説明

自動車のボデー

【課題】コストと重量を増大させることなく、高い剛性と強度を保つことのできる自動車のボデーを提案する。
【解決手段】ボデー後側部の外板を構成するサイドアウタパネル7と、そのサイドアウタパネル7よりも車内の側に位置するルーフサイドインナパネル16との間の空間S内に位置するサイドリインフォースメント13の部分27を、底壁28と前後の側壁30,34と前後のフランジ32,36とによって構成し、その剛性と強度を高める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルーフパネルと、該ルーフパネルの車幅方向端部に固着されていて、ボデー後側部の外板を構成するサイドアウタパネルと、前記ルーフパネルの下方に位置し、かつ車幅方向に延びているルーフリインフォースメントと、前記サイドアウタパネルよりも車内側に位置し、かつ前記ルーフリインフォースメントの車幅方向端部に固着されたサイドリインフォースメントと、該サイドリインフォースメントよりも車内側に位置し、該サイドリインフォースメント及び前記サイドアウタパネルに固着されたルーフサイドインナパネルとを有する自動車のボデーに関する。
【背景技術】
【0002】
ルーフパネルの車幅方向各端部に固着されたサイドアウタパネルなどの各種パネルを備えた自動車のボデーは従来より周知である(例えば特許文献1の図1を参照)。冒頭に記載した形式の自動車のボデーは、各種パネルのほかにルーフリインフォースメント及びサイドリインフォースメントの各補強部材を有しているので、ボデーの剛性と強度を高めることができる。
【0003】
ところが、従来のこの種のボデーにおいては、サイドアウタパネルとルーフサイドインナパネルとの間に区画された空間内に位置するサイドリインフォースメントの部分がルーフサイドインナパネルの面に密着した平坦な板材により構成されていたため、そのサイドリインフォースメントの剛性と強度が低下するおそれがあった。このため、従来はサイドリインフォースメントの板厚を厚くして、その剛性と強度を高めていたが、このようにすれば、ボデーの重量増大とそのコストの上昇を免れない。
【0004】
【特許文献1】特開2006−27485号公報の図1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、簡単な構成によって上述した従来の欠点を除去することのできる冒頭に記載した形式の自動車のボデーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するため、ルーフパネルと、該ルーフパネルの車幅方向端部に固着されていて、ボデー後側部の外板を構成するサイドアウタパネルと、前記ルーフパネルの下方に位置し、かつ車幅方向に延びているルーフリインフォースメントと、前記サイドアウタパネルよりも車内側に位置し、かつ前記ルーフリインフォースメントの車幅方向端部に固着されたサイドリインフォースメントと、該サイドリインフォースメントよりも車内側に位置し、該サイドリインフォースメント及び前記サイドアウタパネルに固着されたルーフサイドインナパネルとを有する自動車のボデーにおいて、前記サイドアウタパネルとルーフサイドインナパネルとの間に区画された空間内に位置する前記サイドリインフォースメントの部分が、前記ルーフサイドインナパネルに密着して該ルーフサイドインナパネルに固着された底壁と、該底壁の前端から上方に立ち上がった前側壁と、該前側壁の上端から前方に突出した前フランジと、前記底壁の後端から上方に立ち上がった後側壁と、該後側壁の上端から後方に突出した後フランジとから構成されていることを特徴とする自動車のボデーを提案する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、サイドアウタパネルとルーフサイドインナパネルとの間の空間内に位置するサイドリインフォースメントの部分が、底壁と、前後の側壁と、前後のフランジにより形成された逆ハット状の横断面形状を有しているので、サイドリインフォースメントの剛性と強度を支障なく高めることができる。このためサイドリインフォースメントの板厚を特に厚くしなくともボデーの剛性と強度が低下する不具合を阻止でき、ボデーの重量とコストを低く抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態例を説明し、併せて従来の欠点を図面に即してより具体的に明らかにする。
