説明

自動分析装置

【課題】処理能力を向上させ、データの信頼性を確保し、溶血するための液体例えば前処理液および試料の消費量を最小限に抑え効率的に分析ができる自動分析装置を提供すること。
【解決手段】試料と試薬を反応させた反応液を保持する反応セルと、試料を保持する試料容器から所定量の試料を前記反応セルに分注する試料分注プローブと、試料と試薬の反応液を分析する分析部を備えた自動分析装置において、前記試料容器に全血試料が保持されている場合、前記試料分注プローブで所定量の試料を吸引した後、吸引した試料を前記反応セルに吐出する際に、該試料とともに該試料分注プローブ内の溶血作用を果たす液体を前記反応セルに吐出する機能を備えた自動分析装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液や尿などの多成分を含む試料中の目的成分の濃度又は活性値を測定する自動分析装置に係り、特に、複数個の反応セルを順次移送しながら、各反応セルに試料および試薬を順次分注し、その反応セルの中の反応液を分光光度計にて所定の時間間隔で吸光度を測光する自動化学分析装置に関するものである。このような自動分析装置はその他の試料の化学分析一般にも利用される。
【背景技術】
【0002】
血液や尿などの成分を分析する自動分析装置は、反応セル内に分注された液体試料と試薬を化学反応させ、反応液にハロゲンランプなどにより光を照射して吸光度を測定し液体試料の成分を分析するものである。
【0003】
ヘモグロビンA1c(以下、HbA1cと略記する)は、糖尿病の診断マーカとして使用されており、基準範囲は4.3〜5.8%である。HbA1cの半減期は約30日で、その血中濃度は先行する約2ヶ月間の平均血糖値を反映し、長期の血糖コントロールの指標として重要である。
【0004】
自動分析装置でHbA1c(%値)を測定する際には、例えば図4に示すHbA1c試薬を使って測定される。測定手順は、精製水あるいは前処理液などの溶血をさせるための液体を用いて血球あるいは全血を決まった希釈率例えば100倍に希釈させて試料を溶血させ、溶血試料と試薬を反応させて吸光度から求めたヘモグロビン(以下、Hbと略する)の濃度およびHbA1cの濃度から、Hbに占めるHbA1cの割合(%値)を求めることにより測定することができる。
【0005】
先述の溶血とは、赤血球の細胞膜破壊よって起こる現象であり、これは物理的,化学的,生物的なさまざまな要因によって発生させることができる。例えば精製水などの浸透圧が低い溶液(低張液)に赤血球を混ぜると、浸透圧の違いによって、細胞外の水が半透膜である細胞膜を通過して細胞内に流れ込みつづけ、最終的に赤血球が破裂することなどが、代表的な溶血現象である。
【0006】
ここで通常自動分析装置において主に使用される試料である血清あるいは尿に対して、例えば図4に示したHbA1c試薬は試料として溶血試料を使う点が異なっている。血液から血清部分を抽出するには、前処理として採血後の採血管(例えば凝固促進剤入り生化学用採血管)を遠心分離器にかけることにより、下層に血球層、上層に血清層に分離できる。そのまま採血管を装置サンプルディスクにセットし試料分注プローブにより、採血管上澄みの血清層より試料として血清を吸引し、反応容器へ血清を分注することにより成分測定が開始される。
【0007】
それに対し、HbA1c測定に必要な溶血試料を作製し、装置サンプルディスクにセットするまでの前処理の例としては、採血後の採血管(例えば抗凝固剤入りEDTA採血管)を遠心分離器にかけ、下層に血球層、上層に血しょう層に分離させる。つぎに下層血球層から一定量血球を採取し、溶血するための液体として例えば精製水を用いて血球量に対して決まった希釈率例えば100倍に希釈させて血球を溶血させる。溶血処理済み試料を装置サンプルディスクにセットし試料分注プローブにより試料を吸引し、反応容器へ分注することによりHbA1c測定が開始される。
【0008】
従来この試料溶血するまでの前処理を顧客自身が用手法によるマニュアルで実施していたため、処理が繁雑であり時間を要していた。そのため顧客からは、自動分析装置による血球あるいは全血試料の溶血処理の自動化が要望されていた。
【0009】
一方自動分析装置による溶血処理の自動化にあたり、溶血試料の作製方法は溶血試料を使った測定項目である例えばHbA1c測定試薬に合わせたシステムでなければならない。
【0010】
HbA1c測定試薬の特徴は、試薬毎に、試料として使用する血球を決まった希釈率で溶血させる(あるいは溶血後メト化)必要がある。この希釈率が大きく異なると溶血試料濃度が薄くなりすぎたり、濃くなりすぎてしまいHbA1c測定試薬の測定範囲から外れてしまいHbA1c(%値)を測定できなくなってしまう。また、図4に示すようにHb濃度測定試薬とHbA1c濃度測定試薬は別の測定系であるため、例えば反応容器No1には、Hb濃度測定用として溶血済み試料を分注し、反応容器No2には、HbA1c濃度測定用として溶血済み試料を分注し、それぞれの反応容器内で分析を行い、Hb濃度とHbA1c濃度をそれぞれ求め、求めたHb濃度およびHbA1c濃度から、Hbに占めるHbA1cの割合(%値)を求めることにより測定される。本測定系では、Hb濃度とHbA1c濃度の割合が重要であり、Hb濃度とHbA1c濃度値のどちらか一方の値が間違っていたとすると、結果的に必要とされるHbA1c(%値)自体が間違った結果を出力してしまうこととなる。
