説明

自動車のルーフ構造

【課題】 本発明は、車体強度を保持しながら、ルーフサイド部におけるサイドボデーアウターパネルの歩留まり向上、成形性向上、軽量化およびコスト低減を図ることが可能な自動車のルーフ構造を提供することにある。
【解決手段】 本発明は、自動車1の車体ルーフ2を中央の主ルーフパネル3と左右両側の副ルーフパネルとに分割し、副ルーフパネルをサイドボデーアウターパネル4にて構成したルーフ構造において、主ルーフパネル3の左右両側端部に溝部3aを形成する一方、サイドボデーアウターパネル4の接合フランジ部4a,4a´を溝部3aより車幅方向内側部分にてカットし、車体ルーフ2のレールサイド部Dの車体前後方向の一定範囲Cにわたりレールサイドリンフォース7を設けると共に、レールサイド部Dの一定範囲Cより車体後方側にサイドボデーアウターエクステンション8を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のルーフ構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のルーフ構造の中には、図5および図6に示す如く、車体ルーフが中央の主ルーフパネル51と左右両側の副ルーフパネルとに分割され、この副ルーフパネルがサイドボデーアウターパネル52にて構成されているものがある(例えば、特許文献1参照)。そして、主ルーフパネル51の左右両側端部には、車体前後方向へ延びる溝部51aがそれぞれ形成されている。
このような自動車では、車体強度上、レールサイド部Dの閉断面Xの大きさが非常に重要であり、一般的には大きいほど良いとされている。このレールサイド部Dの閉断面Xは、サイドボデーアウターパネル52とレールサイドインナーパネル53とによって構成されている。
【特許文献1】実開昭57−17880号公報
【0003】
ところで、自動車のルーフ構造においては、デザイン上、主ルーフパネル51の溝部51aが車体外側に位置するほど、十分な大きさの閉断面Xを取ることができなくなっていく。そこで、従来のルーフ構造では、図7に示す如く、主ルーフパネル51の溝部51aとレールサイドインナーパネル53の接合フランジ部53aの配設位置をずらすことによって、閉断面Xを大きく取ることができる構造としている。また、レールサイド部Dには、車体強度上、当該レールサイド部Dの前端部付近からセンターピラー54の車体後方側位置までの一定範囲Cにわたり、サイドボデーアウターパネル52よりも遥かに板厚の厚いレールサイドリンフォース55が通常追加して設けられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来のルーフ構造では、車体強度上、閉断面Xがレールサイド部Dの全体を通して構成されることを考えた場合、一定範囲C内に板厚の厚いレールサイドリンフォース55が設けられているので、レールサイドリンフォース55とレールサイドインナーパネル53とによって閉断面Xを構成することが可能となり、図7に示す如く、サイドボデーアウターパネル52の接合フランジ部52aが無駄であった。しかも、サイドボデーアウターパネル52の接合フランジ部52aとレールサイドリンフォース55との間に形成される隙間Sの部分は、その構造上の理由から、電着塗装工程において溶接作業用孔56より侵入する電着塗料のつきまわり性が良くないおそれがあった。
【0005】
また、従来のルーフ構造では、図5および図8に示す如く、一定範囲Cより車体後方側にレールサイドリンフォース55が設けられておらず、閉断面Xがサイドボデーアウターパネル52とレールサイドインナーパネル53とによってのみ構成されているので、接合フランジ部52a´を設けることは必須である。そこで、サイドボデーアウターパネル52から車体後方側の接合フランジ部52a´を残し、車体前方側の接合フランジ部52aのみを切り取ったとすると、重量面では有利になるが、サイドボデーアウターパネル52の歩留まり上および成形性上の点で不利であった。
一方、サイドボデーアウターパネル52から両方の接合フランジ部52a,52a´を切り取り、かつレールサイドリンフォース55を一定範囲Cの車体後方まで延長すると、車体強度上、またはサイドボデーアウターパネル52の歩留まり上および成形性上の点で有利になるが、重量面では不利であった。
