説明

自動改札機

【課題】券面に印刷されている券情報を光学的に読み取り、改札通路における利用者の通行可否を判定する場合において、コピー等による偽造券の使用に対するセキュリティの向上を図った自動改札機を提供する。
【解決手段】自動改札機1は、券売機2が発行した券について、その券の発行番号、および発行時刻を含む発行情報を受信すると、この発行情報を記憶部12に記憶する。また、読取部13が、券の券面に印刷されている券情報を光学的に読み取る。そして、この読取部13が読み取った券情報に含まれている発行番号に基づいて、この券情報に対応する発行情報を記憶部12から読み出し、対応する券情報と発行情報とを照合して改札通路における利用者の通行を許可するかどうかを判定する。このとき、自動改札機1は、発行時刻から予め定めた時間経過している券であれば、改札通路における利用者の通行を許可しないと判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、駅や、施設等に入場する利用者に対して改札処理を行う自動改札機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、駅や、遊園地等の施設では、構内に入場する利用者に対する改札処理を自動改札機で行っている。自動改札機は、周知のように、改札通路を通って構内に入場する利用者が所持している券(乗車券や、入場券)に記録されている券情報(乗車券情報や、入場券情報)を読み取る。そして、自動改札機は、読み取った券情報に基づいて、改札通路における利用者の通行を許可するかどうか、すなわち構内への利用者の入場を許可するかどうか、を判定する。自動改札機は、構内への利用者の入場を許可する場合、出口側に設けられた扉を開し、反対に許可しない場合、この扉を閉する。
【0003】
また、一般的な駅では、券売機で発行するキップ(乗車券)が、乗車券情報を磁気データで記録した磁気券であった。このため、自動改札機には、投入された磁気券を搬送する構成や、搬送している磁気券に対する磁気データの読み取りや、書き込みを行う構成が、磁気券を処理するための構成として設けられていた。この磁気券を処理するための構成を設けることが、自動改札機本体の小型化やコストダウンを妨げる要因の1つであった。また、券売機や精算機等の各種の駅務機器にも、磁気券を処理する構成を設けなければならず、磁気券を使用することが、これらの駅務機器についても、小型化やコストダウンを妨げる要因であった。
【0004】
そこで、券情報が券面に2次元バーコード(所謂、QRコード)で印刷された券を処理する自動改札機が特許文献1で提案されている。この自動改札機は、読取部に翳された2次元バーコードを光学的に読み取る構成であることから、磁気券を処理する構成を不要にでき、自動改札機本体の小型化やコストダウンを促進することができる。また、券売機等の他の駅務機器においても、磁気券を処理する構成が不要になることから、これらの駅務機器についても、小型化やコストダウンを促進することができる。さらに、磁気記録面を設けていない券が使用できるので、使用済みの券の再利用が容易に行える。
【特許文献1】特開2006− 59249号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
2次元バーコードで券情報を券面に印刷した券は、コピーすることで、簡単に偽造できることから、偽造券の不正使用に対するセキュリティが必要になる。特許文献1では、このセキュリティを以下の構成で確保している。
【0006】
券売機は、発行した券の発行番号を含む発行情報を上位装置に通知する。この発行番号は、発行した券の券面に2次元バーコードで印刷されている券情報に含まれている。上位装置は、券売機が発行した券が使用される可能性が高い複数の自動改札機(通常は、この券売機が設置されている駅の自動改札機)に通知する。各自動改札機は、上位装置から通知された発行情報を記憶する。また、各自動改札機は、2次元バーコードで印刷されている券情報を読み取ると、読み取った券情報と、記憶している発行情報と、を照合し、適正な券であるかどうかを判定する。さらに、上述した偽造券の使用を防止するために、各自動改札機は、通行を許可した券について券情報を上位装置に通知し、上位装置が各自動改札機に対して、この券情報を、これ以降入場を拒否するネガ情報として他の自動改札機に通知する。各自動改札機は、読み取った券情報と、記憶している発行情報と、を照合したときに、ネガ情報が登録されている券については通行を拒否する。
