説明

自動車の後部車体構造

【課題】車体重量及びコストの上昇を招くことなく、接続部の剛性を高めることができる自動車の後部車体構造を提供する。
【解決手段】リヤピラー6の後壁部6eの下端部には、車両後方に張り出す凸ビード6iが形成され、エクステンションパネル7の上端部には、上記凸ビード6iに連続して車両後方に張り出す凸部7iが形成され、該凸部7iは、凸ビード6iとの接続部からエクステンションパネル7の凹部7dの稜線Lまで延びるように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックドア開口の側縁部を形成するリヤピラーの後壁部と、バックドア開口の下縁コーナー部を形成するエクステンションパネルとを接続するようにした自動車の後部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のバックドア開口の側辺部を形成するリヤピラーの後壁部と、下辺コーナー部を形成するエクステンションパネルとの接続部の剛性を高める観点から、例えば、特許文献1には、上側パネル(後壁部)3と下側パネル(エクステンションパネル)4とを両者の間に凸状の閉断面部Xを介在させて接続した構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−90805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記従来構造では、後壁部がサイドアウタパネルとは別部材であることから、該後壁部に剛性を高めるための複雑な閉断面部を形成することは可能である。しかしながら、後壁部がサイドアウタパネルに一体に形成された構造の場合には、後壁部に従来構造のような複雑な閉断面部を形成することができない。このため後壁部とエクステンションパネルとの接続部の剛性が得られ難く、場合によっては接続部に亀裂等が発生する懸念がある。
【0005】
また前記後壁部をサイドアウタパネルに一体形成する場合には、後壁部がRの小さい深絞り成形となることから、亀裂や割れが発生する懸念がある。
【0006】
さらに前記後壁部に、例えばバックドア閉時の荷重を受ける凸状のストッパゴム当接座面を形成する場合には、該荷重に対する剛性が前記同様に確保し難い。
【0007】
このような後壁部をサイドアウタパネルに一体形成する場合の接続部の剛性を高めるには、接続部の板厚を大きくするか、新たに補強部材を追加することが考えられるが、このようにすると車体重量及びコストが上昇するという問題が生じる。
【0008】
本発明は、前記従来の状況に鑑みてなされたもので、車体重量及びコストの上昇を招くことなく、接続部の剛性を高めることができる自動車の後部車体構造を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、車両後端に形成されたバックドア開口の側縁部を形成するリヤピラーの後壁部と、前記バックドア開口の下縁コーナー部を形成し、かつ車両前方に張り出すリヤコンビネーションランプ取付け凹部が形成されたエクステンションパネルとを接続するようにした自動車の後部車体構造であって、前記後壁部の下端部には、車両後方に張り出す凸ビードが形成され、前記エクステンションパネルの上端部には、前記凸ビードに連続して車両後方に張り出す凸部が形成され、該凸部は、前記凸ビードとの接続部から前記エクステンションパネルの凹部の稜線まで延びるように形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る後部車体構造によれば、リヤピラーの後壁部に凸ビードを形成し、エクステンションパネルに該凸ビードに連続する凸部を形成し、該凸部を前記凸ビードとの接続部からエクステンションパネルの凹部の稜線まで延びるように形成した。
【0011】
このように構成したので、後壁部とエクステンションパネルとの接続部に両パネルに連続する凸条部が形成されることとなり、従来構造のような複雑な閉断面構造を採用することなく、接続部の剛性を高めることができ、亀裂等の発生を防止できる。
【0012】
また前記後壁部に凸ビードを形成したので、後壁部を深絞り成形する際の曲率半径Rを大きくすることができ、リヤピラーをプレス成形する際の成形性を向上でき、亀裂や割れを防止できる。
【0013】
前記後壁部とエクステンションパネルとの接続部の高い剛性を有する部分に、例えばストッパゴム当接座面を設定することによってバックドア閉時の荷重に対する剛性を確保することができる。
【0014】