【0006】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、車体強度を保持しながら、ルーフサイド部におけるサイドボデーアウターパネルの歩留まり向上、成形性向上、軽量化およびコスト低減を図ることが可能な自動車のルーフ構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記従来技術の有する課題を解決するために、本発明は、自動車のルーフを中央の主ルーフパネルと左右両側の副ルーフパネルとに分割し、該副ルーフパネルをサイドボデーアウターパネルにて構成したルーフ構造において、前記主ルーフパネルの左右両側端部に溝部を形成する一方、前記サイドボデーアウターパネルの接合フランジ部を前記溝部より車幅方向内側部分にてカットし、前記ルーフのレールサイド部の車体前後方向の一定範囲にわたりレールサイドリンフォースを設けると共に、前記レールサイド部の一定範囲より車体後方側にサイドボデーアウターエクステンションを設けている。
【0008】
また、本発明において、前記レールサイド部の一定範囲では、前記レールサイドリンフォースと、レールサイドインナーパネルとによって閉断面が構成され、前記レールサイド部の一定範囲より車体後方側では、前記サイドボデーアウターパネルと、サイドボデーアウターエクステンションと、前記レールサイドインナーパネルとによって閉断面が構成されており、これら2つの閉断面は、車体前後方向に沿って連続して設けられている。
【0009】
そして、本発明において、前記レールサイドリンフォースの中間部は、前記主ルーフパネルと前記サイドボデーアウターパネルとの接合面に接合されている。
【0010】
さらに、本発明において、前記サイドボデーアウターエクステンションは、前記サイドボデーアウターパネルと同程度の板厚で形成され、前記溝部にて前記主ルーフパネルと前記サイドボデーアウターパネルとの接合面に接合されていると共に、前記溝部より車幅方向内側に配設されている。
【発明の効果】
【0011】
上述の如く、本発明に係る自動車のルーフ構造は、自動車のルーフを中央の主ルーフパネルと左右両側の副ルーフパネルとに分割し、該副ルーフパネルをサイドボデーアウターパネルにて構成したものであって、前記主ルーフパネルの左右両側端部に溝部を形成する一方、前記サイドボデーアウターパネルの接合フランジ部を前記溝部より車幅方向内側部分にてカットし、前記ルーフのレールサイド部の車体前後方向の一定範囲にわたりレールサイドリンフォースを設けると共に、前記レールサイド部の一定範囲より車体後方側にサイドボデーアウターエクステンションを設けているので、車体強度を保持しながら、ルーフサイド部におけるサイドボデーアウターパネルの歩留まりおよび成形性を向上させ、軽量化およびコスト低減を図ることができる。しかも、本発明のルーフ構造では、サイドボデーアウターパネルの接合フランジ部が溝部より車幅方向内側部分でカットされて設けられていないので、電着塗装工程における電着塗料のつきまわり性を向上させることができる。
【0012】
また、本発明において、前記レールサイド部の一定範囲では、前記レールサイドリンフォースと、レールサイドインナーパネルとによって閉断面が構成され、前記レールサイド部の一定範囲より車体後方側では、前記サイドボデーアウターパネルと、サイドボデーアウターエクステンションと、前記レールサイドインナーパネルとによって閉断面が構成されており、これら2つの閉断面は、車体前後方向に沿って連続して設けられているので、当該閉断面をレールサイド部の全体に通すことが可能となり、十分な車体強度を得ることができる。それに加えて、当該レールサイド部の一定範囲では、板厚の厚いレールサイドリンフォースとレールサイドインナーパネルとによって、閉断面を極限まで大きく構成することが可能となるので、車体強度をより一層向上させることができる。
【0013】
また、本発明において、前記レールサイドリンフォースの中間部は、前記主ルーフパネルと前記サイドボデーアウターパネルとの接合面に接合されているので、板厚の厚いレールサイドリンフォースを溶接箇所として加え、かつ閉断面を拡大することによって、強度向上を図ることができる。
【0014】
また、本発明において、前記サイドボデーアウターエクステンションは、前記サイドボデーアウターパネルと同程度の板厚で形成され、前記溝部にて前記主ルーフパネルと前記サイドボデーアウターパネルとの接合面に接合されていると共に、前記溝部より車幅方向内側に配設されているので、閉断面を効果的に構成することが可能となり、十分な強度を得ることができると共に、サイドボデーアウターエクステンションを最小限度の板厚増大で済ませることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
