説明

自動車シートチルト調節機構

【課題】スラグの周方面の移動が制限された自動車シートチルト調節機構を提供すること。
【解決手段】自動車シートチルト調節機構であって、各々、第1のロッキング支持表面(21)と係合する第1の接触シュー(22)、及び、第2の平行なロッキング支持表面(23)と係合する第2の接触シュー(24)を有する第1及び第2のスラグ(14)を有する。
第1及び第2のスラグの第1の接触シューは、チルト軸(Y)を中心として周方向に延び、各々、第1のスラグのそのロック位置とレリーズ位置の間での運動を案内すべくチルト軸に平行な第1及び第2の相補的な半径方向案内表面(47;46、49)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車シートチルト調節機構に関する。
【0002】
詳記するならば、本発明は、
− 第1のシートエレメントに止着されるように設計された第1のチークプレート、
− 第2のシートエレメントに止着され、前記第1のチークプレートに相対してチルト軸を中心として回転自在に取り付けるように設計された第2のチークプレート、及び、
− ロッキングシステム、特に、
・前記第1のチークプレートの第1のロッキング支持表面、
・前記第1のロッキング支持表面に平行な平面の中にある、前記第2のチークプレートの第2のロッキング支持表面、及び、
・各々、前記第1のロッキング支持表面と係合するように作られた第1の接触シュー、及び、前記第2の支持表面と係合するように作られた第2の接触シューを有する少なくとも第1及び第2のスラグで、前記チークプレートの相対回転を阻止すべく前記2つの支持表面と係合するロック位置から、前記チークプレートの相対回転を許可するために前記2つの支持表面の少なくとも1つともはや係合しない少なくとも1つのレリーズ位置へと移動できるスラグ
を有するロッキングシステム
を有する自動車シートチルト調節機構に関する。
【背景技術】
【0003】
特許文献1は、高い破断強さをもたらすことから完璧に満足できるそのような機構の一例について述べている。それでもなお、該機構の様々なコンポーネントの間の隙間を更に減じることが望ましいであろう。
【0004】
【特許文献1】仏国特許第2873633号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、少なくとも第1及び第2のスラグの第1の接触シューがチルト軸を中心として周方向に延び、各々、第1の半径方向案内表面と第2の半径方向案内表面を有し、両方がチルト軸に平行であり、この第1の半径方向案内表面と第2の半径方向案内表面が相補的であり、また、第1のスラグの第1の案内表面が、そのロック位置とレリーズ位置の間の第1スラグの移動全体を通して第2のスラグの第2の案内表面と係合するように作られていることを特徴とする発明通りの機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
述べた通りの配置により、スラグの周方向における可能な移動は制限される。
【0007】
本発明の好ましい実施例では、任意に下記の配置のいずれかを利用してもよい。
− 第1のスラグがそのロック位置とレリーズ位置の間の回転運動を有し、第1の案内表面が湾曲セクタを有し、第2の案内表面が第1のスラグの運動の間に湾曲セクタの中を摺動する突出部を有する。
− 第2のスラグがそのロック位置とその少なくとも1つのレリーズ位置の間を移動する最中も第1のスラグの第1の案内表面が第2のスラグの第2の案内表面と係合するように作られている。
− 各スラグが第1の接触シューと第2の接触シューの間に曲がった中間領域を有する。
− 第1の接触シューが第1の厚さの薄板により成形されており、第2の接触シューが第2の厚さの薄板により成形されており、スラグが第1のシューと第2のシューの間に厚肉の中間領域を有し、その厚さが第1の厚さと第2の厚さの総和に等しい、又は総和より大きい。
