説明

自動販売機,釣銭払出し管理方法および釣銭払出し管理プログラム

【課題】異なるメーカの自販機間の釣銭払出しの代替において,メーカ間の釣銭貸借の相殺効率をよくする技術を提供する。
【解決手段】自販機10において,商品購入者に対する釣銭の払出しができなかった場合に,払出可能自販機抽出部102は,自機の代わりに釣銭の払出しが可能な他の自販機10を抽出する。優先メーカ決定部104は,釣銭の払出しの代替によって自機のメーカと他のメーカとの間の釣銭貸借が効率的に相殺されるように,優先メーカを決定する。払出可能自販機情報提示部105は,商品購入者に対して釣銭の払出しが可能な他の自販機10を提示するときに,優先メーカの自販機10での釣銭の払出しを誘導する情報を提示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,ある自動販売機で払出しできなかった釣銭を,他の自動販売機で払出す制御を行う自動販売機,釣銭払出し管理方法および釣銭払出し管理プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に,自動販売機は,釣銭切れ状態になると,釣銭が発生する商品の販売ができなくなる。このため,釣銭切れ時には,商品販売の機会を逸することになる。
【0003】
このような自動販売機の釣銭切れに対処する技術として,ある自動販売機で放出できなかった釣銭の,他の自動販売機での払戻しを可能とする技術が知られている。この技術では,例えば鉄道会社のある切符の自動販売機で釣銭切れが発生した場合に,他の切符の自動販売機で釣銭の払戻しが受けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−275462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の技術を用いれば,ある自動販売機で払出しができなかった釣銭の払出しを,他の自動販売機で受けることができる。
【0006】
しかし,上述の技術は,釣銭の払出しができなかった自動販売機の商品販売者と,釣銭の払出しを代替する自動販売機の商品販売者とが,異なる場合が特に想定されていない。最もよく見かける飲料水の自動販売機などでは,同じ商品販売者の自動販売機が並ぶことはあまりなく,異なる商品販売者の自動販売機同士が並んでいることが多い。
【0007】
商品販売者が異なる自動販売機間での釣銭払出しの代替を行うと,商品販売者間での釣銭の貸借が発生する。そのため,商品販売者が異なる自動販売機間での釣銭払出しの代替を可能とするためには,商品販売者間での釣銭の貸借を効率的に相殺する仕組みが必要となる。
【0008】
本発明は,上記の問題の解決を図り,異なる商品販売者の自動販売機間での釣銭払出しの代替において,商品販売者間の釣銭貸借の相殺効率をよくする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
商品の販売を行う自動販売機は,自機が保有する釣銭の情報を記憶する自機釣銭情報記憶部と,他の自動販売機が保有する釣銭の情報を記憶する各自販機釣銭情報記憶部と,自機の商品販売者と他の商品販売者との間の釣銭の貸借状況を示す情報を記憶する釣銭貸借情報記憶部と,商品購入者に対する釣銭の払出しが発生したときに,自機釣銭情報記憶部を参照し,該釣銭の自機での払出しの可否を判定する自機払出可否判定部と,自機での釣銭の払出しが不可能である場合に,各自販機釣銭情報記憶部を参照し,発生した釣銭の払出しの代替が可能な他の自動販売機を抽出する払出可能自販機抽出部と,釣銭貸借情報記憶部を参照し,複数の他の商品販売者それぞれとの釣銭の貸借金額を特定し,発生した釣銭の払出し代替後の釣銭の貸借金額の各商品販売者間の差がより小さくなる商品販売者を,代替を優先する商品販売者として決定する優先商品販売者決定部と,商品購入者に対して,発生した釣銭の払出しを,代替を優先する商品販売者の自動販売機で行うように誘導する情報を提示する払出可能自販機情報提示部とを備える。
【発明の効果】
【0010】
上記の技術によって,異なる商品販売者の自動販売機間での釣銭払出しの代替において,商品販売者間の釣銭貸借の相殺効率がよくなる。例えば,互いにライバル同士である商品販売者間で,可能な限り大きな貸借が発生しないように釣銭貸借を相殺する,自動販売機間の釣銭払い出しの代替が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施の形態による自販機システムの構成例を示す図である。
【図2】本実施の形態による自販機のハードウェア構成例を示す図である。
【図3】本実施の形態による自販機の機能構成例を示す図である。
【図4】本実施の形態による自販機メーカ情報記憶部に記憶されたデータの例を示す図である。
【図5】本実施の形態による自機釣銭情報記憶部に記憶されたデータの例を示す図である。
【図6】本実施の形態による各自販機釣銭情報記憶部に記憶されたデータの例を示す図である。
【図7】本実施の形態による釣銭貸借情報記憶部に記憶されたデータの例を示す図である。
【図8】本実施の形態による自販機位置情報記憶部に記憶されたデータの例を示す図である。
【図9】本実施の形態による払出可能自販機情報記憶部に記憶されたデータの例を示す図である。
【図10】本実施の形態による釣銭払出制御情報記憶部に記憶されたデータの例を示す図である。
【図11】本実施の形態の釣銭払出管理部による釣銭払出管理処理フローチャートである。
【図12】本実施の形態のメーカサーバによる優先指示メーカ決定処理フローチャート(1)である。
【図13】本実施の形態の優先メーカ決定部による優先メーカ決定処理フローチャート(1)である。
【図14】本実施の形態のメーカサーバによる優先指示メーカ決定処理フローチャート(2)である。
【図15】本実施の形態の優先メーカ決定部による優先メーカ決定処理フローチャート(2)である。
【図16】本実施の形態の自販機による釣銭切れ発生時の商品販売画面の例を示す。
【図17】本実施の形態の自販機による払出可能自販機の場所提示画面の例を示す。
【図18】本実施の形態の優先メーカの自販機による釣銭払出し画面の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下,本実施の形態について,図を用いて説明する。
【0013】
図1は,本実施の形態による自販機システムの構成例を示す図である。
【0014】
自販機10は,商品を自動で販売する自動販売機である。
【0015】
