説明

自動車ドアハンドル用灯具

【課題】発光部への傷や汚れの付着を防止するとともに、夜間時でのドアハンドルの視認を容易にする。
【解決手段】自動車のドア10外側の長尺なドアハンドル20に設けられる灯具1は、LED2と、ドアハンドル20の内部に設けられるとともに、ドア10外側に露出する第1発光部43a及び第2発光部43bを有し、LED2からの光を第1発光部43a及び第2発光部43bから出射させる導光体4とを備える。第1発光部43a及び第2発光部43bは、ドアハンドル20の長尺方向に沿って当該ドアハンドル20の把持部20aを挟む2箇所に配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車ドアハンドル用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、夜間におけるドアハンドルの視認性を高めることを目的として、ドア外側のドアハンドル周辺部に灯具を設けた車両(自動車)が知られている。
【0003】
この種の灯具として、例えば特許文献1には、ドアハンドル下方に設けられた照明灯の光源の光を光ファイバで導光させることによって、ドアハンドルの先端部に全幅に亘って設けられた発光部を発光させるようにしたものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3193587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の灯具では、発光部がドアハンドルの先端部に設けられているため、ユーザーがドアハンドルを把持したときに発光部も触ることになり、発光部に傷や汚れが付きやすい。
【0006】
本発明の課題は、発光部への傷や汚れの付着を防止するとともに、夜間時にドアハンドルを容易に視認することのできる自動車ドアハンドル用灯具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、自動車のドア外側の長尺なドアハンドルに設けられる自動車ドアハンドル用灯具において、
光源と、
前記ドアハンドルの内部に設けられるとともに、ドア外側に露出する発光部を有し、前記光源からの光を前記発光部から出射させる導光体と、
を備え、
前記発光部は、前記ドアハンドルの長尺方向に沿って当該ドアハンドルの把持部を挟む2箇所に配設されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の自動車ドアハンドル用灯具において、
2箇所の前記発光部は、第1発光部と、当該第1発光部よりも前記長尺方向に直交する方向へ短尺な第2発光部と、からなり、
前記導光体は、
前記第1発光部及び前記第2発光部が両端に配設されるように、前記長尺方向に沿って長尺に形成されるとともに、
前記光源からの光を当該導光体内へ入射させる入光部が、前記長尺方向の中央よりも前記第1発光部寄りの位置に配設されていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の自動車ドアハンドル用灯具において、
前記導光体は、前記発光部の後方に位置する部分が、当該導光体内を進む光を前記発光部へ反射させる反射面と、当該導光体の厚さ方向に直交する段面とからなる階段状に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、導光体の発光部がドアハンドルの長尺方向に沿って当該ドアハンドルの把持部を挟む2箇所に配設されているので、ユーザーが把持部を把持するときに発光部を触れることがない。また、2箇所の発光部に挟まれた部分として、夜間時でもドアハンドルの把持部を容易に視認することができる。したがって、ユーザーの把持による発光部への傷や汚れの付着を防止するとともに、夜間時にドアハンドルを容易に視認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態における自動車ドアハンドル用灯具を備えるドアの斜視図である。
【図2】図1のドアの分解斜視図である。
【図3】自動車ドアハンドル用灯具が備える導光体の正面図である。
【図4】自動車ドアハンドル用灯具が備える導光体の背面図である。
【図5】図3のII−II線での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、本実施形態における自動車ドアハンドル用灯具(以下、単に灯具という)1を備えるドア10の斜視図であり、図2は、このドア10の分解斜視図である。なお、図1及び図2では、ドア10のうちのドアハンドル周辺部のみを図示している。
【0014】
これらの図に示すように、ドア10は、自動車のサイドドアであり、車両外側に露出するドアパネル11を備えている。ドアパネル11には、車両前後方向(以下、Y方向とする)へ長尺な略楕円状の開口部11aが形成されており、この開口部11aには、Y方向へ長尺なドアハンドル20がその上下に隙間を開けた状態でドア10の外側に露出するように嵌合されている。
【0015】
ドアハンドル20は、ユーザーがドア10を開ける際に把持する把持部20aをY方向の略中央に有している。このドアハンドル20は、灯具1を内部に備えており、この灯具1が前面カバー21及び後面カバー22によって車両左右方向(以下、X方向とする)に挟まれた状態でドア10に固定されている。但し、前面カバー21は、灯具1のうち、後述する導光体4の第1発光部43a及び第2発光部43bのみをドア10の外側に露出させている。なお、ドアハンドル20の機構については、本発明の構成に関連しないため、説明を省略する。
【0016】
灯具1は、LED2と、制御基板3と、導光体4とを備えている。
このうち、LED2及び制御基板3は、導光体4と後面カバー22との間に配設されている。また、LED2は、後述する導光体4の入光部42と対向するように配置されている(図5参照)。
