説明

自動原稿搬送装置及び原稿読取装置

【課題】カバーを備え、当該カバーに配置された部品を簡単な構成でアース可能な自動原稿搬送装置を提供する。
【解決手段】ADFは、ADF本体と、アース部材と、カバー11と、板金48と、2段バネ49と、を備える。アース部材は、ADF本体に配置される。カバー11は、非導電性であり、ADF本体に開閉可能に支持される。板金48は、カバー11に配置された部品と導通している。2段バネ49は、導電性であり、カバー11と板金48とに挟まれるようにして固定され、カバー11を閉じたときにアース部材と接触する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動原稿搬送装置、及び、原稿を当該自動原稿搬送装置で搬送しながら読み取る原稿読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、原稿の両面を読取可能な原稿読取装置等において、自動原稿搬送装置(オートドキュメントフィーダ、ADF)を備える構成が知られている。この種の自動原稿搬送装置においては、ジャム原稿の除去等の各種メンテナンス作業を容易にするために、自動原稿搬送装置の内部を開放可能なカバーを備える構成をとることがある。
【0003】
また、原稿読取装置は、紙等からの静電気により各部品が帯電することを防止するためにアースを行っている。このアースは、各部品を導電性の部材で接続し、この導電性の部材と基準電位点とをアース回路によって接続することで行われる。
【0004】
特許文献1は、カバーを備え、当該カバーに配置された部品を簡単な構造でアース可能な自動原稿搬送装置を開示する。この特許文献1の自動原稿搬送装置は、カバーに配置されたセパレートローラの回転軸とプレスローラの回転軸とを板バネによって接続することで導通をとっている。また、このセパレートローラの回転軸には導電性の部材が接続されている。そして、この導電性の部材は、カバーを閉じたときに、自動原稿搬送装置本体に配置された所定のアース部(接触部)と導電状に接触するように構成されている。このアース部は、適宜のアース回路を通じて基準電位点(地面等)と接続されているため、自動原稿搬送装置のカバーに配置された部品に対してアースを行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−276954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1の構成は、軸間の導通を効果的に行う自動原稿搬送装置を開示するにとどまり、アース部と接触させる導電性の部材としてどのような部材を用いるかは開示されていない。一般的には、この導電性の部材として、バネを用いる構成が知られている。このようなバネは、取付具(ネジ等)によってカバーに固定され、カバーを閉じたときにアース部と導電状に接触するように構成されている。
【0007】
しかし、このような構成においては、バネを固定するために取付具を用いる必要があり、この取付具に掛かるコストの観点から改善の余地が残されていた。
【0008】
また、バネに代えてリード線等を用い、カバーと本体との導通を行う方法も知られている。しかし、この方法においては、リード線によってカバーの開閉ストロークが制限されること、及び、リード線がメンテナンス作業の邪魔になることがあり、これらの点においても改善の余地が残されていた。
【0009】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、カバーを備え、当該カバーに配置された部品を簡単な構成でアース可能な自動原稿搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0010】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0011】
本発明の観点によれば、以下の構成の自動原稿搬送装置が提供される。即ち、この自動原稿搬送装置は、本体と、アース部材と、カバーと、導電性部材と、弾性部材と、を備える。前記アース部材は、前記本体に配置される。前記カバーは、非導電性であり、前記本体に開閉可能に支持される。前記導電性部材は、前記カバーに配置された部品と導通している。前記弾性部材は、導電性であり、前記カバーと前記導電性部材とに挟まれるようにして固定され、前記カバーを閉じたときに前記アース部材と接触する。
