用いることによって電極61が検体Laの液面と接触したか、または電極61が検体Laの液面上方に発生した泡と接触したかを判定し、判定結果に対応する検知信号を制御部31に出力する。具体的には、電極61が検体Laと接触していない状態では、基準回路64の出力と電圧変化回路65の出力とがほぼ同じである(以下、この出力電圧をVairとする)。電極61が検体Laと接触すると、電極61と電極67との間の静電容量が大きくなるため、電圧変化回路65の出力が小さくなり、電圧降下を生じる。これに対して、基準回路64の出力は、電極61と検体Laとの接触の有無に関わらずほぼ一定である。
【0054】
電極61が検体Laと接触したときの電極61と電極67との間の静電容量変化は、電極61が検体Laの液面と接触した場合の方が、電極61が検体の液面上方に生じた泡と接触した場合よりも大きい。したがって、検体Laと接触後の電圧変化回路65の出力電圧をVLaとすると、このVLaの値は、電極61が検体Laの液面と接触した場合の方が、検体Laの液面上方に生じた泡と接触した場合より小さくなる。基準電圧ΔV1およびΔV2は、電極61が検体Laと接触した後の差動増幅器71からの出力、すなわち、電圧降下ΔV=Vair−VLaの値を、電極61と検体Laとの接触状態、より具体的には、検体Laの液面と接触しているか泡と接触しているのかに応じて峻別可能な値として設定される。
【0055】
図12および図13は、電圧変化回路65の出力電圧Vの時間変化を示す図である。これらの図においては、横軸が時間tを示し、縦軸が電圧変化回路65の出力電圧Vを示している。また、図12および図13では、時間t2に検体Laとの接触を始めた場合を示している。
【0056】
図12は、電極61が検体Laの液面と接触した場合を示す図である。この場合の接触後の電圧変化回路65の出力電圧VLaは、非接触時における比較回路73の出力電圧V4(=Vair−ΔV2)よりも小さい。すなわち、接触後の差動増幅器71からの出力ΔV=Vair−VLaは、ΔV2=Vair−V4よりも大きい(ΔV>ΔV2)。
【0057】
図13は、電極61が検体Laの液面上方に生じた泡と接触した場合を示す図である。この場合の接触後の出力電圧VLaは、非接触時の比較回路72の出力電圧V3(=Vair−ΔV1)よりも小さく、非接触時の比較回路73の出力電圧V4(=Vair−ΔV2)よりも大きい。すなわち、接触後の差動増幅器71からの出力ΔV=Vair−VLaは、ΔV1=Vair−V3よりも大きく、ΔV2=Vair−V4よりも小さい(ΔV2>ΔV>ΔV1)。
【0058】
信号処理回路74は、比較回路72および73からの出力に対して所定の信号処理を施すことによって、判定結果に対応する検知信号を制御部31に出力する。具体的には、差動増幅器71からの出力電圧ΔVがΔV>ΔV2を満たす場合、すなわち電圧変化回路65の出力電圧Vが図12に示すような電圧降下を生じる場合、「液面」 という判定結果に対応した検知信号を制御部31に出力する。また、差動増幅器71からの出力電圧ΔVがΔV2>ΔV>ΔV1を満たす場合、すなわち、電圧変化回路65の出力電圧Vが図13に示すような電圧降下を生じる場合、「泡」という判定結果に対応する検知信号を制御部31に出力する。
【0059】
電極67は、図11においては、平板状をなす場合を図示しているが、平板状以外の形状をなしていてもよく、例えば、検体容器11aを覆うような形状でもよい。また、検体容器11aを導電性材料によって形成することによって電極67の機能を兼備させてもよい。
【0060】
以上のように構成された泡発生判定部60を備える自動分析装置が行う泡発生判定処理は、上述した実施の形態1で説明した泡発生判定処理と同様の処理の流れを有する(図8を参照)。
【0061】
この実施の形態2では、分析前の検体容器11a内の検体との接触に起因する電気的な信号変化の変化量に基づいて泡発生判定部60が検体Laの液面に泡が発生しているか否かを判定し、泡の発生がないと判定された液面を有する検体の分析を実行する。したがって、検体Laの液面に泡が発生した場合であっても、この検体Laの分析を実行せず、次の検体の分析を実行することによって検体分注機構13の分注ノズルに泡が付着することを防止することができる。この結果、検体の液面上方に生じた泡に起因する分注異常、および特別な洗浄処理を行わずに済むため、洗浄時間の増加を抑制し、分析処理能力の低下を防止することができる。さらに、泡が生じている検体Laに対応した試薬の分注動作を行わないため、試薬の無駄を防止することができる。
【0062】
上述した実施の形態1,2では、反応容器22に分注される前の検体容器11aにおける検体の液面に泡が生じているか否かを判定していたが、これに限らず、試薬容器15aにおける試薬の液面に泡が発生しているか否かの判定を行ってもよい。試薬容器15aは、搬送される際に試薬容器15a内部の試薬が揺れて泡が発生しやすい。このため、従来の自動分析装置では、試薬容器15aを第1試薬庫15に収容するときに泡発生の有無を調べておく必要があり、操作者の負担となっていた。これに対して、図14に示すように、第1試薬庫15に対して泡発生判定部23を設け、試薬容器15aを第1試薬庫15に収容した後は、分析前に泡検知を自動的に行う設定とすることによって、操作者の負担が減り、より効率的に分析を行うことが可能となる。また、同様に、第2試薬庫17に泡発生判定部24を設けて、試薬容器17aの液面検知を行うことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施の形態1に係る自動分析装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る自動分析装置が備える泡発生判定部の概略構成を示す模試図である。