− 機構が、スラグを第1のレリーズ位置まで移動させるべくユーザにより移動させられるように設計された第1の操作部材を有し、この第1の操作部材が第1のストップ表面を有し、第1のスラグの第1の接触シューが、ほぼ平行な第1の主壁と第2の主壁を有する薄板により成形されており、この薄板のエッジが第1のスラグの第1の案内表面と第2の案内表面の一方を有し、第1のブロッキング表面と第2のブロッキング表面が互いに半径方向に間隔をあけており、第1の操作部材の第1のストップ表面が第1のブロッキング表面と接触し、第2のブロッキング表面が第1のロッキング支持表面と係合し、第1のスラグがロック位置にある時に第1の主壁が別のスラグの接触シューの主壁の上に載っている。
− 第1の支持表面が360°を占め、第2の支持表面が互いに角度的に間隔をあけた複数の別々のロッキングセクタを有する。
− 機構が、スラグをそのロック位置から第1のレリーズ位置(第1の支持表面が、第2のチークプレートとスラグからなるシステムに関してチルト軸を中心として自在に相対回転できる位置)に移動させるべくユーザにより操作できる第1の操作部材、及び、スラグをそのロック位置から第2のレリーズ位置(第2の支持表面が、第1のチークプレートとスラグからなるシステムに関してチルト軸を中心として自在に相対回転できる位置)に移動させるべく第1の操作部材に関係なくユーザにより操作できる第2の操作部材を有する。
【0008】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の2つの実施例の説明の過程で明らかになろう。以下、本発明に係る非制限的な例を添付図面に則して詳細に説明する。
【0009】
図中に付けられた参照符号は、同じ符号が同一又は同様のものを指す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1に概略的に示した通り、本発明は、一方で車両の床3に取り付けられたクッション2を、他方で少なくとも1つの調節機構5により横断方向の水平軸Yを中心としてクッション2上を旋回するバックレスト4を有する車両シート1に関する。
【0011】
調節機構5は、例えば、バックレスト4を解放し、軸Yを中心として旋回できるようにするために方向6aに転回できるハンドル6を使って制御することができる。
【0012】
バックレスト4はまた、補助制御部材7――例えばバックレスト4の頂部に位置してよく、外装ケーブル8のようなケーブル8によりヒンジ機構に連結されたハンドルなど――を有する。
【0013】
図2に示した通り、外装ケーブル8の心線8aの一端が、例えばハンドル6に連結されたレバー9に止着され、ケーブルの外装8bがバックレストフレームに取り付けられていてもよい。レバー9は、例えば、ハンドル7の操作によりケーブル8の心線8aが引っ張られ、ハンドル6のレバー9が前記方向6aと反対の角度方向に移動させられるように位置決めされてよい。
【0014】
図3〜5に示した通り、調節機構5は例えば下記のものを有してよい。
− 例えばY軸と同心のディスクの一般的形状を持ち、例えばクッション2のフレームに(又は、好ましくはバックレスト4のフレームに)止着された金属チークプレートのような第1の剛性連結部材10、
− 例えばY軸と同心のディスクの一般的形状を持ち、例えばクッション2のフレームに(又は、好ましくはバックレスト4のフレームに)止着された金属チークプレートのような第2の剛性連結部材11、
− 第1及び第2の剛性連結部材11、12の周囲にクリンプ接合されていて、これら2つの連結部材の間のY軸を中心とする相対旋回を可能にする金属リング12(クリンプ接合されたリング12は、しかしながら、2つの連結部材11、12をY軸を中心として回転させるべく自由にしておく一方、それらを互いに保持出来るチークプレート以外の何らかの手段が取って代わることができよう)、
− 及び、2つの連結部材11、12のY軸を中心とする相対旋回を阻止又は許可すべくそれらを選択的にロック又はレリーズするロッキングシステム13。
【0015】
図4〜7により詳細に示した通り、ロッキングシステム13は、円弧の一般的形状を持つ少なくとも1つの剛性スラグ14を有する。ここで考慮した例では、Y軸を中心として互いに60゜の角度で分配された6つのスラグ14があってよい。
【0016】
スラグ14は、本例において描かれた通り下記のものを有する制御装置15により制御される(図8及び9も参照)。
− ハンドル6及びレバー9に止着された剛性中心シャフト16、
