説明

自動患者管理環境における患者データ収集の適応的な調整

自動患者管理環境(10)において患者データ収集(111)を適応的に調整するためのシステム(100)および方法(80)を提示する。連続遠隔患者管理(12)を介して患者(14)の健康を監視する。実質的に定期的に患者(14)から生理学的測定値(42〜44)を収集する(81)。患者(14)に影響を及ぼす健康状態に関する現状、進行、退行、発現、または該健康状態が存在しないことにおける傾向を認識するための査定に基づいて、患者の健康状態(32)を評価する(82)ために、収集された生理学的測定値(42〜44)を分析する。患者(14)の健康における実行可能な変化(83)を識別する。実行可能な変化(83)に応じて、生理学的測定値(42〜44)の収集を動的に調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は、概して、自動患者管理に関し、より具体的には、自動患者管理環境における患者データ収集を適応的に調整するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景技術)
遠隔患者管理によって、医師等の臨床医、看護師、またはその他のヘルスケア提供者は、医療関係者の存在または支援を必要とせずに患者データを収集および転送する在宅ケア医療デバイスを介して、患者の健康を追跡調査することが可能になる。遠隔患者管理は、インターネット等のデータ通信ネットワーク上で提供可能である。患者毎に1つ以上の医療デバイスは、患者の家庭に導入されるリピータ等の専用患者管理デバイスを介して集中型サーバと遠隔的に相互接続される。患者管理デバイスは、診療所内の患者用医療デバイスに問い合わせを行なう従来のプログラマを補う。このインフラストラクチャによって、診療所を訪れる費用をかけることなく、専門のヘルスケアスタッフが患者の健康を連続的に監視および集中的に分析することが可能になる。
【0003】
遠隔患者管理によって、急性の疾患の急速な発現または慢性的な疾患の段階的発現を含む、患者の健康に対する変化の早期識別が可能になるが、監視された生理学的測定値によって検出された変化は、疾患またはその他の異常な健康状態によるものであり、また、不適切な食事または疲労等の無害な要因に起因し得る。多くの場合、患者の健康における変化が医学的配慮を必要とし得るという最初の徴候は、頭痛、無気力、またはその他の身体的不快を患う患者の主観的な質的感覚である。
【0004】
遠隔患者管理は、特に、高頻度の収集、報告、および分析を実行する場合に、患者の母集団全体について収集可能な可能情報量によるデータオーバーロードに関する固有の潜在性を有する。日常的に患者データを収集することによって患者の健康および状態の監視および評価が促進されるが、健康状態が安定かつ不変の患者の過剰監視が、ネットワーク通信帯域幅、処理サイクル、およびストレージ能力を含むリソースを不必要に消費し得る。身体の健康に対する実際の懸念または感知される懸念を提示する患者を適応的に対処するには、監視を増加させるほうが良いが、遠隔患者監視に対する従来の手法は、静的患者データ収集モデルを採用している。
【0005】
Brownに対する特許文献1は、ヘルスケア提供者が、患者の健康状態を監視および管理することを可能にするシステムおよび方法を開示している。クリアリングハウスコンピュータは、データ管理ユニットを介して患者と通信し、このデータ管理ユニットは、質問をし、クリアリングハウスコンピュータに返送する回答を受信することによって、患者の健康状態を対話形式で監視する。また、血糖モニタまたは最大呼気流量計等の生理学的監視デバイスによって患者情報を供給してもよい。ヘルスケア専門家は、データを処理、分析、印刷、および表示可能なクリアリングハウスコンピュータを介して患者情報にアクセスすることができる。しかしながら、データ収集の固定の周期性は、ヘルスケア専門家の自己の判断により規定され、健康状態が変化する際に自動的に調整されない。
【0006】
Kumarらに対する特許文献2(以下、「Kumar」)は、携帯型遠隔患者監視デバイスを開示している。電子パッチを含む使い捨てセンサバンドは、バイタルサインデータを検出し、患者が装着するまたは患者に近接する信号伝送ユニットに伝送する。基地局は、収集されたデータを遠隔監視局に伝送するための信号伝送ユニットからデータ伝送を受信する。閾値の超過が発生する場合に、基地局から患者に指示が提供される。しかしながら、データ収集の頻度は固定であり、データ収集に対する変化は、手動で特定しなければならない。
【0007】
Surwitらに対する特許文献3(以下、「Surwit」)は、中央データ処理システムを開示しており、この中央データ処理システムは、投薬量の推奨を生成する投薬量アルゴリズムを実装し得る患者監視システムと通信し、また、そこからデータを受信するように構成される。指を刺すことにより得られる血液は、中央データ処理システムにおいて調査するために、化学的に処理されたストリップ上で読み取られてもよい。投薬量の修正、投薬量アルゴリズム、患者の固定または不確定の自己監視スケジュール、ならびにその他の治療情報が通信される。しかしながら、システムは、データ収集の頻度に影響を及ぼすように、自己監視スケジュールの変化を通知および調整する患者に依存する。
