説明

自動車内の、固定部材を有する熱交換機

【課題】 熱交換機の目標破断箇所軸受を、この軸受が一度破断した後でもできるだけ簡単な方法で、同じように作用する目標破断箇所軸受と新たに交換することができるようにする。
【解決手段】 自動車内の、目標破断箇所を有する固定部材を備えた熱交換機において、固定部材の少なくとも1つが、第1と第2の領域(6、7;12、14)間とこれら2つの領域(6、7;12、14)間のクィックロック結合を有し、 2つの領域のそれぞれ一方(6;12)が、熱交換機(1)の分離できない構成部分であって、クィックロック結合が閉成されている場合に、それぞれ2つの領域(6、7;12、14)が、相補形状で固定作用するように互いに噛み合い、2つの領域(6、7;12、14)の一方のロック手段に、少なくとも1つの目標破断箇所が設けられており、少なくとも1つの目標破断箇所を有するロック手段が、熱交換機(1)から分離可能な領域(7、14)に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の、特に自動車内の熱交換機、目標破断箇所を有する固定部材を備えた熱交換機に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の熱交換機は、従来技術(たとえば、特許文献1を参照)から知られている。そこでは、目標破断箇所は、特に、車両事故の場合に熱交換機に、熱交換機として損傷されずに固定部材から外すことができるようにする可能性を与える目的のために用いられる。それによって修理のために、固定部材のみを新しくすればよく、それによって固定部材が分離可能ではない場合に熱交換機が損傷した場合に比較して、修理コストを著しく低下させることができる。既知の熱交換機の固定方法においては、一度破壊された目標破断箇所は修理の場合に再び形成することはできない。熱交換機の、元々目標破断箇所を有する領域は、むしろ、熱交換機と堅固に結合すべき構成部品と取り替えられなければならない。固定的に取り付けるべき構成部品は、特別に、熱交換機内へ螺合される。
【特許文献1】欧州特許明細書EP0870638B1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、冒頭で挙げた熱交換機(すなわち、特に自動車内の、目標破断箇所を有する固定部材を備えた熱交換機)において、熱交換機の目標破断箇所軸受を、この軸受が一度破断した後でもできるだけ簡単な方法で、同じように作用する目標破断箇所軸受と新たに交換することができるようにすることである。その場合に先行する目標破断の後に代用すべき部品は、できるだけ簡単に、一方では熱交換機と結合可能であり、他方では、熱交換機をその支持体内へ簡単に組み戻すことを可能にするものにするべきである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題の原則的な解決は、すでに、請求項1に記載の特徴を有する熱交換機(すなわち、−固定部材の少なくとも1つが、第1と第2の領域(6、7;12、14)間とこれら2つの領域(6、7;12、14)間のクィックロック結合を有し、−2つの領域のそれぞれ一方(6;12)が、熱交換機(1)の分離できない構成部分であって、−クィックロック結合が閉成されている場合に、それぞれ2つの領域(6、7;12、14)が、相補形状で固定作用するように互いに噛み合い、−2つの領域(6、7;12、14)の一方のロック手段に、少なくとも1つの目標破断箇所が設けられており、−少なくとも1つの目標破断箇所を有するロック手段が、熱交換機(1)から分離可能な領域(7、14)に配置されている、ことを特徴とする熱交換機)である。
【0005】
効果的かつ目的に合った形態が、従属請求項の対象である。
【発明の実施の形態】
【0006】
本発明は、熱交換機の固定部材の目標破断箇所を、クィックロック結合によって熱交換機と結合可能な領域に設ける、という一般的な考えに基づいている。その場合に、目標破断箇所を、目標破断が発生した場合にすでに必然的にクィックロックが開放するように設けると、特に効果的である。修理の場合に、本発明に基づく解決においては、熱交換機の固定部材の、クィックロック内の分離可能ないしすでに分離された領域のみを新しくすれば済む。
【0007】
従属請求項には、クィックロック手段の特に具体的な形状付与が記載されており、それによって一方で、熱交換機を、それを収容する支持体内に堅固に軸承することが与えられ、かつそれによって熱交換機に配置されている複数のクィックロックと協働して、修理の場合における簡単な再取付けが可能である。この主旨における特に好ましい形態が、最後の2つの従属請求項の対象である。
【実施例】
【0008】
