説明

自動塗装装置及び塗装ブース

【課題】自動塗装装置の小型化と、安定した姿勢での確実な支持と、塗装室内の気流を乱さない配置とを実現し、塗装の不良率を減少させる。
【解決手段】上記課題を解決するために本発明の自動塗装装置1は、ワークWを水平方向に回転自在に支持するワークテーブル9と、ワークテーブル9の回転駆動機構11と、ワークテーブル9と回転駆動機構11とを保持し、作業ポジション13と供給・取出しポジション15との間で180°ずつ正転方向F及び反転方向Rに旋回する旋回テーブル17と、旋回テーブル17の旋回駆動機構19とを備えるワーク搬送・支持装置3と、ワークテーブル9上にセットされたワークWの表面を3次元自動塗装する塗装用ロボット5と、ワーク搬送・支持装置3と塗装用ロボット5とを支持する低重心の支持架台7とを一体のユニットとして具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの搬入、搬出とワーク表面の自動塗装とを実行することができる自動塗装装置及び該自動塗装装置を備えた塗装ブースに係り、塗装室内の気流の乱れを少なくして、塗装品質を向上させるようにした自動塗装装置及び塗装ブースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自動塗装装置101は、図6に示すようにワーク搬送・支持装置103と、塗装用ロボット105とが別体に設けられていた。このうち塗装用ロボット105は図示のように背の高い4本の脚柱107の上方に橋梁状の支持ベース109を架け渡した高さが2230mm程度の矩形枠構造の支持架台111に対して取り付けられていた。
また、塗装用ロボット105は基台面113を垂直に保持した、横に倒れた姿勢で取り付けられており、塗装用ロボット105のロボットアーム115の作動範囲は塗装室117の下部から上部にかけての極めて広い範囲に及んでいた。
【0003】
一方、ワーク搬送・支持装置103としては平面視V字型のシャトル方式のスライドテーブルやワークの作業ポジションと供給・取出しポジションとを切り替えることができる回転テーブル119等に対してワークWを回転自在に支持するワークテーブル121を取り付けた構造の装置が使用されていた。
また上記ワークテーブル121は2枚設けられており、これら2枚のワークテーブル121に対して伝達する動力はワーク搬送・支持装置103の基部に設けられている単一の回転駆動モータ123によって供給されていた。
【0004】
また、このようにして構成される自動塗装装置101は図6に示すように密閉された塗装室117内に配置され、塗装室117内に図中矢印で示すような気流を形成する換気装置125と塗装室117内のオーバースプレー塗料を回収するオーバースプレー塗料回収装置127と共に塗装ブース131を構成していた。
そして上記塗装用ロボット105は図示のように不安定な極めて高い位置に取り付けられており、当該位置が換気装置125におけるエアAの吹出口133に近いこともあって塗装用ロボット105のロボットアーム115のほとんどの部分が上記エアAの流れる領域内に位置するようになっていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしワーク搬送・支持装置103と塗装用ロボット105を別体に設け、塗装用ロボット105を大型の矩形枠構造の支持架台111に支持させるという構成は自動塗装装置101の大型化を招き、塗装室117内における自動塗装装置101の占有容積を増大させる。また背の高い支持架台111を使用して、該支持架台111上に横に倒した姿勢で塗装用ロボット105を取り付けるという構成は塗装用ロボット105の支持状態を不安定にし、塗装用ロボット105のロボットアーム115の作動範囲を大きくする。
従ってこのような構成の塗装用ロボット105が作動すると振動を生じさせて塗装室117内を浮遊している埃や塵をワークWに付着させ易くしたり、塗装室117内のエアAの流れを乱して塗装ムラ等を発生させ、15〜20%にも及ぶ高い塗装の不良率を発生させていた。
【0006】