【0007】
しかしながら、一般的な駅は、複数の自動改札機を改札口に設置していることから、券売機で発行された券と、この券をコピーした1または複数の偽造券と、が複数の自動改札機で略同時に使用される可能性がある。この場合、特許文献1の構成では、偽造券を含めた各券(偽造券を含む)に対して通行を許可することになり、偽造券の不正使用に対するセキュリティが低いという問題があった。
【0008】
この発明の目的は、券面に印刷されている券情報を光学的に読み取り、改札通路における利用者の通行可否を判定する場合において、コピー等による偽造券の使用に対するセキュリティの向上を図った自動改札機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の自動改札機は、上記課題を解決し、その目的を達するために、以下のように構成している。
【0010】
この自動改札機では、受信手段が、券発行装置が発行番号、および発行時刻を含む券情報を券面に印刷して発行した券について、その券の発行番号、および発行時刻を含む発行情報を受信する。この発行情報は、券発行装置が自動改札機へ送信する構成であってもよいし、券発行装置が上位装置に通知し、この上位装置から自動改札機へ送信する構成であってもよい。記憶手段が、前記受信手段が受信した券の発行情報を記憶する。また、読取手段が、券の券面に印刷されている券情報を光学的に読み取る。そして、判定手段が、前記読取手段が読み取った券情報に含まれている発行番号に基づいて、この券情報に対応する発行情報を前記記憶手段から読み出し、対応する券情報と発行情報とを照合して改札通路における利用者の通行を許可するかどうかを判定する。このとき、この判定手段は、発行時刻からの経過時間が予め定めた時間を超えている券であれば、改札通路における利用者の通行を許可しないと判定する。
【0011】
このため、券売機で発行された券をコピーして偽造券を得るのに要する時間を考慮して、前記判定手段が改札通路における利用者の通行を許可しないと判定する発行時刻からの経過時間(予め定めた時間)を設定することにより、券売機で発行された券と、この券をコピーした1または複数の偽造券と、が略同時に使用された場合であっても、改札通路における利用者の通行を制限することができる。したがって、券面に印刷されている券情報を光学的に読み取り、改札通路における利用者の通行可否を判定する場合において、コピー等による偽造券の使用に対するセキュリティの向上が図れる。
【0012】
また、前記読取手段が券面から読み取った券情報に含まれている発行時刻を用いて、前記判定手段が発行時刻からの経過時間が予め定めた時間経過しているかどうかを判定し、予め定めた時間経過している場合に通行可否と判定することで、記憶手段に記憶している発行情報の検索や照合にかかる、時間の浪費が抑えられる。
【0013】
また、通行を許可した券については、記憶手段に記憶している該当する発行情報を処理済みとする設定を行う構成としてもよいし、記憶手段から削除する構成としてもよい。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、券面に印刷されている券情報を光学的に読み取り、改札通路における利用者の通行可否を判定する場合において、コピー等による偽造券の使用に対するセキュリティの向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明の実施形態である自動改札機について説明する。
【0016】
図1は、この実施形態の自動改札機を適用した駅の駅務システムを示す図である。この図では、この実施形態にかかる主要な部分の構成である、自動改札機1、券売機2、および駅サーバ3を示している。駅サーバ3は、公衆回線や専用回線で、図示していない鉄道局のセンタに接続されている。また、自動改札機1や券売機2は、LAN等のデータ通信ラインで駅サーバに接続されている。
【0017】
なお、図示していないが、精算機や係員端末等の他の駅務機器も、自動改札機1や券売機2と同様に、データ通信ラインを介して駅サーバ3に接続されている。
