自動製パン器
【課題】蓋体にパン原料を収納しておくパン原料収納容器が取り付けられる自動製パン器の使い勝手を良くする。
【解決手段】自動製パン器は、本体に開閉可能に取り付けられる蓋体40と、蓋体40に取り付けられ、パンの製造途中でパン容器内に自動投入される一部のパン原料を収納しておくパン原料収納容器110と、を備える。パン原料収納容器110は、開口部111aを有する容器本体111と、開口部111aを開閉する容器蓋112と、を有し、蓋体40には、容器蓋112の開き角度を規制するストッパー部47が設けられている。
【解決手段】自動製パン器は、本体に開閉可能に取り付けられる蓋体40と、蓋体40に取り付けられ、パンの製造途中でパン容器内に自動投入される一部のパン原料を収納しておくパン原料収納容器110と、を備える。パン原料収納容器110は、開口部111aを有する容器本体111と、開口部111aを開閉する容器蓋112と、を有し、蓋体40には、容器蓋112の開き角度を規制するストッパー部47が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として一般家庭で使用される自動製パン器に関する。
【背景技術】
【0002】
市販の家庭用自動製パン器は、パン原料を入れるパン容器をそのまま焼き型としてパンを製造する仕組みのものが一般的である(例えば、特許文献1参照)。このような自動製パン器では、まず、パン原料が入れられたパン容器が本体内の焼成室に入れられる。そして、パン容器内のパン原料がパン容器内に設けられる混練ブレードでパン生地に練り上げられる(練り工程)。その後、練り上げられたパン生地を発酵させる発酵工程が行われ、パン容器が焼き型として使用されてパンが焼き上げられる(焼成工程)。
【0003】
このような自動製パン器を用いてパンの製造が行われる場合、これまでは、パン原料として、小麦や米などの穀物を製粉した粉(小麦粉、米粉等)や、そのような製粉した粉に各種の補助原料が混ぜられたミックス粉が必要とされた。しかしながら、一般家庭においては、米粒に代表されるように、粉の形態ではなく粒の形態で穀物が所持されることがある。このために、自動製パン器が穀物粒から直接パンを製造できるように構成されていれば、非常に便利である。このようなことを念頭において、本出願人らは、穀物粒を出発原料としてパンを製造するパンの製造方法を開発している(特許文献2参照)。
【0004】
このパンの製造方法では、まず、穀物粒と液体とが混合され、この混合物の中で粉砕ブレードが回転されて穀物粒が粉砕される(粉砕工程)。そして、粉砕工程を経て得られたペースト状の粉砕粉を含むパン原料が、混練ブレードを用いてパン生地に練り上げられる(練り工程)。その後、練り上げられたパン生地を発酵させる発酵工程が行われ、続いてパンを焼き上げる焼成工程が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−116526号公報
【特許文献2】特開2010−35476号公報
【特許文献3】特許第3191645号公報
【特許文献4】特開2006−255071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願人らは、上述した、穀物粒を出発原料としてパンを製造する方法を実行可能な、新しい仕組みを備えた自動製パン器の開発を行ってきた。その中で、本出願人らは、パン容器内で液体と混合された穀物粒を粉砕した後に、例えばドライイーストやグルテン等の粉体パン原料をパン容器内に自動投入できる自動製パン器を開発している。
【0007】
粉体パン原料が自動投入される構成を採用するにあたって、レーズンやナッツ等を自動投入するための具材容器を備えた従来の自動製パン器(例えば特許文献3や4参照)と同様に、自動製パン器の蓋体に、粉体パン原料を収納するパン原料収納容器が取り付けられる構成とすることが考えられた。しかしながら、この構成を採用するにあたっては、次のような問題があった。
【0008】
穀物粒を粉砕した後に投入される粉体パン原料(上述のドライイーストやグルテンの他に、例えば小麦粉や上新粉等も挙げられる)は嵩高くなる傾向があり、それを収容するためのパン原料収納容器は、その容積を大きくする必要がある。この場合に、パン原料収納容器の幅や奥行き(高さではない方向のサイズ)を大きくすることが考えられる。しかし、自動製パン器の蓋体には、本体(例えば焼成室)に収容されたパン容器内の状態を外から観察できるように覗き窓を設けるのが一般的であり、パン原料収納容器の幅や奥行きを大きくすると、覗き窓からパン容器内の状態を観察し難くなるといった問題が生じる。
【0009】
一方で、パン原料収納容器の容積を稼ぐために、その高さ方向のサイズを大きくしようとすると、蓋体の厚みを厚くする必要がある。しかしながら、単純に蓋体の厚みを厚くすると、蓋体を開けた状態において本体背面側に必要とされる空間が大きくなってしまい、ユーザが使い勝手が悪いと感じる可能性があった。
【0010】
このような点を考慮して、本出願人らは、自動製パン器の蓋体の構造として、蓋体が閉じられた状態で、本体の前面側から背面側に向かう方向に高さが高くなる傾斜構造を採用している。そして、蓋体が閉じられた状態で、前面寄りに覗き窓が設けられ、背面寄りにパン原料収納容器が収納されるように、本出願人らは蓋体を形成している。
【0011】
このように構成すると、本体背面寄りでは蓋体の厚みが厚くなっているために、本体背面寄りに取り付けられるパン原料収納容器の高さを高くして、その容積を大きくすることができる。また、本体前面寄りに設けられる覗き窓は、蓋体が傾斜構造となっているために傾斜した状態となり、本体前面側から覗き窓を覗いた場合に、ユーザはパン容器の中心位置を見やすくなる。すなわち、ユーザはパンの製造中にパン容器内の観察を行い易い。また、蓋体が傾斜構造となっているために、蓋体が開かれた状態において、本体背面側に必要とされる空間の狭小化が図れる。
【0012】
しかしながら、蓋体の背面寄りにパン原料収納容器を配置する上記構成が採用された場合に、次のような問題が発生することがわかった。パン原料収納容器の容器蓋が開かれて、パン容器に一部のパン原料が自動投入された後において、例えばパン原料収納容器のパン原料がきちんと投入されたか否かを確認する等の目的で、ユーザが自動製パン器の蓋体を開けることがある。このような場合に、ユーザが開いた蓋体を閉じようとした際に、パン原料収納容器の開いた容器蓋が、本体内に収容されるパン容器の一部に引っ掛かって、自動製パン器の蓋体を上手く閉められないことがあった。また、これにより、パン原料収納容器やパン容器に傷が付くといった問題があった。
【0013】
そこで、本発明の目的は、蓋体にパン原料を収納しておくパン原料収納容器が取り付けられる自動製パン器の使い勝手を良くすることである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために本発明の自動製パン器は、パン原料が投入されるパン容器を本体内に受け入れて、パンの製造工程が実行される自動製パン器であって、前記本体に開閉可能に取り付けられる蓋体と、前記蓋体に取り付けられ、パンの製造途中で前記パン容器内に自動投入される一部のパン原料を収納しておくパン原料収納容器と、を備え、前記パン原料収納容器は、開口部を有する容器本体と、前記開口部を開閉する容器蓋と、を有し、前記蓋体には、前記容器蓋の開き角度を規制するストッパー部が設けられている。
【0015】
本構成によれば、蓋体にパン原料収納容器の容器蓋の開き角度を規制するストッパー部が設けられている。このために、パン原料収納容器の容器蓋を開いた状態で自動製パン器の蓋体を開け、その後に蓋体を閉める場合に、パン原料収納容器の容器蓋が本体内に収容されるパン容器の一部に接触しないようにできる。
【0016】
上記構成の自動製パン器において、前記容器蓋には、その周縁から外方に突出する把手部が設けられ、前記ストッパー部は、前記把手部に当接して前記容器蓋の開き角度を規制することとしてもよい。本構成によれば、パン原料収納容器の容器蓋に外方に向けて突出する把手部が設けられているために、パン原料収納容器へのパン原料の収納作業が容易になる。そして、ストッパー部は、この把手部を利用して容器蓋の開き角度を規制するようになっているために、その形状の簡素化を図り易い。
【0017】
上記構成の自動製パン器において、前記蓋体には、前記パン原料収納容器が着脱される際にユーザの手指が入る空間が形成されており、前記ストッパー部は、前記空間内に形成されていることとしてもよい。本構成によれば、別の理由で設けられた空間を利用してストッパー部を設ける構成であり、ストッパー部を設けたために自動製パン器の蓋体が大型化するといった事態が避けられる。
【0018】
上記構成の自動製パン器において、前記ストッパー部は、前記空間を形成する壁部から突出する略板状の突出部であることとしてもよい。このように構成すれば、ストッパー部が、パン原料収納容器が蓋体に取り付けられる際に邪魔となる事態を避けることができる。そして、この構成においては、前記略板状の突出部は、その一部の厚みが厚く形成されていることとしてもよい。これにより、ストッパー部は、小型なものであるとともに、強度の強いものとできる。
【0019】
上記構成の自動製パン器において、前記パン原料収納容器は、前記蓋体に取り付けられない状態で、前記容器蓋の閉位置からの最大開き角度が90°より大きい第1の角度となるように設けられ、前記ストッパー部は、前記容器蓋の閉位置からの開き角度が前記第1の角度よりも小さい第2の角度となるように前記容器蓋の開き角度を規制する、こととしてもよい。
【0020】
本構成によれば、パン原料収納容器にパン原料を収納する作業が行い易い。そして、この作業性の良さと、自動製パン器の蓋体の開閉時における不具合(上述した、パン原料収納容器の容器蓋を開いた状態で自動製パン器の蓋体を開け閉めする際の不具合)の解消との両立が本構成では図れる。
【0021】
上記構成の自動製パン器において、前記パン原料収納容器は、前記蓋体が閉じられた状態で、前記本体の背面寄りに取り付けられることとしてもよい。また、この構成において、前記蓋体は、それが閉じられた状態で、前記本体の前面側から背面側に向かう方向に高さが高くなる傾斜構造を有することとしてもよい。このような構成の自動製パン器に、本発明は好適である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によると、蓋体にパン原料を収納しておくパン原料収納容器が取り付けられる自動製パン器の使い勝手が良くなる。また、本発明は、穀物粒を出発原料としてパンを製造することができる自動製パン器に好適である。このため、本発明によれば、家庭でのパン製造をより身近なものとして、家庭でのパン作りが盛んになることが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態の自動製パン器の外観構成を示す概略斜視図
【図2】本実施形態の自動製パン器の本体内部の構成を説明するための模式図
【図3】本実施形態の自動製パン器が備える第1の動力伝達部に含まれるクラッチについて説明するための図
【図4】本実施形態の自動製パン器における、パン容器が収容された焼成室及びその周辺の構成を模式的に示す図
【図5】本実施形態の自動製パン器が備えるブレードユニットの構成を示す概略斜視図
【図6】本実施形態の自動製パン器が備えるブレードユニットの構成を示す概略分解斜視図
【図7】本実施形態の自動製パン器が備えるブレードユニットの構成を示す概略側面図及び概略断面図
【図8】本実施形態の自動製パン器が備えるブレードユニットを下から見た場合の概略平面図(ガードが取り外された場合の図)
【図9】本実施形態の自動製パン器が備えるブレードユニットの動作を説明するための図で、パン容器を上から見た場合の図
【図10】本実施形態の自動製パン器が備えるパン原料収納容器の構成を示す概略斜視図
【図11】図10(a)のB−B位置における概略断面図
【図12】本実施形態の自動製パン器が備えるパン原料収納容器にパン原料が投入される場合の、パン原料収納容器の姿勢を示す概略断面図
【図13】本実施形態の自動製パン器のパン原料収納容器が取り付けられる蓋の構成を示す概略図
【図14】図13(b)のC−C位置における概略断面図
【図15】図13(b)のD−D位置における概略断面図
【図16】図13(b)の破線の楕円で囲まれた部分の、パン原料収納容器を取り除いた場合の概略平面図
【図17】本実施形態の自動製パン器の蓋に設けられるストッパー部の概略側面図
【図18】本実施形態の自動製パン器の構成を示すブロック図
【図19】本実施形態の自動製パン器によって実行される米粒用製パンコースの流れを示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の自動製パン器の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本明細書に登場する具体的な時間、温度、角度等はあくまでも例示であり、それらは本発明の内容を限定するものではない。
(自動製パン器の構成)
図1は、本実施形態の自動製パン器の外観構成を示す概略斜視図で、図1(a)は蓋が閉じられた状態、図1(b)は蓋が開かれた状態を示している。図1に示すように、自動製パン器1の本体10(その外殻は例えば金属や合成樹脂等によって形成される)の上面の一部には、操作部20が設けられている。この操作部20は、操作キー群と、時間、操作キー群によって設定された内容、エラー等を表示する表示部と、によって構成されている。操作キー群には、例えば、スタートキー、取り消しキー、タイマーキー、予約キー、パンの製造コース(米粒を出発原料に用いてパンを製造するコース、米粉を出発原料に用いてパンを製造するコース、小麦粉を出発原料に用いてパンを製造するコース等)を選択する選択キー等が含まれる。表示部は、例えば、液晶表示パネル等によって構成される。
【0025】
本体10内部には、詳細は後述するパン容器80が収容される焼成室30が設けられている。この焼成室30は、例えば板金からなる底壁30a及び4つの側壁30b(後述の図4も参照)で構成された平面視略矩形の箱形状の部屋であり、その上面に開口を有する。この焼成室30は、本体10上部に設けられる蓋40(本発明の蓋体の一例)によって開閉可能となっている。蓋40は、図示しない蝶番軸で本体10の背面側に取り付けられており、その蝶番軸を支点として回動することで、焼成室30の開閉が可能になっている。
【0026】
この蓋40には、焼成室30内を覗けるように、例えば耐熱ガラスからなる覗き窓41が設けられている。また、蓋40には、その下面側からパン原料収納容器110が着脱自在に取り付けられるようになっている。このパン原料収納容器110は、パンの製造工程の途中で一部のパン原料を自動投入することを可能にするものである。なお、図1(b)は、蓋40にパン原料収納容器110が取り付けられた状態を示しており、更に詳細には、パン原料収納容器110の容器蓋が開いた状態を示している。パン原料収納容器110の詳細な構造については後述する。
【0027】
また、蓋40は、それが閉じられた状態において、その上面の略全体が本体10の前面側から背面側に向けて高くなる傾斜構造を有している(図1(a)参照)。このために、蓋40が閉じられた状態において、本体10前面寄りに配置される覗き窓10から焼成室30に収容されるパン容器80内の様子が観察し易くなっている。また、蓋40が閉じられた状態において、本体10の背面寄りに取り付けられるパン原料収納容器110は、蓋40の厚みが厚い部分に配置されることになるため、その高さを高くして大きな容積を稼げるようになっている。
【0028】
図2は、本実施形態の自動製パン器の本体内部の構成を説明するための模式図である。図2は、自動製パン器1を上側から見た場合が想定されており、図の下側が自動製パン器1の前面(正面)側、図の上側が背面側である。図2に示すように、自動製パン器1には、焼成室30の右横に練り工程で用いられる低速・高トルクタイプの混練モータ50が固定配置され、焼成室30の後ろ側に粉砕工程で用いられる高速回転タイプの粉砕モータ60が固定配置されている。混練モータ50及び粉砕モータ60はいずれも竪軸である。
【0029】
混練モータ50の上面から突出する出力軸51には第1のプーリ52が固定される。この第1のプーリ52は、第1のベルト53によって、その径が第1のプーリ52よりも大きく形成されるとともに第1の回転軸54の上部側に固定される第2のプーリ55に連結されている。第1の回転軸54の下部側には、その回転中心が第1の回転軸54とほぼ同一となるように第2の回転軸57が設けられている(後述の図3も参照)。なお、第1の回転軸54及び第2の回転軸57は、本体10内部に回転可能に支持されている。また、第1の回転軸54と第2の回転軸57との間には、動力伝達と動力遮断を行うクラッチ56が設けられている(後述の図3も参照)。このクラッチ56の構成については後述する。
【0030】
第2の回転軸57の下部側には第3のプーリ58が固定されている(後述の図3も参照)。第3のプーリ58は、第2のベルト59によって、焼成室30の下部側に設けられるとともに原動軸11に固定される第1の原動軸用プーリ12(第3のプーリ58とほぼ同一の径を有する)に連結されている(後述の図3も参照)。混練モータ50自身が低速・高トルクタイプであり、その上、第1のプーリ52の回転が第2のプーリ55によって減速回転される(例えば1/5の速度に減速される)。このため、クラッチ56が動力伝達を行う状態で混練モータ50を駆動すると、原動軸11は低速(例えば180rpm程度)・高トルクで回転する。
【0031】
なお、第1のプーリ52、第1のベルト53、第1の回転軸54、第2のプーリ55、クラッチ56、第2の回転軸57、第3のプーリ58、第2のベルト59、及び第1の原動軸用プーリ12で構成される動力伝達部のことを、以下では、第1の動力伝達部PT1と表現することがある。
【0032】
粉砕モータ60の下面から突出する出力軸61には、第4のプーリ62が固定されている。この第4のプーリ62は、第3のベルト63によって、原動軸11に固定される第2の原動軸用プーリ13(第1の原動軸用プーリ12より下側で固定される;後述の図3参照)に連結されている。第2の原動軸用プーリ13は第4のプーリ62とほぼ同一の径を有する。粉砕モータ60には高速回転可能なものが選定される。そして、第4のプーリ62の回転は第2の原動軸用プーリ13においてほぼ同一速度で維持されるために、粉砕モータ60の高速回転により、原動軸11は高速回転(例えば7000〜8000rpm)を行う。
【0033】
なお、第4のプーリ62、第3のベルト63、及び第2の原動軸用プーリ13で構成される動力伝達部のことを、以下では、第2の動力伝達部PT2と表現することがある。第2の動力伝達部PT2は、クラッチを有さない構成であり、粉砕モータ60の出力軸61と原動軸11とを常時動力伝達可能に連結する。
【0034】
図3は、本実施形態の自動製パン器が備える第1の動力伝達部に含まれるクラッチについて説明するための図である。図3は、図2の矢印X方向に沿って見た場合を想定した図である。なお、図3(a)はクラッチ56が動力遮断を行う状態を示し、図3(b)はクラッチ56が動力伝達を行う状態を示す。
【0035】
図3に示すように、クラッチ56は、第1のクラッチ部材561と第2のクラッチ部材562とを有する。そして、第1のクラッチ部材561に設けられる爪561aと、第2のクラッチ部材562に設けられる爪562aとが噛み合う場合(図3(b)の状態)に、クラッチ56は動力伝達を行う。また、2つの爪561a、562bが噛み合わない場合(図3(a)の状態)に、クラッチ56は動力遮断を行う。すなわち、クラッチ56は噛み合いクラッチとなっている。
【0036】
なお、本実施形態では、2つのクラッチ部材561、562のそれぞれには、周方向(第1のクラッチ部材561を下から平面視した場合、或いは、第2のクラッチ部材562を上から平面視した場合を想定)にほぼ等間隔に並ぶ6つの爪561a、562aが設けられているが、この爪の数は適宜変更してもよい。また、爪561a、562aの形状は、好ましい形状を適宜選択すればよい。
【0037】
第1のクラッチ部材561は、抜け止め対策を施された上で、第1の回転軸54に、その軸方向(図3において上下方向)に摺動可能、且つ、相対回転不能に取り付けられている。第1の回転軸54の第1のクラッチ部材561の上部側には、バネ71が遊嵌されている。このバネ71は、第1の回転軸54に設けられるフランジ部54aと第1のクラッチ部材561とに挟まれるように配置されており、第1のクラッチ部材561を下側に向けて付勢している。一方、第2のクラッチ部材562は、第2の回転軸57の上端に固定されている。
【0038】
クラッチ56における、動力伝達状態と動力遮断状態との切り替えは、下位置と上位置とに選択配置可能なアーム部72を用いて行われる。アーム部72は、その一部が第1のクラッチ部材561の下側に配置され、第1のクラッチ部材561の外周側と当接可能となっている。
【0039】
アーム部72の駆動は、クラッチ用ソレノイド73を用いて行われる。クラッチ用ソレノイド73は、永久磁石73aを備え、いわゆる自己保持型のソレノイドとなっている。クラッチ用ソレノイド73のプランジャー73bは、アーム部72のプランジャー固定用の取付部72aに固定される。このために、電圧の印加によりハウジング73cからの突出量が変動するプランジャー73bの動きに合わせてアーム部72が動く。
【0040】
アーム部72が下位置(図3(b)の状態)から上位置(図3(a)の状態)に移動すると、第1のクラッチ部材561は、アーム部72に押されてバネ71の付勢力に抗して上方向に移動する。アーム部72が上位置にある場合には、第1のクラッチ部材561と第2のクラッチ部材562とは噛み合わない。すなわち、アーム部72が上位置にある場合には、クラッチ56は動力遮断を行う。
【0041】
一方、アーム部72が上位置から下位置に移動すると、第1のクラッチ部材561はバネ71の付勢力によって押される形で下方向に移動する。アーム部72が下位置にある場合には、第1のクラッチ部材561と第2のクラッチ部材562とは噛み合う。すなわち、アーム部72が下位置にある場合には、クラッチ56は動力伝達を行う。
【0042】
粉砕モータ60を駆動する際に、クラッチ56が動力伝達を行う状態(図3(b)の状態)であると、原動軸11を高速回転させる回転動力が混練モータ50の出力軸51に伝達される(図2参照)。この場合、第1のプーリ52と第2のプーリ55との半径比(例えば1:5)によって、混練モータ50の出力軸51を高速(例えば40000rpm等)で回転させる力が必要になる。その結果、粉砕モータ60に非常に大きな負荷が加わり、粉砕モータ60が破損する可能性がある。このような事態を避けるために、自動製パン器1は、動力伝達と動力遮断を行うクラッチ56を第1の動力伝達部PT1に含む構成となっている。