− 例えば平板金属片であってよい第1及び第2のプレート43、44で、第1のプレートが第1の平面内を延び、第2のプレートが第2の別個の平面内を延び、これらの平面が両方とも回転軸Yに対して垂直に位置し、プレートが両方ともシャフト16に止着されている、
− 例えば第1のプレートと第2のプレートの間を延びる重ね合わされた平板金属片であってよい第1及び第2のカム17、18で、第1のプレートが第3の平面内を延び、第2のプレートが第4の別個の平面内を延び、これらの平面が両方とも回転軸Yに対して垂直に位置し、第1のカム17が第2の角度方向9aに弾性的に付勢され、第2のカム18が第1の角度方向6aに付勢される。
【0017】
前記カム17、18の弾性的な付勢は、例えば第1及び第2のばね19、20によりもたらされてよく、これらのばねは、例えば、外端がシャフト16に連結され、内端が対応するカムから突き出る突出ピン17a、17bで支持された、ほぼ同等の剛性を持つコイルばねであってよい。ばね19、20の内端は、例えば、シャフト16に回転円筒以外の形状を与え、ばね19、20の半径方向内側の部分をシャフト16の周囲に嵌合するように成形することにより、シャフト16に止着することができる。
【0018】
プレート43は、例えば、回転対称の形を持たず、シャフト16の形状に対して相補的である中心開口45を通して係合していることにより、シャフト16と共にY軸を中心として回転する。
【0019】
プレート43、44はまた、各々、それぞれY軸を中心として120゜の角度で配置された3つの作動部分43a、44aを有する。
【0020】
図面に示した例では、第1の連結部材10は、半径方向内向きに面する円形の第1のロッキング支持表面21を有する(考慮中の例では、第1のロッキング支持表面21は完全な円の形をなすが、単純に回転軸Yを中心とする1つ以上の円弧の形であってもよい)。
【0021】
前記第1のロッキング支持表面21は、第1のカム17の平面内に位置し、スラグ14の各々が、同じ平面内にある第1のロッキング接触シュー22を有し、これが、前記ロッキング支持表面21と係合し、それで、前記スラグ14を第1の連結部材10に相対して移動できなくするように設計されている。
【0022】
考慮中の例では、第1のロッキング支持表面21は、半径方向内向きに突き出る一連の歯であり、スラグのロッキング接触シュー22は、半径方向外向きに突き出る歯の形をなす。望むならば、第1のロッキング支持表面と第1のロッキング接触シューは、摩擦により作用し合う歯無し表面であってもよい。
【0023】
加えて、図5に示した通り、第2の連結部材11は、少なくとも1つの第2のロッキング支持表面23(考慮中の本例では、互いに60゜の角度で配置された6つのロッキング支持表面23)を有する。前記第2のロッキング支持表面23は、Y軸を中心とする円(詳記するならば、円弧)の形をなし、任意に、第1のロッキング支持表面21と同じ直径であってよい。
【0024】
第2のロッキング支持表面23は、第2のカム18の平面内で半径方向内向きに向き合う。従って、これらは、Y軸の方向において第1のロッキング支持表面21に直ぐ隣接する。
【0025】
スラグ14は各々、第2のカム18の平面内に位置し、第2の連結部材11の第2のロッキング支持表面23の1つと係合するように設計された第2のロッキング接触シュー24を有する。この第2のロッキング接触シューは、第1のロッキング接触シュー22に関して角度的に片寄っており、2つのロッキング接触シュー22、24の間で軸方向に重ならないように配置されている。
【0026】
考慮中の例では、第2のロッキング支持表面23と第2のロッキング接触シュー24は、それぞれ半径方向内向きに突き出る歯と半径方向外向きに突き出る歯からなるが、任意に、摩擦により作用し合う表面であってもよい。
【0027】
図5に見られる通り、第2の連結部材11はまた、Y軸を中心とする半径方向内向きに面する円形の案内表面25を有する。これらの案内表面25は各々、角度方向6aにおいて角度を付けて、半径方向内向きに突き出るストッパ27と半径方向外向きに突き出るノッチ26の間を延び、このノッチ26は別のストッパ27に隣接している(考慮中の例では3つのノッチ26と3つのストッパ27が設けられている)。
【0028】