本発明はこのような点に基づいてなされたものでその目的とするところは、ワーク搬送・支持装置と塗装用ロボットとを一体化させることで装置の小型化と、装置の安定した姿勢での確実な支持と塗装室内の気流を乱さない配置とを実現し、塗装の不良率を格段に減少させることのできる自動塗装装置及び該自動塗装装置を備えた塗装ブースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するべく本発明の請求項1による自動塗装装置は、ワークを水平方向に回転自在に支持するワークテーブルと、該ワークテーブルの回転駆動機構と、上記ワークテーブルと回転駆動機構とを保持し、作業ポジションと供給・取出しポジションとの間で180°ずつ正転方向及び反転方向に旋回する旋回テーブルと、該旋回テーブルの旋回駆動機構とを備えるワーク搬送・支持装置と、上記ワークテーブル上にセットされたワークの表面を3次元自動塗装する塗装用ロボットと、上記ワーク搬送・支持装置と塗装用ロボットとを支持する支持架台とを、一体のユニットとして具備していることを特徴とするものである。
【0008】
また、請求項2による自動塗装装置は、請求項1記載の自動塗装装置において、上記旋回テーブルは作業ポジションと供給・取出しポジションとに向けて直線的に延びるように水平に配置された幅狭で長尺な形状の枠部材によって構成されており、上記旋回テーブルの作業ポジション側と供給・取出しポジション側のそれぞれの端部には一組ずつ、計二組のワークテーブルと回転駆動機構とが設けられていることを特徴とするものである。
【0009】
また、請求項3による自動塗装装置は、請求項1または2記載の自動塗装装置において、上記旋回駆動機構は旋回駆動モータと、該旋回駆動モータの出力軸に接続される旋回駆動用減速機と、該旋回駆動用減速機の出力軸に取り付けられる伝達ギヤと、該伝達ギヤと噛み合うリング状ギヤと、下端が上記リング状ギヤに取り付けられ、上端が上記旋回テーブルに取り付けられるとともに上記支持架台のセンターコラムに対して軸受を介して旋回自在に外嵌めされる円筒ハブとを備えていることを特徴とするものである。
【0010】
また、請求項4による自動塗装装置は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の自動塗装装置において、上記塗装用ロボットは3次元の多関節式の産業用ロボットによって構成されており、上記塗装用ロボットは基台面を水平にした状態で上記支持架台の上部に設けられている取付けベース上に取り付けられていることを特徴とするものである。
【0011】
また、請求項5による自動塗装装置は、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の自動塗装装置において、上記塗装用ロボットは前後方向にスライド可能なスライドベースを介して上記取付けベース上に取り付けられていることを特徴とするものである。
【0012】
また、請求項6による塗装ブースは、密閉された塗装室と、該塗装室内に配置されてワークの搬入、搬出とワーク表面の自動塗装とを実行する自動塗装装置と、塗装室内にエアを供給し排気することによって塗装室内に気流を形成する換気装置と、塗装室内に浮遊しているオーバースプレー塗料を塗装室外に取り出して回収するオーバースプレー塗料回収装置とを備える塗装ブースにおいて、上記自動塗装装置として請求項1〜請求項5のいずれかに記載の自動塗装装置を適用したことを特徴とするものである。
【0013】
また、請求項7による塗装ブースは、請求項5記載の塗装ブースにおいて、上記自動塗装装置は塗装室内の床面に立設された支持架台に設置され上記換気装置によって形成される塗装室内の気流を乱さない位置に配置されていることを特徴とするものである。
【0014】
そして上記手段によって以下のような作用が得られる。まず、ワーク搬送・支持装置と、塗装用ロボットとを同一の支持架台に支持させた一体構造の自動塗装装置としたことにより、自動塗装装置のコンパクト化が図れ、塗装室内における自動塗装装置の占有容積を小さくすることができる。
また、支持架台を採用し、基台面を水平にした状態で塗装用ロボットを取り付けるようにしたから、重量の重い塗装用ロボットを低い位置において安定した姿勢で支持できるようになる。またこのように安定した姿勢で塗装用ロボットを支持することによって塗装用ロボットのロボットアームの作動範囲を小さくすることができる。