【0043】
なお、上述のように自動製パン器1においては、第2の動力伝達部PT2にはクラッチが設けられない構成としているが、これは次の理由による。すなわち、混練モータ50を駆動しても原動軸11は低速回転(例えば180rpm等)されるのみである。このため、原動軸11を回転させる回転動力が粉砕モータ60の出力軸に伝達されるようになっていても、混練モータ50に大きな負荷が加わることはない。そして、このように第2の動力伝達部PT2にクラッチが設けられない構成を敢えて採用することで、自動製パン器1の製造コストが抑制される。ただし、第2の動力伝達部PT2にクラッチが設けられる構成を採用しても、勿論構わない。
【0044】
図4は、本実施形態の自動製パン器における、パン容器が収容された焼成室及びその周辺の構成を模式的に示す図である。図4は、自動製パン器1を前面(正面)側から見た場合の構成を想定しており、焼成室30及びパン容器80の構成は概ね断面図で示されている。なお、パン原料が投入されるとともにパン焼き型として使用されるパン容器80は、焼成室30に対して出し入れ自在となっている。
【0045】
図4に示すように、焼成室30の内部には、シーズヒータ31(加熱手段の一例)が焼成室30に収容されたパン容器80を包囲するように配置されている。このシーズヒータ31を用いることにより、パン容器80内のパン原料やパン生地の加熱が可能になる。
【0046】
図4を参照して、焼成室30の底壁30aの略中心にあたる箇所には、パン容器80を支持するパン容器支持部14(例えばアルミニウム合金のダイキャスト成型品からなる)が固定されている。このパン容器支持部14は、焼成室30の底壁30aから窪むように形成され、その窪みの形状は上から見た場合に略円形となっている。このパン容器支持部14の中心には、上述の原動軸11が底壁30aに対して略垂直となるように支持されている。原動軸11の上端には、本体側接続部11aが固定されている。
【0047】
パン容器80は例えばアルミニウム合金のダイキャスト成型品(その他、板金等で構成しても構わない)であり、バケツのような形状をしており、開口部側縁に設けられる鍔部80aに手提げ用のハンドル(図示せず)が取り付けられている。パン容器80の水平断面は四隅を丸めた矩形である。また、パン容器80の底部には、詳細は後述するブレードユニット90の一部を収容する平面視略円形状の凹部81が形成されている。
【0048】
パン容器80の底部中心には、垂直方向に延びるブレード回転軸82が、シール対策を施された状態で回転可能に支持されている。このブレード回転軸82の下端(パン容器80の底部から外部側に突き出ている)には、容器側接続部82aが固定されている。
【0049】
また、パン容器80の底部外面側には、ブレード回転軸82を取り囲むように筒状の台座83が設けられている。パン容器80は、この台座83がパン容器支持部14に受け入れられた状態で、焼成室30内に収容されるようになっている。なお、台座83は、パン容器80とは別に形成してもよいし、パン容器80と一体的に形成してもよい。
【0050】
パン容器80の台座83がパン容器支持部14に受け入れられた状態で、パン容器80が焼成室30内に収容されると、ブレード回転軸82の下端に設けられる容器側接続部82aと、原動軸11の上端に固定される本体側接続部11aとの連結が得られるようになる。そして、これにより、ブレード回転軸82は原動軸11から回転動力を伝えられるようになる。すなわち、本体側接続部11aと容器側接続部82aとはカップリングを構成する。
【0051】
ブレード回転軸82のパン容器80内部に突出する部分には、その上からブレードユニット90が着脱可能に取り付けられるようになっている。このブレードユニット90の構成について、図5から図9を参照しながら説明する。
【0052】
なお、図5は、本実施形態の自動製パン器が備えるブレードユニットの構成を示す概略斜視図である。図6は、本実施形態の自動製パン器が備えるブレードユニットの構成を示す概略分解斜視図である。図7は、本実施形態の自動製パン器が備えるブレードユニットの構成を示す図で、図7(a)は概略側面図、図7(b)は図7(a)のA−A位置における断面図である。図8は、本実施形態の自動製パン器が備えるブレードユニットを下から見た場合の概略平面図で、図8(a)は混練ブレードが折り畳み姿勢にある場合の図、図8(b)は混練ブレードが開き姿勢にある場合の図である。図8においては、後述のガードが取り外された状態を示している。図9は、本実施形態の自動製パン器が備えるブレードユニットの動作を説明するための図で、パン容器を上から見た場合の図である。図9(a)は混練ブレードが折り畳み姿勢にある場合の図、図9(b)は混練ブレードが開き姿勢にある場合の図である。
【0053】
ブレードユニット90は、大きくは、ユニット用シャフト91と、ユニット用シャフト91に相対回転不能に取り付けられる粉砕ブレード92と、ユニット用シャフト91に相対回転可能且つ粉砕ブレード92を上から覆うように取り付けられる平面視略円形のドーム状カバー93と、ドーム状カバー93に相対回転可能に取り付けられる混練ブレード101と、ドーム状カバー93に取り付けられ、粉砕ブレード92を下から覆うガード106と、を備える構成となっている(例えば、図5〜図7参照)。
【0054】
なお、ブレードユニット90がブレード回転軸82に取り付けられた状態において、粉砕ブレード92は、パン容器80の凹部81底面より少し上の箇所に位置する。また、粉砕ブレード92及びドーム状カバー93のほぼ全体は凹部81に収容される(例えば図4参照)。
【0055】
ユニット用シャフト91は、例えばステンレス鋼板等の金属によって形成される略円柱状の部材であり、一方端(下端)に開口が設けられ、その内部は中空となっている。すなわち、ユニット用シャフト91は、下端からブレード回転軸82を挿入できるように、挿入孔91bが形成された構成となっている(例えば図7(b)参照)。
【0056】
また、ユニット用シャフト91の側壁の下部側(開口側)には、ユニット用シャフト91の回転中心を挟んで対称配置される一対の切り欠き部91aが形成されている(例えば図6参照。ただし、図6では一対の切り欠き部91aの一方のみが示される)。この切り欠き部91aは、ブレード回転軸82を水平に貫くピン821(図7(b)参照)に係合させるために設けられている。ブレード回転軸82のピン821と、切り欠き部91aとが係合することによって、ユニット用シャフト91はブレード回転軸82に相対回転不能に取り付けられた状態になる。
【0057】
穀物粒粉砕用の粉砕ブレード92は、例えばステンレス鋼板を加工することによって形成される。この粉砕ブレード92は、例えば図6に示すように、第1の切削部921と、第2の切削部922と、第1の切削部921と第2の切削部922とを連結する連結部923と、を備える。連結部923の中央部には、平面視略矩形状(スタジアム形状)の開口923aが形成されている。この開口923aにユニット用シャフト91の下部側が嵌め込まれる形で、粉砕ブレード92はユニット用シャフト91に取り付けられる。
【0058】
なお、ユニット用シャフト91の下部側には、側面の一部(切り欠き部91aが設けられる位置近傍)を削って平坦面が形成されている。これにより、ユニット用シャフト91を下から平面視した場合に、ユニット用シャフト91の下部側は、連結部923に設けられる開口923aとほぼ同形状(略矩形状)となっている。ユニット用シャフト91の下部側を平面視した場合の面積は、開口923aより、ほんの僅かだけ小さくなっている。このような形状を採用しているために、粉砕ブレード92はユニット用シャフト91に相対回転不能に取り付けられる。粉砕ブレード92の下部側には抜け止め用のストッパー部材94がユニット用シャフト91に嵌め込まれるために、粉砕ブレード92がユニット用シャフト91から脱落することはない。
【0059】
粉砕ブレード92を囲んで覆い隠すように配置されるドーム状カバー93は、例えばアルミニウム合金のダイキャスト成型品からなり、その内面側には、ベアリング95(本実施形態では転がり軸受けを使用している)を収容する凹状の収容部931(図7(b)参照)が形成されている。換言すると、この収容部931を形成するために、ドーム状カバー93は、それを外面から見た場合に、中央部に略円柱状の凸部93aが形成された構成となっている。なお、凸部93aには開口が形成されておらず、収容部931に収容されるベアリング95はその側面及び上面が収容部931の壁面に囲い込まれた状態となっている。
【0060】
ベアリング95は上下に抜け止めリング96a、96bが配置された状態で、その内輪95aがユニット用シャフト91に相対回転不能に取り付けられている(内輪95a内側の貫通孔にユニット用シャフト91が圧入されている)。また、ベアリング95は、その外輪95bの外壁が収容部931の側壁に固定されるように、収容部931に圧入されている。このベアリング95(内輪95aが外輪95bに対して相対回転する)の介在によって、ドーム状カバー93はユニット用シャフト91に相対回転可能に取り付けられている。
【0061】
また、ドーム状カバー93の収容部931には、外部からベアリング95内に異物(例えば穀物粒の粉砕時に用いられる液体や粉砕により得られたペースト状物等)が入り込まないように、例えばシリコン系或いはフッ素系の材料によって形成されるシール材97及び、このシール材97を保持する金属製のシールカバー98が、ベアリング95の下部側から圧入されている。シールカバー98は、ドーム状カバー93への固定が確実となるように、リベット99によってドーム状カバー93に固着されている。このリベット99による固定は行わなくてもよいが、確実な固定を得るために、本実施形態のように構成するのが好ましい。
【0062】
ドーム状カバー93の外面には、凸部93aに隣接する箇所に垂直方向に延びるように配置される支軸100(図6参照)を用いて、平面形状「く」の字形の混練ブレード101(例えばアルミニウム合金のダイキャスト成型品からなる)が取り付けられている。混練ブレード101は、支軸100に相対回転不能に取り付けられており、ドーム状カバー93に相対回転可能に取り付けられる支軸100と動きを共にする。換言すると、混練ブレード101は、ドーム状カバー93に対して相対回転可能に取り付けられた構成となっている。
【0063】
混練ブレード101は、支軸100と共に支軸100の軸線周りに、一定の範囲内だけ回転可能となっている。図5、図7、図8(a)及び図9(a)に示す折り畳み姿勢は、混練ブレード101が回転可能な範囲の一端にある場合に該当する。また、図8(b)及び図9(b)に示す開き姿勢は、混練ブレード101が回転可能な範囲の他端にある場合に該当する。
【0064】
混練ブレード101の先端側近傍の一方面には、図5〜図9に示すように緩衝材107が取り付けられている。緩衝材107は、混練ブレード101の先端から僅かに突出するように設けられている(例えば図8(b)参照)。緩衝材107の固定は、混練ブレード101の一方面と固定用板108とで緩衝材107を挟持した状態とし、混練ブレード101の他方面側から挿入されるリベット109のカシメで得られる構成となっている。
【0065】
この緩衝材107は、混練ブレード101が開き姿勢となった場合に、パン容器80(の内壁)と直接接触しないように配置されている。混練ブレード101とパン容器80とが直接接触すると、それらの間の干渉が原因となって破損が発生する可能性があり、このような破損を防止すべく緩衝材107は設けられている。また、緩衝材107は防音対策としても機能する。なお、以下では、この緩衝材107も混練ブレード101の一部と見なして説明が行われる場合がある。
【0066】
また、本実施形態では、ドーム状カバー93の外面に、混練ブレード101に並ぶように補完混練ブレード102(例えばドーム状カバー93と一体的に設けられる)が固定配置されている。混練ブレード101が折り畳み姿勢となっている場合には、例えば図5や図7に示すように補完混練ブレード102は混練ブレード101に整列し、あたかも「く」の字形状の混練ブレード101のサイズが大型化したようになる。この補完混練ブレード102は、必ずしも設ける必要がないが、パン生地を練り上げる練り工程における混練効率を高めるために設けるのが好ましい。
【0067】
ユニット用シャフト91には、例えば図6に示すように、粉砕ブレード92とシールカバー98との間にカバー用クラッチ103を構成する第1係合体103aが取り付けられている。例えば亜鉛ダイカストからなる第1係合体103aには略矩形状(スタジアム形状)の開口103aaが形成されており、この開口103aaにユニット用シャフト91の下部側の平面視略矩形状部分が嵌め込まれることにより、第1係合体103aはユニット用シャフト91に相対回転不能に取り付けられている。この第1係合体103aは粉砕ブレード92よりも先に、ユニット用シャフト91の下側から取り付けられ、ストッパー部材94によって、粉砕ブレード92と共にユニット用シャフト91からの脱落が防止されている。なお、本実施形態では、第1係合体103aとシールカバー98との間には、第1係合体103aの劣化防止等を考慮してワッシャ104を配置する構成としているが、このワッシャ104は必ずしも設けなくてもよい。
【0068】
また、混練ブレード101が取り付けられる支軸100の下部側には、カバー用クラッチ103を構成する第2係合体103bが取り付けられている。例えば亜鉛ダイカストからなる第2係合体103bには略矩形状(スタジアム形状)の開口103baが形成されており、この開口103baに支軸100の下部側の平面視略矩形状部分が嵌め込まれることにより、第2係合体103bは支軸100に相対回転不能に取り付けられている。なお、本実施形態では、第2係合体103bの上側に、第2係合体103bの劣化防止等を考慮してワッシャ105を配置する構成としているが、このワッシャ105は必ずしも設けなくてもよい。
【0069】
第1係合体103aと第2係合体103bとで構成されるカバー用クラッチ103は、ブレード回転軸82(ユニット用シャフト91が相対回転不能に取り付けられる)の回転動力をドーム状カバー93に伝達するか否かを切り替えるクラッチとして機能する。
【0070】
混練ブレード101が折り畳み姿勢にある場合(例えば図8(a)、図9(a)の状態)、第2係合体103bの係合部103bbは第1係合体103aの係合部103ab(本実施形態では2つあるが1つでもよい)の回転軌道に干渉する角度となる(図8(a)の破線参照)。このため、ユニット用シャフト91が回転(図8(a)において反時計方向回転)すると、第1係合体103aと第2係合体103bとは係合する。すなわち、混練ブレード101が折り畳み姿勢にある場合には、ブレード回転軸82の回転動力をドーム状カバー93に伝達することが可能になる。なお、混練ブレード101が折り畳み姿勢にある場合には、混練ブレード101の回転を規制するストッパーの働きにより、第2係合体103bは時計方向(図8(a)参照)に回転しない。
【0071】
一方、混練ブレード101が開き姿勢にある場合(例えば図8(b)、図9(b)の状態)、第2係合体103bの係合部103bbは第1係合体103aの係合部103abの回転軌道から逸脱した角度となる(図8(b)の破線参照)。このために、ブレード回転軸82が回転しても、第1係合体103aと第2係合体103bは係合しない。従って、ブレード回転軸82の回転動力はドーム状カバー93に伝達されない。
【0072】
例えば図5及び図6に示すように、ドーム状カバー93には、カバー内空間とカバー外空間を連通する窓93bが形成される。窓93bは粉砕ブレード92に並ぶ高さか、それよりも上の位置に配置される。なお、本実施形態では、計4個の窓93bが90°間隔で並んでいるが、それ以外の数と配置間隔を選択することもできる。
【0073】
また、ドーム状カバー93内面には、各窓93bに対応して計4個のリブ93cが形成されている(図8参照)。各リブ93cはドーム状カバー93の中心近傍から外周の環状壁まで半径方向に斜めに延び、4個合わさって一種の巴形状を構成する。また、各リブ93cは、それに向かって押し寄せるパン原料に対面する側が凸となるように湾曲している。
【0074】
また、ドーム状カバー93の下面には、ガード106が着脱可能に取り付けられるようになっている。このガード106は、ドーム状カバー93の下面を覆って粉砕ブレード92にユーザの指が接近するのを阻止する。ガード106は、例えば耐熱性を有するエンジニアリングプラスチックによって形成され、例えばPPS(ポリフェニレンサルファイド)等の成型品とできる。なお、このガード106は設けなくても構わないが、ユーザの安全を確保する目的等から、設けるのが好ましい。
【0075】
例えば図6に示すように、ガード106の中心には、ユニット用シャフト91に固定されるストッパー部材94を通すリング状のハブ106aがある。また、ガード106の周縁には、ハブ106aの外側に同心円状に設けられたリング状のリム106bがある。ハブ106aとリム106bとは複数のスポーク106cで連結される。複数のスポーク106cは所定の間隔を置いて配置され、スポーク106c同士の間は、粉砕ブレード92によって粉砕される穀物粒を通す開口部106dとなる。開口部106dは、指が通り抜けられない程度の大きさとなっている。
【0076】
ガード106のスポーク106cは、ドーム状カバー93に取り付けられた時、粉砕ブレード92と近接状態となる。そして、あたかも、ガード106が回転式電気かみそりの外刃で、粉砕ブレード92が内刃のような形になる。
【0077】
リム106bの周縁には、90°間隔で計4個(この構成に限定されないのは言うまでもない)の柱106eが一体成形されている。この柱106eのガード106中心側を向いた側面には、一端が行き止まりになった水平な溝106eaが形成される。この溝106eaと、ドーム状カバー93の外周に形成される突起93d(これも45°間隔で計4個配置されている)とを係合させることによって、ガード106はドーム状カバー106に取り付けられる。
【0078】
以上のように、本実施形態の自動製パン器1では、粉砕ブレード92及び混練ブレード101を1つのユニット(ブレードユニット90)に組み込む構成としているので、その取り扱いが便利である。ユーザは、ブレードユニット90をブレード回転軸82から簡単に引き抜くことが可能であり、製パン作業終了後にブレードの洗浄を手軽に行うことができる。また、ブレードユニット90が備える粉砕ブレード92は、ユニット用シャフト91に着脱可能に取り付けられるものであり、その量産が行いやすく、ブレード交換等のメンテナンス性にも優れる。
【0079】
ここで、蓋40に着脱自在に取り付けられるパン原料収納容器110について、図10〜図12を参照しながら説明する。図10は、本実施形態の自動製パン器が備えるパン原料収納容器の構成を示す概略斜視図で、図10(a)は主に前面側を示す図、図10(b)は主に背面側を示す図である。なお、パン原料収納容器110が取り付けられた蓋40が閉じられた状態において、本体10前面側となる面をパン原料収納容器110の前面、本体10背面側となる面をパン原料収納容器110の背面としている(以下、同様)。また、図10(a)と図10(b)では、パン原料収納容器110の上下が逆となっている。図11は、図10(a)のB−B位置における概略断面図である。図12は、本実施形態の自動製パン器が備えるパン原料収納容器にパン原料が投入される場合の、パン原料収納容器の姿勢を示す概略断面図である。なお、図12は、パン原料収納容器を長手方向の略中央位置で切った断面図である。
【0080】
自動製パン器1が備えるパン原料収納容器110は、大きくは、容器本体111と、容器本体111に対して回動可能に設けられて容器本体111の開口部111aを開閉する容器蓋112と、を備えている。
【0081】
容器本体111は、図11に示すように、その断面形状が略矩形状の箱形部材であり、パン原料を投入するための投入口となる開口部111aを有する。この容器本体111は、その内部に粉体パン原料(例えばグルテンやドライイースト等)が付着するのを抑制できるように、静電気を帯び難い、例えばアルミニウムや鉄等の金属によって形成されている。容器本体111の材質としてアルミニウムが選択される場合には、その表面をアルマイト処理するのが好ましい。このように構成することで、耐久性に優れる(例えば水蒸気による影響を受け難い)容器を容易に得られる。なお、アルマイト処理の上に、例えばシリコン系やフッ素系のコーティング層が施されるようにしてもよい。また、容器本体111は、凹凸がなるべく形成されず、滑らかに形成されるのが好ましい。
【0082】
また、容器本体111には、開口部111aの全周を取り囲むように、外向きに突出する鍔部(フランジ部)111bが形成されている(図11参照)。この鍔部111bには、例えばシリコーンで構成されるパッキン113(シール部材の一例)が取り付けられている。パッキン113は、平面形状略額縁状となっており、鍔部111b全周に取り付けられている。すなわち、パッキン113は、容器本体111の開口部111aを取り囲むように容器本体111に取り付けられている。
【0083】
このパッキン113は、より詳細には、鍔部111bを上下から挟むように取り付けられる断面略コの字状の部分113aと、この断面略コの字状の部分から突出(図11においては下方に突出)し、先端側が開口部111aに向かう方向とは逆向きに向かうように折り返された薄肉の弾性部113bと、を有している。
【0084】
パッキン113の固定は、パッキン113の略コの字状の部分113aを挟み込むようにして容器本体111に取り付けられる固定部材114を用いて行われる。固定部材114は、平面形状略額縁状である。この固定部材114の材質は、特に限定されるものではないが、例えば、ガラスフィラーが分散されたポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂等が選択できる。固定部材114は、詳細には2つのパーツで構成されている。2つのパーツは、パッキン113(弾性部113bは除く)及び鍔部111bを挟み込むように配置されている。そして、これら2つのパーツがネジ留めされることにより、固定部材114によるパッキン113の固定が実現されている。
【0085】
容器蓋112は、例えば金属プレートを用いて形成される。容器蓋112を構成する金属としては、容器本体111の場合と同様の理由(粉体パン原料の付着を抑制)でアルミニウム等が好ましい。また、容器蓋111の材質としてアルミニウムが選択される場合には、その表面をアルマイト処理するのが好ましい。また、アルマイト処理の上に、例えばシリコン系やフッ素系のコーティング層が施されるようにしてもよい
