説明

自動販売機のヒートポンプ装置

【課題】ヒートポンプ装置を効率良く排熱利用を行う事が出来、加温運転時の消費電力を抑制する事が出来る自動販売機を提供することを目的とする。
【解決手段】圧縮機10と凝縮器11と熱交換器7、8、9と膨張機構12、13、14とを備え、商品を加温/冷却する収納室を冷却する際に、排出される排熱を利用して加温を行うヒートポンプ装置101とヒータ19とで加温するもので、温度検知手段20、21、22とタイマー24と設定手段25とを備え、ヒータON時にヒートポンプ装置101を動作する場合、入力した時間だけ遅延させてヒータOFF時にヒートポンプ装置101を動作することにより、室内熱交換器の凝縮温度と熱交換を行う雰囲気温度の差が大きくなり、且つ室内熱交換器の温度が低い状態でヒートポンプ装置を運転する事が出来、効率良く排熱利用を行う事が出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヒートポンプ装置を備えた自動販売機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の自動販売機としては、例えば特許文献1のものがある。
【0003】
以下、図面を参照しながら上記従来の自動販売機について説明する。
【0004】
図4に示すように、自動販売機のヒートポンプ装置1は、収納室2、収納室3、収納室4に区画された自動販売機本体5の下部に形成されている。各収納室には収納室の空気を循環させる為のファン6が、ヒートポンプ装置の一部である熱交換器7、熱交換器8、熱交換器9がそれぞれ設置されている。また収納室2にはヒートポンプ運転と併用して使われるヒータ19が設置されている。
【0005】
ヒートポンプ装置1は、圧縮機10と凝縮器11と各収納室に設置された熱交換器7、8、9が配管により接続され、冷媒が流れる冷凍サイクルが形成されている。各熱交換器前には膨張機構12、13、14が形成されており、開閉弁15により各収納室の熱交換器に冷媒が流れるようになっている。
【0006】
凝縮器11と開閉弁15の間にはバイパス弁16及びバイパス路17が設けられており、熱交換器7に高圧冷媒が導かれるようになっている。また、熱交換器7の出口には戻り路切替え弁18が設けられており、バイパス弁16と開閉弁15の間に高圧冷媒を戻すように形成されている。
【0007】
以上のように構成された自動販売機について、以下その動作を説明する。
【0008】
収納室2が加温運転、収納室3及び4が冷却運転を行う場合、バイパス弁16をバイパス路17に高圧冷媒が流れるように切り替える。戻り路切替え弁18はバイパス弁16―開閉弁15間に戻すように切り替える。開閉弁15は熱交換器8及び9に流れるように切り替える。その結果、冷媒の流れる経路は、圧縮機10→凝縮器11→バイパス弁16→バイパス路17→熱交換器7→戻り路切替え弁18→開閉弁15→膨張機構13及び14→熱交換器8及び9→圧縮機10となり、収納室2の加温と収納室3及び4の冷却を同時に運転する事が出来る。
【0009】
しかしながら低外気温においては加温である収納室2に必要とされる熱量と収納室3及び4の冷却による排熱量に大きな差が出来てしまい(加温必要熱量>冷却排熱量)、ヒートポンプ運転だけでは収納室2を適正温度まで加温する事が出来ない。よってヒータ19とヒートポンプを併用して使用する事になるが、ヒートポンプ運転は収納室3及び4を適正温度で冷却する必要があり、圧縮機運転条件として、収納室2及び3の室内温度のみによってコントロールされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−284056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら上記従来の自動販売機のヒートポンプ装置では、加温側の収納室の室温やヒータ通電有無に関わらずヒートポンプ装置を動作させる為、効率の良い排熱利用が行えていないという課題があった。
【0012】