本発明は、前記後壁部とエクステンションパネルとの接続部に連続した凸ビード及び凸部を形成するだけの構造であるので、前述の板厚を大きくしたり、補強部材を追加したりする必要はなく、車体重量及びコストの上昇を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例1による自動車の後部車体の背面図である。
【図2】前記後部車体のサイドアウタパネルとエクステンションパネルとの接続部の背面図である。
【図3】前記接続部の断面図(図2のIII-III線断面図)である。
【図4】前記接続部の断面図(図2のIV-IV線断面図)である。
【図5】前記エクステンションパネルの断面図(図2のV-V線断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0017】
図1ないし図5は、本発明の実施例1による自動車の後部車体構造を説明するための図である。
【0018】
図において、1は自動車の後部車体を示している。この後部車体1の後端面には、これの全域に広がる大きさのバックドア開口1aが形成されており、該バックドア開口1aには、跳ね上げ式のバックドア2が配設されている。
【0019】
前記後部車体1は、前記バックドア開口1aの下辺部を形成する車幅方向に延びるロアバックパネル5と、前記バックドア開口1aの車幅方向左,右側辺部を形成する上下方向に延びるリヤピラー6,6と、前記バックドア開口1aの左,右下辺コーナー部を形成するエクステンションパネル7,7と、前記バックドア開口1aの上辺部を形成する車幅方向に延びるアッパバックパネル8とを備えている。このアッパバックパネル8には、前記バックドア2を回動可能に支持するヒンジ部材(不図示)が取り付けられている。
【0020】
前記ロアバックパネル5は、断面ハット形状のロアバックアウタ5aとロアバックインナ5bとの上フランジ部5c同士及び下フランジ部5d同士を結合することにより、車幅方向に延びる筒状の閉断面部aを形成した構造を有する。このロアバックパネル5の上フランジ部5cによりバックドア開口1aが形成されている。
【0021】
前記左,右のエクステンションパネル7は、前記リヤピラー6とロアバックパネル5とに結合されており、エクステンションアウタパネル7aとエクステンションインナパネル7bとの後フランジ部7c同士及び不図示の前フランジ部同士を結合することにより、筒状の閉断面部cを形成した構造を有する。前記後フランジ部7cによりバックドア開口1aが形成されている。
【0022】
前記エクステンションアウタパネル7aには、これの略全域に広がる大きさの凹部7dが車両前方に張り出すように形成されている。この凹部7dは、底壁7eと該底壁7eを囲む周壁7fとを有し、該凹部7d内には、リヤコンビネーションランプ18が取り付けられている。
【0023】
前記左,右のリヤピラー6は、外装が施されたサイドアウタパネル6aとサイドインナパネル6bとの後フランジ部6c,6c同士及び不図示の前フランジ部同士を結合することにより、上下方向に延びる筒状の閉断面部bを形成した構造を有する。このリヤピラー6の後フランジ部6cによりバックドア開口1aが形成されている。
【0024】
前記リヤピラー6の閉断面部bは、前記ロアバックパネル5の閉断面部a及び前記エクステンションパネル7の閉断面部cに連続している。また各閉断面部a,b,cは、バックドア開口縁に沿って形成されており、これによりバックドア開口1aの左,右側辺部,下辺コーナー部は、剛性の高い連続した閉断面構造となっている。
【0025】
前記サイドアウタパネル6aは、該サイドアウタパネル6aの後縁に続いて車内側に屈曲して延びる後壁部6eを有し、該後壁部6eは、前記サイドインナパネル6bとで前記閉断面部bを形成している。
【0026】
前記後壁部6eは、サイドアウタパネル6aの上半部に形成されている。この後壁部6eの下半部は、該後壁部6eを段付き状に切り欠くことにより形成された切欠き部6fとなっており、該切欠き部6fと前記サイドインナパネル6bとの間には隙間が設けられている。
【0027】
前記エクステンションアウタパネル7aは、前記サイドアウタパネル6aの切欠き部6fとサイドインナパネル6bとの間を覆うように配設されている。
【0028】
前記エクステンションアウタパネル7aの後フランジ部7cは、前記サイドインナパネル6bの後フランジ部6cに重ね合わせて結合されており、該後フランジ部6c,7cによりバックドア開口1aが形成されている。
【0029】
また前記エクステンションアウタパネル7aの外縁部7gは、前記サイドアウタパネル6aの切欠き部6fに重ね合わせて結合されている。
【0030】
前記エクステンションアウタパネル7aの上縁部7hは、前記サイドアウタパネル6aの後壁部6eの下縁部6hに重ね合わせて結合されている。この後壁部6eと前記エクステンションアウタパネル7aとは、複数のスポット溶接により接合されている(図2の×印参照)。