【0008】
Starkらに対する特許文献4(以下、「Stark」)は、医療性能管理のためのシステムを開示している。個人用整形外科用抑制デバイス等の監視デバイスは、調整監視される回復スキームに従う治療に基づいて、整形外科的負傷の患者に実行される生物学的マニピュレーションプロトコルに対する患者の行動を監視する。携帯型、好ましくは手持ち式のコンピュータは、監視デバイスからのデータを記録し、分析のために中央コンピュータにデータを提供する。概して、システムは、目標試行型の閉ループ監視システムとして機能する。しかしながら、監視されたデータの収集は、患者に処方中の治療プロトコル毎に固定である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6,168,563号明細書
【特許文献2】米国特許第6,416,471号明細書
【特許文献3】米国特許第6,024,699号明細書
【特許文献4】米国特許第6,827,670号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、患者の健康の変化に応じて、生理学的測定値の収集を適応的に調整する必要がある。好ましくは、このような手法は、客観的および主観的な患者の入力に応じて、一時的サンプリング、体積測定サンプリング、および組成サンプリングの必要性に対して、データ収集メトリクス(metrics)を自動的に増減し得る。
【課題を解決するための手段】
【0011】
システムおよび方法は、集中型サーバ、患者管理デバイス、または内蔵および外付けの医療治療デバイスおよび医療センサを含む医療デバイスによって患者データを収集する方式を変化することを含む。患者データは、治療中の患者から直接測定されるまたは間接的に提供される質的および量的の両方の生理学的測定値を含むことが可能である。臨床医特有の基準、自動基準、および患者特有の基準は、患者データ収集の変化をもたらすトリガとし実装される。変化は、一時的、体積測定、および組成の患者データ収集メトリクスを、デバイスのうちの少なくとも1つにもたらすことが可能であり、1つ以上の変化は、任意の所定時間において有効であることが可能である。
【0012】
一実施形態は、自動患者管理環境において患者データ収集を適応的に調整するためのシステムおよび方法を提供する。連続遠隔患者管理を介して患者の健康を監視する。実質的に定期的に患者から生理学的測定値を収集する。患者に影響を及ぼす健康状態に関する現状、進行、退行、発現、または該健康状態が存在しないことにおける傾向を認識するための査定に基づいて、患者健康状態を評価するために、収集された生理学的測定値を分析する。患者における実行可能な変化を識別する。実行可能な変化に応じて、生理学的測定値の収集を動的に調整する。
【0013】
さらにその他の実施形態は、以下の詳細な説明により当業者に容易に明らかになり、本発明の実施形態は、本発明を実行するために熟考された最良の形態を例示することによって記載されている。当然のことながら、本発明は、その他の実施形態および異なる実施形態に対応することが可能であり、そのいくつかの詳細は、全てが本発明の精神および範囲から逸脱することなく、種々の明らかな点において修正することができる。したがって、図面および詳細な説明は、事実上例示的なものであり、制限的なものではないとみなされるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、一例として、自動患者管理環境を示す機能ブロック図である。
【図2】図2は、一例として、患者の状態およびデータ収集周期性を時間の関数として示すグラフ図である。
【図3】図3は、一例として、図1の環境における患者データ入力ソースを示すデータフロー図である。
【図4】図4は、一例として、図1の環境における患者データ収集調整トリガを示すデータフロー図である。
【図5】図5は、一例として、図1の環境における患者データ収集メトリクスを示すデータフロー図である。
【図6】図6は、図1の環境における動的生理学的測定値収集調整を示すベン図である。
【図7】図7は、一実施形態に従い、自動患者管理環境における患者データ収集を適応的に調整するステップを示す工程フロー図である。
【図8】図8は、一実施形態に従い、自動患者管理環境における患者データ収集を適応的に調整するステップを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
