説明

自動分析装置

【課題】精製水の水質に応じて用途を切り替えることで精製水の使用量を低減する。
【解決手段】
サンプル及び試薬を容器に分注してその混合液を測定する自動分析装置において、精製水の水質を測定する水質測定手段と、前記水質測定手段が測定した精製水の水質に基づいて、第1の貯水タンクあるいは第2の貯水タンクへ精製水を給水する給水手段とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精製水を用いて洗浄を行う自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は、被検体から吸引された血液や尿などの被検試料(以下、サンプルと記す)の成分分析を自動的に行う装置である。サンプルの成分分析は、まずプローブと呼ばれる中空の針を用いてサンプルと試薬とを反応セル中で混合し、混合した液体に対して光を照射する。そして、照射した光の透過光の波長成分から、その反応状態を調べることにより分析を行う。この自動分析装置は、様々な分析項目についての分析を多数のサンプルについて行えるために、病院や検査機関などにおいて広く利用されている。
【0003】
自動分析装置においては、貯水タンク内に精製水を貯蔵しておき、反応セルを暖める水やプローブを洗浄する水として使用する。貯水タンクに貯蔵された精製水は、時間と共にその水質が悪化する。この精製水の水質悪化は分析時の誤差原因となるため、恒温槽中の精製水の水質を定期的に測定し、水質が悪化している場合には精製水を排水して入れ替える発明が公開されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−136241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
先述したような自動分析装置において、精製水の水質が恒温槽保温などの特定の用途に適さない水質である場合は、貯水タンク内の精製水を全て入れ替える動作を行う。しかし、精製水の用途は恒温槽保温やプローブ洗浄、反応セル洗浄など多岐に渡る。更に、誤差を生じる度合いはその用途によって異なるため、誤差を一定値以下に抑えるため許容できる精製水の水質の範囲も、その用途によって異なる。水質の悪化に応じて貯水タンク内の精製水を全て入れ替え、他の用途に使用できる精製水をも排出する動作は、精製水の使用量を不要に増加させてしまうと共に、精製水を精製するためのイオン交換膜などの消耗を早めてしまうという課題があった。
【0006】
そこで本発明においては、精製水の水質に応じて用途を切り替えることで精製水の使用量を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の自動分析装置は、サンプル及び試薬を容器に分注してその混合液を測定する自動分析装置において、精製水の水質を測定する水質測定手段と、前記水質測定手段が測定した精製水の水質に基づいて、第1の貯水タンクあるいは第2の貯水タンクへ精製水を給水する給水手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、精製水の水質に応じて用途を切り替えることで精製水の使用量を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る自動分析装置の内部構成を示すブロック図。
【図2】本発明の実施形態に係る自動分析装置の構成を示す外観斜視図。
【図3】本発明の実施形態に係る自動分析装置のサンプルプローブ・試薬プローブ洗浄部及び外壁洗浄部の構成を示す図。
【図4】本発明の実施形態に係る自動分析装置の反応セル洗浄部の構成を示す図。
【図5】本発明の実施形態に係る自動分析装置の精製水精製部の構成を示す図。
【図6】本発明の実施形態に係る自動分析装置の貯水部の構成を示す図。
【図7】本発明の実施形態に係る自動分析装置の各貯水タンクの水質基準を示す表。
【図8】本発明の実施形態に係る自動分析装置の第1貯水タンクにおける給水処理の流れを示すフローチャート。
【図9】本発明の実施形態に係る自動分析装置の第2貯水タンクにおける給水処理の流れを示すフローチャート。
【図10】本発明の実施形態に係る自動分析装置の第3貯水タンクにおける給水処理の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
(自動分析装置1の構成)
図1は、本発明に係る自動分析装置1の構成を示したブロック図である。
【0012】
図1に示すように、本実施形態に係る自動分析装置1は、洗浄部10と、貯水部20と、分析部30と、恒温槽40と、分析データ処理部50と、出力部60と、システム制御部70と、操作部71と、精製水精製部80から構成される。なお、本発明の構成はこれに限られるものではなく、適宣構成要素を追加し、あるいは省略しても構わない。
【0013】
システム制御部70は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などから構成される。システム制御部70は後述する操作部71から入力された指示信号に従って、ROMやRAMにロードされた各種のアプリケーションプログラムに従って処理を実行する。システム制御部70は、各部から供給される信号を処理し、また種々の制御信号を生成して各部に供給することで、自動分析装置1を統括的に制御する。
【0014】
操作部71は、例えばタッチパネルディスプレイや機械的なボタンなどから構成され、自動分析装置1の使用者が操作部71に対して行った入力を受け付ける。操作部71は使用者の入力に応じて指示信号をシステム制御部70へと出力する。
【0015】
次に、図2を参照して分析部20及び恒温槽40の構成について述べる。図2は、分析部20の構成を示す外観斜視図である。
【0016】
図2において、分析部20のサンプル部31は、被検体から採取した尿や血液などのサンプルや、キャリブレーションを行うための基準サンプルを収容するディスクサンプラ311と、ディスクサンプラ311中の試料容器からサンプルを吸引して反応セル331へと吐出するサンプルプローブ312などから構成される(以下、サンプルや試薬などを吸引して吐出する一連の動作を分注する、と記載する。)。
【0017】