図1に示す自販機システムでは,複数の自販機10がグループ化されている。自販機10のグループ化は任意であるが,商品の購入者が容易に移動可能な範囲の自販機10をグループ化するのが好適である。例えば,同じビル内,同じフロア内に設置された自販機10をグループ化する,動物園や遊園地の敷地内に設置された自販機10をグループ化するなどである。
【0016】
同じグループに属する自販機10が,必ずしも同じメーカの商品の自販機10で構成されている必要はない。例えば,飲料水の自販機10などの場合には,複数のメーカの自販機10が並べられていることが一般的である。ここでは,自販機10での商品販売による売上を得る,自販機10の商品の販売者を,メーカと呼ぶ。
【0017】
同じグループに属する自販機10同士は,グループ内ネットワーク20を介して,通信を行う。本実施の形態では,グループ内ネットワーク20は,アドホックネットワークである。同じグループに属する自販機10同士は,通信費用が発生しないアドホック通信により,保持する釣銭の情報の交換や,釣銭払出しの代替の依頼などを行う。
【0018】
メーカサーバ40は,各メーカが,各グループに散在する自メーカの自販機10を集中管理する装置である。例えば,図1において,メーカサーバ40aはA社の自販機10の集中管理を行うメーカサーバ40であり,メーカサーバ40bはB社の自販機10の集中管理を行うメーカサーバ40であり,メーカサーバ40cはC社の自販機10の集中管理を行うメーカサーバ40である。自販機10は,外部ネットワーク30を介して,メーカサーバ40と通信を行う。本実施の形態では,外部ネットワーク30は,例えばFTTH(Fiber To The Home )や電力線などの回線を用いたインターネットである。
【0019】
なお,グループ内のすべての自販機10が,必ずしも外部ネットワーク30を介したメーカサーバ40との通信を行える必要はない。例えば,グループ内に同じメーカの複数の自販機10が存在する場合に,そのうちの1台が代表してメーカサーバ40との通信を行うようにしても良い。また,例えば,グループで1台の代表自販機が,各メーカサーバ40との通信を行うようにしても良い。外部ネットワーク30を利用した通信は,回線設置の費用や回線使用料等の費用がかかる。外部ネットワーク30を利用した通信を極力少なくした方が,通信費用が少なく済む。外部ネットワーク30を利用した通信を行わない自販機10については,グループ内ネットワーク20を利用して情報の同期をとることにより,カバー可能である。
【0020】
図2は,本実施の形態による自販機のハードウェア構成例を示す図である。
【0021】
自販機10のコンピュータは,CPU(Central Processing Unit )11,RAM(Random Access Memory)などのメモリ12,HDD(Hard Disk Drive )などの記憶装置13,タッチパネル式液晶画面14,認証用接続装置15,グループ内通信用通信装置16,外部通信用通信装置17等のハードウェアを備える。
【0022】
自販機10のコンピュータが実行可能なプログラムは,記憶装置13に記憶され,その実行時にメモリ12に読み出され,CPU11により実行される。
【0023】
なお,自販機10のコンピュータは,可搬型記録媒体から直接プログラムを読み取り,そのプログラムに従った処理を実行することもできる。また,自販機10のコンピュータは,サーバコンピュータからプログラムが転送されるごとに,逐次,受け取ったプログラムに従った処理を実行することもできる。
【0024】
さらに,このプログラムは,自販機10のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。
【0025】
タッチパネル式液晶画面14は,入出力装置である。タッチパネル式液晶画面14は,自販機が販売する商品の情報や,その他の補足情報,グループ内の自販機10の情報などの表示を行う。また,タッチパネル式液晶画面14は,商品購入者の画面タッチによる購入商品の選択などの入力を受け付ける。
【0026】
認証用接続装置15は,他の自販機10で釣銭の払出しを受ける商品購入者に対して認証情報を受け渡す,または他の自販機10の商品購入者による認証情報の入力を受け付ける装置である。本実施の形態では,自販機10間での釣銭払出しの代替が発生したときに,釣銭の払出しを受ける商品購入者に対して認証情報が発行される。商品購入者に対する認証情報の受け渡し方法としては,例えば,認証用接続装置15から商品購入者の携帯電話に認証情報を渡す,認証情報が記録されたIC(Integrated Circuit)カードを認証用接続装置15から発行するなどの方法が考えられる。自販機10への認証情報の入力は,その逆の動作を行えばよい。
【0027】
グループ内通信用通信装置16は,グループ内ネットワーク20を介して,グループ内の他の自販機10とアドホック通信を行う通信装置である。外部通信用通信装置17は,外部ネットワーク30を介して,メーカサーバ40とのインターネット通信を行う通信装置である。
【0028】
図3は,本実施の形態による自販機の機能構成例を示す図である。
【0029】
自販機10は,釣銭払出管理部100,自販機メーカ情報記憶部120,グループ内通信部130,グループ外通信部140,釣銭払出処理部150を備える。また,釣銭払出管理部100は,自機払出可否判定部101,払出可能自販機抽出部102,払出可能自販機情報記憶部103,優先メーカ決定部104,払出可能自販機情報提示部105,釣銭払出依頼部106,自機釣銭情報記憶部110,各自販機釣銭情報記憶部111,釣銭貸借情報記憶部112,自販機位置情報記憶部113,釣銭払出制御情報記憶部114を備える。自販機10が備える各機能部は,自販機10のコンピュータが備えるCPU11,メモリ12等のハードウェアとソフトウェアプログラムとにより実現される。
【0030】
自販機メーカ情報記憶部120は,自販機メーカ情報を記憶する,コンピュータがアクセス可能な記憶部である。自販機メーカ情報は,自身の自販機10を含む同じグループに属する各自販機10の情報である。以下では,自身の自販機10を,自機と呼ぶ。
【0031】
図4は,本実施の形態による自販機メーカ情報記憶部に記憶されたデータの例を示す図である。
【0032】
図4に示す自販機メーカデータは,自販機メーカ情報記憶部120に記憶された,自販機メーカ情報の一例である。図4に示す自販機メーカデータは,自販機ID,メーカID,メーカ内親自販機の情報を持つ。自販機IDは,自販機10を一意に識別する識別情報である。メーカIDは,自販機10のメーカを一意に識別する識別情報である。メーカ内親自販機は,グループ内でメーカごとの代表となる自販機10を示す情報である。グループ内において,各メーカで1台の自販機10が親自販機に指定される。
