自動原稿給送装置、画像読み取り装置及び画像形成装置
【課題】開閉支持機構に使用される弾性付勢手段の弾性付勢力を容易に調整することができるようにする。
【解決手段】バネ316の軸線方向にネジ棒322を設け、その一端をハウジング317に当接させ、他端をアーム311側に抜けるように配置し、このネジ棒322にダイヤル321を螺合させ、ダイヤル321のバネ316の軸線方向の位置を規制する。この構成でダイヤル321を回転させると、ネジ棒322を軸方向に移動させることが可能となり、ネジ棒322の移動によりハウジング317をバネ316の軸線方向に移動させ、バネの圧縮長を変更することができる。これによりバネ316の弾性付勢力が変化し、バネ316が経年劣化により弾性付勢力が低下してもダイヤル321を回転させて容易に調整することが可能となる。
【解決手段】バネ316の軸線方向にネジ棒322を設け、その一端をハウジング317に当接させ、他端をアーム311側に抜けるように配置し、このネジ棒322にダイヤル321を螺合させ、ダイヤル321のバネ316の軸線方向の位置を規制する。この構成でダイヤル321を回転させると、ネジ棒322を軸方向に移動させることが可能となり、ネジ棒322の移動によりハウジング317をバネ316の軸線方向に移動させ、バネの圧縮長を変更することができる。これによりバネ316の弾性付勢力が変化し、バネ316が経年劣化により弾性付勢力が低下してもダイヤル321を回転させて容易に調整することが可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、読み取り部に原稿を自動給送する自動原稿給送装置、この自動原稿給送装置によって給送された原稿を読み取り部で光学的に読み取る画像読み取り装置、及びこの画像読み取り装置を備えた画像形成装置に係り、特に自動原稿給装装置の支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機等の画像形成装置には原稿を読み取るための自動原稿給送装置を備えているものが多い。この種の画像形成装置に搭載される自動原稿給送装置は、コンタクトガラスに原稿を直接載せて複写を行うために開閉支持機構(以下、「ヒンジ」と称する)が設けられている。そのヒンジには自動原稿給送装置を開放したときに、当該自動原稿給送装置の自重とバランスさせるためにカムやバネ(弾性体)等からなるバランス機構が設けられ、この機構によりユーザが自動給送装置の開閉動作を容易に行うことができるようになっている。
【0003】
しかしながら、自動原稿給送装置自体が非常に重いので、それを支えるバネは弾性付勢力の強いものが使用されている。そのためバネの弾性付勢力のばらつきにより、自動原稿給装置の位置が不安定になる。すなわち、バネの弾性付勢力が強い場合は自動原稿給送装置がコンタクトガラス面から浮いた状態となり、原稿搬送が正確に行うことができず、反対にバネの弾性付勢力が弱い場合は自動原稿給送装置が自重で落下するため、操作者に接触して手を挟む虞がある。特に、バネの弾性付勢力の低下は、バネの経時的な使用(長期使用)に起因するものが多い。
【0004】
このようなバネの弾性力の低下を回復させるためには、ヒンジのバネを交換すればよいが、前述のように自動原稿給送装置のヒンジに取り付けられたバネの弾性付勢力(バネ係数)は非常に大きいものであるため、バネの交換には専用の大型設備が必要となる。そのため、市場保守時及び製品リユース時のバネ交換は難しい。そこで、バネの弾性付勢力の低下時にヒンジそのものを交換することも考えられるが、一般に自動原稿給送装置の基準位置はヒンジにより決まっているため、市場等で位置決め治具を使用しないで交換する場合は、製品自体の精度が狂う虞がある。
【0005】
そこで、バネ等弾性体の弾性付勢力をヒンジを分解したり、取り替えたりすることなく調整することができる自動原稿給送装置として、例えば特許文献1ではバネに取り付けられたネジにより、バネの弾性力を調整することができる自動原稿送給装置が提案されている。
【特許文献1】特開2002−202640公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1記載の発明では、調節用のネジがバネの弾性方向の延長線上に配置されている。一方、自動原稿給送装置のヒンジは自動原稿給送装置本体内部に収納されるようなレイアウトとなっており、ネジを調整するためには外装カバーを含め自動原稿給送装置を分解する必要がある。そのため工場出荷時や市場で調整が必要となった場合には非常に手間と時間がかかることになる。
【0007】
本発明のこのような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、開閉支持機構に使用される弾性付勢手段の弾性付勢力を容易に調整することができる自動原稿給送装置、画像読み取り装置及び画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、第1の手段は、本体部が支持部材を介して被取り付け側に開閉自在に取り付けられ、所定の範囲の開放角度内では自重を弾性付勢手段の弾性付勢力により相殺し、開放状態を維持する自動原稿給送装置において、前記弾性付勢手段の弾性付勢力を当該弾性付勢手段の弾性付勢方向と異なる方向から調整する調整手段を備えていることを特徴とする。
【0009】
第2の手段は、第1の手段において、前記異なる方向が前記弾性付勢手段の弾性付勢方向と直交する方向であることを特徴とする。
【0010】
第3の手段は、第1の手段において、前記異なる方向が前記開閉部材を開放したときに開放側に対向する方向であることを特徴とする。
【0011】
第4の手段は、第1ないし第3のいずれかの手段において、前記弾性付勢手段がコイルバネからなり、前記調整手段は前記コイルの圧縮量を調整することを特徴とする。
【0012】
第5の手段は、第4の手段において、前記調整手段が、一端が前記コイルバネの端部に実質的に当接し、当該コイルバネの伸縮方向に平行に移動して当該コイルバネを伸縮させる第1の部材と、この第1の部材を前記コイルバネの伸縮方向に平行に移動させる第2の部材とからなることを特徴とする。
【0013】
第6の手段は、第5の手段において、前記第1の部材がネジ部材からなり、前記第2の部材が前記ネジ部材と螺合し、当該ネジ部材を前記コイルバネの伸縮に移動させるダイヤルからなることを特徴とする。
【0014】
第7の手段は、第6の手段において、前記ダイヤルの操作部が、前記本体部を開放したときに開放側に露出した位置に設けられていることを特徴とする。
【0015】
第8の手段は、第5の手段において、前記第1の部材がパンタグラフ状の伸縮部材からなり、前記第2の部材が前記伸縮部材に螺合して当該伸縮部材を伸縮させるネジ部材からなることを特徴とする。
【0016】
第9の手段は、第8の手段において、前記ネジ部材の端部に設けられた操作端が、前記本体部を開放したときに開放側に露出した位置に設けられていることを特徴とする。
【0017】
第10の手段は、第5の手段において、前記第1の部材がカム部材からなり、前記第2の部材が前記カム部材を回動可能に支持する支持軸からなることを特徴とする。
【0018】
第11の手段は、第10の手段において、前記支持軸の端部に設けられた操作端が、前記本体部を開放したときに開放側に露出した位置に設けられていることを特徴とする。
