説明

自動車の空気調和装置の冷媒サイクル

【課題】自動車の空気調和装置の冷媒サイクルを提供する。
【解決手段】本発明の空気調和装置の冷媒サイクル1は、圧縮機5、冷媒と周囲の間の熱伝達用の熱交換器2、収集器8、第1膨張機構6、調和される客室の供給空気11から冷媒への熱供給用の熱交換器3並びに上記熱交換器3と並列に接続して配設された熱交換器4,13を備える一次サイクルを含む。さらに、冷媒サイクル1は、圧縮機5と熱交換器2の間に配設された分岐部25から出発して、熱交換器2と熱交換器3の間に配設された連結部8まで延び、冷媒から調和される客室の供給空気11への熱伝達用の熱交換器15並びにそれに接続される制御弁16によって形成される二次ラインを有する。冷媒サイクル1は、組み合わせた冷房モード及び暖房モード並びに調和される客室の供給空気11のための後暖房モードのために設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の熱源及び複数のヒートシンクを利用するために形成された、自動車、特に電気自動車又はハイブリッド車両の空気調和装置の冷媒サイクル、及び、この冷媒サイクルの運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のための高効率及び環境保護の駆動システムに対する趨勢により、もはや客室の暖房に十分な廃熱を利用できなくなっている。内燃機関と比較して、特に電気自動車の駆動系の方がはるかに効率良く作動する。駆動系を冷却する冷媒サイクルのより少ない損失熱並びにより低い温度レベルによって、その客室の暖房が専らエンジン側の冷媒サイクルに依拠する車両における快適条件が悪化する。通常の快適性要件は補助措置なしに満たすことはできない。このため、電気自動車の客室の暖房は、いわゆる高ボルトPTC又は低ボルトPTCの使用に基づく、例えば電気抵抗加熱を利用して駆動される(PTC−正の温度係数)。しかしながら、抵抗加熱による電気的加熱は、電気自動車、特に空気調和装置の効率に影響を及ぼす。車両の到達距離は急激に低減する。
【0003】
従来の技術では、この種の補助加熱システムのほかに自動車内にある冷媒システムもしくは冷却装置を客室の暖房に利用することが知られている。これは、例えば冷却装置が暖房のためにヒートポンプとして運転されることによって可能である。択一的に、二次的な熱吸収なしの短いサイクルを利用することができる。この場合、圧縮機の機械的駆動出力のほとんどは客室暖房用の熱に変換される。
【0004】
運転中に、バッテリのバッテリセルも、電気モータ及び電力電子部品のような電気駆動系の他の構成要素も加熱される。特にバッテリは、放電及び充電時に好適な温度で運転されるべきである。この場合、上昇した運転温度がバッテリセルの非常に強い熱的負荷をもたらすので、発生し且つ放出された熱を排出する必要がある。バッテリの制限された耐温度性のために、これは能動的に冷却されなければならない。同様に強い熱的負荷から保護し、それに応じて熱的に調和されるバッテリ及び駆動系の他の電子部品の冷却のための好適な媒体は、周囲空気、客室の空気、冷媒及び冷却材である。冷却材として、例えば、水又はグリコールが使用される。バッテリ及び電気駆動系の他の構成要素の熱的調和は、動的運転としての走行中でも、車両の停止運転としての停止状態でも必要である。
【0005】
冷媒サイクルの熱源と見なされるバッテリの冷却はその寿命の増大をもたらし、冷却されたバッテリの温度が限定された範囲内のみで変化するように行われるべきである。しかし、電気自動車のバッテリの好適な運転温度で運転するために、発生する熱を排出する必要があるだけではなく、同時に低すぎる周囲温度、特に始動時に冷たいバッテリに熱を供給する必要がある。
【0006】
従来の技術から、一方で電気駆動系の構成要素の温度調節に利用され、他方で吸収された熱を客室内の供給空気に伝達する電気自動車の空気調和装置システムが知られている。
【0007】
独国特許出願公開第19930148号明細書(特許文献1)は、そのエネルギーがいわゆる高温バッテリによって提供される電気モータによって駆動される自動車の室内の温度制御のためのシステムを開示する。冷媒サイクルは外部及び内部の熱交換器を備える一次回路を含み、上記内部熱交換器は、室内に向けられた第1空気質量流量の通路内に配設されている。さらに、冷媒サイクルは、圧縮機を備える二次回路及び一次回路内の冷媒の循環方向に対する切換装置を有する。このシステムは、それによって室内に対する暖房モード又は冷房モードで運転可能である。バッテリの冷却を可能にする水冷サイクルは、第1空気質量流量の通路内の液体/空気熱交換器並びに冷媒サイクルの二次回路内の液体/冷媒熱交換器を含む。冷媒サイクルは、この場合、それぞれ1つの熱源並びにヒートシンクを有する。水冷サイクルと冷媒サイクルを直接熱的に連結する場合、付加的な熱交換器を備える冷媒サイクルはもう1つの熱源を含む。
【0008】
独国特許出願公開第10201741号明細書(特許文献2)から、車両の温度調節のための方法並びに媒体サイクルを介して冷房及び/又は暖房のための共通の媒体で作動される車両内部の空気調和装置及び熱源が読み取れる。媒体サイクルは、この場合上記媒体の膨張及び圧縮のための手段を有する。熱源の冷却及び車両の空気調節は1つの媒体によって実現される。上記熱源のほかに空気調和装置はそれぞれ必要に応じて熱源及び/又はヒートシンクとして運転される熱交換器を有する。
【0009】
特許文献1に開示されたシステムも、特許文献2に記載された空気調和装置も、客室用の暖房機能は、装置の冷房モードで蒸発器として接続された熱交換器を介して実現される。この熱交換器がそれに続き再び暖房に利用されるとき、一定の利用及び周辺条件下で、安全に関する非常に望ましくない危険な効果が現れる。
【0010】
特に冷却装置としての冷媒システムの利用時に、すなわち冷房モードにおいて、車両の通気装置内に配設された蒸発器が冷却する空気を除湿する。蒸発器表面上に凝縮した水分は、次に例えば車両の停止後及び新たな運転開始後に事前に蒸発器として運転された熱交換器の利用時に暖房モードで凝縮器として加熱することによって客室に供給する空気流へ引き渡される。冷却装置及びヒートポンプとしての冷媒サイクルの上記交互の利用は季節の変わり目に、より頻繁に発生する。
【0011】
客室に引き渡された空気中の高い空気湿度は、車両内部の冷たい表面に沈積物及び特に乗員に対して付随的に現れる視界状況の劣化を伴うガラスの曇りをもたらす。この効果はフラッシュフォギングとも呼ばれる。
