自動搬送車
【課題】カーブ走行時における走行位置の補正を簡単な構成で容易かつ確実に行うことができる自動搬送車を提供すること。
【解決手段】検出手段21,22の検出値より得られる走行距離及び方位角を基に現在の走行位置及び進行方位を算出する演算手段23と、走行位置及び進行方位を補正するための補正値を算出する補正手段25と、予め備えた走行ルート情報に従って走行制御を行う走行制御手段27とを有するものであり、複数の情報発信手段15から情報を受信する情報受信手段24を車体の進行方向前側に備え、補正手段25は、現在の走行経路がカーブ経路であるか否かを判別し、カーブ経路であると判別した場合には、検出手段22、24の検出により得られた車体方位角と位置情報とを基に補正値を算出し、演算手段23が前記補正手段の補正値に基づいて補正を行うようにした自動搬送車10。
【解決手段】検出手段21,22の検出値より得られる走行距離及び方位角を基に現在の走行位置及び進行方位を算出する演算手段23と、走行位置及び進行方位を補正するための補正値を算出する補正手段25と、予め備えた走行ルート情報に従って走行制御を行う走行制御手段27とを有するものであり、複数の情報発信手段15から情報を受信する情報受信手段24を車体の進行方向前側に備え、補正手段25は、現在の走行経路がカーブ経路であるか否かを判別し、カーブ経路であると判別した場合には、検出手段22、24の検出により得られた車体方位角と位置情報とを基に補正値を算出し、演算手段23が前記補正手段の補正値に基づいて補正を行うようにした自動搬送車10。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指定された走行ルートに沿って目的地まで自律走行する自動搬送車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンテナヤードや製鉄所構内等で積荷を搬送する技術として、走行ルート上に所定間隔で埋め込まれた複数のトランスポンダから情報を受信しつつ、指定された走行ルートに沿って自律走行する自動搬送車が知られている。この自動搬送車では、走行中にロータリエンコーダで計測した車輪の回転数と、予め測定された車両の車輪径とを利用して車両の走行距離が算出される。また、走行中にジャイロスコープで計測した車体の垂直軸周りの角速度を利用して進行方位が算出される。こうして、走行中に走行位置及び進行方位を確認しながら目的地まで自律走行できるようになっている。
【0003】
その自動搬送車では、算出した走行位置や進行方位に誤差が生じ、それが積み重ねられると正確な走行が困難になるため、誤差を補うための補正処理が行われる。この点、特許文献1には、図6に示す検知状態に従って行う自動搬送車の位置補正について記載がある。同文献の自動搬送車では、車体前後に設けられた方位検出器101や方向検出器102の素子が、磁気マーカである走行路上に設置された方位標識201或いは方向標識202を検出し、その検出値に基づいて車体のズレ角や進行方向が算出される。また、IDタグ検出器103からは、走行路上のIDタグ203から絶対位置情報(X,Y,θ)が得られる。
【0004】
一方、自動搬送車の走行中、不図示のジャイロスコープの回転角情報や走行距離検知器の距離情報から進行方向や移動距離が算出され、その結果を基に得られるXY座標によって、指令された走行経路と走行速度に従った走行制御が行われる。その際、前述した車体のズレ角や進行方向および絶対位置(X,Y,θ)の情報が比較され、一定の場合に情報の補正が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3378843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、こうした自動搬送車で行われる補正は、正しい車体のズレ角や進行方向および絶対位置(X,Y,θ)の情報が得られるように、検出器101,102,103が対応する素子201,202,203を確実に検出できなければならない。ところが、カーブの走行などでは、車体の方位角が大きく変化したり、前後の車輪が異なった軌道を通過して、直線走行時に比べ安定した検出が困難であった。そこで、他の手段としては、自動搬送車にGPS受信機等を取り付け、カーブ走行中に目標軌道からのずれを検出する技術も知られている。