【0033】
図3において,釣銭払出管理部100は,釣銭払出しに関する情報の管理や,自機で商品購入者への釣銭払出しができない場合に,他の自販機10に釣銭払出しの代替を依頼する処理などを行う。
【0034】
釣銭払出管理部100において,自機釣銭情報記憶部110は,自機釣銭情報を記憶する,コンピュータがアクセス可能な記憶部である。自機釣銭情報は,自機が保有する釣銭の情報である。
【0035】
図5は,本実施の形態による自機釣銭情報記憶部に記憶されたデータの例を示す図である。
【0036】
図5に示す自機釣銭データは,自機釣銭情報記憶部110に記憶された,自機釣銭情報の一例である。図5に示す自機釣銭データは,金種別払出可能枚数の情報を持つ。金種別払出可能枚数は,金種別の釣銭として払出し可能な金銭の枚数の情報である。本実施の形態の自販機10は,釣銭として,500円玉,100円玉,50円玉,10円玉の4種類の硬貨の払出しを行う。
【0037】
図5に示す自機釣銭データは,自機が釣銭として払出しが可能な硬貨の所持枚数の変化に応じて,随時更新される。例えば,商品購入者からの硬貨の投入があった場合,商品購入者への釣銭の払出しがあった場合,メーカのセールスマンによる売上金の回収・釣銭の補充が行われた場合などに,保持する釣銭の変化に応じて,自機釣銭データも更新される。なお,メーカのセールスマンとは,そのメーカの自販機の商品補充や,売上金の回収,釣銭の補充等を行う人のことである。
【0038】
図3において,釣銭払出管理部100の各自販機釣銭情報記憶部111は,各自販機釣銭情報を記憶する,コンピュータがアクセス可能な記憶部である。各自販機釣銭情報は,グループ内の各自販機10が保有する釣銭の情報である。すなわち,各自販機釣銭情報には,自機が保有する釣銭の情報と,他の自販機10が保有する釣銭の情報とが含まれている。
【0039】
図6は,本実施の形態による各自販機釣銭情報記憶部に記憶されたデータの例を示す図である。
【0040】
図6に示す各自販機釣銭データは,各自販機釣銭情報記憶部111に記憶された,各自販機釣銭情報の一例である。図6に示す各自販機釣銭データは,自販機ID,メーカID,金種別払出可能枚数の情報を持つ。自販機ID,メーカID,金種別払出可能枚数のそれぞれの情報は,図4に示す自販機メーカデータ,図5に示す自機釣銭データと同様である。
【0041】
図6に示す各自販機釣銭データは,グループ内の各自販機10の釣銭の保有状況の変化に応じて更新される。グループ内の各自販機10は,定期的にまたは保有する釣銭の枚数に変化があったときに,グループ内ネットワーク20を利用して,他の自販機10に自機の釣銭の保有状況を通知する。他の自販機10からの釣銭の保有状況の通知を受けると,その通知の内容に基づいて,図6に示す各自販機釣銭データの該当自販機10の金種別払出可能枚数の情報を更新する。
【0042】
図3において,釣銭払出管理部100の釣銭貸借情報記憶部112は,釣銭貸借情報を記憶する,コンピュータがアクセス可能な記憶部である。釣銭貸借情報は,自機のメーカと他のメーカとの釣銭の貸借状況を示す情報である。
【0043】
図7は,本実施の形態による釣銭貸借情報記憶部に記憶されたデータの例を示す図である。
【0044】
図7に示す釣銭貸借データは,釣銭貸借情報記憶部112に記憶された,釣銭貸借情報の一例である。図7に示す釣銭貸借データは,メーカID,貸し金額,優先指示メーカの情報を持つ。メーカIDは,自機のメーカの貸借相手となるメーカのメーカIDである。すなわち,図7に示す釣銭貸借データにおけるメーカIDは,それぞれ自機と同じグループに属する自販機10のメーカのメーカIDである。貸し金額は,自機のメーカが相手のメーカに対して貸した釣銭の金額である。貸し金額がプラスの場合には,自機のメーカが相手のメーカに対する釣銭の貸しがあることを示し,貸し金額がマイナスの場合には,自機のメーカが相手のメーカから釣銭の借りがあることを示す。優先指示メーカは,自機のメーカのメーカサーバ40により指定された,優先メーカの指示情報である。優先指示メーカや,優先メーカについては,それぞれ詳細を後述する。
【0045】
図7に示す釣銭貸借データの貸し金額は,相手メーカの自販機10との釣銭払出しの代替が発生したときに更新される。例えば,自機でできなかった釣銭の払出しを,相手メーカの自販機10で代替してもらったときには,図7に示す釣銭貸借データにおいて,相手メーカの貸し金額の情報から,払出しを代替してもらった釣銭の金額が差し引かれる。逆に,相手メーカの自販機10でできなかった釣銭の払出しを,自機で代替したときには,図7に示す釣銭貸借データにおいて,相手メーカの貸し金額の情報に,自機で払出しを代替した釣銭の金額が加算される。
【0046】
また,図7に示す釣銭貸借データの貸し金額は,自機のメーカと相手メーカとの間で釣銭貸借の清算が行われた場合などに,自機メーカのメーカサーバ40による指示で更新される。例えば,自機のメーカと相手メーカとの間で釣銭貸借の清算で相手メーカとの釣銭貸借がなくなったときに,自機メーカのメーカサーバ40からの指示により,図7に示す釣銭貸借データの貸し金額は,0に更新される。
【0047】
また,図7に示す釣銭貸借データの優先指示メーカは,自機メーカのメーカサーバ40による指示で更新される。
【0048】
図3において,釣銭払出管理部100の自販機位置情報記憶部113は,自販機位置情報を記憶する,コンピュータがアクセス可能な記憶部である。自販機位置情報は,グループ内の各自販機10の位置を示す情報である。
【0049】
図8は,本実施の形態による自販機位置情報記憶部に記憶されたデータの例を示す図である。
【0050】
図8に示す自販機位置データは,自販機位置情報記憶部113に記憶された,自販機位置情報の一例である。図8に示す自販機位置データは,自販機ID,所在位置の情報を持つ。自販機IDは,他のデータと同様に各自販機10の識別情報である。所在位置は,その自販機の所在位置を示す。所在位置の情報は,システム独自のアドレスコードや地図位置コード,一般的な緯度・経度などで表される。本実施の形態では,自販機10の所在位置の情報は,地図位置コードで表されているものとする。図示はされていないが,本実施の形態の自販機10は,少なくとも自機が属するグループの全自販機10の所在位置が含まれる範囲の地図データを保持している。図8に示す自販機位置データの所在位置の情報は,自販機10が保持する地図データの位置情報に対応している。
【0051】