案内表面25、ノッチ26及びストッパ27は、例えば、ロッキング接触シュー24においてスラグ14の3つに付けられた突出ピン28を使ってスラグ14と作用し合う。ピン28を付けたスラグとピンを付けていないスラグが互い違いにある。問題のピン28は、通常、スラグの第2のロッキング接触シュー24が第2の連結部材の第2のロッキング支持表面23と係合できるようにするために上記ノッチ26と係合させられる。
【0029】
図6及び7に示した通り、各スラグ14は、必要であれば、それぞれ第1及び第2のカム17、18の平面内に置かれ、それぞれ第1及び第2のロッキング接触シュー22、24を支持する第1及び第2の平形部品29、30を有する、切断され、曲げられた金属板の形を取ってよく、ここで、第2の平形部品も上記ピン28を付けてよい。平形部品は各々、Y軸の方向において向き合った側に2つの主壁29a、29b、30a、30bを有し、かつ、周方向エッジを有する(図12を参照)。各スラグの第1及び第2の平形部品29、30は、弓形の領域31により継着される。スラグ14は2つの別個の平面の中に2つの平形部品29、30を有するので、隣接し合う2つのスラグの第1及び第2の平形部品29、30は少なくとも部分的に重なり合う。第1のロッキング接触シュー22は各々、Y軸に平行に軸方向に延び、隣接するスラグの第2のロッキング接触シュー24における補助案内表面47と係合する案内ピン46を有する。案内表面47はほぼWの形をなし、調節機構が休止位置にある時、ピン46はWの中心の位置に来る。この中心の位置から両側に延びる線が、2つの湾曲した案内部分である。
【0030】
各スラグ14はまた、その半径方向内側のエッジに、それぞれ平形部品29、30に属する2つの支持表面33、34の間の中心凹部32を有してよい。支持表面33、34の方は、互いに対して角度を付けて半径方向内向きに斜めに延びる2つのレリーズフィンガ35、36の間に位置する。
【0031】
第1及び第2のカム17、18の外側エッジは、その上、互いに同一又は同様の形状であるが、角度的な向きが反対である。詳記するならば、第1のカム17は、角度的に方向6aにおいて半径方向外向きに斜めに延びる一連のフック37を有する。フックは、例えば個数6で、Y軸を中心として互いに60゜の角度で配置されていてよい。第2のカム18は上記フック37と同様のフック38を有するが、こちらは角度方向9aを指している。
【0032】
第1のカムの各フック37は、その上、角度方向6aにおいて前記フックの直後に来るカム表面39に結合している。各フック37と角度方向6aにおいてこれに続くカム表面39の間に、半径方向で第1のカム17の中まで延びる凹部41がある。
【0033】
第2のカム18も、カム表面40と凹部42を有し、各カム表面40が角度方向9aにおいてフック38の直後にあり、凹部42により先行のフック38(依然、角度方向9aにある)から分離されている。
【0034】
カム表面39、40は、それぞれスラグの支持表面33、34と支え合い、それで、調節機構が休止位置にある時、該スラグの第1及び第2のロッキング接触シュー22、24がそれぞれ第1及び第2のロッキング支持表面21、23と係合するように設計されている。
【0035】
2つのカムにおいて、カムフック37、38はスラグ凹部32で係合し、スラグレリーズフィンガ35、36はそれぞれ凹部41、42で係合する。
【0036】
カム17の6つのフック37のうち3つはピン17aを備えており、そのうち1つが、先に述べた通り、ばね19の一端に連結されている。ピン17aを付けたフック37とピンを付けていないフック37が周方向に互い違いにある。休止位置にあるとき、第1のプレート43は、その作動部分43aが各々半径方向で単一のピン17aと接触するように位置決めされている。
【0037】
第2のプレートは、同様に、2つのプレート43、44が2つのカムとの間でロストモーション接続を作るようにカム18に相対して位置決めされている。
【0038】
考慮中の例では、ロッキング接触シュー22、24は両方とも、ロッキング接触シュー22、24を形成する歯の主円により限定された、Y軸を中心とする同じ円筒形の回転表面に沿って位置する。
【0039】
