説明

自動薄切片標本作製装置及び自動薄切片標本作製方法

【課題】作業者の負担を軽減でき、各包埋ブロックを適宜交換しながら、各包埋ブロックから必要枚数の薄切片標本を自動的に作製すること。
【解決手段】生体試料が包埋剤に包埋された包埋ブロックを複数保管する保管庫2と、包埋ブロックを所定の厚みで切断して薄切片を切り出す切断手段3と、選択した1つの包埋ブロックを保管庫から出し入れすると共に切断手段による切断位置に搬送する第1の搬送手段4と、薄切片を液体が貯留された貯留槽に搬送して液面に浮かべる第2の搬送手段7と、液面に浮いた薄切片を、基板上に転写させて薄切片標本を作製する転写手段8と、包埋ブロックから薄切片を必要数切り出した後、該包埋ブロックを保管庫に戻すと共に、次に選択した包埋ブロックを保管庫から取り出して切断位置に搬送するように第1の搬送手段を制御する制御部9とを備えている自動薄切片標本作製装置1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、理化学実験や顕微鏡観察等に用いられる薄切片標本を、自動的に作製する自動薄切片標本作製装置及び自動薄切片標本作製方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、理化学実験や顕微鏡観察に用いられる薄切片標本を作製する装置として、ミクロトームが一般的に知られている。この薄切片標本は、厚さが数μm(例えば、3μm〜5μm)の薄切片を、スライドガラス等の基板上に固定させたものである。ここで、ミクロトームを利用して薄切片試料を作製する一般的な方法について説明する。
【0003】
まず、ホルマリン固定された生物や動物等の生体試料をパラフィン置換した後、更に周囲をパラフィンで固めて強固にして、ブロック状態の包埋ブロックを作製する。次に、この包埋ブロックを専用の薄切り装置であるミクロトームにセットして、粗削りを行う。この粗削りによって、包埋ブロックの表面が平滑面となると共に、実験や観察の対象物である包埋された生体試料が表面に露出した状態となる。
【0004】
粗削りが終了した後、本削りを行う。これは、ミクロトームが有する切断刃により、包埋ブロックを上述した厚みで極薄にスライスする工程である。これにより、薄切片を得ることができる。この際、包埋ブロックを可能な限り薄くスライスすることで、薄切片の厚みを細胞レベルの厚みに近付けることができるので、より正確な観察データを得ることができる。よって、可能な限り厚さが薄い薄切片を作製することが求められている。なお、この本削りは、必要枚数の薄切片が得られるまで連続して行う。
【0005】
次いで、本削りによって得られた薄切片を伸展させる伸展工程を行う。つまり、本削りによって作製された薄切片は、上述したように極薄の厚みでスライスされたものであるので、皺がついた状態や、丸まった状態(例えば、Uの字状)となってしまう。そこで、この伸展工程によって、皺や丸みを取って伸ばす必要がある。
一般的には、水とお湯を利用して伸展させている。始めに、本削りによって得られた薄切片を水に浮かべる。これにより、生体試料を包埋しているパラフィン同士のくっつきを防止しながら、薄切片の大きな皺や丸みを取ることができる。その後、薄切片をお湯に浮かべる。これにより、薄切片が伸び易くなるので、水による伸展では取りきれなかった残りの皺や丸みを取ることができる。
【0006】
そして、お湯による伸展が終了した薄切片をスライドガラス等の基板で掬って該基板上に載置する。なお、この時点で仮に伸展が不十分であった場合には、基板ごとホットプレート等に乗せてさらに熱を加える。これにより、薄切片をより伸展させることができる。
最後に、薄切片を乗せた基板を乾燥器内に入れて乾燥させる。この乾燥により、伸展で付着した水分が蒸発すると共に、薄切片が基板上に固定される。その結果、薄切片標本を作製することができる。
【0007】
このように作製された薄切片標本は、生物、医学分野等で使用されている。従来から行われていた細胞の形状から組織の正常/異常を診断する方法をはじめとして、近年においてはゲノム科学の進歩により、網羅的且つ組織学的に遺伝子や蛋白の発現を見るニーズが増加している。そのため、ますます多くの薄切片標本を効率良く作製する必要が出てきた。ところが、従来上述した工程のほとんどが、高度な技術や経験を要するものであるため、熟練した作業者の手作業でしか対応できず、時間や手間がかかるものであった。
【0008】
そこで、このような不具合を少しでも解消するため、上述した工程の一部分を自動で行う薄切片試料作製装置が提供されている(例えば、特許文献1参照)。
この薄切片試料作製装置は、セットされた包埋ブロックを切断して薄切片を作製する工程と、作製した薄切片をキャリアテープによって搬送してスライドガラス上に転写させる工程と、スライドガラスごと薄切片を伸展装置まで搬送して伸展を行う工程とを、自動的に行っている。
この薄切片試料作製装置によれば、作業者の負担を軽減することができると共に、作業者による人為的なミスもなくすことができ、良好な薄切片標本を作製することができる。
【特許文献1】特開2004−28910号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1記載の薄切片試料作製装置では、まだ以下の課題が残されていた。
即ち、薄切片試料作製装置は、自動的に、予めセットされた包埋ブロックから薄切片を作製すると共に、伸展を終わらせた状態で該薄切片をスライドガラス上に固定させることができる装置であるが、通常は1つの包埋ブロックから数枚(1〜2枚)の薄切片しか作製しないものである。一方、包埋ブロックに関しては、上述したように対象とした動物の主な臓器全てについて発現を見るため、1個体につき20個以上の包埋ブロックを薄切する必要がある。実際には、実験結果を統計処理するために実験個体数を増すことが一般的であり、その場合には、包埋ブロックの数が容易に数百個に達してしまう。