【0031】
前記後壁部6eは、これの車幅寸法がエクステンションアウタパネル7aの車幅寸法より狭くなっている。またエクステンションアウタパネル7aは、前記後壁部6eとの接続部から下側ほど幅広に形成されている。
【0032】
そして前記サイドアウタパネル6aの後壁部6eの下端部には、車両後方に張り出す凸ビード6iが形成されている。
【0033】
この凸ビード6iは、後壁部6eの車幅方向中央部に形成されている。該後壁部6eの凸ビード6iと後フランジ部6cとの間には、該凸ビード6iより後側に張り出す張り出し部6jが形成されている。また前記後壁部6eの凸ビード6iと外縁部との間には、該凸ビード6iより前側に段付きをなす段付き部6kが形成されている。このように、後壁部6eに段付き部6k,凸ビード6i,張り出し部6jを屈曲形成したので、後壁部6eのRを大きくすることができ、深絞り成形時の成形性を向上できるとともに、リヤピラー6全体の前後方向における剛性アップに寄与することとができる。なお、図4の矢印はプレス方向を示している。
【0034】
前記凸ビード6iには、ストッパ当接座面6i′が形成されており,該当接座面6i′には、前記バックドア2に取り付けられたゴム製のストッパ部材20がドア閉時に当接する。
【0035】
前記エクステンションアウタパネル7aの上端部には、前記凸ビード6iに連続して車両後方に張り出す凸部7iが形成されている。この凸部7iは、前記凸ビード6iと略同じ形状をなし、該凸ビード6iとの接続部から前記エクステンションアウタパネル7aの凹部7dの左,右縁の稜線L,Lに連なるよう延長形成されている。これにより前記凸部7iと凹部7dとは連続面をなしている。
【0036】
本実施例によれば、リヤピラー6のサイドアウタパネル6aに一体に折り曲げ形成された後壁部6eの下端部に凸ビード6iを形成し、エクステンションアウタパネル7aの上端部に該凸ビード6iに連続する凸部7iを形成し、該凸部7iを前記凸ビード6iとの接続部からエクステンションアウタパネル7aの凹部7dの左,右の稜線Lに連なるよう延長形成した。
【0037】
このように構成したので、サイドアウタパネル6aの後壁部6eとエクステンションアウタパネル7aとの接続部分に両パネル6e,7aに跨がる凸条部が形成されることとなり、従来のような複雑な閉断面構造を採用することなく、簡単な構造で後壁部6eとエクステンションアウタパネル7aとの接続部の剛性を高めることができる。これにより接続部に亀裂等が発生するのを防止できる。
【0038】
また前記後壁部6eに凸ビード6iを形成したので、後壁部6eを深絞り成形する際の曲率半径Rをビードがない場合のR′より大きくすることができ(図4参照)、サイドアウタパネル6aをプレス成形する際の成形性を向上でき、亀裂や割れの発生を防止できる。
【0039】
本実施例では、前記凸ビード6iにバックドア2のストッパ部材20が当接する当接座面6i′を形成したので、バックドア閉時の荷重に対する剛性を確保することができ、繰り返しの開閉による変形を防止できる。
【0040】
本実施例では、前記後壁部6eとエクステンションアウタパネル7aとの接続部に連続した凸ビード6i及び凸部7iを形成するだけの構造であるので、板厚を大きくしたり、補強部材を追加したりする必要はなく、車体重量及びコストの上昇を防止できる。
【符号の説明】
【0041】
1 後部車体
1a バックドア開口
6 リヤピラー
6a サイドアウタパネル
6e 後壁部
6i 凸ビード
7 エクステンションパネル
7a エクステンションアウタパネル
7d 凹部
7i 凸部
18 リヤコンビネーションランプ
L 稜線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両後端に形成されたバックドア開口の側縁部を形成するリヤピラーの後壁部と、
前記バックドア開口の下縁コーナー部を形成し、かつ車両前方に張り出すリヤコンビネーションランプ取付け凹部が形成されたエクステンションパネルとを接続する自動車の後部車体構造であって、
前記後壁部の下端部には、車両後方に張り出す凸ビードが形成され、
前記エクステンションパネルの上端部には、前記凸ビードに連続して車両後方に張り出す凸部が形成され、
該凸部は、前記凸ビードとの接続部から前記エクステンションパネルの凹部の稜線まで延びるように形成されている
ことを特徴とする自動車の後部車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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