また、塗装用ロボットと取付けベースとの間にスライドベースを介在させることによって塗装用ロボットの前後方向の位置調整が可能になり、ワークの形状や大きさに応じて塗装用ロボットの前後位置を調整することでロボットアームのコンパクトな作動範囲を保ちながら塗装用ロボットの広範囲な作業領域を確保できる。
【0015】
また、塗装用ロボットを低い位置で支持することによって塗装室のエアの吹出口付近の障害物を排除でき、エアの流れを整え、塗装用ロボットのロボットアームの作動範囲では塗装用ロボットに衝突したエアが塗装用ロボットの外形形状に沿って流れるいわゆるラミナー流が形成されるようになる。
また、旋回テーブルの幅狭で長尺な形状は旋回テーブルの軽量化と、旋回テーブルに付着する塗料の付着量の減少に寄与する。また、支持架台のセンターコラムに対して旋回自在に外嵌めされる円筒ハブと、該円筒ハブの下端に取り付けられるリング状ギヤ等とを備える旋回駆動機構の採用により、旋回テーブルに対するコンパクトで効率的な動力伝達が可能になる。また、旋回テーブルと3次元の塗装用ロボットとを一体化することによってより複雑な制御が可能になる。
また上記作用を奏する自動塗装装置を塗装ブースに適用することによって塗装室内の空間を広く利用できるようになり、塗装室内の床面に立設された支持架台に設置された自動塗装装置の配置を工夫することによって塗装室内の気流の乱れのない良好な状態に保つことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の自動塗装装置及び塗装ブースによると、ワーク搬送・支持装置と塗装用ロボットとを一体化させることによって装置の小型化を図り、装置の機能性を向上させることができる。また低重心タイプのコンパクトな支持架台を採用することによってワーク搬送・支持装置と塗装用ロボットとを安定した姿勢で確実に支持でき、また塗装用ロボットのロボットアームの作動範囲を小さくすることができるから、不安定な姿勢での支持等が原因で、従来生じていた振動を小さくし、ワークに対する埃や塵の付着を少なくすることができる。
また、スライドベースを利用して塗装用ロボットの前後位置を調整することでワークの形状や大きさに応じた最適な位置に塗装用ロボットを設置することができる。
また、低重心でコンパクトな構造の自動塗装装置は塗装室内の空間を広く利用できるようにし、自動塗装装置の配置を工夫することで塗装室内のエアの整流状態を保ち、従来、乱流の発生によって生じていた塗装の不良率を減少させる。またオーバースプレー塗料が作業者に付着あるいは吸引されたり、自動塗装装置等に多くに付着することはなく安全に回収され、塗装室内の換気も良好な状態に保たれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図示の実施の形態を例にとって、本発明を実施するための最良の形態を説明する。図1は本発明の塗装ブースを示す側断面図、図2は本発明の塗装ブースを示す平面図、図3は本発明の自動塗装装置を示す側断面図、図4は本発明の自動塗装装置を示す平面図、図5は本発明の自動塗装装置を示す背面図、図6は本発明の自動塗装装置の基台部周辺を拡大して示す側断面図、図7は本発明の自動塗装装置の基台部周辺を拡大して示す平面図、図8は従来の塗装ブースを示す側断面図である。
尚、以下の説明では最初に本発明の自動塗装装置の構成を中心に説明し、次いで当該自動塗装装置以外の塗装ブースの他の構成について説明し、続いて当該塗装ブースを使用して行う塗装作業の流れに従って本発明の自動塗装装置及び塗装ブースの作用と効果について言及する。
【0018】
本発明の自動塗装装置1はワーク搬送・支持装置3と、塗装用ロボット5と、支持架台7とを一体のユニットとして具備することによって構成されている。
ワーク搬送・支持装置3はワークWを水平方向に回転自在に支持するワークテーブル9と、該ワークテーブル9の回転駆動機構11と、上記ワークテーブル9と回転駆動機構11とを保持し、作業ポジション13と供給・取出しポジション15との間で180°ずつ正転方向F及び反転方向Rに旋回する旋回テーブル17と、該旋回テーブル17の旋回駆動機構19とを備えている。
【0019】
ワークテーブル9は30kg程度の荷重に耐えられる一辺の長さが500mm程度の平面視正方形状をした平板状の部材である。ワークテーブル9の中心には鉛直方向下方に向けて回転軸21が延びており、軸受23を介して旋回テーブル17に対して回転自在に支持されている。