【0011】
装置性能を支配する誤差因子として、試料分注系,試薬分注系,測光系,洗浄系など挙げられるが、特に性能を支配する誤差因子の大きい試料分注精度は、特に重要であり、溶血済み試料の分注精度が重要となってくる。まとめると自動化に当たっての留意点として、1つ目として血球を決まった希釈率で溶血させる必要がある。二つ目として溶血済み試料を、Hb濃度測定用とHbA1c濃度測定用の2箇所に精度良く一定量分注させる必要があることが挙げられる。
【0012】
上記二つの留意点を踏まえた自動分析装置による溶血処理の自動化方法が提案された。一つ目として血球を決まった希釈率で溶血させる手段として、試料と試薬を攪拌反応させ測光分析するために使用する反応セルを血球の溶血処理用の容器として利用する。血球は試料分注プローブを使い反応セルへ分注し、溶血させるための液体は試薬分注プローブを使って前記反応セルに分注した後、攪拌機構により攪拌し溶血させる。以上のように分注プローブを使うことにより精度良く血球あるいは溶血させるための液体を分注させることができるため、1つ目の課題である決まった希釈率での溶血が達成できる。二つ目としては溶血済み試料を、Hb濃度測定用とHbA1c濃度測定用の2箇所に精度良く一定量分注させる手段は、先に溶血処理に利用した反応容器内の溶血済み試料から、試料分注プローブを使って、Hb濃度測定用とHbA1c濃度測定用の反応セルにそれぞれ分注することにより達成することができる。これにより2つ目の課題である精度良く一定量分注することが可能となり、結果としてHbA1c(%値)を精度良く測定することが可能となる。
【0013】
以上の溶血処理を適用した自動分析装置の動作例を図6に示す。まず検体の入った採血管106を遠心分離して沈降した血球部分104から試料分注プローブ101にて一定量反応セル211へ血球を分注した後、溶血させるための液体、例えば前処理液を分注、攪拌機構による攪拌にて血球を溶血させ、溶血させた試料を当該反応セルから測定必要量を別の反応セルへ溶血試料を分注し、測定試薬と溶血試料を反応させてHbA1c(%値)を測定する手段が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0014】
一方、近年になって自動分析装置向けのHbA1c測定試薬として、例えば図5に示す測定手順のHbA1c試薬が発売されてきている。
【0015】
まず図5のHbA1c試薬の指示に従い、血球と溶血させるための液体を一定量反応セルへ分注後攪拌する。例えば血球に対して26倍希釈率の前処理液(血球:6μL、前処理液:150μL)を反応容器へ分注後、攪拌機構により攪拌して溶血させる。次に溶血済み試料を、別の反応セル中にHbA1c試薬測定に必要な量、例えば8μL分注し、第1反応(Hb濃度測定)をさせるために第1試薬を分注例えば120μL分注,攪拌,反応させHb濃度を求める。つづいて第1反応が終了した反応液中にそのまま第2反応(HbA1c濃度測定)をさせるために第2試薬を分注例えば40μL分注,攪拌,反応させHbA1c濃度を求める。求めた二つの濃度(Hb濃度とHbA1c濃度)からHbA1c(%値)を求める手順である。以上のように図5に示した測定法の特徴としては、第1試薬でHb濃度を求め、第2試薬でHbA1c濃度を求めることができるため、従来法の図4に示したA社製試薬と比べ、試薬の種類が減り、測定の簡便化、試料分注を一回で済ませることができるなど、迅速測定,ランニングコストの面などでいろいろと有利となる。装置側からみて特質すべき点は、Hb濃度とHbA1c濃度を測定するための、溶血試料が、図5に示すように同じ試料を用いて測定できるため、試薬の測定可能な濃度範囲内で、試料分注精度のばらつきが存在しても、HbA1c(%値)は精度良く測定することができる。言い換えると、HbA1c(%値)はHb濃度とHbA1c濃度の割合から求められるため、溶血試料量が異なることによって、Hb濃度およびHbA1c濃度がばらついた濃度を算出したとしても、同じ比率で濃度値も異なることから、結果的に必要とするHbA1c(%値)は精度良く求めることができる点である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特許第3763212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、従来技術の自動化方式では、第1段階として血球あるいは全血試料の溶血処理ステップ、つづいて第二段階として上記溶血済み試料からHbA1c(%値)を測定するために必要な溶血済み試料量分だけ別な反応セルへ再分注する2つの工程となっていたため、装置処理能力の低下を招いていた。
【0018】