そのため、特許文献1に記載の薄切片試料作製装置を用いたとしても、頻繁に包埋ブロックを手動によりセットし直す必要があった。よって、結局作業者の手を煩わせてしまい、作業者の負担や人為的なミスを効果的に減らすことができなかった。
【0010】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、作業者の負担を軽減でき、各包埋ブロックを適宜交換しながら、各包埋ブロックから必要枚数の薄切片標本を自動的に作製することができる自動薄切片標本作製装置及び自動薄切片標本作製方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前記課題を解決するために以下の手段を提供する。
本発明の自動薄切片標本作製装置は、生体試料が包埋剤に包埋された包埋ブロックを出し入れ可能に複数保管する保管庫と、前記包埋ブロックを所定の厚みで切断し、シート状の薄切片を切り出す切断手段と、保管された前記複数の包埋ブロックのうち、選択した1つの包埋ブロックを前記保管庫から出し入れすると共に前記切断手段による切断位置に搬送可能な第1の搬送手段と、前記薄切片を液体が貯留された貯留槽に搬送すると共に、液面に浮かべる第2の搬送手段と、液面に浮いた前記薄切片を、基板上に転写させて薄切片標本を作製する転写手段と、前記切断手段により前記包埋ブロックから前記薄切片を必要数切り出した後、該包埋ブロックを前記保管庫に戻すと共に、次に選択した包埋ブロックを保管庫から取り出して前記切断位置に搬送するように前記第1の搬送手段を制御する制御部とを備えていることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の自動薄切片標本作製方法は、生体試料が包埋剤に包埋された包埋ブロックから、シート状の薄切片を切り出すと共に、該薄切片を基板上に転写させて薄切片標本を自動的に作製する自動薄切片標本作製方法であって、出し入れ可能な保管庫に予め複数保管された前記包埋ブロックのうち、選択した1つの包埋ブロックを保管庫から取り出すと共に、切断位置に搬送する第1の搬送工程と、前記切断位置に搬送された前記包埋ブロックを、所定の厚みで切断して前記薄切片を切り出す切断工程と、切断された前記薄切片を、液体が貯留された貯留槽に搬送すると共に液面に浮かべる第2の搬送手段と、液面に浮かんだ前記薄切片を、前記基板上に転写させて前記薄切片標本を作製する転写工程とを備え、前記包埋ブロックから前記薄切片を必要枚数切り出した後、該包埋ブロックを前記保管庫に戻すと共に、次に選択した包埋ブロックを保管庫から取り出して前記切断位置に搬送させるように前記第1の搬送工程を繰り返すことを特徴とするものである。
【0013】
この発明に係る自動薄切片標本作製装置及び自動薄切片標本作製方法においては、まず、出し入れ可能な保管庫に複数の包埋ブロックが予め保管されている。制御部は、第1の搬送手段を制御して、保管されている複数の包埋ブロックのなかから、選択した1つの包埋ブロックを切断位置に搬送させる第1の搬送工程を行う。そして、切断手段が、搬送された包埋ブロックを所定の厚み(例えば、5μmの極薄)でシート状に切断(スライス)して、薄切片を作製する切断工程を行う。第2の搬送手段は、この切断された薄切片を水等の液体が貯留された貯留槽に搬送すると共に、水面(液面)に浮かべる第2の搬送工程を行う。
【0014】
これにより薄切片は、切断時による皺や丸みが取れて伸展した状態となる。伸展後、転写手段が、水面に浮かんだ薄切片をスライドガラス等の基板上に転写して固定する転写工程を行う。その結果、基板上に薄切片が固定された薄切片標本を作製することができる。
特に、制御部は、切断手段により1つの包埋ブロックから必要枚数の薄切片を切り出した後、第1の搬送手段を作動させて、この包埋ブロックを再度保管庫に戻すように制御すると共に、次に選択した包埋ブロックを切断位置に搬送させるように第1の搬送手段の制御を行う。即ち、最初の包埋ブロックを保管庫に戻した後、次の包埋ブロックに対して再度第1の搬送工程を繰り返す。これにより、切断手段は、次々と途切れることなく複数の包埋ブロックから薄切片を必要枚数だけ切り出すことができる。
【0015】
そして、上述した各工程を繰り返すことで、人手を介すことなく保管庫に保管されている全ての包埋ブロックを適宜交換しながら、各包埋ブロックから必要枚数の薄切片を切り出して自動的に薄切片標本を作製することができる。
このように、本発明の自動薄切片標本作製装置及び自動薄切片標本作製方法によれば、作業者の負担が大きかった包埋ブロックの交換を自動で行いながら、薄切片標本を作製できるので、作業者の負担を軽減することができ、人為的なミスの発生を低減することができる。特に、包埋ブロックの交換は頻繁に行うものであったので、作業者の負担軽減が顕著なものとなる。
【0016】
また、本発明の自動薄切片標本作製装置は、上記本発明の自動薄切片標本作製装置において、前記保管庫が、前記複数の包埋ブロックをそれぞれ区分けして保管する複数の保管棚を有し、前記制御部が、前記包埋ブロックから作製された前記薄切片標本を、該包埋ブロックが保管されていた前記保管棚に対応付けた指定位置に収納するように前記転写手段を制御することを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明の自動薄切片標本作製方法は、上記本発明の自動薄切片標本作製方法において、前記複数の包埋ブロックが、前記保管庫が有する保管棚にそれぞれ区分けした状態で保管されており、前記転写工程後、前記包埋ブロックから作製された前記薄切片標本を、該包埋ブロックが保管されていた前記保管棚に対応付けた指定位置に収納させる収納工程とを備えていることを特徴とするものである。
