説明

自動販売機用の押釦式選択釦構造

【課題】外部からの過大な衝撃による影響を軽減し、チャタリング対応についても改善した自動販売機用の押釦式選択釦構造を提供することを目的とする。
【解決手段】ステム無しタイプのタクトスイッチで構成されるスイッチ本体と、押釦を押圧操作された際の力を前記スイッチ本体へ伝達するための操作突起を有してシリコン系ゴムで形成されたカバー部材と、該カバー部材と前記接点部材との間に配設されるリフレクタ部材とを具え、該リフレクタ部材は、弾性を有する片持ち梁形状のアームを有し、該アームの先端部は、前記操作突起と当接してかつ前記操作突起と常時押圧し合うように配置され、さらに、前記アームの先端部に、前記押釦を押圧操作された際に前記接点部材を押圧可能である突起部を形成し、該突起部は、押釦を押圧されていない状態においては前記接点部材との間に隙間を有するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動販売機用の選択釦に関し、特に押釦方式の選択釦構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動販売機に搭載して、商品購入者に販売可能なコラムおよび商品であることを明示し、さらに商品購入者が希望の商品を購入するために押下する押釦式選択釦は、自動販売機正面に位置し商品陳列棚のすぐ下方にあって、商品陳列棚に沿って設けられている。
【0003】
この押釦式選択釦は、商品陳列棚に沿って延在するハウジングと、ハウジングに対して操作可能に配列した複数の押釦スイッチとを備えて押釦ユニットを構成し、複数の押釦ユニットを支持部材によって相互に連結して、支持部材を介して自動販売機の正面パネルに取り付けられるものである(特許文献1:特許第4378223号公報、等)。
【0004】
ハウジングは、押釦ユニットの後側に位置して自動販売機の正面パネルに固着されるベースと、押釦ユニットの前側に位置して商品購入者が押圧する操作部材を囲むボディとから構成される。
【0005】
他方、ハウジング内部には、押釦スイッチを構成する各種部品が収容される。この押釦スイッチは、スイッチ本体となる接点部材や集積回路そして販売可や売切等の状態であることを示すための光源等の電子部品を実装した基板と、光源からの光を反射させるリフレクタと、液物の侵入防止および衝撃緩和のためのカバーと、「売切」「準備中」の文字を表示するネームプレートと、操作部材とを順次重ね合わせて構成されるものである。
【0006】
このうち、接点部材は、一般にタクトスイッチと称されるスイッチが使用される。このタクトスイッチには、操作部がスイッチ本体からノブ状に突出しているステムがある「ステム付き」と、操作部がスイッチ本体から突出していない「ステム無し」の2種類があり、押釦スイッチ用には「ステム付き」が使用されるのが一般的である。
【0007】
前記カバーには操作突起が形成されて、この操作突起の先端がタクトスイッチのステム先端に接する程度に位置するように配設される。そして、商品購入者が押釦ユニットの操作部材を押圧するとカバーの操作突起がタクトスイッチのステムを押してスイッチのON、OFFとなるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4378223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、従来技術においては、カバーが直接タクトスイッチを押すものである。この構成において、外部からの強い衝撃を受けた場合にはカバーの弾性によってタクトスイッチが受ける力をある程度軽減することが可能であり、また、スイッチのチャタリング対応としてもパッキンの弾性はある程度効果がある。
【0010】
しかしながら、不都合が全くなくなるというものではなく、カバーの弾性で衝撃や振動を吸収し切れず、タクトスイッチ自体が破壊され、あるいはチャタリングを生じて誤動作を起こす虞がある。また、この不都合は自動販売機の設置環境、例えば、気温や湿度等の自然環境に左右されることもある。したがって、さらなる改善が求められる。
【0011】
本発明は、上述した従来技術の問題をさらなる改善として提案するものである。すなわち、自動販売機用の選択ボタンにおいて、外部からの過大な衝撃による影響を従来より軽減し、チャタリング対応についても従来より改善した押釦式選択釦構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するために、本発明の押釦式選択釦構造においては、ステム無しタイプのタクトスイッチで構成されるスイッチ本体と、押釦を押圧操作された際の力を前記スイッチ本体へ伝達するための操作突起を有してシリコン系ゴムで形成されたカバー部材と、該カバー部材と前記接点部材との間に配設されるリフレクタ部材とを具え、該リフレクタ部材は、弾性を有する片持ち梁形状のアームを有し、該アームの先端部は、前記操作突起と当接してかつ前記操作突起と常時押圧し合うように配置され、さらに、前記アームの先端部に、前記押釦を押圧操作された際に前記接点部材を押圧可能である突起部を形成し、該突起部は、押釦を押圧されていない状態においては前記接点部材との間に隙間を有するようにしている。