自動患者管理は、2004年5月27日に公開されて係属中の同一出願人による米国特許出願公開番号第2004/0103001号に記載されるように、遠隔患者管理および患者の健康の自動診断を含む種々の行為を包含し、この米国特許出願公開番号第2004/0103001号の開示は参照することによって援用される。このような行為は、患者の家またはオフィス等の患者に近接して、病院、診療所、または医師のオフィス等からの集中型サーバを主に介して、あるいはセキュアな無線移動コンピューティングデバイス等の遠隔ワークステーションを介して、実行可能である。図1は、一例として、自動患者管理環境10を示す機能ブロック図である。一実施形態において、患者14は、患者管理デバイス12等の1つ以上の患者監視または通信デバイスに近接し、この患者監視または通信デバイスは、インターネット等のインターネットワーク11上で、あるいは従来の電話ネットワークまたは移動電話ネットワーク等の公衆電話交換(図示せず)を介して集中型サーバ13に遠隔的に相互接続される。その他の患者監視または通信デバイスも可能である。さらに、インターネットワーク11は、従来の有線および無線の両方の相互接続性を提供することが可能である。一実施形態において、インターネットワーク11は、伝送制御プロトコル/インターネットプロトコル(TCP/IP)ネットワーク仕様に基づくが、その他の種類または組み合わせのネットワーク実装も可能である。同様に、その他のネットワークトポロジおよび配置も可能である。
【0016】
各患者管理デバイス12は、治療中の患者14に一意的に割り当てられ、有線接続性等の直接的手段、あるいは、例えば「強固な」BluetoothまたはIEEE802.11ワイヤレスフィデリィティ「WiFi」および「WiMax」インターフェース規格に基づく誘導または選択的無線周波数等の間接的手段を介して、局所的およびネットワークによりアクセス可能なインターフェースを、1つ以上の医療デバイス15〜18に提供するようにする。患者データソースのインターフェースのその他の構成および組み合わせも可能である。医療治療デバイスには、ペースメーカ、埋め込み型心臓細動除去器(ICD)、薬物ポンプ、および神経刺激器等の埋め込み型医療デバイス(IMD)15と、自動外部除細動(AED)等の外部医療デバイス(EMD)16とが含まれる。医療センサには、埋め込み型心臓および呼吸モニタならびに埋め込み型診断マルチセンサ非治療的デバイス等の埋め込み型センサ17と、ホルターモニタ、体重計、および血圧計バンド等の外部センサ18とが含まれる。埋め込み型および外部のその他の種類の医療治療デバイス、医療センサデバイス、および測定デバイスも可能である。
【0017】
患者データは、質的または量的であることが可能である生理学的測定値と、患者データソース自体の状態および動作特徴に関するパラメータデータと、温度または時刻等の環境パラメータとを含む。医療デバイス15〜18は、主要機能または補足機能のどちらかとして患者データ22を収集および転送する。医療デバイス15〜18は、一例として、患者14に治療を供給および提供する埋め込み型および外部の医療治療デバイスと、患者14に関する生理学的データを感知する埋め込み型および外部医療センサと、環境パラメータおよび患者14とは独立して発生するその他のデータを測定する測定デバイスと、を含む。その他の種類の患者データも可能である。各医療デバイス15〜18は、1つ以上の種類の患者データを生成することが可能であり、また、治療の供給、生理学的データの感知、環境パラメータの測定、またはその機能の組み合わせのための1つ以上の構成要素を内蔵することが可能である。
【0018】
通常、患者データ22は、医療デバイス15〜18によって収集され、分析可能である患者管理デバイス12に転送され、次に、患者データ22は、集中型サーバ13にも転送される。初期設定により、各医療デバイス15〜18、患者管理デバイス12、および集中型サーバ13は、固定レートで患者データ22を収集し、一実施形態において、そのレートは、治療中の患者14の近接性により変動可能である。例えば、患者の間近にある医療デバイス15〜18は、一般的に、症状の発現毎またはスケジュールベース等の、最も高い頻度で患者データ22を収集するが、一方で、患者管理デバイス12および集中型サーバ13は、それぞれ、毎日および毎週ベースで患者データ22を収集する。その他のデータ収集周期性も可能である。図2に関連してさらに後述するように、患者の状態の変化または変化の可能性に関する通知を感知または受信すると、患者データ収集メトリクスを規定するパラメータは、変化またはその他の要因に応じて動的に調整可能である。臨床医特有の基準、自動基準、および患者特有の基準は、感知された患者の健康の変化の種類およびその他の要因に基づいて、患者データ収集のための一時的メトリクス、体積測定メトリクス、または組成メトリクスを増減させる1組のトリガを規定する。患者データ収集メトリクスは、患者の健康が改善または悪化する場合に、必要に応じてさらに調整可能であり、患者の回復、臨床医の指令またはその他の指示時に通常の患者データ収集を再開することが可能である。
【0019】