【0012】
発展的に開発されたシステムは、例えば蒸発器並びに熱交換器を含む冷媒サイクルを備える貨物自動車、特に電気自動車又はハイブリッド車両用の空気調和装置を記載する独国特許出願公開第102009048674号明細書(特許文献3)から読み取れる。この熱交換器を利用して、冷媒サイクルの中に取り込まれた熱エネルギーを乗員室の供給空気の中に取り込むことができる。空気調和装置は、特に空気が乗員室から排出可能である排気管を有する。冷媒サイクルの蒸発器は、この場合、少なくとも領域ごとに上記排気管の内部に配設されている。それによって、排気の熱エネルギーは、空気調和装置のヒートポンプモードで供給空気の中に伝達可能である。この空気調和装置は、それによって熱回収のための構成要素を有する。排気から排出された熱は、中間媒体と共に付加的な熱交換器を利用して供給空気へ伝達される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】独国特許出願公開第19930148号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第10201741号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第102009048674号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、車両、特に電気自動車又はハイブリッド車両の室内のための空気調和装置について、運転のために最小電気出力の需要を有し、それによって車両の最大到達距離に対して最大限可能な電気出力を提供する電気駆動系の構成要素の温度調節の付加的な可能性と共に提供することである。この空気調和装置は、複数の熱源及びヒートシンクの利用下に特に効率的に運転可能であり、車両の内部の取付スペースを最小にするために、コンパクトに構成されるべきである。それによって、運転コスト、製造コスト並びに保守コストが最小限に抑制されるべきである。さらに、この空気調和装置の運転時に発生する負の安全技術的な効果が回避されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この課題は、本発明により自動車、特に電気自動車又はハイブリッド車両用の空気調和装置の冷媒サイクルによって解決される。この冷媒サイクルは、一次サイクル及び二次ラインを含む。
【0016】
一次サイクルは、圧縮機、冷媒と周囲の間の熱伝達用の熱交換器、収集器、膨張機構並びに調和される客室の供給空気から冷媒への熱供給用の第2熱交換器で空気調和装置の従来の冷媒サイクルの構成要素を有する。また、一次サイクルには、調和される供給空気から冷媒への熱供給のために設けられた熱交換器と並列に接続して配設された更なる熱交換器が設けられている。冷媒と周囲の間の熱伝達用の熱交換器は、好ましくは両方向に貫流可能に形成されている。
【0017】
二次ラインは、冷媒と周囲の間の熱伝達のために設けられた一次サイクルの圧縮機と熱交換器の間に配設された分岐部から出発して連結部まで延びる。この連結部は、その際に冷媒と周囲の間の熱伝達用の熱交換器並びに調和される客室の供給空気からの冷媒の熱吸収用の熱交換器の間に配設されている。二次ラインは、冷媒から調和される客室の供給空気への熱伝達用の熱交換器並びにそれに接続される制御弁を有する。
【0018】
冷媒サイクル内部の構成要素の本発明による配列は、客室の中への供給空気の温度調節のために暖房モード及び冷房モード並びに空気調和装置の冷媒サイクルの有利な後暖房モードの間の切り換えを可能にする。
【0019】
本発明の有利な実施形態では、連結部が冷媒サイクルの高圧領域に配設されており、収集器としての形成において、冷媒の貯蔵器のほかに冷媒サイクルのそれぞれの運転モードに応じて冷媒の集結及び/又は部分質量流量の分配にも利用される。収集器は、そのために、この収集器によって取り囲まれる容積中に通じる様々な冷媒管を具備している。冷媒は、種々の冷媒管から収集器の中へ流入し、及び/又は収集器から再び流出する。
【0020】
冷媒サイクルは、駆動系の構成要素と冷媒の間の熱伝達用の熱交換器の配列によって、好ましくは、自動車の駆動系の構成要素の付加的に組み合わせた冷房運転と暖房運転のために形成されている。熱交換器は、その際に両方向に貫流可能であり、冷房運転で冷媒の流れ方向に前置された要素を有する。この前置された要素は、熱交換器の冷房運転で有利には膨張機構として、及び熱交換器の暖房運転で冷媒の圧力保持通路を有する要素として調節可能に形成されている。膨張機構として、好ましくは膨張弁が設けられており、この膨張弁は外部で制御可能に形成されている。
【0021】
本発明の好ましい実施形態によれば、一次サイクルが合流部を有する。この合流部の間に、同様に好ましくは膨張弁として形成された膨張機構が配設されており、この膨張弁は有利には外部でも制御可能である。
【0022】
冷媒と周囲の間の直接的熱伝達用の熱交換器に相当する一次サイクルの熱交換器は、冷媒サイクルのそれぞれの運転方式に応じて凝縮器又は蒸発器として形成されている。調和される客室の供給空気から冷媒への直接的な熱供給用の熱交換器に相当する一次サイクルの熱交換器は、蒸発器として及びそれによって供給空気の冷却及び/又は除湿のために設けられている。二次ラインの熱交換器は、直接的な熱伝達によって客室に供給される冷却された及び調和される供給空気の暖房及び後暖房用の凝縮器として利用される。
【0023】
冷媒による駆動系の構成要素の熱伝達用の好ましくは両方向に貫流可能に形成された熱交換器は、それぞれ冷媒サイクルの運転方式に応じて凝縮器又は蒸発器として車両のバッテリの加熱又は冷却のために設けられている。両方向に貫流可能の熱交換器に並列に接続された付加的な熱交換器は、蒸発器として車両の電気駆動系の別の構成要素の冷却のために設けられている。
【0024】
変形例として、駆動系の構成要素による熱伝達のために形成された一次サイクルの熱交換器は冷媒サイクルの中にも組み入れることができ、その結果、冷媒と冷却材の間の熱伝達は中間サイクルで、もしくはそれぞれの形成に応じて共通の中間サイクル内で行われる。
【0025】
本発明の更なる実施形態は、冷媒の流れ方向から出て好ましくは収集器として形成された一次サイクルの圧縮機及び連結部へ延びる二次ラインの内部において、分岐部と後続の熱交換器の間に切換弁が配設されていることにある。特に、一次サイクルも、両方向に貫流可能の、冷媒による駆動系の構成要素の熱伝達用の熱交換器と合流部との間に形成された切換弁を有する。二次ライン及び一次サイクルの内部に設けられた切換弁は、有利には二次ラインから一次サイクルへの、特に二次ラインから両方向に貫流可能の駆動系の熱交換器への冷媒連結部を形成する。