【0019】
第12の手段は、第10の手段において、前記カムがインボリュート曲線で形成されていることを特徴とする。
【0020】
第13の手段は、第9または第11の手段において、前記操作端にドライバで操作するためのドライバ溝が形成されていることを特徴とする。
【0021】
第14の手段は、第1ないし第13のいずれかの手段に係る自動原稿給送装置を画像読み取り装置が備え、前記被取り付け側が画像読み取り装置本体であることを特徴とする。
【0022】
第15の手段は、第1ないし第13のいずれかの手段に係る自動原稿給装装置を画像形成装置が備え、前記被取り付け側が画像形成装置本体であることを特徴とする。
【0023】
第16の手段は、第14の手段に係る画像読み取り装置を画像形成装置が備えていることを特徴とする。
【0024】
なお、後述の実施形態において、本体部はADF300本体に、支持部材はヒンジ310に、弾性付勢手段はバネ316に、ネジ部材はネジ棒322に、ダイヤルは符号321に、伸縮部材は符号325に、ネジ部材はネジ操作軸324に、操作端は符号324aに、カムは符号327に、ドライバ溝は符号324b,327bにそれぞれ対応する。、
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、開閉支持機構に使用される弾性付勢手段の弾性付勢力を当該弾性付勢手段の弾性付勢方向と異なる方向から調整する調整手段を備えているので、前記弾性付勢手段の弾性付勢力を容易に調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態について説明する。
【0027】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置の全体構成を示す概略構成図である。同図において、画像形成装置は本体100と、画像形成装置本体100の上部の設置された画像読み取り装置200と、さらにその上に装着された自動原稿給送装置(以下、「ADF」と称す)300と、画像形成装置本体100の図1において右側に配置された大容量給紙装置400と、画像形成装置本体100の図1において左側に配置された用紙後処理装置500とから基本的に構成されている。
【0028】
画像形成装置本体100は画像書き込み部110と、作像部120と、定着部130と、両面搬送部140と、給紙部150と、垂直搬送部160と、手差し部170とからなる。
【0029】
画像書き込み部110は画像読み取り装置200で読み取った原稿の画像情報に基づいて発光源であるLDを変調し、ポリゴンミラー、fθレンズなどの走査光学系により感光体ドラム121にレーザ書き込みを行うものである。作像部は感光体ドラム121と、この感光体ドラム121の外周に沿って設けられた現像ユニット122、転写ユニット123、クリーニングユニット124及び除電ユニットなどの公知の電子写真方式の作像要素とからなる。
【0030】
定着部120は前記転写ユニット123で転写された画像を記録紙に定着する。両面搬送部140は定着部120の記録紙搬送方向下流側に設けられ、記録紙の搬送方向を用紙後処理装置500側、あるいは両面搬送部140側に切り換える第1の切換爪141と、第1の切換爪141によって導かれた反転搬送路142と、反転搬送路142で反転した記録紙を再度転写ユニット123側に搬送する画像形成側搬送路143と、反転した記録紙を用紙後処理装置500側に搬送する後処理側搬送路144とを含み、画像形成側搬送路143と後処理側搬送路144との分岐部には第2の切換爪145が配されている。
【0031】
給紙部150は4段の給紙段からなり、それぞれピックアップローラ、給紙ローラによって選択された給紙段に収納された記録紙が引き出され、垂直搬送部160に導かれる。垂直搬送部160では、各給紙段から送り込まれた記録紙を転写ユニット123の用紙搬送方向上流側直前のレジストローラ161まで搬送し、レジストローラ161では、感光体ドラム121上の顕像の画像先端とタイミングを取って記録紙を転写ユニット123に送り込む。手差し部170は開閉自在な手差しトレイ171を備え、必要に応じて手差しトレイ171を開いて記録紙を手差しにより供給する。この場合もレジストローラ161で記録紙の搬送タイミングが取られ、搬送される。
【0032】
大容量給紙装置400は同一サイズの記録紙を大量にスタックして供給するもので、記録紙が消費されるにしたがって底板402が上昇し、常にピックアップローラ401から用紙のピックアップが可能に構成されている。ピックアップローラ401から給紙される記録紙は、垂直搬送部160からレジストローラ161のニップまで搬送される。
【0033】
用紙後処理装置500はパンチ、整合、ステイプル、仕分けなどの所定の処理を行うもので、この実施形態では、前記機能のためにパンチ501、ステイプルトレイ(整合)502、ステイプラ503、シフトトレイ504を備えている。すなわち、画像形成装置100から用紙後処理装置500に搬入された記録紙は、孔明けを行う場合にはパンチ501で1枚ずつ孔明けが行われ、その後、特に処理するものがなければ、プルーフトレイ505へ、ソート、スタック、仕分けを行う場合にはシフトトレイ504にそれぞれ排紙される。仕分けは、この実施形態は、シフトトレイ504が用紙搬送方向に直交する方向に所定量往復動することにより行われる。このほかに、用紙搬送路で用紙を用紙搬送方向と直交する方向に移動させて仕分けを行うこともできる。
【0034】
整合する場合には、孔明けが行われた、あるいは孔明けが行われていない記録紙が下搬送路506に導かれ、ステイプルトレイ504において後端フェンスで用紙搬送方向を直交する方向が整合され、ジョガーフェンスで用紙搬送方向と平行な方向の整合が行われる。ここで、綴じが行われる場合には、整合された用紙束の所定位置、例えば角部、中央2個所など所定の位置がステイプラ503によって綴じられ、放出ベルトによってシフトトレイ504に排紙される。また、この実施形態では、下搬送路506にはプレスタック搬送路507が設けられ、搬送時に複数枚の用紙をスタックし、後処理中の画像形成装置100側の画像形成動作の中断を避けることができるようになっている。
【0035】
画像読み取り装置200は、第1ないし第3のミラーと2つの走行体を使用した公知のもので、コンタクトガラス210上に導かれ、停止した原稿を光学的にスキャンし、第1ないし第3のミラーを経て結像レンズで結像された読み取り画像をCCDなどの光電変換素子によって読み取る。読み取られた画像データは、図示しない画像処理回路で所定の画像処理が実行され、記憶装置に一旦記憶される。そして、画像形成時に画像書き込み部110によって記憶装置から読み出され、前述のように画像データに応じて変調し、光書き込みが行われる。
【0036】