さらなる実施形態において、データ値を患者14によって直接入力することが可能である。例えば、健康の質問に対する回答を、キーボード、ディスプレイ、マイクロホン、およびスピーカ等のユーザインターフェース手段を含むパーソナルコンピュータ等の患者システム19に入力することが可能である。このような患者により提供されたデータ値は、患者情報として収集され得る。医療デバイス15〜18は、実質的に連続的ベースまたはスケジュールベースで量的生理学的測定値を収集し、治療または異常読み取り等の事象の発生を記録する。さらなる実施形態において、患者管理デバイス12、患者システム19、または類似のデバイスは、質的で主観的な生活の質(QOL)測定値を記録または通信し、この測定値は、特定時間に患者14が感じる身体的健康の個人的印象を反映する。その他の種類の患者データ収集の周期性およびストレージも可能である。
【0020】
さらなる実施形態において、収集された患者データは、インターネットワーク11で局所的に構成されるまたは遠隔的に相互接続される1つ以上のクライアント20によっても、査定および分析可能である。開示が参照することによって援用される、2005年5月3日に出願されて係属中である同一出願人による米国特許出願第11/121,593号および2005年5月3日に出願されて係属中である米国特許出願第11/121,594号にそれぞれ記載のように、クライアント20を、例えば、臨床医が使用することによって、データベース21に集められた格納患者データ22にセキュアにアクセスし、また、ヘルスケア提供のための患者を選択および優先付けすることが可能である。本明細書において、医師または臨床医に関連して記載しているが、全体の説明は、病院、診療所、および研究所を含む組織、ならびに患者データへのアクセス認可を求める研究者、科学者、大学、および政府機関等のその他の個人または同業者に同様に適用される。
【0021】
さらなる実施形態において、収集、アセンブリ、評価、伝送およびストレージ中を含む患者データ22は、第三者への非認可開示から保護され、患者のプライバシを保護し、医療保険の携行性と責任に関する法律(HIPAA)および欧州プライバシ法等の、最近成立した医療情報プライバシ法律に順守するようにする。少なくとも、健康および医療関連情報で特定の個人を識別する患者健康情報は、保護可能であるものとして扱われるが、特定の患者の健康情報に付加的にまたは代替的に、その他の種類の機密情報も保護可能であり得る。
【0022】
好ましくは、サーバ13は、単一、多数、分散型処理システムとして構成されるサーバ級のコンピューティングプラットフォームであり、患者システム19およびクライアント20は、個人用デスクトップ型またはノート型コンピュータ等の、汎用コンピューティングワークステーションである。さらに、患者管理デバイス12、サーバ13、患者システム19、およびクライアント20は、ソフトウェアプログラムをそれぞれ実行するプログラム可能コンピューティングデバイスであり、例えば、中央処理ユニット(CPU)、メモリ、ネットワークインターフェース、永久ストレージ、およびこれらの構成要素を相互接続するための種々の構成要素等の、コンピューティングデバイスに従来見られる構成要素を含む。
【0023】
患者データの収集は、治療中の患者の状態の変化による動的調整に従って、固定スケジュールで実行される。図2は、一例として、患者の状態およびデータ収集周期性36a〜dを時間の関数31として示すグラフ図30である。X軸は、時間31を表し、Y軸は、治療中の患者14の健康状態32を表す。
【0024】
患者の健康状態32は、経時的31な関数33として追跡可能である。関数33は、客観的で量的な生理学的測定値または主観的で質的な患者入力に基づくことが可能であり、これらは、個別あるいは集合または組み合わせとして取られ、それぞれを、患者データ収集に対する動的調整を引き起こすことが可能である上限および下限閾値34、35と比較することが可能である。患者データ収集の頻度は、1組の周期性36a〜dとして追跡可能であり、その各々は、異なる固定レートにおける患者データ収集の時間周期を示す。患者データ収集周期性は、患者データ収集を示さない無限大からリアルタイムの患者データ収集を示すゼロの間で変動可能である。異なる患者データ収集周期性への移行は、図4に関連してさらに後述されるように、閾値34、35、またはその他の基準によってトリガされることが可能である。例えば、毎日1サンプル36aから4時間毎に1サンプル36bへ変化する患者データ収集周期性は、患者の健康状態32が下限閾値34を超過する際にトリガされ得る。同様に、患者データ収集周期性は、患者の健康状態32が上限閾値35を超過する際に、30分毎に1サンプル36cに移行し得る。毎日1サンプル36dの通常の患者データ収集周期性は、患者の健康状態32が、下限閾値34未満に下がる際に再開し得る。サンプリングレートに加えて、患者データ収集メトリクスに対するその他種類の変化も、図5に関連してさらに後述するように、個々に、あるいは特定の各変化または変化の群のための1つ以上の基準と組み合わせて使用可能である。さらに、患者データ収集に対する動的調整は、1つ以上のトリガに対して発生し得るが、変化によって影響を受けるデバイスの通常の機能は、引き続き動作し、定期的に患者データを収集する。多数の患者データ収集メトリクスに対する変化が適用され得る。