サンプルプローブ312には図示せぬモータが取り付けられ、システム制御部70が出力した指示信号に応じてその位置を移動させる。また、サンプルプローブ312には図示せぬ液面センサが設けられ、電気信号の導通に基づいてプローブ先端がサンプルに接触したか否かを検知し、その検知結果をシステム制御部70へと出力する。また、サンプルプローブ312には図示せぬポンプが取り付けられ、システム制御部70が出力した指示信号に応じてサンプルプローブ312の内部へサンプルを吸引し、あるいはサンプルプローブ312の外部へサンプルを吐出する。サンプルプローブ312がサンプルの分注を行う際には、まずサンプルプローブ312がディスクサンプラ311中の所望のサンプルが収容されたサンプル容器の上部へと移動する。サンプルプローブ312がサンプル容器の上部へと移動すると、サンプルプローブ312は下降し、その先端をサンプル容器中のサンプル内部へ侵入させる。システム制御部70は液面センサからの出力信号に基づいて、サンプルプローブ312の先端がサンプルの液面から所定の深さに達した位置でサンプルプローブ312の下降を停止させる。サンプルプローブ312の先端がサンプル内部へと侵入すると、サンプルプローブ312に取り付けられたポンプが駆動しサンプルをサンプルプローブ312内部へと吸引する。サンプルプローブ312がサンプルを吸引すると、サンプルプローブ312はサンプル容器の上部へと移動し、続けて反応セル331の内部へと移動する。サンプルプローブ312が反応セル331の内部へと移動すると、ポンプが駆動しサンプルプローブ312が吸引したサンプルを反応セル331へと吐出する。
【0018】
ところで、吐出動作後のサンプルプローブ312にはサンプルの残滓が付着する。より具体的には、サンプルプローブ312がサンプル内部へ侵入した際に、サンプルプローブ312の外壁にはサンプルが付着する。また、サンプル吸引時にサンプルプローブ312内部へ侵入したサンプルの一部は、吐出動作によっても排出されずにサンプルプローブ312の内壁へ付着する。サンプルがサンプルプローブ312の内外に付着したまま異なるサンプルの分注動作を行うと、サンプルに不純物が混合し(以下、不純物の混合をキャリーオーバと記載する。)分析データに誤差を生じる。本実施例においてはこうしたキャリーオーバを避けるために、後述するサンプルプローブ・試薬プローブ洗浄部12によってサンプルプローブ312の洗浄を行う。サンプルプローブ・試薬プローブ洗浄部12の構成については詳しく後述する。
【0019】
図2において、分析部20の試薬部32は、サンプルに対して選択的に反応する各測定項目の試薬を収納する第1試薬庫321、第2試薬庫323と、第1試薬庫321、第2試薬庫323中の試薬容器から所望の試薬を吸引して反応セル331へと吐出する試薬プローブ322などから構成される。
【0020】
試薬プローブ322にはサンプルプローブ312と同様に図示せぬモータ及びポンプが取り付けられる。試薬プローブ322はシステム制御部70が出力した指示信号に応じて移動して、第1試薬及び第2試薬の分注動作を行う。なお、試薬プローブ322もサンプルプローブ312と同様に、分注動作を行うと試薬プローブ322の内外に試薬の残滓が付着する。試薬プローブ322の内外に付着した試薬はキャリーオーバの原因となるため、後述するサンプルプローブ・試薬プローブ洗浄部12によって試薬プローブ322の洗浄を行う。
【0021】
図2において、分析部20の反応部33は、サンプル部31のサンプルプローブ312から吐出されたサンプル、試薬部32の試薬プローブ322から吐出された第1試薬及び第2試薬を収容する、円周上に配置された反応セル331と、反応セル331内のサンプル、第1試薬、第2試薬の混合液を攪拌する攪拌子332と、攪拌された反応セル331内の混合液に対して光を照射し、透過した光から混合液の吸光度を測定する測光ユニット333から構成される。
【0022】
反応セル331は、後述する恒温槽40に漬けられた状態で、システム制御部70の指示信号を受けて周回移動する。反応セル331はまずサンプルプローブ312の下部へと移動し、サンプルプローブ312によるサンプルの吐出を受ける。次に、反応セル331は試薬プローブ322の下部へと移動し、試薬プローブ322による第1試薬の吐出を受ける。次に、反応セル331は攪拌子332の下部へと移動し、攪拌子332を用いてサンプルと第1試薬との混合液を攪拌する。一定時間が経過しサンプルと第1試薬とが反応すると、反応セル331は試薬プローブ332の下部へと移動し、試薬プローブ322による第2試薬の吐出を受ける。次に反応セル331は攪拌子332の下部へと移動し、攪拌子332を用いてサンプルと第1、第2試薬との混合液を攪拌する。次に、反応セル331は測光ユニット333の光照射位置へと移動し、測光ユニット333による混合液の吸光度が測定される。吸光度が測定されると、混合液は図示せぬ集合管と呼ばれる排管から自動分析装置1の外部へと廃棄される。
【0023】
ここで、混合液廃棄後の反応セル331の内壁には混合液の残滓が付着する。反応セル331の内壁に混合液が付着したまま他のサンプルや試薬を分注すると、反応セル331の内壁に付着した混合液と混ざってしまい、キャリーオーバを生じる。こうしたキャリーオーバを避けるために、反応セル331は混合液の廃棄後に反応セル洗浄部13の下部へと移動する。反応セル洗浄部13は反応セル331を洗浄し、内壁に付着した混合液を取り除く。反応セル洗浄部13の構成については詳しく後述する。
【0024】
攪拌子332は、細い攪拌棒にモータを取り付けることで構成する。攪拌子332はシステム制御部70の指示信号を受けて反応セル331の内部へと攪拌棒を移動させる。攪拌棒を反応セル331内部へと移動させると、攪拌子332はモータで攪拌棒を振動させ、反応セル331内の混合液を掻き混ぜる。攪拌が終了すると、攪拌子332は反応セル331の外部へと攪拌棒を移動させる。
【0025】
ここで、攪拌後の攪拌棒には、混合液の残滓が付着する。攪拌棒に混合液が付着したまま他の反応セル331の混合液を攪拌すると、攪拌棒に付着した混合液と混ざってしまい、キャリーオーバを生じる。こうしたキャリーオーバを避けるために、外壁洗浄部14は攪拌後の攪拌棒を洗浄し、付着した混合液を取り除く。外壁洗浄部14の構成については、後に詳しく述べる。
【0026】