また、上記溶血処理工程によりHbA1c(%値)を測定するために、第1段階の溶血処理ステップにおいて、本来測定に必要な試料量(血球あるいは全血)以上の血球あるいは全血を装置反応セルに分注する必要があったため、反応容器に付着した血球成分が、測定後に自動的に実施される反応セル洗浄では落としきれずに、反応セルに残った血球成分が次項目の測定値に悪影響を及ぼすこともあった。本悪影響を回避するために溶血処理をするため使用した反応セル(例えば溶血処理のために必要である6μL血球を反応セル中に分注しているが、実際のHbA1c測定に必要な血球量は1/20相当の0.3μLである。)に対して、反応セル特殊洗浄機能により洗浄を実施した場合、更なる処理能力低下を招くことにもなっていた。また溶血するための液体例えば前処理液などを使用した場合、第1段階の溶血処理ステップで使用する血球量が多いためにHbA1c(%値)測定に必要な量以上に前処理液を使用することとなり、ランニングコストが余分にかかっていた。
【0019】
さらには、試料採取における患者への負担の軽減,生態汚染物質の削減などに対しても、試料である血球の少量化は重要である。
【0020】
現在自動分析装置は、ランニングコスト低減を目的に1項目あたりの試薬消費量低減を実現させる反応液量の低減が課題となっている。現状の試薬と試料の比率を維持しつつ反応液量を低減するためには、試料の分注量を低減する必要があり、現在の自動分析装置の技術では、試料分注量の精確さを確保できる量として、例えば最低試料分注量1.5μLとなっている。逆に言えば1.5μL未満の試料分注量の精度は、自動分析装置の性能として必要とされるスペックを満たせないため装置側では通常設定できないようになっている。
【0021】
このような技術背景を元に、従来の自動分析装置を使った溶血処理は、例えば試料を溶血させるために、採血管底の血球を、試料分注プローブを使って精確さを確保できる1.5μL以上の設定量にて反応セルへ分注し、その中に試薬分注プローブを使って、同じように精確さを確保できる設定量にて、溶血させるための液体(精製水あるいは前処理液など)を決められた希釈率例えば26倍希釈(例えば、血球6μL、前処理液150μL)にて分注後、攪拌機構による攪拌により溶血処理を実施していた。つまり、HbA1c(%値)測定のために、求めるHb濃度が測定濃度範囲内に納まるように決められた希釈率で血球と溶血するための液体を希釈させる必要があるため、自動分析装置が成分分析を実施するための一連の動作、つまり反応セル中へ、精確さを確保された試料分注プローブにより血球を分注し、精確さを確保された試薬分注プローブにより溶血させるための液体を分注し、その混合液を、反応液を攪拌させるための攪拌機構によって、攪拌を実施し溶血させていた。
【0022】
一方、近年の自動分析装置向けのHbA1c測定試薬は、図5に示すような測定手法の試薬が発売されている。特徴としては、第1試薬でHb濃度を求め、第2試薬でHbA1c濃度を求めることができ、試料は同じ溶血試料を用いて測定しているため、試薬の測定範囲内で、溶血試料の分注精度のばらつきが存在しても、求めるHbA1c(%値)は精度良く測定することができる。言い換えると、HbA1c(%値)はHb濃度とHbA1c濃度の割合から求められるため、溶血試料量が異なることによって、Hb濃度およびHbA1c濃度がそれぞればらついた濃度値を算出したとしても、同じ比率でばらつくことから、結果的に求めるHbA1c(%値)は精度良く求めることができる点である。
【0023】
従来の自動分析装置の考えは、試料と試薬と測定結果の関係が、1つの試料から1系統(例えば2試薬系)の試薬を使って1つの測定結果を測定するのが原則である。
【0024】
装置性能を支配する誤差因子として、試料分注系,試薬分注系,測光系,洗浄系など挙げられるが、特に性能を支配する誤差因子の大きい試料分注精度は、特に重要であり、装置は精確さが確保できる範囲内でしか設定できないようになっている。しかしながら、先述した図5のHbA1c試薬の特徴は、1つの試料から1系統の試薬を使って、2濃度(Hb濃度とHbA1c濃度)を求めその割合から1つの測定結果(HbA1c%)を求めるため、試料分注精度が1.5μL未満の精確さが確保できない領域であっても、HbA1c%を精度良く求めることが可能といえる。
【0025】
本発明は、処理能力を向上させ、データの信頼性を確保し、溶血するための液体例えば前処理液および試料の消費量を最小限に抑え効率的に分析ができる自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記目的を達成するための本発明の構成は以下の通りである。
【0027】
試料と試薬を反応させた反応液を保持する反応セルと、試料を保持する試料容器から所定量の試料を前記反応セルに分注する試料分注プローブと、試料と試薬の反応液を分析する分析部を備えた自動分析装置において、前記試料容器に全血試料が保持されている場合、前記試料分注プローブで所定量の試料を吸引した後、吸引した試料を前記反応セルに吐出する際に、該試料とともに該試料分注プローブ内の溶血作用を果たす液体を前記反応セルに吐出する機能を備えた自動分析装置。
【0028】