本発明の好ましい実施例が、図面に示されている。
【0009】
透視図法により破線のみで示唆される熱交換機1は、垂直上方および下方において上方と下方のクィックロック2ないし3を介して、上方と下方の支持体4ないし5の間に軸承されている。
【0010】
熱交換機は、特に自動車のフロント領域内の冷却モジュールとすることができ、ウォータークーラー、復水器および送風機を有している。上方と下方の支持体4と5は、ここの実施例においては、自動車内のこの領域に通常設けられる支持部材について、単に象徴的に示されている。熱交換機を貫流する流体のための供給導管と排出導管は、それぞれ少なくともフレキシブルな部分領域を有しているので(図面には示されていない)、熱交換機1と支持体4および5との間に目標破断箇所が設けられており、かつ目標破断が発生した場合に、熱交換機1はそのものとして損傷されずにその固定箇所から押し出されることが可能である。熱交換機のこのように損傷されない移動は、車両事故の場合に発生する可能性があり、それによって一方では熱交換機流体が流出せず、他方では熱交換機1の交換なしの安価な修理が実現できる。
【0011】
上方と下方のクィックロック2と3は、異なるように形成されている。
【0012】
次に、下方のクィックロック3を、図3の分解斜視図を用いて詳細に説明する。このクィックロック3は、蟻溝結合の形式で形成されている。クィックロック3のばね部分6は、熱交換機1の分離できない構成部分である。クィックロック3の、ばね部分6に対して相補的に対応づけられている溝部分7が、一体的に形成されているピン8を介して取り外し可能に、下方の支持体5の内部の軸受9と結合可能である。
【0013】
熱交換機の目標破断軸承に関して、クィックロック3の溝部分7は、目標破断の場合において機能する犠牲部分として形成されている。この機能を実施することができるようにするために、溝部分7の2つのウェブ10の少なくとも一方に、材料弱化として形成された目標破断部分11が設けられている。
【0014】
下方のクィックロック結合の領域における目標破断の際に、クィックロックは目標破断箇所11を有するウェブ11の破損によって必然的に跳ね上がる。修理のためには、溝部分7のみが交換される。下方の支持体5の内部の軸受9は、特に弾性的な軸受である。
【0015】
上方のクィックロック結合2の構造を示すのが、図2の分解斜視図である。そこでは、上方のピン12が熱交換機1と堅固に、かつ分離できないように結合されている。上方のピン12と結合するための相補的なクィックロック手段として、キャップ13を備えたジャケット14が設けられている。キャップ13によってジャケット14は、上方の支持体4の内部の開口部に挿通させた後に、この上方の支持体4内に堅固に、しかし取り外しできるように嵌め込むことができる。ジャケット14には、目標破断箇所を発生させるために、スリット15が設けられている。上方のクィックロック2内で互いに入り組んだクィックロック手段、すなわち上方のピン12とジャケット14との間に、弾性的な軸受リング16が挿入されている。
【0016】
上方のクィックロック2の領域内で目標破断が生じた場合に、スリット15によって弱体化されているジャケット14が、破断し、それによって上方のピン12が自由になる。それによって、熱交換機1は損傷なしで移動することができる。
【0017】
修理の場合においては、事故の際に目標破断箇所のゆるみによって損傷なしで移動した熱交換機1の修理は、特に、以下のように行われる。
【0018】
クィックロック2、3において、所望の目標破断によって破壊された、部品7と14が取り替えられる。
【0019】
第1の修理ステップにおいて、下方のクィックロック3が、溝部分とばね部分6、7を組み合わせることによって、新しくされる。その後、熱交換機1が下方のピン8を介して下方の支持体5の軸受9内へ差し込まれ、その場合に軸受9の弾性によって熱交換機1の揺動が可能になる。このようにして、熱交換機1は、上方のクィックロック2の新しくされたジャケット14が上方の支持体4を通して熱交換機1のそれぞれの上方のピン12と結合できる位置へ、揺動される。上方のクィックロック2の閉鎖と同時に、ジャケット14がこのジャケットと結合されているキャップ13によって上方の支持体4内に堅固に嵌め込まれる。その後熱交換機1は、事故に基づく新たな破断を可能にする、新しくされた目標破断軸承によって、駆動準備されて取り付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】上方と下方の角部に異なるクィックロック固定部材を有する熱交換機を破線で示す斜視図である。
【図2】上方のクィックロックを分解して示す斜視図である。
【図3】下方のクィックロックを分解して示す斜視図である。