【0017】
図3及び図4は、導光体4の正面図及び背面図であり、図5は、図3のII−II線での断面図である。なお、以下の説明では、「前」及び「後」との記載は、特に断らない限り、X方向のうちの車両外向き及び車両内向きを指すものとする。
これらの図に示すように、導光体4は、ドアハンドル20の正面視形状と同形状に形成された薄板状の導光レンズである。導光体4の後面には、上下方向(以下、Z方向とする)の中心線(図3の一点鎖線)上であってY方向の中央よりもやや一端側寄りの位置を中心とする、背面視円形状の凸部41が形成されている。この凸部41の中心には、LED2から出射された光を導光体4内へ入射させる入光部42が半球凹面状に形成されている。
【0018】
導光体4のうち入光部42よりもY方向の一端側(図中の左側)では、端部がY方向内側に向かって屈曲しており、当該端部の前面が第1発光部43aを構成している。この第1発光部43aは、上半部では上端に向かって幅が漸減し、下半部では略同一の幅となるように形成されており、その下端が入光部42と同一のY方向位置にまで至っている。また、第1発光部43aは、前面側へ突出しており、前面カバー21に覆われることなくドア10の外側に露出するように構成されている。
【0019】
また、入光部42よりも一端側の導光体4前面のうち、凸部41の前方に位置する部分には、入光部42を中心とする正面視略半円状の第1反射面44aが形成されている。この第1反射面44aは、LED2を焦点とする断面円弧状の全反射面であり、入光部42から導光体4内に入射した光をYZ平面内で放射状に広がるように全反射させる。
【0020】
また、入光部42よりも一端側の導光体4後面のうち、凸部41を除く部分には、当該部分が入光部42を中心とする放射状に分割されてなる複数の反射ブロック45a,…が形成されている。各反射ブロック45aのうち、第1発光部43aの後方に位置する部分は、傾斜面である第2反射面46aと、YZ平面に平行な段面47aとが交互に連なる階段状に形成されている。より詳しくは、この階段状部分は、各段面47aが入光部42から離れるに連れて段階的に前方に位置するように形成されており、各第2反射面46aは、入光部42を通る反射ブロック45aの中心線で当該反射ブロック45aを切断したときの断面において、YZ平面に対して45度の角度をなす傾斜面となっている。この第2反射面46aは、第1反射面44aによってYZ平面内で放射状に広がるように全反射された光をX方向へ更に全反射させて、第1発光部43aへ向かわせる。
【0021】
ここで、YZ平面に平行な段面47a,…は第1反射面44aからの光を反射しないため、第1発光部43aを正面から見たときに当該段面47aの前方に位置する部分がダーク部となってしまう。しかし、このダーク部を減らすために単純に段面47aを小さくしてしまうと、傾斜面である第2反射面46aが大きくなり、導光体4がX方向に厚くなってしまう。そこで、反射ブロック45aの分割ピッチ角pを、各反射ブロック45aの前方に位置する第1発光部43a部分から入光部42までの距離に応じて変えたうえで、導光体4が過度に厚くならない範囲で第1発光部43aが全体に亘って均一な光度で発光するように、各反射ブロック45aでの第2反射面46aの総面積を適宜設定している。具体的には、反射ブロック45aの分割ピッチ角pは、各反射ブロック45aでの第1発光部43a部分が入光部42に近いほど大きく、入光部42から遠いほど小さくなるように設定している。
【0022】
一方、導光体4のうち入光部42よりもY方向の他端側(図中の右側)は、一端側よりも狭い略同一のZ方向幅となるように形成されており、その端部の前面が第2発光部43bを構成している。この第2発光部43bは、下方に向かって同一幅で先端側へ傾斜するように形成されている。また、第2発光部43bは、前面側へ突出しており、前面カバー21に覆われることなくドア10の外側に露出するように構成されている。
【0023】
また、入光部42よりも他端側の導光体4前面のうち、ほぼ凸部41の前方に位置する部分には、第3反射面44bが形成されている。この第3反射面44bは、LED2を焦点とする断面円弧状の全反射面であり、入光部42から導光体4内に入射した光をY方向に沿った他端への平行光となるように全反射させる。
【0024】
また、入光部42よりも他端側の導光体4後面のうち、第2発光部43bの後方に位置する部分には、当該部分がZ方向に均等な幅で分割されてなる複数の反射ブロック45b,…が形成されている。各反射ブロック45bのうち、第2発光部43bの後方に位置する部分は、傾斜面である第4反射面46bと、YZ平面に平行な段面47bとが交互に連なる階段状に形成されている。より詳しくは、この階段状部分は、各段面47bが入光部42から離れるに連れて段階的に前方に位置するように形成されており、各第4反射面46bは、XY断面でYZ平面に対して45度の角度をなす傾斜面となっている。この第4反射面46bは、第3反射面44bによってY方向に沿って全反射された光をX方向へ更に全反射させて、第2発光部43bへ向かわせる。
【0025】
ここで、YZ平面に平行な段面47b,…は第3反射面44bからの光を反射しないため、第2発光部43bを正面から見たときに当該段面47bの前方に位置する部分がダーク部となってしまう。しかし、このダーク部を減らすために単純に段面47bを小さくしてしまうと、傾斜面である第4反射面46bが大きくなり、導光体4がX方向に厚くなってしまう。そこで、導光体4が過度に厚くならない範囲で第2発光部43bが全体に亘って均一な光度で発光するように、各反射ブロック45bのZ方向幅と、各反射ブロック45bでの第4反射面46bの総面積とを適宜設定している。
【0026】