試料分注プローブにて、HbA1c試薬測定のために必要量だけ採血管底から血球を吸引し、血球を吸引後にプローブ外壁を洗浄液にて洗浄し外壁に付着した血球を除去することで、プローブ付着試料の持ち込みによる精確さ低下を低減させた後、血球吸引後の試料分注プローブを反応セル底に移動させ、プローブ内のシステム水(精製水)あるいは溶血させるための液体で血球を押し出す勢いによって、血球と溶血するための液体とを攪拌させて溶血処理させることによって、HbA1c測定に使用する反応セル内に、必要濃度に溶血された必要量の試料が1回の試料分注プローブの分注動作によって完結されるため、従来の自動分析装置のハード構成を変更することなく、従来の2つの工程からなる溶血処理が、1つの工程に減るため、処理能力を向上させることができる。また、溶血するためだけに使用していた反応セルは必要がなくなるため、反応セルに付着した血球の洗浄不足による次項目への悪影響を排除できデータの信頼性に対しても寄与できる。さらに溶血に使用するための血球はHbA1c試薬測定に必要な量のみの分注量に抑えることができ、溶血に必要な精製水あるいは前希釈液は最小限に抑えることができるため、患者への負担,環境への配慮およびランニングコストも抑えることができる。
【0029】
また自動分析装置による溶血処理工程の設定は、試薬の測定法により、従来の2つの工程による溶血処理あるいは本発明の1つの工程による溶血処理のどちらかを選択できるような構成とすることもできる。
【発明の効果】
【0030】
処理能力を向上させ、データの信頼性を確保し、溶血するための液体例えば前処理液および試料の消費量を最小限に抑え効率的に分析ができる自動分析装置を提供するができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施例における、本発明による自動分析装置の溶血処理手段を示した図である。
【図2】本発明の実施例における自動分析装置の構成図である。
【図3】図2における試料分注プローブおよびその周囲の部分拡大図である。
【図4】本発明の実施例における従来からあるHbA1c測定試薬の測定方法を示した図である。
【図5】本発明の実施例における近年のHbA1c測定試薬の測定方法を示した図である。
【図6】本発明の実施例における従来自動分析装置による溶血処理手段を示した図である。
【図7】本発明の実施例におけるHbA1c測定試薬の測定結果を条件別にシュミレーションした結果を示した図である。
【図8】本発明の実施例における溶血処理手段のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明における自動分析装置について図面を用いて説明する。図2は本発明の実施例に係る自動分析装置の構成例を示している。液体試料が入った容器をセットする試料ディスク201,液体試料を試料ディスク201上にセットされた容器から一部採取(分注)する試料分注機構204,液体試料と試薬を反応させる反応セル211およびその保持具である反応ディスク206,測定項目に応じた試薬をセットする試薬ディスク202,210,試薬の分注を行う試薬分注機構203,209,反応セル211中に分注された液体試料と添加された試薬の反応を安定させるために反応溶液を攪拌する攪拌機構208,反応セル中の廃液の吸引および洗浄を行う洗浄機構207、そしてこれらの機構および分析の制御部からなる。また、液体試料のセットは、試料ディスクの代わりに試料ラックによるものであっても構わない。試薬分注の移動機構についても試薬プローブが回転移動の代わりにXY機構による平面移動であっても構わない。
【0033】
以上の構成の自動分析装置における従来の溶血処理方法を、試料分注機構の拡大図である図3、および溶血処理を説明するための説明図の図6を用いて簡単に説明する。
【0034】
図6は従来の血球成分溶血処理工程を示した図である。図3に示すように、試料分注機構204の反応セル211での吸引・吐出可能位置は、通常の試料吐出位置305に加えて溶血試料吸引位置304の2ヶ所ある。溶血処理工程のシーケンスは、はじめに採血後の採血管を遠心分離により、血しょう部分105と血球部分104に分離したのち、試料ディスク201に採血管106をセットし、試料分注機構204にて、採血管底の血球部分104から血球を吸引し、反応セル211上通常の試料吐出位置305に血球を分注する。続いて反応ディスク206は回転移動し、試薬の吐出位置で試薬分注機構203により、溶血させるための液体例えばシステム水あるいは測定試薬専用の前処理液を加え、攪拌機構208により攪拌し、血球を溶血させ溶血試料とする。この実施例では反応ディスクの回転は1サイクルで1/4周+1ポジション進む構成としているため、図2の場合に溶血試料の分注された反応セル211は、4サイクル後の1周+4ポジション進んだ溶血試料吸引位置304で停止する。この停止中に、試料分注プローブで溶血試料を吸引し、通常の試料吐出位置305にある空の反応セル211に分析に使用する量だけ溶血試料を分注する。その後、反応セル211に入ったHb測定用試薬やHbA1c測定用試薬を試薬分注機構203,209にて分注後、攪拌機構208にて攪拌させ、反応液を光度計205により測光することにより濃度を求め、求めたHb濃度とHbA1c濃度の割合から、求めるHbA1c(%値)を算出する。
【0035】