【符号の説明】
【0021】
1 熱交換機
2 上方のクィックロック
3 下方のクィックロック
4 上方の支持体
5 下方の支持体
6 ばね部分
7 溝部分
8 ピン
9 軸受
11 目標破断部分
12 上方のピン
13 キャップ
14 ジャケット
15 スリット
16 軸受リング


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換機、特に自動車内の、目標破断箇所を有する固定部材を備えた熱交換機において、次の特徴、すなわち:
−固定部材の少なくとも1つが、第1と第2の領域(6、7;12、14)間とこれら2つの領域(6、7;12、14)間のクィックロック結合を有し、
−2つの領域のそれぞれ一方(6;12)が、熱交換機(1)の分離できない構成部分であって、
−クィックロック結合が閉成されている場合に、それぞれ2つの領域(6、7;12、14)が、相補形状で固定作用するように互いに噛み合い、
−2つの領域(6、7;12、14)の一方のロック手段に、少なくとも1つの目標破断箇所が設けられており、
−少なくとも1つの目標破断箇所を有するロック手段が、熱交換機(1)から分離可能な領域(7、14)に配置されている、
ことを特徴とする熱交換機。
【請求項2】
クィックロック結合における固定部材の第1と第2の領域(6、7)が、蟻溝結合の形式で噛み合うことを特徴とする請求項1に記載の熱交換機。
【請求項3】
目標破断箇所が、熱交換機から分離可能な領域(7)のウェブ(10)の少なくとも1つに設けられていることを特徴とする請求項2に記載の熱交換機。
【請求項4】
固定部材の第1と第2の領域(12、14)が、互いにテレスコープ状に入り組んでいることを特徴とする請求項1に記載の熱交換機。
【請求項5】
目標破断箇所が、固定部材のテレスコープ状に互いに入り組む領域(12、14)の、クィックロックによって熱交換機(1)から分離可能な領域(14)内に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の熱交換機。
【請求項6】
固定のためのクィックロックの、熱交換機(1)からそれぞれ分離可能な領域(7、14)が、熱交換機(1)を軸承する支持体(4、5)の相補的な軸受内で、ロックの外側へ突出していることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の熱交換機。
【請求項7】
熱交換機(1)に、請求項2と4に記載のクィックロックが同様に設けられていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の熱交換機。
【請求項8】
請求項2の記載のクィックロックが、熱交換機(1)を支持する下方の支持体(5)への結合を形成し、請求項4に記載のクィックロックが、該当する上方の支持体(4)への結合を形成することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の熱交換機。
【請求項9】
上方と下方の、ほぼ共通の垂直の平面内に位置する支持体間に軸承される熱交換機において、
次の特徴、すなわち:
−請求項2に記載のクィックロック結合が、熱交換機(1)を下方の支持体(5)と結合し、
−請求項4に記載のクィックロック結合が、熱交換機(1)を上方の支持体(4)と結合し、
−クィックロック手段によって、それぞれ熱交換機(1)から分離可能な部分が、支持体(4、5)内へ嵌入する、
ことを特徴とする熱交換機。
【請求項10】
請求項4に記載のクィックロック結合において、それぞれ分離可能な領域が、ジャケット(14)として形成されており、かつそれぞれ対応づけられた支持体(4、5)を通して、熱交換機(1)に設けられている、固定部材の分離できない領域上へ取り付けることができ、その場合にジャケット(14)がこの状態においてそれぞれ対応づけられた支持体(4、5)内に固定可能に形成されていることを特徴とする請求項9に記載の熱交換機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−522706(P2006−522706A)
【公表日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−505005(P2006−505005)
【出願日】平成16年4月5日(2004.4.5)
【国際出願番号】PCT/EP2004/003605
【国際公開番号】WO2004/090453
【国際公開日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(594042033)ベール ゲーエムベーハー ウント コー カーゲー (222)
【Fターム(参考)】