図3において,釣銭払出管理部100の自機払出可否判定部101は,商品購入者に対する釣銭の払出しが発生したときに,自機釣銭情報記憶部110に記憶された自機釣銭情報を参照し,自機からの釣銭の払出しの可否を判定する。自機からの釣銭の払出しが可能であれば,自機の釣銭払出処理部150の処理によって,商品購入者への釣銭の払出しが行われる。
【0052】
払出可能自販機抽出部102は,自機での釣銭の払出しが不可能である場合に,各自販機釣銭情報記憶部111に記憶された各自販機釣銭情報を参照し,自機で発生した釣銭払出しの代替が可能な他の自販機10を抽出する。ここでは,自機で発生した釣銭払出しの代替が可能な他の自販機10を,払出可能自販機と呼ぶ。
【0053】
払出可能自販機は,原則として,商品購入者に払出す金種の枚数が足りている自販機10である。ただし,必ずしも払出す金種の枚数が足りているというだけで,その自販機10を払出可能自販機として抽出しなくても良い。例えば,自機で10円玉が不足して30円の釣銭が払出しできない場合に,6枚の10円玉を保有する自販機10は,払出可能自販機となり得る。しかし,その自販機10は,3枚の10円玉の払出しを代替してしまうと10円玉が3枚しか残らなくなり,その後の自身の商品購入者に対して釣銭の払出しができなくなってしまう可能性がある。この自販機10のメーカが,自機のメーカと異なる場合には,自機の釣銭払出しの代替によって,他メーカの商売を妨害してしまう可能性がある。このような状況を防止するために,払出可能自販機の抽出では,釣銭払出し代替後の硬貨の最低残枚数の閾値を設けるなどしてもよい。
【0054】
払出可能自販機抽出部102は,抽出した払出可能自販機のリスト情報を,払出可能自販機情報として,払出可能自販機情報記憶部103に記憶する。払出可能自販機情報記憶部103は,払出可能自販機情報を記憶する,コンピュータがアクセス可能な記憶部である。
【0055】
図9は,本実施の形態による払出可能自販機情報記憶部に記憶されたデータの例を示す図である。
【0056】
図9に示す払出可能自販機リストデータは,払出可能自販機情報記憶部103に記憶された,払出可能自販機情報の一例である。図9に示す払出可能自販機リストデータは,払出可能自販機として抽出された各自販機10ごとの,自販機ID,メーカIDの情報を持つ。自販機ID,メーカIDのそれぞれの情報は,図4に示す自販機メーカデータと同様である。
【0057】
図3において,釣銭払出管理部100の優先メーカ決定部104は,抽出された払出可能自販機の各メーカから,自機で発生した釣銭払出しの代替を優先するメーカを決定する。以下では,自機で発生した釣銭の代替を優先するメーカを,優先メーカと呼ぶ。
【0058】
本実施の形態の釣銭払出管理部100は,商品購入者を,できるだけ優先メーカの自販機10で釣銭の払出しを受けるように誘導する。自機の商品購入者への釣銭の払出しを,優先メーカの自販機10に限定してもよいが,限定せずに誘導する方が好適である。決定された優先メーカの自販機10の所在位置が,必ずしも商品購入者が行きやすい場所であるとは限らない。本実施の形態では,優先メーカの自販機10は,あくまで選択肢の1つとして,商品購入者を誘導する。誘導方法の具体例については,後述する。
【0059】
優先メーカ決定部104は,釣銭貸借情報記憶部112に記憶された釣銭貸借情報を参照し,自機メーカと相手メーカとの間の釣銭の貸借金額を効率よく相殺することが可能な相手メーカを,優先メーカに決定する。
【0060】
ここで,釣銭の貸借金額の効率よい相殺には,2つの考え方がある。
【0061】
1つ目の考え方は,釣銭払出し代替後の自機メーカと相手メーカとの間の釣銭の貸借金額の各メーカ間の差が,より小さくなるように相殺を行うという考え方である。同じグループ内の自販機10同士で釣銭払出しの代替を行う関係にあるといっても,メーカ同士は互いに商品の販売を競い合うライバル同士である。そのため,いずれかのメーカとの間の釣銭の貸借金額が抜けて大きくなることは望ましくなく,全体的にバランスよく貸借金額の相殺を繰り返し,全メーカとの間の貸借金額を可能な限り0に近い値で維持することが望ましい。貸借金額が大きくならなければ,急いで貸借金額の精算を行う必要がなく,振込み手数料等の費用が発生する清算作業を,極力減らすことが可能となる。
【0062】
このような考え方に基づいた釣銭の貸借金額の効率よい相殺を行う場合には,優先メーカ決定部104は,釣銭払出し代替後の自機メーカと相手メーカとの間の釣銭の貸借金額の各メーカ間の差がより小さくなるメーカを,優先メーカとして決定する。
【0063】
2つ目の考え方は,釣銭の貸借関係があるメーカが少なくなるように相殺を行うという考え方である。この考え方では,貸借金額の相殺を繰り返し,貸借関係を可能な限り一部のメーカにまとめ,釣銭の貸借金額がほぼ0であるメーカの数を維持することが望ましい。貸借関係のあるメーカを少なくすることにより,一部のメーカとの間でのみ貸借金額の精算を行えばよく,振込み手数料等の費用が発生する清算作業を,極力減らすことが可能となる。
【0064】
このような考え方に基づいた釣銭の貸借金額の効率よい相殺を行う場合には,優先メーカ決定部104は,釣銭払出し代替後の自機メーカと相手メーカとの間の釣銭の貸し金額が最小となるメーカを,優先メーカとして決定する。
【0065】
優先メーカ決定部104による優先メーカ決定の具体的な手順の例については,後述する。
【0066】
払出可能自販機情報提示部105は,自機で払出しができなかった釣銭の払出しを,優先メーカの自販機10で行うように誘導する情報を,商品購入者に対して提示する。
【0067】
本実施の形態では,商品購入者に対する払出可能自販機の提示を,タッチパネル式液晶画面14への地図表示により行うものとする。払出可能自販機情報提示部105は,自販機位置情報記憶部113に記憶された自販機位置情報を参照し,タッチパネル式液晶画面14に表示された地図上に,払出可能自販機の位置を提示する。このとき,払出可能自販機情報提示部105は,優先メーカの自販機10について他の自販機10と色を変えるなどして強調表示する。
【0068】
また,払出可能自販機情報提示部105は,タッチパネル式液晶画面14に優先メーカの自販機10で釣銭の受取りをした場合に特典を受けられる旨などの情報提示を行い,商品購入者による優先メーカの自販機10での釣銭受取りを誘導する。商品購入者に提供する特典としては,例えば,何らかのポイントサービスのポイント加算を行う,何分の1かの確率で商品がもう1つもらえる抽選が受けられるなど,様々なものが考えられる。
【0069】