しかし、これでは構成が複雑になりコスト高になるといった問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、カーブ走行時における走行位置の補正を簡単な構成で容易かつ確実に行うことができる自動搬送車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る自動搬送車は、走行距離を検出する走行距離検出手段と、車体の方位角を検出する方位角検出手段と、前記走行距離検出手段及び前記方位角検出手段の検出値より得られる走行距離及び方位角を基に現在の走行位置及び進行方位を算出する演算手段と、前記演算手段により算出した走行位置を補正するための補正値を算出する補正手段と、前記演算手段により算出した走行位置及び進行方位を基に、予め備えた走行ルート情報に従って走行制御を行う走行制御手段とを有するものであって、走行ルート上に配設された複数の情報発信手段から情報を受信する情報受信手段を車体の進行方向前側に備え、前記補正手段は、現在の走行経路がカーブ経路であるか否かを判別し、カーブ経路であると判別した場合には、前記方位角検出手段の検出により得られた車体の方位角と、前記情報受信手段の検出により得られた前記情報発信手段の位置情報とを基に補正値を算出するものであり、前記演算手段が前記補正手段の補正値に基づいて補正を行うようにしたものであることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る自動搬送車は、前記複数の情報発信手段から情報を受信する第2の情報受信手段を車体の進行方向後側に備え、前記補正手段は、現在の走行経路が直線経路であるか否かを判別し、直線経路であると判別した場合には、前記情報受信手段により検出した前記情報発信手段の位置情報と、前記第2の情報受信手段により検出した前記情報発信手段の位置情報とを基に、前記演算手段により算出した走行位置及び進行方位を補正するための補正値を算出するものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る自動搬送車では、補正手段によって現在の走行経路がカーブ経路であるか否かが判別され、カーブ経路であると判別された場合には、方位角検出手段により検出した車体の方位角と、1つの情報受信手段により検出した情報発信手段の位置情報とを基に、演算手段が算出した走行位置を補正するための補正値が算出される。これにより、複数の情報受信手段によって情報発信手段を検出する場合に比べ、カーブ経路の走行時における補正を容易かつ確実に行うことができる。また、自動搬送車に各種センサやGPS受信機を新たに追加する必要がないので、自動搬送車の構成を複雑にすることもない。こうして、カーブ走行時における走行位置の補正を簡単な構成で容易かつ確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】自動搬送車が走行するコンテナヤードを概念的に示した図である。
【図2】自動搬送車の概略構成を示した図である。
【図3】自動搬送車の制御部を示したブロック図である。
【図4】直線経路の走行時における情報受信機とトランスポンダとの位置関係を示した説明図である。
【図5】カーブ経路の走行時における情報受信機とトランスポンダとの位置関係を示した説明図である。
【図6】従来の自動搬送車に備わる各検出器の検出態様を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る自動搬送車の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。本実施形態の自動搬送車は、コンテナを集積するコンテナヤード内で、コンテナを自動搬送するものである。そのコンテナヤード1は、例えば図1に示すように、コンテナ2が置かれるコンテナ置き場3が区画され、その周りに自動搬送車10が走行するための走行路4が設けられている。コンテナ置き場3にはクレーン5が設置され、自動搬送車10へのコンテナ2の積み降ろし作業が行われるようになっている。
【0013】
走行路4には、情報発信素子であるトランスポンダ15が走行路4に沿って所定の間隔で埋め込まれており、そのトランスポンダ15には固有のID(識別コード)や位置情報が書き込まれている。自動搬送車10は、管理棟(図示略)からの指令を受けて走行ルートを決定し、走行中には各トランスポンダ15から情報を受信し、指定された走行ルートに従って自律走行ができるよう構成されている。
【0014】
ここで、図2は、自動搬送車の概略構成図である。自動搬送車10は、コンテナ2を積載する荷台の車体11によって構成され、車体11の前後方向における長さが14.3mであり、幅が2.8m、高さが1.7mである。その車体11には前後左右の各車輪12に操舵モータと走行モータとを備えた走行装置13が設けられ、自動搬送車10は、全輪について独立駆動および独立操舵を可能としたことにより、前後走行や横行、或いは斜行が可能になっている。