【0026】
さらに、内部熱交換器を有する一次サイクルを形成することが有利であり、内部熱交換器が高圧側で冷媒の流れ方向へ好ましくは収集器として形成された連結部に接続され、及び低圧側で冷媒の流れ方向に圧縮機の前に配設されている。それによって、高圧で液体の冷媒と一次サイクルの内部の低圧で気体状の冷媒の間で、すなわち冷媒サイクル内部で熱を伝達することが可能である。この場合、液体の冷媒は凝縮後にもしくは収集器の出口で過冷却され、同時に圧縮機によって吸引された吸入ガスが過熱される。
【0027】
組み合わせた冷房モード及び暖房モード並びに調和される客室の供給空気に対する後暖房モード用の冷媒サイクルの本発明による運転方法において、一次サイクルが冷房モードで及び暖房モード並びに後暖房モードで一次サイクルも二次ラインも冷媒で貫流される。この場合、冷房モード及び後暖房モードで凝縮器として形成された、冷媒と周囲の間の熱伝達に利用される熱交換器及び弁が暖房モードに関して冷媒によって反対方向へ貫流される。
【0028】
特に、好ましくは収集器として形成された冷媒サイクルの高圧領域に配設された連結部でそれぞれの運転モードに応じて部分質量流量に分割された冷媒が集結及び/又は分配される。冷媒は、収集器の中に連通する種々の冷媒管を通して収集器の中に流入し、及び/又は収集器から流出する。この場合、個々の冷媒管はそれぞれの運転モードに応じて反対方向へ貫流される。
【0029】
本発明の有利な実施形態によれば、自動車の駆動系の構成要素に対して組み合わされた冷房運転及び暖房運転のための方法が提供されており、冷房運転で蒸発器として形成された熱交換器及び弁が暖房運転に関して冷媒によって反対方向へ貫流される。
【0030】
冷媒サイクルは、有利には調和される客室の供給空気、周囲空気、バッテリ並びに電気モータ及び電力電子部品のような電気駆動系の構成要素が選択的又は同時に熱源として利用されるように運転される。特に、冷媒サイクルのそれぞれの運転モードに応じて周囲空気、供給空気及びバッテリがヒートシンクとして選択的又は同時にヒートシンクとして使用される。
【0031】
本発明の第1実施形態による方法によれば、冷媒サイクルは、暖房モードで調和される客室の供給空気のために運転される。
【0032】
この場合、周囲との熱伝達用の熱交換器、調和される客室の供給空気との熱伝達用の熱交換器並びに電気駆動系の構成要素及び冷媒との熱伝達用の熱交換器がそれぞれ蒸発器として運転される。冷媒は蒸発の過程でそれぞれ熱を吸収する。それによって選択的又は同時に周囲空気、供給空気及び電気駆動系の構成要素が熱源として利用される。
【0033】
同時に、冷媒との熱伝達用の熱交換器が凝縮器として運転される。凝縮の過程で冷媒は熱を調和される客室の供給空気へ引き渡し、その結果、供給空気がヒートシンクになる。その際に供給空気が加熱される。そのために必要な熱は、熱源から冷媒サイクルへ伝達される。
【0034】
本発明の第2実施形態による方法によれば、冷媒サイクルは、後暖房モードで調和される客室の供給空気のために運転される。
【0035】
この場合、客室への供給空気と冷媒の間の熱伝達用の、もしくは電気駆動系の構成要素と冷媒の間の熱伝達用の第1熱交換器が蒸発器として作動され、その結果、冷媒は選択的又は同時に供給空気及び電気駆動系の構成要素を熱源として利用し、それぞれ熱を吸収する。
【0036】
同時に、周囲空気と冷媒の間の熱伝達用の熱交換器もしくは供給空気と冷媒の間の熱伝達用の第2交換機が凝縮器として運転され、周囲空気もしくは供給空気へヒートシンクとして熱が引き渡される。
【0037】
本発明の第3実施形態による方法によれば、冷媒サイクルは、冷房モードで調和される客室の供給空気のために運転される。後暖房モードでの運転と比較して、この場合供給空気と冷媒の間の熱伝達用の第2熱交換器が冷媒によって貫流されず、冷媒サイクルから液圧的に分離される。
【0038】
本発明の第4実施形態による方法によれば、冷媒サイクル、暖房運転で電気駆動系の構成要素、好ましくはバッテリの加熱のために運転される。
【0039】
この場合、周囲空気、供給空気及び電気駆動系の構成要素の間の熱伝達用の熱交換器は冷媒によって蒸発器として運転され、その結果、冷媒がそれぞれ熱を吸収し、周囲空気、供給空気及び電気駆動系の構成要素が選択的又は同時に熱源として利用される。
【0040】
同時にバッテリと供給空気の間の熱伝達用の熱交換器は冷媒によって凝縮器として運転され、その結果、冷媒はそれぞれ熱を引き渡し、電気駆動系の構成要素並びに供給空気は選択的又は同時にヒートシンクとして利用される。
【0041】
周囲空気、調和される客室の供給空気並びに車両の電気駆動系の構成要素及び冷媒による熱伝達用の熱交換器は、有利には直接的な熱伝達によって運転され、その結果、冷媒からヒートシンクへの熱引渡の過程及び冷媒から熱源への熱吸収の過程は直接冷媒によって行われる。従って、冷媒サイクルの本発明による方法は、好ましくは例えば冷媒サイクルへの中間サイクルなしに運転される。
【0042】
本発明の他の実施形態によれば、特に車両の電気駆動系の構成要素と冷媒の間の熱伝達用の熱交換器は、中間サイクルを介して及びそれによって間接的な熱伝達を介して運転される。
【0043】
本発明による方法の特別の長所は、冷媒サイクルの内部の多段膨張を利用する、少なくとも3つの異なる圧力レベルもしくは温度レベルをもつ様々な熱源の利用である。冷媒は圧縮機を利用して低圧から高圧へ圧縮される。多段膨張によって冷媒は、第1膨張段の内部で中圧とも呼ばれる中間圧力レベルに減圧される。第2膨張段の内部で、冷媒は中圧から低圧へ減圧させられる。
【0044】
この場合、一方で熱をより高い温度レベルの熱源から吸収する冷媒の部分質量流量が第1合流部へ集結される。他方、熱をより低いレベルの熱源から吸収する冷媒の部分質量流量が第2合流部で1つにまとめられる。この第2合流部は冷媒の流れ方向へ第1合流部の後に配置されている。冷媒はこれらの合流部の間に配設された膨張機構の貫流時に減圧される。膨張弁として形成された膨張機構は、この場合好ましくは外部で制御される。
【0045】
本発明による解決策は、幾つかの長所を有する:
最小限に抑制される電気エネルギー使用による客室の温度調節、特に冷房、除湿及び/又は暖房と、この場合の