【0012】
これにより、カバーを閉めることでアース部材と弾性部材とが接触するため、カバーに配置された部品をアースすることができる。また、弾性部材を挟み込むようにして取り付ける構成であるため、弾性部材を取り付けるための取付具(ネジ等)を省略することができる。従って、自動原稿搬送装置の製造コストを低減できる。
【0013】
前記の自動原稿搬送装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記弾性部材は、外形の異なる第1部位と第2部位とを有している。前記導電性部材には、前記第1部位を差込可能であって、前記第2部位を差込不能である取付孔が形成されている。
【0014】
これにより、カバーと導電性部材とで弾性部材を挟み込むときに、導電性部材の取付孔に弾性部材を挿入するだけで当該弾性部材の第1部位が導電性部材から突出する。そのため、上記の挟み込みを行うだけで、アースが可能な状態にすることができる。
【0015】
前記の自動原稿搬送装置においては、前記導電性部材は、板金で構成されることが好ましい。
【0016】
これにより、導電性部材を薄く構成することができるので、カバーを薄くでき、コンパクトな自動原稿搬送装置が実現できる。また、導電性部材を安価に構成することができる。
【0017】
前記の自動原稿搬送装置においては、前記カバーには、前記弾性部材を保持可能な保持部が形成されることが好ましい。
【0018】
これにより、カバーと導電性部材との間に弾性部材を挟み込むときに、弾性部材を保持部に保持させておくことができるため、指等で保持する必要がなくなる。そのため、弾性部材を容易に取り付けることができる。
【0019】
本発明の別の観点によれば、前記の自動原稿搬送装置を備えた原稿読取装置が提供される。
【0020】
これにより、弾性部材を取り付けるための取付具(ネジ等)が必要なくなるため、原稿読取装置の製造コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る複合機の外観斜視図。
【図2】カバーが閉じているときの自動原稿搬送装置の正面断面図。
【図3】カバーが開いているときの自動原稿搬送装置の正面断面図。
【図4】ADF本体側から見たカバーの様子を示す斜視図。
【図5】ADF本体の上面の構成を説明する模式図。
【図6】2段バネの取付方法を説明する分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の一実施形態に係る複合機20の外観斜視図である。
【0023】
複合機20は、コピー機能及びファクシミリ機能を備えており、図1に示すように、ブックスキャナ及びオートドキュメントフィードスキャナとして機能するイメージスキャナ装置(原稿読取装置)10を、当該複合機20の上部に備えている。また、複合機20は、コピー部数、ファクシミリ送信先及び原稿読取等を指示するための操作パネル77を備える。
【0024】
更に、複合機20は、記録媒体としての用紙に画像を形成する画像形成部等を内蔵した複合機本体78と、前記用紙を順次供給する給紙カセット79と、を備えている。この複合機本体78は、通信回線を介して画像データを伝送するための図略の送受信部等を備える。
【0025】
次に、図2及び図3を参照して、複合機20が備えるイメージスキャナ装置10について説明する。図2は、カバーが閉じているときの自動原稿搬送装置の正面断面図である。図3は、カバーが開いているときの自動原稿搬送装置の正面断面図である。
【0026】
図2に示すように、イメージスキャナ装置10は、プラテンガラス22と原稿台カバー21とを備えている。この原稿台カバー21には自動原稿搬送装置(オートドキュメントフィーダ、ADF)25が備えられている。また、イメージスキャナ装置10は、原稿の画像を読み取るための本体側スキャナユニット50及びADF側スキャナユニット60を備えている。
【0027】
このイメージスキャナ装置10をオートドキュメントフィードスキャナとして使用する場合は、前記ADF25によって原稿を1枚ずつ搬送する。そして、原稿の表側の面(第1面)の画像は本体側スキャナユニット50によって読み取られ、裏側の面(第2面)の画像はADF側スキャナユニット60によって読み取られる。
【0028】