ADF300は両面読み取り機能を有するもので、図2の取付状態を示す図から分かるように画像読み取り装置200のコンタクトガラス210設置面に2つのヒンジ310によって開閉自在に取り付けられている。図3は図1におけるADFの拡大図である。原稿は原稿台301に載置され、読み取り指示(複写指示)によって原稿台301先端の昇降部材302が原稿をピックアップローラ303に押し付ける。原稿はピックアップローラ303によって上面から1枚ずつ引き出され、搬送路303を経て、コンタクトガラス210上に送り込まれる。コンタクトガラス210上で露光された原稿は、裏面を読み取る必要がない場合には、そのまま排紙トレイ305上に排紙され、裏面を読み取る場合には、後端部が反転機構306の排紙ローラ307のニップに挟まれた状態になるまで、先端部を反転トレイ308上に送り出し、排紙ローラ307を逆転させることにより逆方向から再度コンタクトガラス210上に送り込んで裏面を読み取る。読み取られた原稿は、排紙トレイ305上に排紙される。なお、コンタクトガラス210上の原稿の搬送は搬送ベルト309によって行われる。
【0037】
図4及び図5は本実施形態に係るADF300のヒンジ部310の構成を示す側面図で、図4はADF300を閉じた状態、図5は開放した状態をそれぞれ示す。ADF300は、原稿をコンタクトガラス210上で押さえる原稿圧板としても機能するもので、原稿の読み取りを行う場合には図4に示すように閉鎖され、原稿を載置する場合には、通常最大90度開放される。ADF300は原稿を自動的に給装する機構を備えていることから前述したようにかなりの重量があるが、原稿を載置するときの作業性を考慮してコンタクトガラス210面に対して20度から60度の間のどの位置でも開放状態で静止することができるようにベース312のカム面312aとハウジング318の基端の摺動部面(カムフォロワ)318aとの接触角とバネ16の弾性力が設定されている。
【0038】
さらに詳しく説明すると、ヒンジ部310はアーム311とカム面312aを有するベース312が支軸313により支持されている。この支軸313は、ベース312を回動可能に支持し、アーム311はADF300と回転軸314を介して接続され、ベース312はネジ315により画像形成装置100に一体に構成された画像読み取り装置200の上面に固定されている。アーム311には前述のようにADF300解放時にADF300の自重とバランスさせるための付勢部材としてバネ316がそれぞれ独立したハウジング317,318により挟まれて配置されている。バネ316はハウジング317,318間を広げるように作用しており、一方のハウジング317はジャッキ機構320と接続され、ハウジング317の移動位置が規制されている。もう一方のハウジング318はベース312に当接するまで移動可能となっている。なお、この実施形態では、図6に示すようにバネ316は2本並列に設置されている。
【0039】
このような構成で、20度から60度(20°≦θ≦60°)の間のどの位置でも開放状態で静止するのは、次のような理由による。すなわち、図5においてADF300と接続されたアーム311は、回転軸313を中心としてカム形状を有するベース312にアーム311に取り付けられたハウジング318が当接するまで時計回り(図示A方向)に自由に動くことができる。ハウジング318がベース12に当接すると、ベース312のカム面312aの形状によりバネ316が圧縮され、図5においてアーム311及びADF300は回転軸313を中心に反時計回り(図示B方向)に回転力が発生する。一方、ADF300及びアーム311は自重により時計回り方向に回転しようとするため、ADF300及びアーム311の自重とバネ316の弾性付勢力がバランスし、使用者にとって力をかけずにADF300を開閉することができる。つまり、バネ316の弾性付勢力とADF300の自重とが相殺され、前記角度θ内の位置であれば静止状態を保持することができる。
【0040】
このような構成のADF300を長期間使用していると経時劣化によりバネ316の弾性付勢力が低下し、前記バランスが取れなくなり、ADF300が前記角度θの範囲内で停止することができないような状態が生じることがある。これを回避するために、本実施形態では、ハウジング317とアーム311との間に調整機構としてたジャッキ機構320を設けたものである。この実施形態おけるジャッキ機構320は作用点間の距離を自在に調整できる機構であり、この機構をバネ316のバネ長の調整に使用できるようにした。
【0041】
具体的には、バネ316の軸線方向にネジ棒322を設け、その一端をハウジング317に当接させ、他端をアーム311側に抜けるように配置し、更に、このネジ棒322にダイヤル321を螺合させ、ダイヤル321のバネ316の軸線方向の位置を規制するようにした。この構成によりダイヤル321を回転させると、ネジ棒322を軸方向に移動させることが可能となり、このネジ棒322の移動によりハウジング317をバネ316の軸線方向(図5における上下方向)に移動させ、バネの圧縮長を変更することができる。これによりバネ316の弾性付勢力が変化する。そこで、バネ316の弾性付勢力が低下してADF300が自重で閉じるようなことがあれば、バネ316の圧縮量を大きくし、バネ316の弾性付勢力を大きくし、ADF300が前記角度範囲で自然に落ちてくることがない位置までダイヤル321を回せば、前記圧縮量の調整が完了したことになる。
【0042】
なお、図4のADF300の閉鎖位置では、支軸313の中心からADF300の重心によって規定されるモーメント(時計回りのモーメント)の方が、カム面312aからの抗力によって生じるモーメント(反時計回りのモーメント)より大きくなるので、閉鎖状態が保持される。
【0043】
図6は前記ダイヤル321を使用して調整するときの状態を示す説明図である。同図から分かるように装置正面側(バネ316の伸縮方向と直交する方向)から指でダイヤル321を操作することにより簡単にバネ316の弾性付勢力の調整を行うことができる。このように指先で簡単に調整できることから、製品製造時に弾性付勢部材の弾性付勢力にばらつきが生じた場合や、市場で長期間の使用により弾性付勢力が変化した場合、製品リユースした場合にも、大がかりな装置を用いて部品を交換することなく、弾性付勢力を調整することができる。また、ダイヤル321は自動原稿給装装置300を開放したときに正面側から容易に操作することができるので、操作性にも優れたものとなっている。
【0044】
<第2の実施形態>
図7ないし図9は第2の実施形態を説明するための図で、図7及び図8はADF300のヒンジ部310の構成を示す側面図で、図7はADF300を閉じた状態、図8は開放した状態、図9は調整時の状態をそれぞれ示す。
【0045】
この第2の実施形態は、第1の実施形態におけるジャッキ機構320の変形例である。この実施形態は、第1の実施形態におけるネジ棒322とダイヤル321の組み合わせを、ネジ操作軸324とパンタグラフ状の伸縮部材(ジャッキ)325との組み合わせに変更したものである。このジャッキ325自体は、ピッチ方向が逆の1対のネジ溝が切られたネジ操作軸324と、前記ネジ溝に伸縮部材325の螺合部325aが螺合する公知の構成のものである。また、ネジ操作軸324の頭部324aの端面には、ドライバ溝324bが形成されている。そこで、図9に示すように装置正面側(バネ316の軸方向と直交する方向)からドライバ326の先端部をドライバ溝324bに挿入し、ドライバ326によってネジ操作軸324を回動させることによりネジ操作軸324と伸縮部材325の螺合位置を変え、パンタグラフ形状の脚部分の前記ネジ操作軸324に対する角度を変えて伸縮部材325の上端325bと下端325cとの間の距離を変化させている。これによりハウジング317を介してバネ316の圧縮量が変化し、バネ316の弾性付勢力を調整することができる。