以上の構成を具備する灯具1では、図5に示すように、LED2から出射されて入光部42から導光体4内の一端側へ入射した光は、第1反射面44aによってYZ平面内で放射状に広がるように全反射され、第2反射面46a,…でX方向へ更に全反射された後に、第1発光部43aから前方へ出射する。一方、LED2から出射されて入光部42から導光体4内の他端側へ入射した光は、第3反射面44bによってY方向へ全反射され、第4反射面46b,…によってX方向へ更に全反射された後に、第2発光部43bから前方へ出射する。こうして、ドアハンドル20の把持部20aを挟むように配設された第1発光部43a及び第2発光部43bが発光する。
【0027】
以上の灯具1によれば、導光体4の第1発光部43a及び第2発光部43bが、ドアハンドル20の長尺方向に沿って当該ドアハンドル20の把持部20aを挟む2箇所に配設されているので、ユーザーが把持部20aを把持するときに第1発光部43a及び第2発光部43bを触れることがない。また、第1発光部43a及び第2発光部43bに挟まれた部分として、夜間時でもドアハンドル20の把持部20aを容易に視認することができる。したがって、ユーザーの把持による第1発光部43a及び第2発光部43bへの傷や汚れの付着を防止するとともに、夜間時にドアハンドル20を容易に視認することができる。
【0028】
また、導光体4だけを通してLED2からの光を出射させているので、光源からの光を光ファイバによって発光部まで導光していた従来と異なり、光ファイバによる光の減衰を生じさせることなく、光ファイバを要しない簡易な構成で面状発光を実現することができる。
【0029】
また、導光体4では、第1発光部43aが第2発光部43bよりもZ方向へ長尺に形成されており、入光部42がY方向の中央よりも第1発光部43a寄りの位置に配設されているので、当該入光部42を単純にY方向の中央に配置したときに比べて、入光部42(第1反射面44a)からYZ平面内で放射状に広がる光のうち、第1発光部43aへ向かう有効な光の量を増やすことができ、ひいては、効率良く第1発光部43aを発光させることができる。
【0030】
また、導光体4の後面のうち、第1発光部43a(第2発光部43b)の後方に位置する部分が、第2反射面46a(第4反射面46b)と、YZ平面に平行な段面47a(段面47b)とからなる階段状に形成されているので、導光体4を薄く形成することができ、ひいては、軽量且つ安価に形成することができる。
【0031】
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0032】
例えば、上記実施形態では、第1発光部43a及び第2発光部43bが把持部20aを挟んで車両前後方向に並設されることとしたが、把持部20aを挟んで上下方向に並設されることとしてもよい。
【0033】
また、発光部は、第1発光部43a及び第2発光部43bの2箇所に限定されず、3箇所以上であってもよい。例えば、第1発光部43aから第2発光部43bに亘って、ドアハンドル20の中央部を直線状に発光させてもよい。
【0034】
また、第1発光部43a及び第2発光部43bは、特に限定はされないが、例えば、ユーザーが車外からキーレスエントリー操作を行ったときに点灯し、その後にドアハンドル20の把持部20aが把持されたときに消灯することとしてもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 灯具(自動車ドアハンドル用灯具)
2 LED(光源)
3 制御基板
4 導光体
41 凸部
42 入光部
43a 第1発光部
43b 第2発光部
44a 第1反射面
44b 第3反射面
45a,45b 反射ブロック
46a 第2反射面
46b 第4反射面
47a,47b 段面
10 ドア
11 ドアパネル
11a 開口部
20 ドアハンドル
20a 把持部
21 前面カバー
22 後面カバー
p 分割ピッチ角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のドア外側の長尺なドアハンドルに設けられる自動車ドアハンドル用灯具において、
光源と、
前記ドアハンドルの内部に設けられるとともに、ドア外側に露出する発光部を有し、前記光源からの光を前記発光部から出射させる導光体と、
を備え、
前記発光部は、前記ドアハンドルの長尺方向に沿って当該ドアハンドルの把持部を挟む2箇所に配設されていることを特徴とする自動車ドアハンドル用灯具。
【請求項2】
2箇所の前記発光部は、第1発光部と、当該第1発光部よりも前記長尺方向に直交する方向へ短尺な第2発光部と、からなり、
前記導光体は、
前記第1発光部及び前記第2発光部が両端に配設されるように、前記長尺方向に沿って長尺に形成されるとともに、
前記光源からの光を当該導光体内へ入射させる入光部が、前記長尺方向の中央よりも前記第1発光部寄りの位置に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の自動車ドアハンドル用灯具。
【請求項3】
前記導光体は、前記発光部の後方に位置する部分が、当該導光体内を進む光を前記発光部へ反射させる反射面と、当該導光体の厚さ方向に直交する段面とからなる階段状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の自動車ドアハンドル用灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−21285(P2012−21285A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158350(P2010−158350)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】