釣銭払出依頼部106は,認証情報を発行し,グループ内の他の自販機10に対して,グループ内ネットワーク20を利用して,認証情報,自機の自販機ID,発生した釣銭の金額,優先メーカなどの情報を含む釣銭払出代替の依頼を行う通知を送信する。ここでは,釣銭払出代替の依頼を行う通知を,釣銭払出し代替依頼と呼ぶ。なお,発行された認証情報は,認証用接続装置15を介して,携帯電話で保持可能な情報やICカードに保持された情報などとして,商品購入者に渡される。
【0070】
釣銭払出し代替依頼を受けた自販機10は,その通知の情報を釣銭払出制御情報記憶部114に記憶された釣銭払出制御情報に記録する。釣銭払出制御情報記憶部114は,釣銭払出制御情報を記憶する,コンピュータがアクセス可能な記憶部である。釣銭払出制御情報は,グループ内のいずれかの自販機10で発生した釣銭払出し代替依頼を記録した情報である。
【0071】
図10は,本実施の形態による釣銭払出制御情報記憶部に記憶されたデータの例を示す図である。
【0072】
図10に示す釣銭払出制御データは,釣銭払出制御情報記憶部114に記憶された,釣銭払出制御情報の一例である。図10に示す釣銭払出制御データは,認証ID,依頼元自販機ID,釣銭金額,優先メーカ,期限の情報を持つ。認証IDは,釣銭払出し代替依頼を送信した自販機10で発行された認証情報である。依頼元自販機IDは,釣銭払出しの代替を依頼した自販機10の自販機IDである。釣銭金額は,払出しの代替が依頼された釣銭の金額である。優先メーカは,その釣銭払出し代替における優先メーカである。釣銭払出しの代替が行われた自販機10のメーカが優先メーカであった場合に,その商品購入者には所定の特典が与えられる。期限は,釣銭払出し代替の期限である。釣銭払出し代替依頼がある場合には,その依頼に対応するために,ある程度保持する釣銭をロックしておく必要がある。ただし,いつまでもロックし続けると他の販売に支障をきたすため,他の自販機10での釣銭払出しには,期限が設けられている。
【0073】
図3において,グループ内通信部130は,グループ内ネットワーク20を利用した通信の制御を行う。
【0074】
グループ外通信部140は,外部ネットワーク30を利用した通信の制御を行う。グループ内のメーカを代表する自販機10にのみメーカサーバ40との通信を行わせる場合や,グループを代表する自販機10にのみメーカサーバ40との通信を行わせる場合には,代表する自販機10以外の自販機10に,グループ外通信部140を備えさせなくてもよい。
【0075】
釣銭払出処理部150は,自販機10で釣銭の払出しが行われたときの処理を行う。
【0076】
例えば,釣銭払出処理部150は,自販機10で釣銭の払出しが行われたときには,自機釣銭情報記憶部110に記憶された自機釣銭情報の更新や,グループ内ネットワーク20を利用した他の自販機10への自機釣銭情報の更新の通知などを行う。
【0077】
他の自販機10で発生した釣銭払出しを代替したときには,釣銭払出処理部150は,釣銭貸借情報記憶部112に記憶された釣銭貸借情報の更新を行い,自機と同じメーカの他の自販機10に,グループ内ネットワーク20を利用して,発生した他メーカとの釣銭貸借を通知する。また,他の自販機10で発生した釣銭払出しを代替したときには,釣銭払出し代替の依頼元の自販機10およびそのメーカの他の自販機10に対して,グループ内ネットワーク20を利用して,釣銭貸借が発生した旨の通知を行う。
【0078】
図11は,本実施の形態の釣銭払出管理部による釣銭払出管理処理フローチャートである。
【0079】
商品購入者への釣銭の払出しが発生すると(ステップS10),釣銭払出管理部100の自機払出可否判定部101は,自機釣銭情報記憶部110に記憶された自機釣銭情報を参照し,自機の釣銭の保有状況を確認する(ステップS11)。自機払出可否判定部101は,自機での釣銭の払出しが可能であるかを判定する(ステップS12)。
【0080】
自機での釣銭の払出しが可能であれば(ステップS12のYES),商品購入者に対する自機での釣銭の払出しが行われる(ステップS13)。
【0081】
自機での釣銭の払出しが可能でなければ(ステップS12のNO),払出可能自販機抽出部102は,各自販機釣銭情報記憶部111に記憶された各自販機釣銭情報を参照し,釣銭の払出しが可能な自販機10を抽出する(ステップS14)。
【0082】
優先メーカ決定部104は,優先メーカ決定処理を行う(ステップS15)。優先メーカ決定処理の詳細については,後述する。
【0083】
払出可能自販機情報提示部105は,商品購入者に対して,釣銭の払出しが可能な自販機10の情報を提示する(ステップS16)。このとき,払出可能自販機情報提示部105は,商品購入者に対して,釣銭の払出しを優先メーカの自販機10で行うように誘導する情報の提示を行う。
【0084】
釣銭払出依頼部106は,各自販機10に対して,釣銭の払出しの代替を依頼する(ステップS17)。
【0085】
以下,本実施の形態の優先メーカ決定部104による優先メーカ決定の具体的な手順の説明を行う。
【0086】
まず,釣銭払出し代替後の自機メーカと相手メーカとの間の釣銭の貸借金額の偏りが,できるだけ小さくなるような相殺が行われるように,優先メーカを決定する場合の手順の例を説明する。
【0087】
ここで,優先メーカ決定部104による優先メーカ決定の手順を説明する前に,メーカサーバ40による優先指示メーカを決定する手順を説明する。
【0088】
図12は,本実施の形態のメーカサーバによる優先指示メーカ決定処理フローチャート(1)である。
【0089】
メーカサーバ40は,各グループにおける自メーカの釣銭貸借情報を収集する(ステップS20)。例えば,メーカサーバ40は,外部ネットワーク30を介して,各グループに属する自メーカの親自販機にアクセスし,各グループにおける自メーカの釣銭貸借情報を収集する。釣銭貸借情報を収集するグループの範囲は,存在する全グループの範囲であっても良いし,複数のグループをまとめた特定エリア内に存在するグループの範囲であっても良い。
【0090】
メーカサーバ40は,収集された各グループの釣銭貸借情報を集計する(ステップS21)。これにより,メーカ全体の釣銭貸借情報や,グループよりも広範囲な特定エリアの単位の釣銭貸借情報が得られる。
【0091】
メーカサーバ40は,集計された貸借対象情報を参照し,自メーカからの釣銭の貸しがある他のメーカが存在するかを判定する(ステップS22)。
【0092】
自メーカからの釣銭の貸しがある他のメーカが存在する場合には(ステップS22のYES),メーカサーバ40は,自メーカからの貸し額が最大である他のメーカを優先指示メーカに決定する(ステップS23)。自メーカからの釣銭の貸しがある他のメーカが存在しない場合には(ステップS22のNO),メーカサーバ40は,優先指示メーカをなしとする(ステップS24)。
【0093】