【0016】
図1〜図4は本発明に係る自動車のルーフ構造の実施の形態を示している。本実施形態のルーフ構造が適用される自動車1は、図1〜図4に示す如く、車体ルーフ2が中央の主ルーフパネル3と左右両側の副ルーフパネルとに分割されており、この副ルーフパネルはサイドボデーアウターパネル4によって構成されている。しかも、これら主ルーフパネル3およびサイドボデーアウターパネル4は、両パネルの端部をスポット溶接で互いに接合することによって車体ルーフ2のレールサイド部Dの一部を構成している。
主ルーフパネル3の左右両側端部には、車体前後方向に沿って延びる溝部3aが形成されている。この溝部3aは、雨水等を車外に導くために設けられたものであり、主ルーフパネル3の端部を折り曲げることにより断面略U字状に形成されている。また、溝部3aには、雨水等の侵入を防止すると共に、スポット溶接ガン5によるスポット溶接痕Wを隠すためのルーフモール6が嵌着されている(図4参照)。
【0017】
本実施形態のサイドボデーアウターパネル4は、図2中において斜線部で示される上部接合フランジ部4a,4a´が溝部3aより車幅方向内側部分にてカットされ、レールサイド部Dの車体前後方向に沿って設けられておらず、上端部が主ルーフパネル3の溝部3aに接合されるようになっている。また、サイドボデーアウターパネル4の下端には、図3および図4に示す如く、下部接合フランジ部4bが形成されている。
【0018】
一方、本実施形態のレールサイド部Dには、図1〜図3に示す如く、上下部接合フランジ部7a,7bを有するレールサイドリンフォース7が車体前後方向の一定範囲Cにわたり設けられている。また、レールサイド部Dの一定範囲Cより車体後方側には、図1、図2および図4に示す如く、サイドボデーアウターパネル4の接合フランジ部4a´をカットして切り取った代わりに、上下部接合フランジ部8a,8bを有するサイドボデーアウターエクステンション8が追加して設けられている。このサイドボデーアウターエクステンション8は、サイドボデーアウターパネル4と同程度の板厚で形成されている。さらに、レールサイド部Dには、図3および図4に示す如く、上下部接合フランジ部9a,9bを有するレールサイドインナーパネル9が車体前後方向の全範囲にわたり設けられており、当該レールサイドインナーパネル9の上下中間部には、一対のスポット溶接ガン5の片方を挿通させる溶接作業用孔10が主ルーフパネル3の溝部3aのスポット溶接箇所Wと対向する位置に設けられている。
ここで、レールサイド部Dの一定範囲Cとは、当該レールサイド部Dの前端部付近からセンターピラー11の車体後方側位置までの範囲をいう。
【0019】
レールサイド部Dの一定範囲Cでは、図3に示す如く、レールサイドリンフォース7とレールサイドインナーパネル9とによって閉断面X1が構成されている。すなわち、閉断面X1は、レールサイドリンフォース7およびレールサイドインナーパネル9の上部接合フランジ部7a,9aを重ね合わせてスポット溶接で接合し、サイドボデーアウターパネル4の下部接合フランジ部4bとレールサイドリンフォース7およびレールサイドインナーパネル9の下部接合フランジ部7b,9bとを重ね合わせてスポット溶接で接合すると共に、主ルーフパネル3の溝部3aとサイドボデーアウターパネル4の上端部との接合面にレールサイドリンフォース7の中間部7cを重ね合わせてスポット溶接で接合して組付けることによって、得られることになる。しかも、この閉断面X1においては、レールサイドリンフォース7の上部接合フランジ部7aの付近が上方に開放されていることから、電着塗装工程における電着塗料のつきまわり性が良くなり、十分な電着塗装が得られる構造になっている。
【0020】
また、レールサイド部Dの一定範囲Cより車体後方側では、図4に示す如く、サイドボデーアウターパネル4と、サイドボデーアウターエクステンション8と、レールサイドインナーパネル9とによって閉断面X2が構成されている。すなわち、閉断面X2は、サイドボデーアウターエクステンション8およびレールサイドインナーパネル9の上部接合フランジ部8a,9aを重ね合わせてスポット溶接で接合し、サイドボデーアウターパネル4およびレールサイドインナーパネル9の下部接合フランジ部4b,9bを重ね合わせてスポット溶接で接合すると共に、溝部3aにて主ルーフパネル3とサイドボデーアウターパネル4との接合面にサイドボデーアウターエクステンション8の下部接合フランジ部8bを重ね合わせてスポット溶接で接合して組付けることによって、得られることになる。このため、サイドボデーアウターエクステンション8は、主ルーフパネル3の溝部3aより車幅方向内側に配設されている。
