説明

自動取引装置

【課題】
通帳の磁気ストライプ情報が破壊された場合においても取引を継続することのできる自動取引装置を提供する。
【解決手段】
通帳に印字された通帳印字情報、通帳の磁気ストライプに記録された磁気データ、および取引カードに記録されたカード情報をそれぞれ読み取る読み取り処理部28と、表示画面に操作案内情報を表示して利用者の操作入力を受け付ける操作形表示器12と、前記読み取り処理部で読み取った通帳印字情報およびカード情報、並びに利用者が入力した暗証番号を認識し、認識結果をセンタ装置に伝送し、該センタ装置による、前記読み取り処理部による読み取りが不可能な磁気情報を持つ通帳の妥当性の判断結果を受信する上位処理部20を備え、該上位処理部20は、前記判断結果にしたがって以降の通帳のみによる取引を制限するとともに取引制限情報を前記操作形表示器12に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動取引装置に係り、特に通帳の磁気ストライプ情報が破壊された場合においても取引を継続することのできる自動取引装置の制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
図4は、従来の現金自動預け払い機等の自動取引装置の全体構成を説明する図である。図において、1は自動取引装置本体、9は本体1の操作部であり、利用者は、取引き操作の案内にしたがって、操作部9を操作して所望の入力操作を行う。7は通帳プリンタユニットであり、本体1の取込口から受け入れた通帳を通帳印字、文字読取部8に引込み、所定の印字処理を施す。6は入出金カードリーダおよびプリンタユニットである。5は制御部であり、通信回線3を通してセンタのホストコンピュータ2と通信を行う。また、この通信結果をもとに自動取引装置1を制御する。
【0003】
センタ側には上述のようにホストコンピュータ2を備え、このコンピュータにはデータベースであるセンタ元帳4が接続される。なお、センタ元帳4には、口座番号、暗証番号等の情報が格納されている。
【0004】
この装置では、通帳を使用した取引を行っているとき、磁気データの読取りエラーが発生した場合、前記通帳から読み出した通帳情報(記帳途中の印字頁、印字行等)、取引印字情報(最終残高印字情報)、カード情報(口座番号、店番号等)、および利用者が顧客操作部9を操作して入力した暗証番号を取得し、取得したこれらの情報をセンタのホストコンピュータ2に送信して、通帳の磁気データの復元を要求する。
【0005】
ホストコンピュータは、この要求に対して要求の妥当性を判断する。判断結果として許可情報が通知された場合には、この許可情報に基づいて通帳の磁気データを復元することが示されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−187756号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記従来例によれば、通帳の磁気情報を復元させることができる。しかし、破壊された通帳の磁気情報をカード情報をもとに復元するため、セキュリティの面から問題が多い。
【0007】
すなわち、外部磁界等により磁気ストライプの情報が破壊された通帳を用いて取引を行う場合、通帳の情報等から本人であることを特定し、破壊された磁気情報を復活させ、再書き込みを行うのは、セキュリティの面から顧客および金融機関共に大きなリスクを伴う。 本発明は、これらの問題点に鑑みてなされたもので、前記リスクを低減しつつ、取引の続行を図ることのできる自動取引装置の制御技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記課題を解決するため、次のような手段を採用した。
【0009】