【0018】
この発明に係る自動薄切片標本作製装置及び自動薄切片標本作製方法においては、複数の包埋ブロックが、予め保管庫が有する複数の保管棚にそれぞれ区分けされた状態で保管されている。この状態において、第1の搬送工程時に第1の搬送手段が、複数の保管棚のうち選択したいずれかの保管棚に保管されている包埋ブロックを取り出して、切断位置に搬送する。その後、切断手段、第1の搬送手段、第2の搬送手段及び転写手段によって、この包理ブロックから切り出された薄切片を基板上に転写して薄切片標本を作製する。
【0019】
この際、制御部は、作製された薄切片標本を、元となる包埋ブロックが保管されていた保管棚に対応付けられた指定位置に収納するように転写手段を制御する。これを受けて、転写手段は、薄切片標本を作製した後、続けて該薄切片標本を指定位置に収納する収納工程を行う。これにより、自動的に作製された複数枚の薄切片標本は、全て元となる包埋ブロックに対応付けられて収納された状態となる。従って、作業者は、自動的に作製された複数枚の薄切片標本を、どの包埋ブロックから作製されたものであるか容易且つ確実に照合することができ、高精度な品質管理を行うことができる。このことからも、作業者の負担を軽減することができる。
【0020】
また、本発明の自動薄切片標本作製装置は、上記本発明の自動薄切片標本作製装置において、前記転写手段が、前記指定位置として複数の収納棚を有し、前記制御部が、前記複数の保管棚の位置情報と、前記複数の収納棚の位置情報とを相関付けて記憶するメモリ部を有していることを特徴とするものである。
【0021】
この発明に係る自動薄切片標本作製装置においては、転写手段が作製された薄切片標本を収納するための専用の収納棚を有している。また、制御部がメモリ部を有しているので、第1の搬送手段を制御して、いずれかの保管棚から包埋ブロックを取り出させた時に、この保管棚に対応する収納棚の位置を正確且つ速やかに判断することができる。そして、制御部は、判断した収納棚に薄切片標本を収納するように転写手段の制御を行う。その結果作業者は、収納棚を確認するだけで、包埋ブロックと薄切片標本との照合を確実に行うことができる。また、完成した薄切片標本が専用の収納棚に収納されているので、その後、薄切片標本を取り扱い易い。
【0022】
また、本発明の自動薄切片標本作製装置は、上記本発明の自動薄切片標本作製装置において、前記制御部には、前記薄切片標本を作製する際の所定条件を予め入力可能な入力部が接続されており、該入力部で入力された所定条件に基づいて薄切片標本を作製させるように前記各手段を制御することを特徴とするものである。
【0023】
この発明に係る自動薄切片標本作製装置においては、薄切片標本の作製を行う前に、予め作業者が入力部を介して、薄切片標本を作製するにあたっての種々の所定条件を入力することが可能である。例えば、1つの包埋ブロックから何枚の薄切片標本を作製するのか、或いは、保管庫に保管されている複数の包埋ブロックをどの順番で切断位置に搬送するのか等の条件を任意に入力することができる。
そして、制御部が、この入力された所定条件に基づいて薄切片標本を作製するように、各手段を総合的に制御する。よって、作業者の狙いどおりに薄切片標本を作製することができ、操作性が向上して使い易くなる。
【0024】
また、本発明の自動薄切片標本作製装置は、上記本発明のいずかの自動薄切片標本作製装置において、前記保管庫が、前記保管棚が外周面上に複数設けられ、回転軸を中心に回転自在であると共に前記制御部によって回転制御される回転体を備えていることを特徴とするものである。
【0025】
この発明に係る自動薄切片標本作製装置においては、第1の搬送手段によって、いずれかの保管棚に保管されている包埋ブロックを出し入れする際に、回転体を回転軸回りに回転させることで、外周面上に設けられた複数の保管棚を、次々と第1の搬送手段側に向けることができる。このように、回転体の外周面に保管棚を設けることで、狭い設置スペースで、複数の保管棚を効率良く多数設けることができる。よって、装置全体の小型化を図ることができる。また、包埋ブロックを出し入れする時の、第1の搬送手段の可動範囲を極力抑えることができる。このことからも、全体の小型化を図ることができ、構成の簡略化を図ることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る自動薄切片標本作製装置及び自動薄切片標本作製方法によれば、包埋ブロックの交換を自動で行いながら薄切片標本を作製できるので、作業者の負担を軽減することができ、人為的なミスの発生を低減することができる。特に、包埋ブロックの交換は頻繁に行うものであったので、作業者の負担軽減が顕著なものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明に係る自動薄切片標本作製装置及び自動薄切片標本作製方法の一実施形態を、図1から図6を参照して説明する。なお、本実施形態では、生体試料として、鼠等の実験動物から採取した生体組織を例に挙げて説明する。