【図3】比較回路の構成を示す図である。
【図4】電極が検体の液面と接触した状態を示す図である。
【図5】電極が検体の液面上方に生じた泡と接触した状態を示す図である。
【図6】電極が検体の液面と接触した場合の電極からの出力電圧の時間変化を示す図である。
【図7】電極が泡と接触した場合の電極からの出力電圧の時間変化を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態1に係る自動分析装置の泡発生判定部が行う泡発生判定処理の概要を示すフローチャートである。
【図9】分析処理の処理情報テーブルの一例を示す図である。
【図10】分析処理の処理情報テーブルに基づいて分注動作を行った状態を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態2に係る自動分析装置が備える泡発生判定部の構成を模式的に示す図である。
【図12】電極が検体の液面と接触した場合の電圧変化回路の出力電圧の時間変化を示す図である。
【図13】電極が泡と接触した場合の電圧変化回路の出力電圧の時間変化を示す図である。
【図14】本発明の変形例に係る自動分析装置の概略構成を示す模式図である
【符号の説明】
【0064】
1,100 自動分析装置
2 測定機構
3 制御機構
11 検体移送機構
11a 検体容器
11b 検体ラック
11c 検体容器読取部
12,23,24,60 泡発生判定部
12a 洗浄部
13 検体分注機構
14 反応槽
15 第1試薬庫
15a,17a 試薬容器
15b,17b 試薬容器読取部
16 第1試薬分注機構
17 第2試薬庫
18 第2試薬分注機構
19 攪拌部
20 測光部
21 洗浄部
22 反応容器
31 制御部
32 入力部
33 分析部
34 記憶部
35 出力部
36 送受信部
41,42,61,67 電極
43 アーム
44 連結部
45 駆動部
46,62 発振回路
47,66 判定部
51,52,72,73 比較回路
53,74 信号処理回路
63,512,513 抵抗
64 基準回路
65 電圧変化回路
71 差動増幅器
511 比較器
514 分圧回路
La 検体
Bb 泡
R1 処理情報テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体容器に収容された検体と試薬容器に収容された試薬とを反応容器へ分注し、該反応容器内で前記検体と前記試薬と反応させた反応液の吸光度を測定することによって該検体の成分の分析を行う自動分析装置において、
分析前の前記検体容器内の前記検体との接触による電気的な信号変化を検出し、該信号変化の変化量に基づいて前記検体の液面に泡が発生しているか否かを判定する泡発生判定手段と、
前記泡発生判定手段によって泡の発生がないと判定された液面を有する前記検体の分析を実行する制御を行う制御手段と、
を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記泡発生判定手段は、逐次受付される前記検体の分析項目に対応する前記試薬が前記反応容器に分注される前に、該検体の液面に泡が発生しているか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記泡発生判定手段は、
互いに他の近傍に離間して設けられ、前記検体容器に収容された前記検体と接触可能な第1および第2の電極と、
前記第2の電極に接続され、所定の周波数の信号を発生する発振回路と、
前記発振回路、前記第2の電極および前記検体を介して前記第1の電極から出力される出力電圧の変化を検出し、該出力電圧の変化量と、互いに異なる第1および第2の基準電圧とをそれぞれ比較することによって前記検体の液面に泡が発生しているか否かを判定する判定部と、
を有することを特徴とする請求項1または2に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記泡発生判定手段は、
前記検体容器に収容された前記検体と接触可能な第1の電極と、
前記検体容器と一体にまたは前記検体容器の近傍に設けられた第2の電極と、
所定の周波数の信号を発生し、この発生した信号を少なくとも前記第1の電極に供給する発振回路と、
前記第1の電極と前記発振回路との間に直列に介在して接続される抵抗と、
前記第1の電極が前記検体と接触することによって生じる前記第1の電極と第2の電極との間の静電容量の変化に起因した前記抵抗の両端からの出力電圧の差を検出し、該出力電圧の差と、互いに異なる第1および第2の基準電圧とをそれぞれ比較することによって前記検体の液面に泡が発生しているか否かを判定する判定部と、
を有することを特徴とする請求項1または2に記載の自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−85274(P2010−85274A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−255402(P2008−255402)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】