回転駆動機構11は回転駆動モータ25と、該回転駆動モータ25の出力軸に接続される回転駆動用減速機27とによって構成されており、回転駆動用減速機27によって減速された回転駆動モータ25の回転は上記ワークテーブル9の回転軸21に伝達されるようになっている。
【0020】
旋回テーブル17は上記作業ポジション13と供給・取出しポジション15とに向けて直線的に延びるように水平に配置された幅狭で長尺な矩形枠形状の枠部材によって構成されている。
また、旋回テーブル17の作業ポジション13側と供給・取出しポジション15側のそれぞれの端部には上記ワークテーブル9と回転駆動機構11とが一組ずつ、計二組設けられている。
また、旋回テーブル17の中心部には平面視多角形状に形成された幾分幅広の座板部29が設けられており、該座板部29の中心には後述する支持架台7におけるセンターコラム31を受け入れる受入開口33が形成されている。
【0021】
旋回駆動機構19は旋回駆動モータ35と、該旋回駆動モータ35の出力軸に接続される旋回駆動用減速機37と、該旋回駆動用減速機37の出力軸に取り付けられる一例として平歯車からなる伝達ギヤ39と、該伝達ギヤ39と噛み合う一例として平歯車からなるリング状ギヤ41と、下端が上記リング状ギヤ41に取り付けられ、上端が上記旋回テーブル17に取り付けられる円筒ハブ43とを備えている。
また、円筒ハブ43は後述する支持架台7のセンターコラム31の周胴部に対して上下2段の軸受45、45を介して旋回自在に外嵌めされた状態で設けられている。
【0022】
塗装用ロボット5はワークテーブル9上にセットされたワークWの表面を3次元自動塗装するロボットで、一例として6軸3次元の多関節式の産業用ロボットによって構成されている。
塗装用ロボット5は基台部47と、基台部47から延びる3節のロボットアーム49と、該ロボットアーム49を駆動させるアーム駆動モータ51と、ロボットアーム49の先端に取り付けられるスプレーノズル53と、該スプレーノズル53に塗料Pを供給する図示しない塗料供給手段と、スプレーノズル53に塗料Pを噴霧させるためのエアを供給する図示しないエア供給手段と、上記ロボットアーム49を予め設定しておいた作動プログラムに従って作動させる図示しないコントロールボックス等を備えている。
【0023】
また上記基台部47と次に述べる支持架台7における取付けベース55との間には前後方向Xにスライド可能なスライドベース91が設けられている。スライドベース91は取付けベース55より一回り小さな矩形平板状の部材で、各コーナ部には前後方向Xに延びる4つの長穴92が形成されている。またスライドベース91の上面の作業ポジション13側の端部には支持ブロック93が設けられていて、該支持ブロック93には作業ポジション13側に水平に延びる長尺なセットボルト94が固定されている。
【0024】
一方、取付けベース55には上記長穴92に対応する位置にネジ穴95が4個設けられており、スライドベース91側から挿入される固定ボルト98と螺合し、固定されるようになっている。また、取付けベース55の上面の作業ポジション13側の端部には支持ブラケット96が設けられており、該支持ブラケット96には上記セットボルト94を受け入れる図示しない貫通穴が形成されていて、支持ブラケット96を挟むように設けられる2つのロックナット97によって上記スライドベース91はセットボルト94を介して取付けベース55に固定されるようになっている。
尚、上記長穴92によって塗装用ロボット5の前後位置は約200mmの範囲で調整できるようになっている。
【0025】
支持架台7は円筒状のセンターコラム31と、該センターコラム31の上面に取り付けられる矩形平板状の取付けベース55と、上記センターコラム31の下面に取り付けられる平板状の設置ベース57と、上記センターコラム31の周胴部の一部において供給・取出しポジション15側に張り出すように設けられる上記旋回駆動機構19用の取付ブラケット59とを備えている。
また、支持架台7の高さは800mm程度であり、従来の支持架台111の高さが2230mm程度であったのと比べるとかなり低く、低重心構造の支持架台7になっている。
【0026】