本実施形態の自動薄切片標本作製装置1は、図1に示すように、生体組織Sが包理剤に包埋された包埋ブロックBを出し入れ可能に複数保管する保管庫2と、包埋ブロックBを所定の厚みで切断し、シート状の薄切片B1を切り出す切削機構(切断手段)3と、保管された複数の包埋ブロックBのうち、選択した1つの包埋ブロックBを保管庫2から出し入れすると共に切削機構3による切断位置Pに搬送可能なブロックハンドリングロボット(第1の搬送手段)4と、上記切削機構3によって切り出された薄切片B1を水(液体)W1が貯留された水槽(貯留槽)5からなる伸展機構6に搬送して、水面(液面)に浮かべる切片搬送機構(第2の搬送手段)7と、水面に浮かんだ薄切片B1を、スライドガラス(基板)G上に転写させて薄切片標本Hを作製するスライドガラスハンドリングロボット(転写手段)8と、これら各構成品を総合的に制御する制御部9とを備えている。
【0028】
包埋ブロックBは、図2に示すように、ホルマリン固定された生体組織S内の水分をパラフィン置換した後、さらに周囲をパラフィン等の包理剤によってブロック状に固めたものである。これにより、生体組織Sがパラフィン内に包埋された状態となっている。またこの包埋ブロックBは、箱状に形成されたカセット15上に載置固定されている。
【0029】
上記保管庫2は、図3及び図4に示すように、カセット15上に固定された複数の包埋ブロックBを、それぞれ区分けして保管する複数の保管棚16と、これら複数の保管棚16が外周面上に設けられ、回転軸Lを中心に回転自在であると共に上記制御部9によって回転制御される回転体17とを備えている。
本実施形態の回転体17は、回転軸Lを中心とした円柱状に形成されており、図示しないモータ等の駆動源によって回転される回転ステージ18上に固定されている。そして、制御部9は、この駆動源の作動を制御している。これにより、回転体17は、任意の回転方向及び回転速度で回転するよう制御部9によってコントロールされている。
【0030】
また、保管棚16は、回転体17の外周面上に均等配置されており、例えば合計120個形成されている。即ち、回転軸L方向であるZ方向に向けて所定間隔毎に10個形成されていると共に、これら10個を一列として、回転軸Lを中心に30度毎に12列形成されている。
【0031】
上記切削機構3は、図5に示すように保管庫2から一定距離離間した位置に、カセット15を介して包埋ブロックBを載置固定するブロック固定台20と、該ブロック固定台20に載置固定された包埋ブロックBに対してスライド操作される切断刃21とを備えている。
この切断刃21は、図示しない駆動機構によって所定の速度、引き角及びすくい角をもってスライド操作されるようになっている。また、ブロック固定台20は、切断刃21のスライド操作に合わせて、包埋ブロックBを切断面から所定量毎上昇させるようになっている。これにより、包埋ブロックBは、切断刃21によって所定の厚みで切断されて、薄切片B1が切り出されるようになっている。即ち、ブロック固定台20の上面が、切断位置Pとなっている。また、ブロック固定台20に載置固定された包埋ブロックBは、図示しない帯電装置によってプラスの電荷が与えられるようになっている。
【0032】
なお、本実施形態では、ブロック固定台20に対して切断刃21をスライド操作して、包埋ブロックBを切断する構成としたが、この場合に限られるものではない。例えば、切断刃21を固定し、この固定された切断刃21に対してブロック固定台20を移動させることで、包埋ブロックBを切断するように切削機構3を構成しても構わない。更には、切断刃21及びブロック固定台20を共に相対的に移動させることで、包埋ブロックBを切断するように切削機構3を構成しても構わない。
【0033】
また、保管庫2とブロック固定台20との間には、図3及び図4に示すように、Z方向に延びるZ軸ガイドレール22が取り付けられている。このZ軸ガイドレール22には、該Z軸ガイドレール22に沿って移動可能な昇降ステージ23が取り付けられている。この昇降ステージ23には、水平方向に延びた水平ガイドレール24が取り付けられている。そして、この水平ガイドレール24には、Z軸ガイドレール22と同様に水平ガイドレール24に沿って移動可能な水平ステージ25が取り付けられている。なお、水平ステージ25は、単に水平方向に移動するだけでなく、図4に示すように、Z軸周りに回転可能とされている。
【0034】
また、水平ステージ25には、一定距離離間した状態で平行に配されると共に、互いの距離を接近離間自在に調整可能な一対のアーム26aを有する把持ロボット26が取り付けられている。そして、昇降ステージ23、水平ステージ25及び把持ロボット26をそれぞれ適宜作動させることで、保管庫2の保管棚16に収納されているいずれかの包埋ブロックBを保管棚16から出し入れすることができるようになっている。
【0035】
即ち、一対のアーム26aにより包埋ブロックBが載置されているカセット15を把持した状態で、水平ステージ25及び昇降ステージ23を作動させることで、保管棚16から包埋ブロックBの出し入れを行える。また、包埋ブロックBを把持したまま昇降ステージ23、水平ステージ25を適宜作動させることで、切断位置Pであるブロック固定台20上に載置することもできる。なお、これら昇降ステージ23、水平ステージ25及び把持ロボット26は、制御部9によって制御される図示しないモータによって駆動される。
上述したZ軸ガイドレール22、昇降ステージ23、水平ガイドレール24、水平ステージ25及び把持ロボット26は、上記ブロックハンドリングロボット4を構成している。
【0036】
また、ブロック固定台20の隣には、図5に示すように上記水槽5が設けられている。この水槽5は、切削機構3によって切り出された薄切片B1を、表面張力を利用して伸展させる伸展機構6を構成する一部である。
【0037】
また、ブロック固定台20及び水槽5の上方には、予め図示しない帯電装置によってマイナスの電荷が与えられたキャリアテープ30が設けられている。このキャリアテープ30は、ガイドローラ31と図示しないテープ駆動機構とによって、ブロック固定台20から水槽5に向かう方向に送られるようになっている。