【0015】
次に、自律走行を可能とする自動搬送車10の制御部について説明する。図3は、その制御部を示したブロック図である。制御部20は、車両の走行位置や進行方位を算出する演算装置23の他、車両の走行位置や進行方位の補正演算を行う補正装置25を有し、車輪12の回転を検出するロータリエンコーダ21及び、車体11の中央に設けられ(図2参照)車体11の垂直軸周りの角速度(方位角)を検出するジャイロスコープ22が演算装置23に接続され、ジャイロスコープ22に関しては補正装置25にも接続されている。また、補正装置25には情報受信機24が接続されている。制御部20には、その他に予め走行ルート情報を入力するための入力装置26や、走行ルート情報に従って走行制御を行う走行制御装置27が備えられている。
【0016】
自動搬送車10には、走行ルート情報として、直線コマンドとカーブコマンドとが入力されている。これらのコマンドに従って走行装置13を制御することにより、目標の軌道に従った精度良い走行が行えるようになっている。特にカーブコマンドは、カーブ経路における車体11の目標位置や目標方位、車輪12の目標操舵角を決定するものである。その作成方法は、所定の計算式に、車両の走行速度、操舵角速度、操舵角加速度、最大操舵角、トレッド及びホイールベースが予め入力されるとともに、カーブに応じて舵をきり始めるタイミングと戻し始めるタイミングが変数として入力される。これにより、所定位置におけるt秒後の車両の走行位置と進行方位が決定され、そうして決定された走行軌跡が周りの構造物などと干渉しなくなるまで舵をきり始めるタイミングと戻し始めるタイミングとが繰り返し変更されて調整されるものである。
【0017】
走行制御装置27では、演算装置23により算出された走行位置及び進行方位を基に、予め入力装置26により入力された走行ルート情報に従って走行制御が行われる。そして、補正装置25が算出した補正値により演算装置23の算出値が補正されることで、走行距離が長い場合や走行経路が複雑な場合にも、走行制御装置27によって目標軌道に沿った適切な走行制御が行われるようになっている。特に、本実施形態の補正装置25では、ジャイロスコープ22や情報受信機24により得られる検出信号を基に直線走行とカーブ走行とが判別され、判別された各走行状態に応じて異なった補正値算出プログラムが実行される。
【0018】
続いて、本実施形態の自動搬送車10の走行時の様子について具体的に説明する。自動搬送車10は、例えば図1に示す箇所で管理棟からの指令を受け、指定されたコンテナ置き場3にあるクレーン5の積載箇所へと自律走行する。ここでは、走行区間(1)〜(5)を走行する場合について説明する。自動搬送車10が直線経路の走行区間(1),(3),(5)を走行しているとき、補正装置25では、例えばトランスポンダ15の位置情報を利用した判別により直線経路であることが確認され、車体11の前後に設けられた情報受信機24a,24bによって検出した車体前後の位置情報を基に、補正値としての走行位置及び進行方位の算出が行われる。
【0019】
ここで、図4は、直線経路の走行時における情報受信機とトランスポンダとの位置関係を示した説明図である。図示するN軸は、直線経路の走行路4に沿って埋め込まれたトランスポンダ15a,15bを通過するように地上に固定された軸であり、E軸はこのN軸に直交する軸である。そして、各トランスポンダ15a,15bの位置座標O1(N1,E1),O2(N2,E2)は、N軸及びE軸を基準として定義された地上座標である。各情報受信機24a,24bにより検出された車体中心線C1からのトランスポンダ15a,15bのズレ量は、それぞれd1,d2である(d1>0,d2<0)。このとき、情報受信機24a,24bの前後方向の距離をaとすると、車体の中心位置O(N0,E0)と方位角θは、次式で与えられる。なお、中心位置Oは、図示するように必ずしもN軸上にあるわけではない。
【0020】
N0=(N1+N2)/2
E0={(E1+d1)+(E2+d2)}/2
θ=tan-1{(d1−d2)/a}
【0021】
こうして算出した車体の中心位置O(N0,E0)が走行位置であり、方位角θが進行方位である。そして、補正装置25では、情報受信機24がトランスポンダ15を受信する度に補正値が算出され、演算装置23では、その算出値が補正装置25で得られた走行位置及び進行方位と置き換えられる。そのため、走行制御装置27では、補正された正確な走行位置及び進行方位を利用しながら、予め入力された直線コマンドに従って走行装置13の制御が行われる。
【0022】