一方、イメージスキャナ装置10をブックスキャナとして使用する場合は、読み取るべきブック原稿をユーザがプラテンガラス22上に載置して、その上から原稿台カバー21によって押圧し、ブック原稿が動かないように固定する。この状態で、本体側スキャナユニット50によって原稿の画像を読み取ることができるようになっている。
【0029】
図2に示すように、前記原稿台カバー21が備えるADF25は、原稿台カバー21の上部に設けられた原稿トレイ23と、この原稿トレイ23の下方に設けられた排出トレイ24と、を備える。また、ADF25は、ADF本体(本体)16と、その上側を覆うカバー11とを備えている。
【0030】
このカバー11は、図3に示すように、カバー回動軸15を回動軸線としてADF本体16に回動可能に支持されている。そして、カバー11が不用意に開くことを防止するために、当該カバー11を閉めたときにロックが掛かるように構成されている。なお、このカバー11の詳細については後述する。
【0031】
図2に示すように、前記原稿台カバー21の内部には、原稿トレイ23と排出トレイ24とを繋ぐ湾曲状(正面視で横向きU字状)の原稿搬送経路30が構成されている。この構成で、原稿トレイ23に重ねてセットされた原稿は、1枚ずつ分離されて前記原稿搬送経路30に沿って搬送され、排出トレイ24へ排出される。原稿の読取開始等の指示は、図1に示す操作パネル77によって行うことができる。
【0032】
次に、原稿搬送経路30に沿って、ADF25の各部の構成を詳細に説明する。
【0033】
図2に示すように、原稿トレイ23から原稿搬送経路30に原稿が供給される箇所にはピックアップローラ31が配置されている。このピックアップローラ31の下流側には分離ローラ32が備えられる。また、カバー11を閉じたときにこの分離ローラ32に対向するように対向ローラ33が配置されている。
【0034】
この構成で、ピックアップローラ31が駆動されることによって、原稿トレイ23上の最上層の原稿がADF25内に繰り込まれる。原稿はピックアップローラ31の駆動によって分離ローラ32へ送られ、当該分離ローラ32と対向ローラ33との間にニップされる。そして原稿は、原稿搬送方向に回転駆動する分離ローラ32と、原稿搬送方向とは逆方向に回転駆動する対向ローラ33と、によって1枚ずつ分離され、原稿搬送経路30の下流側へ搬送される。
【0035】
分離ローラ32の下流側には、レジストローラ39と、このレジストローラ39と対になるプレスローラ37と、が配置されている。レジストローラ39はプレスローラ37とともに、分離ローラ32によって搬送されてくる原稿の先頭側を一時的に止めて弛ませ、所定時間後に弛みを除去しつつ下流側に搬送する。これにより、原稿の斜行が矯正される。
【0036】
レジストローラ39の下流側には、複数の搬送ローラ34,35が設けられる。また、この搬送ローラ34,35のそれぞれに対向するようにローラが配置されている。前記レジストローラ39の駆動によって下流側へ搬送された原稿は、搬送ローラ34,35とそれらに対向するローラとによりニップされて、更に下流側へ搬送される。
【0037】
2つの搬送ローラ34,35の間には第1原稿読取位置59が設定されており、この第1原稿読取位置59にはプラテンローラ29が配置されている。そして、この第1原稿読取位置59を通過する原稿は、後述の本体側スキャナユニット50によって走査され、読み取られる。
【0038】
次に、本体側スキャナユニット50について説明する。この本体側スキャナユニット50は、ADF25及びプラテンガラス22の下方(前記原稿搬送経路30の外側)に配置されている。また、この本体側スキャナユニット50は、光源51と、反射ミラー52,53,54と、集光レンズ55と、本体側CCD56と、を備えている。光源51はADF25の第1原稿読取位置59(又はプラテンガラス22)に対して光を照射し、反射ミラー52,53,54は原稿からの反射光を反射させる。そしてこの反射光を集光レンズ55で収束させて、この収束光が本体側CCD56の部分で結像するように構成されている。
【0039】
本体側スキャナユニット50の光源51及び反射ミラー52等は移動可能に構成されている。前述したようにイメージスキャナ装置10をブックスキャナとして使用する場合は、本体側スキャナユニット50の光源51及び反射ミラー52等をプラテンガラス22に沿って移動させる。これによって、プラテンガラス22上に載置された原稿を読み取ることができるようになっている。
【0040】