【0018】
周知のように、駅の改札口には、駅構内に入場する利用者に対して改札処理を行う入場用自動改札機と、駅構内から出場する利用者に対して改札処理を行う出場用自動改札機と、が設置されている。この実施形態にかかる自動改札機1は、入場用自動改札機である。券売機2は、改札口付近に設置され、利用者に対して乗車券であるキップを発行する。券売機2は、キップを発行するときに、そのキップの発行番号を駅サーバ3から取得する。券売機2は、発行番号や発行時刻を含む乗車券情報を2次元バーコード(所謂、QRコード)で券面に印刷したキップを発行する装置である。さらに、券売機2は、キップを発行する毎に、発行したキップの発行情報を駅サーバ3に送信する。この発行情報には、発行したキップの券面に印刷した乗車券情報と同様に、発行番号や発行時刻が含まれている。駅サーバ3は、券売機2から送信されてきた発行情報を、データ通信ラインで接続されている各自動改札機1に送信する。このとき、駅サーバ3は、出場用自動改札機については発行情報を送信しない構成であってもよい。言い換えれば、駅サーバ3は、入場用自動改札機についてのみ発行情報を送信する構成であってもよい。自動改札機1は、駅サーバ3から送信されてきた発行情報を記憶する。そして、自動改札機1は、利用者が所持しているキップの券面に印刷されている乗車券情報を読み取り、この乗車券情報と、記憶している発行情報と、を用いて、この利用者に対する改札通路の通行可否を判定する。
【0019】
図2は、自動改札機の主要部の構成を示すブロック図である。自動改札機1は、制御部11と、記憶部12と、読取部13と、通信部14と、扉開閉部15と、を備えている。制御部11は、自動改札機1本体各部の動作を制御する。また、制御部11には、現在の日時を計時するタイマが設けられている。記憶部12は、メモリやハードディスク等の記録媒体を有し、駅サーバ3から送信されてきた発行情報を記憶する。読取部13は、キップの券面に印刷している2次元バーコードを光学的に読み取り、このキップの乗車券情報を取得する。通信部14は、駅サーバ3との間におけるデータ通信を制御する。扉開閉部15は、制御部11からの指示にしたがって改札通路の出口側に設けた扉を開閉し、この改札通路における利用者の通行を制限する。制御部11は、読取部13がキップから読み取った乗車券情報と、記憶部12が記憶している発行情報と、を用いて、この利用者に対する改札通路の通行可否を判定し、この判定結果に基づいて扉の開閉を扉開閉部15に指示する。扉開閉部15は、制御部11からの指示にしたがって扉を開閉する。
【0020】
図3は、券売機の主要部の構成を示す図である。券売機2は、制御部21と、通信部22と、現金処理部23と、操作部24と、キップ発行部25と、を備えている。制御部21は、券売機2本体各部の動作を制御する。また、制御部21には、現在の日時を計時するタイマが設けられている。通信部22は、駅サーバ3との間におけるデータ通信を制御する。現金処理部23は、利用者が投入した紙幣や硬貨を受け付けるとともに、必要に応じて釣り銭を利用者に放出する。ここでは、この現金処理部23は、利用者に対して発行するキップにかかる価値を現金で精算する構成として説明するが、プリペイドカードやクレジットカード等の媒体を受け付け、この媒体で精算する構成を有していてもよい。操作部24は、利用者に対して操作案内画面を表示する表示器や、この表示器の画面上に貼付されたタッチパネルを有し、利用者による入力操作を受け付ける。キップ発行部25は、券面に乗車券情報を2次元バーコードで印刷したキップを発行する。キップ発行部25は、乗車券情報を、例えば厚さが0.1mm用紙に2次元バーコードで印刷し、発行する。図4は、券売機で発行されたキップを示す図である。図示するように、発行されたキップの券面には、2次元バーコードが印刷されているとともに、利用者等が確認できるように、乗車券情報の一部が文字で印刷されている。キップ発行部25には、この2次元バーコードを印刷し、キップとして発行する用紙がセットされている。
【0021】