この際、キャリアテープ30は、ブロック固定台20に載置固定された包埋ブロックBに面接触すると共に、水槽5上に達したときに水槽5内に貯留された水W1の表面に接触するよう弛むようになっている。
【0038】
これにより、切削機構3によって切り出された薄切片B1は、静電気によってキャリアテープ30の下面に吸着され、吸着された状態でキャリアテープ30の移動と共に水槽5に向けて搬送されるようになっている。そして薄切片B1は、水槽5上に達した時点で、キャリアテープ30が弛んで水W1に漬かることで、キャリアテープ30から離間して水W1に浮かんだ状態となる。
上述したキャリアテープ30、ガイドローラ31及びテープ駆動機構は、上記切片搬送機構7を構成している。
【0039】
また、水槽5の隣には、図6に示すように、未使用のスライドガラスGを予め複数枚収納するスライドガラス収納棚35と、スライドガラスG上に薄切片B1が転写された薄切片標本Hを複数枚収納する薄切片標本収納棚(収納棚)36とが順に設けられている。
この薄切片標本収納棚36は、複数の保管棚16にそれぞれ収納されている包埋ブロックBから作製された薄切片標本Hを、各包埋ブロックBに対応付けた状態でそれぞれ収納する指定位置となっている。
【0040】
また、水槽5とスライドガラス収納棚35との間には、上記ブロックハンドリングロボット4と同様に、Z方向に延びるZ軸ガイドレール40が取り付けられている。このZ軸ガイドレール40には、該Z軸ガイドレール40に沿って移動可能な昇降ステージ41が取り付けられている。この昇降ステージ41には、水平方向に延びた水平ガイドレール42が取り付けられている。またこの水平ガイドレール42には、該水平ガイドレール42に沿って移動可能な水平ステージ43が取り付けられている。なお、この水平ステージ43は、単に水平方向に移動するだけでなく、Z軸周りに回転可能とされている。更に水平ステージ43には、Z方向に直交する一軸周りに回転可能な状態でスライドガラス把持ロボット44が取り付けられている。スライドガラス把持ロボット44は、上記把持ロボット26と同様に、一定距離離間した状態で平行に配されると共に互いの距離を接近離間自在に調整可能な一対のアーム44aを備えている。
【0041】
そしてこれら昇降ステージ41、水平ステージ43及びスライドガラス把持ロボット44をそれぞれ適宜作動させることで、未使用のスライドガラスGを把持すると共に、水槽5内に浮いている薄切片B1を、把持したスライドガラスG上に転写して薄切片標本Hを作製することができるようになっている。更には、作製した薄切片標本Hを薄切片標本収納棚36に収納することができるようになっている。これについては、後に詳細に説明する。
上述したZ軸ガイドレール40、昇降ステージ41、水平ガイドレール42、水平ステージ43及びスライドガラス把持ロボット44は、上記スライドガラスハンドリングロボット8を構成している。
【0042】
上記制御部9は、包埋ブロックBから作製された薄切片標本Hを、該包埋ブロックBが保管されていた保管棚16に対応付けた薄切片標本収納棚36に収納するようにスライドガラスハンドリングロボット8を制御している。つまり、包埋ブロックBが載置されている保管棚16に対応付けて、該包埋ブロックBから作製された薄切片標本Hを薄切片標本収納棚36に収納させている。
具体的には、図1に示すように、制御部9が複数の保管棚16の位置情報と、複数の薄切片標本収納棚36の位置情報とを相関付けて記憶するメモリ部9aを備えている。これにより、保管棚16に収納されている包埋ブロックBをランダムに取り出したとしても、この包埋ブロックBから作製された薄切片標本Hを保管棚16に対応付けた薄切片標本収納棚36に区別しながら確実に収納できるようになっている。
【0043】
また、制御部9には、薄切片標本Hを作製する際の所定条件を、作業者が予め入力可能な入力部9bが接続されている。そして、制御部9は、この入力部9bを介して予め入力された所定条件に基づいて、薄切片標本Hを作製するように、各構成品(各手段)を制御するようになっている。
【0044】
次に、このように構成された自動薄切片標本作製装置1により、複数の包埋ブロックBから数枚の薄切片標本Hをそれぞれ作製する自動薄切片標本作製方法について、以下に説明する。
本実施形態の自動薄切片標本作製方法は、保管庫2が有する複数の保管棚16に予めそれぞれ区分けされた状態で保管された包埋ブロックBのうち、選択した1つの包埋ブロックBを保管庫2から取り出すと共に、切断位置Pに搬送する第1の搬送工程と、切断位置Pに搬送された包埋ブロックBを、所定の厚みで切断して薄切片B1を切り出す切断工程と、切断された薄切片B1を、水W1が貯留された水槽5に搬送すると共に水面に浮かべる第2の搬送工程と、水面に浮かんだ薄切片B1を、スライドガラスG上に転写させて薄切片標本Hを作製する転写工程とを備え、包埋ブロックBから薄切片B1を必要枚数切り出した後、該包埋ブロックBを保管庫2に戻すと共に、次に選択した包理ブロックBを保管庫2から取り出して切断位置Pに再度搬送させるように第1の搬送工程を繰り返す工程である。
【0045】
また、本実施形態の自動薄切片標本作製方法は、上記各工程に加え、転写工程後、包埋ブロックBから作製された薄切片標本Hを、包埋ブロックBが保管されていた保管棚16に対応付けた収納位置、即ち、薄切片標本収納棚36に収納させる収納工程を有している。上述した各工程について、以下に詳細に説明する。
【0046】