通帳に印字された通帳印字情報、通帳の磁気ストライプに記録された磁気データ、および取引カードに記録されたカード情報をそれぞれ読み取る読み取り処理部と、表示画面に操作案内情報を表示して利用者の操作入力を受け付ける操作形表示器と、前記読み取り処理部で読み取った通帳印字情報およびカード情報、並びに利用者が入力した暗証番号を認識し、認識結果をセンタ装置に伝送し、該センタ装置による、前記読み取り処理部による読み取りが不可能な磁気情報を持つ通帳の妥当性の判断結果を受信する上位処理部を備え、該上位処理部は、前記判断結果にしたがって以降の通帳のみによる取引を制限するとともに取引制限情報を前記操作形表示器に表示する。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、以上の構成を備えるため、セキュリティの面からのリスクを低減しつつ取引の続行を図ることのできる自動取引装置の制御技術を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、最良の実施形態を添付図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る自動取引装置を説明する図である。図において、11は自動取引装置本体、12は触手入力式の操作表示器であり、利用者は、取引き操作の案内にしたがって前記操作表示器12の表示画面を操作して、所望の目的に沿った入力操作を行う。13は貨幣入出金口、14は紙幣の入出金口である。15は通帳の取込口であり、取込口から受け入れた通帳は通帳処理部16に引込まれて処理される。17は取引カードの挿入・排出口、18は明細票の排出口であり、カード処理・明細票発行部19の一部として構成されている。21はスピーカであり、利用者に操作の案内や各種案内などを音声などで伝える。
【0012】
図2は、通帳処理部16を含む自動取引装置の詳細を説明する図である。図2において、通帳取込口15(図1参照)に挿入された通帳22は、センサ23により検知される。上位処理部20から通帳取り込み指令が出力されると、制御部29はモータ25を駆動し、駆動ベルト26(一部図示せず)を介して搬送ローラ24A〜24Dを回転駆動する。通帳22等の媒体は、回転駆動される搬送ローラおよび搬送ローラに対向するローラ24a〜24dに挟持されて、取込口15から引き込まれる。光学読取部33は、取込口15から引き込まれた通帳のバーコードあるいは印字文字等の情報を読み取り、読み取った情報を読取り処理部28に送信する。
【0013】
また、取り込み口15から引き込まれた通帳は磁気ヘッド27を通過する。磁気ヘッド27は、通帳上の磁気情報を読取り、読み取った磁気情報を読取処理部28に送信する。なお、磁気ヘッドは27は通帳に貼付された磁気テープの物理的な貼付け位置に対応して配置され、磁気情報を正確に読取るようにしている。
【0014】
読取処理部28は通帳記載されたバーコード、印字文字の情報、あるいは磁気ストライプ上の磁気データを解析処理し、解析した情報を制御部29を介して上位処理部20に送信する。上位処理部20は受信した情報をもとに前記通帳を真正な通帳として受け入れるか否かの判定を行う。
【0015】
この判定は、一般的には上位処理部20内の認識処理部30が、口座番号、金融機関コード等の磁気記録情報に基づいて行う。ここで、磁気ストライプ上の磁気データが破壊されていて磁気データにリードエラーが発生した場合、磁気記録情報に基づいた解析が不可能となる。このため、この通帳は取扱えないと判断し、案内情報記憶部32に格納したデータを読み出して、例えば「この通帳はお取扱いできません。今一度通帳をお確かめください」というようなメッセージをスピーカ21で報知し、あるいは操作形表示器12に文字で表示すると共に通帳を返却する。なお、前記磁気情報のリードエラーを検出した場合は、印字ヘッド31により通帳に所定の印字を行った後、取り込み口15から排出してもよい。
【0016】
しかし、磁気データのリードエラーが発生した場合、取引カードの情報を利用して、一部の取引を継続することができる。この場合は、例えば、「通帳の磁気情報が破壊されています。取引の継続を希望される場合でこの口座の取引カードをお持ちの場合は、取引カードをお入れ下さい。」というようなメッセージをスピーカ21で報知し、あるいは操作形表示器12に文字で表示する。この案内にしたがって利用者が取引カードをカード処理・明細書発行部19に挿入し、さらに暗証番号を入力した場合は、利用者の口座を確定することができる。
【0017】
その後、光学読取部33を介して読取った通帳上のバーコードあるいは通帳上の印字文字の情報、前記取得した口座番号を上位処理部20を介してセンタへ送信する。センタでは、光学読取部33で読取った通帳上のバーコードあるいは印字文字の情報から、印字頁および印字済みの行の情報、取引カードの口座番号の情報等を比較して通帳の妥当性(真正性)を判断する。
【0018】