容器蓋112は、容器本体111の開口部111aよりやや面積が広く形成される平面視略矩形状の板状部112aと、板状部112aの一端側(図10に示されるようにパン原料収納容器110の背面側が相当する)の両端部に設けられる一対の係合部112b(例えば図10(b)参照)と、一対の係合部112bに挟まれるように板状部112aの一端側に設けられる折曲部112cと、を有する。
【0086】
一対の係合部112bは、容器本体111に対して固定状態となるように設けられる支軸115を中心として容器蓋112が回転可能となるように設けられる。この一対の係合部112bは、金属プレートの板状部112aと連続する部分を外部側(容器蓋112が閉位置にある状態において容器本体111から離れる方向)に折り曲げることによって得られる。一対の係合部112bは、板状部112aの板面に対して略垂直となっている。なお、一対の係合部112bのそれぞれには、板状部112aの板面から所定の距離だけオフセットした位置に、支軸115が挿通される係合孔EH(図12参照)が形成されている。
【0087】
なお、パン原料収納容器110の背面側に設けられる支軸115は、次のような構成されている。支軸115となる棒状部を有する略L字状の板金部材を2つ用意し、これらを、背面側の両端において、固定部材114を構成する2つのパーツで挟み込むことによって支軸115を得ている。ただし、支軸115を得る構成はこれに限らず、例えば、容器本体111に支軸115を支える支持部を設けることによって、支軸が得られるようにしてもよい。また、支軸115は、場合によっては、背面側の一方の端部から他方の端部へと延びる、1本の棒であっても構わない。
【0088】
折曲部112cは、係合部112b同様に、金属プレートの板状部112aと連続する部分を外部側に折り曲げることによって得られる。ただし、折曲部112cは、係合部112bのように急激に折り曲げられるのではなく、徐々に板面に対する折り曲げ角が大きくなるように折り曲げられている。折曲部112cの先端側の板面は、板状部112aの板面に対して、略90度となっている。この折曲部112cは、容器蓋112が開かれる場合に、容器蓋112の端部がパッキン113に引っ掛かったり、パッキン113を損傷したりするのを防止するために設けられている。
【0089】
折曲部112cの略中央部・先端には、外部方向に斜めに突出する、平面視略矩形状の把手部116が設けられている。この把手部116は、ユーザが容器蓋112を開く際の操作が行い易いように設けられている。この把手部116は、本発明における容器蓋の周縁から外方に突出する把手部の一例である。
【0090】
なお、把手部116のサイズ、形状及び設置位置は適宜変更してよい。また、本実施形態では、把手部116には例えばシリコーン等からなる弾性のカバー116aが被せられている(図10(b)参照)。このカバー116aは設けなくてもよいが、ユーザの手指等を保護するために設けるのが好ましい。また、把手部116は、後述のように、容器蓋112が開かれた際に他の部材と当接する。本実施形態のようにカバー116aが被せられていると、他の部材との衝突時の衝撃が和らげられる。この点からも、把手部116にはカバー116aを取り付けるのが好ましい。
【0091】
パン原料収納容器110の前面側には、ロック機構118が設けられている。このロック機構118は、固定部材114に形成されている。ロック機構118は、ユーザが手指を載せられるように設けられた載置部118aと、この載置部118aから容器本体111の開口部111a方向に向かって突出し、閉位置にある容器蓋112を外面側から押さえるフック部118bと、載置部118aから容器本体111の長手方向と略平行な方向に延びる腕部118cと、を有する構成となっている。
【0092】
腕部118cは、容器本体111の深さ方向と平行な回転軸C1(図10(a)参照)を中心に回動可能に、固定部材114に軸支されている。腕部118cは、その一端部側を図示しない付勢部材によって付勢されており、腕部118cの他端側に設けられる載置部118a及びフック部118bは、その付勢力によって、容器本体111の開口部111a側に向かうようになっている。
【0093】
フック部118bは断面視略三角形状に設けられており、容器蓋112をフック部118bに載せた状態で、下向き(図10(b)や図12の姿勢を前提とした表現)に力を加えると、腕部118cを付勢する付勢部材の付勢力に抗した力が発生する。このために、フック部118bに容器蓋112を載せて下向きに力を加えると、容器蓋112がフック部118bに載っている状態では、腕部118cが付勢部材の付勢力に反する力によって回転し、フック部118bが容器蓋112から離れる方向に移動する。そして、フック部118bに容器蓋112が載っていない状態になると、腕部118cが付勢部材の付勢力によって回転して容器蓋112側に移動するため、フック部118bは容器蓋112を外面側から押さえる位置に至る。これにより、ロック状態(容器蓋112の閉位置で維持された状態)が得られる。
【0094】
ロック状態においては、例えば図11に示すように、容器蓋112の内面外周側がパッキン113の弾性部13bと接触した状態で鍔部111bと重なり、開口部111aが完全に塞がれた状態となる。このロック状態においては、パッキン113によって容器本体111と容器蓋112との間がシールされているために、容器本体111内に外部から水分や埃等が入り込み難くなる。
【0095】
このロック状態を解除して容器本体111の開口部111aを開いた状態とする場合には、腕部118cが付勢力に反して回動(回転軸C1を中心とする回動)するように外部から力を付与し、フック部118bが容器蓋112を外面側から押さえない位置に移動するようにすればよい。これにより、容器蓋112が重力によって回動されるようにでき(例えば図10(a)や図11の姿勢を前提とした表現)、開口部111aが開いた状態(開状態)が得られる。
【0096】
なお、本実施形態の自動製パン器1では、操作部20(図1参照)の下部側の本体10内に自動投入用ソレノイド16(後述の図18参照)が設けられている。このソレノイド16が駆動すると、そのプランジャーが蓋40に隣接する本体壁面10aに設けられる開口10b(図1(b)参照)から突出する。そして、突出したプランジャーが、蓋40の側壁40aに設けられる可動部材46(後述の図13(a)参照)を押圧する。押圧された可動部材46が動くことでロック機構118の腕部118cが押圧され、図示しない付勢部材の付勢力に反して腕部118cが回動する。これにより、フック部118bによる容器蓋112の押さえが解除され、容器蓋112が重力によって回動し、開口部111aが開いた状態となるようになっている。
【0097】
パン原料収納容器110にパン原料を投入する場合には、ユーザは次のような動作を行えばよい。まず、ユーザは、指(例えば右手親指)を載置部118aに載せ、外向き(図12の右向き)に力を加える。これにより、ロック機構118の腕部118cが回転し、フック部118bが容器蓋112の外面を押さえない位置に移動される。そして、この状態で、把手部116を指(例えば左手親指)で外向き(図12の左向き)に押すことによって、容器蓋112が回動して開いた状態(図12に示す状態)が得られる。なお、載置部118aは、指を載せる載置面が断面視略L字状となっている(図12参照)ために、指の掛かりがよい。
【0098】
蓋40に取り付けられない状態でパン原料収納容器110の容器蓋112が開かれる場合、把手部116(正確にはカバー116aであるが、カバー116aは把手部116の一部とみなされる)が固定部材114の一部に衝突して、容器蓋112の最大開き角度が規制される。本実施形態では、例えば、閉位置からの開き角度(回転角度)が略95°(本発明の第1の角度の一例)となるように調整されている。このように閉位置からの開き角度を90°より大きくすれば、図12に示すように、パン原料収納容器110を台2上に置いて容器本体111にパン原料を入れる際に、容器蓋112が閉位置に向かって回動しにくい(倒れ難い)。このため、ユーザは、パン原料収納容器110へのパン原料の収納が行い易い。
【0099】
次に、パン原料収納容器110が蓋40にどのように取り付けられるかについて、主に、図10、図13、図14を参照しながら説明する。なお、図13は、本実施形態の自動製パン器のパン原料収納容器が取り付けられる蓋の構成を示す概略図で、図13(a)は蓋を斜め下から見た場合の斜視図、図13(b)は蓋を下から見た場合の平面図である。図14は、図13(b)のC−C位置における概略断面図である。なお、図13及び図14は、蓋40にパン原料収納容器110が取り付けられ、更にパン原料収納容器110の容器蓋112が開いた状態を示している。
【0100】
図10に示すように、パン原料収納容器110の固定部材114には、パン原料収納容器110の蓋40による保持が可能となるように、背面側に第1の取付用係合部119、前面側に第2の取付用係合部120が形成されている。
【0101】
第1の取付用係合部119は、固定部材114の側面から外側に向けて突出する(図14において斜め上方に向けて突出する)第1の係合傾斜面119aを有する。この第1の係合傾斜面119aは、背面側の両端部近傍に、それぞれ近接して2つずつ、計4つ設けられている。ただし、この第1の係合傾斜面119a(第1の取付用係合部119)の数、及び配置は一例であり、適宜変更してよい。
【0102】
第2の取付用係合部120は、ハウジング部120aと、ハウジング部120aに、その一部が収容された取付用フック部(可動式フック部)120bと、を有する。取付用フック部120bは、ハウジング部120a内部に設けられる付勢部材120c(図14参照)によって、容器本体111の短手方向と略平行な方向外向き(図14において左向き)に付勢されている。また、取付用フック部120bは、付勢部材120cの付勢力に抗する方向(図14において右向き)に力を加えると、その方向に移動可能となっており、ハウジング部120aからの突出量が可変となっている。
【0103】
図13及び図14に示すように、自動製パン器1の蓋40の内部にはフレーム部材42(例えばアルミニウム合金のダイキャスト成型品からなる)が収容され、このフレーム部材42は、蓋40の裏面側から内カバー43(例えば板金製)によって支持されている。フレーム部材42には、蓋40が閉状態とされた場合に本体10の背面寄りとなる部分に、ドーム状壁42bによって囲まれた凹部空間45が形成されている。この凹部空間45が、パン原料収納容器110を保持する保持部となる。
【0104】
なお、フレーム部材42の、蓋40が閉状態とされた場合に本体10の前面寄りとなる部分には、平面視略矩形状(蓋40を裏面側から見た場合を想定)の壁部42aによって囲まれた貫通孔44が設けられている。壁部42aは、蓋40の上面側に配置される覗き窓41に当接して覗き窓41を支持する。
【0105】
凹部空間45(パン原料収納容器110の保持部となる)内の前面(図14において左側)には、パン原料収納容器110が保持部45に保持された場合に、第2の取付用係合部120の取付用フック部120bと係合する係合溝45aが形成されている。また、この保持部45内の背面側(図14において右側)には、パン原料収納容器110が保持された場合に、パン原料収納容器110の第1の係合傾斜面119aと略平行となって第1の係合傾斜面119aに当接する、第2の係合傾斜面45bが形成されている。
【0106】
この保持部45内にパン原料収納容器110を収納する場合、ユーザは、第2の取付用係合部120の取付用フック部120bがハウジング部120a内に引っ込む方向の力(付勢部材120cの付勢力に反する方向の力)を付与する。そして、取付用フック部120bのハウジング部120aからの突出量が減じられた状態で、パン原料収納容器110を第1の係合傾斜面119aが第2の係合傾斜面45bにぶつからないように斜めにして保持部45内に押し込む。その後、取付用フック部120bに加えていた力を抜いて、取付用フック部120bを突出方向に移動させ、取付用フック部120bと係合溝45aとを係合させる。
【0107】
このようにして、パン原料収納容器110を保持部45に嵌め込むと、蓋40を閉状態とした場合において(図14の状態が該当)、第1の係合傾斜面119aと第2の係合傾斜面45bとが当接した状態となる。そして、パン原料収納容器110は、第2の係合傾斜面45bから鉛直方向上向き(図14の上向き)の力と、取付用フック部120bの係合溝45aへの係合が解除される方向と反対方向の力(図14の左向きの力)とを受けることになる。このため、パン原料収納容器110は、保持部45内で、取付用フック部120bと係合する係合溝45aと、第1の係合傾斜面119aに当接する第2の係合傾斜面45bと、によって支持され、保持部45に保持されることになる。
【0108】
なお、パン原料収納容器110を保持部45から取り外す場合には、取付用フック部120bをハウジング部120aに引っ込む方向に押圧して、取付用フック部120bと係合溝45aとの係合を解除する。そして、第1の係合傾斜面119aが第2の係合傾斜面45bによって邪魔されないように斜めに引き出せばよい。すなわち、ユーザは、取付用フック部120bを押すだけで、簡単に、パン原料収納容器110の蓋40への取付及び取外しを行える。
【0109】
なお、フレーム部材42には、パン原料収納容器110の着脱が行われる際に、ユーザの手指が引っ掛からないように、保持部45の前面側と背面側とに手指が入る空間SP1、SP2が形成されている(図13(b)、図14参照)。
【0110】
ところで、本実施形態の自動製パン器1のように、蓋40の背面寄りにパン原料収納容器110が配置される場合には、上述したような問題が生じる。すなわち、ユーザが、パン原料収納容器110の容器蓋112が開かれた状態で蓋40を開け、その後、蓋40を閉めようとした場合に、パン原料収納容器110の容器蓋112がパン容器80の鍔部80aの一部に引っ掛かって(自動製パン器1の背面側で当接する)蓋40が上手く閉められないといった事態が発生することがある。本実施形態の自動製パン器1は、このような事態が発生しないように、以下に説明する工夫がなされている。
【0111】
図15は、図13(b)のD−D位置における概略断面図である。図16は、図13(b)の破線の楕円で囲まれた部分の、パン原料収納容器を取り除いた場合の概略平面図である。図17は、本実施形態の自動製パン器の蓋に設けられるストッパー部の概略側面図である。なお、図17においては、ストッパー部に当接するパン原料収納容器110の把手部116も破線で示している。
【0112】
図13(b)、図15及び図16に示されるように、フレーム部材42の空間SP2(手指が入れられるように背面側に設けられる空間)の略中央部には、略板状に設けられ、空間SP2の背面側(自動製パン器1の蓋40が閉じられた状態を想定)の壁部W1より突出する突出部47が設けられている。この突出部47は、本発明のパン原料収納容器の容器蓋の開き角度を規制するストッパー部である。
【0113】
パン原料の一部を自動投入するために、保持部45に収容されたパン原料収納容器110の容器蓋112のロック状態が解除された場合、容器蓋112が支軸115を中心として回転する。そして、容器蓋112は、把手部116がストッパー部(突出部)47に衝突して回動が停止される。すなわち、ストッパー部47によって、容器蓋112の閉位置からの開き角度が規制される。
【0114】
本実施形態においては、ストッパー部47は、容器蓋112の閉位置からの開き角度が略85℃となるように調整されている。これにより、パン原料収納容器110の容器蓋112が開かれた状態で蓋40を開いた後に、蓋40を再度閉める場合に、容器蓋112がパン容器80の鍔部80aに引っ掛かって蓋40が上手く閉められないといった事態が発生するのを避けられる。なお、ストッパー部47によって規制される容器蓋112の開き角度は、上記目的が達成される範囲で適宜変更してよい。
【0115】
上述のように、パン原料収納容器110が蓋40に取り付けられていない状態では、容器蓋112の閉位置からの最大開き角度は90°より大きい角度(本実施形態では95°(第1の角度))とされている。これは、容器本体111を台2上に載せてパン原料を入れる場合に、容器蓋112が倒れ難いようにするためである。しかし、このように構成した場合には、ストッパー部47を設けない場合には、蓋40を開いた場合に容器蓋112の開き量(角度)が大きくなって、上述した容器蓋112の、パン容器80の鍔部80aへの引っ掛かりが発生しやすくなる。このため、本実施形態の自動製パン器1では、ストッパー部47を用いて、容器蓋112の閉位置からの開き角度が第1の角度(本実施形態では95°)より小さい第2の角度(本実施形態では85°)となるようにして、上述した容器蓋112の引っ掛かりが発生しないようにしている。
【0116】
ストッパー部47は、本実施形態ではフレーム部材42と一体的に設けている。ただし、場合によっては別部材としてもよい。また、本実施形態では、ユーザの手指を入れる空間SP2を利用してストッパー部47を設ける構成としている。このように構成することで、ストッパー部47を設けたことによる不要な空間が発生せず、蓋40の大型化が避けられる。ただし、ストッパー部47をユーザの手指を入れる空間SP2に設ける構成であるために、ストッパー部47は極力小さい(薄い)ことが望ましい。このために、ストッパー部47は、薄肉の略板状の突出部としている。
【0117】
ただし、自動製パン器1においては、パン原料収納容器110を用いた自動投入が行われる度に、容器蓋112の把手部116とストッパー部47との衝突が行われることになる。このために、ストッパー部47は強度が強いのが好ましい。そこで、図16及び図17に示すように、ストッパー部47の把手部116と接触する箇所近傍を含む一部において、ストッパー部47の厚みが厚くされている。具体的には、ストッパー部47の両側面に、接触箇所近傍から略対角方向へと延びる、かまぼこ状の凸部47aが形成されている。これにより、ユーザの手指を入れる空間SP2におけるストッパー部47のサイズを小さく(薄く)抑制しつつ、ストッパー部47の強度アップが図れる。なお、ストッパー部47は、凸部47aを有さない単なる板状のものであっても勿論よい。
【0118】
図18は、本実施形態の自動製パン器の構成を示すブロック図である。図18に示すように、自動製パン器1における制御動作は制御装置130によって行われる。制御装置130は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、I/O(input/output)回路部等からなるマイクロコンピュータ(マイコン)によって構成される。この制御装置130は、焼成室30の熱の影響を受け難い位置に配置するのが好ましい。また、制御装置130には、時間計測機能が備えられており、パンの製造工程における時間的な制御が可能となっている。
【0119】
制御装置130には、上述の操作部20と、焼成室30の温度を検知する温度センサ15と、混練モータ駆動回路131と、粉砕モータ駆動回路132と、ヒータ駆動回路133と、第1のソレノイド駆動回路134と、第2のソレノイド駆動回路135と、が電気的に接続されている。
【0120】
混練モータ駆動回路131は、制御装置130からの指令の下で混練モータ50の駆動を制御するための回路である。また、粉砕モータ駆動回路132は、制御装置130からの指令の下で粉砕モータ60の駆動を制御するための回路である。ヒータ駆動回路133は、制御装置130からの指令の下でシーズヒータ31の動作を制御するための回路である。第1のソレノイド駆動回路134は、制御装置130からの指令の下で、パンの製造工程の途中で一部のパン原料を自動投入する際に駆動する自動投入用ソレノイド16の駆動を制御するための回路である。第2のソレノイド駆動回路135は、制御装置130からの指令の下でクラッチ56(図3参照)の状態を切り替えるクラッチ用ソレノイド73(図3参照)の駆動を制御するための回路である。
【0121】
制御装置130は、操作部20からの入力信号に基づいてROM等に格納されたパンの製造コース(製パンコース)に係るプログラムを読み出し、混練モータ駆動回路131を介して混練モータ50による混練ブレード101及び補完混練ブレード102の回転の制御、粉砕モータ駆動回路132を介して粉砕モータ60による粉砕ブレード92の回転の制御、ヒータ駆動回路133を介してシーズヒータ31による加熱動作の制御、第1のソレノイド駆動回路134を介して自動投入用ソレノイド16によるロック機構118の動作制御、第2のソレノイド駆動回路135を介してクラッチ用ソレノイド73によるクラッチ56の切替制御を行いながら、自動製パン器1にパンの製造工程を実行させる。
(自動製パン器の動作)
次に、以上のように構成される自動製パン器1でパンを製造する場合の動作について説明する。ここでは、自動製パン器1によって米粒を出発原料に用いてパンを製造する場合を例に、自動製パン器1の動作を説明する。
【0122】
米粒が出発原料に用いられる場合には、米粒用製パンコースが実行される。図19は自動製パン器によって実行される米粒用製パンコースの流れを示す模式図である。図19に示すように、米粒用製パンコースにおいては、浸漬工程と、粉砕工程と、休止工程と、練り(捏ね)工程と、発酵工程と、焼成工程と、がこの順番で順次に実行される。
【0123】
米粒用製パンコースを開始するにあたって、ユーザは、パン容器80のブレード回転軸82にユニット用シャフト91を被せることによって、ブレードユニット90をブレード回転軸82に取り付ける。上述のように、ブレードユニット90がガード106を備える構成であるために、この作業時にユーザの指が粉砕ブレード92に触れることがなく、ユーザは安全に作業を行える。このブレードユニット90の取り付け作業後に、ユーザは、米粒、水、調味料(例えば食塩、砂糖、ショートニング等)をそれぞれ所定量ずつ計量してパン容器80に入れる。
【0124】
また、ユーザは、パンの製造途中で自動投入される一部のパン原料を計量してパン原料収納容器110の容器本体111に入れる。ユーザは、収納すべきパン原料を容器本体111に収納したら、ロック機構118を用いて、容器蓋112によって容器本体111の開口部111aが閉じられた閉状態を維持するようにする。
【0125】