まず、作業者は、それぞれ異なる包埋ブロックB(例えば、全て鼠の生態組織ではあるが、部位が異なる)が載置されたカセット15を、予め保管庫2の保管棚16に保管しておく。また、スライドガラス収納棚35に未使用のスライドガラスGを収納しておく。次いで、作業者は、薄切片標本Hを作製するにあたり種々の所定条件、例えば、包埋ブロックBを取り出す順番や、1つの包埋ブロックBから切り出す薄切片B1の枚数等を、予め入力部9bに入力しておく。
【0047】
上述した初期設定の終了後、制御部9は、入力部9bに入力された所定条件に基づいて、各構成品を制御しながら作動させる。
まず、制御部9は、ブロックハンドリングロボット4を制御して、保管されている複数の包埋ブロックBの中から、選択した最初の包埋ブロックBを取り出して切断位置Pであるブロック固定台20上に搬送させる第1の搬送工程を行う。即ち、ブロックハンドリングロボット4の昇降ステージ23及び水平ステージ25を適宜作動させて、把持ロボット26の一対のアーム26aを保管棚16に挿し込ませる。この際、制御部9は、同時に回転ステージ18を適宜回転させて、最初の包埋ブロックBがブロックハンドリングロボット4側に向くように制御を行う。
【0048】
次いで、一対のアーム26aを互いに接近させるように作動させて、包埋ブロックBが載置されているカセット15を挟み込んで挟持固定する。次いで、カセット15を挟持したまま、再度昇降ステージ23及び水平ステージ25を適宜作動させて、図3に示すように、カセット15をブロック固定台20上に搬送すると共に、該ブロック固定台20上にカセット15を載置する。
【0049】
また、制御部9は、包埋ブロックBが取り出された保管棚16の位置情報をメモリ部9aに記憶する。このメモリ部9aには、予め保管棚16の位置情報と薄切片標本収納棚36の位置情報とが相関付けて記憶されているので、いま入力された保管棚16の位置情報に基づいて、この保管棚16に対応する薄切片標本収納棚36の位置を正確且つ速やかに判断することができる。そして、制御部9は、後に包埋ブロックBから作製された薄切片標本Hを、判断した薄切片標本収納棚36に収納させるようにスライドガラスハンドリングロボット8を制御する。
【0050】
上記第1の搬送工程により、ブロック固定台20に載置固定された包埋ブロックBは、図5に示すように、マイナスの電荷が与えられたキャリアテープ30に面接触する。また、包埋ブロックBは、これと同時に切削機構3によって所定の速度、引き角及びすくい角でスライド操作される切断刃21によって、所定の厚み(例えば、5μmの極薄)でシート状に切断される。この切断工程により、包埋ブロックBから薄切片B1が切り出される。この際、包埋ブロックBは、ブロック固定台20上に載置された時点で帯電装置によってプラスの電荷が与えられているので、薄切片B1は切り出されたと同時にキャリアテープ30の下面に静電気によって吸着する。
【0051】
そして、吸着された薄切片B1は、テープ駆動機構によって移動するキャリアテープ30と共に水槽5に向けて搬送される。このキャリアテープ30は、水槽5の上方まで移動すると、水槽5に貯留されている水W1の中に漬かるように水槽5に向けて弛む。そのため、搬送された薄切片B1は、キャリアテープ30と共に水W1の中に漬かるので、吸着が解かれて水面に浮かんだ状態となる。そして薄切片B1は、一定時間水面上に浮かぶことによって、切断時に発生した皺や丸みが表面張力によって取れて、伸展した状態となる。このように、上述した第2の搬送工程によって、薄切片B1は水槽5に搬送されて、伸展が終了した状態となる。
【0052】
一方、上述した薄切片B1の切り出し、搬送に合わせて、スライドガラスハンドリングロボット8は、図6に示すように、昇降ステージ41、水平ステージ43及びスライドガラス把持ロボット44を適宜作動させて、スライドガラス収納棚35から未使用のスライドガラスGを1枚取り出して、水槽5上方にて待機させる。
即ち、まず昇降ステージ41、水平ステージ43及びスライドガラス把持ロボット44を適宜作動させて、スライドガラス把持ロボット44の一対のアーム44aをスライドガラス収納棚35に挿し込ませる。次いで、一対のアーム44aを互いに接近させるように作動させて、未使用のスライドガラスGを1枚挟み込んで挟持固定する。そして、スライドガラスGを挟持したまま、再度昇降ステージ41、水平ステージ43及びスライドガラス把持ロボット44を適宜作動させて、スライドガラスGを引き出し、水槽5上方に移動させる。そしてこの状態のまま、水槽5に薄切片B1が搬送されてくるまで待機させる。
【0053】
そして、上述した第2の搬送工程により、水槽5内に薄切片B1がキャリアテープ30によって搬送されて、水面に浮かんだ状態が一定時間経過した後、スライドガラスハンドリングロボット8は、昇降ステージ41、水平ステージ43及びスライドガラス把持ロボット44を適宜作動させて、把持しているスライドガラスGを用いて水面に浮かんでいる薄切片B1を掬い上げる。これにより薄切片B1は、スライドガラスG上に転写された状態となる。この転写工程の結果、薄切片標本Hが作製される。
【0054】
そして、スライドガラスハンドリングロボット8は、作製した薄切片標本Hを薄切片標本収納棚36に入れて収納する収納工程を行う。この際、スライドガラスハンドリングロボット8は、制御部9からの指示を受けて、包埋ブロックBが保管されていた保管棚16に対応付けられた薄切片標本収納棚36内に、作製した薄切片標本Hを収納する。これによって、包埋ブロックBと、該包埋ブロックBから作製された薄切片標本Hとが確実に対応付けられた状態となる。
【0055】