このような自動塗装装置1は図1に示すように本発明の塗装ブース61の一部として塗装室63の供給・取出し口側の扉65の近傍の床面67にアンカーボルト69等を使用して固定されている。本発明の塗装ブース61は密閉された塗装室63と、該塗装室63内に配置される上述した本発明の自動塗装装置1と、塗装室63内にエアAを供給し排気することによって塗装室63内にエアAの気流を形成する換気装置71と、塗装室63内に浮遊しているオーバースプレー塗料Pを塗装室63外に取り出して回収するオーバースプレー塗料回収装置73とを備えている。
【0027】
このうち換気装置71は塗装室63の上面に接続される給気ブロワユニット75と、該給気ブロワユニット75に接続され、塗装室63の上部に設けられるジャンパーボックス77と、該ジャンパーボックス77の下面に設置されるフィルタ79と、塗装室63の奥部側底部に設けられているベンチュリー81と、次に述べる塗料ミスト回収装置73におけるエリミネーター83上方の塗装室63の背面側に設けられる排気ブロワユニット85とを備えている。
尚、上記給気ブロワユニット75の給気流量と上記排気ブロワユニット85の排気流量は共に180m3/min〜250m3/minに設定されている。
【0028】
オーバースプレー塗料回収装置73は上記ベンチュリー81を通って流入したオーバースプレー塗料Pを捕捉し、エアAのみを上方に逃がすエリミネーター83と、回収した塗料Pを貯留する貯留槽87とを備えている。
尚、エリミネーター83にはつづら折り状に上下方向に配置された複数枚の傾斜板89が設けられており、エリミネーター83内に流入した塗料Pをこれらの傾斜板89によって捕捉し、傾斜板89上を流れる流水によって捕捉した塗料Pを水といっしょに下方の貯留槽87内に流し落とすようにする。
【0029】
次にこのようにして構成される自動塗装装置1及び塗装ブース61を使用してワークW表面の3次元自動塗装を実行する場合の作業の流れに従って、本発明の自動塗装装置1及び塗装ブース61の作用、効果について説明する。
最初に換気装置71とオーバースプレー塗料回収装置73とを起動し、塗装室63内にエアAによる気流を形成しておく。そして塗装室63前面の扉65を開けて、供給・取出しポジション15に位置しているワークテーブル9上にワークWをセットする。次に自動塗装装置1を起動すると、旋回駆動モータ35の回転が、旋回駆動用減速機37、伝達ギヤ39、リング状ギヤ41、円筒ハブ43及び旋回テーブル17に伝わって旋回テーブル17を180°正転方向Fに旋回させる。
【0030】
旋回テーブル17の旋回に伴ってワークテーブル9上にセットされたワークWは作業ポジション13に移動し、塗装用ロボット5のロボットアーム49が作動を開始すると共に、ロボットアーム49先端のスプレーノズル53から塗料Pが霧状に噴射されて、ワークW表面の3次元自動塗装を実行する。
また供給・取出しポジション15には当初作業ポジション13に位置していた空のワークテーブル9が位置しており、当該ワークテーブル9上に次のワークWをセットしておく。
【0031】
尚、スプレーノズル53から噴射された塗料Pの一部はオーバースプレー塗料Pになって塗装室63内を浮遊するが、塗装室63内には常時、給気ブロワユニット75から上記所定流量でエアAが供給され、排気ブロワユニット85から上記所定流量でエアAが排気されていることによって強制的に気流が形成されている。そして上記オーバースプレー塗料Pはこの気流に載ってベンチュリー81を通ってエリミネーター83内に搬送される。
また、供給・取出しポジション15側には、上記気流によってオーバースプレー塗料Pが漂ってくることはなく、作業者に対する塗料Pの吸引や付着も同時に防止されている。
【0032】
そしてエリミネーター83内に流入したオーバースプレー塗料Pは傾斜板89によって捕捉され、傾斜板89を流れる水と共に雫となって下方の貯留槽87内へ流れ落ち、水と分離されて再利用等に供される。
一方、エアAはエリミネーター83を通り抜け、上方の排気ブロワユニット85に向かって流れ、塗装室63外に排気される。
【0033】
尚、塗装室63内に形成されているエアAの気流の一部は塗装用ロボット5のロボットアーム49の作動範囲内を通過し、ロボットアーム49と衝突するが、上述されたラミナー流の作用によってロボットアーム49の表面形状に沿うように流れるため、気流の乱れはほとんど生じない。