なお、パン原料収納容器110に収納されるパン原料としては、例えば、グルテン、ドライイースト等が挙げられる。グルテンの代わりに、例えば小麦粉、増粘剤(グアガム等)及び上新粉のうちの少なくとも1つをパン原料収納容器110に収納するようにしてもよい。また、グルテン、小麦粉、増粘剤、上新粉等は用いずに、例えばドライイーストのみがパン原料収納容器110に収納されるようにしてもよい。更に、場合によっては、例えば食塩、砂糖、ショートニングといった調味料についてもパンの製造工程の途中で自動投入すべく、例えばグルテン、ドライイーストと共に、これらの原料をパン原料収納容器110に収納するようにしてもよい。この場合には、パン容器80に予め投入しておくパン原料は米粒及び水(単なる水の代わりに、例えばだし汁のような味成分を有する液体、果汁やアルコールを含有する液体等でもよい)となる。
【0126】
この後、ユーザは、パン容器80を焼成室30に入れ、更に、パン原料収納容器110を蓋40の保持部45に嵌め込む。そして、ユーザは蓋40を閉じ、操作部20によって米粒用製パンコースを選択し、スタートキーを押す。これにより、制御装置130は、米粒を出発原料に用いてパンを製造する米粒用製パンコースの制御動作を開始する。
【0127】
米粒用製パンコースがスタートされると、制御装置130の指令によって浸漬工程が開始される。浸漬工程では、パン容器80に予め投入されたパン原料が静置状態とされ、この静置状態が予め定められた所定時間(本実施形態では30分)維持される。この浸漬工程は、米粒に水を含ませることによって、その後に行われる粉砕工程において、米粒を芯まで粉砕しやすくすることを狙う工程である。
【0128】
なお、米粒の吸水速度は水の温度によって変動し、水温が高いと吸水速度が高まり、水温が低いと吸水速度が低下する。このために、浸漬工程の時間は、例えば自動製パン器1が使用される環境温度等によって変動させるようにしてもよい。これにより、米粒の吸水度合いのばらつきを抑制することが可能になる。また、浸漬時間を短時間とするために、シーズヒータ31に通電して、焼成室30の温度が高められるようにしてもよい。
【0129】
また、浸漬工程の初期段階で粉砕ブレード92が回転されるようにしてもよく、更に、その後も、断続的に粉砕ブレード92が回転されるようにしてもよい。このようにすると、米粒の表面に傷をつけることができ、米粒の吸液効率が高められる。
【0130】
上記所定時間が経過すると、制御装置130の指令によって、浸漬工程が終了され、米粒を粉砕する粉砕工程が開始される。この粉砕工程では、米粒と水とが含まれる混合物の中で粉砕ブレード92が高速回転(例えば7000〜8000rpm)される。この粉砕工程では、制御装置130は、粉砕モータ60を制御してブレード回転軸82を逆方向回転(図8では時計方向回転、図9では反時計方向回転)させる。ブレード回転軸82の逆方向回転により、粉砕ブレード92の切削部921、922の刃部分(切削刃)が回転方向前方となるために、この逆方向回転により粉砕機能が得られる。
【0131】
なお、粉砕モータ60を用いて粉砕ブレード92を回転させる場合、制御装置130は、クラッチ用ソレノイド73を駆動させて、クラッチ56が動力遮断を行うようにする(図3(a)の状態とする)。上述したように、このように制御しないとモータ破損の可能性があるからである。また、粉砕ブレード92は、粉砕工程の初期段階では低速で回転され、その後、高速回転されるようにするのが好ましい。
【0132】
粉砕ブレード92を回転させるために、ブレード回転軸82が逆方向回転された場合、ドーム状カバー93もパン容器80内の米粒と水を含む混合物の流れによって逆方向回転しようとするが、次のような動作によってドーム状カバー93の逆方向回転は阻止(停止)される。
【0133】
ブレード回転軸82が逆方向回転された時点で混練ブレード101が折り畳み姿勢(図9(a)に示す姿勢)であった場合、カバー用クラッチ103の第1係合体103a(係合部103ab)が第2係合体103b(係合部103bb)と接触し、混練ブレード101は開き姿勢(図9(b)に示す姿勢)となる方向に回転される。また、混練ブレード101は、ドーム状カバー93の逆方向回転(図9において反時計方向回転)に伴ってパン容器80内の混合物から抵抗を受け、これによっても開き姿勢となる方向に回転される。
【0134】
混練ブレード101が開き姿勢になると、第2係合体103bが第1係合体103aの回転軌道(図8の破線参照)から逸脱する。このために、カバー用クラッチ103は、ブレード回転軸82とドーム状カバー93との連結を切り離す。また、開き姿勢になった混練ブレード101は、図9(b)に示すように、その一部(正確には、先端側に設けられる緩衝材107)がパン容器80の内側壁(詳細には粉砕効率を向上するためにパン容器80の内壁に設けられた畝状の凸部80b)に当接するために、ドーム状カバー93の回転は阻止(停止)される。
【0135】
なお、粉砕工程においては、粉砕ブレード92の回転中に振動が発生するが、緩衝材107がパン容器80と接触する構成を採用しているために、この振動によって生じる衝突音が緩和されるようになっている。
【0136】
粉砕工程における米粒の粉砕は、先に行われた浸漬工程によって米粒に水が浸み込んだ状態で実行されるために、米粒を芯まで容易に粉砕することができる。粉砕工程における粉砕ブレード92の回転は本実施形態では間欠回転とされる。この間欠回転は、例えば30秒回転して5分間停止するというサイクルで行われ、このサイクルが10回繰り返される。なお、最後のサイクルでは、5分間の停止は行わない。粉砕ブレード92の回転は連続回転としてもよいが、例えばパン容器80内の原料温度が高くなり過ぎることを防止する等の目的のために、間欠回転とするのが好ましい。
【0137】
粉砕工程においては、米粒の粉砕が回転停止したドーム状カバー93内で行われるから、米粒がパン容器80の外に飛び散る可能性が低い。また、回転停止状態にあるガード106の開口部106dからドーム状カバー93内に入る米粒は、静止したスポーク106cと回転する粉砕ブレード92との間でせん断されるので、効率良く粉砕が行える。また、ドーム状カバー93に設けられるリブ93cによって、米粒と水とが含まれる混合物の流動(粉砕ブレード92の回転と同方向の流動である)が適度に抑制されるので、効率良く粉砕が行える。
【0138】
また、粉砕された米粒と水とを含む混合物は、ドーム状カバー93のリブ93cによって窓93bの方向に誘導されて、窓93bからドーム状カバー93の外に排出される。ドーム状カバー93のリブ93cは、それに向かって押し寄せる混合物に対向する側が凸となるように湾曲しているので、混合物はリブ93cの表面に滞留しにくく、スムーズに窓93bの方へ流れていく。更に、ドーム状カバー93内部から混合物が排出されるのと入れ替わりに、凹部81の上の空間に存在していた混合物が凹部81に入り、凹部81からガード106の開口部106dを通ってドーム状カバー93内に入いる。このような循環をさせつつ粉砕ブレード92による粉砕が行われるので、効率良く粉砕が行える。
【0139】
なお、自動製パン器1においては所定の時間(本実施形態では50分)で粉砕工程が終了するようにしている。しかしながら、米粒の硬さのばらつきや環境条件によって粉砕粉の粒度にばらつきが生じることがある。このため、粉砕工程の終了が、粉砕モータ60の負荷の大きさ(例えば、モータの制御電流等で判断できる)を指標に判断される構成等としても構わない。
【0140】
粉砕工程が終了すると、制御装置130の指令によって休止工程が実行される。この休止工程は、粉砕工程によって上昇したパン容器80内の内容物の温度を下げる冷却期間として設けられている。温度を下げるのは、次に行われる練り工程が、イーストが活発に働く温度(例えば30℃前後)で実行されるようにするためである。本実施形態では、休止工程は所定時間(30分)とされているが、場合によっては、パン容器80の温度等が所定の温度となるまで、休止工程が行なわれる構成等としても構わない。
【0141】
休止工程が終了すると、制御装置130の指令によって練り工程が開始される。練り工程の開始にあたって、制御装置130はクラッチ用ソレノイド73を駆動して、クラッチ56が動力伝達を行うようにする(図3(b)の状態)。そして、制御装置130は混練モータ50を制御してブレード回転軸82を正方向回転(図8では反時計方向回転、図9では時計方向回転)させる。なお、粉砕工程と練り工程ではブレード回転軸82の回転方向は逆である。
【0142】
ブレード回転軸82を正方向回転させると、粉砕ブレード92も正方向に回転する。この場合、粉砕ブレード92は、切削部921、922の刃部分(切削刃)が回転方向後方となって回転し、粉砕機能を発揮しない。粉砕ブレード92の回転により、粉砕ブレード92の周囲のパン原料が正方向(図9では時計方向)に流動する。それにつられてドーム状カバー93が正方向に動くと、混練ブレード101は流動していないパン原料から抵抗を受けて、開き姿勢(図9(b)参照)から折り畳み姿勢(図9(a)参照)へと角度を変えて行く。これにより、第2係合体103bが第1係合体103aの回転軌道(図8の破線参照)に干渉する角度となる。そして、カバー用クラッチ103がブレード回転軸82とドーム状カバー93とを連結し、ドーム状カバー93はブレード回転軸82によって本格的に駆動される態勢に入る。ドーム状カバー93と折り畳み姿勢になった混練ブレード101とは、ブレード回転軸82とともに正方向回転する。
【0143】
なお、以上に説明したカバー用クラッチ103の連結を確実に行うために、練り工程初期におけるブレード回転軸82の回転は、間欠回転或いは低速回転とするのが好ましい。また、上述のように、混練ブレード101が折り畳み姿勢になると、混練ブレード101の延長上に補完混練ブレード102が並ぶために、混練ブレード101があたかも大型化したかのようになって、パン原料は力強く押される。このため、生地の練り上げをしっかり行える。
【0144】
混練ブレード101(この用語は、折り畳み姿勢においては、補完混練ブレード102を含む表現として用いる。以下同様。)の回転は、練り工程の初期においては非常にゆっくりとされ、段階的に速度が速められるように制御装置130によって制御される。混練ブレード101の回転が非常にゆっくりである練り工程の初期段階において、制御装置130は自動投入用ソレノイド16を駆動させて、パン原料収納容器110のロック機構118の腕部118cを回動させる。これにより、フック部118bが容器蓋112を押さえた状態が解除され、容器蓋112が重力によって回動する。すなわち、容器本体111の開口部111aが開かれて、例えば、グルテン、ドライイースといったパン原料がパン容器80内に自動投入される。
【0145】
なお、蓋40が閉じられた状態において、覗き窓41が前面側となり、パン原料収納容器110が背面側となるように構成されている。そして、パン原料収納容器110の容器蓋112は、背面側に向けて回動してその板状面が鉛直方向に近い状態(正確には鉛直方向に対してやや傾いた状態である。図14参照)となる。このため、パン原料収納容器110を用いた自動投入が行われた後においても、覗き窓41を利用した、パン容器80内の様子の観察が行い難くなるということはない。
【0146】
また、パン原料収納容器110から一部のパン原料が自動投入された場合に、パン原料の自動投入がきちんと行えたか否かに確認するために、ユーザが蓋40を開けることが考えられる。しかし、自動製パン器1では、蓋40に設けられるストッパー部47の働きにより、パン原料収納容器110の容器蓋112が開きすぎないように調整されている。このために、開けた蓋40を閉める場合に、パン原料収納容器110の容器蓋112がパン容器80の鍔部80aに引っ掛かって蓋40が閉め難いといった事態が発生しない。また、パン原料収納容器110の容器蓋112とパン容器80との接触が避けられるために、これらに傷が発生する可能性が抑制される。
【0147】
また、本実施形態では、パン原料収納容器110に収納されるパン原料を、混練ブレード101が回転している状態で投入することにしているが、これに限定されず、混練ブレード101が停止している状態で投入してもよい。ただし、本実施形態のように、混練ブレード101が回転している状態でパン原料を投入するようにした方が、パン原料を均一に分散することができるので好ましい。
【0148】
パン原料収納容器110に収納されたパン原料がパン容器80に投入された後は、混練ブレード101の回転によって、パン原料は所定の弾力を有する一つにつながった生地(dough)に練り上げられていく。混練ブレード101が生地を振り回してパン容器80の内壁にたたきつけることにより、混練に「捏ね」の要素が加わることになる。混練ブレード101の回転によりドーム状カバー93も回転する。ドーム状カバー93が回転すると、ドーム状カバー93に形成されるリブ93cも回転するために、ドーム状カバー93内のパン原料は速やかに窓93bから排出され、混練ブレード101が混練しているパン原料の塊(生地)に同化する。
【0149】
なお、練り工程においては、ドーム状カバー93と共にガード106も正方向に回転する。ガード106のスポーク106cは、正方向回転時、ガード106の中心側が先行しガード106の外周側が後続する形状とされている。このために、ガード106は、正方向に回転することにより、ドーム状カバー93内外のパン原料(パン生地)をスポーク106cで外側に押しやる。これにより、パンを焼き上げた後に廃棄分となる原料の割合を減らすことができる。
【0150】
また、ガード106の柱106eは、ガード106が正方向に回転するときに回転方向前面となる側面106ebが、上向きに傾斜する構成となっている。このために、混練時、ドーム状カバー93の周囲のパン原料(パン生地)が柱106eの側面106ebで上方に跳ね上げられる。跳ね上げられたパン原料は、上方のパン原料の塊(生地)に同化するために、パンを焼き上げた後に廃棄分となる原料の割合を減らすことができる。
【0151】
自動製パン器1においては、練り工程の時間は、所望の弾力を有するパン生地が得られる時間として実験的に求められた所定の時間(本実施形態では10分)を採用する構成としている。ただし、練り工程の時間を一定とすると、環境温度等によってパン生地の出来上がり具合が変動する場合がある。このため、例えば、混練モータ50の負荷の大きさ(例えば、モータの制御電流等で判断できる)を指標に、練り工程の終了時点が判断される構成等としても構わない。
【0152】
なお、具材(例えばレーズン、ナッツ、チーズ等)入りのパンを焼く場合には、この練り工程の途中で投入するようにすればよい。
【0153】
練り工程が終了すると、制御装置130の指令によって発酵工程が開始される。この発酵工程では、制御装置130はシーズヒータ31を制御して、焼成室30の温度を、発酵が進む温度(例えば38℃)に維持する。そして、発酵が進む環境下で所定の時間(本実施形態では60分)放置される。
【0154】
なお、場合によっては、この発酵工程の途中で、混練ブレード101を回転してガス抜きや生地を丸める処理を行うようにしても構わない。
【0155】
発酵工程が終了すると、制御装置130の指令によって焼成工程が開始される。制御装置130はシーズヒータ31を制御して、焼成室30の温度を、パン焼きを行うのに適した温度(例えば125℃)まで上昇させる。そして、制御装置130は、焼成環境下で所定の時間(本実施形態では50分)パンを焼くように制御する。焼成工程の終了については、例えば操作部20の液晶表示パネルにおける表示や報知音等によってユーザに知らされる。ユーザは、製パン完了を検知すると、蓋40を開けてパン容器80を取り出して、パンの製造を完了させる。
【0156】
なお、パン容器80内のパンは、例えば、パン容器80の開口を斜め下に向けることで取り出すことができる。そして、このパンの取り出しと同時に、ブレード回転軸82に取り付けられたブレードユニット90もパン容器80から取り出される。ガード106の存在により、このパンの取り出し作業時にユーザは粉砕ブレード92に触れることがなく、ユーザは安全にパンの取り出し作業を行える。パンの底には、ブレードユニット90の混練ブレード101及び補完混練ブレード102(パン容器80の凹部81から上側に突き出ている)の焼き跡が残る。しかし、ドーム状カバー93とガード106が凹部81の中に収容される構成であるために、それらがパンの底に大きな焼き跡を残すようなことは抑制される。
(その他)
以上に示した自動製パン器の実施形態は本発明の一例であり、本発明が適用される自動製パン器の構成は、以上に示した実施形態に限定されるものではない。
【0157】
例えば、以上に示した実施形態では、蓋40に設けられるストッパー部47が、パン原料収納容器110が蓋40に取り付けられる際にユーザの手指が入る空間SP2内に設けられる構成とした。しかし、本発明はこの構成に限定されるものではない。すなわち、パン原料収納容器110の容器蓋112の開き角度を規制するストッパー部は、蓋40の別の位置に設けられても構わない。この場合、勿論、ストッパー部の形状は、本実施形成の形状とは異なるものとしてよい。
【0158】
また、以上に示した実施形態では、パン原料収納容器110の容器蓋112の開き角度を規制するストッパー部47は、容器蓋112の把手部116と当接して容器蓋112の開き角度を規制するように設けられている。しかし、本発明はこの構成に限定されるものではない。すなわち、パン原料収納容器110の容器蓋112の開き角度を規制するストッパー部は、容器蓋112の把手部116以外の箇所に当接されるようにしても構わない。この場合、勿論、ストッパー部の形状は、本実施形成の形状とは異なるものとしてよい。
【0159】
また、以上においては、自動製パン器1によって、米粒を出発原料としてパンを製造する場合を示したが、自動製パン器1は例えば小麦粉や米粉等の穀物粉を出発原料としてパンを製造することも可能である(この場合、製パン工程は適宜変更される)。そして、小麦粉や米粉を出発原料に用いてパンを製造する場合には、パン原料収納容器110はレーズンやナッツ等の具材入りパンを製造する場合の具材を入れるために用いることも可能である。
【0160】
また、以上に示した実施形態においては、米粒が出発原料として用いられる場合を例に、自動製パン器の構成及び動作が説明された。しかし、本発明は、例えば小麦、大麦、粟、稗、蕎麦、とうもろこし、大豆等の米粒以外の穀物粒が出発原料として用いられる場合にも、適用可能である。
【0161】
また、以上に示した米粒用製パンコースの製造フローは例示であり、米粒用製パンコースは他の製造フローとしてもよい。一例を挙げると、粉砕工程後の休止工程は省いてもよい。
【0162】
また、以上に示した実施形態では、粉砕ブレード92及び混練ブレード101がブレードユニット90に含まれ、ブレード回転軸82に一体的に取り付けられる(取り外される)構成とした。しかし、この構成に限らず、粉砕ブレード92及び混練ブレード101は、別々にブレード回転軸82に取り付けられる構成であっても構わない。また、場合によっては、粉砕ブレードと混練ブレードとを別々とせず、粉砕機能と混練機能とを発揮する1つのブレードのみを備える構成等としても構わない。
【0163】
また、以上に示した実施形態では、粉砕ブレード92によって穀物粒が粉砕される場合と、混練ブレード101によってパン生地が練り上げられる場合とで、別々のモータが使用される構成とした。しかし、本発明の自動製パン器は、この構成に限定される趣旨ではない。すなわち、例えば1つのモータのみが備えられる構成とし、粉砕ブレード92によって穀物粒が粉砕される場合と、混練ブレード101によってパン生地が練り上げられる場合とで、同一のモータを使用する構成としても構わない。
【0164】
また、本発明は、穀物粒を出発原料としてパンを製造する自動製パン器に好適ではあるが、穀物粉(例えば小麦粉、米粉等)を出発原料としてパンを製造する自動製パン器(穀物粒を出発原料としてパンを製造することができないもの)にも勿論適用可能な技術である。穀物粉を出発原料としてパンを製造する自動製パン器は、例えばレーズン、ナッツ、チーズ等の具材(パン原料の一部)を自動投入するために自動投入用容器を備える場合がある。
【0165】
また、以上に示した実施形態における自動製パン器1では、発酵工程や焼成工程が行えるように構成されている。しかしながら、本発明の自動製パン器は、このような構成のものに限定される趣旨ではない。例えば、発酵機能及び焼成機能がない自動製パン器や、発酵機能を有して焼成機能がない自動製パン器等も、本発明の範囲に含まれる。このような構成の場合には、自動製パン器を用いた後に、オーブン等の焼成装置を用いてパンを焼き上げることになる。
【産業上の利用可能性】
【0166】
本発明は、家庭用の自動製パン器に好適である。
【符号の説明】
【0167】
1 自動製パン器
10 本体
40 蓋(蓋体)
47 ストッパー部
80 パン容器
110 パン原料収納容器
111 容器本体
111a 開口部
112 容器蓋
116 把手部
SP2 ユーザの手指が入る空間
W1 壁部
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として一般家庭で使用される自動製パン器に関する。
【背景技術】
【0002】
市販の家庭用自動製パン器は、パン原料を入れるパン容器をそのまま焼き型としてパンを製造する仕組みのものが一般的である(例えば、特許文献1参照)。このような自動製パン器では、まず、パン原料が入れられたパン容器が本体内の焼成室に入れられる。そして、パン容器内のパン原料がパン容器内に設けられる混練ブレードでパン生地に練り上げられる(練り工程)。その後、練り上げられたパン生地を発酵させる発酵工程が行われ、パン容器が焼き型として使用されてパンが焼き上げられる(焼成工程)。
【0003】
このような自動製パン器を用いてパンの製造が行われる場合、これまでは、パン原料として、小麦や米などの穀物を製粉した粉(小麦粉、米粉等)や、そのような製粉した粉に各種の補助原料が混ぜられたミックス粉が必要とされた。しかしながら、一般家庭においては、米粒に代表されるように、粉の形態ではなく粒の形態で穀物が所持されることがある。このために、自動製パン器が穀物粒から直接パンを製造できるように構成されていれば、非常に便利である。このようなことを念頭において、本出願人らは、穀物粒を出発原料としてパンを製造するパンの製造方法を開発している(特許文献2参照)。
【0004】
このパンの製造方法では、まず、穀物粒と液体とが混合され、この混合物の中で粉砕ブレードが回転されて穀物粒が粉砕される(粉砕工程)。そして、粉砕工程を経て得られたペースト状の粉砕粉を含むパン原料が、混練ブレードを用いてパン生地に練り上げられる(練り工程)。その後、練り上げられたパン生地を発酵させる発酵工程が行われ、続いてパンを焼き上げる焼成工程が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−116526号公報