また制御部9は、入力部9bに予め入力された所定条件に基づいて、上述した各工程を繰り返して、1つの包埋ブロックBから数枚の薄切片B1の切り出しを行わせて薄切片標本Hの作製を行わせる。また、1つの包埋ブロックBから作製された数枚の薄切片標本Hは、上述したように包埋ブロックBが保管されていた収納棚に対応付けられた薄切片標本収納棚36に保管される。
【0056】
次に制御部9は、1つの包埋ブロックBから必要枚数の薄切片B1を切り出させた後、ブロックハンドリングロボット4を作動させて、使用済みの包埋ブロックBを再度保管庫2に戻すように制御すると共に、入力部9bに予め入力された所定条件に基づいて、次に選択した未使用の包埋ブロックBを切断位置Pに搬送するようにブロックハンドリングロボット4の制御を行う。これにより、次々と途切れることなく、複数の包埋ブロックBから薄切片B1を必要枚数だけ切り出すことができる。
なお、次に選択した包埋ブロックBから作製された薄切片標本Hは、包埋ブロックBが保管されていた保管棚16に対応した次のスライドガラス収納棚内に収納される。
【0057】
そして上述した各工程を繰り返すことで、人手を介すことなく保管庫2に保管されている全ての包埋ブロックBを適宜交換しながら、各包埋ブロックBから必要枚数の薄切片B1を切り出して自動的に薄切片標本Hを作製することができる。
このように、本実施形態の自動薄切片標本作製装置1によれば、作業者の負担が大きかった包埋ブロックBの交換を自動で行いながら、入力部9bに予め入力された所定条件に基づいて薄切片標本Hを自動で作製できるので、作業者の負担を軽減することができ、人為的なミスの発生を低減することができる。特に、包埋ブロックBの交換は、従来頻繁に行われる作業であったので、作業者の負担軽減が顕著なものとなる。
【0058】
特に、本実施形態の自動薄切片標本作製装置1を用いた自動薄切片標本作製方法によれば、制御部9が、作製された薄切片標本Hを、元となる包埋ブロックBが保管されていた保管棚16に対応付けられた指定位置に保管するようにスライドガラスハンドリングロボット8を制御している。即ち、作製した薄切片標本Hを、保管棚16に対応付けられた薄切片標本収納棚36に確実に保管させることができる。従って、作業者は自動的に次々と作製される薄切片標本Hを、薄切片標本収納棚36を確認するだけで、どの包埋ブロックBから作製されたものであるか容易且つ確実に照合することができ、高精度な品質管理を行うことができる。このことからも、作業者の負担を軽減することができる。
また、完成した薄切片標本Hが専用の収納棚(薄切片標本収納棚36)に収納されているので、その後、薄切片標本Hを取り扱いやすい。
【0059】
更に、ブロックハンドリングロボット4によって、いずれかの保管棚16に保管されている包埋ブロックBを出し入れする際に、回転体17を回転軸L回りに回転させることで、外周面上に複数の保管棚16を次々とブロックハンドリングロボット4側に向けることができる。このように、回転体17の外周面に保管棚16が設けられているので、狭い設置スペースで複数の保管棚16を効率良く多数設けることができる。よって、装置全体の小型化を図ることができる。
また、包埋ブロックBを出し入れする際の、ブロックハンドリングロボット4の可動範囲を極力抑えることができる。このことからも、装置の小型化を図ることができ、構成の簡略化を図ることができる。
【0060】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0061】
例えば、本実施形態では、回転体を円柱状として説明したが、この形状に限定されるものではなく、角柱状に形成されていても構わないし、多角形状に形成されていても構わない。また、回転体を設けずに、単に複数の保管棚を有する保管庫としても構わない。但し、装置の小型化の点で、上記実施形態のように回転体を備えることが好ましい。
【0062】
また、第1の搬送手段及び転写手段を、それぞれブロックハンドリングロボット及びスライドガラスハンドリングロボットとして構成したが、このようなロボットに限られるものではない。また、キャリアテープに静電気を利用して薄切片を吸着させ、該キャリアテープによって薄切片を搬送するように第2の搬送手段を構成したが、この構成に限られるものではない。
【0063】
また、上記実施形態では、保管棚に対応付けた指定位置を、薄切片標本収納棚としたが、この場合に限られるものではない。例えば、各保管棚を広めに形成し、各保管棚に保管されている包埋ブロックから作製された薄切片標本を、包埋ブロックと並ぶように保管棚に同時に収納しても構わない。いずれにしても、包埋ブロックと該包埋ブロックから作製された薄切片標本とが、後に容易に照合できるように指定位置が設けられていれば構わない。
【0064】
また、上記実施形態では、伸展機構として水を貯留する水槽を設けただけの構成にしたが、この場合に限られるものではない。例えば、図7に示すように、水槽5に隣接して、お湯W2を貯留する第2の水槽50と、ホットプレート51とを設けた伸展機構6としても構わない。
この場合には、スライドガラスハンドリングロボット8によって、水伸展が終了した薄切片B1をスライドガラスG上に載置した後、該薄切片B1を第2の水槽50に搬送してお湯(液体)W2に浮かべる。このお湯伸展によって、薄切片B1が伸び易くなるので、水W1による伸展では取り切れなかった残りの皺や丸み等を取ることができる。よって、さらに高品質な薄切片標本Hを作製することができる。なお、この場合には、薄切片B1をお湯W2に浮かべるまでが、第2の搬送工程となる。
【0065】
更に、このお湯伸展後、薄切片B1を載置したスライドガラスGをホットプレート51上に載置することで、スライドガラスGを通して薄切片B1にさらに熱を加えることができる。これにより、お湯伸展で取り切れなかった皺や丸み等をさらに取ることができる。