【0025】
生理学的測定値形式の患者データは、直接的または間接的ソースから生じることが可能である。図3は、一例として、図1の環境10における患者データ入力ソース42〜44を示すデータフロー図40である。患者データ41の組成は、患者データ41に寄与する患者データ入力ソース42〜44に依存する。一般的に、医療デバイス15〜18は、客観的な量的患者データまたは患者から直接の主観的な質的患者データの収集に限定される。対照的に、患者用医療デバイス12は、埋め込み型ソースからの量的測定値42および外部ソースからの量的測定値43、ならびに身体的健康に関する患者の主観的な感覚を探査するためにクエリを提示することによって入手可能である質的データ41を含む患者データ41を収集することが可能である。また、集中型サーバ13も、埋め込み型および外部ソースからの量的生理学的測定値42、43と、全体の患者母集団、部分母集団、または群のための質的生理学的測定値44とを含む患者データ41を収集することが可能である。したがって、患者データ41の特徴は、収集点に依存している。その他の患者データ入力ソースも可能である。
【0026】
患者データ収集に対する動的変化は、患者の状態に直接的または間接的に影響を及ぼすおよび作用する量的および質的な異なる基準によってトリガされることが可能である。図4は、一例として、図1の環境10における患者データ収集調整トリガを示すデータフロー図50である。患者データ収集に対する1つ以上の調整は、個別に、あるいは各基準の集合または組み合わせとしてまたはそれによってトリガされることが可能である。患者データ収集調整トリガ51は、臨床医特有の基準52、自動基準53、および患者特有の基準54を含む。その他の自動トリガも可能である。
【0027】
臨床医特有の基準52は、臨床医から受信する指示に基づき、量的または質的トリガを含むことが可能である。量的トリガは、一般的に、客観的閾値あるいはその他の自動限度または境界条件を設定する。質的トリガは、一般的に、主観的な患者指示に応答する。両方の種類のトリガは、1つ以上のメトリクス上で実行される患者データ収集を調整する。例えば、臨床医は、自動タイマを設定して、新しい治療プロトコルに対する患者反応を観測するために、毎日同じ時間に患者データ収集を実行してもよい。さらなる例として、単一突然心臓発作および心筋梗塞を以前患ったことのある患者で、動機を感じる患者は、医師からのケアを求めてもよい。患者の診断を支援するために、医師は、患者のIMDをトリガする磁石を患者に与えて、患者が動機を感じ始めるたびにECGを記録するようにしてもよい。患者は、医師に通知するように指示を受けていてもよく、次に、医師は、ECGデータを検索および分析することが可能である。
【0028】
自動基準53は、デバイスにプログラミングされる規則または制御に基づいて、量的トリガを含むことが可能である。一般的に、このような規則および制御は、臨床医が、デバイス動作をカスタマイズおよび微調整できるようにパラメータ化可能であるが、不変の規則および制御も可能である。例えば、脈数が毎分70回から脈数が毎分60回までの減少等の、心拍が徐々に減少している患者は、自動基準53をトリガして、毎日ベースで心電図記録を記録およびアップロードし、異常な健康状態の徴候について患者をフォローできるようにする。
【0029】
最後に、患者特有の基準54は、患者の身体的健康に関する患者の主観的知覚に基づく質的トリガを含むことが可能である。患者特有の基準54は、本質的に質的であり、規則または制御によるトリガ51として、または患者が開始する行動によって実装されてもよい。質的生理学的測定値は、一般的に、知覚された身体的健康を懸念する患者を探査するクエリに応答して提供され、特定の種類の患者応答は、多くの場合一時的に患者データ収集に対する調整をトリガするように実装可能である。例えば、息切れを報告する患者は、少なくとも息切れの不快感が続く間、データ収集を一時的に増加する必要があり得る。
【0030】
トリガ51の各々は、個別に、あるいはその他のトリガ51と併用して機能することが可能であり、また、特定の種類、集合の種類、または組み合わせの種類の生理学的測定値の患者データ収集に対する1つ以上の変化をもたらすことが可能である。
【0031】
患者データ収集に加えられる変化の種類は、影響を受けるメトリクスに依存する。図5は、一例として、図1の環境10における患者データ収集メトリクスを示すデータフロー図60である。影響を受ける患者データ収集メトリクス61の種類は、変化を引き起こすトリガ51に部分的に依存する。一時的メトリクス62は、患者データのサンプリングの頻度および持続時間に影響を及ぼす。体積測定メトリクス63は、サンプルの数および一回の特定のサンプリングで取られるサンプルの量およびサイズに影響を及ぼす。組成メトリクス64は、量的および質的データを含む、収集される生理学的測定値の種類に影響を及ぼす。メトリクス61のうちの1つ以上は、患者データ収集の変化に応じて修正可能である。さらに、メトリクス61に対する変化は、別々に、あるいは、その他の患者データ収集の変化と集合してまたは組み合わせて、ならびに定期的な進行中の患者データ収集に付加的にまたは代替的に影響を受けることが可能である。その他の種類の患者データ収集メトリクスも可能である。