一方、自動搬送車10がカーブ経路の走行区間(2),(4)を走行する際、補正装置25では、例えばトランスポンダ15の位置情報を利用した判別によりカーブ経路であることが確認され、ジャイロスコープ22を利用して検出した車体の方位角θと、車体11の進行方向前側に備えた1の情報受信機24aにより検出したトランスポンダ15aの位置情報とを基に、補正値としての走行位置が算出される。なお、カーブ経路の走行中における進行方位については、ジャイロスコープ22を利用して検出した車体の方位角θが、補正されることなくそのまま用いられる。
【0023】
ここで、図5は、カーブ経路の走行時における情報受信機とトランスポンダとの位置関係を示した説明図である。図示するN軸及びE軸は、上記したものと同じである。そして、カーブ経路におけるトランスポンダ15aの位置座標Ot(Nt,Et)も、上記同様にN軸及びE軸を基準として定義された地上座標である。進行方向前方の情報受信機24aにより検出された車体中心線C1からのトランスポンダ15aのズレ量は、d3である(d3>0)。このとき、情報受信機24aと車体の中心Oとの距離をbとすると、車体の中心位置O(N0,E0)は次式で与えられる。
【0024】
N0=Nt−√(b2+d32)×cos{θ+tan-1(d3/b)}
E0=Et−√(b2+d32)×sin{θ+tan-1(d3/b)}
【0025】
こうして算出した車体の中心位置O(N0,E0)が走行位置である。そして、補正装置25では、情報受信機24aがトランスポンダ15aを受信する度に補正値が算出され、演算装置23では、その算出値が補正装置25で得られた走行位置と置き換えられる。そのため、走行制御装置27では、補正された正確な走行位置を利用しながら、予め入力されたカーブコマンドに従って走行装置13の制御が行われる。
【0026】
以上詳細に説明したとおり、本実施形態の自動搬送車10では、補正装置25によって現在の走行経路が直線経路であるか又はカーブ経路であるかの判別が行われる。そして、カーブ経路であると判別された場合には、ジャイロスコープ22により検出した車体の方位角と、1つの情報受信機24aにより検出したトランスポンダ15aの位置情報とを基に、演算装置23が算出した走行位置を補正するための補正値が算出される。これにより、複数の情報受信機24によってトランスポンダ15を検出する場合に比べ、カーブ経路の走行時における補正を容易かつ確実に行うことができる。
【0027】
また、従来技術のように自動搬送車10に各種センサやGPS受信機を新たに追加する必要がないので、自動搬送車10の構成を複雑にすることもない。特に本実施形態では、ジャイロスコープ22については進行方位の算出に用いられるものであり、車体前側の情報受信機24aについては直線経路における補正演算に用いられるものであるため、カーブ走行時における補正のためになんら追加部品を必要としない。こうして、カーブ走行時における走行位置の補正を簡単な構成で容易かつ確実に行うことができる。
【0028】
なお、上記実施形態は単なる例示にすぎず、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0029】
10 自動搬送車
11 車体
12 車輪
13 走行装置
15 トランスポンダ
20 制御部
21 ロータリエンコーダ
22 ジャイロスコープ
23 演算装置
24 情報受信機
25 補正装置
26 入力装置
27 走行制御装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、指定された走行ルートに沿って目的地まで自律走行する自動搬送車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンテナヤードや製鉄所構内等で積荷を搬送する技術として、走行ルート上に所定間隔で埋め込まれた複数のトランスポンダから情報を受信しつつ、指定された走行ルートに沿って自律走行する自動搬送車が知られている。この自動搬送車では、走行中にロータリエンコーダで計測した車輪の回転数と、予め測定された車両の車輪径とを利用して車両の走行距離が算出される。また、走行中にジャイロスコープで計測した車体の垂直軸周りの角速度を利用して進行方位が算出される。こうして、走行中に走行位置及び進行方位を確認しながら目的地まで自律走行できるようになっている。
【0003】