このように、第2の水槽50及びホットプレート51を設けることで、より高品質な薄切片標本Hを作製できるので、より好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係る自動薄切片標本作製装置の一実施形態を示す構成ブロック図である。
【図2】図1に示す保管棚に保管されるカセット及び包埋ブロックの斜視図である。
【図3】図1に示す保管庫及びブロックハンドリングロボットの側面図である。
【図4】図3に示す保管庫及びブロックハンドリングロボットの上面図である。
【図5】図1に示す切削機構、切片搬送機構及び伸展機構の側面図である。
【図6】図1に示すスライドガラスハンドリングロボットの側面図である。
【図7】図1に示す伸展機構の他の例を示す図であって、水伸展、お湯伸展、ホットプレートによる伸展が可能な伸展機構を示す図である。
【符号の説明】
【0067】
B 包埋ブロック
B1 薄切片
G スライドガラス(基板)
H 薄切片標本
L 回転軸
P 切断位置
W1 水(液体)
W2 お湯(液体)
1 自動薄切片標本作製装置
2 保管庫
3 切削機構
4 ブロックハンドリングロボット(第1の搬送手段)
5 水槽(貯留槽)
7 切片搬送機構(第2の搬送手段)
8 スライドガラスハンドリングロボット(転写手段)
9 制御部
9a メモリ部
9b 入力部
16 保管棚
17 回転体
36 薄切片標本収納棚(収納棚)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料が包埋剤に包埋された包埋ブロックを出し入れ可能に複数保管する保管庫と、
前記包埋ブロックを所定の厚みで切断し、シート状の薄切片を切り出す切断手段と、
保管された前記複数の包埋ブロックのうち、選択した1つの包埋ブロックを前記保管庫から出し入れすると共に前記切断手段による切断位置に搬送可能な第1の搬送手段と、
前記薄切片を液体が貯留された貯留槽に搬送すると共に、液面に浮かべる第2の搬送手段と、
液面に浮いた前記薄切片を、基板上に転写させて薄切片標本を作製する転写手段と、
前記切断手段により前記包埋ブロックから前記薄切片を必要数切り出した後、該包埋ブロックを前記保管庫に戻すと共に、次に選択した包埋ブロックを保管庫から取り出して前記切断位置に搬送するように前記第1の搬送手段を制御する制御部とを備えていることを特徴とする自動薄切片標本作製装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動薄切片標本作製装置において、
前記保管庫は、前記複数の包埋ブロックをそれぞれ区分けして保管する複数の保管棚を有し、
前記制御部は、前記包埋ブロックから作製された前記薄切片標本を、該包埋ブロックが保管されていた前記保管棚に対応付けた指定位置に収納するように前記転写手段を制御することを特徴とする自動薄切片標本作製装置。
【請求項3】
請求項2に記載の自動薄切片標本作製装置において、
前記転写手段は、前記指定位置として複数の収納棚を有し、
前記制御部は、前記複数の保管棚の位置情報と、前記複数の収納棚の位置情報とを相関付けて記憶するメモリ部を有していることを特徴とする自動薄切片標本作製装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の自動薄切片標本作製装置において、
前記制御部には、前記薄切片標本を作製する際の所定条件を予め入力可能な入力部が接続されており、該入力部で入力された所定条件に基づいて薄切片標本を作製させるように前記各手段を制御することを特徴とする自動薄切片標本作製装置。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか1項に記載の自動薄切片標本作製装置において、
前記保管庫は、前記保管棚が外周面上に複数設けられ、回転軸を中心に回転自在であると共に前記制御部によって回転制御される回転体を備えていることを特徴とする自動薄切片標本作製装置。
【請求項6】
生体試料が包埋剤に包埋された包埋ブロックから、シート状の薄切片を切り出すと共に、該薄切片を基板上に転写させて薄切片標本を自動的に作製する自動薄切片標本作製方法であって、
出し入れ可能な保管庫に予め複数保管された前記包埋ブロックのうち、選択した1つの包埋ブロックを保管庫から取り出すと共に、切断位置に搬送する第1の搬送工程と、
前記切断位置に搬送された前記包埋ブロックを、所定の厚みで切断して前記薄切片を切り出す切断工程と、
切断された前記薄切片を、液体が貯留された貯留槽に搬送すると共に液面に浮かべる第2の搬送手段と、
液面に浮かんだ前記薄切片を、前記基板上に転写させて前記薄切片標本を作製する転写工程とを備え、
前記包埋ブロックから前記薄切片を必要枚数切り出した後、該包埋ブロックを前記保管庫に戻すと共に、次に選択した包埋ブロックを保管庫から取り出して前記切断位置に搬送させるように前記第1の搬送工程を繰り返すことを特徴とする自動薄切片標本作製方法。
【請求項7】
請求項6に記載の自動薄切片標本作製方法において、
前記複数の包埋ブロックは、前記保管庫が有する保管棚にそれぞれ区分けした状態で保管されており、
前記転写工程後、前記包埋ブロックから作製された前記薄切片標本を、該包埋ブロックが保管されていた前記保管棚に対応付けた指定位置に収納させる収納工程とを備えていることを特徴とする自動薄切片標本作製方法。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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