【0046】
その他、特に説明しない各部は前述の第1の実施形態と同等に構成され、同等に機能するので、重複する説明は省略する。
【0047】
本実施形態によれば、バネ316の弾性付勢力の調整を伸縮部材325とネジ操作軸324を使用した所謂ジャッキ機構により、自動原稿給装装置300を開放したときに正面側から容易に操作することができるとともに、操作力を小さくて済み、優れた操作性を発揮することができる。
【0048】
<第3の実施形態>
図10ないし図12は第3の実施形態を説明するための図で、図10はADF300を綴じた状態を示す側面図、図11はADF300を開放した状態を示す側面図、図12は図11の正面図である。
【0049】
この第3の実施形態は第2の実施形態におけるジャッキ機構320をカム機構に置き換えた例である。この実施形態は、第2の実施形態ではネジ棒324とパンタグラフ形状のジャッキ325を、インボリュート曲線のカム327としてバネ316の圧縮量を変更できるようにしたものである。具体的には、前記カム327は図12に示すように支軸327aと一体に回転可能に支持され、カム327の回転角に応じて当該カム327に当接するホルダ317とアーム311との相対位置を変化させることができる。このようにカムをインボリュート曲線のものとしたので、アーム314とバネ3216のハウジング317に常に垂直に当接し、カム327の中心に対して垂直な力しか働かず、カム327を回転させて調整した後、カム327が勝手に回転する心配がない。
【0050】
これによりホルダ317とアーム311間の距離が変化し、バネ316の圧縮量を変化させることが可能となり、バネ316の弾性付勢力を調整することができる。調整は第2の実施形態と同様に、ドライバを支軸327aの端面に形成されたドライバ溝327bにドライバ326の先端を正面側(バネ316の軸方向と直交する方向)から挿入し、支軸327aを回転させる。これにより支軸327aと一体にカム327も回転し、バネ316の圧縮量を変化させ、バネ316の弾性付勢力を調整することができる。
【0051】
その他、特に説明しない各部は前述の第1の実施形態及び第2の実施形態と同等に構成され、同等に機能するので、重複する説明は省略する。
【0052】
本実施形態によれば、バネ316の弾性付勢力の調整をカムによって行うので、弾性付勢手段の弾性付勢方向に対して垂直な方向から調整することができるので、自動原稿給装装置300を開放したときに正面側から容易に操作することができる。また、カムを使用した機構のため機構全体が単純化され、そのためコストも安く抑えることができる。さらに、カムはインボリュート曲線で構成されているので、カムを回転させてもカム中心に対して垂直な力しか働かず、カムに回転方向の力が作用することがない。これによりカムが勝手に回転することがなく、調整後にずれる虞はない。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の全体構成を示す概略構成図である。
【図2】ADFの画像読み取り装置に対する取付状態を示す図である。
【図3】ADFの概略構成を示す図である。
【図4】第1の実施形態に係るADFのヒンジ部の構成を示す側面図で、ADFを閉じた状態を示す。
【図5】第1の実施形態に係るADFのヒンジ部の構成を示す側面図で、ADFを開放した状態を示す。
【図6】第1の実施形態においてダイヤルを使用してバネの弾性付勢力を調整するときの状態を示す説明図である。
【図7】第2の実施形態に係るADFのヒンジ部の構成を示す側面図で、ADFを閉じた状態を示す。
【図8】第2の実施形態に係るADFのヒンジ部の構成を示す側面図で、ADFを開放した状態を示す。
【図9】第2の実施形態においてドライバを使用してバネの弾性付勢力を調整するときの状態を示す説明図である。
【図10】第3の実施形態に係るADFのヒンジ部の構成を示す側面図で、ADFを閉じた状態を示す。
【図11】第3の実施形態に係るADFのヒンジ部の構成を示す側面図で、ADFを開放した状態を示す。
【図12】図11の正面図である。
【符号の説明】
【0054】
100 画像形成装置
200 画像読み取り装置
300 自動原稿給装装置(ADF)
310 ヒンジ
316 バネ
321 ダイヤル
322 ネジ棒
324 ネジ操作軸
324a 操作端
324b,327b ドライバ溝
325 伸縮部材
326 ドライバ
327 カム
【技術分野】
【0001】
本発明は、読み取り部に原稿を自動給送する自動原稿給送装置、この自動原稿給送装置によって給送された原稿を読み取り部で光学的に読み取る画像読み取り装置、及びこの画像読み取り装置を備えた画像形成装置に係り、特に自動原稿給装装置の支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機等の画像形成装置には原稿を読み取るための自動原稿給送装置を備えているものが多い。この種の画像形成装置に搭載される自動原稿給送装置は、コンタクトガラスに原稿を直接載せて複写を行うために開閉支持機構(以下、「ヒンジ」と称する)が設けられている。そのヒンジには自動原稿給送装置を開放したときに、当該自動原稿給送装置の自重とバランスさせるためにカムやバネ(弾性体)等からなるバランス機構が設けられ、この機構によりユーザが自動給送装置の開閉動作を容易に行うことができるようになっている。
【0003】
しかしながら、自動原稿給送装置自体が非常に重いので、それを支えるバネは弾性付勢力の強いものが使用されている。そのためバネの弾性付勢力のばらつきにより、自動原稿給装置の位置が不安定になる。すなわち、バネの弾性付勢力が強い場合は自動原稿給送装置がコンタクトガラス面から浮いた状態となり、原稿搬送が正確に行うことができず、反対にバネの弾性付勢力が弱い場合は自動原稿給送装置が自重で落下するため、操作者に接触して手を挟む虞がある。特に、バネの弾性付勢力の低下は、バネの経時的な使用(長期使用)に起因するものが多い。
【0004】
このようなバネの弾性力の低下を回復させるためには、ヒンジのバネを交換すればよいが、前述のように自動原稿給送装置のヒンジに取り付けられたバネの弾性付勢力(バネ係数)は非常に大きいものであるため、バネの交換には専用の大型設備が必要となる。そのため、市場保守時及び製品リユース時のバネ交換は難しい。そこで、バネの弾性付勢力の低下時にヒンジそのものを交換することも考えられるが、一般に自動原稿給送装置の基準位置はヒンジにより決まっているため、市場等で位置決め治具を使用しないで交換する場合は、製品自体の精度が狂う虞がある。
【0005】
そこで、バネ等弾性体の弾性付勢力をヒンジを分解したり、取り替えたりすることなく調整することができる自動原稿給送装置として、例えば特許文献1ではバネに取り付けられたネジにより、バネの弾性力を調整することができる自動原稿送給装置が提案されている。
【特許文献1】特開2002−202640公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1記載の発明では、調節用のネジがバネの弾性方向の延長線上に配置されている。一方、自動原稿給送装置のヒンジは自動原稿給送装置本体内部に収納されるようなレイアウトとなっており、ネジを調整するためには外装カバーを含め自動原稿給送装置を分解する必要がある。そのため工場出荷時や市場で調整が必要となった場合には非常に手間と時間がかかることになる。