その自動搬送車では、算出した走行位置や進行方位に誤差が生じ、それが積み重ねられると正確な走行が困難になるため、誤差を補うための補正処理が行われる。この点、特許文献1には、図6に示す検知状態に従って行う自動搬送車の位置補正について記載がある。同文献の自動搬送車では、車体前後に設けられた方位検出器101や方向検出器102の素子が、磁気マーカである走行路上に設置された方位標識201或いは方向標識202を検出し、その検出値に基づいて車体のズレ角や進行方向が算出される。また、IDタグ検出器103からは、走行路上のIDタグ203から絶対位置情報(X,Y,θ)が得られる。
【0004】
一方、自動搬送車の走行中、不図示のジャイロスコープの回転角情報や走行距離検知器の距離情報から進行方向や移動距離が算出され、その結果を基に得られるXY座標によって、指令された走行経路と走行速度に従った走行制御が行われる。その際、前述した車体のズレ角や進行方向および絶対位置(X,Y,θ)の情報が比較され、一定の場合に情報の補正が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3378843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、こうした自動搬送車で行われる補正は、正しい車体のズレ角や進行方向および絶対位置(X,Y,θ)の情報が得られるように、検出器101,102,103が対応する素子201,202,203を確実に検出できなければならない。ところが、カーブの走行などでは、車体の方位角が大きく変化したり、前後の車輪が異なった軌道を通過して、直線走行時に比べ安定した検出が困難であった。そこで、他の手段としては、自動搬送車にGPS受信機等を取り付け、カーブ走行中に目標軌道からのずれを検出する技術も知られている。しかし、これでは構成が複雑になりコスト高になるといった問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、カーブ走行時における走行位置の補正を簡単な構成で容易かつ確実に行うことができる自動搬送車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る自動搬送車は、走行距離を検出する走行距離検出手段と、車体の方位角を検出する方位角検出手段と、前記走行距離検出手段及び前記方位角検出手段の検出値より得られる走行距離及び方位角を基に現在の走行位置及び進行方位を算出する演算手段と、前記演算手段により算出した走行位置を補正するための補正値を算出する補正手段と、前記演算手段により算出した走行位置及び進行方位を基に、予め備えた走行ルート情報に従って走行制御を行う走行制御手段とを有するものであって、走行ルート上に配設された複数の情報発信手段から情報を受信する情報受信手段を車体の進行方向前側に備え、前記補正手段は、現在の走行経路がカーブ経路であるか否かを判別し、カーブ経路であると判別した場合には、前記方位角検出手段の検出により得られた車体の方位角と、前記情報受信手段の検出により得られた前記情報発信手段の位置情報とを基に補正値を算出するものであり、前記演算手段が前記補正手段の補正値に基づいて補正を行うようにしたものであることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る自動搬送車は、前記複数の情報発信手段から情報を受信する第2の情報受信手段を車体の進行方向後側に備え、前記補正手段は、現在の走行経路が直線経路であるか否かを判別し、直線経路であると判別した場合には、前記情報受信手段により検出した前記情報発信手段の位置情報と、前記第2の情報受信手段により検出した前記情報発信手段の位置情報とを基に、前記演算手段により算出した走行位置及び進行方位を補正するための補正値を算出するものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る自動搬送車では、補正手段によって現在の走行経路がカーブ経路であるか否かが判別され、カーブ経路であると判別された場合には、方位角検出手段により検出した車体の方位角と、1つの情報受信手段により検出した情報発信手段の位置情報とを基に、演算手段が算出した走行位置を補正するための補正値が算出される。これにより、複数の情報受信手段によって情報発信手段を検出する場合に比べ、カーブ経路の走行時における補正を容易かつ確実に行うことができる。また、自動搬送車に各種センサやGPS受信機を新たに追加する必要がないので、自動搬送車の構成を複雑にすることもない。こうして、カーブ走行時における走行位置の補正を簡単な構成で容易かつ確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】自動搬送車が走行するコンテナヤードを概念的に示した図である。
【図2】自動搬送車の概略構成を示した図である。
【図3】自動搬送車の制御部を示したブロック図である。