センタ側では、前記通帳に妥当性有りと判断したとき、「出金」を含めたカード取引を実施することを可能とする。この場合には、取引明細の印字情報を上位処理部から受け制御部29を介して印字ヘッド31により通帳に印字する。その後、通帳を逆のルートで排出口27に返却して通帳処理部の一連の処理を完結する。なお、通帳返却前には通帳の磁気ストライプの磁気情報の更新を行う。この場合には、次回の取引において通常取引可能な状態には復元せずに、「通帳の磁気情報が破損しているため、通帳のみの取引では『入金』と『記帳』の取引が可能です。また期限までに窓口にて磁気情報の更新を実施して下さい。磁気情報の更新がされていない場合は期限を過ぎると通帳のみによる取引は出来ません。」等の音声をスピーカ21で放音し、あるいは操作形表示器12で表示する。また、カード処理・明細書発行部19より上記の内容を印字した明細票を発行する。これにより、次回取引までに当該金融機関の窓口にて磁気情報の更新をしない限り当該通帳では通帳のみでは通常の取引ができないことを利用者に知らせることができる。
【0019】
図3は、自動取引装置の処理を説明する動作フロー図である。図3において、通帳取込口15に挿入された通帳は、上位処理部20から通帳取込み指令が出されると(ステップ101)、モータが起動し(ステップ102)、搬送ローラにより取込口15から引き込まれる。引き込まれた通帳は、光学読取部33および磁気ヘッド27を通過し、ここで通帳上のバーコードおよび印字文字の情報を読み取り(ステップ103)、さらに磁気データを読み取る(ステップ104)。読み取った情報は読み取り処理部28に送信される(ステップ105)。
【0020】
読み取り処理部28は、読み取った磁気データを解析し(ステップ106)、解析結果を上位処理部20に送信する(ステップ107)。上位処理部20は、受信した情報をもとに磁気データが読取り可であったか否かの判定を行う(ステップ108)。判定結果が読み取り可(通帳が利用可)である場合は、取引を継続して、現金の入出金や通帳への記帳、通帳の磁気ストライプへのデータ書き込みなどを行い(ステップ109)、その後、通帳を通帳取込み口15に返却して処理を終了する(ステップ110)。
【0021】
ステップ108において磁気データが読取り不可であると判断した場合(ステップ111)は、「通帳の磁気情報が破壊されています。取引の継続を希望される場合で、この口座の取引カードをお持ちの場合は、カードをお入れ下さい。」等のメッセージをスピーカ21で報知し、あるいは操作形表示器12に文字で表示し、取引カードの挿入を要求する(ステップ112,113)。
【0022】
カードが挿入されたらカードの磁気データを読み取り(ステップ114)、さらに暗証番号の入力を要求する(ステップ115)。暗証番号が入力されたら(ステップ116)、ステップ103で取得したバーコードおよび印字文字の情報(記帳途中の通帳頁番号、印字済みの行などの通帳情報)、並びにステップ114で取得した取引カードの情報および暗証番号を上位処理部20を介してセンタのホストコンピュータに送信する(ステップ117)。
【0023】
センタのホストコンピュータは、受信した通帳情報およびカード情報をもとに例えばセンタ元帳を参照して、前記磁気データが破壊された通帳を真正な通帳(本人の通帳)と認識することの妥当性を判断する(ステップ118)。
【0024】
ここで本人の通帳であると判断できる場合は、「通帳の磁気情報が破損しているため、期限までに窓口にて磁気情報の更新を実施して下さい。磁気情報の更新がされていない場合、期限以降は通帳のみによる取引は出来ません。」等の、磁気情報が破壊された通帳であり、このことにより通帳のみの取引では取引科目が制限される旨を顧客に知らしめるべく、案内情報記憶部より音声あるいは表示器を用いてその旨を表示する(ステップ119)。その後選択された取引種別にしたがって、入金、記帳、通帳の磁気情報の書き込みを行う(ステップ120)。前記ステップ119において案内した内容を明細票に印字し発行(ステップ121)後、カードおよび通帳を排出口に返却して一連の処理を完結する(ステップ122)。なお、ステップ118において、本人通帳と認識できない(妥当と判断できない)場合は、「通帳の磁気情報が破損しているため磁気情報の更新ができません。窓口にて磁気情報の更新を実施して下さい。」等の案内を音声あるいは表示器を用いて表示(ステップ123)表示したのち、カードおよび通帳を排出口に返却して一連の処理を完結する。
【0025】