測光ユニット333は、所定の波長領域を持つ光を反応セル331に向けて照射する発光部と、反応セル331内の混合液を透過した透過光を受光して、この透過光の波長成分を分析する受光部とを組み合わせることで構成される。測光ユニット333は、成分分析を行う反応セル331が発光部の照射範囲まで移動すると、発光部は反応セル331に向けて光を照射する。反応セル331は後述する恒温槽40に漬かっているために、発光部が照射した光は、反応セル331内の混合液に加えて恒温槽40内の恒温水を透過して受光部へと到達することとなる。受光部は到達した透過光の波長成分を分析して、波長成分情報を取得する。測光ユニット333はこの波長成分情報を分析データ処理部50へと出力する。
【0027】
図2における恒温槽40は、反応セル331を収容する円周上の容器である。恒温槽40の内部は36度程度の所定の温度に温められた恒温水41が満たされている。反応セル331内の混合液は恒温水41によって、混合液が反応を起こすのに適した温度まで温められる。
【0028】
洗浄部10は、サンプルプローブ312や試薬プローブ322の内壁を洗浄するサンプルプローブ・試薬プローブ洗浄部12と、反応セル331の内壁を洗浄する反応セル洗浄部13、及びサンプルプローブ312や試薬プローブ322の外壁を洗浄する外壁洗浄部14から構成される。
【0029】
図3に、サンプルプローブ・試薬プローブ洗浄部12及び外壁洗浄部14の構成を示す。図3は、例としてサンプルプローブ312を洗浄する図を示しているが、サンプルプローブ312を試薬プローブ322や攪拌子332に置き換えても構わない。
【0030】
サンプルプローブ・試薬プローブ洗浄部12は、精製水を吐出するプローブ洗浄ポンプ121を備える。サンプルプローブ312の洗浄を行う際には、システム制御部70がサンプルプローブ312に取り付けられたモータを駆動して、サンプルプローブ312を洗浄槽143の内部へと移動させる。サンプルプローブ312が洗浄槽143の内部へ移動すると、プローブ洗浄ポンプ21は第1貯水タンク231から所定量の精製水を吸引し、サンプルプローブ312内へ吐出する。吐出された精製水はサンプルプローブ312内を通過して、プローブ先端から排出される。精製水がサンプルプローブ312内を通過することで、プローブ内壁に付着したサンプルの残滓は精製水と共にプローブ先端から排出される。プローブ先端から排出された精製水は、洗浄槽143の排出口から排出される。
【0031】
外壁洗浄部14は、精製水を吐出する外壁洗浄ポンプ141を備える。外壁洗浄ポンプ141は、第3貯水タンクから所定量の精製水を吸引し、吐出口142へ吐出する。吐出口142は洗浄層の側面に備えられ、外壁洗浄ポンプ141から吐出された精製水をサンプルプローブ311の側面に向けて噴き当てる。噴き当てられた精製水はサンプルプローブ312の外壁に付着したサンプルの残滓を取り除き、洗浄槽143の排出口から排出される。
【0032】
図4に、反応セル洗浄部13の構成を示す。反応セル洗浄部13は第2貯水タンク232から吸引した精製水を吐出口へ向けて吐出する反応セル吐出ポンプ131、反応セル吐出ポンプ131に接続され反応セル331内へ精製水を吐出する吐出口132、反応セル331内に含まれる混合液を吸い出す吸出口133、及び吸出口133に接続され吸い出した混合液を排出する反応セル吸出ポンプ134から構成される。なお、図4では例として吐出口132と吸出口133とが一対設けられる例を示すが、吐出口132及び吸出口133は複数設けられるものであっても構わない。また、反応セル吐出ポンプ131が第2貯水タンク232と図示せぬ洗浄液タンクとに接続され、洗浄液タンクから吸引した洗浄液と第2貯水タンク232から吸引した精製水との混合液を反応セル331内へ吐出する構成を取っても構わない。
【0033】
図2に示すように、反応セル洗浄部13は円周上に並んで配置された反応セル331の上部に来るよう設けられる。反応セル洗浄部13には図示せぬモータが取り付けられ、吐出口132及び吸出口133を上下させる。反応セル331を洗浄する際には、システム制御部70が反応セル洗浄部13のモータを駆動し、吐出口132及び吸出口133を反応セル331の内部まで下降させる。吐出口132及び吸出口133が下降すると、反応セル吐出ポンプ131は第2貯水タンク232から精製水を吸引し、吐出口132へと吐出する。吐出口132は精製水を反応セル331内へと吐出する。
【0034】
精製水が反応セル331内へ吐出されると、吐出口132及び吸出口133は一端反応セル331外へと上昇する。反応セル外へ吐出口132及び吸出口133が移動すると、精製水を吐出された反応セル331は回転して、吸出口133の下部へと移動する。反応セル331が吸出口133の下部へと移動すると、再び吐出口132及び吸出口133が下降して、精製水の吐出された反応セル331の内部へ吸出口133が侵入する。反応セル吸出ポンプ134が駆動すると、反応セル331内の混合液は吸出口133を通って排出される。この精製水の吐出及び吸出し動作によって、反応セル331の内壁に付着した混合液が吸出口133を通って排出される。なお、吐出口132及び吸出口133が複数設けられる場合には、この精製水の吐出及び吸出し動作が1つの反応セル331について複数回行われる。
【0035】
図5に精製水精製部80の構成を示す。精製水精製部80は、水道水取り込み口82、フィルタ83、イオン交換樹脂84、精製水タンク81、及び給水ポンプ85などから構成される。
【0036】
精製水を精製する際には、まず水道水取り込み口82が水道水をフィルタ83へと導く。水道水はフィルタ83によって濾過され、水道水内に含まれる細かい不純物や菌などが取り除かれる。フィルタ83によって濾過された水道水はイオン交換樹脂84へと導かれる。イオン交換樹脂84は水道水内に含まれるカルシウムなどのイオンを吸着し、水道水から取り除く。イオン交換樹脂84によってイオンを取り除かれた水道水は、精製水となって精製水タンク81内に貯蔵される。システム制御部70は洗浄部10や恒温槽40などが精製水を消費するのに応じて精製水タンク81内の精製水を貯水部20へと導く。
【0037】