円筒形表面の半径は、有利には、第1及び第2のロッキング支持表面21、23の半径より例えば1〜5%程度小さい(この半径も、考慮中の例におけるロッキング支持表面21、23の歯の主円により限定される)。これは、各スラグ14が、Y軸に垂直な平面においてロッキング支持表面21、23に相対して少し回転することによって自らの最良の位置を見出し得ることを意味する。例えば、この半径の差により、各スラグ14は、その第1及び第2のロッキング接触シュー22、24をそれぞれ第1及び第2のロッキング支持表面21、23と噛み合わせたまま、0.3〜1゜だけ少し回転してよい。ロッキング支持表面とロッキング接触シューが歯を付けた形である場合、この特徴は、特にこれらの歯が互いに可能な最良の噛み合いを見出し、それにより、第1の連結部材と第2の連結部材の間の角度遊びを一切なくし、第1の連結部材と第2の連結部材が極めて緊密にロックし合うのを確実にすることを意味する。両連結部材が特に緊密にロックし合うのは、ヒンジ機構が特に高いトルクを取らなければならない時、例えば、シートを据え付けた車両が事故に巻き込まれた時、スラグ14が生じた力を第1のロッキング支持表面21と第2のロッキング支持表面23の間で直接伝達する剪断の働きをするからである。
【0040】
上で述べた装置は下記の通り働く。
【0041】
図8及び9に示した通り、ヒンジ機構が休止位置にある時、各スラグの第1及び第2のロッキング接触シュー22、24はそれぞれ、第1及び第2の連結部材10、11に属する第1及び第2のロッキング支持表面21、23と噛み合っている。スラグ14は、第1及び第2のカム17、18のそれぞれのカム表面39、40と支持表面33、34の間の接触によりその噛み合った位置に維持される。カム17、18は、ばね19、20の弾性荷重によりそのブロック位置に維持される(図8及び9)。6つのカム表面39、40は、対応する6つのスラグの支持表面33、34と支え合う。この位置において、第1の連結部材10の第2の連結部材11に対するロッキングは非常に緊密である。
【0042】
図10及び11が示す通り、ユーザはバックレスト4の傾きを調節したい時、自らハンドル6を角度方向6aにおいて操作し、作動部分43aが第1のカム17のピン17aを押し、この第1のカム17のフック37がスラグ14のレリーズフィンガ35に係合し、スラグ14がその第2のロッキング接触シュー24を中心として旋回するようになるまで、前記第1のカムを角度方向6aにおいてブロック解除位置まで移動させる。この時、前記第2のロッキング接触シュー24は対応する第2のロッキング支持表面23と噛み合ったままである。こうして、スラグ14は、第1のロッキング接触シュー22が第1のロッキング支持表面21と衝突しない第1のレリーズ位置に到達する。
【0043】
第1及び第2のカムのピン17a及び18aは、この運動の間に作動部分44aが第2のカム18と衝突しないように角度的に片寄っており、これで、カム表面40はスラグ14の支持表面34と接触したままになり、第2のロッキング接触シュー24が第2のロッキング支持表面23と噛み合った状態に確実に留まることになる。
【0044】
スラグ14の旋回運動は、第1及び第2のロッキング接触シュー22、24が第1及び第2のロッキング支持表面21、23の半径にほぼ等しい、又は、ロッキング支持表面21、23の前記半径に等しい半径を持つという事実により容易にされる。ロッキング接触シュー22、24の半径は、有利には、ロッキング支持表面21、23の半径より僅かに小さくてよい。上述の運動はまた、スラグ14が接触シューの先端の一方又は他方を中心として旋回する時にスラグ14と連結部材10とのいかなる衝突も回避されるように設計される前記接触シューの先端の角度を鋭くすることによっても容易にされる。接触シューの運動は、案内ピン46が結合相手の案内表面47の半径方向で最も中心寄りの湾曲部分の中を摺動することによって半径方向に案内させる。接触シューの運動はまた、該接触シューの主面29aに面する隣接の接触シューの隣接面30aの支持によっても案内される。
【0045】
ヒンジ機構が図10及び11に示した位置にある時、すなわち、その第1のカム17がブロック解除位置にあって、第2のカム18がブロック位置にある時、シートバックレスト4は、ユーザが手動で、一般に、バックレスト4を前方へ旋回させようとするばね荷重に抗して押すことによって傾けることができる。
【0046】
