説明

自動車両用燃料濾過器

【課題】燃料タンク内に設置することができる燃料濾過器を提供する。
【解決手段】濾過器ハウジング(4)と、前記ハウジング(4)内に形成された燃料入口(2)および燃料出口(3)と、ならびに前記ハウジング(4)内に配列された円筒形の濾過要素(6)と、所定の場合においては、前記燃料の流動を可能にするように前記濾過要素(6)の端部を閉じる終端要素(13、14)と、を有する自動車両用燃料濾過器(1)であって、前記燃料濾過器(1)の前記濾過要素(6)の構成および設置が影響を及ぼされないように、管状の帯電防止性挿入部(8)は、折畳紙の前記濾過要素(6)の内面により、接地要素として車両の本体電位に電気的に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濾過器ハウジングと、このハウジング内に形成された燃料入口および燃料出口と、ハウジング内に配列された円筒形の濾過要素と、所定の場合において、燃料の流動を可能にするように濾過要素の端部を閉じる終端要素と、を有し、濾過要素が、車両の本体電位に接続される接地要素に電気的に接続される車両用燃料濾過器に関する。
【背景技術】
【0002】
ガソリンエンジン車両は、絶縁プラスチックハウジングおよび絶縁濾過器媒体等の、燃料タンク内又はその外側に配列される燃料濾過器を絶縁する構成部を使用して製造される。燃料が濾過器を通じて流れる際に、可燃性物質と絶縁材料で作られた濾過器の構成部との間で静電帯電が起こる。濾過器の構成部は絶縁特性を有するため、電荷分離は濾過器の構成部内に大きな静電電圧を引き起こす場合がある。このような場合においては、環境条件および燃料品質に応じて、およそ20〜24kVの電圧を引き起こすこともできる。この大きな静電電圧は、燃料濾過器の構成部と車両の他の部分、特に燃料タンクとの間において、火花の形態である静電放電に繋がる場合があり、このような燃料タンク内で生じた火花は、車両の燃料システム内において不要な熱的事象に繋がることがある。
【0003】
今日用いられている帯電防止特性も備えた燃料濾過器の場合においては、十分な接地又は燃料用の接地経路を提供する様々な解決手段が提供されている。
【0004】
主な解決手段では、燃料濾過器は部分的または全体的に導電性材料で作られるか、あるいは導電性にされる。例えば、米国特許明細書第5,164,879号により記載されているように、濾過器ハウジング全体を導電性プラスチックで作る解決手段が知られている。他の形態によれば、番号VP7ALU‐9N011‐BAとして登録されているVisteon社の燃料濾過器のように、濾過器ハウジングの一部分のみが導電性プラスチックで形成され、あるいは、濾過器ハウジングが少なくとも2つの層から成り、その最内層が導電層として形成される周知の解決手段がある(米国特許第6,453,870号明細書参照)。
【0005】
第2の主な傾向では、濾過要素それ自体は部分的または全体的に導電性要素として作られ、導電性のエンドキャップが濾過要素に設置される解決手段が知られている。このような解決手段は、米国特許第6,168,713号明細書により開示されている。別の提案、又は解決手段によれば、米国特許第6,168,713号明細書により開示されている解決手段の場合のように、導電性の濾過器媒体は濾過要素内で用いられ、多層状の濾過器媒体/濾過要素が用いられ、その1つの層が導電性である解決手段もある。この例として、欧州特許第0402657号明細書または米国特許第5,527,569号明細書に記載されている。
【0006】
他の周知の解決手段としては、導電性材料で作られた網目状物を濾過要素の外面上に設置すること等により、濾過器用継手に導電性の構成部を提供することである。このような解決手段は、米国特許第6,464,870号明細書に開示されている。このような解決手段の欠点は、網目状物が濾過要素間に設置するために十分に剛性でなければならず、その上、剛性は網目状物が濾過要素と接触さえしないことを意味するため、整備が比較的煩雑であることであり、そして、折畳紙の挿入が慣習的であるため、損傷を受ける場合がある。別の欠点として、製造者または供給者が寸法系列で濾過要素を作ることであり、網目状物が設けられる際に、濾過要素が濾過器ハウジングの内部でさらに嵌合するように、より小さい外径で濾過要素を作る必要がある。