【0007】
本発明のこのような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、開閉支持機構に使用される弾性付勢手段の弾性付勢力を容易に調整することができる自動原稿給送装置、画像読み取り装置及び画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、第1の手段は、本体部が支持部材を介して被取り付け側に開閉自在に取り付けられ、所定の範囲の開放角度内では自重を弾性付勢手段の弾性付勢力により相殺し、開放状態を維持する自動原稿給送装置において、前記弾性付勢手段の弾性付勢力を当該弾性付勢手段の弾性付勢方向と異なる方向から調整する調整手段を備えていることを特徴とする。
【0009】
第2の手段は、第1の手段において、前記異なる方向が前記弾性付勢手段の弾性付勢方向と直交する方向であることを特徴とする。
【0010】
第3の手段は、第1の手段において、前記異なる方向が前記開閉部材を開放したときに開放側に対向する方向であることを特徴とする。
【0011】
第4の手段は、第1ないし第3のいずれかの手段において、前記弾性付勢手段がコイルバネからなり、前記調整手段は前記コイルの圧縮量を調整することを特徴とする。
【0012】
第5の手段は、第4の手段において、前記調整手段が、一端が前記コイルバネの端部に実質的に当接し、当該コイルバネの伸縮方向に平行に移動して当該コイルバネを伸縮させる第1の部材と、この第1の部材を前記コイルバネの伸縮方向に平行に移動させる第2の部材とからなることを特徴とする。
【0013】
第6の手段は、第5の手段において、前記第1の部材がネジ部材からなり、前記第2の部材が前記ネジ部材と螺合し、当該ネジ部材を前記コイルバネの伸縮に移動させるダイヤルからなることを特徴とする。
【0014】
第7の手段は、第6の手段において、前記ダイヤルの操作部が、前記本体部を開放したときに開放側に露出した位置に設けられていることを特徴とする。
【0015】
第8の手段は、第5の手段において、前記第1の部材がパンタグラフ状の伸縮部材からなり、前記第2の部材が前記伸縮部材に螺合して当該伸縮部材を伸縮させるネジ部材からなることを特徴とする。
【0016】
第9の手段は、第8の手段において、前記ネジ部材の端部に設けられた操作端が、前記本体部を開放したときに開放側に露出した位置に設けられていることを特徴とする。
【0017】
第10の手段は、第5の手段において、前記第1の部材がカム部材からなり、前記第2の部材が前記カム部材を回動可能に支持する支持軸からなることを特徴とする。
【0018】
第11の手段は、第10の手段において、前記支持軸の端部に設けられた操作端が、前記本体部を開放したときに開放側に露出した位置に設けられていることを特徴とする。
【0019】
第12の手段は、第10の手段において、前記カムがインボリュート曲線で形成されていることを特徴とする。
【0020】
第13の手段は、第9または第11の手段において、前記操作端にドライバで操作するためのドライバ溝が形成されていることを特徴とする。
【0021】
第14の手段は、第1ないし第13のいずれかの手段に係る自動原稿給送装置を画像読み取り装置が備え、前記被取り付け側が画像読み取り装置本体であることを特徴とする。
【0022】
第15の手段は、第1ないし第13のいずれかの手段に係る自動原稿給装装置を画像形成装置が備え、前記被取り付け側が画像形成装置本体であることを特徴とする。
【0023】
第16の手段は、第14の手段に係る画像読み取り装置を画像形成装置が備えていることを特徴とする。
【0024】
なお、後述の実施形態において、本体部はADF300本体に、支持部材はヒンジ310に、弾性付勢手段はバネ316に、ネジ部材はネジ棒322に、ダイヤルは符号321に、伸縮部材は符号325に、ネジ部材はネジ操作軸324に、操作端は符号324aに、カムは符号327に、ドライバ溝は符号324b,327bにそれぞれ対応する。、
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、開閉支持機構に使用される弾性付勢手段の弾性付勢力を当該弾性付勢手段の弾性付勢方向と異なる方向から調整する調整手段を備えているので、前記弾性付勢手段の弾性付勢力を容易に調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態について説明する。
【0027】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置の全体構成を示す概略構成図である。同図において、画像形成装置は本体100と、画像形成装置本体100の上部の設置された画像読み取り装置200と、さらにその上に装着された自動原稿給送装置(以下、「ADF」と称す)300と、画像形成装置本体100の図1において右側に配置された大容量給紙装置400と、画像形成装置本体100の図1において左側に配置された用紙後処理装置500とから基本的に構成されている。
【0028】
画像形成装置本体100は画像書き込み部110と、作像部120と、定着部130と、両面搬送部140と、給紙部150と、垂直搬送部160と、手差し部170とからなる。
【0029】
画像書き込み部110は画像読み取り装置200で読み取った原稿の画像情報に基づいて発光源であるLDを変調し、ポリゴンミラー、fθレンズなどの走査光学系により感光体ドラム121にレーザ書き込みを行うものである。作像部は感光体ドラム121と、この感光体ドラム121の外周に沿って設けられた現像ユニット122、転写ユニット123、クリーニングユニット124及び除電ユニットなどの公知の電子写真方式の作像要素とからなる。
【0030】
定着部120は前記転写ユニット123で転写された画像を記録紙に定着する。両面搬送部140は定着部120の記録紙搬送方向下流側に設けられ、記録紙の搬送方向を用紙後処理装置500側、あるいは両面搬送部140側に切り換える第1の切換爪141と、第1の切換爪141によって導かれた反転搬送路142と、反転搬送路142で反転した記録紙を再度転写ユニット123側に搬送する画像形成側搬送路143と、反転した記録紙を用紙後処理装置500側に搬送する後処理側搬送路144とを含み、画像形成側搬送路143と後処理側搬送路144との分岐部には第2の切換爪145が配されている。
【0031】
給紙部150は4段の給紙段からなり、それぞれピックアップローラ、給紙ローラによって選択された給紙段に収納された記録紙が引き出され、垂直搬送部160に導かれる。垂直搬送部160では、各給紙段から送り込まれた記録紙を転写ユニット123の用紙搬送方向上流側直前のレジストローラ161まで搬送し、レジストローラ161では、感光体ドラム121上の顕像の画像先端とタイミングを取って記録紙を転写ユニット123に送り込む。手差し部170は開閉自在な手差しトレイ171を備え、必要に応じて手差しトレイ171を開いて記録紙を手差しにより供給する。この場合もレジストローラ161で記録紙の搬送タイミングが取られ、搬送される。
【0032】