すなわち、商品を適正温度(例えば55℃)で保持する場合、ヒータをON/OFFさせて室内雰囲気温度を適正温度中心に上下変動させて保持する。ヒータON時で室内雰囲気温度が上昇した場合にヒートポンプ装置を動作させても、室内熱交換器の凝縮温度と室内雰囲気温度との温度差が小さく(もしくは凝縮温度よりも室内雰囲気温度の方が高くなり)、また室内熱交換器の温度が高くなる為、COPは悪くなり効率良く排熱利用が行えず加温時の消費電力を抑制できないという課題を有していた。
【0013】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、効率良く排熱利用を行う事が出来、加温運転時の消費電力を抑制する事が出来る自動販売機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記従来の課題を解決するために、本発明の自動販売機は、商品を加温/冷却する事が出来る収納室と、圧縮機と凝縮器と熱交換器と膨張機構を備えて前記収納室を冷却する際に排出される排熱を利用して加温を行うヒートポンプ装置と、前記ヒートポンプ装置と併用して加温を行う為のヒータと、前記収納室の雰囲気温度を検知する為の温度検知手段と、タイマーと、前記タイマーに時間を設定する為の設定手段とを備え、ヒータON時にヒートポンプ装置を動作する場合、入力した時間だけ遅延させてヒータOFF時にヒートポンプ装置を動作するものである。
【0015】
また、商品を加温/冷却する事が出来る収納室と、圧縮機と凝縮器と熱交換器と膨張機構を備えて前記収納室を冷却する際に排出される排熱を利用して加温を行うヒートポンプ装置と、前記ヒートポンプ装置と併用して加温を行う為のヒータと、前記収納室の雰囲気温度を検知する為の温度検知手段とを備え、前記ヒータがOFF時で、かつ加温する収納室が目標温度以下になるタイミングでヒートポンプ装置を動作させるものである。
【0016】
これにより、加温する室内熱交換器の凝縮温度と熱交換を行う雰囲気温度の差が大きくなり、且つ室内熱交換器の温度が低い状態でヒートポンプ装置を運転する事が出来る。
【発明の効果】
【0017】
本発明の自動販売機は、ヒータのON/OFF運転におけるヒータのOFF時、もしくは雰囲気温度を検知出来る温度検知手段を用いて、雰囲気温度が目標温度(商品温度)より下がったタイミングでヒートポンプ装置を動作することにより、室内熱交換器の凝縮温度と熱交換を行う雰囲気温度の差が大きくなり、且つ室内熱交換器の温度が低い状態でヒートポンプ装置を運転する事が出来る為、効率良く排熱利用を行う事が出来、またヒータのOFF時間が延長される為、ヒータ通電率が下がることで加温運転時の消費電力を抑制する事が出来、省エネを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態1における自動販売機のヒートポンプ装置の構成図
【図2】本発明の実施の形態1における自動販売機の加温収納室の温度変化および各制御タイミングを示した図
【図3】本発明の実施の形態2における自動販売機の加温収納室の温度変化および各制御タイミングを示した図
【図4】従来の自動販売機のヒートポンプ装置の構成図
【発明を実施するための形態】
【0019】
請求項1に記載の発明は、商品を加温/冷却する事が出来る収納室と、圧縮機と凝縮器と熱交換器と膨張機構を備えて前記収納室を冷却する際に排出される排熱を利用して加温を行うヒートポンプ装置と、前記ヒートポンプ装置と併用して加温を行う為のヒータと、前記収納室の雰囲気温度を検知する為の温度検知手段と、タイマーと、前記タイマーに時間を設定する為の設定手段とを備え、ヒータON時にヒートポンプ装置を動作する場合、入力した時間だけ遅延させてヒータOFF時にヒートポンプ装置を動作することにより、室内熱交換器の凝縮温度と熱交換を行う雰囲気温度の差が大きくなり、且つ室内熱交換器の温度が低い状態でヒートポンプ装置を運転する事が出来る為、効率良く排熱利用を行う事が出来、またヒータのOFF時間が延長される為、ヒータ通電率が下がることで加温運転時の消費電力を抑制する事が出来、省エネを図ることができる。
【0020】