客室の暖房に対する損失熱流の利用
バッテリ、電気モータ並びに電力電子部品のような、車両の駆動系の構成要素の冷却及びそれによって増大する出力性能、効率及び構成要素の寿命、
内燃機関で運転される車両と同じレベルでの客室の内部の快適性の提供
特に外部の空気調節条件下の、以下による同じバッテリ容量での電気自動車の最大到達距離の可能性
二次電力消費体に必要なバッテリ容量の低減と、それに関連する
重量低減
コスト低減及び
リチウムのような限られた資源の保護。
【0046】
本発明のその他の詳細、特徴及び長所は、添付図面を引用した以下の実施形態の説明から明らかである。それぞれ1つの冷媒サイクルを示す。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】供給空気の同時冷却及び除湿時の客室の換気並びにバッテリの冷却のための2つの熱源及び1つのヒートシンクを備えた本発明の一実施形態の冷媒サイクルを示す。
【図2】供給空気の同時除湿/冷却及び暖房時の客室の換気並びにバッテリ及び駆動系の構成要素の冷却のための3つの熱源及び1つのヒートシンクの運転による本発明の一実施形態の冷媒サイクルを示す。
【図3】付加的な熱源として周囲空気との熱伝達による図2に示す類似の形態による冷媒サイクルを示す。
【図4a】供給空気の同時冷房、除湿及び後暖房時の客室の換気並びにバッテリ及び駆動系の構成要素の冷却のための、付加的に運転されるヒートシンクとしての周囲空気との熱伝達による図2及び図3に類似の形態による冷媒サイクルを示す。
【図4b】供給空気の同時冷房、除湿及び後暖房時の客室の換気並びにバッテリ及び駆動系の構成要素の冷却のための、付加的に運転されるヒートシンクとしての周囲空気との熱伝達による図2もしくは図3に類似の形態による冷媒サイクルを示す。
【図5a】熱源、周囲空気及びバッテリの加熱のためのヒートシンクの運転による図3に類似の形態による冷媒サイクルを示す。
【図5b】熱源、周囲空気及びバッテリの加熱のためのヒートシンクの運転による図3に類似の形態による冷媒サイクルを示す。
【図6a】付加的な内部の熱交換器及び冷房モードでの運転による図3に類似の形態による冷媒サイクルを示す。
【図6b】付加的な内部の熱交換器及び暖房モードでの運転による図3に類似の形態による冷媒サイクルを示す。
【図6c】付加的な内部の熱交換器及び後暖房モードでの運転による図3に類似の形態による冷媒サイクルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図1は、冷媒の流れ方向に圧縮機5、冷媒から周囲空気12への直接的な熱伝達用の凝縮器2、収集器8、第1膨張弁6並びに調和される客室の空気から冷媒への直接的な熱供給用の蒸発器3を備える一次サイクルとしての冷媒サイクル1を示す。冷媒の流れ方向に、収集器8として形成された連結部8と、蒸発器3及び圧縮機5の間に配設された合流部9との間に、前置された膨張弁7を備えるもう1つの蒸発器4が配設されている。蒸発器3、4は互いに並列に接続されている。合流部9はT部材9として形成されている。収集器8として形成された連結部8は冷媒サイクル1の高圧領域に配置されており、その結果、収集器8は高圧収集器8に相当する。
【0049】
冷媒サイクル1の第1の変形実施形態において、特に図示しない収集器が低圧領域に設けられており、その結果、冷媒サイクルは低圧収集器によっても高圧収集器8によっても形成されている。第2の変形実施形態では、冷媒サイクル1は、高圧収集器8の他に中間圧力レベルで配設された、収集器(図示せず)によって形成されている。この場合、収集器の配列を中間圧力レベルで低圧収集器の代わりに設け、又は低圧収集器と組み合わせる可能性もある。
【0050】
圧縮機5で圧縮され、その際に暖められた冷媒は、凝縮器2の中で熱を周囲空気12へ引き渡し、その際に液化される。それによって、凝縮器2は冷媒サイクルに対するヒートシンクとして利用される。
【0051】
液体の冷媒は凝縮器2から流出後に収集器8の中に貯蔵される。膨張弁6、7の貫流時の減圧によって冷媒は二相混合物として蒸発器3、4へ導かれ、そこで熱の吸収下に蒸発する。気体状の冷媒は圧縮機5によって吸引される。冷媒サイクル1は閉じている。
【0052】
両方の蒸発器3、4は選択的又は同時に運転されるそれぞれ1つの熱源である。空気調和装置の空気ダクト10の中に配設された蒸発器3は、客室の換気のための供給空気11の冷却及び除湿に利用され、一方、蒸発器4は、車両のバッテリの冷却のために設けられている。バッテリの温度調節は、冷媒による直接的な熱伝達を利用して保証される。変形例として、熱交換器4はバッテリ冷却の冷媒サイクルの中に組み込むこともできる。バッテリ冷却の蒸発器4は冷房機4とも呼ばれる。
【0053】
従って、図1において、冷媒サイクル1は、客室への供給空気11を基準として車両の空気調和装置の冷房モードで示されている。
【0054】
図2では、図1に示されている一次サイクルとしての冷媒サイクル1が、熱源及びヒートシンクとして別の熱交換器13、15によって示されている。この場合、バッテリ冷却の蒸発器4の他に、電気駆動系の別の構成要素の冷却のために設けられた熱源として前置された膨張弁14を備える付加的な蒸発器13が並列に接続されている。熱交換器の台数については、このような方式で任意に増やすことができる。同様に、冷房機13と呼ばれる蒸発器13は、この場合T部材20を介して冷媒管の内部で収集器8と膨張弁7の間に並びにT部材19を介して冷媒管の内部に蒸発器3とT部材9の間に組み込まれる。冷媒の質量流量は、その際に部分質量流量に分割される。電気駆動系の構成要素の温度調節は、同様に冷媒による直接的な熱伝達を利用して保証される。変形例として、熱交換器13は、電気駆動系の構成要素の冷媒サイクル内に組み込んで形成することもできる。同様に、冷房機13として形成された熱交換器13を介して、その際電気駆動系の構成要素の廃熱は熱媒体として冷媒をベースとする冷却システムを利用して冷媒サイクルの中に結合される。
【0055】
電気モータ、電力電子部品及びバッテリのような電気駆動構成要素の温度レベルの差異の可能性に基づき、2つ又はそれ以上の異なる、必要があれば独立した冷媒サイクルを設けることができ、その場合これらは共通の又は2つもしくはそれ以上の個々の冷房機4、13を利用して冷媒サイクル1の中に組み込まれる。複数の冷房機4、13を有する冷媒サイクル1を形成する場合、これらは直列に好ましくは冷媒の温度レベルの上昇する順序に従って又は並列に冷媒サイクル1の中に配設することができる。