次に、上述した発行情報、および乗車券情報について説明する。図5は、発行情報を示す図であり、図6は乗車券情報を示す図である。発行情報には、駅名コード、券売機コード、発行日付、発行時刻、発行券種、金額、発行番号、および処理状態コードが含まれている。一方、乗車券情報には、駅名コード、券売機コード、発行日付、発行時刻、発行券種、金額、および発行番号が含まれている。すなわち、発行情報と、乗車券情報と、は略同じであるが、発行情報には、乗車券情報に含まれていない処理状態コードが含まれている点で相違する。駅名コードは、キップを発行した駅(すなわち、券売機2が設置されている駅)を示すコードである。券売機コードは、キップを発行した券売機2を示すコードである。発行日付は、キップの発行日付を示し、発行時刻は、キップの発行日を示す。発行券種は、キップが大人用(1)であるか、子供用(0)であるかを示すコードである。金額は、キップの価値を示す。発行番号は、駅サーバが券売機2で発行されるキップ毎に付与する番号であり、発行したキップを識別するものである。処理状態コードは、この発行情報のキップを使用して利用者が駅構内に入場したかどうか(未処理(0)、または処理済(1))を示すコードである。
【0022】
次に、この駅務システムの動作について説明する。図7は、券売機におけるキップの発行処理を示すフローチャートである。図8は、駅サーバの動作を示すフローチャートである。さらに、図9は、自動改札機の動作を示すフローチャートである。まず、図7、および図8を参照しながら、券売機2におけるキップの発行処理について説明する。
【0023】
券売機2は、現金処理部23において、キップを購入する利用者による現金(紙幣や硬貨)の投入を待っている。券売機2は、利用者により投入された現金を受け付ける(s1)。券売機2は、操作部24において、利用者が現金処理部23に投入した現金で購入可能なキップを選択する入力操作を行うと(s2)、駅サーバ3に対して、これから発行するキップの発行番号を要求する(s3)。この要求にかかる通知は、通信部22から駅サーバ3へ送信される。
【0024】
駅サーバ3は、券売機2からキップの発行番号を要求する通知を受信すると(s11)、この要求に対してユニークな発行番号を生成する(s12)。駅サーバ3は、ここで生成した発行番号を、今回発行番号を要求してきた券売機2に返信する(s13)。例えば、駅サーバ3は、券売機2に対して最後に返信した発行番号を記憶しており、この番号を1カウントアップした番号を、今回の発行番号として生成する。また、このとき、駅サーバ3は、記憶している発行番号についても1カウントアップする。この場合、駅サーバ3は、券売機2からの発行番号の要求に対して、発行番号をシリアルな番号で生成することになる。
【0025】
券売機2は、通信部22において駅サーバ3からの発行番号の通知を受信すると(s4)、今回駅サーバ3から通知された発行番号を含む発行情報を作成し(s5)、この発行情報に応じた乗車券情報を2次元バーコードで印刷したキップを発行する(s6)。s5で作成する発行情報には、図5に示す情報が含まれている。駅名コードは、この券売機2が設置されている駅を示すコードである。券売機コードは、この券売機2を示すコードである。発行日付は、今日の日付であり、発行時刻は、現在時刻である。発行券種は、s2で選択されたキップが大人用であるか、子供用であるかを示す。金額は、今回発行するキップ(s2で選択されたキップ)の価値を示す。発行番号は、s4で駅サーバ3から受信した番号である。処理状態コードは、この時点では、この発行情報のキップを使用して利用者が駅構内に入場していないことを示す未処理となっている。また、s6では、s5で生成した発行情報から処理状態コード以外の項目を乗車券情報とし、キップ発行部25において、この乗車券情報を2次元バーコードで用紙に印刷したキップを利用者に対して放出する。すなわち、キップに印刷される乗車券情報は、処理状態コードが含まれていないだけで、その他は、発行情報と同じである。また、券売機2は、利用者に対して釣り銭の放出が必要であれば、現金処理部23において釣り銭の放出処理を行う(s7、s8)。さらに、券売機2は、s5で作成した発行情報を駅サーバ3に通知し(s9)、本処理を終了する。
【0026】