望むならば、チークプレート10がチークプレート11に相対して所定の角度位置にない時、第1のカム17が確実にブロック解除位置にあるようにすることが可能である。この目的のため、チークプレート10の内側の面が、例えば大径ゾーン51のどちらかの側で角度を付けて延びる円弧(図4)の形の円形案内表面50であってよい。スラグ14の1つが軸方向に延びるピン52を有し(図7)、カム17がブロック位置まで移動するのを許される角度範囲内にチークプレート10がある時、前記ピンはゾーン51の中に位置し、ここで、スラグ14はチークプレート10の歯21に抗してロックするのを許される。
【0047】
他方、ピン52が案内表面50に面している時、該案内表面は、第1のロッキング接触シュー22が歯21に抗してロックするのを阻止し、その結果、カム17は通常のブロック解除位置に維持される。
【0048】
ユーザは、シート1の背後のスペースに接近したい場合、図1に示したハンドル7を操作し、そこでレバー9とシャフト16を角度方向9aに旋回させることにより、自らバックレスト4を前方へいっぱいに倒すことができる。
【0049】
この運動の最中に、第1のプレート43の作動部分43aは、ピン17aとピン18aの間に角度的片寄りがあるために第1のカム17と衝突しない。これで、第1のカム17はそのブロック位置に留まり、第1のロッキング接触シュー22を第1のロッキング支持表面21と噛み合った状態に保つ。
【0050】
他方、第2のカムのフック38は、スラグ14のレリーズフィンガ36に係合し、スラグ14をその第1のロッキング接触シュー22を中心として旋回させる。前記スラグ14は、これで、第2のレリーズ位置へ移動し、そこで、第2のロッキング接触シュー24がもはや第2のロッキング支持表面23と衝突しなくなる。この接触シューの運動は、ピン46の上を摺動する案内表面47の半径方向で最も外側の湾曲部分により案内される。
【0051】
加えて、この運動の最中に、スラグのピン28は第2の連結部材11のノッチ26から抜け出し、バックレストが前方へ傾き始めた途端、前記ピン28は案内表面25に突き当たり、スラグの第2のロッキング接触シュー24が第1のロッキング支持表面と再び係合するのを阻止する。バックレストの前方への旋回運動の最中、ピン28が案内表面25と接触した状態に留まる一方、制御装置15全体はバックレスト4と共に移動し、スラグ14及び第1の連結部材10がY軸を中心として回転するにつれてこれらと共に移動する。
【0052】
ユーザが前方へたたんだ後のシートバックレスト4を再び起こす時、この運動は、第2の連結部材11に相対するスラグ14の掛け止め位置を限定するストッパ27にピン28が当たるまで、スラグ14が方向9aと反対の角度方向に移動する角度運動を生じさせる。ピン28は、その後、ノッチ26と係合し、これにより、スラグ14の第2のロッキング接触シュー24が再び第2のロッキング支持表面23と噛み合うことが許される。
【0053】
言及するならば、ピン28がストッパ27に当たると、スラグ14が第1のロッキング支持表面21と押し合い、その結果、各スラグの第1のロッキング接触シュー22が掛け止めから外れる危険は無くなる。
【0054】
これで、シートバックレスト4は、ハンドル7が操作される前に占めていたのとちょうど同じ角度位置で確実にロックされることになる。
【0055】
再ロックが完了すると、スラグ14とそのカムとそれぞれのロッキング支持表面の間で小さい隙間は許されるので、スラグは自動的に位置決めされる。その小さい隙間は、スラグが回転軸Yに垂直な平面内でする僅かな回転、少なくとも0.3゜の回転に相当する。その結果、ロッキング接触シュー22、24は対応するロッキング支持表面21、23と共に最適な形でロックされることになる。
【0056】