【0007】
周知の解決手段の共通の欠点は、適した接地の構成が非常に複雑な追加の手段を要することであり、これは、多数の部分の場合において、相当な超過労働および時間消費、ひいては余分な費用を伴う。さらなる関心は、接地の恒久的な実現であり得、これは、使用の条件、用いられる材料によっても左右され、その上燃料によっても影響される。
【0008】
周知のように、燃料濾過器の挿入部の構成は、利用可能な設置空間、すなわち、濾過要素の外径により決定され、終端要素(キャップ)の直径については、任意に増加させることができない。導電性網目状物は、終端要素に流電的に接続され、同様に、伝導性材料で作られる必要があるため、網目状物の使用により、濾過要素の材料として用いられる濾紙に対して利用可能な体積、つまり、混入物を吸収する濾紙の能力が減る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、第一に、燃料タンク内に設置することができる燃料濾過器を提供することにあり、そのために、必須の接地が、従来の製造技術によっても、新たな技術の開発および導入によっても実施されないが、代わりに、製造または使用される濾過要素と容易に組み合わされ、かつ、燃料濾過器を通じて流れる燃料の長時間且つ広範な温度範囲内の静電帯電を防ぐ接地要素を使用して実施される。
【0010】
燃料の流動に著しく影響することなく、且つ濾過要素を収容する寸法を変更することなく、安定した濾過効率を保証し、十分に大きな表面と帯電防止効果を有する濾過要素用の要素を用いた場合、安定した状態で燃料濾過器を製造して設置することができることを見出した。
【0011】
濾過器ハウジングと、濾過器ハウジング内に形成された燃料入口および燃料出口と、を有する、自動車両内で用いることができる燃料濾過器によって、上述した問題を解決している。濾過器ハウジング内に配置された円筒形の濾過要素があり、その端部は燃料の流動を可能にする終端要素により遮断される。車両の本体電位に電気的に接続された設置要素は、新規な方法で濾過要素の内面に接合される。
【0012】
本発明のいくつかの特に有利な実施形態が下位の請求項に含まれる。
【0013】
以下、添付図面を用いて、本発明のいくつかの実施形態について、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態による燃料濾過器の縦断面図である。
【図2】図1における燃料濾過器の線II−IIに沿った横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1の縦断面図において、および、図2の横断面図において、本発明の一実施形態による燃料濾過器有利を示しているが、これは、本発明の特許請求の範囲に含まれる保護の範囲を限定するものではない。
【0016】
接地とは、接地要素が自動車両の本体と直接的で流電的に接続している状態にあることを意味している。今日の自動車両の場合では、大部分は、搭載エネルギー源の陰極(電池、発電機)が自動車両の金属体に直接的に接続されている。しかし、本発明の解決手段としては、陰性体を有する自動車両、あるいは、内燃エンジンを有し、かつ燃料供給システム内に提案されている濾過器の解決手段を含む他の設計に限定されない。
【0017】
提案された濾過器の実施形態のために燃料タンク内の設置を意図しているが、燃料濾過器は燃料タンク内になくても、同じ結果を生み出すこともできる。
【0018】
燃料濾過器1は帯電防止特性を有する。少なくとも1つの入口2および1つの出口3を有する燃料濾過器1は、当該技術分野で従来用いられるプラスチックから作られた電気絶縁性の濾過器ハウジング4を有し、この濾過器ハウジング4は内部キャビティ5を画定し、その中に濾過要素6が設置される。この濾過要素6は、周知の方法で絶縁材料の1つ以上の層から作られる。濾過要素6は、それ自体、あるいは濾過要素6および濾過器ハウジング4は第2のキャビティ7を画定し、その中に帯電防止性挿入部8が設置される。本実施形態においては、挿入部8の内部且つ挿入部8の長手方向の軸線に対して垂直な、図1における帯電防止性挿入部8の底端領域において、フランジ材料8から壁9が形成され、壁9の下には、挿入部8の長手方向の軸線にあるフランジ材料から底部で開口したシート部10が形成される。