駅サーバ3は、券売機2から発行情報を受信すると(s14)、この発行情報を記憶するとともに(s15)、この発行情報をデータ通信ラインで接続されている各自動改札機1に送信する(s16)。すなわち、駅サーバ3は、券売機2から送信されてきた発行情報を、設置されている駅の各自動改札機1に通知する。この発行情報の送信は、各自動改札機1に対する一斉同報配信により行われる。また、このとき、出場用自動改札機については、この発行情報を送信しない構成としてもよい。
【0027】
ここで、図9を参照しながら、自動改札機1の動作について説明する。自動改札機1は、駅サーバ3から発行情報が送信されてくると(s31)、この発行情報を記憶部12に記憶する(s32)。上述したように、券売機2は、キップを発行する毎に、そのキップにかかる発行情報を駅サーバ3に通知しており、また、駅サーバ3は、券売機2から通知された発行情報を各自動改札機1に送信している。したがって、各自動改札機1は、各券売機2で発行されたキップ毎に、その発行情報を記憶部12に記憶する。また、券売機2から駅サーバ3に通知される発行情報は、上述したように、処理状態コードが未処理である。
【0028】
次に、自動改札機1の改札処理について説明する。自動改札機1は、改札通路を通って駅構内に入場する利用者が読取部13に翳したキップに印刷されている2次元バーコードを読取部13で読み取ると(s33)、ここで読み取った2次元バーコードから乗車券情報を取得する(s34)。自動改札機1は、s34で取得した乗車券情報によって、発行時刻からの経過時間が予め定められている時間内であるかどうかを判定する(s35)。具体的に言うと、s34で取得した乗車券情報に含まれている発行日付が当日で、且つ発行時刻からの経過時間が予め定められている時間内であるかどうかを判定する。通常、利用者は、キップを購入すると、すぐに自動改札機1の改札通路を通って駅構内に入り、鉄道を利用する。また、券売機2は、自動改札機1の近くに設置されており、券売機2から自動改札機1までの利用者の移動時間は数分である。このことから、殆どの利用者は、券売機2でキップを購入してから、10分以内に自動改札機1の改札通路を通行し、駅構内に入っているというのが現状である。また、キップの購入後、自分の好みに合う広告や商品等に気がついて、すぐに駅構内に入場しない利用者もいるが、このような利用者であっても、キップの購入から20〜30分以内に駅構内に入場している。言い換えれば、キップの購入から30分を超えて駅構内に入場する利用者は、殆どいないと推定される。このことから、この自動改札機1は、s35で発行時刻からの経過時間が予め定められている時間内(30分以内)でないと判定した場合、コピー等によって作成された偽造券である可能性が高いと判断し、改札通路における利用者の通行(駅構内への入場)を禁止する(s36)。s36では、扉開閉部15が改札通路の出口側に設けられている扉を閉する。
【0029】
このように、自動改札機1は、キップから読み取った乗車券情報によって、発行時刻からの経過時間が予め定められている時間内でないと判定した場合、改札通路における利用者の通行を禁止する。したがって、券売機2で発行された券をコピーして偽造券を得るのに要する時間を考慮して、改札通路における利用者の通行を許可しないと判定する発行時刻からの経過時間を設定しておけば、コピー等によって作成された偽造券に対するセキュリティを確保することができる。
【0030】
自動改札機1は、s35で発行時刻からの経過時間が予め定められた時間内であると判定すると、記憶部12に記憶している発行情報を検索し、該当する発行情報があれば、その発行情報を読み出す(s37、s38)。自動改札機1は、今回取得した乗車券情報の発行番号をキーにして記憶部12に記憶している発行情報を検索する。自動改札機1は、記憶部12に該当する発行情報を記憶していなければ、今回使用されたキップを偽造券と判断し、s36で改札通路における利用者の通行を禁止する。
【0031】
自動改札機1は、記憶部12から該当する発行情報を読み出すと、この発行情報に含まれている処理状態コードが未処理であるかどうかを判定する(s39)。上述したように、駅サーバ3から自動改札機1に送信されてきた時点では、発行情報の処理状態コードは未処理である。また、後述するように、いずれかの自動改札機1で使用されたキップについては、発行情報の処理状態コードは処理済に更新される。したがって、発行情報の処理状態コードが処理済である場合、今回の使用が最初ではない。自動改札機1は、s39で処理状態コードが処理済であると判定すると、キップの不正使用であると判断し、s36で改札通路における利用者の通行を禁止する。