一方、自動分析装置に求められている性能条件として、精密さの許容誤差限界(%)は、個体内生理的変動のCVの1/2以下となっている(測定の精密さを表す変動係数)。よって自動分析装置は精密さの許容誤差限界(%)を満足させるために、性能を支配する因子である、試料分注系,試薬分注系,測光系,洗浄系などそれぞれの誤差を積み重ね、装置トータル誤差として精密さの許容誤差限界(%)以下に収まるように装置設計されている。特に性能を支配する誤差因子の大きい試料分注精密さは、例えばCV1%以内に収まるように設計され、それを越えてしまうと、結果的に精密さの許容誤差限界(%)を満足しない場合がでてきてしまう。よって試料分注量誤差が技術的にCV1%を超えてしまう領域、例えば1.5μL未満の微量分注領域では分注することができないよう、パラメータ設定できないように通常装置プロテクトがかかっている。
【0036】
ここで、自動分析装置を使って従来の2つの工程による溶血処理によって溶血した試料を、図4で示したHbA1c試薬を使って測定した場合、どのような測定結果になるかを、装置トータル誤差を仮定してシュミレーションしてみた。
【0037】
図7の条件1の結果が、今回の場合のシュミレーション結果になる。例えばHb濃度を求めるための分析パラメータが、溶血試料分注量:10μL、第1試薬分注量:150μLの1エンドポイント法だったとする。試料分注量10μLの誤差がCV1%とし、試料分注量誤差を含めた装置トータル誤差がCV1.5%であると仮定してHb(g/dL)濃度の測定値サンプルを統計処理によりN=20算出してみた。同じようにHbA1c濃度を求めるための分析パラメータが、溶血試料分注量:7μL、第1試薬分注量:180μL、第2試薬分注量:40μLの2ポイントエンド法であるとする。試料分注量:7μLの誤差がCV1%とし、試料分注量誤差を含めた装置トータル誤差がCV1.5%であると仮定してHbA1c(g/dL)濃度の測定値サンプルを統計処理によりN=20算出してみた。求めた濃度からJDSグリコヘモグロビン標準化HbA1c(%)への換算式である式(1)より、HbA1c(%)を求めて、精密さのチェックを実施してみた。
HbA1c(%)=0.7×HbA1c(g/dL)
/Hb(g/dL)×100+2.6 …式(1)
【0038】
結果、図7の条件1に示すように、求めたHbA1c(%値)は、平均値5.62(%値)、Range0.2(%値)、CV0.88(%)となり、HbA1c(%値)の精密さは基準範囲4.3〜5.8%値に対してRangeが0.2%値と良好であり、臨床的に使用できる性能が得られることが確認できた。
【0039】
この結果に対して、仮に試料分注量誤差が大きい自動分析装置を使って図4で示したHbA1c測定試薬を使って測定した場合、どのような測定結果になるかを、同様にシュミレーションした結果を図7の条件2に示す。例えばHb濃度を求めるための試料分注量10μLの誤差がCV9%とし、試料分注量誤差を含めた装置トータル誤差がCV10%であると仮定してHb(g/dL)濃度の測定値サンプルを統計処理によりN=20算出してみた。同じようにHbA1c濃度を求めるための試料分注量7μLの誤差がCV9%とし、試料分注量誤差を含めた装置トータル誤差がCV10%であると仮定してHbA1c(g/dL)濃度の測定値サンプルを統計処理によりN=20算出してみた。求めた濃度からJDSグリコヘモグロビン標準化HbA1c(%)への換算式である式(1)より、HbA1c(%)を求めて、精密さのチェックを実施してみた。
【0040】
結果、図7の条件2に示すように、求めたHbA1c(%値)は、平均値5.70(%値)、Range1.1(%値)、CV4.99(%)となり、HbA1c(%値)の精密さは基準範囲4.3〜5.8%値に対してRangeが1.1%値とばらつきが大きく、臨床的に使用できるレベルではないことが確認できた。
【0041】
一方、仮に試料分注量誤差が大きい自動分析装置を使って、図5で示したHbA1c測定試薬を使って測定した場合、どのような測定結果になるかを、同様にシュミレーションした結果を図7の条件3に示す。例えばHb濃度を求めるための分析パラメータが、溶血試料分注量:8μL、第1試薬分注量:120μLの1エンドポイント法だったとする。HbA1c濃度を求めるための分析パラメータが、溶血試料分注量:8μL、第1試薬分注量:120μL、第2試薬分注量:40μLの2ポイントエンド法であるとする。本実施例の試薬の場合、図5に示すように共通の溶血試料を使って、第1試薬分注でHb濃度を求め、引き続きその中に第2試薬を入れてHbA1c濃度を求めることとなる。よって精密さの確認として試料分注量にのみ着目してみると試料分注毎に分注量がばらついたとしても、結果的に同じ比率でHb濃度とHbA1c濃度もばらつくこととなる。したがってシュミレーションの仕方としては、試料分注量:8μLの誤差がCV10%として、Hb濃度(μmol/L)とHbA1c濃度(μmol/L)が同じ比率でばらつくように測定値サンプルを統計処理によりN=20算出してみた。さらに算出したそれぞれの結果に対して試料分注量誤差以外の誤差分CV0.5%として、再度測定値サンプルを統計処理により算出した。求めた濃度からJDSグリコヘモグロビン標準化HbA1c(%)への換算式である式(2)より、HbA1c(%)を求めて、精密さのチェックを実施してみた。