【0009】
図1は自動車の一部を示す側面図である。この図と他の図における矢印Frは自動車の前進方向を示し、矢印Wは車幅方向を示している。本明細書及び特許請求の範囲における「前」又は「後」なる文言は、この前進方向Frを基準とした前後を意味する。
【0010】
図1に示した自動車のボデー1の側部に形成されたドア開口には、サイドドア2,3が開閉自在に配置され、該ボデー1の後部開口には、リヤドア5が開閉自在に配置されている。
【0011】
ボデー1は鋼板製の各種のパネルから構成され、該ボデー1の上部はルーフパネル6により構成され、該ボデー1の後側部、すなわちボデー1の後部の側部は、サイドアウタパネル7によって構成されている。図1においては、サイドアウタパネル7を判りやすくするため、そのサイドアウタパネル7に斜線を付して示してある。サイドアウタパネル7に隣接して、ボデー1に搭載されたランプ8が位置している。
【0012】
ボデー1は、自動車の前進方向Frに見て左右対称に構成されているので、本明細書においては、一方の側のボデー構造だけを説明する。
【0013】
図2は、図1のII−II線拡大断面図であり、図3は図1に示したサイドアウタパネル7を取り外した状態のボデー1を車外側から見た斜視図であって、サイドアウタパネル7よりも車内Iの側のボデー構造を示す斜視図である。また、図4は、図3に示したボデーの各部材を分解して示す斜視図である。図2における×印は、ボデー1を構成する各部材同士がスポット溶接などによって互いに固着されていることを示している。図3及び図4には、サイドアウタパネル7のほかに、ルーフパネル6も図示されていない。
【0014】
図2に示すように、ボデー1の後側部の外板を構成する前述のサイドアウタパネル7は、ルーフパネル6の車幅方向端部9にスポット溶接によって固着されている。また、図2乃至図4に示すように、ボデー1は、ルーフパネル6の下方に位置し、かつ車幅方向Wに延びているルーフリインフォースメント10を有していて、このルーフリインフォースメント10は、図2のV−V線拡大断面図である図5にも示すように、アッパパネル11とロアパネル12により構成され、これらのパネル11,12の合せフランジ部がスポット溶接によって一体に固着されている。
【0015】
さらに、図2乃至図4に示すように、ボデー1は、サイドアウタパネル7よりも車内Iの側に位置するサイドリインフォースメント13を有し、該サイドリインフォースメント13は、図2に示すようにその車幅方向内側端部14が、前述のルーフリインフォースメント10の車幅方向端部15に図示していないボルトとナットとによって固着されている。
【0016】
また、図2乃至図4に示す如く、ボデー1は、サイドリインフォースメント13よりも車内Iの側に位置するルーフサイドインナパネル16を有し、このルーフサイドインナパネル16は、図2に示すように、サイドリインフォースメント13の車幅方向外端部17及びサイドアウタパネル7にスポット溶接によって一体に固着されている。サイドアウタパネル7とこれに固着されたルーフサイドインナパネル16には、図2乃至図4に示すようにそれぞれ窓孔18,19が形成され、これらの窓孔18,19に、図1及び図2に示した窓ガラス20が固定配置されている。
【0017】
また、図3及び図4に示すように、ルーフサイドインナパネル16の前端部21には、ルーフサイドレールのインナパネル22がスポット溶接によって固着され、しかもこのルーフサイドインナパネル16の後端部23には、クォータピラー24がスポット溶接によって固着されている。さらに、このルーフサイドインナパネル16には、リヤピラーパネル25がスポット溶接によって固着され、該リヤピラーパネル25の下部は、ホイルハウス26にスポット溶接によって固着されている。
【0018】
ここで、図2に示したように、サイドアウタパネル7とルーフサイドインナパネル16との間に区画された空間S内に位置するサイドリインフォースメント13の部分27は、特に図6に明示するように、ルーフサイドインナパネル16に密着した底壁28と、その底壁28の前端29から上方に立ち上がった前側壁30と、その前側壁30の上端31から前方に突出した前フランジ32と、底壁28の後端33から上方に立ち上がった後側壁34と、該後側壁34の上端35から後方に突出した後フランジ36とから構成されている。サイドリインフォースメント13の部分27の横断面が、上述した各壁部28,30,32,34,36によって逆ハット状に形成されているのである。その際、底壁28は、図2に符号37で示した部分で、スポット溶接によってルーフサイドインナパネル16に固着されている。