一方、イメージスキャナ装置10をオートドキュメントフィードスキャナとして使用する場合は、光源51及び反射ミラー52等は、図2に示すように、前記第1原稿読取位置59に対向する位置まで移動させて静止させておく。この状態でADF25を駆動することにより、原稿搬送経路30を搬送されて第1原稿読取位置59を通過する原稿の表側の面を、本体側スキャナユニット50が走査して読み取ることができる。
【0041】
本体側スキャナユニット50において、原稿からの反射光は前述のとおり本体側CCD56へ導かれて結像し、本体側CCD56は原稿の画像情報に応じた電気信号を出力する。この信号は適宜変換処理され、複合機20が備える画像形成部に送信される。そして、この送信された画像情報が画像形成部によって記録媒体としての用紙に転写されることで、複合機20のコピー機能等が実現される。
【0042】
原稿搬送経路30において、前記第1原稿読取位置59の下流側(搬送ローラ35の下流側)には第2原稿読取位置69が設定されている。この第2原稿読取位置69を通過する原稿の裏面は、次に説明するADF側スキャナユニット60によって走査されて読み取られる。
【0043】
ADF側スキャナユニット60について説明する。このADF側スキャナユニット60は、U字状に構成された前記原稿搬送経路30に内側から接するように、当該原稿搬送経路30の内側に設置されている。また、ADF側スキャナユニット60は、ADF25の内部に保持されるスキャナフレーム12を備えている。このスキャナフレーム12は、内部の光学系を構成する部品等を支持するとともに、その外側を覆って保護するように構成されている。
【0044】
スキャナフレーム12の底部には、原稿の裏面を読み取るための読取ガラス68が備えられる。この読取ガラス68は、前記第2原稿読取位置69に対応する位置に配置される。
【0045】
また、スキャナフレーム12の前記第2原稿読取位置69に対向するように、プラテンローラ38がADF25に配置されている。この構成で、前記搬送ローラ35により搬送された原稿がプラテンローラ38の部分に差し掛かると、当該原稿はプラテンローラ38により搬送されながらその裏側の面が走査されて読み取られる。
【0046】
以上のようにして2つの原稿読取位置で表裏両面の内容を読み取られた原稿は、排出ローラ36によって搬送され、排出トレイ24へ排出される。このようにして、原稿搬送経路30に原稿を1回通過させるだけで両面読取が可能な構成の、いわゆるワンパス方式のADF25が構成されている。
【0047】
次に、ADF側スキャナユニット60において構成される縮小光学系について説明する。図2に示すように、ADF側スキャナユニット60は、光源61と、反射ミラー62,63,64,65と、集光レンズ67と、イメージセンサとしてのADF側CCD57と、を備えている。これらの部品は、何れもスキャナフレーム12の内部に配置されている。
【0048】
光源61は読取ガラス68を臨むように配置されており、当該読取ガラス68を介して第2原稿読取位置69に光を照射することができる。反射ミラー62,63,64,65は、原稿からの反射光を更に複数回折り返すように反射させ、集光レンズ67に導くように構成されている。
【0049】
集光レンズ67は光を収束させてADF側CCD57の部分に結像させ、ADF側CCD57は、本体側スキャナユニット50における本体側CCD56と同様に、原稿の画像情報に応じた電気信号を出力する。この信号も適宜変換処理され、複合機20が備える画像形成部に送信される。
【0050】
次に、図4及び図5を参照して、カバー11に配置された部品について詳細に説明する。図4は、ADF本体16側から見たカバー11の様子を示す斜視図である。図5は、ADF本体16の上面の構成を説明する模式図である。なお、以下の説明にでは、カバー11において、カバー回動軸15を有する側(図4における略下側)を「基端側」と称するとともに、その反対側(図4における略上側)を「先端側」と称する。
【0051】
カバー11の最も基端側には、図4に示すように、カバー取付孔73と、カバー取付軸72と、が形成されている。そして、図5に示すように、ADF本体16には、カバー取付孔73を挿入可能なカバー取付軸93と、カバー取付軸72を回動可能に取り付けるためのカバー取付孔92と、が形成されている。そして、カバー11は、カバー取付軸72の中心と、カバー取付軸93の中心と、を通る線を前記カバー回動軸15として、カバー11をADF本体16に対して開閉させることができる。