ワークW表面の塗装が終了すると、旋回テーブル17を反転方向Rに180°旋回させる。これによって供給・取出しポジション15には塗装されたワークWが位置するから、当該ワークWをワークテーブル9から取り外し、次のワークWを新たにワークテーブル9にセットする。
【0034】
また作業ポジション13には上記塗装作業中にセットしておいた次のワークWが位置しており、上記と同様の手順でワークW表面の3次元自動塗装が実行される。
以下、同様な作業を繰り返すことによってワークWの3次元自動塗装を連続して実行することができる。
【0035】
以上、本実施の形態によると、次のような効果を奏することができる。まず、ワーク搬送・支持装置3と塗装用ロボット5とを一体化させることによって装置の小型化を図り、装置の機能性を向上させることができる。また低重心タイプのコンパクトな支持架台7を採用することによってワーク搬送・支持装置3と塗装用ロボット5とを安定した姿勢で確実に支持でき、また塗装用ロボット5のロボットアーム49の作動範囲を小さくすることができるから、不安定な姿勢での支持等が原因で従来、生じていたロボットアーム49の振動を小さくし、ワークWに対する埃や塵の付着を少なくすることができる。
また、スライドベース91を利用して塗装用ロボット5の前後位置を調整することでワークWの形状や大きさに応じた最適な位置に塗装用ロボット5を設置することができる。
【0036】
また、低重心でコンパクトな構造の自動塗装装置1は塗装室63内の空間を広く利用できるようにし、自動塗装装置1の配置を上記実施の形態のように工夫することで塗装室63内のエアAの整流状態を保つことができる。従って乱流の発生等によって生じていた塗装の不良率が従来15〜20%であったのを本実施の形態では約5%まで減少させることに成功した。またオーバースプレー塗料Pは作業者に付着あるいは吸引されたり、自動塗装装置1等に多く付着することはなく安全に回収され、塗装室63内の換気も良好な状態に保たれる。
【0037】
尚、本発明の自動塗装装置1及び塗装ブース61は上記の実施の形態のものに限定されず、その発明の要旨内での設計変更が可能である。例えばワークテーブル9の回転角度は0〜360°の範囲で任意に設定でき、ワークWをセットして作業ポジション13にワークテーブル9が移動した時は、ロボットアーム49の動きに合わせて回転させ、ワークテーブル9が供給・取出しポジション15に移動した時にはワークWの供給・取出し作業の安全性を考えて回転しないように選択的に設定することが可能である。また旋回テーブル17の形状や大きさは上述した実施の形態の形状や大きさに限定されることなく、種々の形状や大きさのものが採用可能であり、ワークテーブル9及び回転駆動機構11の数も上述した実施の形態のように二組に限らず一組でもよいし、三組以上設けても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明はワークの搬入、搬出とワーク表面の3次元自動塗装とを実行することができる自動塗装装置及び該自動塗装装置を備えた塗装ブースの製造、使用分野等で利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施の形態を示す図で、本発明の塗装ブースを示す側断面図である。
【図2】本発明の実施の形態を示す図で、本発明の塗装ブースを示す平面図である。
【図3】本発明の実施の形態を示す図で、本発明の自動塗装装置を示す側断面図である。
【図4】本発明の実施の形態を示す図で、本発明の自動塗装装置を示す平面図である。
【図5】本発明の実施の形態を示す図で、本発明の自動塗装装置を示す背面図である。
【図6】本発明の実施の形態を示す図で、本発明の自動塗装装置の基台部周辺を拡大して示す側断面図である。
【図7】本発明の実施の形態を示す図で、本発明の自動塗装装置の基台部周辺を拡大して示す平面図である。
【図8】従来例を示す図で、従来の塗装ブースを示す側断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 自動塗装装置
3 ワーク搬送・支持装置
5 塗装用ロボット
7 支持架台
9 ワークテーブル
11 回転駆動機構
13 作業ポジション
15 供給・取出しポジション
17 旋回テーブル
19 旋回駆動機構
21 回転軸
23 軸受
25 回転駆動モータ
27 回転駆動用減速機
29 座板部
31 センターコラム
33 受入開口