【0056】
並列の配列による冷媒サイクル1の態様において、各冷房機4、13は有利には遮断可能の膨張機構7、14を具備している。この場合、膨張機構7、14は膨張弁として、しかし好ましくは例えばステッピングモータを備える外部制御式膨張機構として又は比例電磁弁として形成することができる。
【0057】
一次サイクルのほかに冷媒サイクル1は二次ラインを有する。二次ラインは、この場合圧縮機5と熱交換器2の間に配設された分岐部25から出発して収集器8として形成された連結部8まで延びる。分岐部25は、三方弁もしくは切換弁18として形成されている。二次ラインの内部に熱交換器15が冷媒から調和される客室の空気への直接的熱伝達用の第2凝縮器15並びにそれに接続される制御弁16として配設されている。空気調和装置の空気ダクト10の中に供給空気11の流れ方向へ蒸発器3の後に設けられた凝縮器15の伝熱面は、蒸発器3のように、直接供給空気11から溢れ出る。蒸発器3の中で除湿及び冷却された供給空気11は、凝縮器15の溢流時に再び加熱され、それに続き客室の中へ導かれる。
【0058】
この場合、圧縮機5の中で圧縮された冷媒の熱は、凝縮器2の中で周囲空気12へ伝達されない。温かい冷媒は、むしろ切換弁18を介して熱交換器15へ導かれ、そこで凝縮される。凝縮器15は、冷媒サイクルに対するヒートシンクとして利用される。凝縮器15内での液化後、冷媒は開いた制御弁16を通り収集器8の中へ流れる。周囲空気12との熱伝達用の凝縮器2は、切換弁18及び弁17を介して冷媒サイクル1から液圧的に分離される。弁17は遮断弁17として接続されている。
【0059】
したがって、図2では、冷媒サイクル1は、客室への供給空気11に関して車両の空気調和装置の暖房モードで示されている。蒸発器3、4、13はそれぞれ熱源として必要に応じて選択的又は同時に運転される。バッテリの廃熱、電気駆動系の廃熱及び/又は供給空気11は、熱源として利用される。同時運転時に冷媒の質量流量は、蒸発器3、4、13によって部分質量流量に分割される。
【0060】
図3は、周囲空気12が付加的な熱源として組み込まれた図2に記載の冷媒サイクル1の拡張を示す。この場合、弁17は膨張弁17として使用される。さらに、圧縮機5の中で圧縮された冷媒は分岐部25を介して切換弁18へ導かれ、この切換弁は、分岐部25から分離されて形成されている。T部材25として形成された分岐部25は、冷媒管を2つのライン、一方はT部材25への冷媒の流れ方向へ付加的な遮断弁23を有する二次ラインと、他方では熱交換器2への接続ラインに分離する。切換弁18は、熱交換器2への接続ラインの内部に配設されており、三方弁として圧縮機5の中へ流入するための冷媒の付加的な連結管21を構成する。付加的な連結管21は切換弁18を介し、合流部24を介して圧縮機5への冷媒管の中へ入り込む接続ラインから分岐する。図2の冷媒サイクル1と比較して、T部材9と、同様にT部材24として形成された合流部24との間に有利にはもう1つの膨張機構22が膨張弁22の形態で配設されている。
【0061】
冷媒の部分質量流量が収集器8から流出後に低い圧力レベルに減圧される膨張弁17を介して、二相冷媒が周囲空気12の温度を下回る温度で熱交換器2へ流入する。図1に記載の冷房モードで凝縮器2として運転される熱交換器2の中で冷媒がそれ以後蒸発する。この場合、周囲空気12は直接蒸発器2の伝熱面を介して流れ、その結果、熱は周囲空気12から冷媒へ伝達される。それに続き冷媒が切換弁18及び連結管21並びにT部材24を通して圧縮機5の入口へ流れる。
【0062】
必要に応じて蒸発器2を通して流れる冷媒の部分質量流量よりも高い圧力レベル及び温度レベルを有する蒸発器3、4、13の中で蒸発した冷媒は、膨張弁22の横断時に蒸発器2を通して導かれた冷媒の圧力レベルに減圧される。それ以後全質量流量として圧縮機5によって吸引された冷媒は、圧縮されて開いた遮断弁23を通して二次ラインの中に導かれ、図2で説明したように、冷媒サイクル1を貫流する。
【0063】
従って、冷媒サイクル1は多段膨張を示し、その結果、冷媒サイクル1の中に組み込まれた熱源の様々な圧力レベルもしくは温度レベルを利用できる。
【0064】
図2のように、冷媒サイクル1は、図3の回路においても客室への供給空気11に関して車両の空気調和装置の暖房モードで運転される。4台の蒸発器2、3、4、13は、それぞれ熱源として必要に応じて選択的又は同時に運転される。周囲空気、バッテリの廃熱、電気駆動系の廃熱及び/又は供給空気11が熱源として利用される。冷媒の質量流量はその場合蒸発器2、3、14、13を通して部分質量流量に分割される。
【0065】
図4aは、図2の冷媒サイクル1に対して多少変化した態様での冷媒サイクル1を示す。図4bでは、冷媒サイクル1が、図3の冷媒サイクル1に対して多少変更した形態で示されている。供給空気11の同時冷却、除湿及び後暖房時の客室の温度調節並びにバッテリ及び車両の駆動系の他の構成要素の冷却のための冷媒サイクル1は、周囲空気12との熱伝達によって付加的なヒートシンクを有する。
【0066】
それによって、冷媒サイクル1の形成は、冷房装置モード及びヒートポンプモードとも呼ばれる組み合わせた冷房モード及び暖房モード並びに調和される客室の空気の暖房、冷房及び除湿のための後暖房モードでの空気調和装置の運転を可能にする。
【0067】
図2の冷媒サイクル1と比較して、図4aの冷媒サイクル1は三方弁もしくは切換弁18の代わりにT部材25として形成された、冷媒の流れ方向に後置された遮断弁23、26を備える分岐部25を有する。遮断弁23は、二次ラインの構成要素である。遮断弁26は、冷媒管の中で分岐部25と熱交換器2の間に配設されている。制御弁17は開いている。
【0068】
図3の冷媒サイクル1と比較して、図4bの冷媒サイクル1は、同じサイクル構成要素を有する。しかしながら、弁17、22は開いており膨張弁としては利用されない。また、切換弁18は、圧縮機5によって圧縮された冷媒が熱交換器2へ導かれるように接続されており、連結管21は閉じている。
【0069】
図4aの切換弁18及び図4bの弁17、18、22の示された回路に代わり、T部材25の配列とそれに続く遮断弁23、26を利用して、熱交換器2を付加的なヒートシンクとして、すなわち凝縮器2として利用することが可能である。圧縮機5の中で圧縮された冷媒の質量流量は、分岐部25で二次ラインと共に凝縮器15を通る部分質量流量並びに凝縮器2を通る部分質量流量に分割される。