大容量給紙装置400は同一サイズの記録紙を大量にスタックして供給するもので、記録紙が消費されるにしたがって底板402が上昇し、常にピックアップローラ401から用紙のピックアップが可能に構成されている。ピックアップローラ401から給紙される記録紙は、垂直搬送部160からレジストローラ161のニップまで搬送される。
【0033】
用紙後処理装置500はパンチ、整合、ステイプル、仕分けなどの所定の処理を行うもので、この実施形態では、前記機能のためにパンチ501、ステイプルトレイ(整合)502、ステイプラ503、シフトトレイ504を備えている。すなわち、画像形成装置100から用紙後処理装置500に搬入された記録紙は、孔明けを行う場合にはパンチ501で1枚ずつ孔明けが行われ、その後、特に処理するものがなければ、プルーフトレイ505へ、ソート、スタック、仕分けを行う場合にはシフトトレイ504にそれぞれ排紙される。仕分けは、この実施形態は、シフトトレイ504が用紙搬送方向に直交する方向に所定量往復動することにより行われる。このほかに、用紙搬送路で用紙を用紙搬送方向と直交する方向に移動させて仕分けを行うこともできる。
【0034】
整合する場合には、孔明けが行われた、あるいは孔明けが行われていない記録紙が下搬送路506に導かれ、ステイプルトレイ504において後端フェンスで用紙搬送方向を直交する方向が整合され、ジョガーフェンスで用紙搬送方向と平行な方向の整合が行われる。ここで、綴じが行われる場合には、整合された用紙束の所定位置、例えば角部、中央2個所など所定の位置がステイプラ503によって綴じられ、放出ベルトによってシフトトレイ504に排紙される。また、この実施形態では、下搬送路506にはプレスタック搬送路507が設けられ、搬送時に複数枚の用紙をスタックし、後処理中の画像形成装置100側の画像形成動作の中断を避けることができるようになっている。
【0035】
画像読み取り装置200は、第1ないし第3のミラーと2つの走行体を使用した公知のもので、コンタクトガラス210上に導かれ、停止した原稿を光学的にスキャンし、第1ないし第3のミラーを経て結像レンズで結像された読み取り画像をCCDなどの光電変換素子によって読み取る。読み取られた画像データは、図示しない画像処理回路で所定の画像処理が実行され、記憶装置に一旦記憶される。そして、画像形成時に画像書き込み部110によって記憶装置から読み出され、前述のように画像データに応じて変調し、光書き込みが行われる。
【0036】
ADF300は両面読み取り機能を有するもので、図2の取付状態を示す図から分かるように画像読み取り装置200のコンタクトガラス210設置面に2つのヒンジ310によって開閉自在に取り付けられている。図3は図1におけるADFの拡大図である。原稿は原稿台301に載置され、読み取り指示(複写指示)によって原稿台301先端の昇降部材302が原稿をピックアップローラ303に押し付ける。原稿はピックアップローラ303によって上面から1枚ずつ引き出され、搬送路303を経て、コンタクトガラス210上に送り込まれる。コンタクトガラス210上で露光された原稿は、裏面を読み取る必要がない場合には、そのまま排紙トレイ305上に排紙され、裏面を読み取る場合には、後端部が反転機構306の排紙ローラ307のニップに挟まれた状態になるまで、先端部を反転トレイ308上に送り出し、排紙ローラ307を逆転させることにより逆方向から再度コンタクトガラス210上に送り込んで裏面を読み取る。読み取られた原稿は、排紙トレイ305上に排紙される。なお、コンタクトガラス210上の原稿の搬送は搬送ベルト309によって行われる。
【0037】
図4及び図5は本実施形態に係るADF300のヒンジ部310の構成を示す側面図で、図4はADF300を閉じた状態、図5は開放した状態をそれぞれ示す。ADF300は、原稿をコンタクトガラス210上で押さえる原稿圧板としても機能するもので、原稿の読み取りを行う場合には図4に示すように閉鎖され、原稿を載置する場合には、通常最大90度開放される。ADF300は原稿を自動的に給装する機構を備えていることから前述したようにかなりの重量があるが、原稿を載置するときの作業性を考慮してコンタクトガラス210面に対して20度から60度の間のどの位置でも開放状態で静止することができるようにベース312のカム面312aとハウジング318の基端の摺動部面(カムフォロワ)318aとの接触角とバネ16の弾性力が設定されている。
【0038】
さらに詳しく説明すると、ヒンジ部310はアーム311とカム面312aを有するベース312が支軸313により支持されている。この支軸313は、ベース312を回動可能に支持し、アーム311はADF300と回転軸314を介して接続され、ベース312はネジ315により画像形成装置100に一体に構成された画像読み取り装置200の上面に固定されている。アーム311には前述のようにADF300解放時にADF300の自重とバランスさせるための付勢部材としてバネ316がそれぞれ独立したハウジング317,318により挟まれて配置されている。バネ316はハウジング317,318間を広げるように作用しており、一方のハウジング317はジャッキ機構320と接続され、ハウジング317の移動位置が規制されている。もう一方のハウジング318はベース312に当接するまで移動可能となっている。なお、この実施形態では、図6に示すようにバネ316は2本並列に設置されている。
【0039】
このような構成で、20度から60度(20°≦θ≦60°)の間のどの位置でも開放状態で静止するのは、次のような理由による。すなわち、図5においてADF300と接続されたアーム311は、回転軸313を中心としてカム形状を有するベース312にアーム311に取り付けられたハウジング318が当接するまで時計回り(図示A方向)に自由に動くことができる。ハウジング318がベース12に当接すると、ベース312のカム面312aの形状によりバネ316が圧縮され、図5においてアーム311及びADF300は回転軸313を中心に反時計回り(図示B方向)に回転力が発生する。一方、ADF300及びアーム311は自重により時計回り方向に回転しようとするため、ADF300及びアーム311の自重とバネ316の弾性付勢力がバランスし、使用者にとって力をかけずにADF300を開閉することができる。つまり、バネ316の弾性付勢力とADF300の自重とが相殺され、前記角度θ内の位置であれば静止状態を保持することができる。
【0040】
このような構成のADF300を長期間使用していると経時劣化によりバネ316の弾性付勢力が低下し、前記バランスが取れなくなり、ADF300が前記角度θの範囲内で停止することができないような状態が生じることがある。これを回避するために、本実施形態では、ハウジング317とアーム311との間に調整機構としてたジャッキ機構320を設けたものである。この実施形態おけるジャッキ機構320は作用点間の距離を自在に調整できる機構であり、この機構をバネ316のバネ長の調整に使用できるようにした。
【0041】
具体的には、バネ316の軸線方向にネジ棒322を設け、その一端をハウジング317に当接させ、他端をアーム311側に抜けるように配置し、更に、このネジ棒322にダイヤル321を螺合させ、ダイヤル321のバネ316の軸線方向の位置を規制するようにした。この構成によりダイヤル321を回転させると、ネジ棒322を軸方向に移動させることが可能となり、このネジ棒322の移動によりハウジング317をバネ316の軸線方向(図5における上下方向)に移動させ、バネの圧縮長を変更することができる。これによりバネ316の弾性付勢力が変化する。そこで、バネ316の弾性付勢力が低下してADF300が自重で閉じるようなことがあれば、バネ316の圧縮量を大きくし、バネ316の弾性付勢力を大きくし、ADF300が前記角度範囲で自然に落ちてくることがない位置までダイヤル321を回せば、前記圧縮量の調整が完了したことになる。