請求項2に記載の発明は、商品を加温/冷却する事が出来る収納室と、圧縮機と凝縮器と熱交換器と膨張機構を備えて前記収納室を冷却する際に排出される排熱を利用して加温を行うヒートポンプ装置と、前記ヒートポンプ装置と併用して加温を行う為のヒータと、前記収納室の雰囲気温度を検知する為の温度検知手段とを備え、前記ヒータがOFF時で、かつ加温する収納室が目標温度以下になるタイミングでヒートポンプ装置を動作させることにより、室内熱交換器の凝縮温度と熱交換を行う雰囲気温度の差が大きくなり、且つ室内熱交換器の温度が低い状態でヒートポンプ装置を運転する事が出来る為、効率良く排熱利用を行う事が出来、またヒータのOFF時間が延長される為、ヒータ通電率が下がることで加温運転時の消費電力を抑制する事が出来、省エネを図ることができる。
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0022】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における自動販売機のヒートポンプ装置の構成図である。図2は本発明の実施の形態1における自動販売機の加温収納室の温度変化および各制御タイミングを示した図である。
【0023】
図1において、ヒートポンプ装置101は、収納室2、収納室3、収納室4に区画された自動販売機本体5の下部に配置されている。各収納室には収納室の空気を循環させる為のファン6と、ヒートポンプ装置101の一部である熱交換器7、熱交換器8、熱交換器9とがそれぞれ設置されている。また、収納室2にはヒートポンプ運転と併用して使われるヒータ19が設置されている。
【0024】
ヒートポンプ装置101は、圧縮機10と凝縮器11と各収納室に設置された熱交換器7、8、9とを配管により接続され、冷媒が流れる冷凍サイクルが形成されている。熱交換器7、8、9の上流には膨張機構12、13、14が形成されており、開閉弁15により各収納室の熱交換器7、8、9に冷媒が流れるようになっている。圧縮機10と凝縮器11の間には開閉弁26及び27が設置されており、熱交換器7に高圧冷媒を導けるようになっている。
【0025】
収納室2には室内温度を検知出来る温度検知手段20が、収納室3には室内温度を検知出来る温度検知手段21が、収納室4には室内温度を検知出来る温度検知手段22が設けられている。また、ヒータ19及び圧縮機10を制御する為の制御装置23が設けられており、圧縮機10の遅延動作を行う為のタイマー24と、タイマー24の遅延時間を設定する為の設定手段25とが設けられている。
【0026】
以上のように構成された自動販売機のヒートポンプ装置について、以下その動作を説明する。
【0027】
収納室2が加温運転、収納室3及び4が冷却運転を行う場合、開閉弁26を開、開閉弁27を閉として熱交換器7に高圧冷媒が流れるように切り替える。
【0028】
結果、冷媒の流れる経路は、圧縮機10→開閉弁26→熱交換器7→凝縮器11→開閉弁15→膨張機構13、14→熱交換器8、9→圧縮機10となり、収納室2の加温と収納室3及び4の冷却を同時に運転する事が出来る。
【0029】
図2において、自動販売機のヒートポンプ装置の運転動作を説明する。収納室2は加温であり、ヒータ19のON/OFFのノッチ運転により適正温度に保たれている。ヒータ19は温度検知手段20からの温度値の入力により制御装置23にて制御されている。収納室3及び4は冷却でありヒートポンプ装置101のON/OFFのノッチ運転により適正温度に保たれている。
【0030】
ヒートポンプ装置101は温度検知手段21及び温度検知手段22からの温度値の入力により制御装置23にて制御されている。
【0031】
収納室2の加温適正温度がA℃(仮に55℃)の場合、温度検知手段20の温度がA1℃(仮に53℃)にてヒータ19がONとなり、温度検知手段20の温度がA2℃(仮に57℃)にてヒータ19がOFFとなりノッチ運転を行っている。
【0032】
また収納室3及び4の冷却適正温度がB℃(仮に3℃)の場合、温度検知手段21及び温度検知手段22の温度がB1℃(仮に5℃)にてヒートポンプ装置1がONとなり、温度検知手段21及び温度検知手段22の温度がB2℃(仮に1℃)にてヒートポンプ装置101がOFFとなりノッチ運転を行っている。
【0033】
ヒートポンプ装置101を運転する事により、冷却収納室から奪った熱量は、排熱として加温収納室に放熱されている。
【0034】