【0070】
それによって、蒸発器3の中で冷却及び除湿された供給空気11の後暖房の可能性がある。蒸発器3、4、13の中で冷媒から吸収された熱は、この場合凝縮器15を利用して供給空気11へ伝達され、その結果、冷却及び除湿された供給空気11が加熱される。後暖房モードで、膨張弁6及び遮断弁23は二次ラインの凝縮器15での暖房出力が蒸発器3、4、13の内部で吸収された冷却出力の合計、特に供給空気11の冷却及び除湿のために必要な冷却出力よりも小さくできるように制御される。過剰の熱は凝縮器2を介して周囲空気12へ引き渡される。
【0071】
従って、図4a及び図4bにより冷媒サイクル1は、客室への供給空気11に関して車両の空気調和装置の後暖房モードで運転される。3台の蒸発器3、4、13は、再びそれぞれ熱源として必要に応じて選択的又は同時に運転され、冷媒の質量流量は、必要に応じて蒸発器3、4、13を通る部分質量流量に分割される。2台の凝縮器2、15は、それぞれヒートシンクとして利用される。周囲空気12及び供給空気11は、ヒートシンクとして利用される。
【0072】
図5a及び図5bでは、周囲空気12が熱源としてバッテリの加熱に利用される図3の冷媒サイクル1の拡張が示される。
【0073】
図3に記載の冷媒サイクル1と異なり、二次ラインの内部の遮断弁23は示されていない。付加的な構成要素として、切換弁27、28は一方で二次ラインの内部に、他方ではバッテリの温度調節に利用される熱交換器4と合流部9の間に組み込まれている。切換弁27は、この場合二次ラインの分岐部25と熱交換器15の間に配設されている。切換弁27、28は二次ラインから熱交換器4への付加的な冷媒連結部を構成する。
【0074】
閉じた弁6、14、16、22、開いた弁7及び膨張弁17としての弁17の運転時に、圧縮機5によって圧縮された冷媒は二次ライン内で切換弁27へ導かれる。切換弁27は最初の二次ラインを閉じ、凝縮器15への冷媒の流れを阻止する。この場合、二次ラインから切換弁28への付加的な冷媒連結部が開かれている。冷媒は、再び圧縮機5への冷媒管を閉じる切換弁28を通して熱交換器4へ流れる。圧縮された熱い冷媒の熱は、これ以後凝縮器4として運転される熱交換器4の中でバッテリへ伝達される。
【0075】
それに続き冷媒は収集器8の中で膨張弁17を通して蒸発器2へ流れる。膨張弁17の貫流時に減圧及び部分液化した冷媒は、蒸発器2の中で熱の吸収下に再び蒸発し、連結管21を開く切換弁18から圧縮機5の入口へ到達する。
【0076】
このように、熱交換器2は、蒸発器2として熱を周囲空気12から冷媒へ伝達する熱源であり、一方、熱交換器4は凝縮器4として車両のバッテリの加熱のためにヒートシンクとして利用される。さらに、蒸発器3、13も付加的な熱源として必要に応じて選択的又は同時に蒸発器2と共に利用する可能性がある。その場合、周囲空気のほかに電気駆動系の廃熱及び/又は供給空気11も熱源として使用される。
【0077】
従って、図5a及び図5bでは、冷媒サイクル1が、車両のバッテリの暖房モードで示されている。
【0078】
図5aに対する拡張図で、図5bにより特に凝縮器15を客室内の供給空気11の後暖房のために利用する可能性がある。この場合、切換弁27は、切換弁28の方向へも熱交換器15の方向へも冷媒を貫流させるように接続されている。制御弁16は開かれている。熱い冷媒は凝縮器15内で液化され、その際に熱を供給空気11へ引き渡す。供給空気11はその場合別のヒートシンクとして利用される。
【0079】
さらに、供給空気11は熱源としても使用できる。この場合、冷媒は収集器8から膨張弁6を通して流れ、その際に減圧される。それに続き冷媒が蒸発器3の中で蒸発し、供給空気11が凝縮器15の貫流時に再び加熱される前に、その際に除湿及び冷却される上記供給空気11から熱を吸収する。冷媒は蒸発器3の出口から膨張弁22へ流れ、弁22の貫流時に蒸発器2から出る冷媒の圧力レベルへ減圧される。部分質量流量は合流部24で集結され、一緒に圧縮機5へ導かれる。
【0080】
もう1つの態様に従って、冷房機13も電気駆動系の別の構成要素の冷却のために熱源として利用することができる。この場合、冷媒は蒸発器3と並列に蒸発器13を通して流れ、そこでT部材19を介して膨張弁22へ導かれる前に、熱を吸収する。
【0081】
熱源として、この場合、周囲空気12、供給空気11及び/又は電気駆動系の構成要素が使用される。同時に車両のバッテリ及び/又は供給空気11がヒートシンクとして利用される。
【0082】
図6a、図6b及び図6cでは、付加的な内部熱交換器30を備える図3又は図4bの冷媒サイクル1の拡張が示されている。特に、構造条件により付加的なT部材29が設けられている。
【0083】
内部熱交換器30は、高圧時の液体の冷媒と低圧時の気体状の冷媒の間の熱伝達に利用される。この場合、一方で液体の冷媒は凝縮後に収集器8の出口で及び膨張弁6、7、14の中へ入る前に再び冷却され、他方で吸引ガスは圧縮機5の中へ入る前に過熱される。
【0084】
従って、内部熱交換器30は高圧側で冷媒の流れ方向に収集器8として形成された連結部8の後に、及び膨張弁6、7、14の前に配設されている。低圧側で内部熱交換器30は冷媒の流れ方向に圧縮機5の前に、及びそれによってT部材24と圧縮機5の中への入口の間に組み込まれる。
【0085】
図6aは、客室への供給空気11に関して車両の空気調和装置の冷房モードの運転における冷媒サイクル1を示す。この場合、圧縮機5で圧縮された冷媒は、分岐部25及び切換弁18を介して凝縮器2へ導かれ、その中で冷媒が周囲空気12への直接的熱引渡し下に液化され、それに続き開いた膨張弁17を通して収集器8の中へ到達する。遮断弁16、23は閉じられており、その結果、二次ラインは冷媒で作動されない。収集器8から、冷媒は、さらに熱の引渡し下に冷媒が過冷却される内部熱交換器30の高圧領域を通して部分質量流量に分割されて膨張弁6、7、14へ流れる。二相域への減圧後に冷媒は蒸発器3、4、13の中へ到達し、熱吸収下に蒸発する。蒸発器3の中で、その際に客室への供給空気11が直接の熱吸収下に冷媒によって冷却及び/又は除湿される。部分質量流量の集結後、冷媒は開いた弁22を通して内部熱交換器30の低圧領域へ導かれ、そこで圧縮機5の中へ入る前に熱吸収下に過熱される。
【0086】