HbA1c(%)=96.3×HbA1c(μmol/L)
/Hb(μmol/L)+1.62 …式(2)
【0042】
結果、図7の条件3に示すように、求めたHbA1c(%値)は、平均値5.32(%値)、Range0.2(%値)、CV0.83(%)となり、HbA1c(%値)の精密さは基準範囲4.3〜5.8%値に対してRangeが0.2%値と良好であり、臨床的に使用できる性能が得られることが確認できた。
【0043】
以上のように、試料分注量誤差が大きい場合、通常の測定試薬においては精密さの許容誤差限界(%)を満足させることができなく臨床的に使うことができないが、図5で示したHbA1c試薬の場合、Hb濃度およびHbA1c濃度の精密さのばらつきが大きくても、臨床的に必要とされるHbA1c(%値)の精密さは良好となるため、HbA1c試薬と装置システムとしては問題ないこととなる。言い換えれば、溶血試料の分注精度の精密さを確保するために、従来の自動分析装置による溶血処理は2つの工程にわけて実施していたが、図5に示すHbA1c試薬であれば、精密さが確保されていなくても臨床的にも測定可能なため、試料分注精度を確保できない新たな溶血処理手段が発明できれば適応可能といえる。よって、新たな溶血処理手段の発明にあたり、選択肢として自動分析装置の試料分注量誤差が技術的にCV1%を超えてしまう領域、例えば1.5μL未満の微量分注領域を利用可能といえる。
【0044】
次に、新たな血球の溶血処理方法について検討する。
【0045】
図5に示したHbA1c試薬は、溶血試料量として8μL必要であり、血球を溶血するための希釈率は26倍であることから、従来の自動分析装置の2つの工程による溶血処理では、試料分注プローブにより血球を6μL、試薬分注プローブにより、溶血するための液体例えば前処理液を150μL反応セルへ分注後、攪拌機構による攪拌を実施し、26倍希釈の溶血試料を作製したのち、試料分注プローブにより測定溶血試料8μLを測定反応セルへ分注していた。反応セル中の混合液の攪拌は、攪拌機能の例えば攪拌棒の回転により実施するため、攪拌棒と反応セル底を干渉させずに液をうまく混ぜる必要があるため、液量として例えば100μL以上ないと物理的に攪拌することができない。このような背景により、26倍希釈溶血試料を作製するために血球6μL、前処理液150μLの総液量156μLとしている理由は、攪拌性能に起因している。
【0046】
ここで、HbA1c試薬を測定する上で自動分析装置により実施したい新たな溶血処理手段は、従来の自動分析装置の溶血処理と比較し少ない工程で、測定試料量として必要な血球26倍希釈溶血試料8μL分を分注することにある。つまり血球0.3μLと前処理液7.7μLを、分注および攪拌させ溶血させることを少ない工程で達成することにある。実現できれば、処理能力向上,反応セル血球汚れ低減による信頼性向上および前処理液消費量低減によるランニングコスト低減などいろいろな点でメリットがでてくる。
【0047】
試料分注ブローブは、通常システム水が満たされたおり、試料分注プローブ用のシリンジが設定量分駆動することにより、システム水を媒体として試料分注プローブ先端から試料の吸引および吐出が行われる。そこで、媒体として使われているシステム水を溶血するための液体として、血球といっしょに押し出してやれば、必要量分の血球と溶血するための液体を同時に分注することが可能である。また試料分注プローブ先端にある血球といっしょにシステム水を押し出す勢いにより、血球と溶血するための液体であるシステム水との攪拌も同時に行われ一石二鳥となる。溶血するための液体としてシステム水を例にしているが、血球を吸引する前に、事前に前処理液を試料分注プローブにて必要量吸引しておけば、血球といっしょに前処理液を押し出してやれば同様に分注および攪拌が可能である。また、0.3μL分注時の試料分注量誤差が問題となってくるが、先述したように0.3μL血球分注量誤差の精密さが仮にCV10%あったとしても図7の条件3のシュミレーション結果に示したように、図5に示すHbA1c試薬であれば臨床的に問題は発生しない。また、図5に示すHbA1c試薬のHb濃度の測定範囲が例えば80〜350(μmol/L)だったとしても、図7の条件3のシュミレーション結果のようにHb濃度が80μmol/L未満になることは発生しないので血球の希釈率に対する問題に対してもクリアすることができる。
【0048】
このように、図5に示すHbA1c試薬のような測定原理の試薬であれば、試料分注プローブによる溶血処理工程だけで、血液の溶血処理と測定に使用する溶血試料の分注を1度の試料分注動作で完結させることが可能となる。
【0049】
本発明として、以上述べた新たな溶血処理手段を自動分析装置に取り入れた場合の例を図1に示す。
【0050】