【発明の効果】
【0013】
このように、本発明に係る押釦式選択釦構造においては、カバーに形成した操作突起とスイッチ本体との間にリフレクタに形成したアームを介在させたことによって、カバーにおける材料(シリコン系ゴム)による弾性のみならず、アームにおける形状(片持ち梁形状)による弾性が、外部からの衝撃への抗力となって衝撃を緩和するので、スイッチ本体であるタクトスイッチが受ける衝撃力を軽減することができ、また、アームの先端に形成した突起部と操作突起とを常時互いに押圧し合うように配設したことによって、突起部と接点部材との距離を常に保ち、チャタリングを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る押釦ユニットの分解斜視図。
【図2】本発明に係る押釦ユニットの1つの押釦スイッチを示した正面図。
【図3A】待機状態を示す、図2におけるX−X切断部端面図。
【図3B】図3AにおけるY部分拡大図。
【図4A】選択釦の押圧操作時を示す、図2におけるX−X切断部端面図。
【図4B】図4AにおけるZ部分拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る自動販売機用の押釦式選択釦構造の一実施例を示して詳述する。
まず、本発明に係る押釦式選択釦構造を有する押釦ユニット1の基本的な構成について説明する。
【0016】
図1に示す、押釦ユニット1は、図示せぬ自動販売機正面から視えて商品陳列棚に沿って延在するハウジング2と、ハウジング2に対して操作可能に配列した複数(本実施例においては4個。以下も同様とする。)の押釦スイッチ3とから構成している。この押釦ユニット1は、モール4aによって複数の押釦ユニットを相互に連結可能である。なお、連結した複数の押釦ユニット1の両端は、モール4bによって閉塞する。
【0017】
このうち、ハウジング2は、ベース20と、ボディ90とから構成している。
【0018】
ベース20は、押釦ユニット1の後側のハウジング2を構成し、プラスチック等の樹脂から形成される矩形状の板体である。このベース20は、ベース20の表面周縁の各辺に沿って設けられてベース20の前面から前面側に向けて突設される矩形枠状の枠部21を有し、さらに、この枠部21は、その突出端面に無端の矩形状に形成した狭幅の装着溝22を有する。
【0019】
また、このベース20は、背面側から図示せぬネジ等で螺着する等して、図示せぬ自動販売機正面パネル表面の商品陳列棚下方に固定可能である。なお、ベース20背面には、前記ネジ用のボスおよびコネクタ用のボス周りにパッキン10を配置して、自動販売機正面パネルに形成したネジ孔およびコネクタ用孔との間で止水するようにしている。
【0020】
ボディ90は、ベース20の前面を覆って押釦ユニット1の前側のハウジング2を構成し、プラスチック等の樹脂から形成されるものである。後側(後述する光源32)から光が照射された場合に、その光が表面側に透過しないようにするため、遮光性を有した材料により成形する、または遮光性を有した塗装を施す、等の処理を施す必要がある。
【0021】
このボディ90は、略C字形状の横断面を有して前側に向けて膨出するよう形成しており、背側部をベース20によって閉塞可能であって、かつ、左右側部をモール4a,4bによって閉塞可能であるように設けている。
【0022】
また、ボディ90は、押釦スイッチ3と同数の釦挿通孔91を有する。この釦挿通孔91は、ボディ90の長手方向に沿って横長となる楕円形状であって、それぞれ互いに同一の大きさであるように形成しており、ボディ90の長手方向に沿って互いに併設するように設けている。
【0023】
他方、ハウジング2内部には、押釦スイッチ3を構成する各種部品、詳しくは、基板30と、リフレクタ40と、拡散レンズ50と、シリコンカバー60と、ネームプレート70と、レンズ80とを収納しており、これらを順次重ね合わせて配設して押釦スイッチ3を構成している。
【0024】
基板30は、ベース20の枠部21に嵌合する矩形の板体をなして、各種電子部品が実装されるものであり、基板30の前面には、スイッチ本体31と、明滅状態の相違によって「販売可」や「売切」、「準備中」の状態であることを示すための複数の光源32と、スイッチ本体31および光源32と接続してかつ図示せぬ自動販売機内に配設される制御装置と接続して各種信号を送受信する図示せぬ集積回路とを配置している。
【0025】