【0032】
データ収集の変化は、遠隔患者管理インフラストラクチャの1つ以上のレベルにおいて行われることが可能である。図6は、図1の環境10における動的生理学的測定値収集調整を示すベン図70である。患者データ収集調整の最も一般的な形式は、サーバ固有レベル71において発生する。このような変化は、患者群または母集団について発生し、集中型サーバ13、患者管理デバイス12、または医療デバイス15〜18の患者データ収集を制御するパラメータを修正する。
【0033】
個々の患者14に特定の患者データ収集に対する変化は、患者管理デバイス固有レベル72において最も適切に行われる。このような変化は、患者専用の患者管理デバイス12のみに影響を及ぼし、また、1つ以上の医療デバイス15〜18に影響を及ぼすことが可能である。
【0034】
一般的に、医療デバイス15〜18は、事象ベースまたは発現ベースの方式で動作するが、デバイス固有レベル73において患者データ収集に対する変化をもたらすように構成され得る。このような変化により、トリガされた基準に基づき監視およびデータ収集を追加して、医療デバイス15〜18は、進行中の治療または感知を増加する必要がある。デバイス固有レベル73における変化は、関連の患者管理デバイス12または集中型サーバ13により実行されるデータ収集に通常は影響を及ぼさないが、医療デバイス15〜18に対処するように実行される患者データ収集を修正するようにこれらのデバイスを間接的にトリガすることが可能である。
【0035】
患者データは、医療デバイス15〜18、患者管理デバイス12、および集中型サーバ13で始まる全レベルにおいて収集される。図7は、一実施形態に従い、自動患者管理環境10における患者データ収集を適応的に調整するステップを示す工程フロー図80である。患者データ収集に対する動的変化は、影響を受けるインフラストラクチャのレベルから独立した連続サイクルに従う。各サイクル中に、質的および量的の両方のデータを含むことが可能である生理学的測定値を収集する(動作81)。特定の医学的懸念を診断するために、あるいは別の目的のために、進行中の監視または感知の一部として、生理学的測定値を収集することが可能である。
【0036】
次に、患者の状態を評価する(動作82)。患者データを相対的に量的および質的に分析することによって患者の状態を査定し、健康状態を示す傾向または潜在的に患者に影響を及ぼす健康状態が存在しないことを認識する。この傾向は、医学的懸念に関する医学的進行、退行、発現、または存在しないこと、ならびに現状または不変状態が含むことが可能である。その他の種類の傾向も認識可能である。さらなる実施形態において、医学的懸念に関する健康状態または健康状態が存在しないことを示し得る非傾向的逸脱について患者データを分析する。
【0037】
患者の健康における実行可能な任意の変化を識別する(動作83)。実行可能な変化は、図4に関連して上述のように、臨床医特有の基準、自動基準、または患者特有の基準に基づいて、状態をトリガすることによってもたらされ得る。実行可能な変化が識別されない場合、生理学的測定値の収集(動作81)が再開する。あるいは、患者データ収集パラメータを調整して(動作84)、図5に関連して上述のように、1つ以上の患者データ収集メトリクスを変化し、その後、生理学的測定値収集を継続する(動作81)。上述の動作に付加的または代替的に、その他の動作も可能である。
【0038】
患者データ収集に対する変化は、集中型サーバ、患者管理デバイス、および医療デバイスにおいて実装可能である。最も一般的な形式の患者データ収集の変化は、集中型サーバに影響を及ぼし、患者管理デバイスおよび医療デバイスに対する患者データ収集の変化は、集中型サーバの機能の一部に影響を及ぼす。図8は、一実施形態に従い、自動患者管理環境10における患者データ収集を適応的に調整するステップを示すブロック図100である。サーバ101は、図7に関連して上述するように、例えば、プログラムされたデジタルコンピュータ上に実装される、一連のプログラミングされた工程ステップを実行する。
【0039】
サーバ101は、ストレージ107およびデータベース105を含み、複数の患者システム19、クライアント20、およびその他の互換性のあるコンピューティングシステム間の多数の患者の患者データの表示を調整するように構成可能である。その他のサーバ機能も可能である。
【0040】