【0032】
自動改札機1は、s39で未処理であると判定すると、s34で取得した乗車券情報の各項目と、s38で記憶部12から読み出した発行情報と、を項目毎に照合し、これらが一致しているかどうかを判定する(s40)。自動改札機1は、両情報に一致していない項目が1つでもあると、偽造券であると判断し、s36で改札通路における利用者の通行を禁止する。自動改札機1は、s40で両情報の全ての項目が一致していると判定すると、改札通路における利用者の通行を許可する(s41)。s41では、扉開閉部15が改札通路の出口側に設けられている扉を開する。また、自動改札機1は、今回改札通路の通行を許可した利用者が使用したキップに該当する発行情報の処理状態コードを未処理から、処理済に更新する(s42)。自動改札機1は、利用者が改札通路を通って駅構内に入場すると(s43)、今回使用されたキップの発行番号を含む処理済通知を駅サーバ3に送信する(s44)。
【0033】
駅サーバ3は、自動改札機1から処理済通知を受信すると(s17)、この処理済通知に基づいて、記憶している該当する発行情報の処理済コードを未処理から処理済に更新する(s18)。さらに、駅サーバ3は、今回受信した処理済通知をデータ通信ラインで接続されている各自動改札機1に送信する(s19)。すなわち、駅サーバ3は、データ通信ラインで接続されているいずれかの自動改札機1から送信されてきた処理済通知を受信すると、この受信した処理済通知を設置されている駅の各自動改札機1に転送する。この処理済通知の転送は、各自動改札機1に対する一斉同報配信により行われる。すなわち、この処理済通知は、送信元の自動改札機1にも送信される。
【0034】
なお、出場用自動改札機については、この処理済通知を送信しなくてもよい。
【0035】
自動改札機1は、駅サーバ3から処理済通知を受信すると(s45)、記憶部12に記憶している発行情報を検索し(s46)、該当する発行情報の処理状態コードを未処理から、処理済に更新する(s47)。これにより、いずれかの自動改札機1で改札処理されたキップについても、各自動改札機1が記憶している発行情報の処理状態コードが未処理から処理済に更新される。したがって、券売機2が発行したキップが複数回使用される、不正使用に対するセキュリティも確保できる。
【0036】
なお、自動改札機1は、自機で通行処理したキップについての処理済通知を受信したときには、s42で、すでに該当する発行情報の処理状態コードを未処理から処理済に更新しているので、実質的にはs47にかかる処理で、該当する発行情報の処理状態コードを未処理から処理済に更新するわけではない。また、このs42にかかる処理をなくし、自機で通行処理したキップについても、s47で該当する発行情報の処理状態コードを未処理から処理済に更新するようにしてもよい。
【0037】
このように、この駅務システムによれば、コピー等による偽造券に対するセキュリティの向上が図れるとともに、券売機2が発行したキップが複数回使用される、不正使用に対するセキュリティも確保できる。
【0038】
また、図10に示すように、上述したs42、s47にかかる処理を、該当する発行情報を記憶部12から削除する削除処理に置き換えてもよい(s52、s57)。このようにすれば、記憶部12が記憶する発行情報の総数が低減されるので、記憶部12に記憶している発行情報の検索処理にかかる時間の短縮が図れ、その結果、改札通路における利用者の通行可否の判定に要する時間が短縮できる。また、記憶する発行情報の総数の低減に加えて、発行情報から処理状態コードをなくしてもよいので、記憶部12に必要な記憶容量が抑えられる。
【0039】
なお、上記説明では、乗車券情報を2次元バーコードでキップの表面に印刷するとしたが、光学的に読み取り可能であれば、1次元バーコード等の他の形式で乗車券情報をキップの表面に印刷する構成であってもよい。
【0040】
また、上記の説明では、駅サーバ3を介して、発行情報や処理済通知が行われるとしたが、券売機2が直接自動改札機1に発行情報を送信したり、改札通路における利用者の通行を許可した自動改札機1が、直接他の自動改札機1に対して処理済通知を送信する構成としてもよい。