このうち、スイッチ本体31は、押圧操作された場合に基板30に構成した所望の電子回路をON状態に切り替えるものである。特に、本発明の押釦ユニット1におけるスイッチ本体31には、ステム無しタクトスイッチを使用しており、1つの押釦スイッチ3に対して2個ずつ設けている。なお、このスイッチ本体31と、後述するリフレクタ40のアーム42、およびカバー60の操作突起64の詳細な構成については、押釦式選択釦の操作時の動作とともに後述する。
【0026】
リフレクタ40は、「販売可」を示す光源32aと「売切」を示す光源32bと「準備中」を示す光源32cとから射出された光をそれぞれ通過させる光通過孔41a、41bおよび41cによって、各光源32から射出された光を仕切り、綺麗に反射させるものであり、ボディ90に形成された釦挿通孔91に遊嵌可能である楕円形状に形成し、1つの押釦スイッチ3に対して1個ずつ設けている。
【0027】
また、リフレクタ40は、本発明の特徴であって、弾性を有する片持ち梁形状のアーム42を2個ずつ具える。このアーム42は、リフレクタ40から延設して、アーム42の先端が各スイッチ本体31の前方に位置するように形成している。そして、押圧操作された場合に各スイッチ本体31とアーム42のそれぞれ先端とが当接するようにしている。なお、上述した通り、このアーム42の詳細な構成については、押釦式選択釦の操作時の動作とともに後述する。
【0028】
拡散レンズ50は、光源32aから射出された光を拡散させるものであり、光通過孔41aに嵌挿可能であるように形成し、1つの押釦スイッチ3に対して1個ずつ設けている。
【0029】
カバー60は、シリコン系ゴム等の透光性および弾性を有した材料によって形成することによって、基板30内への液物侵入の防止の役割と、押釦式選択釦の押圧操作時における衝撃緩和の役割と、押釦式選択釦の押圧操作後に手を離した時の復帰の役割とを有するもので、1つの押釦ユニット1に対して一体的に設けている。
【0030】
また、このカバー60は、基板30と同等の大きさを有した矩形の外形形状である基部61と、ベース20の装着溝22に嵌挿可能であるように基部61の外周に形成される無端状の外周側縁62と、各リフレクタ40および各拡散レンズ50が嵌挿可能な楕円形状の開口を有してかつ該開口から表面側に向けて突設して個々の突出端面が閉塞した楕円の筒状を成す釦装着部63と、この釦装着部63の背面から背面側に向けて突設される操作突起64とを具える。
【0031】
この操作突起64は、リフレクタ40の1つのアーム42に対して1個ずつ形成しており、常時アーム42と互いに押圧し合うようにしている(図3B等参照)。なお、上述した通り、この操作突起64の詳細な構成については、押釦式選択釦1操作時の動作とともに後述する。
【0032】
ネームプレート70は、透光性を有した材料からなるフィルム材によって釦装着部63の突出端面と略同一の形状に形成したもので、それぞれの押釦スイッチ3に個別に設けている。個々のネームプレート70には、光通過孔41bおよび光通過孔41cに対応する部位に抜き文字を印刷しており、光源32bあるいは光源32cから照射される各光によって、「売切」あるいは「準備中」の文字を表示させるようにしている。
【0033】
レンズ80は、商品購入者が押圧操作をする操作部材であって、透光性を有した材料(樹脂等)により、それぞれの押釦スイッチ3に個別に設けている。
【0034】
このレンズ80は、カバー60の釦装着部63およびネームプレート70が嵌挿可能な楕円形状の開口を有してかつ該開口から表面側に向けて突設して、ボディ90の釦挿通孔91に嵌挿可能な外形寸法であるように形成しており、個々の突出端面は、押圧操作面81として閉塞している。
【0035】
また、レンズ80の外周部分には、レンズ80が釦挿通孔91から抜けることを防ぐための鍔部82を設けている。
【0036】
上述のように、本発明の押釦ユニット1は、基本的な構成は従来のものと同様ではあるが、カバー60に形成された操作突起64と、基板30に配置されたスイッチ本体31との間に、リフレクタ40に形成したアーム42を介在させる点で従来のものと異なる構成をしている。
【0037】
次に、本発明のアーム42のその周囲の構成についてより詳細に説明するとともに、選択釦の押圧操作時における各部の作用について説明する。
【0038】
図2は、押釦ユニット1における1つの押釦スイッチ3の正面図であり、スイッチ本体31およびアーム42の位置を示すため、一部を断面として示している。
【0039】
スイッチ本体31は、上述した通り、ステム無しのタクトスイッチを使用しており、1つの押釦スイッチ3に対して2個ずつ設けている。このうち一方を、この図2に示すように、上下方向に中心位置であって、図示右方端部に配置している。そして、図示せぬ他方のスイッチ本体31を、上記スイッチ本体31と左右対称であるように、図示左方端部に配置している。