第2の実施例では、スラグ14は、ベンド31を持たない形に変えられている。図13に示した通りのスラグは、例えば鍛造により作られ、第2の接触シュー24が厚さT24を有し、第1の接触シュー22が厚さT22を有し、これら2つの接触シューをつなぐ中心部分48が、前記第1の接触シューの厚さと第2の接触シューの厚さの総和に等しいか総和より大きい、例えばこの総和に等しい作りであってよい。第1の実施例の案内ピン46は、従ってここで、第2の接触シュー24から続く案内突出部49に取って代わられる。案内突出部49は、スラグの1つがそのロック位置とレリーズ位置の間を移動する時、この運動を案内すべく隣接スラグの案内表面47と噛み合う。機構の残りの部分は、この第2の実施例では変更されていない。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一実施例において少なくとも1つのヒンジ機構を使ってバックレストの傾きが調節できるシートの概観図である。
【図2】図1に示したのと同じシートのバックレストの角度調節を可能にするヒンジ機構の詳細図である。
【図3】第1の実施例について図2でマークした通りのIII−IIIにおける横断面図である。
【図4】図3に示したのと同じヒンジ機構の分解図である。
【図5】図4と同様であるが、図4でのV方向から見た図である。
【図6】図4と同じ方向から見た、図4のヒンジ機構のロッキングシステムの細部を示す分解図である。
【図7】図5と同じ方向から見た、図6と同様の図である。
【図8】調節機構がロックされた状態の図3に示したのと同じヒンジ機構の、図3の線C−Cにおける横断面図である。
【図9】調節機構がロックされた状態の図3に示したのと同じヒンジ機構の、図3の線B−Bにおける横断面図である。
【図10】バックレストの傾きを調節している最中の調節機構を示す、図8と同様の図である。
【図11】バックレストの傾きを調節している最中の調節機構を示す、図9と同様の図である。
【図12】第1の実施例に係る2つの調節スラグの斜視図である。
【図13】第2の実施例に係る2つの調節スラグの斜視図である。
【符号の説明】
【0058】
1 シート
2 クッション
3 床
4 バックレスト
5 調節機構
6 ハンドル
7 補助制御部材ないしはハンドル
8 外装ケーブル
9 レバー
10 第1の剛性連結部材ないしはチークプレート
11 第2の剛性連結部材ないしはチークプレート
12 リング
13 ロッキングシステム
14 スラグ
15 制御装置
16 中心シャフト
17 第1のカム
18 第2のカム
19 第1のばね
20 第2のばね
21 第1のロッキング支持表面
22 第1のロッキング接触シュー
23 第2のロッキング支持表面
24 第2のロッキング接触シュー
25 案内表面
26 ノッチ
27 ストッパ
28 ピン
29 第1の平形部品
30 第2の平形部品
31 弓形領域
32 中心凹部
33 支持表面
34 支持表面
35 レリーズフィンガ
36 レリーズフィンガ
37 フック
38 フック
39 カム表面(第1のカムの)
40 カム表面(第2のカムの)
41 凹部(第1のカムの)
42 凹部(第2のカムの)
43 第1のプレート
46 案内ピン
47 案内表面
49 案内突出部
50 案内表面
51 大径ゾーン
52 ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のシートエレメントに止着されるように設計された第1のチークプレート(10)と、
第2のシートエレメントに止着され、前記第1のチークプレートに相対してチルト軸(Y)を中心として回転自在に取り付けるように設計された第2のチークプレート(11)と、
ロッキングシステム(13)と、を有する自動車シートチルト調整機構であって、
前記ロッキングシステム(13)は、
・前記第1のチークプレートの第1のロッキング支持表面(21)と、
・前記第1のロッキング支持表面に平行な平面の中にある、前記第2のチークプレートの第2のロッキング支持表面(23)と、
・各々、前記第1のロッキング支持表面(21)と係合するように作られた第1の接触シュー(22)と、前記第2の支持表面(13)と係合するように作られた第2の接触シュー(24)を有する少なくとも第1及び第2のスラグ(14)であって、前記チークプレートの相対回転を阻止すべく前記2つの支持表面と係合するロック位置から、前記チークプレートの相対回転を許可するために前記2つの支持表面の少なくとも1つともはや係合しない少なくとも1つのレリーズ位置へと移動できるスラグと、
を有しており、