【0042】
なお、図4のADF300の閉鎖位置では、支軸313の中心からADF300の重心によって規定されるモーメント(時計回りのモーメント)の方が、カム面312aからの抗力によって生じるモーメント(反時計回りのモーメント)より大きくなるので、閉鎖状態が保持される。
【0043】
図6は前記ダイヤル321を使用して調整するときの状態を示す説明図である。同図から分かるように装置正面側(バネ316の伸縮方向と直交する方向)から指でダイヤル321を操作することにより簡単にバネ316の弾性付勢力の調整を行うことができる。このように指先で簡単に調整できることから、製品製造時に弾性付勢部材の弾性付勢力にばらつきが生じた場合や、市場で長期間の使用により弾性付勢力が変化した場合、製品リユースした場合にも、大がかりな装置を用いて部品を交換することなく、弾性付勢力を調整することができる。また、ダイヤル321は自動原稿給装装置300を開放したときに正面側から容易に操作することができるので、操作性にも優れたものとなっている。
【0044】
<第2の実施形態>
図7ないし図9は第2の実施形態を説明するための図で、図7及び図8はADF300のヒンジ部310の構成を示す側面図で、図7はADF300を閉じた状態、図8は開放した状態、図9は調整時の状態をそれぞれ示す。
【0045】
この第2の実施形態は、第1の実施形態におけるジャッキ機構320の変形例である。この実施形態は、第1の実施形態におけるネジ棒322とダイヤル321の組み合わせを、ネジ操作軸324とパンタグラフ状の伸縮部材(ジャッキ)325との組み合わせに変更したものである。このジャッキ325自体は、ピッチ方向が逆の1対のネジ溝が切られたネジ操作軸324と、前記ネジ溝に伸縮部材325の螺合部325aが螺合する公知の構成のものである。また、ネジ操作軸324の頭部324aの端面には、ドライバ溝324bが形成されている。そこで、図9に示すように装置正面側(バネ316の軸方向と直交する方向)からドライバ326の先端部をドライバ溝324bに挿入し、ドライバ326によってネジ操作軸324を回動させることによりネジ操作軸324と伸縮部材325の螺合位置を変え、パンタグラフ形状の脚部分の前記ネジ操作軸324に対する角度を変えて伸縮部材325の上端325bと下端325cとの間の距離を変化させている。これによりハウジング317を介してバネ316の圧縮量が変化し、バネ316の弾性付勢力を調整することができる。
【0046】
その他、特に説明しない各部は前述の第1の実施形態と同等に構成され、同等に機能するので、重複する説明は省略する。
【0047】
本実施形態によれば、バネ316の弾性付勢力の調整を伸縮部材325とネジ操作軸324を使用した所謂ジャッキ機構により、自動原稿給装装置300を開放したときに正面側から容易に操作することができるとともに、操作力を小さくて済み、優れた操作性を発揮することができる。
【0048】
<第3の実施形態>
図10ないし図12は第3の実施形態を説明するための図で、図10はADF300を綴じた状態を示す側面図、図11はADF300を開放した状態を示す側面図、図12は図11の正面図である。
【0049】
この第3の実施形態は第2の実施形態におけるジャッキ機構320をカム機構に置き換えた例である。この実施形態は、第2の実施形態ではネジ棒324とパンタグラフ形状のジャッキ325を、インボリュート曲線のカム327としてバネ316の圧縮量を変更できるようにしたものである。具体的には、前記カム327は図12に示すように支軸327aと一体に回転可能に支持され、カム327の回転角に応じて当該カム327に当接するホルダ317とアーム311との相対位置を変化させることができる。このようにカムをインボリュート曲線のものとしたので、アーム314とバネ3216のハウジング317に常に垂直に当接し、カム327の中心に対して垂直な力しか働かず、カム327を回転させて調整した後、カム327が勝手に回転する心配がない。
【0050】
これによりホルダ317とアーム311間の距離が変化し、バネ316の圧縮量を変化させることが可能となり、バネ316の弾性付勢力を調整することができる。調整は第2の実施形態と同様に、ドライバを支軸327aの端面に形成されたドライバ溝327bにドライバ326の先端を正面側(バネ316の軸方向と直交する方向)から挿入し、支軸327aを回転させる。これにより支軸327aと一体にカム327も回転し、バネ316の圧縮量を変化させ、バネ316の弾性付勢力を調整することができる。
【0051】
その他、特に説明しない各部は前述の第1の実施形態及び第2の実施形態と同等に構成され、同等に機能するので、重複する説明は省略する。
【0052】
本実施形態によれば、バネ316の弾性付勢力の調整をカムによって行うので、弾性付勢手段の弾性付勢方向に対して垂直な方向から調整することができるので、自動原稿給装装置300を開放したときに正面側から容易に操作することができる。また、カムを使用した機構のため機構全体が単純化され、そのためコストも安く抑えることができる。さらに、カムはインボリュート曲線で構成されているので、カムを回転させてもカム中心に対して垂直な力しか働かず、カムに回転方向の力が作用することがない。これによりカムが勝手に回転することがなく、調整後にずれる虞はない。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の全体構成を示す概略構成図である。
【図2】ADFの画像読み取り装置に対する取付状態を示す図である。
【図3】ADFの概略構成を示す図である。
【図4】第1の実施形態に係るADFのヒンジ部の構成を示す側面図で、ADFを閉じた状態を示す。
【図5】第1の実施形態に係るADFのヒンジ部の構成を示す側面図で、ADFを開放した状態を示す。
【図6】第1の実施形態においてダイヤルを使用してバネの弾性付勢力を調整するときの状態を示す説明図である。
【図7】第2の実施形態に係るADFのヒンジ部の構成を示す側面図で、ADFを閉じた状態を示す。
【図8】第2の実施形態に係るADFのヒンジ部の構成を示す側面図で、ADFを開放した状態を示す。
【図9】第2の実施形態においてドライバを使用してバネの弾性付勢力を調整するときの状態を示す説明図である。
【図10】第3の実施形態に係るADFのヒンジ部の構成を示す側面図で、ADFを閉じた状態を示す。
【図11】第3の実施形態に係るADFのヒンジ部の構成を示す側面図で、ADFを開放した状態を示す。
【図12】図11の正面図である。
【符号の説明】
【0054】
100 画像形成装置
200 画像読み取り装置
300 自動原稿給装装置(ADF)
310 ヒンジ
316 バネ
321 ダイヤル
322 ネジ棒
324 ネジ操作軸
324a 操作端
324b,327b ドライバ溝
325 伸縮部材
326 ドライバ