【0040】
また、アーム42を、その先端がスイッチ本体31の正面に位置するように配置し、アーム42の支点がその先端に対して押釦スイッチ3の左右方向に中心側かつ下方側に位置するように配置している。そして、スイッチ本体31と同様に、1つの押釦スイッチ3に対して2個ずつ、それぞれ左右対称であるように設けている。
【0041】
図3Aおよび図3Bに示すように、アーム42の先端に、スイッチ本体31に向かって凸設される突起部42aを形成し、待機状態においては、突起部42aの先端とスイッチ本体31の表面との間に、若干の隙間を設けている。
【0042】
また、突起部42bの正面側には、カバー60に形成された操作突起64が当接する。
上述した通り、アーム42は弾性を有する片持ち梁形状であり、また、カバー60は弾性を有する材料によって形成している。そして、突起部42aと操作突起64とは、常時互いに押圧し合うように配置している。すなわち、待機状態においても、アーム42の腕部42bは若干撓んだ状態であり、カバー60の操作突起64は前後方向に若干圧縮した状態であるようにしている。
これによって、突起部42aとスイッチ本体31との距離を常に保ち、チャタリングを防止するようにしている。
【0043】
商品購入者が押釦ユニット1の操作部材であるレンズ80の押圧操作面81を押圧した際における押釦ユニット1の各部の作用を、図4Aおよび図4Bに示す。
押圧操作面81が図示矢印方向に押圧されると、レンズ80は矢印方向に移動しながらカバー60を押圧する。カバー60は弾性を有する材料によって形成されているので、カバー60に形成された操作突起64が前後方向に圧縮しながら、アーム42の突起部42aを押圧する。すると、アーム42の腕部42bがさらに撓み、操作突起64とともにスイッチ本体31に近接する方向に移動する。そして、突起部42aの背面がスイッチ本体31であるタクトスイッチのステムに当接して、スイッチがONされると、この信号を受信した図示せぬ集積回路が、自動販売機内に配設させる制御装置に該信号を送信する。
【0044】
この際、例えば、商品購入者が押圧操作面81を強い力で押圧する等、外部から強い衝撃が加えられた場合、カバー60における材料(シリコン系ゴム等)による弾性のみならず、アーム42における形状(片持ち梁形状)による弾性が、衝撃に対する抗力となって、この衝撃を緩和するので、スイッチ本体31であるタクトスイッチが受ける衝撃力を軽減することが可能となる。
【0045】
このように、本発明に係る押釦式選択釦構造は、カバーに形成した操作突起が有する弾性とリフレクタに形成したアームが有する弾性との協働作用によって、押圧操作時の過大な衝撃を緩和できる構成であり、また、アームの先端に形成した突起部とスイッチ本体との距離を常に保ち、チャタリングを防止する構成である。
【符号の説明】
【0046】
1 押釦ユニット
2 ハウジング
3 押釦スイッチ
4 モール
10 パッキン
20 ベース
21 枠部
22 装着溝
30 基板
31 スイッチ本体
32 光源
40 リフレクタ
41 光通過孔
42 アーム
50 拡散レンズ
60 カバー
61 基部
62 外周側縁
63 釦装着部
64 操作突起
70 ネームプレート
80 レンズ
81 鍔部
82 押圧操作面
90 ボディ
91 釦挿通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動販売機用選択釦を形成する押釦ユニットまたは押釦であって、
ステム無しタイプのタクトスイッチで構成されるスイッチ本体と、
前記押釦を押圧操作された際の力を前記スイッチ本体へ伝達するための操作突起を有してシリコン系ゴムで形成されたカバー部材と、
該カバー部材と前記スイッチ本体との間に配設されるリフレクタ部材と
を具える押釦式選択釦構造において、
前記リフレクタ部材は、弾性を有する片持ち梁形状のアームを有し、
該アームの先端部は、前記操作突起と当接してかつ前記操作突起と常時押圧し合うように配置され、
さらに、前記アームの先端部に、前記押釦を押圧操作された際に前記スイッチ本体を押圧可能である突起部を形成し、
該突起部は、前記押釦を押圧操作されていない状態においては前記スイッチ本体との間に隙間を有することを特徴とする押釦式選択釦構造。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【公開番号】特開2013−109839(P2013−109839A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251581(P2011−251581)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(307003777)株式会社日本コンラックス (140)
【Fターム(参考)】