サーバ101は、収集部102、評価部103、および調整部104を含む。収集部102は、全医療デバイス15〜18および患者管理デバイス12のデバイスおよびセンサのリスト108を保持する。収集部102は、収集された患者データ111を受信し、そのデータは、データベース105に患者データセット106として格納される。収集部102は、継続的ベースおよび患者データ収集に対する調整によって修正されるように、患者データを収集する。
【0041】
評価部103は、臨床医固有基準、自動基準、および患者特有の基準を実装するトリガ109に対して、収集された患者データ111を評価する。収集された患者データ111を評価して、患者に影響を及ぼす可能性のある医学的懸念に関する潜在的な健康状態または健康状態が存在しないことを示し得る患者の健康における傾向を認識する。この傾向は、健康の懸念に関する患者の現状、進行、退行、発現、または非存在を含む。さらに、評価部103は、トリガされるトリガ109の種類および基礎的な患者データを示すフィードバック113を提供可能である。
【0042】
調整部104は、患者データ収集の変化に従って、デバイスに関連するメトリクス110を調整することによって、患者データ収集に対する変化をもたらす。影響を受けたデバイスに収集パラメータ112を送信し、プログラミングされた規則および制御を修正し、あるいは患者データの収集を直接要求する。その他の種類のサーバ動作も可能である。
【0043】
本発明は、その実施態様を参照して具体的に図示および説明されているが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、形状および細部における前述の変化およびその他の変化を加えてもよいことを、当業者は理解するだろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動患者管理環境(10)において患者データ収集(111)を適応的に調整するためのシステム(100)であって、
連続遠隔患者管理(12)を介して患者(14)を監視するデバイス(12)であって、
実質的に定期的なベースで該患者(14)から生理学的測定値(42〜44)を収集(81)するための収集部(102)と、
該患者(14)に影響を及ぼす健康状態の、現状、進行、退行、発現、または該健康状態が存在しないこと、における傾向を認識するための査定に基づいて、患者の状態(32)を評価する(84)ために、該収集された生理学的測定値(42〜44)を分析する分析部(103)と
を備える、デバイス(12)と、
該患者(14)における実行可能な変化(83)を識別し、該実行可能な変化(83)に応じて、該生理学的測定値(42〜44)の収集を動的に調整する(84)ための調整部(104)と
を備える、システム(100)。
【請求項2】
前記生理学的測定値(42〜44)は、客観的な量的測定値(42〜43)および主観的な質的測定値(44)のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のシステム(100)。
【請求項3】
前記主観的量的測定値(44)を探査するように、前記患者(14)にクエリが行なわれる、請求項1に記載のシステム(100)。
【請求項4】
前記生理学的測定値(42〜44)の収集は、一時的変化(62)、体積測定変化(63)、および組成変化(64)のうちの少なくとも1つを介して修正される、請求項1に記載のシステム(100)。
【請求項5】
前記生理学的測定値(42〜44)の収集は修正され、異常な健康状態の進行または発現を示す傾向を識別する際に、該生理学的測定値(42〜44)の収集を増加することと、異常な健康状態の退行または該異常な健康状態が存在しないことを示す傾向を識別する際に、該生理学的測定値(42〜44)の収集を減少することと、のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のシステム(100)。
【請求項6】
前記生理学的測定値(42〜44)の収集は、異常な健康状態の現状を示す傾向を識別する際に維持される、請求項5に記載のシステム(100)。
【請求項7】
前記実行可能な変化(83)を規定するために、臨床医特有の基準(52)、自動基準、および患者特有の基準(54)のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項1に記載のシステム(100)。
【請求項8】
前記動的調整は、一回ベース、限定ベース、スケジュールベース、再発ベース、リアルタイムベースのうちの1つにおいて行われる、請求項1に記載のシステム(100)。
【請求項9】
前記動的調整は、集中型サーバ(13)、患者管理デバイス(12)、および患者用医療デバイス(15、16)またはセンサ(17、18)のうちの1つ以上において行われる、請求項1に記載のシステム(100)。
【請求項10】
前記生理学的測定値(42〜44)を収集するために、埋め込み型医療デバイス(15)、外部医療デバイス(16)、埋め込み型センサ(17)、および外部センサ(18)のうちの少なくとも1つをさらに備える、請求項1に記載のシステム(100)。