【特許文献2】特開2010−35476号公報
【特許文献3】特許第3191645号公報
【特許文献4】特開2006−255071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願人らは、上述した、穀物粒を出発原料としてパンを製造する方法を実行可能な、新しい仕組みを備えた自動製パン器の開発を行ってきた。その中で、本出願人らは、パン容器内で液体と混合された穀物粒を粉砕した後に、例えばドライイーストやグルテン等の粉体パン原料をパン容器内に自動投入できる自動製パン器を開発している。
【0007】
粉体パン原料が自動投入される構成を採用するにあたって、レーズンやナッツ等を自動投入するための具材容器を備えた従来の自動製パン器(例えば特許文献3や4参照)と同様に、自動製パン器の蓋体に、粉体パン原料を収納するパン原料収納容器が取り付けられる構成とすることが考えられた。しかしながら、この構成を採用するにあたっては、次のような問題があった。
【0008】
穀物粒を粉砕した後に投入される粉体パン原料(上述のドライイーストやグルテンの他に、例えば小麦粉や上新粉等も挙げられる)は嵩高くなる傾向があり、それを収容するためのパン原料収納容器は、その容積を大きくする必要がある。この場合に、パン原料収納容器の幅や奥行き(高さではない方向のサイズ)を大きくすることが考えられる。しかし、自動製パン器の蓋体には、本体(例えば焼成室)に収容されたパン容器内の状態を外から観察できるように覗き窓を設けるのが一般的であり、パン原料収納容器の幅や奥行きを大きくすると、覗き窓からパン容器内の状態を観察し難くなるといった問題が生じる。
【0009】
一方で、パン原料収納容器の容積を稼ぐために、その高さ方向のサイズを大きくしようとすると、蓋体の厚みを厚くする必要がある。しかしながら、単純に蓋体の厚みを厚くすると、蓋体を開けた状態において本体背面側に必要とされる空間が大きくなってしまい、ユーザが使い勝手が悪いと感じる可能性があった。
【0010】
このような点を考慮して、本出願人らは、自動製パン器の蓋体の構造として、蓋体が閉じられた状態で、本体の前面側から背面側に向かう方向に高さが高くなる傾斜構造を採用している。そして、蓋体が閉じられた状態で、前面寄りに覗き窓が設けられ、背面寄りにパン原料収納容器が収納されるように、本出願人らは蓋体を形成している。
【0011】
このように構成すると、本体背面寄りでは蓋体の厚みが厚くなっているために、本体背面寄りに取り付けられるパン原料収納容器の高さを高くして、その容積を大きくすることができる。また、本体前面寄りに設けられる覗き窓は、蓋体が傾斜構造となっているために傾斜した状態となり、本体前面側から覗き窓を覗いた場合に、ユーザはパン容器の中心位置を見やすくなる。すなわち、ユーザはパンの製造中にパン容器内の観察を行い易い。また、蓋体が傾斜構造となっているために、蓋体が開かれた状態において、本体背面側に必要とされる空間の狭小化が図れる。
【0012】
しかしながら、蓋体の背面寄りにパン原料収納容器を配置する上記構成が採用された場合に、次のような問題が発生することがわかった。パン原料収納容器の容器蓋が開かれて、パン容器に一部のパン原料が自動投入された後において、例えばパン原料収納容器のパン原料がきちんと投入されたか否かを確認する等の目的で、ユーザが自動製パン器の蓋体を開けることがある。このような場合に、ユーザが開いた蓋体を閉じようとした際に、パン原料収納容器の開いた容器蓋が、本体内に収容されるパン容器の一部に引っ掛かって、自動製パン器の蓋体を上手く閉められないことがあった。また、これにより、パン原料収納容器やパン容器に傷が付くといった問題があった。
【0013】
そこで、本発明の目的は、蓋体にパン原料を収納しておくパン原料収納容器が取り付けられる自動製パン器の使い勝手を良くすることである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために本発明の自動製パン器は、パン原料が投入されるパン容器を本体内に受け入れて、パンの製造工程が実行される自動製パン器であって、前記本体に開閉可能に取り付けられる蓋体と、前記蓋体に取り付けられ、パンの製造途中で前記パン容器内に自動投入される一部のパン原料を収納しておくパン原料収納容器と、を備え、前記パン原料収納容器は、開口部を有する容器本体と、前記開口部を開閉する容器蓋と、を有し、前記蓋体には、前記容器蓋の開き角度を規制するストッパー部が設けられている。
【0015】
本構成によれば、蓋体にパン原料収納容器の容器蓋の開き角度を規制するストッパー部が設けられている。このために、パン原料収納容器の容器蓋を開いた状態で自動製パン器の蓋体を開け、その後に蓋体を閉める場合に、パン原料収納容器の容器蓋が本体内に収容されるパン容器の一部に接触しないようにできる。
【0016】
上記構成の自動製パン器において、前記容器蓋には、その周縁から外方に突出する把手部が設けられ、前記ストッパー部は、前記把手部に当接して前記容器蓋の開き角度を規制することとしてもよい。本構成によれば、パン原料収納容器の容器蓋に外方に向けて突出する把手部が設けられているために、パン原料収納容器へのパン原料の収納作業が容易になる。そして、ストッパー部は、この把手部を利用して容器蓋の開き角度を規制するようになっているために、その形状の簡素化を図り易い。
【0017】
上記構成の自動製パン器において、前記蓋体には、前記パン原料収納容器が着脱される際にユーザの手指が入る空間が形成されており、前記ストッパー部は、前記空間内に形成されていることとしてもよい。本構成によれば、別の理由で設けられた空間を利用してストッパー部を設ける構成であり、ストッパー部を設けたために自動製パン器の蓋体が大型化するといった事態が避けられる。
【0018】
上記構成の自動製パン器において、前記ストッパー部は、前記空間を形成する壁部から突出する略板状の突出部であることとしてもよい。このように構成すれば、ストッパー部が、パン原料収納容器が蓋体に取り付けられる際に邪魔となる事態を避けることができる。そして、この構成においては、前記略板状の突出部は、その一部の厚みが厚く形成されていることとしてもよい。これにより、ストッパー部は、小型なものであるとともに、強度の強いものとできる。
【0019】
上記構成の自動製パン器において、前記パン原料収納容器は、前記蓋体に取り付けられない状態で、前記容器蓋の閉位置からの最大開き角度が90°より大きい第1の角度となるように設けられ、前記ストッパー部は、前記容器蓋の閉位置からの開き角度が前記第1の角度よりも小さい第2の角度となるように前記容器蓋の開き角度を規制する、こととしてもよい。
【0020】
本構成によれば、パン原料収納容器にパン原料を収納する作業が行い易い。そして、この作業性の良さと、自動製パン器の蓋体の開閉時における不具合(上述した、パン原料収納容器の容器蓋を開いた状態で自動製パン器の蓋体を開け閉めする際の不具合)の解消との両立が本構成では図れる。
【0021】
上記構成の自動製パン器において、前記パン原料収納容器は、前記蓋体が閉じられた状態で、前記本体の背面寄りに取り付けられることとしてもよい。また、この構成において、前記蓋体は、それが閉じられた状態で、前記本体の前面側から背面側に向かう方向に高さが高くなる傾斜構造を有することとしてもよい。このような構成の自動製パン器に、本発明は好適である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によると、蓋体にパン原料を収納しておくパン原料収納容器が取り付けられる自動製パン器の使い勝手が良くなる。また、本発明は、穀物粒を出発原料としてパンを製造することができる自動製パン器に好適である。このため、本発明によれば、家庭でのパン製造をより身近なものとして、家庭でのパン作りが盛んになることが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態の自動製パン器の外観構成を示す概略斜視図
【図2】本実施形態の自動製パン器の本体内部の構成を説明するための模式図
【図3】本実施形態の自動製パン器が備える第1の動力伝達部に含まれるクラッチについて説明するための図
【図4】本実施形態の自動製パン器における、パン容器が収容された焼成室及びその周辺の構成を模式的に示す図
【図5】本実施形態の自動製パン器が備えるブレードユニットの構成を示す概略斜視図
【図6】本実施形態の自動製パン器が備えるブレードユニットの構成を示す概略分解斜視図
【図7】本実施形態の自動製パン器が備えるブレードユニットの構成を示す概略側面図及び概略断面図
【図8】本実施形態の自動製パン器が備えるブレードユニットを下から見た場合の概略平面図(ガードが取り外された場合の図)
【図9】本実施形態の自動製パン器が備えるブレードユニットの動作を説明するための図で、パン容器を上から見た場合の図
【図10】本実施形態の自動製パン器が備えるパン原料収納容器の構成を示す概略斜視図
【図11】図10(a)のB−B位置における概略断面図
【図12】本実施形態の自動製パン器が備えるパン原料収納容器にパン原料が投入される場合の、パン原料収納容器の姿勢を示す概略断面図
【図13】本実施形態の自動製パン器のパン原料収納容器が取り付けられる蓋の構成を示す概略図
【図14】図13(b)のC−C位置における概略断面図
【図15】図13(b)のD−D位置における概略断面図
【図16】図13(b)の破線の楕円で囲まれた部分の、パン原料収納容器を取り除いた場合の概略平面図
【図17】本実施形態の自動製パン器の蓋に設けられるストッパー部の概略側面図
【図18】本実施形態の自動製パン器の構成を示すブロック図
【図19】本実施形態の自動製パン器によって実行される米粒用製パンコースの流れを示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の自動製パン器の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本明細書に登場する具体的な時間、温度、角度等はあくまでも例示であり、それらは本発明の内容を限定するものではない。
(自動製パン器の構成)
図1は、本実施形態の自動製パン器の外観構成を示す概略斜視図で、図1(a)は蓋が閉じられた状態、図1(b)は蓋が開かれた状態を示している。図1に示すように、自動製パン器1の本体10(その外殻は例えば金属や合成樹脂等によって形成される)の上面の一部には、操作部20が設けられている。この操作部20は、操作キー群と、時間、操作キー群によって設定された内容、エラー等を表示する表示部と、によって構成されている。操作キー群には、例えば、スタートキー、取り消しキー、タイマーキー、予約キー、パンの製造コース(米粒を出発原料に用いてパンを製造するコース、米粉を出発原料に用いてパンを製造するコース、小麦粉を出発原料に用いてパンを製造するコース等)を選択する選択キー等が含まれる。表示部は、例えば、液晶表示パネル等によって構成される。
【0025】
本体10内部には、詳細は後述するパン容器80が収容される焼成室30が設けられている。この焼成室30は、例えば板金からなる底壁30a及び4つの側壁30b(後述の図4も参照)で構成された平面視略矩形の箱形状の部屋であり、その上面に開口を有する。この焼成室30は、本体10上部に設けられる蓋40(本発明の蓋体の一例)によって開閉可能となっている。蓋40は、図示しない蝶番軸で本体10の背面側に取り付けられており、その蝶番軸を支点として回動することで、焼成室30の開閉が可能になっている。
【0026】
この蓋40には、焼成室30内を覗けるように、例えば耐熱ガラスからなる覗き窓41が設けられている。また、蓋40には、その下面側からパン原料収納容器110が着脱自在に取り付けられるようになっている。このパン原料収納容器110は、パンの製造工程の途中で一部のパン原料を自動投入することを可能にするものである。なお、図1(b)は、蓋40にパン原料収納容器110が取り付けられた状態を示しており、更に詳細には、パン原料収納容器110の容器蓋が開いた状態を示している。パン原料収納容器110の詳細な構造については後述する。
【0027】
また、蓋40は、それが閉じられた状態において、その上面の略全体が本体10の前面側から背面側に向けて高くなる傾斜構造を有している(図1(a)参照)。このために、蓋40が閉じられた状態において、本体10前面寄りに配置される覗き窓10から焼成室30に収容されるパン容器80内の様子が観察し易くなっている。また、蓋40が閉じられた状態において、本体10の背面寄りに取り付けられるパン原料収納容器110は、蓋40の厚みが厚い部分に配置されることになるため、その高さを高くして大きな容積を稼げるようになっている。
【0028】
図2は、本実施形態の自動製パン器の本体内部の構成を説明するための模式図である。図2は、自動製パン器1を上側から見た場合が想定されており、図の下側が自動製パン器1の前面(正面)側、図の上側が背面側である。図2に示すように、自動製パン器1には、焼成室30の右横に練り工程で用いられる低速・高トルクタイプの混練モータ50が固定配置され、焼成室30の後ろ側に粉砕工程で用いられる高速回転タイプの粉砕モータ60が固定配置されている。混練モータ50及び粉砕モータ60はいずれも竪軸である。
【0029】
混練モータ50の上面から突出する出力軸51には第1のプーリ52が固定される。この第1のプーリ52は、第1のベルト53によって、その径が第1のプーリ52よりも大きく形成されるとともに第1の回転軸54の上部側に固定される第2のプーリ55に連結されている。第1の回転軸54の下部側には、その回転中心が第1の回転軸54とほぼ同一となるように第2の回転軸57が設けられている(後述の図3も参照)。なお、第1の回転軸54及び第2の回転軸57は、本体10内部に回転可能に支持されている。また、第1の回転軸54と第2の回転軸57との間には、動力伝達と動力遮断を行うクラッチ56が設けられている(後述の図3も参照)。このクラッチ56の構成については後述する。
【0030】
第2の回転軸57の下部側には第3のプーリ58が固定されている(後述の図3も参照)。第3のプーリ58は、第2のベルト59によって、焼成室30の下部側に設けられるとともに原動軸11に固定される第1の原動軸用プーリ12(第3のプーリ58とほぼ同一の径を有する)に連結されている(後述の図3も参照)。混練モータ50自身が低速・高トルクタイプであり、その上、第1のプーリ52の回転が第2のプーリ55によって減速回転される(例えば1/5の速度に減速される)。このため、クラッチ56が動力伝達を行う状態で混練モータ50を駆動すると、原動軸11は低速(例えば180rpm程度)・高トルクで回転する。
【0031】
なお、第1のプーリ52、第1のベルト53、第1の回転軸54、第2のプーリ55、クラッチ56、第2の回転軸57、第3のプーリ58、第2のベルト59、及び第1の原動軸用プーリ12で構成される動力伝達部のことを、以下では、第1の動力伝達部PT1と表現することがある。
【0032】
粉砕モータ60の下面から突出する出力軸61には、第4のプーリ62が固定されている。この第4のプーリ62は、第3のベルト63によって、原動軸11に固定される第2の原動軸用プーリ13(第1の原動軸用プーリ12より下側で固定される;後述の図3参照)に連結されている。第2の原動軸用プーリ13は第4のプーリ62とほぼ同一の径を有する。粉砕モータ60には高速回転可能なものが選定される。そして、第4のプーリ62の回転は第2の原動軸用プーリ13においてほぼ同一速度で維持されるために、粉砕モータ60の高速回転により、原動軸11は高速回転(例えば7000〜8000rpm)を行う。
【0033】
なお、第4のプーリ62、第3のベルト63、及び第2の原動軸用プーリ13で構成される動力伝達部のことを、以下では、第2の動力伝達部PT2と表現することがある。第2の動力伝達部PT2は、クラッチを有さない構成であり、粉砕モータ60の出力軸61と原動軸11とを常時動力伝達可能に連結する。
【0034】
図3は、本実施形態の自動製パン器が備える第1の動力伝達部に含まれるクラッチについて説明するための図である。図3は、図2の矢印X方向に沿って見た場合を想定した図である。なお、図3(a)はクラッチ56が動力遮断を行う状態を示し、図3(b)はクラッチ56が動力伝達を行う状態を示す。
【0035】
図3に示すように、クラッチ56は、第1のクラッチ部材561と第2のクラッチ部材562とを有する。そして、第1のクラッチ部材561に設けられる爪561aと、第2のクラッチ部材562に設けられる爪562aとが噛み合う場合(図3(b)の状態)に、クラッチ56は動力伝達を行う。また、2つの爪561a、562bが噛み合わない場合(図3(a)の状態)に、クラッチ56は動力遮断を行う。すなわち、クラッチ56は噛み合いクラッチとなっている。
【0036】
なお、本実施形態では、2つのクラッチ部材561、562のそれぞれには、周方向(第1のクラッチ部材561を下から平面視した場合、或いは、第2のクラッチ部材562を上から平面視した場合を想定)にほぼ等間隔に並ぶ6つの爪561a、562aが設けられているが、この爪の数は適宜変更してもよい。また、爪561a、562aの形状は、好ましい形状を適宜選択すればよい。
【0037】
第1のクラッチ部材561は、抜け止め対策を施された上で、第1の回転軸54に、その軸方向(図3において上下方向)に摺動可能、且つ、相対回転不能に取り付けられている。第1の回転軸54の第1のクラッチ部材561の上部側には、バネ71が遊嵌されている。このバネ71は、第1の回転軸54に設けられるフランジ部54aと第1のクラッチ部材561とに挟まれるように配置されており、第1のクラッチ部材561を下側に向けて付勢している。一方、第2のクラッチ部材562は、第2の回転軸57の上端に固定されている。
【0038】
クラッチ56における、動力伝達状態と動力遮断状態との切り替えは、下位置と上位置とに選択配置可能なアーム部72を用いて行われる。アーム部72は、その一部が第1のクラッチ部材561の下側に配置され、第1のクラッチ部材561の外周側と当接可能となっている。
【0039】
アーム部72の駆動は、クラッチ用ソレノイド73を用いて行われる。クラッチ用ソレノイド73は、永久磁石73aを備え、いわゆる自己保持型のソレノイドとなっている。クラッチ用ソレノイド73のプランジャー73bは、アーム部72のプランジャー固定用の取付部72aに固定される。このために、電圧の印加によりハウジング73cからの突出量が変動するプランジャー73bの動きに合わせてアーム部72が動く。
【0040】
アーム部72が下位置(図3(b)の状態)から上位置(図3(a)の状態)に移動すると、第1のクラッチ部材561は、アーム部72に押されてバネ71の付勢力に抗して上方向に移動する。アーム部72が上位置にある場合には、第1のクラッチ部材561と第2のクラッチ部材562とは噛み合わない。すなわち、アーム部72が上位置にある場合には、クラッチ56は動力遮断を行う。
【0041】
一方、アーム部72が上位置から下位置に移動すると、第1のクラッチ部材561はバネ71の付勢力によって押される形で下方向に移動する。アーム部72が下位置にある場合には、第1のクラッチ部材561と第2のクラッチ部材562とは噛み合う。すなわち、アーム部72が下位置にある場合には、クラッチ56は動力伝達を行う。
【0042】
粉砕モータ60を駆動する際に、クラッチ56が動力伝達を行う状態(図3(b)の状態)であると、原動軸11を高速回転させる回転動力が混練モータ50の出力軸51に伝達される(図2参照)。この場合、第1のプーリ52と第2のプーリ55との半径比(例えば1:5)によって、混練モータ50の出力軸51を高速(例えば40000rpm等)で回転させる力が必要になる。その結果、粉砕モータ60に非常に大きな負荷が加わり、粉砕モータ60が破損する可能性がある。このような事態を避けるために、自動製パン器1は、動力伝達と動力遮断を行うクラッチ56を第1の動力伝達部PT1に含む構成となっている。
【0043】
なお、上述のように自動製パン器1においては、第2の動力伝達部PT2にはクラッチが設けられない構成としているが、これは次の理由による。すなわち、混練モータ50を駆動しても原動軸11は低速回転(例えば180rpm等)されるのみである。このため、原動軸11を回転させる回転動力が粉砕モータ60の出力軸に伝達されるようになっていても、混練モータ50に大きな負荷が加わることはない。そして、このように第2の動力伝達部PT2にクラッチが設けられない構成を敢えて採用することで、自動製パン器1の製造コストが抑制される。ただし、第2の動力伝達部PT2にクラッチが設けられる構成を採用しても、勿論構わない。
【0044】
図4は、本実施形態の自動製パン器における、パン容器が収容された焼成室及びその周辺の構成を模式的に示す図である。図4は、自動製パン器1を前面(正面)側から見た場合の構成を想定しており、焼成室30及びパン容器80の構成は概ね断面図で示されている。なお、パン原料が投入されるとともにパン焼き型として使用されるパン容器80は、焼成室30に対して出し入れ自在となっている。
【0045】
図4に示すように、焼成室30の内部には、シーズヒータ31(加熱手段の一例)が焼成室30に収容されたパン容器80を包囲するように配置されている。このシーズヒータ31を用いることにより、パン容器80内のパン原料やパン生地の加熱が可能になる。
【0046】
図4を参照して、焼成室30の底壁30aの略中心にあたる箇所には、パン容器80を支持するパン容器支持部14(例えばアルミニウム合金のダイキャスト成型品からなる)が固定されている。このパン容器支持部14は、焼成室30の底壁30aから窪むように形成され、その窪みの形状は上から見た場合に略円形となっている。このパン容器支持部14の中心には、上述の原動軸11が底壁30aに対して略垂直となるように支持されている。原動軸11の上端には、本体側接続部11aが固定されている。
【0047】
パン容器80は例えばアルミニウム合金のダイキャスト成型品(その他、板金等で構成しても構わない)であり、バケツのような形状をしており、開口部側縁に設けられる鍔部80aに手提げ用のハンドル(図示せず)が取り付けられている。パン容器80の水平断面は四隅を丸めた矩形である。また、パン容器80の底部には、詳細は後述するブレードユニット90の一部を収容する平面視略円形状の凹部81が形成されている。
【0048】
パン容器80の底部中心には、垂直方向に延びるブレード回転軸82が、シール対策を施された状態で回転可能に支持されている。このブレード回転軸82の下端(パン容器80の底部から外部側に突き出ている)には、容器側接続部82aが固定されている。