なお、精製水タンク81に貯蔵された精製水は、洗浄部10や恒温槽40の精製水消費に合わせて貯水部20へと導かれる。従って、自動分析装置1が分析を行わない場合には、精製水は精製水タンク81に貯蔵され続けることとなる。精製水タンク81に長時間貯蔵された精製水は、フィルタ83及びイオン交換樹脂84によって濾過されて間もない精製水に比べ、その水質が悪化する。具体的には、精製水タンク81に僅かに混入した細菌などの不純物が精製水中で増加し、あるいは精製水タンク81に僅かに混入するイオンによって精製水の電導度が変化する。精製水タンク81に貯蔵された精製水は、後述する貯水部20中の精製水水質計220によってその水質が測定され、水質に応じて異なる貯水タンクへと導かれ貯蔵される。
【0038】
図6に貯水部20の構成を示す。貯水部20は、第1貯水タンク231、第2貯水タンク232、第3貯水タンク233、精製水水質計220、第1水質計221、第2水質計222、第3水質計223、及び電磁弁、三方弁から構成される。各貯水タンクには、貯蔵する精製水量を検知する、図示せぬ水位計が設けられる。電磁弁は、システム制御部70から印加された電気信号によって開閉し、精製水の流路をせき止め、あるいは開放する。三方弁は、システム制御部70から印加された電気信号によって開閉し、精製水の流路を変化させる。
【0039】
精製水精製部80から貯水部20へ導かれた精製水は、電磁弁2301によってせき止められる。システム制御部70は各貯水タンクに取り付けられた水位計あるいは水質計の検出結果に基づいて各貯水タンクへの給水が必要か否かを判断し、給水が必要であると判断した場合は電磁弁2301を開放する。電磁弁2301を通過した精製水は、精製水水質計220によってその水質が測定される。精製水水質計220は測定した水質をシステム制御部70へと出力する。システム制御部70は、測定された水質に応じて三方弁2302及び三方弁2023を駆動し、精製水を各貯水タンクへと導く。システム制御部70は、精製水タンク81から導かれた精製水の水質が良い場合には、精製水を第1貯水タンク231へと導き、そうでない場合には第3貯水タンクへと導くよう各三方弁を制御する。水質や水位に基づく各三方弁の制御については、後に詳しく述べる。
【0040】
第1貯水タンク231は、脱気装置24及び電磁弁2311を介してサンプルプローブ・試薬プローブ洗浄部12に接続される。システム制御部70はサンプルプローブ・試薬プローブ洗浄部12がサンプルプローブ312、試薬プローブ322の洗浄を行う際に、電磁弁2311を開放する。電磁弁2311が開放されると、第1貯水タンク231内の精製水は脱気装置24を通過してサンプルプローブ・試薬プローブ洗浄部12へと導かれる。なお、脱気装置24は精製水に含まれる細かな気泡を除去する装置である。
【0041】
また、第1貯水タンク231は、電磁弁2312を介して排水管に接続される。システム制御部70は第1貯水タンク231内の水質が悪化したことに応じて電磁弁2312を開放する。電磁弁2312が開放されると、第1貯水タンク231内の精製水は排水管から排出される。
【0042】
また、第1貯水タンク231には、オーバフロー流路2313が設けられる。オーバフロー流路2313は第1貯水タンク231の上部と第2貯水タンク232とを繋ぐように設けられる。第1貯水タンク231に貯蔵される精製水の量が増加すると、第1貯水タンク231の水位が上昇する。水位が上昇し水面がオーバフロー流路2313に差し掛かると、精製水はオーバフロー流路2313を伝って第2貯水タンク232へ流れ出す。第1貯水タンク231内に流れ込む精製水量が貯蔵可能量を超えて増加した場合であっても、オーバフロー流路2313によって自動的に精製水を第2貯水タンク232へと導くことができる。
【0043】
第2貯水タンク232は、電磁弁2321を介して恒温槽40に接続され、電磁弁2322を介して反応セル洗浄部13に接続される。システム制御部70は恒温槽40内に精製水を供給する際に、電磁弁2321を開放する。また、システム制御部70は反応セル331の洗浄を行う際に、電磁弁2322を開放する。電磁弁2322が開放されると、第2貯水タンク232内の精製水は反応セル洗浄部13へと導かれる。
【0044】
また、第2貯水タンク232は、電磁弁2323を介して排水管に接続される。システム制御部70は第2貯水タンク232内の水質が悪化したことに応じて電磁弁2323を開放し、精製水を排水管から排出する。また、第2貯水タンク232には、オーバフロー流路2324が設けられ第3貯水タンク233に接続される。
【0045】
第3貯水タンク233は、電磁弁2331を介して外壁洗浄部14に接続される。システム制御部70はサンプルプローブ311及び試薬プローブ322の洗浄を行う際に、電磁弁2331を開放する。電磁弁2331が開放されると、第3貯水タンク233内の精製水は外壁洗浄部14へと導かれる。
【0046】
また、第3貯水タンク233は、電磁弁2332を介して排水管に接続される。システム制御部70は第3貯水タンク233内の水質が悪化したことに応じて電磁弁2332を開放し、精製水を排水管から排出する。
【0047】
分析データ処理部50は、分析部30の反応部33から出力された波長成分情報を解析する演算部51と、演算部51で作成された分析データを保存する記憶部52などから構成される。
【0048】
演算部51は、反応部33から出力された波長分析情報に基づいて、測定されたサンプルに対する所定の測定項目の分析を行う。演算部51は分析情報を算出すると、この分析情報を記憶部52へと出力する。
【0049】
記憶部52は、電気的に書き換えや消去が可能なHDD(Hard Disk Drive)や不揮発性メモリであるフラッシュメモリなどの記憶媒体で構成され、演算部51から出力された分析情報を格納する。
【0050】
出力部60は、印刷部61と表示部62から構成される。
【0051】
印刷部61は、プリンタなどによって構成され、演算部51から出力された分析情報を予め設定されたフォーマットに従ってプリンタ用紙などに印刷出力する。
【0052】
表示部62は、CRTや液晶パネルなどのモニタなどによって構成され、演算部51から出力された分析情報の表示を行う。また、サンプルのID及びサンプルに関連付けられた氏名などの被検体情報を入力する被検体情報入力画面、測定項目毎の分析条件を設定するための分析条件設定画面、サンプル毎に測定項目を設定するための測定項目設定画面などの表示を行う。
【0053】
(精製水の水質悪化により生じる分析誤差)
先述した構成によって、自動分析装置1はサンプルの分析を行う。自動分析装置1の分析動作に伴って、精製水精製部80は精製水を洗浄部10や恒温槽40へと供給する。