まず、試料である血球と、試料分注プローブ101および流路内のシステム水103の接触を防ぐため、分節空気102を吸引する。次に、試料分注機構204が試料容器である採血管106上に回転・下降し、液面検知機能により血しょう層105にプローブ103先端が接触した時点で液面高さ107(採血量の高さ)を確認後、血球層である採血管底から数mm例えば2mmの高さまで試料分注プローブ101先端が突っ込み停止し、測定試料である血球108を測定に使用する量を正確に吸引する。液面高さが規定値より高すぎる場合、プローブ先端が採血管底2mmまでの血球層まで届かないため、吸引動作を中止し、試料量(採血量)が多い旨を知らせるアラームを発生させても良い。また測定試料が採血管下層にある血球でなく、採血管を転倒混和した状態である全血である場合は採血管試料全体が全血であるため、採血管底までプロープを突っ込ませる必要がなく、むやみにプローブ外壁を汚してしまうため、血清分注時と同じ動作である液面検知機能によりプローブ先端を試料中に数mm浸漬して停止し、試料である全血を吸引させても良い。その後試料分注プローブは上昇し、反応セル211に血球を分注する前に洗浄槽301でノズル外壁を洗浄水110で洗浄し血球の持ち越し分109を洗い落とす。血球試料など吸引後の外壁付着試料の除去は、洗浄槽301での水洗浄110の代わりに、空気などの気体の噴射あるいは真空ポンプによる吸引であってもよい。または洗浄槽301での水洗浄110の後に外壁付着水滴除去を目的に、空気などの気体の噴射あるいは真空ポンプによる吸引を実施してもよい。
【0051】
その後反応セル211上に回転移動し反応セル底まで下降し、血球をシステム水103で押し出しながら吐出することにより、血球と溶血させるための液体ここでは精製水であるシステム水とを攪拌させることにより血球は浸透圧の違いによって溶血される。吐出時の液体試料の押し出しは、システム水(精製水)のかわりに、試薬毎指定の試料溶血用あるいはメト化用の前処理液などによるものであってもよい。試料である血球などを試料分注プローブで吸引する前に、事前に試料分注プローブ軌道上に設置された前処理液容器などから前処理液を必要量吸引しておき、反応セル中へ試料分注時に前処理液を押し出しながら血球などを吐出・攪拌させてもよい。血球など試料分注後に直ぐにHbA1c試薬測定のための第1試薬を分注させるのではなく、あらかじめ溶血必要な時間を考慮して一定時間後に第1試薬を分注実施させても良い。あるいは、図2の構成の自動分析装置において試薬分注機構203はR1(第1試薬),R4(第4試薬)、試薬分注機構209はR2(第2試薬),R3(第3試薬)の吐出を行う装置であれば、R2のタイミングでHbA1c試薬測定のための第1試薬を分注反応させ、R3のタイミングでHbA1c試薬測定のための第2試薬を分注反応させることで、R2分注タイミングまでの時間を利用して溶血あるいはメト化に必要な時間を確保することができ、HbA1c試薬測定も可能である。
【0052】
本発明による溶血処理を自動分析装置に適用した際の制御の例を、図8のフローチャートと合わせて示す。
【0053】
測定依頼項目を入力し溶血試料測定項目かどうかをチェックする。例えばHbA1c(%値)を求める項目かを判別する(ステップS801)。HbA1c(%値)を求める項目であれば自動分析装置による溶血処理を実施するかどうかを選択する(ステップS803)。HbA1c(%値)を求める項目でない場合(ステップS801でNo)やオペレータが用手法により試料の溶血を実施済みの場合は、溶血済み試料を装置にセットし分析のみ実施したいこととなる(ステップ803でNo)ため自動分析装置による溶血処理を実施せずに(ステップS802)、依頼した測定項目の分析を実施する(ステップS807)。
【0054】
測定試料が用手法により溶血済みである旨を装置に認識させるには例えば測定項目依頼画面で試料状態“試料溶血済み”をオペレータにより選択させることにより認識させればよい。つぎに自動分析装置による溶血処理が必要なときは(S803でYes)は、本発明による試料分注プローブによる水押し出し方式の溶血処理を実施させるか、それとも従来の2工程による溶血処理を実施させるかを選択する(ステップS804)。例えば分析項目ごとに設定する分析パラメータ中に溶血処理方法を選択登録できるようにする。これによりあらかじめ分析項目ごとに溶血処理方法を選択設定しておくことが可能となる。あるいは、測定依頼画面において溶血処理手段をその都度選択できるようにしても良い。ここで従来の2工程による溶血処理の必要性は、血球と溶血させるための液体の希釈率が試薬によっては100倍のものがあり、仮に溶血後の測定用試料量が5μLであったとすると、血球量0.05μL、溶血させるための液体量が4.95μLであり、血球分注量が極微量となり精密さがあまりにもばらつきすぎて、Hb濃度の測定範囲から外れるなどの理由などにより、図5に示したHbA1c測定試薬においても、HbA1c(%)の精密さへの影響は拭えなくなる。このような場合は従来の2工程による溶血処理を選択すればよい。また初回測定が本発明による試料分注プローブによる水押し出し方式の溶血手段で測定したが、測定値異常により再検査が必要になった場合などは、本発明手段より正確に溶血できる従来の2工程による溶血処理手段を選択してもよい。また自動再検査機能により、溶血試料項目がアラーム発生により再検査の該当になった場合は、自動的従来の2工程による溶血手段あるいは分析パラメータによりあらかじめ再検査時の溶血処理手段を選択できるようにしてもよい。