【0049】
また、パン容器80の底部外面側には、ブレード回転軸82を取り囲むように筒状の台座83が設けられている。パン容器80は、この台座83がパン容器支持部14に受け入れられた状態で、焼成室30内に収容されるようになっている。なお、台座83は、パン容器80とは別に形成してもよいし、パン容器80と一体的に形成してもよい。
【0050】
パン容器80の台座83がパン容器支持部14に受け入れられた状態で、パン容器80が焼成室30内に収容されると、ブレード回転軸82の下端に設けられる容器側接続部82aと、原動軸11の上端に固定される本体側接続部11aとの連結が得られるようになる。そして、これにより、ブレード回転軸82は原動軸11から回転動力を伝えられるようになる。すなわち、本体側接続部11aと容器側接続部82aとはカップリングを構成する。
【0051】
ブレード回転軸82のパン容器80内部に突出する部分には、その上からブレードユニット90が着脱可能に取り付けられるようになっている。このブレードユニット90の構成について、図5から図9を参照しながら説明する。
【0052】
なお、図5は、本実施形態の自動製パン器が備えるブレードユニットの構成を示す概略斜視図である。図6は、本実施形態の自動製パン器が備えるブレードユニットの構成を示す概略分解斜視図である。図7は、本実施形態の自動製パン器が備えるブレードユニットの構成を示す図で、図7(a)は概略側面図、図7(b)は図7(a)のA−A位置における断面図である。図8は、本実施形態の自動製パン器が備えるブレードユニットを下から見た場合の概略平面図で、図8(a)は混練ブレードが折り畳み姿勢にある場合の図、図8(b)は混練ブレードが開き姿勢にある場合の図である。図8においては、後述のガードが取り外された状態を示している。図9は、本実施形態の自動製パン器が備えるブレードユニットの動作を説明するための図で、パン容器を上から見た場合の図である。図9(a)は混練ブレードが折り畳み姿勢にある場合の図、図9(b)は混練ブレードが開き姿勢にある場合の図である。
【0053】
ブレードユニット90は、大きくは、ユニット用シャフト91と、ユニット用シャフト91に相対回転不能に取り付けられる粉砕ブレード92と、ユニット用シャフト91に相対回転可能且つ粉砕ブレード92を上から覆うように取り付けられる平面視略円形のドーム状カバー93と、ドーム状カバー93に相対回転可能に取り付けられる混練ブレード101と、ドーム状カバー93に取り付けられ、粉砕ブレード92を下から覆うガード106と、を備える構成となっている(例えば、図5〜図7参照)。
【0054】
なお、ブレードユニット90がブレード回転軸82に取り付けられた状態において、粉砕ブレード92は、パン容器80の凹部81底面より少し上の箇所に位置する。また、粉砕ブレード92及びドーム状カバー93のほぼ全体は凹部81に収容される(例えば図4参照)。
【0055】
ユニット用シャフト91は、例えばステンレス鋼板等の金属によって形成される略円柱状の部材であり、一方端(下端)に開口が設けられ、その内部は中空となっている。すなわち、ユニット用シャフト91は、下端からブレード回転軸82を挿入できるように、挿入孔91bが形成された構成となっている(例えば図7(b)参照)。
【0056】
また、ユニット用シャフト91の側壁の下部側(開口側)には、ユニット用シャフト91の回転中心を挟んで対称配置される一対の切り欠き部91aが形成されている(例えば図6参照。ただし、図6では一対の切り欠き部91aの一方のみが示される)。この切り欠き部91aは、ブレード回転軸82を水平に貫くピン821(図7(b)参照)に係合させるために設けられている。ブレード回転軸82のピン821と、切り欠き部91aとが係合することによって、ユニット用シャフト91はブレード回転軸82に相対回転不能に取り付けられた状態になる。
【0057】
穀物粒粉砕用の粉砕ブレード92は、例えばステンレス鋼板を加工することによって形成される。この粉砕ブレード92は、例えば図6に示すように、第1の切削部921と、第2の切削部922と、第1の切削部921と第2の切削部922とを連結する連結部923と、を備える。連結部923の中央部には、平面視略矩形状(スタジアム形状)の開口923aが形成されている。この開口923aにユニット用シャフト91の下部側が嵌め込まれる形で、粉砕ブレード92はユニット用シャフト91に取り付けられる。
【0058】
なお、ユニット用シャフト91の下部側には、側面の一部(切り欠き部91aが設けられる位置近傍)を削って平坦面が形成されている。これにより、ユニット用シャフト91を下から平面視した場合に、ユニット用シャフト91の下部側は、連結部923に設けられる開口923aとほぼ同形状(略矩形状)となっている。ユニット用シャフト91の下部側を平面視した場合の面積は、開口923aより、ほんの僅かだけ小さくなっている。このような形状を採用しているために、粉砕ブレード92はユニット用シャフト91に相対回転不能に取り付けられる。粉砕ブレード92の下部側には抜け止め用のストッパー部材94がユニット用シャフト91に嵌め込まれるために、粉砕ブレード92がユニット用シャフト91から脱落することはない。
【0059】
粉砕ブレード92を囲んで覆い隠すように配置されるドーム状カバー93は、例えばアルミニウム合金のダイキャスト成型品からなり、その内面側には、ベアリング95(本実施形態では転がり軸受けを使用している)を収容する凹状の収容部931(図7(b)参照)が形成されている。換言すると、この収容部931を形成するために、ドーム状カバー93は、それを外面から見た場合に、中央部に略円柱状の凸部93aが形成された構成となっている。なお、凸部93aには開口が形成されておらず、収容部931に収容されるベアリング95はその側面及び上面が収容部931の壁面に囲い込まれた状態となっている。
【0060】
ベアリング95は上下に抜け止めリング96a、96bが配置された状態で、その内輪95aがユニット用シャフト91に相対回転不能に取り付けられている(内輪95a内側の貫通孔にユニット用シャフト91が圧入されている)。また、ベアリング95は、その外輪95bの外壁が収容部931の側壁に固定されるように、収容部931に圧入されている。このベアリング95(内輪95aが外輪95bに対して相対回転する)の介在によって、ドーム状カバー93はユニット用シャフト91に相対回転可能に取り付けられている。
【0061】
また、ドーム状カバー93の収容部931には、外部からベアリング95内に異物(例えば穀物粒の粉砕時に用いられる液体や粉砕により得られたペースト状物等)が入り込まないように、例えばシリコン系或いはフッ素系の材料によって形成されるシール材97及び、このシール材97を保持する金属製のシールカバー98が、ベアリング95の下部側から圧入されている。シールカバー98は、ドーム状カバー93への固定が確実となるように、リベット99によってドーム状カバー93に固着されている。このリベット99による固定は行わなくてもよいが、確実な固定を得るために、本実施形態のように構成するのが好ましい。
【0062】
ドーム状カバー93の外面には、凸部93aに隣接する箇所に垂直方向に延びるように配置される支軸100(図6参照)を用いて、平面形状「く」の字形の混練ブレード101(例えばアルミニウム合金のダイキャスト成型品からなる)が取り付けられている。混練ブレード101は、支軸100に相対回転不能に取り付けられており、ドーム状カバー93に相対回転可能に取り付けられる支軸100と動きを共にする。換言すると、混練ブレード101は、ドーム状カバー93に対して相対回転可能に取り付けられた構成となっている。
【0063】
混練ブレード101は、支軸100と共に支軸100の軸線周りに、一定の範囲内だけ回転可能となっている。図5、図7、図8(a)及び図9(a)に示す折り畳み姿勢は、混練ブレード101が回転可能な範囲の一端にある場合に該当する。また、図8(b)及び図9(b)に示す開き姿勢は、混練ブレード101が回転可能な範囲の他端にある場合に該当する。
【0064】
混練ブレード101の先端側近傍の一方面には、図5〜図9に示すように緩衝材107が取り付けられている。緩衝材107は、混練ブレード101の先端から僅かに突出するように設けられている(例えば図8(b)参照)。緩衝材107の固定は、混練ブレード101の一方面と固定用板108とで緩衝材107を挟持した状態とし、混練ブレード101の他方面側から挿入されるリベット109のカシメで得られる構成となっている。
【0065】
この緩衝材107は、混練ブレード101が開き姿勢となった場合に、パン容器80(の内壁)と直接接触しないように配置されている。混練ブレード101とパン容器80とが直接接触すると、それらの間の干渉が原因となって破損が発生する可能性があり、このような破損を防止すべく緩衝材107は設けられている。また、緩衝材107は防音対策としても機能する。なお、以下では、この緩衝材107も混練ブレード101の一部と見なして説明が行われる場合がある。
【0066】
また、本実施形態では、ドーム状カバー93の外面に、混練ブレード101に並ぶように補完混練ブレード102(例えばドーム状カバー93と一体的に設けられる)が固定配置されている。混練ブレード101が折り畳み姿勢となっている場合には、例えば図5や図7に示すように補完混練ブレード102は混練ブレード101に整列し、あたかも「く」の字形状の混練ブレード101のサイズが大型化したようになる。この補完混練ブレード102は、必ずしも設ける必要がないが、パン生地を練り上げる練り工程における混練効率を高めるために設けるのが好ましい。
【0067】
ユニット用シャフト91には、例えば図6に示すように、粉砕ブレード92とシールカバー98との間にカバー用クラッチ103を構成する第1係合体103aが取り付けられている。例えば亜鉛ダイカストからなる第1係合体103aには略矩形状(スタジアム形状)の開口103aaが形成されており、この開口103aaにユニット用シャフト91の下部側の平面視略矩形状部分が嵌め込まれることにより、第1係合体103aはユニット用シャフト91に相対回転不能に取り付けられている。この第1係合体103aは粉砕ブレード92よりも先に、ユニット用シャフト91の下側から取り付けられ、ストッパー部材94によって、粉砕ブレード92と共にユニット用シャフト91からの脱落が防止されている。なお、本実施形態では、第1係合体103aとシールカバー98との間には、第1係合体103aの劣化防止等を考慮してワッシャ104を配置する構成としているが、このワッシャ104は必ずしも設けなくてもよい。
【0068】
また、混練ブレード101が取り付けられる支軸100の下部側には、カバー用クラッチ103を構成する第2係合体103bが取り付けられている。例えば亜鉛ダイカストからなる第2係合体103bには略矩形状(スタジアム形状)の開口103baが形成されており、この開口103baに支軸100の下部側の平面視略矩形状部分が嵌め込まれることにより、第2係合体103bは支軸100に相対回転不能に取り付けられている。なお、本実施形態では、第2係合体103bの上側に、第2係合体103bの劣化防止等を考慮してワッシャ105を配置する構成としているが、このワッシャ105は必ずしも設けなくてもよい。
【0069】
第1係合体103aと第2係合体103bとで構成されるカバー用クラッチ103は、ブレード回転軸82(ユニット用シャフト91が相対回転不能に取り付けられる)の回転動力をドーム状カバー93に伝達するか否かを切り替えるクラッチとして機能する。
【0070】
混練ブレード101が折り畳み姿勢にある場合(例えば図8(a)、図9(a)の状態)、第2係合体103bの係合部103bbは第1係合体103aの係合部103ab(本実施形態では2つあるが1つでもよい)の回転軌道に干渉する角度となる(図8(a)の破線参照)。このため、ユニット用シャフト91が回転(図8(a)において反時計方向回転)すると、第1係合体103aと第2係合体103bとは係合する。すなわち、混練ブレード101が折り畳み姿勢にある場合には、ブレード回転軸82の回転動力をドーム状カバー93に伝達することが可能になる。なお、混練ブレード101が折り畳み姿勢にある場合には、混練ブレード101の回転を規制するストッパーの働きにより、第2係合体103bは時計方向(図8(a)参照)に回転しない。
【0071】
一方、混練ブレード101が開き姿勢にある場合(例えば図8(b)、図9(b)の状態)、第2係合体103bの係合部103bbは第1係合体103aの係合部103abの回転軌道から逸脱した角度となる(図8(b)の破線参照)。このために、ブレード回転軸82が回転しても、第1係合体103aと第2係合体103bは係合しない。従って、ブレード回転軸82の回転動力はドーム状カバー93に伝達されない。
【0072】
例えば図5及び図6に示すように、ドーム状カバー93には、カバー内空間とカバー外空間を連通する窓93bが形成される。窓93bは粉砕ブレード92に並ぶ高さか、それよりも上の位置に配置される。なお、本実施形態では、計4個の窓93bが90°間隔で並んでいるが、それ以外の数と配置間隔を選択することもできる。
【0073】
また、ドーム状カバー93内面には、各窓93bに対応して計4個のリブ93cが形成されている(図8参照)。各リブ93cはドーム状カバー93の中心近傍から外周の環状壁まで半径方向に斜めに延び、4個合わさって一種の巴形状を構成する。また、各リブ93cは、それに向かって押し寄せるパン原料に対面する側が凸となるように湾曲している。
【0074】
また、ドーム状カバー93の下面には、ガード106が着脱可能に取り付けられるようになっている。このガード106は、ドーム状カバー93の下面を覆って粉砕ブレード92にユーザの指が接近するのを阻止する。ガード106は、例えば耐熱性を有するエンジニアリングプラスチックによって形成され、例えばPPS(ポリフェニレンサルファイド)等の成型品とできる。なお、このガード106は設けなくても構わないが、ユーザの安全を確保する目的等から、設けるのが好ましい。
【0075】
例えば図6に示すように、ガード106の中心には、ユニット用シャフト91に固定されるストッパー部材94を通すリング状のハブ106aがある。また、ガード106の周縁には、ハブ106aの外側に同心円状に設けられたリング状のリム106bがある。ハブ106aとリム106bとは複数のスポーク106cで連結される。複数のスポーク106cは所定の間隔を置いて配置され、スポーク106c同士の間は、粉砕ブレード92によって粉砕される穀物粒を通す開口部106dとなる。開口部106dは、指が通り抜けられない程度の大きさとなっている。
【0076】
ガード106のスポーク106cは、ドーム状カバー93に取り付けられた時、粉砕ブレード92と近接状態となる。そして、あたかも、ガード106が回転式電気かみそりの外刃で、粉砕ブレード92が内刃のような形になる。
【0077】
リム106bの周縁には、90°間隔で計4個(この構成に限定されないのは言うまでもない)の柱106eが一体成形されている。この柱106eのガード106中心側を向いた側面には、一端が行き止まりになった水平な溝106eaが形成される。この溝106eaと、ドーム状カバー93の外周に形成される突起93d(これも45°間隔で計4個配置されている)とを係合させることによって、ガード106はドーム状カバー106に取り付けられる。
【0078】
以上のように、本実施形態の自動製パン器1では、粉砕ブレード92及び混練ブレード101を1つのユニット(ブレードユニット90)に組み込む構成としているので、その取り扱いが便利である。ユーザは、ブレードユニット90をブレード回転軸82から簡単に引き抜くことが可能であり、製パン作業終了後にブレードの洗浄を手軽に行うことができる。また、ブレードユニット90が備える粉砕ブレード92は、ユニット用シャフト91に着脱可能に取り付けられるものであり、その量産が行いやすく、ブレード交換等のメンテナンス性にも優れる。
【0079】
ここで、蓋40に着脱自在に取り付けられるパン原料収納容器110について、図10〜図12を参照しながら説明する。図10は、本実施形態の自動製パン器が備えるパン原料収納容器の構成を示す概略斜視図で、図10(a)は主に前面側を示す図、図10(b)は主に背面側を示す図である。なお、パン原料収納容器110が取り付けられた蓋40が閉じられた状態において、本体10前面側となる面をパン原料収納容器110の前面、本体10背面側となる面をパン原料収納容器110の背面としている(以下、同様)。また、図10(a)と図10(b)では、パン原料収納容器110の上下が逆となっている。図11は、図10(a)のB−B位置における概略断面図である。図12は、本実施形態の自動製パン器が備えるパン原料収納容器にパン原料が投入される場合の、パン原料収納容器の姿勢を示す概略断面図である。なお、図12は、パン原料収納容器を長手方向の略中央位置で切った断面図である。
【0080】
自動製パン器1が備えるパン原料収納容器110は、大きくは、容器本体111と、容器本体111に対して回動可能に設けられて容器本体111の開口部111aを開閉する容器蓋112と、を備えている。
【0081】
容器本体111は、図11に示すように、その断面形状が略矩形状の箱形部材であり、パン原料を投入するための投入口となる開口部111aを有する。この容器本体111は、その内部に粉体パン原料(例えばグルテンやドライイースト等)が付着するのを抑制できるように、静電気を帯び難い、例えばアルミニウムや鉄等の金属によって形成されている。容器本体111の材質としてアルミニウムが選択される場合には、その表面をアルマイト処理するのが好ましい。このように構成することで、耐久性に優れる(例えば水蒸気による影響を受け難い)容器を容易に得られる。なお、アルマイト処理の上に、例えばシリコン系やフッ素系のコーティング層が施されるようにしてもよい。また、容器本体111は、凹凸がなるべく形成されず、滑らかに形成されるのが好ましい。
【0082】
また、容器本体111には、開口部111aの全周を取り囲むように、外向きに突出する鍔部(フランジ部)111bが形成されている(図11参照)。この鍔部111bには、例えばシリコーンで構成されるパッキン113(シール部材の一例)が取り付けられている。パッキン113は、平面形状略額縁状となっており、鍔部111b全周に取り付けられている。すなわち、パッキン113は、容器本体111の開口部111aを取り囲むように容器本体111に取り付けられている。
【0083】
このパッキン113は、より詳細には、鍔部111bを上下から挟むように取り付けられる断面略コの字状の部分113aと、この断面略コの字状の部分から突出(図11においては下方に突出)し、先端側が開口部111aに向かう方向とは逆向きに向かうように折り返された薄肉の弾性部113bと、を有している。
【0084】
パッキン113の固定は、パッキン113の略コの字状の部分113aを挟み込むようにして容器本体111に取り付けられる固定部材114を用いて行われる。固定部材114は、平面形状略額縁状である。この固定部材114の材質は、特に限定されるものではないが、例えば、ガラスフィラーが分散されたポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂等が選択できる。固定部材114は、詳細には2つのパーツで構成されている。2つのパーツは、パッキン113(弾性部113bは除く)及び鍔部111bを挟み込むように配置されている。そして、これら2つのパーツがネジ留めされることにより、固定部材114によるパッキン113の固定が実現されている。
【0085】
容器蓋112は、例えば金属プレートを用いて形成される。容器蓋112を構成する金属としては、容器本体111の場合と同様の理由(粉体パン原料の付着を抑制)でアルミニウム等が好ましい。また、容器蓋111の材質としてアルミニウムが選択される場合には、その表面をアルマイト処理するのが好ましい。また、アルマイト処理の上に、例えばシリコン系やフッ素系のコーティング層が施されるようにしてもよい
容器蓋112は、容器本体111の開口部111aよりやや面積が広く形成される平面視略矩形状の板状部112aと、板状部112aの一端側(図10に示されるようにパン原料収納容器110の背面側が相当する)の両端部に設けられる一対の係合部112b(例えば図10(b)参照)と、一対の係合部112bに挟まれるように板状部112aの一端側に設けられる折曲部112cと、を有する。
【0086】
一対の係合部112bは、容器本体111に対して固定状態となるように設けられる支軸115を中心として容器蓋112が回転可能となるように設けられる。この一対の係合部112bは、金属プレートの板状部112aと連続する部分を外部側(容器蓋112が閉位置にある状態において容器本体111から離れる方向)に折り曲げることによって得られる。一対の係合部112bは、板状部112aの板面に対して略垂直となっている。なお、一対の係合部112bのそれぞれには、板状部112aの板面から所定の距離だけオフセットした位置に、支軸115が挿通される係合孔EH(図12参照)が形成されている。
【0087】
なお、パン原料収納容器110の背面側に設けられる支軸115は、次のような構成されている。支軸115となる棒状部を有する略L字状の板金部材を2つ用意し、これらを、背面側の両端において、固定部材114を構成する2つのパーツで挟み込むことによって支軸115を得ている。ただし、支軸115を得る構成はこれに限らず、例えば、容器本体111に支軸115を支える支持部を設けることによって、支軸が得られるようにしてもよい。また、支軸115は、場合によっては、背面側の一方の端部から他方の端部へと延びる、1本の棒であっても構わない。
【0088】
折曲部112cは、係合部112b同様に、金属プレートの板状部112aと連続する部分を外部側に折り曲げることによって得られる。ただし、折曲部112cは、係合部112bのように急激に折り曲げられるのではなく、徐々に板面に対する折り曲げ角が大きくなるように折り曲げられている。折曲部112cの先端側の板面は、板状部112aの板面に対して、略90度となっている。この折曲部112cは、容器蓋112が開かれる場合に、容器蓋112の端部がパッキン113に引っ掛かったり、パッキン113を損傷したりするのを防止するために設けられている。
【0089】
折曲部112cの略中央部・先端には、外部方向に斜めに突出する、平面視略矩形状の把手部116が設けられている。この把手部116は、ユーザが容器蓋112を開く際の操作が行い易いように設けられている。この把手部116は、本発明における容器蓋の周縁から外方に突出する把手部の一例である。