【0019】
上述のように、サイドアウタパネル7とルーフサイドインナパネル16との間の空間S内に位置するサイドリインフォースメント13の部分27が、逆ハット状に形成されているので、その剛性と強度が高められる。従ってこのルーフサイドインナパネル16の板厚を特に厚くしなくとも、その剛性と強度を高く保つことができる。このため、ボデーの重量の増大とそのコストの上昇を抑えることができる。
【0020】
図7に示すように、従来の自動車のボデー1Aにおいては、サイドアウタパネル7Aとルーフサイドインナパネル16Aとの間の空間SAに位置するサイドリインフォースメント13Aの部分27Aは、ルーフサイドインナパネル16Aの面に密着した平坦な板材により構成されていたため、サイドリインフォースメント13Aの板厚を大きくしなければならず、これによってボデー1Aの重量とコストが上昇する欠点を免れなかった。
【0021】
なお、本例の自動車においては、図2及び図5に示すように、ルーフリインフォースメント10の端部15が組み付いたサイドリインフォースメント13の部分38も、底壁28と、前後の側壁30,34と、前後のフランジ32,36とによって逆ハット状の横断面形状になっており、この部分にルーフリインフォースメント10の端部15が重なった状態で組み付けられ、スポット溶接によって両者が固着されている。これにより、サイドリインフォースメント13の全体の剛性と強度がより一層高められている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】自動車の一部を示す側面図である。
【図2】図1のII−II線拡大断面図である。
【図3】サイドアウタパネルを取り外した状態のボデーを車外側から見た斜視図である。
【図4】図3に示したボデーの各部材を分解して示す斜視図である。
【図5】図2のV−V線拡大断面図である。
【図6】図2のVI−VI線拡大断面図である。
【図7】従来の自動車のボデーを示す、図6と同様な断面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 ボデー
6 ルーフパネル
7 サイドアウタパネル
9 端部
10 ルーフリインフォースメント
13 サイドリインフォースメント
15 端部
16 ルーフサイドインナパネル
27 部分
28 底壁
29 前端
30 前側壁
31 上端
32 前フランジ
33 後端
34 後側壁
35 上端
36 後フランジ
S 空間
W 車幅方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルーフパネルと、該ルーフパネルの車幅方向端部に固着されていて、ボデー後側部の外板を構成するサイドアウタパネルと、前記ルーフパネルの下方に位置し、かつ車幅方向に延びているルーフリインフォースメントと、前記サイドアウタパネルよりも車内側に位置し、かつ前記ルーフリインフォースメントの車幅方向端部に固着されたサイドリインフォースメントと、該サイドリインフォースメントよりも車内側に位置し、該サイドリインフォースメント及び前記サイドアウタパネルに固着されたルーフサイドインナパネルとを有する自動車のボデーにおいて、
前記サイドアウタパネルとルーフサイドインナパネルとの間に区画された空間内に位置する前記サイドリインフォースメントの部分が、前記ルーフサイドインナパネルに密着して該ルーフサイドインナパネルに固着された底壁と、該底壁の前端から上方に立ち上がった前側壁と、該前側壁の上端から前方に突出した前フランジと、前記底壁の後端から上方に立ち上がった後側壁と、該後側壁の上端から後方に突出した後フランジとから構成されていることを特徴とする自動車のボデー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−12856(P2010−12856A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−173187(P2008−173187)
【出願日】平成20年7月2日(2008.7.2)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】