以上説明したように、本実施形態によれば、携帯電話やハンドバッグの磁気止め金具などの接触により通帳の磁気データが破壊された通帳であっても、取引種別の時期的制限などによる条件付で取引を継続することができる。このため、顧客の当座の目的を達成することが可能となる。また、窓口に出向く頻度を低減することが可能であり、利用者の利便性を向上させることができる。特に郵便局のように通帳のみで入出金の取引可能なATMを設置する金融機関に有効であり、顧客へのサービス向上と窓口業務の省力化を期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係る自動取引装置を説明する図である。
【図2】通帳処理部16を含む自動取引装置の詳細を説明する図である。
【図3】自動取引装置の処理を説明する動作フロー図である。
【図4】従来の現金自動預け払い機等の自動取引装置の全体構成を説明する図である。
【符号の説明】
【0027】
1 自動取引装置
2 ホストコンピュータ
3 通信回線
4 センタ元帳
5 制御部
6 入出金カードの処理ユニット
7 通帳プリンタユニット
8 通帳印字文字読取部
9 操作部
10 磁気情報復元キー
11 自動取引装置本体
12 触手入力式の操作表示器
13 貨幣入出金口
14 紙幣入出金口
15 通帳の取込口
16 通帳処理部
17 取引カードの挿入・排出口
18 明細票の排出口
19 カード処理・明細書発行部
20 上位処理部
21 スピーカ
22 通帳
23 センサ
24A〜24D 搬送ローラ
25 モータ
26 駆動ベルト
27 磁気ヘッド
28 読取処理部
29 制御部
30 認識処理部
31 印字ヘッド
32 案内情報記憶部
33 光学読取部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通帳に印字された通帳印字情報、通帳の磁気ストライプに記録された磁気データ、および取引カードに記録されたカード情報をそれぞれ読み取る読み取り処理部と、
表示画面に操作案内情報を表示して利用者の操作入力を受け付ける操作形表示器と、
前記読み取り処理部で読み取った通帳印字情報およびカード情報、並びに利用者が入力した暗証番号を認識し、認識結果をセンタ装置に伝送し、該センタ装置による、前記読み取り処理部による読み取りが不可能な磁気情報を持つ通帳の妥当性の判断結果を受信する上位処理部を備え、
該上位処理部は、前記判断結果にしたがって以降の通帳のみによる取引を制限するとともに取引制限情報を前記操作形表示器に表示することを特徴とする自動取引装置。
【請求項2】
請求項1記載の自動取引装置において、
上位処理部は、通帳の磁気ストライプに記録した磁気データの読み取りが不可能であるとき、取引カードの挿入を促す情報を表示することを特徴とする自動取引装置。
【請求項3】
請求項1記載の自動取引装置において、
上位処理部は、磁気ストライプに記録した磁気データの読み取りが不可能であるとき、該通帳を使用した取引の種類を制限することを特徴とする自動取引装置。
【請求項4】
通帳に印字された通帳印字情報、通帳の磁気ストライプに記録された磁気データ、および取引カードに記録されたカード情報をそれぞれ読み取るステップと、
表示画面に操作案内情報を表示して利用者の操作入力を受け付けるステップと、
前記読み取り処理部で読み取った通帳印字情報およびカード情報、並びに利用者が入力した暗証番号を認識し、認識結果をセンタ装置に伝送するステップと、
前記センタ装置による、前記読み取り処理部による読み取りが不可能な磁気情報を持つ通帳の妥当性の判断結果を受信するステップと、
前記判断結果にしたがって以降の通帳のみによる取引を制限するとともに取引制限情報を前記操作形表示器に表示するステップ備えたことを特徴とする自動取引装置の制御方法。
【請求項5】
請求項4記載の自動取引装置の制御方法において、
前記センタ装置は前記通帳印字情報およびカード情報をもとに通帳の妥当性を判断することを特徴とする自動取引装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−79697(P2007−79697A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−263827(P2005−263827)
【出願日】平成17年9月12日(2005.9.12)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】