【0055】
本発明による溶血処理手段(ステップS806)あるいは従来の2工程による溶血処理手段(ステップS805)による、溶血処理実施後、測定項目の分析を行い結果が出力される(ステップS807)。
【0056】
このように、溶血試料を使用した測定試薬の測定方法に応じて、2つの溶血処理手段を使いわけるように設定することにより、必要とする測定結果の精確さを確保しながら、かつ分析に要する時間を短縮できる自動分析装置が提供される。溶血処理の使い分けは、同一の分注プローブを用いて、試料の吸引量,システム水の押し出し量の設定などを、分注プローブを制御しているソフトウェアで変えることで実現できる。また溶血処理手段に応じて形状を最適化した分注プローブを別々に設けた構成としても良い。
【0057】
また本発明によれば、溶血するために使用していた反応セルは必要がなくなるため、反応セルに付着した血球の洗浄不足による当該反応セルを使用したときの次項目への悪影響を排除できデータの信頼性に対しても寄与できる。さらに溶血に使用するための血球はHbA1c試薬測定に必要な量のみの分注量に抑えることができ、溶血するための液体(例えば精製水あるいは前処理液)の使用量は最小限に抑えることができるため、患者への負担、環境への配慮およびランニングコストも抑えることができる。
【0058】
以上のように、本発明によれば、従来自動分析装置の測光機能を有する反応セルを利用して、血球の溶血を自動的に行った後、溶血試料を別の反応セルに再分注し、Hb濃度測定やHbA1c濃度測定によりHbA1c(%値)を求めるなど血球成分を測定する項目に対して、溶血のために使用していた反応セルでの溶血処理工程が省かれるため、処理能力の向上を図ることができる。また、溶血するために使用していた反応セルは必要がなくなるため、反応セルに付着した血球の洗浄不足による当該反応セルを使用したときの次項目への悪影響を排除できデータの信頼性に対しても寄与できる。さらに溶血に使用するための血球はHbA1c試薬測定に必要な量のみの分注量に抑えることができ、溶血するための液体(例えば精製水あるいは前処理液)の使用量は最小限に抑えることができるため、患者への負担、環境への配慮およびランニングコストも抑えることができる。
【符号の説明】
【0059】
101 試料分注プローブ
102 分節空気
103 システム水
104 血球層
105 血しょう層
106 真空採血管
107 試料の液面
108 血球
109 血球の持ち越し分
110 試料分注プローブ洗浄槽での水洗浄
201 試料ディスク
202 試薬ディスク1
203 試薬分注機構1
204 試料分注機構
205 光度計
206 反応ディスク
207 反応セル洗浄機構
208 攪拌機構
209 試薬分注機構2
210 試薬ディスク2
211 反応セル
301 試料分注プローブ洗浄槽
302 試料ディスク外周吸引位置
303 試料ディスク内周吸引位置
304 希釈試料吸引位置(反応セル)
305 試料吐出位置(反応セル)
306 試料分注プローブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料と試薬を反応させた反応液を保持する反応セルと、試料を保持する試料容器から所定量の試料を前記反応セルに分注する試料分注プローブと、試料と試薬の反応液を分析する分析部を備えた自動分析装置において、
前記試料容器に全血試料が保持されている場合、前記試料分注プローブで所定量の試料を吸引した後、吸引した試料を前記反応セルに吐出する際に、該試料とともに該試料分注プローブ内の溶血作用を果たす液体を前記反応セルに吐出する機能を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記反応セルに所定量の試薬を吐出する試薬分注プローブを備え、
前記試料容器に全血試料が保持されている場合、前記試料分注プローブで所定量の試料を吸引した後、吸引した試料を前記反応セルに吐出し、その後、試料が吐出された反応セルに、前記試薬分注プローブを用いて溶血作用を果たす液体を吐出する機能を備え、
溶血作用を果たす液体を前記試料分注プローブで吐出するか、前記試薬分注プローブで吐出するか、を選択できる選択機構を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項2記載の自動分析装置において、
前記選択機構は、溶血作用を果たす液体を前記試料分注プローブで吐出するか、前記試薬分注プローブで吐出するか、のいずれにするかを、測定試薬ごとあるいは測定検体ごとに予め選択する機能を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項2記載の自動分析装置において、
前記選択機構は、溶血作用を果たす液体を前記試料分注プローブで吐出するか、前記試薬分注プローブで吐出するか、のいずれにするかを、分析項目ごとに予め登録する機能を備えたことを特徴とする自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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