【図4】直線経路の走行時における情報受信機とトランスポンダとの位置関係を示した説明図である。
【図5】カーブ経路の走行時における情報受信機とトランスポンダとの位置関係を示した説明図である。
【図6】従来の自動搬送車に備わる各検出器の検出態様を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る自動搬送車の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。本実施形態の自動搬送車は、コンテナを集積するコンテナヤード内で、コンテナを自動搬送するものである。そのコンテナヤード1は、例えば図1に示すように、コンテナ2が置かれるコンテナ置き場3が区画され、その周りに自動搬送車10が走行するための走行路4が設けられている。コンテナ置き場3にはクレーン5が設置され、自動搬送車10へのコンテナ2の積み降ろし作業が行われるようになっている。
【0013】
走行路4には、情報発信素子であるトランスポンダ15が走行路4に沿って所定の間隔で埋め込まれており、そのトランスポンダ15には固有のID(識別コード)や位置情報が書き込まれている。自動搬送車10は、管理棟(図示略)からの指令を受けて走行ルートを決定し、走行中には各トランスポンダ15から情報を受信し、指定された走行ルートに従って自律走行ができるよう構成されている。
【0014】
ここで、図2は、自動搬送車の概略構成図である。自動搬送車10は、コンテナ2を積載する荷台の車体11によって構成され、車体11の前後方向における長さが14.3mであり、幅が2.8m、高さが1.7mである。その車体11には前後左右の各車輪12に操舵モータと走行モータとを備えた走行装置13が設けられ、自動搬送車10は、全輪について独立駆動および独立操舵を可能としたことにより、前後走行や横行、或いは斜行が可能になっている。
【0015】
次に、自律走行を可能とする自動搬送車10の制御部について説明する。図3は、その制御部を示したブロック図である。制御部20は、車両の走行位置や進行方位を算出する演算装置23の他、車両の走行位置や進行方位の補正演算を行う補正装置25を有し、車輪12の回転を検出するロータリエンコーダ21及び、車体11の中央に設けられ(図2参照)車体11の垂直軸周りの角速度(方位角)を検出するジャイロスコープ22が演算装置23に接続され、ジャイロスコープ22に関しては補正装置25にも接続されている。また、補正装置25には情報受信機24が接続されている。制御部20には、その他に予め走行ルート情報を入力するための入力装置26や、走行ルート情報に従って走行制御を行う走行制御装置27が備えられている。
【0016】
自動搬送車10には、走行ルート情報として、直線コマンドとカーブコマンドとが入力されている。これらのコマンドに従って走行装置13を制御することにより、目標の軌道に従った精度良い走行が行えるようになっている。特にカーブコマンドは、カーブ経路における車体11の目標位置や目標方位、車輪12の目標操舵角を決定するものである。その作成方法は、所定の計算式に、車両の走行速度、操舵角速度、操舵角加速度、最大操舵角、トレッド及びホイールベースが予め入力されるとともに、カーブに応じて舵をきり始めるタイミングと戻し始めるタイミングが変数として入力される。これにより、所定位置におけるt秒後の車両の走行位置と進行方位が決定され、そうして決定された走行軌跡が周りの構造物などと干渉しなくなるまで舵をきり始めるタイミングと戻し始めるタイミングとが繰り返し変更されて調整されるものである。
【0017】
走行制御装置27では、演算装置23により算出された走行位置及び進行方位を基に、予め入力装置26により入力された走行ルート情報に従って走行制御が行われる。そして、補正装置25が算出した補正値により演算装置23の算出値が補正されることで、走行距離が長い場合や走行経路が複雑な場合にも、走行制御装置27によって目標軌道に沿った適切な走行制御が行われるようになっている。特に、本実施形態の補正装置25では、ジャイロスコープ22や情報受信機24により得られる検出信号を基に直線走行とカーブ走行とが判別され、判別された各走行状態に応じて異なった補正値算出プログラムが実行される。
【0018】
続いて、本実施形態の自動搬送車10の走行時の様子について具体的に説明する。自動搬送車10は、例えば図1に示す箇所で管理棟からの指令を受け、指定されたコンテナ置き場3にあるクレーン5の積載箇所へと自律走行する。ここでは、走行区間(1)〜(5)を走行する場合について説明する。自動搬送車10が直線経路の走行区間(1),(3),(5)を走行しているとき、補正装置25では、例えばトランスポンダ15の位置情報を利用した判別により直線経路であることが確認され、車体11の前後に設けられた情報受信機24a,24bによって検出した車体前後の位置情報を基に、補正値としての走行位置及び進行方位の算出が行われる。