【0090】
なお、把手部116のサイズ、形状及び設置位置は適宜変更してよい。また、本実施形態では、把手部116には例えばシリコーン等からなる弾性のカバー116aが被せられている(図10(b)参照)。このカバー116aは設けなくてもよいが、ユーザの手指等を保護するために設けるのが好ましい。また、把手部116は、後述のように、容器蓋112が開かれた際に他の部材と当接する。本実施形態のようにカバー116aが被せられていると、他の部材との衝突時の衝撃が和らげられる。この点からも、把手部116にはカバー116aを取り付けるのが好ましい。
【0091】
パン原料収納容器110の前面側には、ロック機構118が設けられている。このロック機構118は、固定部材114に形成されている。ロック機構118は、ユーザが手指を載せられるように設けられた載置部118aと、この載置部118aから容器本体111の開口部111a方向に向かって突出し、閉位置にある容器蓋112を外面側から押さえるフック部118bと、載置部118aから容器本体111の長手方向と略平行な方向に延びる腕部118cと、を有する構成となっている。
【0092】
腕部118cは、容器本体111の深さ方向と平行な回転軸C1(図10(a)参照)を中心に回動可能に、固定部材114に軸支されている。腕部118cは、その一端部側を図示しない付勢部材によって付勢されており、腕部118cの他端側に設けられる載置部118a及びフック部118bは、その付勢力によって、容器本体111の開口部111a側に向かうようになっている。
【0093】
フック部118bは断面視略三角形状に設けられており、容器蓋112をフック部118bに載せた状態で、下向き(図10(b)や図12の姿勢を前提とした表現)に力を加えると、腕部118cを付勢する付勢部材の付勢力に抗した力が発生する。このために、フック部118bに容器蓋112を載せて下向きに力を加えると、容器蓋112がフック部118bに載っている状態では、腕部118cが付勢部材の付勢力に反する力によって回転し、フック部118bが容器蓋112から離れる方向に移動する。そして、フック部118bに容器蓋112が載っていない状態になると、腕部118cが付勢部材の付勢力によって回転して容器蓋112側に移動するため、フック部118bは容器蓋112を外面側から押さえる位置に至る。これにより、ロック状態(容器蓋112の閉位置で維持された状態)が得られる。
【0094】
ロック状態においては、例えば図11に示すように、容器蓋112の内面外周側がパッキン113の弾性部13bと接触した状態で鍔部111bと重なり、開口部111aが完全に塞がれた状態となる。このロック状態においては、パッキン113によって容器本体111と容器蓋112との間がシールされているために、容器本体111内に外部から水分や埃等が入り込み難くなる。
【0095】
このロック状態を解除して容器本体111の開口部111aを開いた状態とする場合には、腕部118cが付勢力に反して回動(回転軸C1を中心とする回動)するように外部から力を付与し、フック部118bが容器蓋112を外面側から押さえない位置に移動するようにすればよい。これにより、容器蓋112が重力によって回動されるようにでき(例えば図10(a)や図11の姿勢を前提とした表現)、開口部111aが開いた状態(開状態)が得られる。
【0096】
なお、本実施形態の自動製パン器1では、操作部20(図1参照)の下部側の本体10内に自動投入用ソレノイド16(後述の図18参照)が設けられている。このソレノイド16が駆動すると、そのプランジャーが蓋40に隣接する本体壁面10aに設けられる開口10b(図1(b)参照)から突出する。そして、突出したプランジャーが、蓋40の側壁40aに設けられる可動部材46(後述の図13(a)参照)を押圧する。押圧された可動部材46が動くことでロック機構118の腕部118cが押圧され、図示しない付勢部材の付勢力に反して腕部118cが回動する。これにより、フック部118bによる容器蓋112の押さえが解除され、容器蓋112が重力によって回動し、開口部111aが開いた状態となるようになっている。
【0097】
パン原料収納容器110にパン原料を投入する場合には、ユーザは次のような動作を行えばよい。まず、ユーザは、指(例えば右手親指)を載置部118aに載せ、外向き(図12の右向き)に力を加える。これにより、ロック機構118の腕部118cが回転し、フック部118bが容器蓋112の外面を押さえない位置に移動される。そして、この状態で、把手部116を指(例えば左手親指)で外向き(図12の左向き)に押すことによって、容器蓋112が回動して開いた状態(図12に示す状態)が得られる。なお、載置部118aは、指を載せる載置面が断面視略L字状となっている(図12参照)ために、指の掛かりがよい。
【0098】
蓋40に取り付けられない状態でパン原料収納容器110の容器蓋112が開かれる場合、把手部116(正確にはカバー116aであるが、カバー116aは把手部116の一部とみなされる)が固定部材114の一部に衝突して、容器蓋112の最大開き角度が規制される。本実施形態では、例えば、閉位置からの開き角度(回転角度)が略95°(本発明の第1の角度の一例)となるように調整されている。このように閉位置からの開き角度を90°より大きくすれば、図12に示すように、パン原料収納容器110を台2上に置いて容器本体111にパン原料を入れる際に、容器蓋112が閉位置に向かって回動しにくい(倒れ難い)。このため、ユーザは、パン原料収納容器110へのパン原料の収納が行い易い。
【0099】
次に、パン原料収納容器110が蓋40にどのように取り付けられるかについて、主に、図10、図13、図14を参照しながら説明する。なお、図13は、本実施形態の自動製パン器のパン原料収納容器が取り付けられる蓋の構成を示す概略図で、図13(a)は蓋を斜め下から見た場合の斜視図、図13(b)は蓋を下から見た場合の平面図である。図14は、図13(b)のC−C位置における概略断面図である。なお、図13及び図14は、蓋40にパン原料収納容器110が取り付けられ、更にパン原料収納容器110の容器蓋112が開いた状態を示している。
【0100】
図10に示すように、パン原料収納容器110の固定部材114には、パン原料収納容器110の蓋40による保持が可能となるように、背面側に第1の取付用係合部119、前面側に第2の取付用係合部120が形成されている。
【0101】
第1の取付用係合部119は、固定部材114の側面から外側に向けて突出する(図14において斜め上方に向けて突出する)第1の係合傾斜面119aを有する。この第1の係合傾斜面119aは、背面側の両端部近傍に、それぞれ近接して2つずつ、計4つ設けられている。ただし、この第1の係合傾斜面119a(第1の取付用係合部119)の数、及び配置は一例であり、適宜変更してよい。
【0102】
第2の取付用係合部120は、ハウジング部120aと、ハウジング部120aに、その一部が収容された取付用フック部(可動式フック部)120bと、を有する。取付用フック部120bは、ハウジング部120a内部に設けられる付勢部材120c(図14参照)によって、容器本体111の短手方向と略平行な方向外向き(図14において左向き)に付勢されている。また、取付用フック部120bは、付勢部材120cの付勢力に抗する方向(図14において右向き)に力を加えると、その方向に移動可能となっており、ハウジング部120aからの突出量が可変となっている。
【0103】
図13及び図14に示すように、自動製パン器1の蓋40の内部にはフレーム部材42(例えばアルミニウム合金のダイキャスト成型品からなる)が収容され、このフレーム部材42は、蓋40の裏面側から内カバー43(例えば板金製)によって支持されている。フレーム部材42には、蓋40が閉状態とされた場合に本体10の背面寄りとなる部分に、ドーム状壁42bによって囲まれた凹部空間45が形成されている。この凹部空間45が、パン原料収納容器110を保持する保持部となる。
【0104】
なお、フレーム部材42の、蓋40が閉状態とされた場合に本体10の前面寄りとなる部分には、平面視略矩形状(蓋40を裏面側から見た場合を想定)の壁部42aによって囲まれた貫通孔44が設けられている。壁部42aは、蓋40の上面側に配置される覗き窓41に当接して覗き窓41を支持する。
【0105】
凹部空間45(パン原料収納容器110の保持部となる)内の前面(図14において左側)には、パン原料収納容器110が保持部45に保持された場合に、第2の取付用係合部120の取付用フック部120bと係合する係合溝45aが形成されている。また、この保持部45内の背面側(図14において右側)には、パン原料収納容器110が保持された場合に、パン原料収納容器110の第1の係合傾斜面119aと略平行となって第1の係合傾斜面119aに当接する、第2の係合傾斜面45bが形成されている。
【0106】
この保持部45内にパン原料収納容器110を収納する場合、ユーザは、第2の取付用係合部120の取付用フック部120bがハウジング部120a内に引っ込む方向の力(付勢部材120cの付勢力に反する方向の力)を付与する。そして、取付用フック部120bのハウジング部120aからの突出量が減じられた状態で、パン原料収納容器110を第1の係合傾斜面119aが第2の係合傾斜面45bにぶつからないように斜めにして保持部45内に押し込む。その後、取付用フック部120bに加えていた力を抜いて、取付用フック部120bを突出方向に移動させ、取付用フック部120bと係合溝45aとを係合させる。
【0107】
このようにして、パン原料収納容器110を保持部45に嵌め込むと、蓋40を閉状態とした場合において(図14の状態が該当)、第1の係合傾斜面119aと第2の係合傾斜面45bとが当接した状態となる。そして、パン原料収納容器110は、第2の係合傾斜面45bから鉛直方向上向き(図14の上向き)の力と、取付用フック部120bの係合溝45aへの係合が解除される方向と反対方向の力(図14の左向きの力)とを受けることになる。このため、パン原料収納容器110は、保持部45内で、取付用フック部120bと係合する係合溝45aと、第1の係合傾斜面119aに当接する第2の係合傾斜面45bと、によって支持され、保持部45に保持されることになる。
【0108】
なお、パン原料収納容器110を保持部45から取り外す場合には、取付用フック部120bをハウジング部120aに引っ込む方向に押圧して、取付用フック部120bと係合溝45aとの係合を解除する。そして、第1の係合傾斜面119aが第2の係合傾斜面45bによって邪魔されないように斜めに引き出せばよい。すなわち、ユーザは、取付用フック部120bを押すだけで、簡単に、パン原料収納容器110の蓋40への取付及び取外しを行える。
【0109】
なお、フレーム部材42には、パン原料収納容器110の着脱が行われる際に、ユーザの手指が引っ掛からないように、保持部45の前面側と背面側とに手指が入る空間SP1、SP2が形成されている(図13(b)、図14参照)。
【0110】
ところで、本実施形態の自動製パン器1のように、蓋40の背面寄りにパン原料収納容器110が配置される場合には、上述したような問題が生じる。すなわち、ユーザが、パン原料収納容器110の容器蓋112が開かれた状態で蓋40を開け、その後、蓋40を閉めようとした場合に、パン原料収納容器110の容器蓋112がパン容器80の鍔部80aの一部に引っ掛かって(自動製パン器1の背面側で当接する)蓋40が上手く閉められないといった事態が発生することがある。本実施形態の自動製パン器1は、このような事態が発生しないように、以下に説明する工夫がなされている。
【0111】
図15は、図13(b)のD−D位置における概略断面図である。図16は、図13(b)の破線の楕円で囲まれた部分の、パン原料収納容器を取り除いた場合の概略平面図である。図17は、本実施形態の自動製パン器の蓋に設けられるストッパー部の概略側面図である。なお、図17においては、ストッパー部に当接するパン原料収納容器110の把手部116も破線で示している。
【0112】
図13(b)、図15及び図16に示されるように、フレーム部材42の空間SP2(手指が入れられるように背面側に設けられる空間)の略中央部には、略板状に設けられ、空間SP2の背面側(自動製パン器1の蓋40が閉じられた状態を想定)の壁部W1より突出する突出部47が設けられている。この突出部47は、本発明のパン原料収納容器の容器蓋の開き角度を規制するストッパー部である。
【0113】
パン原料の一部を自動投入するために、保持部45に収容されたパン原料収納容器110の容器蓋112のロック状態が解除された場合、容器蓋112が支軸115を中心として回転する。そして、容器蓋112は、把手部116がストッパー部(突出部)47に衝突して回動が停止される。すなわち、ストッパー部47によって、容器蓋112の閉位置からの開き角度が規制される。
【0114】
本実施形態においては、ストッパー部47は、容器蓋112の閉位置からの開き角度が略85℃となるように調整されている。これにより、パン原料収納容器110の容器蓋112が開かれた状態で蓋40を開いた後に、蓋40を再度閉める場合に、容器蓋112がパン容器80の鍔部80aに引っ掛かって蓋40が上手く閉められないといった事態が発生するのを避けられる。なお、ストッパー部47によって規制される容器蓋112の開き角度は、上記目的が達成される範囲で適宜変更してよい。
【0115】
上述のように、パン原料収納容器110が蓋40に取り付けられていない状態では、容器蓋112の閉位置からの最大開き角度は90°より大きい角度(本実施形態では95°(第1の角度))とされている。これは、容器本体111を台2上に載せてパン原料を入れる場合に、容器蓋112が倒れ難いようにするためである。しかし、このように構成した場合には、ストッパー部47を設けない場合には、蓋40を開いた場合に容器蓋112の開き量(角度)が大きくなって、上述した容器蓋112の、パン容器80の鍔部80aへの引っ掛かりが発生しやすくなる。このため、本実施形態の自動製パン器1では、ストッパー部47を用いて、容器蓋112の閉位置からの開き角度が第1の角度(本実施形態では95°)より小さい第2の角度(本実施形態では85°)となるようにして、上述した容器蓋112の引っ掛かりが発生しないようにしている。
【0116】
ストッパー部47は、本実施形態ではフレーム部材42と一体的に設けている。ただし、場合によっては別部材としてもよい。また、本実施形態では、ユーザの手指を入れる空間SP2を利用してストッパー部47を設ける構成としている。このように構成することで、ストッパー部47を設けたことによる不要な空間が発生せず、蓋40の大型化が避けられる。ただし、ストッパー部47をユーザの手指を入れる空間SP2に設ける構成であるために、ストッパー部47は極力小さい(薄い)ことが望ましい。このために、ストッパー部47は、薄肉の略板状の突出部としている。
【0117】
ただし、自動製パン器1においては、パン原料収納容器110を用いた自動投入が行われる度に、容器蓋112の把手部116とストッパー部47との衝突が行われることになる。このために、ストッパー部47は強度が強いのが好ましい。そこで、図16及び図17に示すように、ストッパー部47の把手部116と接触する箇所近傍を含む一部において、ストッパー部47の厚みが厚くされている。具体的には、ストッパー部47の両側面に、接触箇所近傍から略対角方向へと延びる、かまぼこ状の凸部47aが形成されている。これにより、ユーザの手指を入れる空間SP2におけるストッパー部47のサイズを小さく(薄く)抑制しつつ、ストッパー部47の強度アップが図れる。なお、ストッパー部47は、凸部47aを有さない単なる板状のものであっても勿論よい。
【0118】
図18は、本実施形態の自動製パン器の構成を示すブロック図である。図18に示すように、自動製パン器1における制御動作は制御装置130によって行われる。制御装置130は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、I/O(input/output)回路部等からなるマイクロコンピュータ(マイコン)によって構成される。この制御装置130は、焼成室30の熱の影響を受け難い位置に配置するのが好ましい。また、制御装置130には、時間計測機能が備えられており、パンの製造工程における時間的な制御が可能となっている。
【0119】
制御装置130には、上述の操作部20と、焼成室30の温度を検知する温度センサ15と、混練モータ駆動回路131と、粉砕モータ駆動回路132と、ヒータ駆動回路133と、第1のソレノイド駆動回路134と、第2のソレノイド駆動回路135と、が電気的に接続されている。
【0120】
混練モータ駆動回路131は、制御装置130からの指令の下で混練モータ50の駆動を制御するための回路である。また、粉砕モータ駆動回路132は、制御装置130からの指令の下で粉砕モータ60の駆動を制御するための回路である。ヒータ駆動回路133は、制御装置130からの指令の下でシーズヒータ31の動作を制御するための回路である。第1のソレノイド駆動回路134は、制御装置130からの指令の下で、パンの製造工程の途中で一部のパン原料を自動投入する際に駆動する自動投入用ソレノイド16の駆動を制御するための回路である。第2のソレノイド駆動回路135は、制御装置130からの指令の下でクラッチ56(図3参照)の状態を切り替えるクラッチ用ソレノイド73(図3参照)の駆動を制御するための回路である。
【0121】
制御装置130は、操作部20からの入力信号に基づいてROM等に格納されたパンの製造コース(製パンコース)に係るプログラムを読み出し、混練モータ駆動回路131を介して混練モータ50による混練ブレード101及び補完混練ブレード102の回転の制御、粉砕モータ駆動回路132を介して粉砕モータ60による粉砕ブレード92の回転の制御、ヒータ駆動回路133を介してシーズヒータ31による加熱動作の制御、第1のソレノイド駆動回路134を介して自動投入用ソレノイド16によるロック機構118の動作制御、第2のソレノイド駆動回路135を介してクラッチ用ソレノイド73によるクラッチ56の切替制御を行いながら、自動製パン器1にパンの製造工程を実行させる。
(自動製パン器の動作)
次に、以上のように構成される自動製パン器1でパンを製造する場合の動作について説明する。ここでは、自動製パン器1によって米粒を出発原料に用いてパンを製造する場合を例に、自動製パン器1の動作を説明する。
【0122】
米粒が出発原料に用いられる場合には、米粒用製パンコースが実行される。図19は自動製パン器によって実行される米粒用製パンコースの流れを示す模式図である。図19に示すように、米粒用製パンコースにおいては、浸漬工程と、粉砕工程と、休止工程と、練り(捏ね)工程と、発酵工程と、焼成工程と、がこの順番で順次に実行される。
【0123】
米粒用製パンコースを開始するにあたって、ユーザは、パン容器80のブレード回転軸82にユニット用シャフト91を被せることによって、ブレードユニット90をブレード回転軸82に取り付ける。上述のように、ブレードユニット90がガード106を備える構成であるために、この作業時にユーザの指が粉砕ブレード92に触れることがなく、ユーザは安全に作業を行える。このブレードユニット90の取り付け作業後に、ユーザは、米粒、水、調味料(例えば食塩、砂糖、ショートニング等)をそれぞれ所定量ずつ計量してパン容器80に入れる。
【0124】
また、ユーザは、パンの製造途中で自動投入される一部のパン原料を計量してパン原料収納容器110の容器本体111に入れる。ユーザは、収納すべきパン原料を容器本体111に収納したら、ロック機構118を用いて、容器蓋112によって容器本体111の開口部111aが閉じられた閉状態を維持するようにする。
【0125】
なお、パン原料収納容器110に収納されるパン原料としては、例えば、グルテン、ドライイースト等が挙げられる。グルテンの代わりに、例えば小麦粉、増粘剤(グアガム等)及び上新粉のうちの少なくとも1つをパン原料収納容器110に収納するようにしてもよい。また、グルテン、小麦粉、増粘剤、上新粉等は用いずに、例えばドライイーストのみがパン原料収納容器110に収納されるようにしてもよい。更に、場合によっては、例えば食塩、砂糖、ショートニングといった調味料についてもパンの製造工程の途中で自動投入すべく、例えばグルテン、ドライイーストと共に、これらの原料をパン原料収納容器110に収納するようにしてもよい。この場合には、パン容器80に予め投入しておくパン原料は米粒及び水(単なる水の代わりに、例えばだし汁のような味成分を有する液体、果汁やアルコールを含有する液体等でもよい)となる。
【0126】
この後、ユーザは、パン容器80を焼成室30に入れ、更に、パン原料収納容器110を蓋40の保持部45に嵌め込む。そして、ユーザは蓋40を閉じ、操作部20によって米粒用製パンコースを選択し、スタートキーを押す。これにより、制御装置130は、米粒を出発原料に用いてパンを製造する米粒用製パンコースの制御動作を開始する。
【0127】
米粒用製パンコースがスタートされると、制御装置130の指令によって浸漬工程が開始される。浸漬工程では、パン容器80に予め投入されたパン原料が静置状態とされ、この静置状態が予め定められた所定時間(本実施形態では30分)維持される。この浸漬工程は、米粒に水を含ませることによって、その後に行われる粉砕工程において、米粒を芯まで粉砕しやすくすることを狙う工程である。
【0128】
なお、米粒の吸水速度は水の温度によって変動し、水温が高いと吸水速度が高まり、水温が低いと吸水速度が低下する。このために、浸漬工程の時間は、例えば自動製パン器1が使用される環境温度等によって変動させるようにしてもよい。これにより、米粒の吸水度合いのばらつきを抑制することが可能になる。また、浸漬時間を短時間とするために、シーズヒータ31に通電して、焼成室30の温度が高められるようにしてもよい。
【0129】
また、浸漬工程の初期段階で粉砕ブレード92が回転されるようにしてもよく、更に、その後も、断続的に粉砕ブレード92が回転されるようにしてもよい。このようにすると、米粒の表面に傷をつけることができ、米粒の吸液効率が高められる。
【0130】
上記所定時間が経過すると、制御装置130の指令によって、浸漬工程が終了され、米粒を粉砕する粉砕工程が開始される。この粉砕工程では、米粒と水とが含まれる混合物の中で粉砕ブレード92が高速回転(例えば7000〜8000rpm)される。この粉砕工程では、制御装置130は、粉砕モータ60を制御してブレード回転軸82を逆方向回転(図8では時計方向回転、図9では反時計方向回転)させる。ブレード回転軸82の逆方向回転により、粉砕ブレード92の切削部921、922の刃部分(切削刃)が回転方向前方となるために、この逆方向回転により粉砕機能が得られる。