【0019】
導電性材料で作られた、周知の構造および動作の燃料圧調整弁11は、底部にある濾過器ハウジング4内、および、図示されている例の中央に設置されている。弁11は、本体電位にあり、その最高点において、導電性材料で作られたバネ12の一端と電気的に接触し、一方で、バネ12自体は挿入部8の座部10に延在し、その後それに電気的に接続される。濾過要素6は、折り畳まれた濾紙の1つ以上の層から成り、その終端要素13、14は共に接合して従来の方法で2つの端部で遮断し、同時に、封止された様態において、燃料濾過器を通じて流れる燃料が濾過要素6を通じて進むことを確保する。
【0020】
帯電防止性挿入部8は、燃料(図示せず)を適切に接地することができるように、適切に大きな表面を有する。その最も単純な構成では、帯電防止性挿入部8は、ほぼ円筒形であり、燃料と接触する表面を増加させるために、円筒の包絡面内、ならびに壁9内に形成される多数の開口部15がある。挿入部8の表面を他の周知の方法で増加させることもできることは、当業者にとって明らかである。
【0021】
燃料は導電性または帯電防止性であり、帯電防止性挿入部8は濾過器ハウジング4の内部に存在する燃料を接地する。接地された燃料は、濾過器ハウジング4および濾過要素6の個々の部分に電気的に接続する。設置された燃料と、濾過器ハウジング4と、濾過要素6との間における接触が大きな表面上で起こるため、濾過器ハウジング4および濾過要素6上に生じる静電荷は排出され、その結果、高電圧の静電場は全く生じ得ない。燃料圧調整弁11が濾過器ハウジング4に接続されない場合、その時、その場所に絶縁性材料または伝導性材料で作られた栓を取り付けることができ、この場合では接地がバネ12を通じて起こり、栓が弁11に取って代わる(図では見えない)。
【0022】
電気絶縁性の構成部内で引き起こされた静電荷は、約−40℃の温度で増加する。この理由は、燃料の抵抗率、ならびに用いられるプラスチック部分の抵抗率が、低温で増加するためである。従って、帯電防止特性を有する燃料濾過器に対する極めて重要な環境効果は低温で起こり、特徴的には−40℃の近傍で起こる。用いられる燃料の種類が、静電荷の生成に影響する場合もある。今日のアルコール含有燃料は低い抵抗率を有し、一方で、アルコールを含有しない燃料は高い抵抗率を有する。帯電防止特性を有する燃料濾過器とともに用いられる際に、極めて重要と考えることができる燃料の種類は、大きな抵抗率を有するアルコールを含まない燃料である。燃料の抵抗率は、0.05MΩmから20GΩmの範囲内にある。従って、帯電防止性挿入部8の抵抗性は、燃料用の適切な接地経路を提供するために1kΩm未満でなければならない。
【0023】
本発明によれば、低温(−30℃)にて高抵抗率(16GΩm)燃料で試験され、燃料濾過器の構成部上における静電荷の生成を効果的に妨げることができる。帯電防止性挿入部8の表面は、濾過器ハウジング4内に燃料用の大きな接地経路を提供するために可能な限り大きい必要がある。
【0024】
明らかなように、本発明による構成要素は、周知かつ濾過器ハウジング4内に存在する燃料の接地のために用いられる、静電防止性または導電性の構成部とは根本的に異なっている。十分に大きな表面を有する帯電防止性挿入部8は、燃料濾過器の継手の内部で見つかる燃料を接地したとみなすこともできるように、濾過器用継手を通じて流れる燃料を接地する。接地された燃料は、濾過器用継手の絶縁性構成部および絶縁性部分と接触する。設置された燃料と濾過器用継手の構成部との間における接触は大きな表面上で起こるため、電荷は濾過器用継手の構成部から燃料へ移動し、そして、そこから接地された帯電防止性挿入部内へ移動する。このようにして、濾過器用継手内に蓄積された電荷、および/または、濾過器用継手の内部にある燃料は消失し、それにより、高電圧の静電場の生成を防ぐことができる。
【0025】