【0019】
ここで、図4は、直線経路の走行時における情報受信機とトランスポンダとの位置関係を示した説明図である。図示するN軸は、直線経路の走行路4に沿って埋め込まれたトランスポンダ15a,15bを通過するように地上に固定された軸であり、E軸はこのN軸に直交する軸である。そして、各トランスポンダ15a,15bの位置座標O1(N1,E1),O2(N2,E2)は、N軸及びE軸を基準として定義された地上座標である。各情報受信機24a,24bにより検出された車体中心線C1からのトランスポンダ15a,15bのズレ量は、それぞれd1,d2である(d1>0,d2<0)。このとき、情報受信機24a,24bの前後方向の距離をaとすると、車体の中心位置O(N0,E0)と方位角θは、次式で与えられる。なお、中心位置Oは、図示するように必ずしもN軸上にあるわけではない。
【0020】
N0=(N1+N2)/2
E0={(E1+d1)+(E2+d2)}/2
θ=tan-1{(d1−d2)/a}
【0021】
こうして算出した車体の中心位置O(N0,E0)が走行位置であり、方位角θが進行方位である。そして、補正装置25では、情報受信機24がトランスポンダ15を受信する度に補正値が算出され、演算装置23では、その算出値が補正装置25で得られた走行位置及び進行方位と置き換えられる。そのため、走行制御装置27では、補正された正確な走行位置及び進行方位を利用しながら、予め入力された直線コマンドに従って走行装置13の制御が行われる。
【0022】
一方、自動搬送車10がカーブ経路の走行区間(2),(4)を走行する際、補正装置25では、例えばトランスポンダ15の位置情報を利用した判別によりカーブ経路であることが確認され、ジャイロスコープ22を利用して検出した車体の方位角θと、車体11の進行方向前側に備えた1の情報受信機24aにより検出したトランスポンダ15aの位置情報とを基に、補正値としての走行位置が算出される。なお、カーブ経路の走行中における進行方位については、ジャイロスコープ22を利用して検出した車体の方位角θが、補正されることなくそのまま用いられる。
【0023】
ここで、図5は、カーブ経路の走行時における情報受信機とトランスポンダとの位置関係を示した説明図である。図示するN軸及びE軸は、上記したものと同じである。そして、カーブ経路におけるトランスポンダ15aの位置座標Ot(Nt,Et)も、上記同様にN軸及びE軸を基準として定義された地上座標である。進行方向前方の情報受信機24aにより検出された車体中心線C1からのトランスポンダ15aのズレ量は、d3である(d3>0)。このとき、情報受信機24aと車体の中心Oとの距離をbとすると、車体の中心位置O(N0,E0)は次式で与えられる。
【0024】
N0=Nt−√(b2+d32)×cos{θ+tan-1(d3/b)}
E0=Et−√(b2+d32)×sin{θ+tan-1(d3/b)}
【0025】
こうして算出した車体の中心位置O(N0,E0)が走行位置である。そして、補正装置25では、情報受信機24aがトランスポンダ15aを受信する度に補正値が算出され、演算装置23では、その算出値が補正装置25で得られた走行位置と置き換えられる。そのため、走行制御装置27では、補正された正確な走行位置を利用しながら、予め入力されたカーブコマンドに従って走行装置13の制御が行われる。
【0026】
以上詳細に説明したとおり、本実施形態の自動搬送車10では、補正装置25によって現在の走行経路が直線経路であるか又はカーブ経路であるかの判別が行われる。そして、カーブ経路であると判別された場合には、ジャイロスコープ22により検出した車体の方位角と、1つの情報受信機24aにより検出したトランスポンダ15aの位置情報とを基に、演算装置23が算出した走行位置を補正するための補正値が算出される。これにより、複数の情報受信機24によってトランスポンダ15を検出する場合に比べ、カーブ経路の走行時における補正を容易かつ確実に行うことができる。
【0027】
また、従来技術のように自動搬送車10に各種センサやGPS受信機を新たに追加する必要がないので、自動搬送車10の構成を複雑にすることもない。特に本実施形態では、ジャイロスコープ22については進行方位の算出に用いられるものであり、車体前側の情報受信機24aについては直線経路における補正演算に用いられるものであるため、カーブ走行時における補正のためになんら追加部品を必要としない。こうして、カーブ走行時における走行位置の補正を簡単な構成で容易かつ確実に行うことができる。