【0131】
なお、粉砕モータ60を用いて粉砕ブレード92を回転させる場合、制御装置130は、クラッチ用ソレノイド73を駆動させて、クラッチ56が動力遮断を行うようにする(図3(a)の状態とする)。上述したように、このように制御しないとモータ破損の可能性があるからである。また、粉砕ブレード92は、粉砕工程の初期段階では低速で回転され、その後、高速回転されるようにするのが好ましい。
【0132】
粉砕ブレード92を回転させるために、ブレード回転軸82が逆方向回転された場合、ドーム状カバー93もパン容器80内の米粒と水を含む混合物の流れによって逆方向回転しようとするが、次のような動作によってドーム状カバー93の逆方向回転は阻止(停止)される。
【0133】
ブレード回転軸82が逆方向回転された時点で混練ブレード101が折り畳み姿勢(図9(a)に示す姿勢)であった場合、カバー用クラッチ103の第1係合体103a(係合部103ab)が第2係合体103b(係合部103bb)と接触し、混練ブレード101は開き姿勢(図9(b)に示す姿勢)となる方向に回転される。また、混練ブレード101は、ドーム状カバー93の逆方向回転(図9において反時計方向回転)に伴ってパン容器80内の混合物から抵抗を受け、これによっても開き姿勢となる方向に回転される。
【0134】
混練ブレード101が開き姿勢になると、第2係合体103bが第1係合体103aの回転軌道(図8の破線参照)から逸脱する。このために、カバー用クラッチ103は、ブレード回転軸82とドーム状カバー93との連結を切り離す。また、開き姿勢になった混練ブレード101は、図9(b)に示すように、その一部(正確には、先端側に設けられる緩衝材107)がパン容器80の内側壁(詳細には粉砕効率を向上するためにパン容器80の内壁に設けられた畝状の凸部80b)に当接するために、ドーム状カバー93の回転は阻止(停止)される。
【0135】
なお、粉砕工程においては、粉砕ブレード92の回転中に振動が発生するが、緩衝材107がパン容器80と接触する構成を採用しているために、この振動によって生じる衝突音が緩和されるようになっている。
【0136】
粉砕工程における米粒の粉砕は、先に行われた浸漬工程によって米粒に水が浸み込んだ状態で実行されるために、米粒を芯まで容易に粉砕することができる。粉砕工程における粉砕ブレード92の回転は本実施形態では間欠回転とされる。この間欠回転は、例えば30秒回転して5分間停止するというサイクルで行われ、このサイクルが10回繰り返される。なお、最後のサイクルでは、5分間の停止は行わない。粉砕ブレード92の回転は連続回転としてもよいが、例えばパン容器80内の原料温度が高くなり過ぎることを防止する等の目的のために、間欠回転とするのが好ましい。
【0137】
粉砕工程においては、米粒の粉砕が回転停止したドーム状カバー93内で行われるから、米粒がパン容器80の外に飛び散る可能性が低い。また、回転停止状態にあるガード106の開口部106dからドーム状カバー93内に入る米粒は、静止したスポーク106cと回転する粉砕ブレード92との間でせん断されるので、効率良く粉砕が行える。また、ドーム状カバー93に設けられるリブ93cによって、米粒と水とが含まれる混合物の流動(粉砕ブレード92の回転と同方向の流動である)が適度に抑制されるので、効率良く粉砕が行える。
【0138】
また、粉砕された米粒と水とを含む混合物は、ドーム状カバー93のリブ93cによって窓93bの方向に誘導されて、窓93bからドーム状カバー93の外に排出される。ドーム状カバー93のリブ93cは、それに向かって押し寄せる混合物に対向する側が凸となるように湾曲しているので、混合物はリブ93cの表面に滞留しにくく、スムーズに窓93bの方へ流れていく。更に、ドーム状カバー93内部から混合物が排出されるのと入れ替わりに、凹部81の上の空間に存在していた混合物が凹部81に入り、凹部81からガード106の開口部106dを通ってドーム状カバー93内に入いる。このような循環をさせつつ粉砕ブレード92による粉砕が行われるので、効率良く粉砕が行える。
【0139】
なお、自動製パン器1においては所定の時間(本実施形態では50分)で粉砕工程が終了するようにしている。しかしながら、米粒の硬さのばらつきや環境条件によって粉砕粉の粒度にばらつきが生じることがある。このため、粉砕工程の終了が、粉砕モータ60の負荷の大きさ(例えば、モータの制御電流等で判断できる)を指標に判断される構成等としても構わない。
【0140】
粉砕工程が終了すると、制御装置130の指令によって休止工程が実行される。この休止工程は、粉砕工程によって上昇したパン容器80内の内容物の温度を下げる冷却期間として設けられている。温度を下げるのは、次に行われる練り工程が、イーストが活発に働く温度(例えば30℃前後)で実行されるようにするためである。本実施形態では、休止工程は所定時間(30分)とされているが、場合によっては、パン容器80の温度等が所定の温度となるまで、休止工程が行なわれる構成等としても構わない。
【0141】
休止工程が終了すると、制御装置130の指令によって練り工程が開始される。練り工程の開始にあたって、制御装置130はクラッチ用ソレノイド73を駆動して、クラッチ56が動力伝達を行うようにする(図3(b)の状態)。そして、制御装置130は混練モータ50を制御してブレード回転軸82を正方向回転(図8では反時計方向回転、図9では時計方向回転)させる。なお、粉砕工程と練り工程ではブレード回転軸82の回転方向は逆である。
【0142】
ブレード回転軸82を正方向回転させると、粉砕ブレード92も正方向に回転する。この場合、粉砕ブレード92は、切削部921、922の刃部分(切削刃)が回転方向後方となって回転し、粉砕機能を発揮しない。粉砕ブレード92の回転により、粉砕ブレード92の周囲のパン原料が正方向(図9では時計方向)に流動する。それにつられてドーム状カバー93が正方向に動くと、混練ブレード101は流動していないパン原料から抵抗を受けて、開き姿勢(図9(b)参照)から折り畳み姿勢(図9(a)参照)へと角度を変えて行く。これにより、第2係合体103bが第1係合体103aの回転軌道(図8の破線参照)に干渉する角度となる。そして、カバー用クラッチ103がブレード回転軸82とドーム状カバー93とを連結し、ドーム状カバー93はブレード回転軸82によって本格的に駆動される態勢に入る。ドーム状カバー93と折り畳み姿勢になった混練ブレード101とは、ブレード回転軸82とともに正方向回転する。
【0143】
なお、以上に説明したカバー用クラッチ103の連結を確実に行うために、練り工程初期におけるブレード回転軸82の回転は、間欠回転或いは低速回転とするのが好ましい。また、上述のように、混練ブレード101が折り畳み姿勢になると、混練ブレード101の延長上に補完混練ブレード102が並ぶために、混練ブレード101があたかも大型化したかのようになって、パン原料は力強く押される。このため、生地の練り上げをしっかり行える。
【0144】
混練ブレード101(この用語は、折り畳み姿勢においては、補完混練ブレード102を含む表現として用いる。以下同様。)の回転は、練り工程の初期においては非常にゆっくりとされ、段階的に速度が速められるように制御装置130によって制御される。混練ブレード101の回転が非常にゆっくりである練り工程の初期段階において、制御装置130は自動投入用ソレノイド16を駆動させて、パン原料収納容器110のロック機構118の腕部118cを回動させる。これにより、フック部118bが容器蓋112を押さえた状態が解除され、容器蓋112が重力によって回動する。すなわち、容器本体111の開口部111aが開かれて、例えば、グルテン、ドライイースといったパン原料がパン容器80内に自動投入される。
【0145】
なお、蓋40が閉じられた状態において、覗き窓41が前面側となり、パン原料収納容器110が背面側となるように構成されている。そして、パン原料収納容器110の容器蓋112は、背面側に向けて回動してその板状面が鉛直方向に近い状態(正確には鉛直方向に対してやや傾いた状態である。図14参照)となる。このため、パン原料収納容器110を用いた自動投入が行われた後においても、覗き窓41を利用した、パン容器80内の様子の観察が行い難くなるということはない。
【0146】
また、パン原料収納容器110から一部のパン原料が自動投入された場合に、パン原料の自動投入がきちんと行えたか否かに確認するために、ユーザが蓋40を開けることが考えられる。しかし、自動製パン器1では、蓋40に設けられるストッパー部47の働きにより、パン原料収納容器110の容器蓋112が開きすぎないように調整されている。このために、開けた蓋40を閉める場合に、パン原料収納容器110の容器蓋112がパン容器80の鍔部80aに引っ掛かって蓋40が閉め難いといった事態が発生しない。また、パン原料収納容器110の容器蓋112とパン容器80との接触が避けられるために、これらに傷が発生する可能性が抑制される。
【0147】
また、本実施形態では、パン原料収納容器110に収納されるパン原料を、混練ブレード101が回転している状態で投入することにしているが、これに限定されず、混練ブレード101が停止している状態で投入してもよい。ただし、本実施形態のように、混練ブレード101が回転している状態でパン原料を投入するようにした方が、パン原料を均一に分散することができるので好ましい。
【0148】
パン原料収納容器110に収納されたパン原料がパン容器80に投入された後は、混練ブレード101の回転によって、パン原料は所定の弾力を有する一つにつながった生地(dough)に練り上げられていく。混練ブレード101が生地を振り回してパン容器80の内壁にたたきつけることにより、混練に「捏ね」の要素が加わることになる。混練ブレード101の回転によりドーム状カバー93も回転する。ドーム状カバー93が回転すると、ドーム状カバー93に形成されるリブ93cも回転するために、ドーム状カバー93内のパン原料は速やかに窓93bから排出され、混練ブレード101が混練しているパン原料の塊(生地)に同化する。
【0149】
なお、練り工程においては、ドーム状カバー93と共にガード106も正方向に回転する。ガード106のスポーク106cは、正方向回転時、ガード106の中心側が先行しガード106の外周側が後続する形状とされている。このために、ガード106は、正方向に回転することにより、ドーム状カバー93内外のパン原料(パン生地)をスポーク106cで外側に押しやる。これにより、パンを焼き上げた後に廃棄分となる原料の割合を減らすことができる。
【0150】
また、ガード106の柱106eは、ガード106が正方向に回転するときに回転方向前面となる側面106ebが、上向きに傾斜する構成となっている。このために、混練時、ドーム状カバー93の周囲のパン原料(パン生地)が柱106eの側面106ebで上方に跳ね上げられる。跳ね上げられたパン原料は、上方のパン原料の塊(生地)に同化するために、パンを焼き上げた後に廃棄分となる原料の割合を減らすことができる。
【0151】
自動製パン器1においては、練り工程の時間は、所望の弾力を有するパン生地が得られる時間として実験的に求められた所定の時間(本実施形態では10分)を採用する構成としている。ただし、練り工程の時間を一定とすると、環境温度等によってパン生地の出来上がり具合が変動する場合がある。このため、例えば、混練モータ50の負荷の大きさ(例えば、モータの制御電流等で判断できる)を指標に、練り工程の終了時点が判断される構成等としても構わない。
【0152】
なお、具材(例えばレーズン、ナッツ、チーズ等)入りのパンを焼く場合には、この練り工程の途中で投入するようにすればよい。
【0153】
練り工程が終了すると、制御装置130の指令によって発酵工程が開始される。この発酵工程では、制御装置130はシーズヒータ31を制御して、焼成室30の温度を、発酵が進む温度(例えば38℃)に維持する。そして、発酵が進む環境下で所定の時間(本実施形態では60分)放置される。
【0154】
なお、場合によっては、この発酵工程の途中で、混練ブレード101を回転してガス抜きや生地を丸める処理を行うようにしても構わない。
【0155】
発酵工程が終了すると、制御装置130の指令によって焼成工程が開始される。制御装置130はシーズヒータ31を制御して、焼成室30の温度を、パン焼きを行うのに適した温度(例えば125℃)まで上昇させる。そして、制御装置130は、焼成環境下で所定の時間(本実施形態では50分)パンを焼くように制御する。焼成工程の終了については、例えば操作部20の液晶表示パネルにおける表示や報知音等によってユーザに知らされる。ユーザは、製パン完了を検知すると、蓋40を開けてパン容器80を取り出して、パンの製造を完了させる。
【0156】
なお、パン容器80内のパンは、例えば、パン容器80の開口を斜め下に向けることで取り出すことができる。そして、このパンの取り出しと同時に、ブレード回転軸82に取り付けられたブレードユニット90もパン容器80から取り出される。ガード106の存在により、このパンの取り出し作業時にユーザは粉砕ブレード92に触れることがなく、ユーザは安全にパンの取り出し作業を行える。パンの底には、ブレードユニット90の混練ブレード101及び補完混練ブレード102(パン容器80の凹部81から上側に突き出ている)の焼き跡が残る。しかし、ドーム状カバー93とガード106が凹部81の中に収容される構成であるために、それらがパンの底に大きな焼き跡を残すようなことは抑制される。
(その他)
以上に示した自動製パン器の実施形態は本発明の一例であり、本発明が適用される自動製パン器の構成は、以上に示した実施形態に限定されるものではない。
【0157】
例えば、以上に示した実施形態では、蓋40に設けられるストッパー部47が、パン原料収納容器110が蓋40に取り付けられる際にユーザの手指が入る空間SP2内に設けられる構成とした。しかし、本発明はこの構成に限定されるものではない。すなわち、パン原料収納容器110の容器蓋112の開き角度を規制するストッパー部は、蓋40の別の位置に設けられても構わない。この場合、勿論、ストッパー部の形状は、本実施形成の形状とは異なるものとしてよい。
【0158】
また、以上に示した実施形態では、パン原料収納容器110の容器蓋112の開き角度を規制するストッパー部47は、容器蓋112の把手部116と当接して容器蓋112の開き角度を規制するように設けられている。しかし、本発明はこの構成に限定されるものではない。すなわち、パン原料収納容器110の容器蓋112の開き角度を規制するストッパー部は、容器蓋112の把手部116以外の箇所に当接されるようにしても構わない。この場合、勿論、ストッパー部の形状は、本実施形成の形状とは異なるものとしてよい。
【0159】
また、以上においては、自動製パン器1によって、米粒を出発原料としてパンを製造する場合を示したが、自動製パン器1は例えば小麦粉や米粉等の穀物粉を出発原料としてパンを製造することも可能である(この場合、製パン工程は適宜変更される)。そして、小麦粉や米粉を出発原料に用いてパンを製造する場合には、パン原料収納容器110はレーズンやナッツ等の具材入りパンを製造する場合の具材を入れるために用いることも可能である。
【0160】
また、以上に示した実施形態においては、米粒が出発原料として用いられる場合を例に、自動製パン器の構成及び動作が説明された。しかし、本発明は、例えば小麦、大麦、粟、稗、蕎麦、とうもろこし、大豆等の米粒以外の穀物粒が出発原料として用いられる場合にも、適用可能である。
【0161】
また、以上に示した米粒用製パンコースの製造フローは例示であり、米粒用製パンコースは他の製造フローとしてもよい。一例を挙げると、粉砕工程後の休止工程は省いてもよい。
【0162】
また、以上に示した実施形態では、粉砕ブレード92及び混練ブレード101がブレードユニット90に含まれ、ブレード回転軸82に一体的に取り付けられる(取り外される)構成とした。しかし、この構成に限らず、粉砕ブレード92及び混練ブレード101は、別々にブレード回転軸82に取り付けられる構成であっても構わない。また、場合によっては、粉砕ブレードと混練ブレードとを別々とせず、粉砕機能と混練機能とを発揮する1つのブレードのみを備える構成等としても構わない。
【0163】
また、以上に示した実施形態では、粉砕ブレード92によって穀物粒が粉砕される場合と、混練ブレード101によってパン生地が練り上げられる場合とで、別々のモータが使用される構成とした。しかし、本発明の自動製パン器は、この構成に限定される趣旨ではない。すなわち、例えば1つのモータのみが備えられる構成とし、粉砕ブレード92によって穀物粒が粉砕される場合と、混練ブレード101によってパン生地が練り上げられる場合とで、同一のモータを使用する構成としても構わない。
【0164】
また、本発明は、穀物粒を出発原料としてパンを製造する自動製パン器に好適ではあるが、穀物粉(例えば小麦粉、米粉等)を出発原料としてパンを製造する自動製パン器(穀物粒を出発原料としてパンを製造することができないもの)にも勿論適用可能な技術である。穀物粉を出発原料としてパンを製造する自動製パン器は、例えばレーズン、ナッツ、チーズ等の具材(パン原料の一部)を自動投入するために自動投入用容器を備える場合がある。
【0165】
また、以上に示した実施形態における自動製パン器1では、発酵工程や焼成工程が行えるように構成されている。しかしながら、本発明の自動製パン器は、このような構成のものに限定される趣旨ではない。例えば、発酵機能及び焼成機能がない自動製パン器や、発酵機能を有して焼成機能がない自動製パン器等も、本発明の範囲に含まれる。このような構成の場合には、自動製パン器を用いた後に、オーブン等の焼成装置を用いてパンを焼き上げることになる。
【産業上の利用可能性】
【0166】
本発明は、家庭用の自動製パン器に好適である。
【符号の説明】
【0167】
1 自動製パン器
10 本体
40 蓋(蓋体)
47 ストッパー部
80 パン容器
110 パン原料収納容器
111 容器本体
111a 開口部
112 容器蓋
116 把手部
SP2 ユーザの手指が入る空間
W1 壁部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パン原料が投入されるパン容器を本体内に受け入れて、パンの製造工程が実行される自動製パン器であって、
前記本体に開閉可能に取り付けられる蓋体と、
前記蓋体に取り付けられ、パンの製造途中で前記パン容器内に自動投入される一部のパン原料を収納しておくパン原料収納容器と、を備え、
前記パン原料収納容器は、開口部を有する容器本体と、前記開口部を開閉する容器蓋と、を有し、
前記蓋体には、前記容器蓋の開き角度を規制するストッパー部が設けられている、自動製パン器。
【請求項2】
前記容器蓋には、その周縁から外方に突出する把手部が設けられ、前記ストッパー部は、前記把手部に当接して前記容器蓋の開き角度を規制する、請求項1に記載の自動製パン器。
【請求項3】
前記蓋体には、前記パン原料収納容器が着脱される際にユーザの手指が入る空間が形成されており、前記ストッパー部は、前記空間内に形成されている、請求項1又は2に記載の自動製パン器。
【請求項4】
前記ストッパー部は、前記空間を形成する壁部から突出する略板状の突出部である、請求項3に記載の自動製パン器。
【請求項5】
前記略板状の突出部は、その一部の厚みが厚く形成されている、請求項4に記載の自動製パン器。
【請求項6】
前記パン原料収納容器は、前記蓋体に取り付けられない状態で、前記容器蓋の閉位置からの最大開き角度が90°より大きい第1の角度となるように設けられ、前記ストッパー部は、前記容器蓋の閉位置からの開き角度が前記第1の角度よりも小さい第2の角度となるように前記容器蓋の開き角度を規制する、請求項1から5のいずれかに記載の自動製パン器。
【請求項7】
前記パン原料収納容器は、前記蓋体が閉じられた状態で、前記本体の背面寄りに取り付けられる、請求項1から6のいずれかに記載の自動製パン器。
【請求項8】
前記蓋体は、それが閉じられた状態で、前記本体の前面側から背面側に向かう方向に高さが高くなる傾斜構造を有する、請求項7に記載の自動製パン器。
【請求項1】
パン原料が投入されるパン容器を本体内に受け入れて、パンの製造工程が実行される自動製パン器であって、
前記本体に開閉可能に取り付けられる蓋体と、
前記蓋体に取り付けられ、パンの製造途中で前記パン容器内に自動投入される一部のパン原料を収納しておくパン原料収納容器と、を備え、
前記パン原料収納容器は、開口部を有する容器本体と、前記開口部を開閉する容器蓋と、を有し、
前記蓋体には、前記容器蓋の開き角度を規制するストッパー部が設けられている、自動製パン器。
【請求項2】
前記容器蓋には、その周縁から外方に突出する把手部が設けられ、前記ストッパー部は、前記把手部に当接して前記容器蓋の開き角度を規制する、請求項1に記載の自動製パン器。
【請求項3】
前記蓋体には、前記パン原料収納容器が着脱される際にユーザの手指が入る空間が形成されており、前記ストッパー部は、前記空間内に形成されている、請求項1又は2に記載の自動製パン器。
【請求項4】
前記ストッパー部は、前記空間を形成する壁部から突出する略板状の突出部である、請求項3に記載の自動製パン器。
【請求項5】
前記略板状の突出部は、その一部の厚みが厚く形成されている、請求項4に記載の自動製パン器。
【請求項6】
前記パン原料収納容器は、前記蓋体に取り付けられない状態で、前記容器蓋の閉位置からの最大開き角度が90°より大きい第1の角度となるように設けられ、前記ストッパー部は、前記容器蓋の閉位置からの開き角度が前記第1の角度よりも小さい第2の角度となるように前記容器蓋の開き角度を規制する、請求項1から5のいずれかに記載の自動製パン器。
【請求項7】
前記パン原料収納容器は、前記蓋体が閉じられた状態で、前記本体の背面寄りに取り付けられる、請求項1から6のいずれかに記載の自動製パン器。
【請求項8】
前記蓋体は、それが閉じられた状態で、前記本体の前面側から背面側に向かう方向に高さが高くなる傾斜構造を有する、請求項7に記載の自動製パン器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−130498(P2012−130498A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284494(P2010−284494)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】
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