ここで、ヒータ19がONにて収納室2雰囲気温度が上昇した際にヒートポンプ装置101が入った場合、熱交換器7の温度(凝縮温度)が上昇してしまう為、COPは悪くなってしまう。また場合によってはヒータ19の熱量により熱交換器7の温度(凝縮温度)よりも収納室2雰囲気温度の方が高くなる場合もあり効率は悪くなる。その為、ヒータ19がON時にヒートポンプ装置101がONしないようにヒートポンプ装置101の運転の遅延を行う。
【0035】
まず設定手段25に時間C(ヒータ19通電時間以上)を入力する。ヒータ19がONしている時にヒートポンプ装置101がONするタイミング(B1以上)になった場合、時間Cだけタイマー24を作動させてヒートポンプ装置101の遅延を行う。時間Cはヒータ19通電時間以上の為、C時間後のヒートポンプ装置101動作時は既にヒータがOFFされており雰囲気温度が降下している最中である。これにより熱交換器7の温度(凝縮温度)を下げて運転する事が出来る為COPは良化する。また雰囲気温度が低い時にヒートポンプを動作させる為、熱交換器7の凝縮温度と収納室2雰囲気温度との温度差が大きく、且つ収納室2雰囲気温度が熱交換器7よりも高くなる事が無くなる為、効率は良くなる。結果としてヒータ19のOFF時間が長くなり、ヒータ19の運転率が下がり加温の消費電力の抑制になる。
【0036】
(実施の形態2)
図3は本発明の実施の形態2における自動販売機の加温収納室の温度変化および各制御タイミングを示した図である。なお、実施の形態1と同一構成については、同一符号を付
して詳細な説明を省略する。
【0037】
図3において、タイマー24の代わりに収納室2に設置された温度検知手段20の値を考慮してヒートポンプ装置101の動作を行う。
【0038】
収納室2雰囲気温度を検知している温度検知手段20の値はヒータ19のON/OFFのノッチ運転により上下している。ヒートポンプ装置1を動作するタイミングをB1℃以上、且つヒータ19OFF時、且つ温度検知手段20の値が加温適正温度A℃以下の時にヒートポンプ装置1を動作する。これによりタイマー24を使用する事無く、ヒータ19の運転率が下がり加温の消費電力の抑制になる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上のように本発明にかかる発明は、ヒータとヒートポンプ装置を併用して、庫内の加温/冷却を同時に行う機器の加温運転時の消費電力を抑制する事ができるものであり、ヒートポンプ装置を備えたショーケース等の用途にも適用出来る。
【符号の説明】
【0040】
2、3、4 収納室
5 自動販売機本体
6 ファン
7、8、9 熱交換器
10 圧縮機
11 凝縮器
12、13、14 膨張機構
19 ヒータ
20、21、22 温度検知手段
24 タイマー
25 設定手段
101 ヒートポンプ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
商品を加温/冷却する事が出来る収納室と、圧縮機と凝縮器と熱交換器と膨張機構を備えて前記収納室を冷却する際に排出される排熱を利用して加温を行うヒートポンプ装置と、前記ヒートポンプ装置と併用して加温を行う為のヒータと、前記収納室の雰囲気温度を検知する為の温度検知手段と、タイマーと、前記タイマーに時間を設定する為の設定手段とを備え、ヒータON時にヒートポンプ装置を動作する場合、入力した時間だけ遅延させてヒータOFF時にヒートポンプ装置を動作することを特徴とする自動販売機。
【請求項2】
商品を加温/冷却する事が出来る収納室と、圧縮機と凝縮器と熱交換器と膨張機構を備えて前記収納室を冷却する際に排出される排熱を利用して加温を行うヒートポンプ装置と、前記ヒートポンプ装置と併用して加温を行う為のヒータと、前記収納室の雰囲気温度を検知する為の温度検知手段とを備え、前記ヒータがOFF時で、かつ加温する収納室が目標温度以下になるタイミングでヒートポンプ装置を動作させることを特徴とする自動販売機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−226565(P2012−226565A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93746(P2011−93746)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】