空気調和装置の冷房モード並びにバッテリの同時又は選択的冷房運転で3台の蒸発器3、4、13がそれぞれ熱源として必要に応じて選択的又は同時に運転される。バッテリの廃熱、電気駆動系の廃熱及び/又は供給空気11が熱源として利用され、一方、専ら周囲空気12が凝縮器2の中でヒートシンクとして使用される。
【0087】
図6bでは、客室への供給空気11に関して車両の空気調和装置の暖房モードの運転における冷媒サイクル1が示されている。圧縮機5の中で圧縮された冷媒は、分岐部25を介して、及び開いた遮断弁23を通して凝縮器15へ流れ、その中で冷媒が供給空気11への直接の熱引渡し下に液化され、それに続き開いた制御弁16を通して収集器8の中へ到達する。
【0088】
冷媒は、収集器8から一方でさらなる熱引渡し下に冷媒が過冷却される内部熱交換器30の高圧領域を通して部分質量流量に分割されて再び膨張弁6、7、14へ導かれる。他の部分質量流量は、貫流時に低圧で減圧される膨張弁17を介して蒸発器2として運転される熱交換器2へ到達し、そこで周囲空気12との直接的な熱伝達時に蒸発する。その後、液化した冷媒は、切換弁18を介して及び連結管21を通して合流部24へ案内される。
【0089】
必要に応じて低圧の上方及び高圧の下方にある中間圧力での膨張弁6、7、14の中での減圧後、冷媒が蒸発器3、4、13の中へ導かれ、熱吸収下に蒸発する。蒸発器3の中で、その際に客室への供給空気11が直接的熱吸収下に冷媒によって冷却及び/又は除湿される。部分質量流量の集結後、冷媒は膨張弁22の貫流時に低圧で減圧され、それに続き合流部24で蒸発器2を通して流れた部分質量流量と同じ圧力レベルで混合される。
【0090】
それに続き冷媒の全質量流量が再び内部熱交換器30の低圧領域を通して案内され、圧縮機5へ到達する前に熱吸収下に過熱される。
【0091】
それによって様々な熱源の同時利用時に全ての冷媒質量流量が内部熱交換器30の高圧側を介して案内されない。
【0092】
さらに、様々な熱源の同時利用時に全ての冷媒質量流量が内部熱交換器30の低圧側を介して導かれない可能性もある。図示しない態様において、例えばT部材24は冷媒の流れ方向へ内部熱交換器30の低圧側の後とそれによって内部熱交換器30と圧縮機5の間に配設されている。
【0093】
特に、冷媒質量流量は、好ましくは、
部分質量流量が蒸発器3として供給空気11を熱源として利用する熱交換器3を通して流れ、
少なくとも1つの部分質量流量が冷房機4、13としてバッテリもしくは電気駆動系を熱源として利用する熱交換器4及び/又は熱交換器13を通して流れ、及び
蒸発器2として周囲空気12を熱源として利用する熱交換器2を介して部分質量流量が流れるように、平行に分割される。
【0094】
冷媒サイクル1は、合流部24で冷媒の部分質量流量の集結のための構成要素を有し、その結果、全部の分質量流量が共通の箇所で集結され、冷媒が全質量流量として圧縮機5に供給される。この場合、それぞれ熱を類似の温度レベルの熱源から吸収する部分質量流量が共通の箇所に集結される。つまり、一方で上記部分質量流量が圧縮機3、4、13を通してT部材9で一つにまとめられる。他方、熱を蒸発器3、4、13よりも低い温度レベルの熱源から吸収する部分質量流量は、この場合に蒸発器2を通る部分質量流量のみだが、冷媒の流れ方向にT部材9の下流側へ集結され、合流部24ですでに蒸発器3、4、13を通して流れ、一つにまとめられた部分質量流量と混合される。部分質量流量の集結のT部材9、24として形成された個々の箇所の間に、有利には膨張弁22が好ましい外部制御式膨張機構として配設されている。
【0095】
空気調和装置の暖房モード並びにバッテリの同時又は選択的な冷却運転で、それに応じて4台の蒸発器2、3、4、13がそれぞれ熱源として必要に応じて選択的又は同時に運転される。周囲空気12、バッテリの廃熱、電気駆動系の廃熱及び/又は供給空気11が熱源として利用され、一方、専ら供給空気11が凝縮器15の中でヒートシンクとして使用される。
【0096】
図6cでは、冷媒サイクル1が客室への供給空気11に関して車両の空気調和装置の後暖房モードの運転で示されている。この場合、圧縮機5の中で圧縮された冷媒は、分岐部25を介して二次ライン及び熱交換器2への連結部へと分割される。部分質量流量は、開いた遮断弁23を通して凝縮器15へ流れ、その中で冷媒が供給空気11への直接の熱引渡し下に液化され、それに続き開いた制御弁16を通して収集器8の中へ到達する。第2部分質量流量が、切換弁18を通して凝縮器2へ導かれ、その中で冷媒が周囲空気12への直接の熱引渡し下に液化され、それに続き開いた制御弁17を通して収集器8の中へ流入する。
【0097】
冷媒は収集器8から、図6aの暖房モードで、別の熱引渡し下に冷媒が過冷却される内部熱交換器30の高圧領域を通して部分質量流量に分割され、膨張弁6、7、14へ流れる。二相域への減圧後に、冷媒が蒸発器3、4、13の中へ到達し、熱吸収下に蒸発する。部分質量流量の混合後、冷媒の全質量流量が開いた弁22を通して内部熱交換器30の低圧領域へ導かれ、そこで圧縮機5の中へ入る前に熱吸収下に過熱される。
【0098】
後暖房モードで3台の蒸発器3、4、13がそれぞれ熱源として必要に応じて選択的又は同時に運転される。供給空気11、バッテリの廃熱及び/又は電気駆動系の廃熱が熱源として利用され、一方、周囲空気12及び供給空気11が凝縮器2、15の中でヒートシンクとして使用される。
【0099】
上記の回路変形及び運転モードは、低圧側で液体から気体への相移行を生じ、その際に熱を吸収する様々な冷媒に使用することができる。高圧側で冷媒が除熱もしくはガス冷却によってそれに続く凝縮と必要に応じて過冷却によって吸収された熱をヒートシンクへ、例えば周囲空気又は供給空気を客室へ再び引き渡す。好適な冷媒として、例えばR744のような天然物質並びにR134a、R152a、HFO1234yfのような化学物質を使用することができる。
【符号の説明】
【0100】
1 冷媒サイクル
2 熱交換器、凝縮器、蒸発器
3 熱交換器、空気調和装置の蒸発器
4 熱交換器、バッテリ冷却の蒸発器、冷房機、凝縮器
5 圧縮機
6,7 弁、膨張機構、膨張弁
8 連結部、収集器、高圧収集器
9 合流部、T部材
10 空気ダクト
11 客室内の空気、供給空気
12 周囲空気
13 熱交換器、蒸発器冷却駆動系、冷房機
14 弁、膨張機構、膨張弁
15 熱交換器、空気調和装置の凝縮器
16 弁、遮断弁、制御弁
17 弁、遮断弁、制御弁、膨張弁
18 弁、切換弁
19,20 T部材
21 連結管
22 弁、膨張機構、膨張弁
23,26 遮断弁
24 合流部、T部材
25 分岐部、T部材