【0054】
ここで、精製水タンク81に貯蔵された精製水は、貯蔵された時間が長くなるにつれその水質が悪化すると述べた。精製水の水質の悪化は、自動分析装置1が行う分析動作に様々な誤差を生じさせる。
【0055】
例えば、サンプルプローブ・試薬プローブ洗浄部12で用いられる精製水は、サンプルプローブ311や試薬プローブ322の内部を通過して洗浄槽143から排出される。サンプルプローブ311や試薬プローブ322は内壁の洗浄を行ったあと、プローブ内部に洗浄に用いた精製水を保持したまま次のサンプルや試薬の吸引を行う。ここで、例えば精製水中に不純物やイオンなどが多く含まれる場合には、精製水の密度などが不純物の少ない精製水に比べて増加することとなる。精製水の密度変化は、サンプルや試薬の吸引量に誤差を引き起こし、その結果分析結果に誤差を生じることとなる。
【0056】
また、サンプルプローブ311や試薬プローブ322は内壁の洗浄を行ったあと、プローブ内部に精製水を保持したまま次のサンプルや試薬の吸引を行うために、サンプルや試薬と精製水の一部とが混合してしまう事態が考えられる。この場合、サンプルや試薬と混合した精製水は反応セル331へと吐出されて、反応部33によって分析が行われるために、精製水に不純物やイオンが多く含まれる場合には、分析結果に誤差を生じることとなる。
【0057】
また、システム制御部70は、サンプルプローブ311や試薬プローブ322に取り付けた液面センサを用いて、液面センサが検出した電流の導通量に基づいてプローブが液面に接触したか否かの判断を行っている。サンプルプローブ311や試薬プローブ322は内壁の洗浄を行ったあと、プローブ内部に精製水を保持したまま次のサンプルや試薬の吸引を行うために、精製水中にイオンが多く含まれる場合には、精製水の電導度がイオンの少ない精製水に比べて増加することとなる。精製水の電導度変化は、液面センサが検出する電流の導通量を変化させるために、正しい液面検知が行えない。正しい液面検知が行えないことは、サンプルや試薬の吸引量に誤差を引き起こし、その結果分析結果に誤差を生じることとなる。
【0058】
また、サンプルプローブ311や試薬プローブ322は内壁の洗浄を行ったあと、プローブ内部に精製水を保持したまま次のサンプルや試薬の吸引を行う。このとき、サンプルや試薬の吸引は、精製水とサンプルや試薬との間に規定量の空気層を挟んで行われる。精製水中に細かい気泡などが多く含まれている場合には、空気層がその気泡量によって変化するために、サンプルや試薬の吸引量に誤差を引き起こし、その結果分析結果に誤差を生じることとなる。
【0059】
例えば、測光ユニット333で行う吸光度分析は、恒温槽40に漬かった反応セル331へ向けて発光部が光を照射することで行われる。照射された光は反応セル331内の混合液に加えて、恒温槽40内の精製水を透過して受光部へ到達することとなる。恒温槽40内の精製水に不純物が多く含まれる場合には、受光部へ到達する光もその不純物に応じて変化する。受光部へ到達する光が変化することで、分析結果に誤差を生じることとなる。
【0060】
また例えば、反応セル洗浄部13で行う反応セル331の洗浄は、反応セル331内に精製水を吐出し、これを再び吸引することで行われる。反応セル331内に吐出された精製水が全て吸引しきれなかった場合には、反応セル331内に精製水の一部が残ったまま次のサンプルあるいは試薬の混合が行われることとなる。精製水に不純物が多く含まれる場合には、反応部33で行われる分析に誤差を生じることとなる。
【0061】
また例えば、外壁洗浄部14で行うサンプルプローブ311や試薬プローブ322の洗浄は、サンプルプローブ311や試薬プローブ322の外壁へ精製水を噴きつけることで行う。プローブ外壁に精製水の一部が付着した場合には、サンプルプローブ311や試薬プローブ322は精製水を外壁に付着させたまま次のサンプルあるいは試薬の吸引を行う。精製水に不純物が多く含まれる場合には、プローブ外壁に付着した精製水とサンプルあるいは試薬とが混合してしまうことで、反応部33で行われる分析に誤差を生じることとなる。
【0062】
以上述べたように、サンプルプローブ・試薬プローブ洗浄部12、反応セル洗浄部13、外壁洗浄部14、及び恒温槽40はそれぞれ異なる原因によって誤差を生じる。ところで、精製水の水質悪化に伴って誤差を生じる割合も、その用途に応じてそれぞれ異なる。より具体的には、サンプルプローブ・試薬プローブ洗浄部12は精製水中に含まれる不純物・イオン・気泡が原因となって誤差を生じる。即ち、精製水内の不純物はプローブ内に吸引されたサンプルあるいは試薬に接触し混じり合うため、精製水の僅かな水質の悪化も大きな誤差を生じることとなる。従って、誤差の少ない分析を行うためには、サンプルプローブ・試薬プローブ洗浄部12には不純物・イオン・気泡の少ない、水質の高い水を優先的に供給する必要がある。
【0063】
一方、外壁洗浄部14も精製水中に含まれる不純物が原因となって誤差を生じるが、外壁洗浄部14が使用する精製水に不純物が多かったとしても、プローブ外壁に付着する精製水量は少ない。更に、サンプルプローブ312、試薬プローブ322はサンプルや試薬内へ一定距離以上プローブの先端を侵入させて吸引を行うため、プローブ外壁に付着した精製水はサンプルや試薬に押し出され、結果としてプローブ内部へは僅かな量しか吸引されないこととなる。従って、プローブ外壁に付着した精製水はプローブ内部へ移動したサンプルや試薬と混じることがないため、サンプルプローブ・試薬プローブ洗浄部12に供給する精製水に比べて水質の悪い精製水を使用して洗浄を行った場合であっても、分析結果の誤差は少ない値に保たれる。
【0064】
そこで、本発明においては用途毎に異なる貯水タンクへ精製水を貯蔵する。貯水タンク毎に異なる水質の精製水を貯蔵することにより、誤差を生じやすい用途であるサンプルプローブ・試薬プローブ洗浄部12などへ優先的に水質の高い精製水を供給する。
【0065】
(精製水の給水処理)