【0052】
カバー11の内面には、2本の細長いリブ97が一体形成されている。それぞれのリブ97は、その長手方向が原稿搬送方向にほぼ沿うように配置されている。従って、リブ97の向きは、分離ローラ32の回転軸線の向きとほぼ直角になっている。分離ローラ32が取り付けられる分離ローラ軸41は、その両端部がリブ97によってそれぞれ支持されている。
【0053】
また、カバー11は、図4に示すように、中央部よりもやや基端側において屈曲している。この屈曲している箇所には、プレスローラ37が3つ並んで配置されている。プレスローラ37は、図2に示すように、ADF本体16が備えるレジストローラ39と対向するように配置されている。また、このプレスローラ37はプレスローラ軸42によって支持されており、このプレスローラ軸42は、付勢バネ40によってレジストローラ39と対向する方向に付勢されている。この構成により、プレスローラ37は、レジストローラ39に対して押圧できるようになっている。
【0054】
また、カバー11の中央部よりやや先端側には、カバー側ギア46が配置されている。このカバー側ギア46は、カバー11を閉じたときに図5に示す本体側ギア96と噛み合うように構成されている。本体側ギア96は、ADF本体16が備える図略の駆動装置からの動力が伝達されることによって回転可能になっており、カバー11が閉じた状態で本体側ギア96が回転することにより、カバー側ギア46も回転する。
【0055】
そして、このカバー側ギア46は、分離ローラ軸41と相対回転不能に接続されているため、カバー側ギア46が回転することにより分離ローラ軸41も回転する。そして、この分離ローラ軸41が回転することにより、当該分離ローラ軸41に相対回転不能に接続された分離ローラ32も回転する。分離ローラ32は複数の伝達ギア43を介してピックアップローラ31と連結されているため、分離ローラ32が回転することにより、ピックアップローラ31も回転する。このようにして、ADF本体16が備える駆動装置からの動力がピックアップローラ31及び分離ローラ32に伝達されている。
【0056】
なお、分離ローラ32は、図2に示すように、カバー11を閉じたときに対向ローラ33と接触するように構成されている。
【0057】
また、図4に示すように、分離ローラ軸41とプレスローラ軸42とは板バネ47によって接続されている。この板バネ47は、導電性の部材で構成されており、分離ローラ軸41とプレスローラ軸42との導通を行っている。また、この板バネ47は、細長矩形状に形成されており、その中央部がネジによって板金(導電性部材)48に固定されている。
【0058】
板金48は、導電性の部材で構成されており、板バネ47と電気的に導通されている。また、この板金48は細長い薄板状に構成されており、その一端が、2本のうち一方のリブ97において厚み方向に貫通するように形成された貫通孔98に差し込まれている。そして板金48は、当該一端部において2段バネ(弾性部材)49の根元部をカバー11との間で挟み込むようにして、カバー11の内面にネジ止めで固定されている。なお、この2段バネ49の形状及び取付方法の詳細は後述する。
【0059】
また、この2段バネ49は、カバー11を閉じたときに図5に示すアース部材99と接触するように配置されている。このアース部材99は例えば板金フレームで構成されており、適宜のアース回路を通じて基準電位点(地面等)と接続されている。
【0060】
この構成により、カバー11に配置される分離ローラ軸41及びプレスローラ軸42は、カバー11を閉じているときは基準電位点と電気的に接続されることになり、基準電位を保つことができる。
【0061】
また、カバー11の先端側の端部近傍には、カバー11を閉じた状態でロックするためのロック機構80が配置されている。このロック機構80は2つのロックレバー81,85を備えている。この構成で、カバー11を閉じたときにロックレバー81,85が図5に示すロックピン91,95に引っ掛かることで、カバー11をロックすることができる。
【0062】
次に、図6を参照して、2段バネ49の形状及び取付方法について説明する。図6は、2段バネ49の取付けを説明する分解斜視図である。
【0063】
図6(a)に示すように、2段バネ49は、外形が2段構造の円筒状のコイルバネで構成されており、小径である第1部位101と大径である第2部位102とを備えている。また、カバー11には十字状の突起である嵌込み部(保持部)105が形成されている。