27,28 切換弁
29 T部材
30 内部熱交換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車、特に電気自動車又はハイブリッド車両の空気調和装置の冷媒サイクル(1)であって、
圧縮機(5)、冷媒と周囲の間の熱伝達用の熱交換器(2)、収集器(8)、第1膨張機構(6)、調和される客室の供給空気(11)から冷媒への熱供給用の熱交換器(3)並びに熱交換器(3)と並列に接続して配設された熱交換器(4、13)を備える一次サイクルと、
圧縮機(5)と熱交換器(2)の間に配設された分岐部(25)から出発して、熱交換器(2)と熱交換器(3)の間に配設された連結部(8)まで延び、冷媒から調和される客室の供給空気(11)への熱伝達用の熱交換器(15)並びにそれに接続される制御弁(16)を有する二次ラインと、を有し、
上記冷媒サイクル(1)は、組み合わせた冷房モード及び暖房モード並びに調和される客室の供給空気(11)の後暖房モードのために形成されていることを特徴とする冷媒サイクル(1)。
【請求項2】
上記連結部(8)は、
冷媒サイクル(1)の高圧領域に配設されており、
冷媒の貯蔵並びに冷媒の集結及び/又は部分質量流量の分配のために収集器(8)として形成されている請求項1記載の冷媒サイクル(1)。
【請求項3】
自動車の駆動系の構成要素の組み合わせた冷房運転と暖房運転のための熱交換器(4)を備える冷媒サイクル(1)が形成されており、上記熱交換器(4)が両方向に貫流可能であり、冷房運転で冷媒の流れ方向に前置された要素を有しており、この前置された要素が、熱交換器(4)の冷房運転で膨張機構(7)として、及び熱交換器(4)の暖房運転で冷媒の圧力保持通過のために調節可能に形成されている請求項1又は2に記載の冷媒サイクル(1)。
【請求項4】
上記一次サイクルは、合流部(9、24)を有しており、上記合流部(9、24)の間に膨張機構(22)が配設されている請求項1乃至3の何れか1項に記載の冷媒サイクル(1)。
【請求項5】
上記膨張機構(6、7、22)は、膨張弁(6、7、22)として形成されており、上記膨張弁(6、7、22)は、外部で制御可能である請求項3記載の冷媒サイクル(1)。
【請求項6】
上記二次ラインは、分岐部(25)と熱交換器(15)の間に切換弁(27)を有し、
上記一次サイクルは、熱交換器(4)と合流部(9)の間に切換弁(28)を有し、
上記切換弁(27、28)は、二次ラインから一次サイクルへ、特に熱交換器(4)への冷媒連結部を形成して配設されている請求項1乃至5の何れか1項に記載の冷媒サイクル(1)。
【請求項7】
組み合わせた冷房モード及び暖房モード並びに調和される客室の供給空気(11)の後暖房モードのための冷媒サイクル(1)の運転方法であって、
冷房モード及び暖房モードで一次サイクル、並びに後暖房モードで一次サイクル及び二次ラインの双方に冷媒が供給され、
冷房モード及び後暖房モードで凝縮器(2)として形成された熱交換器(2)及び弁(17)が暖房モードに関して冷媒から反対方向へ貫流され、
冷媒サイクル(1)の高圧領域に配設された連結部(8)でそれぞれの運転モードに応じて部分質量流量に分割された冷媒が集結及び/又は分配されることを特徴とする方法。
【請求項8】
自動車の駆動系の構成要素のために組み合わされた冷房運転及び暖房運転において、冷房運転で蒸発器(4)として形成された熱交換器(4)及び弁(7)が暖房運転に関して冷媒から反対方向へ貫流される請求項7に記載の方法。
【請求項9】
周囲との熱伝達用の熱交換器(2)、調和される客室の供給空気(11)との熱伝達用の熱交換器(3)並びに車両の電気駆動系の構成要素及び冷媒との熱伝達用の熱交換器(4、13)が、冷媒がそれぞれ熱を吸収するように運転され、その結果、選択的又は同時に周囲空気(12)、供給空気(11)及び電気駆動系の構成要素が熱源として利用され、及び
熱交換器(15)が冷媒による熱伝達のために、冷媒が熱を調和される客室の供給空気(11)へ引き渡すように運転され、その結果、供給空気(11)がヒートシンクとして利用される請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
熱交換器(3、4、13)が冷媒による熱伝達のために、冷媒がそれぞれ熱を吸収するように運転され、その結果、選択的又は同時に供給空気(11)及び電気駆動系の構成要素が熱源として利用され、及び
熱交換器(2、15)が冷媒による熱伝達のために、冷媒が熱を引き渡すように運転され、その結果、選択的又は同時に周囲空気(12)及び供給空気(11)がヒートシンクとして利用される請求項7又は8に記載の方法。
【請求項11】
熱交換器(2、3、15)が冷媒による熱伝達のために、冷媒がそれぞれ熱を吸収するように運転され、その結果、選択的又は同時に周囲空気(12)、供給空気(11)及び電気駆動系の構成要素が熱源として利用され、及び
熱交換器(4、15)が冷媒による熱伝達のために、冷媒がそれぞれ熱を引き渡すように運転され、その結果、選択的又は同時に電気駆動系の構成要素及び供給空気(11)がヒートシンクとして利用される請求項7又は8に記載の方法。
【請求項12】
多段膨張を利用して熱源の様々な温度レベルを利用可能であり、
温度レベルのより高い熱源から熱を吸収する冷媒の部分質量流量が合流部(9)へ集結され、
温度レベルのより低い熱源から熱を吸収する冷媒の部分質量流量が、冷媒の流れ方向へ合流部(9)に後置された合流部(24)で集結され、
冷媒が上記合流部(9、24)の間に配設された膨張機構(22)の貫流時に減圧され、膨張弁(22)として形成された膨張機構(22)が外部で制御される請求項7乃至11の何れか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【公開番号】特開2012−81955(P2012−81955A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222141(P2011−222141)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(505450755)ビステオン グローバル テクノロジーズ インコーポレイテッド (140)
【出願人】(591006586)アウディ アクチェンゲゼルシャフト (34)
【氏名又は名称原語表記】AUDI AG
【住所又は居所原語表記】D−85045 Ingolstadt,Germany
【Fターム(参考)】