図7に各貯水タンクに貯蔵される水質の条件の例を示す。システム制御部70は貯水部20の各三方弁を制御して、各貯水タンクに貯蔵される精製水が図6に示す条件を満たすように精製水の流路を切り替える。具体的には、第1貯水タンク231内の精製水が不足し精製水を精製水精製部80から補充する際に、精製水水質計220の測定した精製水に含まれる菌数が1000個/mlを下回り、且つ電導度が1μS/cmを下回る場合には、システム制御部70は第1貯水タンク231へ精製水を給水する。一方、菌数が1000個/ml以上であるか、あるいは電導度が1μS/cm以上である場合には、システム制御部70は第1貯水タンク231へは給水せず、第3貯水タンク233へ給水する。
【0066】
同様に、第2貯水タンク232内の精製水が不足し精製水を精製水精製部80から補充する際に、精製水に含まれる菌数が10000個/mlを下回り、且つ電導度が10μS/cmを下回る場合には、システム制御部70は第2貯水タンク232へ精製水を供給する。一方、菌数が10000個/ml以上であるか、あるいは電導度が10μS/cm以上である場合には第3貯水タンク233へ精製水を給水する。この動作により、第2貯水タンク232には第3貯水タンク233よりも水質の高い精製水が給水され、第1貯水タンク231には第2貯水タンク232よりも更に水質の高い精製水が優先的に給水されることとなる。
【0067】
また、各貯水タンクに貯蔵される精製水も、貯水タンク内に長時間貯蔵され続けることによってその水質が悪化する。そこで本発明においては、各貯水タンクに水質計を取り付け、各貯水タンクの水質を測定する。水質が悪化した貯水タンクは貯蔵する精製水を排出し、その後新たな精製水を給水する。具体的には、第1貯水タンク231内の精製水に含まれる菌数が1000個/ml以上であるか、あるいは電導度が1μS/cm以上である場合には、システム制御部70は第1貯水タンク231に貯蔵された精製水を排出し、その後精製水を給水する。同様に、第2貯水タンク232内の精製水に含まれる菌数が10000個/ml以上であるか、あるいは電導度が1μS/cm以上である場合には、システム制御部70は第2貯水タンク232に貯蔵された精製水を排出し、その後精製水を供給する。第3貯水タンク233内の精製水に含まれる菌数が10000個/ml以上である場合には、システム制御部70は第3貯水タンク233内の精製水を排水し、排水後に精製水を給水する。精製水の水質が悪化したことに応じて精製水を排出し、その後新たな精製水を給水することで、貯水タンク内に貯蔵される精製水の水質は改善することとなる。
【0068】
なお、本実施例では例として、貯水タンクを切り替える菌数の基準値を1000個/ml、10000個/mlとし、電導度の基準値を1μS/cm、10μS/cmとした。この基準値は例示した値に限られるものではなく、分析結果に対する誤差許容量などに応じて基準値を様々に変化させても構わない。
【0069】
なお、本実施例では菌数及び電導度を用いて水質を測定する例を示した。しかし、水質の測定に用いる項目はこれに限られるものではない。例えば菌数の変わりに不純物数を測定しても構わないし、菌数及び電導度に加えて精製水の水素イオン指数(pH:potential Hydrogen)などを用いて水質を測定しても構わない。
【0070】
図8は、第1貯水タンク231に精製水を供給する処理を示したフローチャートである。以下、図8を用いて精製水の供給処理について述べる。
【0071】
まず、第1水質計221は、第1貯水タンク231に貯蔵された精製水の水質を定期的に測定して、精製水の菌数と電導度をシステム制御部70へ出力する。システム制御部70は、第1貯水タンク231内の精製水の菌数がK1(図7の1000個/cm)以上であるか、あるいは電導度がD1(図7の1μS/cm)以上であるかを判断する(ステップ6001)。システム制御部70が、精製水の菌数がK1以上であるか、あるいは電導度がD1以上であると判断した場合には(ステップ6001のYes)、システム制御部70は電磁弁2312を開放して、第1貯水タンク231中の精製水を排水管より排出する(ステップ6003)。システム制御部70は精製水を排出すると電磁弁2312を再び閉じる。システム制御部70が電磁弁2312を閉じると、精製水水質計220は精製水精製部80から供給される精製水の水質を測定して、菌数と電導度をシステム制御部70へ出力する。システム制御部70は、精製水の菌数がK1を下回り、且つ電導度がD1を下回ると判断すると(ステップ6004のNo)、システム制御部70は三方弁2302を第1貯水タンク231へ向けて開放し、電磁弁2301を開放して、第1貯水タンク231へ精製水を給水し(ステップ6005)、処理を終了する(ステップ6010)。
【0072】
一方、ステップ6001においてシステム制御部70が精製水精製部80から供給される精製水の菌数がK1以上であるか、あるいは電導度がD1以上であると判断すると(ステップ6004のYes)、システム制御部70は三方弁2302及び三方弁2303を第3貯水タンク233に向けて開放し、電磁弁2301を開放して、第3貯水タンク233へ精製水を供給する(ステップ6006)。第3貯水タンク233へ一定量の精製水の供給が行われると、精製水水質計220は再び精製水精製部80から供給される精製水の水質を測定して、菌数と電導度をシステム制御部70へと出力する。システム制御部70は、精製水の菌数がK1を下回り、且つ電導度がD1を下回ると判断すると(ステップ6007のNo)、システム制御部70は三方弁2302を第1貯水タンク231へ向けて開放し、電磁弁2301を開放して、第1貯水タンク231へ精製水を供給し(ステップ6005)、処理を終了する(ステップ6010)。
【0073】
一方、ステップ6007においてシステム制御部70が精製水精製部80から供給される精製水の菌数がK1以上であるか、あるいは電導度がD1以上であると判断すると(ステップ6007のYes)、システム制御部70は第3貯水タンク233へ精製水を供給し始めてから一定時間が経過したか否かを判断する(ステップ6008)。システム制御部70が第3貯水タンク233へ精製水を給水し始めてから一定時間が経過していないと判断すると(ステップ6008のNo)、再びステップ6006へ戻って、第3貯水タンク233への給水を行う(ステップ6006)。一方、システム制御部70が第3貯水タンク233へ精製水を給水し始めてから一定時間が経過したと判断すると(ステップ6008のYes)、即ち、一定時間第3貯水タンク233へ精製水を給水し続けても精製水精製部80が供給する精製水の水質が改善しないと判断すると、システム制御部70は表示部62に精製水精製部80の洗浄を促す旨の警告を表示して(ステップ6009)、処理を終了する(ステップ6010)。