【0021】
このようにして得られた2つの閉断面X1と閉断面X2とは、レールサイド部Dの車体前後方向に沿って連続して設けられている。しかも、これら閉断面X1と閉断面X2とは、レールサイド部Dの一定範囲Cの内外位置によって、組み合わせが異なる主ルーフパネル3、サイドボデーアウターパネル4、レールサイドリンフォース7、サイドボデーアウターエクステンション8およびレールサイドインナーパネル9から構成されている。
したがって、本発明の実施の形態に係るルーフ構造によれば、サイドボデーアウターパネル4の無駄な部分を削除し、成形性向上および重量低減化を図りながら、十分な強度を持つ閉断面X1および閉断面X2を備えたレールサイド部Dを確保することができる。
【0022】
以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は既述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態に係るルーフ構造が適用された自動車の全体を示す側面図である。
【図2】図1における自動車のルーフサイド部を示す概念図である。
【図3】図1におけるA−A線断面図である。
【図4】図1におけるB−B線断面図である。
【図5】従来の自動車のルーフサイド部を示す概念図である。
【図6】図5におけるE−E線断面図である。
【図7】他の従来の自動車のルーフサイド部を示すものであって、図5におけるE−E線断面図である。
【図8】図5におけるF−F線断面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 自動車
2 車体ルーフ
3 主ルーフパネル
3a 溝部
4 サイドボデーアウターパネル
4b 下部接合フランジ部
7 レールサイドリンフォース
7a,7b 上下部接合フランジ部
7c 中間部
8 サイドボデーアウターエクステンション
8a,8b 上下部接合フランジ部
9 レールサイドインナーパネル
9a,9b 上下部接合フランジ部
11 センターピラー
C レールサイド部の一定範囲
D レールサイド部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のルーフを中央の主ルーフパネルと左右両側の副ルーフパネルとに分割し、該副ルーフパネルをサイドボデーアウターパネルにて構成したルーフ構造において、前記主ルーフパネルの左右両側端部に溝部を形成する一方、前記サイドボデーアウターパネルの接合フランジ部を前記溝部より車幅方向内側部分にてカットし、前記ルーフのレールサイド部の車体前後方向の一定範囲にわたりレールサイドリンフォースを設けると共に、前記レールサイド部の一定範囲より車体後方側にサイドボデーアウターエクステンションを設けたことを特徴とする自動車のルーフ構造。
【請求項2】
前記レールサイド部の一定範囲では、前記レールサイドリンフォースと、レールサイドインナーパネルとによって閉断面が構成され、前記レールサイド部の一定範囲より車体後方側では、前記サイドボデーアウターパネルと、サイドボデーアウターエクステンションと、前記レールサイドインナーパネルとによって閉断面が構成されており、これら2つの閉断面は、車体前後方向に沿って連続して設けられていることを特徴とする請求項1に記載の自動車のルーフ構造。
【請求項3】
前記レールサイドリンフォースの中間部は、前記主ルーフパネルと前記サイドボデーアウターパネルとの接合面に接合されていることを特徴とする請求項1または2に記載の自動車のルーフ構造。
【請求項4】
前記サイドボデーアウターエクステンションは、前記サイドボデーアウターパネルと同程度の板厚で形成され、前記溝部にて前記主ルーフパネルと前記サイドボデーアウターパネルとの接合面に接合されていると共に、前記溝部より車幅方向内側に配設されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の自動車のルーフ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−76476(P2006−76476A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−263713(P2004−263713)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】