【0064】
2段バネ49をカバー11に取り付けるときは、まず、図6(a)に示すように、嵌込み部105に対して2段バネ49の第2部位102を嵌め込む。具体的には、第2部位102の端部を広げるようにして変形させて、嵌込み部105の十字の外周部に被せるように嵌め込むことで、2段バネ49をカバー11の内面に保持させる。
【0065】
次に、図6(b)に示すように、2段バネ49の第1部位101を指等で押さえて適宜圧縮した状態とし、その上で、板金48の先端部をリブ97の貫通孔98に差し込む。そして、当該先端部に形成されている取付孔108の位置を前記第1部位101に合わせ、第1部位101の圧縮を解除する。これにより、第1部位101が元の形に復元し、取付孔108を通過して突出した状態とすることができる。
【0066】
なお、取付孔108の内径は、第1部位101の直径より大きいものの、第2部位102の直径よりは小さくなっているので、第2部位102が取付孔108から突出することはない。
【0067】
以上のようにして2段バネ49の第1部位101を板金48の取付孔108に差し込んだ後に、図4で示すネジ等によって板金48をカバー11に固定する。この結果、大径である第2部位102がカバー11と板金48との間で若干圧縮されるので、復元力が作用する第2部位102は取付孔108の周縁部に良好に密着し、電気的導通を安定して確保することができる。
【0068】
以上のようにして、2段バネ49は、板金48と電気的に接続されつつ、第1部位101が板金48から突出するように取り付けられる。そして、この第1部位101の先端とアース部材99とが接触することで、カバー11の各部品のアースを行うことができる。
【0069】
なお、貫通孔98の部分においてリブ97の下端部が仮に開放されていれば、その開放部分から板金48を差し込むようにすることで、カバー11に板金48を比較的容易に取り付けることができる。しかしながら、本実施形態では、リブ97によってカバー11の剛性を効果的に向上させるために、貫通孔98の部分に開放部を設けていない。従って、板金48を取り付けるときは、始めに、板金48を2段バネ49の取付向きと略垂直の方向(リブ97の厚み方向)に移動させて貫通孔98に差し込む。そして、板金48を2段バネ49の取付向きと略平行の方向に移動させて取付孔108を2段バネ49に差し込む必要がある。この点、本実施形態では、予め嵌込み部105に2段バネ49を組み付けておくことで、板金48の取付時には、2段バネ49の位置が動かないように指等で摘んで持つ必要がなくなる(第1部位101の頭部を指1本で押さえて圧縮しておくだけでよい)。また、板金48の取付時に2段バネ49が不用意に外れたり飛んでいったりする事態を防止でき、組立作業性を向上させることができる。
【0070】
以上に説明したように、本実施形態のADF25は、ADF本体16と、アース部材99と、カバー11と、板金48と、2段バネ49と、を備える。アース部材99は、ADF本体16に配置される。カバー11は、非導電性であり、ADF本体16に開閉可能に支持される。板金48は、カバー11に配置された部品と導通している。2段バネ49は、導電性であり、カバー11と板金48とに挟まれるようにして固定され、カバー11を閉じたときにアース部材99と接触する。
【0071】
これにより、カバー11を閉めることでアース部材99と2段バネ49とが接触するため、カバー11に配置された部品をアースすることができる。また、2段バネ49を挟み込むようにして取り付ける構成であるため、2段バネ49を取り付けるための取付具(ネジ等)を省略することができる。従って、ADF25の製造コストを低減できる。
【0072】
また、本実施形態のADF25において、2段バネ49は、直径の小さい第1部位101と直径の大きい第2部位102とを備えている。一方、板金48には、第1部位101を差込可能であって、第2部位102を差込不能である取付孔108が形成されている。
【0073】
これにより、カバー11と板金48とで2段バネ49を挟み込むときに、2段バネ49を取付孔108に挿入するだけで第1部位101が板金48から突出する。そのため、2段バネ49を取り付けるだけで、アースが可能な構成にできる。また、2段バネ49の位置決めを容易に行うことができる。
【0074】
また、本実施形態のADF25においては、導電性部材として板金48が用いられる。