【0041】
さらに、本願発明は、駅務システムだけでなく、遊園地等の他の施設でも、構内に入場する利用者に対して改札処理を行う自動改札機としても利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】この実施形態の自動改札機を適用した駅の駅務システムを示す図である。
【図2】自動改札機の主要部の構成を示すブロック図である。
【図3】券売機の主要部の構成を示す図である。
【図4】券売機で発行されたキップを示す図である。
【図5】発行情報を示す図である。
【図6】乗車券情報を示す図である。
【図7】券売機におけるキップの発行処理を示すフローチャートである。
【図8】駅サーバの動作を示すフローチャートである。
【図9】自動改札機の動作を示すフローチャートである。
【図10】別の自動改札機の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0043】
1−自動改札機
2−券売機
3−駅サーバ
11−制御部
12−記憶部
13−読取部
14−通信部
15−扉開閉部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
改札通路を通って構内に入場する利用者に対して、この改札通路の通行を制限する自動改札機において、
券発行装置が発行番号、および発行時刻を含む券情報を券面に印刷して発行した券について、その券の発行番号、および発行時刻を含む発行情報を受信する受信手段と、
前記受信手段が受信した券の発行情報を記憶する記憶手段と、
券の券面に印刷されている券情報を光学的に読み取る読取手段と、
前記読取手段が読み取った券情報に含まれている発行番号に基づいて、この券情報に対応する発行情報を前記記憶手段から読み出し、対応する券情報と発行情報とを照合して改札通路における利用者の通行を許可するかどうかを判定する判定手段と、を備え、
前記判定手段は、通行可否の判定時に、発行時刻からの経過時間が予め定めた時間を超えている券であれば、改札通路における利用者の通行を許可しないと判定する手段である、自動改札機。
【請求項2】
前記判定手段は、前記読取手段が読み取った券情報に含まれている発行時刻を用いて、発行時刻からの経過時間が予め定めた時間を超えているかどうかを判定し、且つ発行時刻から予め定めた時間経過している券であれば、今回読み取った券情報と、この券情報に対応する発行情報と、を照合することなく、改札通路における利用者の通行を許可しないと判定する手段である、請求項1に記載の自動改札機。
【請求項3】
前記判定手段が改札通路における利用者の通行を許可した券について、前記記憶手段が記憶している対応する発行情報について、処理済みを他の機器に通知する通知手段と、
他の機器から前記処理済みが通知されたときに、前記記憶手段に記憶している対応する発行情報を処理済みの発行情報に設定する設定手段と、を備えた請求項1、または2に記載の自動改札機。
【請求項4】
前記判定手段が改札通路における利用者の通行を許可した券について、前記記憶手段に記憶している対応する発行情報を、処理済みの発行情報に設定する設定手段を備えた、請求項1または2に記載の自動改札機。
【請求項5】
前記判定手段が改札通路における利用者の通行を許可した券について、前記記憶手段が記憶している対応する発行情報について、処理済みを他の機器に通知する通知手段と、
他の機器から前記処理済みが通知されたときに、前記記憶手段に記憶している対応する発行情報を削除する削除手段と、を備えた請求項1、または2に記載の自動改札機。
【請求項6】
前記判定手段が改札通路における利用者の通行を許可した券について、前記記憶手段に記憶している対応する発行情報を削除する削除手段を備えた、請求項1または2に記載の自動改札機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−59319(P2009−59319A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−228479(P2007−228479)
【出願日】平成19年9月4日(2007.9.4)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】