提案された燃料濾過器の主な利益の1つとしては、接地を提供する要素が、濾過要素6に対して機械的な変更行う必要がなく、大きさや技術を変更しないで製造することができることである。この結果、例えば、挿入部8を濾過要素6の内部にぴったり留めること(snapping)により容易に設置することができ、その長さは後者の全高に慎重に適合され、挿入部8が既に設けられた濾過要素6を濾過器ハウジング4内に設置することができる。挿入部8の使用は、先行技術の解決手段のように、層系が損傷されないように、濾過要素6の2つの端部をヒューズ搭載のプラスチック終端要素で遮断することを必要としない。濾過要素6の製造における内径および外径は変わらず、折りたたまれた紙材料の2つの隣接する折り目の間隔はその損傷が原因で変化するわけではないため、濾過効果の低下を防ぎ、燃料が濾過器を通過して流れる際の抵抗を増加させない。新たな帯電防止性挿入部の構成により、燃料タンク内の充填用開口部を通じる変化を伴わずに設置することができることが確保される。
【符号の説明】
【0026】
1 燃料濾過器
2 入口
3 出口
4 濾過器ハウジング
5 キャビティ
6 濾過要素
7 キャビティ
8 挿入部
9 壁
10 座部
11 弁
12 バネ
13 終端要素
14 終端要素
15 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
濾過器ハウジング(4)と、前記ハウジング(4)内に形成された燃料入口(2)および燃料出口(3)と、ならびに前記ハウジング(4)内に配列された円筒形の濾過要素(6)と、所定の場合において、前記燃料の流動を可能にするように前記濾過要素(6)の端部を閉じる終端要素(13、14)と、を有する自動車両用燃料濾過器(1)であって、前記濾過要素(6)が前記車両の本体電位に接続される接地要素に電気的に接続され、前記設置要素が前記濾過要素(6)の内面に接合されることを特徴とする燃料濾過器。
【請求項2】
前記接地要素は、帯電防止性挿入部(8)として形成されることを特徴とする請求項1に記載の燃料濾過器。
【請求項3】
前記帯電防止性挿入部(8)は、前記円筒形の濾過要素(6)の包絡面に嵌合された挿入部として形成されることを特徴とする請求項2に記載の燃料濾過器。
【請求項4】
前記帯電防止性挿入部(8)は、管状体であることを特徴とする請求項2または3に記載の燃料濾過器。
【請求項5】
前記管状体の前記包絡面には、その表面を増加させる開口部(15)が設けられていることを特徴とする請求項2〜4の何れか一項に記載の燃料濾過器。
【請求項6】
前記帯電防止性挿入部(8)は、一端または両端の領域内で電気的接続を提供する中間要素を保持する要素を有することを特徴とする請求項2〜4の何れか一項に記載の燃料濾過器。
【請求項7】
前記電気的接続を提供する前記中間要素は、導電性材料で作られた螺旋形のバネ(12)であることを特徴とする請求項6に記載の燃料濾過器。
【請求項8】
前記電気的接続を提供する前記中間要素を保持する前記要素は、一端で開口した座部(10)であることを特徴とする請求項6または7に記載の燃料濾過器。
【請求項9】
前記座部(10)は、前記帯電防止性挿入部(8)と同軸上に配列されることを特徴とする請求項8に記載の燃料濾過器。
【請求項10】
燃料圧調整弁(11)は、前記帯電防止性挿入部(8)および導電性材料の前記螺旋形のバネ(12)と同軸上に前記濾過器ハウジング(4)内に設置されることを特徴とする請求項1〜9の何れか一項に記載の燃料濾過器。
【請求項11】
前記帯電防止性挿入部(8)は、ぴったり留めること(snapping)により前記濾過要素(6)の内部に固定されることを特徴とする請求項1〜9の何れか一項に記載の燃料濾過器。
【請求項12】
前記終端要素(13、14)は、前記帯電防止性挿入部(8)を前記濾過要素(6)の内部に固定することを特徴とする請求項1〜9の何れか一項に記載の燃料濾過器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−202658(P2011−202658A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62798(P2011−62798)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(505450755)ビステオン グローバル テクノロジーズ インコーポレイテッド (140)
【Fターム(参考)】