【請求項11】
自動患者管理環境(10)において患者データ収集(111)を適応的に調整するための方法(80)であって、
連続遠隔患者管理(12)を介して患者(14)を監視するステップであって、
実質的に定期的なベースで該患者(14)から生理学的測定値(42〜44)を収集するステップ(81)と、
該患者(14)に影響を及ぼす健康状態の現状、進行、退行、発現、または該健康状態が存在しないことにおける傾向を認識するための査定に基づいて、患者の状態(32)を評価する(82)ために、該収集された生理学的測定値(42〜44)を分析するステップと
を含む、ステップと、
該患者(14)における実行可能な変化(83)を識別するステップと、
該実行可能な変化(83)に応じて、該生理学的測定値(42〜44)の収集を動的に調整するステップ(84)と
を含む、方法(80)。
【請求項12】
前記生理学的測定値(42〜44)は、客観的な量的測定値(42〜43)および主観的な質的測定値(44)のうちの少なくとも1つを含む、請求項11に記載の方法(80)。
【請求項13】
前記主観的な質的測定値(44)を探査するように前記患者(14)にクエリを行なうステップをさらに含む、請求項11に記載の方法(80)。
【請求項14】
一時的変化(62)、体積測定変化(63)、および組成変化(64)のうちの少なくとも1つを介して、前記生理学的測定値(42〜44)の収集を修正するステップをさらに含む、請求項11に記載の方法(80)。
【請求項15】
前記生理学的測定値(42〜44)の収集を修正するステップをさらに含み、該収集するステップは、
異常な健康状態の進行または発現を示す傾向を識別する際に、該生理学的測定値(42〜44)の収集を増加するステップと、
異常な健康状態の退行または該異常な健康状態が存在しないことを示す傾向を識別する際に、該生理学的測定値(42〜44)の収集を減少するステップと
のうちの少なくとも1つを含む、請求項11に記載の方法(80)。
【請求項16】
異常な健康状態の現状を示す傾向を識別する際に、前記生理学的測定値(42〜44)の収集を維持するステップをさらに含む、請求項15に記載の方法(80)。
【請求項17】
臨床医特有の基準(52)、自動基準、および患者特有の(54)基準のうちの少なくとも1つを介して、前記実行可能な変化(83)を規定するステップをさらに含む、請求項11に記載の方法(80)。
【請求項18】
一回ベース、限定ベース、スケジュールベース、再発ベース、リアルタイムベースのうちの1つにおいて前記動的調整を行うステップをさらに含む、請求項11に記載の方法(80)。
【請求項19】
集中型サーバ(13)、患者管理デバイス(12)、および患者用医療デバイス(15、16)またはセンサ(17、18)のうちの1つ以上において、前記動的調整を行うステップをさらに含む、請求項11に記載の方法(80)。
【請求項20】
埋め込み型医療デバイス(15)、外部医療デバイス(16)、埋め込み型センサ(17)、および外部センサ(18)のうちの少なくとも1つを介して、前記生理学的測定値(42〜44)を収集するステップをさらに含む、請求項11に記載の方法(80)。
【請求項21】
請求項11に記載の方法(80)を実行するためのコードを保持する、コンピュータ読み取り可能なストレージ媒体。
【請求項22】
自動患者管理環境(10)において患者データ収集(111)を適応的に調整するための装置であって、
連続遠隔患者管理(12)を介して患者(14)を監視する手段であって、
実質的に定期的なベースで該患者(14)から生理学的測定値(42〜44)を収集する(81)手段と、
該患者(14)に影響を及ぼす健康状態に関する現状、進行、退行、発現、または該健康状態が存在しないことにおける傾向を認識するための査定に基づいて、患者の状態(32)を評価する(82)ために、該収集された生理学的測定値(42〜44)を分析する手段と
を含む、手段と、
該患者(14)における実行可能な変化(83)を識別する手段と、
該実行可能な変化(83)に応じて、該生理学的測定値(42〜44)の収集を動的に調整する(84)手段と
を備える、装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−541010(P2009−541010A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518200(P2009−518200)
【出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【国際出願番号】PCT/US2007/014717
【国際公開番号】WO2008/002525
【国際公開日】平成20年1月3日(2008.1.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(505003528)カーディアック ペースメイカーズ, インコーポレイテッド (466)
【Fターム(参考)】