メーカサーバ40は,釣銭貸借情報を収集した各グループに対して,優先指示メーカの指定情報を送信する(ステップS25)。例えば,メーカサーバ40は,外部ネットワーク30を介して,各グループに属する自メーカの親自販機に対して,優先指示メーカの指定情報を送信する。
【0094】
例えば,A社の全グループについての釣銭貸借情報を集計したときに,A社からB社に対して20,000円,A社からC社に対して10,000円の釣銭の貸しがあったものとする。このとき,自メーカと相手メーカとの間の釣銭の貸借金額の各メーカ間の差をできるだけなくすためには,A社の自販機10で発生した釣銭払出しの代替を,できるだけB社の自販機10で行うようにした方がよいことが分かる。A社のメーカサーバ40は,最も貸し額が大きいB社を優先指示メーカとする。A社のメーカサーバ40は,各グループのA社の自販機10に対して,B社を優先指示メーカとした指定情報を送信する。
【0095】
このように,メーカサーバ40は,グループよりもグローバルな範囲での釣銭の貸借関係から,釣銭払出しの代替を優先するメーカを決定し,優先指示メーカとして各自販機10に送っている。
【0096】
このようなメーカサーバ40による優先指示メーカの決定処理を前提に,自販機10の優先メーカ決定部104による優先メーカ決定の手順を説明する。
【0097】
図13は,本実施の形態の優先メーカ決定部による優先メーカ決定処理フローチャート(1)である。
【0098】
優先メーカ決定部104は,抽出された払出可能自販機に優先指示メーカの自販機10があるかを判定する(ステップS30)。
【0099】
払出可能自販機に優先指示メーカの自販機10があれば(ステップS30のYES),優先メーカ決定部104は,優先指示メーカを優先メーカに決定する(ステップS31)。優先指示メーカは,グループよりもグローバルな範囲での貸借関係から決定されたものであるので,優先指示メーカによる判定は,グループ内での貸借関係に基づく判定よりも優先する。
【0100】
払出可能自販機に優先指示メーカの自販機10がなければ(ステップS30のNO),優先メーカ決定部104は,抽出された払出可能自販機に,自機のメーカからの貸しがある他のメーカの自販機10があるかを判定する(ステップS32)。
【0101】
払出可能自販機に自機のメーカからの貸しがある他のメーカの自販機10があれば(ステップS32のYES),優先メーカ決定部104は,自機のメーカからの貸し額が最大である他のメーカを優先メーカに決定する(ステップS33)。
【0102】
例えば,A社からB社に対して300円,A社からC社に対して100円の釣銭の貸しがあったものとする。このとき,メーカ間の釣銭の貸借金額の差をできるだけなくすためには,A社の自販機10で発生した釣銭払出しの代替を,できるだけ貸し額が大きいB社の自販機10で行うようにした方がよいことが分かる。
【0103】
払出可能自販機に自機のメーカからの貸しがある他のメーカの自販機10がなければ(ステップS32のNO),優先メーカ決定部104は,抽出された払出可能自販機に,自機のメーカの他の自販機10があるかを判定する(ステップS34)。
【0104】
払出可能自販機に自機のメーカの他の自販機10があれば(ステップS34のYES),優先メーカ決定部104は,自機のメーカを優先メーカに決定する(ステップS35)。払出可能自販機に貸しがある他のメーカの自販機10がない場合には,新たな貸借が発生しない自機のメーカの他の自販機10を優先する。
【0105】
払出可能自販機に自機のメーカの他の自販機10がなければ(ステップS34のNO),優先メーカ決定部104は,抽出された払出可能自販機に,自機のメーカからの借りがある他のメーカの自販機10があるかを判定する(ステップS36)。
【0106】
払出可能自販機に自機のメーカからの借りがある他のメーカの自販機10があれば(ステップS36のYES),優先メーカ決定部104は,自機のメーカからの借り額が最小である他のメーカを優先メーカに決定する(ステップS37)。
【0107】
例えば,A社がB社から100円,A社がC社から300円の釣銭の借りがあったものとする。このとき,メーカ間の釣銭の貸借金額の差をできるだけなくすためには,A社の自販機10で発生した釣銭払出しの代替を,できるだけ借り額が小さいB社の自販機10で行うようにした方がよいことが分かる。
【0108】
払出可能自販機に自機のメーカからの借りがある他のメーカの自販機10がなければ(ステップS36のNO),優先メーカ決定部104は,優先メーカをなしとする(ステップS38)。
【0109】
次に,釣銭の貸借関係があるメーカが少なくなるような相殺が行われるように,優先メーカを決定する場合の手順の例を説明する。
【0110】
ここで,優先メーカ決定部104による優先メーカ決定の手順を説明する前に,メーカサーバ40による優先指示メーカを決定する手順を説明する。
【0111】
図14は,本実施の形態のメーカサーバによる優先指示メーカ決定処理フローチャート(2)である。
【0112】
メーカサーバ40は,各グループにおける自メーカの釣銭貸借情報を収集する(ステップS40)。メーカサーバ40は,収集された各グループの釣銭貸借情報を集計する(ステップS41)。メーカサーバ40は,集計された貸借対象情報を参照し,自メーカからの釣銭の貸しがある他のメーカが存在するかを判定する(ステップS42)。
【0113】
自メーカからの釣銭の貸しがある他のメーカが存在する場合には(ステップS42のYES),メーカサーバ40は,自メーカからの貸し額が最小である他のメーカを優先指示メーカに決定する(ステップS43)。自メーカからの釣銭の貸しがある他のメーカが存在しない場合には(ステップS42のNO),メーカサーバ40は,優先指示メーカをなしとする(ステップS44)。
【0114】
メーカサーバ40は,釣銭貸借情報を収集した各グループに対して,優先指示メーカの指定情報を送信する(ステップS45)。
【0115】
例えば,A社の全グループについての釣銭貸借情報を集計したときに,A社からB社に対して20,000円,A社からC社に対して10,000円の釣銭の貸しがあったものとする。このとき,自メーカとの釣銭の貸借関係があるメーカをできるだけ少なくするためには,A社の自販機10で発生した釣銭払出しの代替を,できるだけC社の自販機10で行うようにした方がよいことが分かる。A社のメーカサーバ40は,最も貸し額が小さいC社を優先指示メーカとする。A社のメーカサーバ40は,各グループのA社の自販機10に対して,C社を優先指示メーカとした指定情報を送信する。
【0116】