【0028】
なお、上記実施形態は単なる例示にすぎず、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0029】
10 自動搬送車
11 車体
12 車輪
13 走行装置
15 トランスポンダ
20 制御部
21 ロータリエンコーダ
22 ジャイロスコープ
23 演算装置
24 情報受信機
25 補正装置
26 入力装置
27 走行制御装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行距離を検出する走行距離検出手段と、車体の方位角を検出する方位角検出手段と、前記走行距離検出手段及び前記方位角検出手段の検出値より得られる走行距離及び方位角を基に現在の走行位置及び進行方位を算出する演算手段と、前記演算手段により算出した走行位置を補正するための補正値を算出する補正手段と、前記演算手段により算出した走行位置及び進行方位を基に、予め備えた走行ルート情報に従って走行制御を行う走行制御手段とを有する自動搬送車において、
走行ルート上に配設された複数の情報発信手段から情報を受信する情報受信手段を車体の進行方向前側に備え、
前記補正手段は、現在の走行経路がカーブ経路であるか否かを判別し、カーブ経路であると判別した場合には、前記方位角検出手段の検出により得られた車体の方位角と、前記情報受信手段の検出により得られた前記情報発信手段の位置情報とを基に補正値を算出するものであり、
前記演算手段が前記補正手段の補正値に基づいて補正を行うようにしたものであることを特徴とする自動搬送車。
【請求項2】
請求項1に記載の自動搬送車において、
前記複数の情報発信手段から情報を受信する第2の情報受信手段を車体の進行方向後側に備え、
前記補正手段は、現在の走行経路が直線経路であるか否かを判別し、直線経路であると判別した場合には、前記情報受信手段により検出した前記情報発信手段の位置情報と、前記第2の情報受信手段により検出した前記情報発信手段の位置情報とを基に、前記演算手段により算出した走行位置及び進行方位を補正するための補正値を算出するものであり、
前記演算手段が前記補正手段の補正値に基づいて補正を行うようにしたものであることを特徴とする自動搬送車。
【請求項1】
走行距離を検出する走行距離検出手段と、車体の方位角を検出する方位角検出手段と、前記走行距離検出手段及び前記方位角検出手段の検出値より得られる走行距離及び方位角を基に現在の走行位置及び進行方位を算出する演算手段と、前記演算手段により算出した走行位置を補正するための補正値を算出する補正手段と、前記演算手段により算出した走行位置及び進行方位を基に、予め備えた走行ルート情報に従って走行制御を行う走行制御手段とを有する自動搬送車において、
走行ルート上に配設された複数の情報発信手段から情報を受信する情報受信手段を車体の進行方向前側に備え、
前記補正手段は、現在の走行経路がカーブ経路であるか否かを判別し、カーブ経路であると判別した場合には、前記方位角検出手段の検出により得られた車体の方位角と、前記情報受信手段の検出により得られた前記情報発信手段の位置情報とを基に補正値を算出するものであり、
前記演算手段が前記補正手段の補正値に基づいて補正を行うようにしたものであることを特徴とする自動搬送車。
【請求項2】
請求項1に記載の自動搬送車において、
前記複数の情報発信手段から情報を受信する第2の情報受信手段を車体の進行方向後側に備え、
前記補正手段は、現在の走行経路が直線経路であるか否かを判別し、直線経路であると判別した場合には、前記情報受信手段により検出した前記情報発信手段の位置情報と、前記第2の情報受信手段により検出した前記情報発信手段の位置情報とを基に、前記演算手段により算出した走行位置及び進行方位を補正するための補正値を算出するものであり、
前記演算手段が前記補正手段の補正値に基づいて補正を行うようにしたものであることを特徴とする自動搬送車。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2011−123631(P2011−123631A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280078(P2009−280078)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】
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