35 旋回駆動モータ
37 旋回駆動用減速機
39 伝達ギヤ
41 リング状ギヤ
43 円筒ハブ
45 軸受
47 基台部
49 ロボットアーム
51 アーム駆動モータ
53 スプレーノズル
55 取付けベース
57 設置ベース
59 取付ブラケット
61 塗装ブース
63 塗装室
65 扉
67 床面
69 アンカーボルト
71 換気装置
73 オーバースプレー塗料回収装置
75 給気ブロワユニット
77 ジャンパーボックス
79 フィルタ
81 ベンチュリー
83 エリミネーター
85 排気ブロワユニット
87 貯留槽
89 傾斜板
91 スライドベース
92 長穴
93 支持ブロック
94 セットボルト
95 ネジ穴
96 支持ブラケット
97 ロックナット
98 固定ボルト
W ワーク
F 正転方向
R 反転方向
P 塗料(オーバースプレー塗料)
A エア
X 前後方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを水平方向に回転自在に支持するワークテーブルと、該ワークテーブルの回転駆動機構と、上記ワークテーブルと回転駆動機構とを保持し、作業ポジションと供給・取出しポジションとの間で180°ずつ正転方向及び反転方向に旋回する旋回テーブルと、該旋回テーブルの旋回駆動機構とを備えるワーク搬送・支持装置と、
上記ワークテーブル上にセットされたワークの表面を3次元自動塗装する塗装用ロボットと、
上記ワーク搬送・支持装置と塗装用ロボットとを支持する支持架台とを、
一体のユニットとして具備していることを特徴とする自動塗装装置。
【請求項2】
上記旋回テーブルは作業ポジションと供給・取出しポジションとに向けて直線的に延びるように水平に配置された幅狭で長尺な形状の枠部材によって構成されており、上記旋回テーブルの作業ポジション側と供給・取出しポジション側のそれぞれの端部には一組ずつ、計二組のワークテーブルと回転駆動機構とが設けられていることを特徴とする請求項1記載の自動塗装装置。
【請求項3】
上記旋回駆動機構は旋回駆動モータと、該旋回駆動モータの出力軸に接続される旋回駆動用減速機と、該旋回駆動用減速機の出力軸に取り付けられる伝達ギヤと、該伝達ギヤと噛み合うリング状ギヤと、下端が上記リング状ギヤに取り付けられ、上端が上記旋回テーブルに取り付けられるとともに上記支持架台のセンターコラムに対して軸受を介して旋回自在に外嵌めされる円筒ハブとを備えていることを特徴とする請求項1または2記載の自動塗装装置。
【請求項4】
上記塗装用ロボットは3次元の多関節式の産業用ロボットによって構成されており、上記塗装用ロボットは基台面を水平にした状態で上記支持架台の上部に設けられている取付けベース上に取り付けられていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の自動塗装装置。
【請求項5】
上記塗装用ロボットは前後方向にスライド可能なスライドベースを介して上記取付けベース上に取り付けられていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の自動塗装装置。
【請求項6】
密閉された塗装室と、該塗装室内に配置されてワークの搬入、搬出とワーク表面の自動塗装とを実行する自動塗装装置と、塗装室内にエアを供給し排気することによって塗装室内に気流を形成する換気装置と、塗装室内に浮遊しているオーバースプレー塗料を塗装室外に取り出して回収するオーバースプレー塗料回収装置とを備える塗装ブースにおいて、上記自動塗装装置として請求項1〜請求項5のいずれかに記載の自動塗装装置を適用したことを特徴とする塗装ブース。
【請求項7】
上記自動塗装装置は塗装室内の床面に立設された支持架台に設置され上記換気装置によって形成される気流を乱さない位置に配置されていることを特徴とする請求項6記載の塗装ブース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−221098(P2008−221098A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−61295(P2007−61295)
【出願日】平成19年3月12日(2007.3.12)
【出願人】(507080307)株式会社市川工研 (2)
【Fターム(参考)】