【0074】
一方ステップ6001でシステム制御部70が、第1貯水タンク231内の精製水の菌数がK1を下回り、且つ電導度がD1を下回ると判断した場合には(ステップ6001のNo)、第1貯水タンク231に取り付けられた水位計が第1貯水タンク231の水位を検知し、システム制御部70へ出力する。システム制御部70は、第1貯水タンク231の水位が所定の給水水位以下であるか否かを判断する(ステップ6002)。システム制御部70が、第1貯水タンク231の水位が給水水位を下回ると判断すると(ステップ6002のYes)、システム制御部70は先述したステップ6004へ移行し給水処理を続ける。一方、システム制御部70が、第1貯水タンク231の水位が給水水位を上回ると判断すると(ステップ6002のNo)、システム制御部70は処理を終了する。
【0075】
図9は、第2貯水タンク232に精製水を供給する処理を示したフローチャートである。第2貯水タンク232への給水処理は、ステップ7001、ステップ7002、ステップ7004、ステップ7007での水質判断の基準値がK1からK2に、D1からD2に置き換わったこと、給水および排水に係る三方弁及び電磁弁が異なることを除いて第1貯水タンク231への給水処理と同じであるため、説明を省略する。
【0076】
図10は、第3貯水タンク233へ精製水を供給する処理を示したフローチャートである。以下、図10を用いて精製水の供給処理について述べる。
【0077】
まず、第3水質計233は、第3貯水タンク233に貯蔵された精製水の水質を定期的に測定して、精製水の菌数をシステム制御部70へ出力する。システム制御部70は、第3貯水タンク233内の精製水の菌数がK3(図7の10000個/cm)以上であると判断した場合は(ステップ8001のYes)、システム制御部70は電磁弁2332を開放して、第3貯水タンク233内の精製水を排水管より排出する(ステップ8005)。システム制御部70は精製水を排出すると電磁弁2332を再び閉じる。システム制御部70が電磁弁2312を閉じると、精製水水質計220は精製水精製部80から供給される精製水の水質を測定して、菌数をシステム制御部70へ出力する。システム制御部70が精製水の菌数がK3を下回ると判断すると(ステップ8006のYes)、システム制御部70は三方弁2302及び三方弁2303を第3貯水タンク233へ向けて開放し、電磁弁2301を開放して、第3貯水タンク233へ精製水を供給して(ステップ8005)処理を終了する(ステップ8007)。
【0078】
一方、ステップ8006においてシステム制御部70が精製水精製部80から供給される精製水の菌数がK3以上であると判断すると(ステップ8006のYes)、システム制御部70は三方弁2302及び三方弁2303を第3貯水タンク233に向けて開放し、更に電磁弁2301及び電磁弁2332を開放して、精製水精製部80から供給される精製水を排水管から一定量排水する(ステップ8008)。システム制御部70は一定量の排水を行うと、精製水水質計220は再び精製水精製部80から供給される精製水の水質を測定して、菌数をシステム制御部70へと出力する。システム制御部70は、精製水の菌数がK1を下回ると判断すると(ステップ8009のNo)、システム制御部70は電磁弁2332を閉じ、第3貯水タンク233へ給水を行って(ステップ8007)、処理を終了する(ステップ8012)。
【0079】
一方、ステップ8009においてシステム制御部70が精製水の菌数がK3以上であると判断すると(ステップ8009のYes)、システム制御部70は第3貯水タンク233へ精製水を供給し始めてから一定時間が経過したか否かを判断する(ステップ8010)。システム制御部70が第3貯水タンク233へ精製水を給水し始めてから一定時間が経過していないと判断すると(ステップ8010のNo)、再びステップ8008へ戻って、第3貯水タンク233への給水を行う(ステップ8008)。一方、システム制御部70が第3貯水タンク233へ精製水を給水し始めてから一定時間が経過したと判断すると(ステップ8010のYes)、即ち、一定時間第3貯水タンクへ精製水を供給し続けても精製水精製部80が供給する精製水の水質が改善しないと判断すると、システム制御部70は表示部62に精製水精製部80の洗浄を促す旨の警告を表示して(ステップ8011)、処理を終了する(ステップ8012)。
【0080】
一方、ステップ8001においてシステム制御部70が、第3貯水タンク233内の精製水の菌数がK3を下回ると判断した場合には(ステップ8001のNo)、第3貯水タンク233に取り付けられた水位計が第3貯水タンク233の水位を検知し、システム制御部70へ出力する。システム制御部70は、第3貯水タンク233の水位が所定の給水水位以下であるか否かを判断する(ステップ8002)。システム制御部70が第3貯水タンク3の水位が給水水位を下回ると判断すると(ステップ8002のYes)、システム制御部70は先述したステップ8006へ移行し給水処理を続ける。一方、システム制御部70が、第3貯水タンク233の水位が給水水位を上回ると判断すると、システム制御部70は続けて第3貯水タンク233の水位が所定の排水水位を上回るか否かを判断する(ステップ8003)。ここで排水水位とは、第3貯水タンク233の貯水可能量を超えた給水を防ぐために設けられる値であり、第3貯水タンク233の貯水可能量に近い値が割り当てられる。システム制御部70が第3貯水タンクの水位が所定の排水水位を上回ると判断すると(ステップ8003のNo)、システム制御部70は電磁弁2332を開放して、第3貯水タンク内の精製水を一定量排出して(ステップ8004)、処理を終了する(ステップ8012)。一方システム制御部70が第3貯水タンクの水位が所定の排水水位を下回ると判断すると(ステップ8003のYes)、そのまま処理を終了する(ステップ8012)。
【0081】
以上の述べた構成によると、自動分析装置1の貯水部20には、第1貯水タンク231、第2貯水タンク232、及び第3貯水タンク233の3つの貯水タンクが設けられる。各貯水タンクには水質計が設けられ、水質の良い精製水は優先的に第1貯水タンク231へ蓄えられる。これにより、自動分析装置1は精製水の水質悪化に従って分析に誤差の生じやすいサンプルプローブ・試薬プローブ洗浄部12に対して、優先的に良い水質の精製水を供給することができる。