【0075】
これにより、導電性部材を薄く構成することができるので、カバー11を薄くでき、コンパクトなADF25が実現できる。また、板金は加工性に優れるため、大きさの違うADF等に対応することが容易である。
【0076】
また、本実施形態のADF25において、カバー11には、2段バネ49を保持可能な嵌込み部105が形成される。
【0077】
これにより、カバー11と板金48との間に2段バネ49を挟み込むときに、2段バネ49を嵌込み部105に保持させておくことができる。このため、2段バネ49の位置が動かないように指等で保持しておく必要がなくなり、2段バネ49を容易に取り付けることができる。
【0078】
また、本実施形態のイメージスキャナ装置10は、上記のADF25を備えている。
【0079】
これにより、2段バネ49を取り付けるための部品(ネジ等)が必要なくなるとともに、この部品を取り付ける手間を省くことができる。従って、イメージスキャナ装置10の製造コストを低減できる。
【0080】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0081】
上記実施形態では、導電性部材として板金48を用いたが、導電性を有する物体であれば板金48に限られず、様々な物質を用いることができる。
【0082】
上記実施形態では、弾性部材として2段バネ49を用いたが、2段形状に限らず取付孔108からバネの一部が突出する形状であれば任意の形状にすることができる。また、弾性部材として導電性ゴム等を用いることができる。
【0083】
上記実施形態では、嵌込み部105は十字状に形成されているが、弾性部材を保持できる形状であればどのような形状にしても良い。
【0084】
複合機20に代えて、例えば、コピー機、ファクシミリ装置等にも、上記実施形態のイメージスキャナ装置10を適用することができる。
【0085】
上記実施形態ではイメージスキャナ装置10は複合機20の一部として備えられているが、この構成に代えて、単体のイメージスキャナ装置として構成することができる。
【符号の説明】
【0086】
10 イメージスキャナ装置(原稿読取装置)
11 カバー
16 ADF本体(本体)
25 ADF(自動原稿搬送装置)
47 板バネ
48 板金(導電性部材)
49 2段バネ(弾性部材)
101 第1部位
102 第2部位
105 嵌込み部(保持部)
108 取付孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
前記本体に配置されるアース部材と、
前記本体に開閉可能に支持される非導電性のカバーと、
前記カバーに配置された部品と導通している導電性部材と、
前記カバーと前記導電性部材とに挟まれるようにして固定され、前記カバーを閉じたときに前記アース部材と接触する導電性の弾性部材と、
を備えることを特徴とする自動原稿搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動原稿搬送装置であって、
前記弾性部材は、外形の異なる第1部位と第2部位とを有しており、
前記導電性部材には、前記第1部位を差込可能であって、前記第2部位を差込不能である取付孔が形成されていることを特徴とする自動原稿搬送装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の自動原稿搬送装置であって、
前記導電性部材は、板金で構成されることを特徴とする自動原稿搬送装置。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の自動原稿搬送装置であって、
前記カバーには、前記弾性部材を保持可能な保持部が形成されることを特徴とする自動原稿搬送装置。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載の自動原稿搬送装置を備えることを特徴とする原稿読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−123174(P2011−123174A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−279443(P2009−279443)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】