327 カム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部が支持部材を介して被取り付け側に開閉自在に取り付けられ、所定の範囲の開放角度内では自重を弾性付勢手段の弾性付勢力により相殺し、開放状態を維持する自動原稿給送装置において、
前記弾性付勢手段の弾性付勢力を当該弾性付勢手段の弾性付勢方向と異なる方向から調整する調整手段を備えていることを特徴とする自動原稿給送装置。
【請求項2】
前記異なる方向が前記弾性付勢手段の弾性付勢方向と直交する方向であることを特徴とする請求項1記載の自動原稿給送装置。
【請求項3】
前記異なる方向が前記開閉部材を開放したときに開放側に対向する方向であることを特徴とする請求項1記載の自動原稿給送装置。
【請求項4】
前記弾性付勢手段がコイルバネからなり、前記調整手段は前記コイルの圧縮量を調整することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の自動原稿給送装置。
【請求項5】
前記調整手段が、一端が前記コイルバネの端部に実質的に当接し、当該コイルバネの伸縮方向に平行に移動して当該コイルバネを伸縮させる第1の部材と、
この第1の部材を前記コイルバネの伸縮方向に平行に移動させる第2の部材と、
からなることを特徴とする請求項4記載の自動原稿給装装置。
【請求項6】
前記第1の部材がネジ部材からなり、前記第2の部材が前記ネジ部材と螺合し、当該ネジ部材を前記コイルバネの伸縮に移動させるダイヤルからなることを特徴とする請求項5記載の自動原稿給送装置。
【請求項7】
前記ダイヤルの操作部が、前記本体部を開放したときに開放側に露出した位置に設けられていることを特徴とする請求項6記載の自動原稿給送装置。
【請求項8】
前記第1の部材がパンタグラフ状の伸縮部材からなり、前記第2の部材が前記伸縮部材に螺合して当該伸縮部材を伸縮させるネジ部材からなることを特徴とする請求項5記載の自動原稿給装装置。
【請求項9】
前記ネジ部材の端部に設けられた操作端が、前記本体部を開放したときに開放側に露出した位置に設けられていることを特徴とする請求項8記載の自動原稿給送装置。
【請求項10】
前記第1の部材がカム部材からなり、前記第2の部材が前記カム部材を回動可能に支持する支持軸からなることを特徴とする請求項5記載の自動原稿給装装置。
【請求項11】
前記支持軸の端部に設けられた操作端が、前記本体部を開放したときに開放側に露出した位置に設けられていることを特徴とする請求項10記載の自動原稿給送装置。
【請求項12】
前記カムがインボリュート曲線で形成されていることを特徴とする請求項10記載の自動原稿給送装置。
【請求項13】
前記操作端にドライバで操作するためのドライバ溝が形成されていることを特徴とする請求項9または11記載の自動原稿給送装置。
【請求項14】
請求項1ないし13のいずれか1項に記載の自動原稿給送装置を備え、前記被取り付け側が画像読み取り装置本体であることを特徴とする画像読み取り装置。
【請求項15】
請求項1ないし13のいずれか1項に記載の自動原稿給送装置を備え、前記被取り付け側が画像形成装置本体であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項16】
請求項14記載の画像読み取り装置を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
本体部が支持部材を介して被取り付け側に開閉自在に取り付けられ、所定の範囲の開放角度内では自重を弾性付勢手段の弾性付勢力により相殺し、開放状態を維持する自動原稿給送装置において、
前記弾性付勢手段の弾性付勢力を当該弾性付勢手段の弾性付勢方向と異なる方向から調整する調整手段を備えていることを特徴とする自動原稿給送装置。
【請求項2】
前記異なる方向が前記弾性付勢手段の弾性付勢方向と直交する方向であることを特徴とする請求項1記載の自動原稿給送装置。
【請求項3】
前記異なる方向が前記開閉部材を開放したときに開放側に対向する方向であることを特徴とする請求項1記載の自動原稿給送装置。
【請求項4】
前記弾性付勢手段がコイルバネからなり、前記調整手段は前記コイルの圧縮量を調整することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の自動原稿給送装置。
【請求項5】
前記調整手段が、一端が前記コイルバネの端部に実質的に当接し、当該コイルバネの伸縮方向に平行に移動して当該コイルバネを伸縮させる第1の部材と、
この第1の部材を前記コイルバネの伸縮方向に平行に移動させる第2の部材と、
からなることを特徴とする請求項4記載の自動原稿給装装置。
【請求項6】
前記第1の部材がネジ部材からなり、前記第2の部材が前記ネジ部材と螺合し、当該ネジ部材を前記コイルバネの伸縮に移動させるダイヤルからなることを特徴とする請求項5記載の自動原稿給送装置。
【請求項7】
前記ダイヤルの操作部が、前記本体部を開放したときに開放側に露出した位置に設けられていることを特徴とする請求項6記載の自動原稿給送装置。
【請求項8】
前記第1の部材がパンタグラフ状の伸縮部材からなり、前記第2の部材が前記伸縮部材に螺合して当該伸縮部材を伸縮させるネジ部材からなることを特徴とする請求項5記載の自動原稿給装装置。
【請求項9】
前記ネジ部材の端部に設けられた操作端が、前記本体部を開放したときに開放側に露出した位置に設けられていることを特徴とする請求項8記載の自動原稿給送装置。
【請求項10】
前記第1の部材がカム部材からなり、前記第2の部材が前記カム部材を回動可能に支持する支持軸からなることを特徴とする請求項5記載の自動原稿給装装置。
【請求項11】
前記支持軸の端部に設けられた操作端が、前記本体部を開放したときに開放側に露出した位置に設けられていることを特徴とする請求項10記載の自動原稿給送装置。
【請求項12】
前記カムがインボリュート曲線で形成されていることを特徴とする請求項10記載の自動原稿給送装置。
【請求項13】
前記操作端にドライバで操作するためのドライバ溝が形成されていることを特徴とする請求項9または11記載の自動原稿給送装置。
【請求項14】
請求項1ないし13のいずれか1項に記載の自動原稿給送装置を備え、前記被取り付け側が画像読み取り装置本体であることを特徴とする画像読み取り装置。
【請求項15】
請求項1ないし13のいずれか1項に記載の自動原稿給送装置を備え、前記被取り付け側が画像形成装置本体であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項16】
請求項14記載の画像読み取り装置を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−229469(P2006−229469A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−39505(P2005−39505)
【出願日】平成17年2月16日(2005.2.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月16日(2005.2.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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