【0082】
一方、精製水精製部80から供給される精製水の水質が僅かに悪化し、サンプルプローブ・試薬プローブ洗浄部12が用いるのに満たない水質となった場合であっても、自動分析装置1は精製水を第2貯水タンク232あるいは第3貯水タンク233に蓄える。この精製水は、サンプルプローブ・試薬プローブ洗浄部12に比して水質悪化に対しても分析の誤差を生じにくい恒温槽40、反応セル洗浄部13、外壁洗浄部14へと供給される。精製水の水質が僅かに悪化した場合であっても、分析の誤差を生じにくい用途に精製水を使用するため、結果として精製水をより効率的に使用することができる。
【0083】
精製水精製部80は、フィルタ83及びイオン交換樹脂84を用いて水道水を濾過することで精製水を精製するが、フィルタ83及びイオン交換樹脂84は濾過量が増加するにつれその性能が悪化してしまう。精製水を効率的に使用することで、フィルタ83及びイオン交換樹脂84の使用寿命を延ばすことができる。
【0084】
また、本構成によれば各貯水タンクには水質計が取り付けられ、その水質が悪化した場合には貯水タンク内の精製水を排出し、新たな精製水を給水する動作を行う。水質計が貯水タンク内の精製水の水質を常に監視することにより、精製水の水質は常に一定以上に保たれる。精製水の水質を常に一定以上に保つことにより、精製水の水質悪化が原因となる分析誤差の発生を防ぐことができる。
【0085】
本発明は、上述の実施例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内において、種々の形態で実施することが可能である。
【0086】
例えば、本実施例において第1貯水タンク231はサンプルプローブ・試薬プローブ洗浄部12へ給水する例を示した。しかし、第1貯水タンク231の給水先はこれに限られるものではなく、例えば恒温槽40にも精製水を給水するものであっても構わない。この構成によれば、恒温槽40にも脱気された精製水が用いられるため、反応部33による吸光度測定を行う際に、気泡が原因となって生じる誤差を防ぐことができる。
【0087】
また例えば、本実施例においては貯水部20を構成する貯水タンクの数を3つとした。しかし、貯水タンクの数はこれに限られるものではなく、2つの貯水タンクで貯水部20を構成しても構わないし、それ以上の数で構成しても構わない。
【0088】
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宣な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。あるいは、異なる実施例にわたる構成要素を適宣組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0089】
1 自動分析装置
10 洗浄部
12 サンプルプローブ・試薬プローブ洗浄部
13 反応セル洗浄部
14 外壁洗浄部
20 貯水部
22 水質検出部
30 分析部
31 サンプル部
32 試薬部
33 反応部
40 恒温槽
41 恒温水
50 分析データ処理部
51 演算部
52 記憶部
60 出力部
61 印刷部
62 表示部
70 システム制御部
71 操作部
80 精製水精製部
81 精製水タンク
83 フィルタ
84 イオン交換樹脂
85 給水ポンプ
121 プローブ洗浄ポンプ
131 反応セル吐出ポンプ
132 吐出口
133 吸出口
134 反応セル吸出ポンプ
141 外壁洗浄ポンプ
142 吐出口
143 洗浄槽
220 精製水水質計
221 第1水質計
222 第2水質計
223 第3水質計
231 第1貯水タンク
232 第2貯水タンク
233 第3貯水タンク
311 サンプルプローブ
312 サンプルプローブ
322 試薬プローブ
331 反応セル
332 攪拌子
333 測光ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル及び試薬を容器に分注してその混合液を測定する自動分析装置において、
精製水の水質を測定する水質測定手段と、
前記水質測定手段が測定した精製水の水質に基づいて、第1の貯水タンクあるいは第2の貯水タンクへ精製水を給水する給水手段と
を有することを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
サンプルあるいは試薬を吸引及び吐出する分注プローブと、
前記第1の貯水タンクに貯蔵された精製水を用いて前記分注プローブを洗浄する分注プローブ洗浄手段と
を更に有することを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記分注プローブが吐出したサンプルあるいは試薬を貯蔵する反応セルと、
前記第2の貯水タンクに貯蔵された精製水を用いて前記反応セルを保温する恒温槽とを更に備え、
前記給水手段は、前記水質測定手段が測定した精製水の水質が所定の水質を下回る場合に前記第2の貯水タンクへ精製水を給水する
ことを特徴とする請求項2に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記第1の貯水タンク及び前記第2の貯水タンクに蓄えられた精製水の水質を測定する貯水タンク水質測定手段とを更に備え、
前記給水手段は、前記貯水タンク水質測定手段が測定した前記第1の貯水タンクあるいは前記第2の貯水タンクに蓄えられた精製水の水質が所定の水質を下回る場合に、前記所定の水質を下回る貯水タンクへ精製水を給水する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の自動分析装置。
【請求項5】
サンプル及び試薬を容器に分注してその混合液を測定する自動分析装置において、
精製水を蓄える貯水タンクと、
前記貯水タンクに蓄えられた精製水の水質を測定する水質測定手段と、
前記水質測定手段が測定した精製水の水質が所定の水質を下回る場合に、精製水を前記貯水タンクへ給水する給水手段と
を有することを特徴とする自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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