少なくとも前記第1及び第2のスラグの前記第1の接触シュー(22)が前記チルト軸を中心として周方向に延び、各々、第1の半径方向案内表面(47)と第2の半径方向案内表面(46、49)を有し、両方がチルト軸に平行であり、前記第1の半径方向案内表面と第2の半径方向案内表面が相補的であり、また、前記第1のスラグの第1の案内表面が、そのロック位置とレリーズ位置の間の前記第1スラグの移動全体を通して前記第2のスラグの前記第2の案内表面と係合するように作られていることを特徴とする調節機構。
【請求項2】
前記第1のスラグ(14)がそのロック位置とレリーズ位置の間の回転運動を有し、前記第1の案内表面が湾曲セクタ(47)を有し、前記第2の案内表面が第前記1のスラグの運動の間に前記湾曲セクタの中を摺動する突出部(46、49)を有する、請求項1に記載の調節機構。
【請求項3】
前記第2のスラグがそのロック位置とその少なくとも1つのレリーズ位置の間を移動する間も前記第1の案内表面(47)が前記第2のスラグの前記第2の案内表面(46、49)と係合するように作られている、請求項1又は2に記載の調節機構。
【請求項4】
各スラグ(14)が前記第1の接触シューと第2の接触シューの間に曲がった中間領域(31)を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の調節機構。
【請求項5】
前記第1の接触シュー(22)が第1の厚さの薄板(29)により成形されており、前記第2の接触シュー(24)が第2の厚さの薄板(30)により成形されており、前記スラグが前記第1のシューと第2のシューの間に厚肉の中間領域(48)を有し、その厚さが前記第1の厚さと第2の厚さの総和に等しい、又は総和より大きい、請求項1〜3のいずれか1項に記載の調節機構。
【請求項6】
前記スラグを第1のレリーズ位置まで移動させるべくユーザにより移動させられるように設計された第1の操作部材(17)を有し、前記第1の操作部材が第1のストップ表面(40)を有し、前記第1のスラグの第1の接触シューが、ほぼ平行な第1の主壁と第2の主壁を有する薄板(29)により成形されており、前記薄板のエッジが前記第1のスラグの前記第1の案内表面(47)と前記第2の案内表面(46、49)の一方を有し、第1のブロッキング表面(33)と第2のブロッキング表面が互いに半径方向に間隔をあけており、前記第1の操作部材の第1のストップ表面が前記第1のブロッキング表面と接触し、前記第2のブロッキング表面が前記第1のロッキング支持表面(21)と係合し、前記第1のスラグがロック位置にある時に前記第1の主壁が別のスラグの接触シューの主壁の上に載っている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の調節機構。
【請求項7】
前記第1の支持表面(21)が360°を占め、前記第2の支持表面(23)が互いに角度的に間隔をあけた複数の別々のロッキングセクタを有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の調節機構。
【請求項8】
前記スラグをそのロック位置から第1のレリーズ位置(前記第1の支持表面(21)が、前記第2のチークプレート(11)と前記スラグ(14)からなるシステムに関してチルト軸を中心として自在に相対回転できる位置)に移動させるべくユーザにより操作できる第1の操作部材(17)と、前記スラグ(14)をそのロック位置から第2のレリーズ位置(前記第2の支持表面(23)が、前記第1のチークプレート(10)と前記スラグ(14)からなるシステムに関してチルト軸を中心として自在に相対回転できる位置)に移動させるべく前記第1の操作部材に関係なくユーザにより操作できる第2の操作部材(18)を有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の調節機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−66410(P2009−66410A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−233130(P2008−233130)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【出願人】(503411060)フォルシア シエジュ ドトモビル (25)
【Fターム(参考)】