このようなメーカサーバ40による優先指示メーカの決定処理を前提に,自販機10の優先メーカ決定部104による優先メーカ決定の手順を説明する。
【0117】
図15は,本実施の形態の優先メーカ決定部による優先メーカ決定処理フローチャート(2)である。
【0118】
優先メーカ決定部104は,抽出された払出可能自販機に優先指示メーカの自販機10があるかを判定する(ステップS50)。
【0119】
払出可能自販機に優先指示メーカの自販機10があれば(ステップS50のYES),優先メーカ決定部104は,優先指示メーカを優先メーカに決定する(ステップS51)。
【0120】
払出可能自販機に優先指示メーカの自販機10がなければ(ステップS50のNO),優先メーカ決定部104は,抽出された払出可能自販機に,自機のメーカからの貸しがある他のメーカの自販機10があるかを判定する(ステップS52)。
【0121】
払出可能自販機に自機のメーカからの貸しがある他のメーカの自販機10があれば(ステップS52のYES),優先メーカ決定部104は,自機のメーカからの貸し額が最小である他のメーカを優先メーカに決定する(ステップS53)。
【0122】
例えば,A社からB社に対して300円,A社からC社に対して100円の釣銭の貸しがあったものとする。このとき,自メーカとの釣銭の貸借関係があるメーカをできるだけ少なくするためには,A社の自販機10で発生した釣銭払出しの代替を,できるだけ貸し額が小さいC社の自販機10で行うようにした方がよいことが分かる。
【0123】
払出可能自販機に自機のメーカからの貸しがある他のメーカの自販機10がなければ(ステップS52のNO),優先メーカ決定部104は,抽出された払出可能自販機に,自機のメーカの他の自販機10があるかを判定する(ステップS54)。
【0124】
払出可能自販機に自機のメーカの他の自販機10があれば(ステップS54のYES),優先メーカ決定部104は,自機のメーカを優先メーカに決定する(ステップS55)。
【0125】
払出可能自販機に自機のメーカの他の自販機10がなければ(ステップS54のNO),優先メーカ決定部104は,抽出された払出可能自販機に,自機のメーカからの借りがある他のメーカの自販機10があるかを判定する(ステップS56)。
【0126】
払出可能自販機に自機のメーカからの借りがある他のメーカの自販機10があれば(ステップS56のYES),優先メーカ決定部104は,自機のメーカからの借り額が最大である他のメーカを優先メーカに決定する(ステップS57)。
【0127】
例えば,A社がB社から100円,A社がC社から300円の釣銭の借りがあったものとする。このとき,自メーカとの釣銭の貸借関係があるメーカをできるだけ少なくするためには,A社の自販機10で発生した釣銭払出しの代替を,できるだけ借り額が大きいC社の自販機10で行うようにした方がよいことが分かる。
【0128】
払出可能自販機に自機のメーカからの借りがある他のメーカの自販機10がなければ(ステップS56のNO),優先メーカ決定部104は,優先メーカをなしとする(ステップS58)。
【0129】
以下では,自販機10のタッチパネル式液晶画面14に表示される画面の例を説明する。
【0130】
図16は,本実施の形態の自販機による釣銭切れ発生時の商品販売画面の例を示す。
【0131】
図16に示すように,釣銭切れ発生時に,自販機10のタッチパネル式液晶画面14に表示される商品販売画面では,釣銭切れが発生している旨が通知される。また,この画面では,この自販機10の近隣にある別の自販機10で,釣銭の返却が可能である旨が通知されている。
【0132】
図17は,本実施の形態の自販機による払出可能自販機の場所提示画面の例を示す。
【0133】
図17に示すように,自販機10のタッチパネル式液晶画面14に表示される払出可能自販機の場所提示画面では,優先メーカの自販機10での釣銭の払出しを誘導するために,●で表されている自販機10での釣銭の払出しで特典サービスが受けられる旨が通知される。
【0134】
図18は,本実施の形態の優先メーカの自販機による釣銭払出し画面の例を示す。
【0135】
図18に示すように,優先メーカの自販機10のタッチパネル式液晶画面14に表示される釣銭払出画面では,特典サービスが得られた旨が通知される。
【0136】
以上説明した本実施の形態の自販機10により,相殺効率のよい自動販売機の商品販売者間の釣銭貸借が可能となる。
【0137】
以上,本実施の形態について説明したが,本発明はその主旨の範囲において種々の変形が可能であることは当然である。
【0138】
例えば,本実施の形態では,メーカサーバ40からの優先指示メーカの指定がなされているが,メーカサーバ40からの優先指示メーカの指定がなくても良い。メーカサーバ40からの優先指示メーカの指定がなければ,優先メーカ決定の判定は,グループ内でのメーカ同士の貸借関係による判定のみとなる。
【符号の説明】
【0139】
10 自販機
11 CPU
12 メモリ
13 記憶装置
14 タッチパネル式液晶画面
15 認証用接続装置
16 グループ内通信用通信装置
17 外部通信用通信装置
20 グループ内ネットワーク
30 外部ネットワーク
40 メーカサーバ
100 釣銭払出管理部
101 自機払出可否判定部
102 払出可能自販機抽出部
103 払出可能自販機情報記憶部
104 優先メーカ決定部
105 払出可能自販機情報提示部
106 釣銭払出依頼部
110 自機釣銭情報記憶部
111 各自販機釣銭情報記憶部
112 釣銭貸借情報記憶部
113 自販機位置情報記憶部
114 釣銭払出制御情報記憶部
120 自販機メーカ情報記憶部
130 グループ内通信部
140 グループ外通信部
150 釣銭払出処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
商品の販売を行う自動販売機であって,
自機が保有する釣銭の情報を記憶する自機釣銭情報記憶部と,
他の自動販売機が保有する釣銭の情報を記憶する各自販機釣銭情報記憶部と,
自機の商品販売者と他の商品販売者との間の釣銭の貸借状況を示す情報を記憶する釣銭貸借情報記憶部と,
商品購入者に対する釣銭の払出しが発生したときに,前記自機釣銭情報記憶部を参照し,該釣銭の自機での払出しの可否を判定する自機払出可否判定部と,
自機での釣銭の払出しが不可能である場合に,前記各自販機釣銭情報記憶部を参照し,前記発生した釣銭の払出しの代替が可能な他の自動販売機を抽出する払出可能自販機抽出部と,
前記釣銭貸借情報記憶部を参照し,複数の他の商品販売者それぞれとの釣銭の貸借金額を特定し,前記発生した釣銭の払出し代替後の釣銭の貸借金額の各商品販売者間の差がより小さくなる商品販売者を,代替を優先する商品販売者として決定する優先商品販売者決定部と,
前記商品購入者に対して,前記発生した釣銭の払出しを,前記代替を優先する商品販売者の自動販売機で行うように誘導する情報を提示する払出可能自販機情報提示部とを備える
ことを特徴とする自動販売機。
【請求項2】
商品の販売を行う自動販売機であって,
自機が保有する釣銭の情報を記憶する自機釣銭情報記憶部と,
他の自動販売機が保有する釣銭の情報を記憶する各自販機釣銭情報記憶部と,
自機の商品販売者と他の商品販売者との間の釣銭の貸借状況を示す情報を記憶する釣銭貸借情報記憶部と,
商品購入者に対する釣銭の払出しが発生したときに,前記自機釣銭情報記憶部を参照し,該釣銭の自機での払出しの可否を判定する自機払出可否判定部と,
自機での釣銭の払出しが不可能である場合に,前記各自販機釣銭情報記憶部を参照し,前記発生した釣銭の払出しの代替が可能な他の自動販売機を抽出する払出可能自販機抽出部と,
前記釣銭貸借情報記憶部を参照し,複数の他の商品販売者それぞれとの釣銭の貸し金額を特定し,前記発生した釣銭の払出し代替後の自機の商品販売者と他の商品販売者との間の釣銭の貸し金額が最小となる商品販売者を,代替を優先する商品販売者として決定する優先商品販売者決定部と,
前記商品購入者に対して,前記発生した釣銭の払出しを,前記代替を優先する商品販売者の自動販売機で行うように誘導する情報を提示する払出可能自販機情報提示部とを備える
ことを特徴とする自動販売機。
【請求項3】
商品の販売を行う自動販売機のコンピュータが実行する釣銭払出し管理方法であって,
前記コンピュータが,
商品購入者に対する釣銭の払出しが発生したときに,前記コンピュータがアクセス可能な記憶部に記憶された自機が保有する釣銭の情報を参照し,該発生した釣銭の自機での払出しの可否を判定する過程と,
自機での釣銭の払出しが不可能である場合に,前記コンピュータがアクセス可能な記憶部に記憶された他の自動販売機が保有する釣銭の情報を参照し,前記発生した釣銭の払出しの代替が可能な他の自動販売機を抽出する過程と,
前記コンピュータがアクセス可能な記憶部に記憶された自機の商品販売者と他の商品販売者との間の釣銭の貸借状況を示す情報を参照し,複数の他の商品販売者それぞれとの釣銭の貸借金額を特定し,前記発生した釣銭の払出し代替後の自機の商品販売者と他の商品販売者との釣銭の貸借金額の各商品販売者間の差がより小さくなる商品販売者を,代替を優先する商品販売者として決定する過程と,
前記商品購入者に対して,前記発生した釣銭の払出しを,前記代替を優先する商品販売者の自動販売機で行うように誘導する情報を提示する過程とを実行する
ことを特徴とする釣銭払出し管理方法。
【請求項4】
商品の販売を行う自動販売機のコンピュータが実行する釣銭払出し管理方法であって,
前記コンピュータが,
商品購入者に対する釣銭の払出しが発生したときに,前記コンピュータがアクセス可能な記憶部に記憶された自機が保有する釣銭の情報を参照し,該発生した釣銭の自機での払出しの可否を判定する過程と,
自機での釣銭の払出しが不可能である場合に,前記コンピュータがアクセス可能な記憶部に記憶された他の自動販売機が保有する釣銭の情報を参照し,前記発生した釣銭の払出しの代替が可能な他の自動販売機を抽出する過程と,
前記コンピュータがアクセス可能な記憶部に記憶された自機の商品販売者と他の商品販売者との間の釣銭の貸借状況を示す情報を参照し,複数の他の商品販売者それぞれとの釣銭の貸し金額を特定し,前記発生した釣銭の払出し代替後の自機の商品販売者と他の商品販売者との間の釣銭の貸し金額が最小となる商品販売者を,代替を優先する商品販売者として決定する過程と,
前記商品購入者に対して,前記発生した釣銭の払出しを,前記代替を優先する商品販売者の自動販売機で行うように誘導する情報を提示する過程とを実行する
ことを特徴とする釣銭払出し管理方法。
【請求項5】
商品の販売を行う自動販売機のコンピュータに実行させるためのプログラムであって,
前記コンピュータに,
商品購入者に対する釣銭の払出しが発生したときに,前記コンピュータがアクセス可能な記憶部に記憶された自機が保有する釣銭の情報を参照し,該発生した釣銭の自機での払出しの可否を判定する手順と,
自機での釣銭の払出しが不可能である場合に,前記コンピュータがアクセス可能な記憶部に記憶された他の自動販売機が保有する釣銭の情報を参照し,前記発生した釣銭の払出しの代替が可能な他の自動販売機を抽出する手順と,
前記コンピュータがアクセス可能な記憶部に記憶された自機の商品販売者と他の商品販売者との間の釣銭の貸借状況を示す情報を参照し,複数の他の商品販売者それぞれとの釣銭の貸借金額を特定し,前記発生した釣銭の払出し代替後の自機の商品販売者と他の商品販売者との間の釣銭の貸借金額の各商品販売者間の差がより小さくなる商品販売者を,代替を優先する商品販売者として決定する手順と,
前記商品購入者に対して,前記発生した釣銭の払出しを,前記代替を優先する商品販売者の自動販売機で行うように誘導する情報を提示する手順とを
実行させるための釣銭払出し管理プログラム。
【請求項6】
商品の販売を行う自動販売機のコンピュータに実行させるためのプログラムであって,
前記コンピュータに,
商品購入者に対する釣銭の払出しが発生したときに,前記コンピュータがアクセス可能な記憶部に記憶された自機が保有する釣銭の情報を参照し,該発生した釣銭の自機での払出しの可否を判定する手順と,
自機での釣銭の払出しが不可能である場合に,前記コンピュータがアクセス可能な記憶部に記憶された他の自動販売機が保有する釣銭の情報を参照し,前記発生した釣銭の払出しの代替が可能な他の自動販売機を抽出する手順と,
前記コンピュータがアクセス可能な記憶部に記憶された自機の商品販売者と他の商品販売者との間の釣銭の貸借状況を示す情報を参照し,複数の他の商品販売者それぞれとの釣銭の貸し金額を特定し,前記発生した釣銭の払出し代替後の自機の商品販売者と他の商品販売者との間の釣銭の貸し金額が最小となる商品販売者を,代替を優先する商品販売者として決定する手順と,
前記商品購入者に対して,前記発生した釣銭の払出しを,前記代替を優先する商品販売者の自動販売機で行うように誘導する情報を提示する手順とを
実行させるための釣銭払出し管理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−210066(P2011−210066A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−78102(P2010−78102)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】