説明

自動車座席用ウレタンフォーム及びその製造方法

【課題】本発明は、植物由来脂肪酸含有率を大幅に向上させた、環境貢献度が高く、より反発弾性率が向上された自動車座席用ウレタンフォームを得ることを課題とする。
【解決手段】少なくともポリオール成分とイソシアネート成分とを反応させて得られ、かつポリオール成分とイソシアネート成分のうちの少なくともいずれか1つが植物由来成分である軟質ポリウレタンフォームからなる自動車座席用ウレタンフォームであって、前記自動車座席用ウレタンフォーム重量に占める植物由来成分の脂肪酸含有率が15〜30重量%であり、かつ反発弾性率が45〜70%であることを特徴とする自動車座席用ウレタンフォーム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタンフォーム原料成分に植物性油脂を使用した自動車座席用ウレタンフォームに関する。更に詳しくは、本発明は、自動車座席用ウレタンフォームの重量のうちの植物由来の脂肪酸含有率を大幅に向上させた、環境貢献度の高い自動車座席用ウレタンフォーム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知の如く、地球温暖化防止、循環型社会の構築をめざし、技術開発の取り組みが世界規模で行われている。二酸化炭素は地球温暖化の一因とされている温室効果ガスの一つであり、その排出量の削減が求められている。
【0003】
ここで、現在工業的に生産されている自動車用座席ウレタンフォームは石油由来原料から製造されている(特許文献1)。ところで、この自動車座席用ウレタンフォームは廃車処理の際、シュレッダー処理された後、焼却処理される。従って、特許文献1のような石油由来原料のウレタンフォームを焼却することにより、地球温暖化の一因とされている温室効果ガスである二酸化炭素が増加してしまう。
【0004】
また、石油や石炭は有限で再生が不可能な資源であり、資源枯渇を防止するためにもその使用量削減が求められている。この石油由来原料の代替原料として注目されているのが植物由来原料である。植物由来原料は植物が大気中の二酸化炭素を取り込んで生産する、再生可能な資源である。従って、焼却によって二酸化炭素が発生しても、元々が二酸化炭素から光合成により作られているので、地球規模での二酸化炭素の収支はゼロであり地球温暖化を防止できると考えられている。このようなことから石油由来原料に代わって、植物由来原料を使用する働きがある。従来、植物由来原料からポリウレタンフォームの原料を製造する方法として、様々な方法が検討されている(特許文献2,3,4、非特許文献1)。
【0005】
特許文献2には、植物由来の原料として、曝気大豆油をポリエーテル物質として使用したポリウレタンフォームが開示されている。特許文献3,4には、エポキシ化大豆油のアルコール開環物をポリエーテル物質として使用したポリウレタンプレポリマーが開示されている。特許文献2〜4に記載のポリウレタンフォームは植物由来であり、焼却による二酸化炭素の排出量の削減が期待されている。非特許文献1には、廃大豆油を原料に65%硫酸と30%過酸化水素水を混合加熱し大豆油の持つ2重結合部分に水酸基を導入してポリオールを精製し、これとポリメリックジイソシアネート(PMDI)、水、アミン系触媒、シリコーン系整泡剤を混合攪拌することでウレタンフォームを製造する方法が開示されている。
【特許文献1】特開平7−206961号公報
【特許文献2】特表2002−524627号公報
【特許文献3】特開昭59−207914号公報
【特許文献4】特開昭63−415123号公報
【非特許文献1】松永勝治,小倉正和、平成14年度 東洋大学修士論文要旨集
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献2〜4のうち、特許文献2のポリウレタンフォームは大豆油の低分子量に起因して、反発弾性が不十分であり自動車用クッションとしては使用できない。また、特許文献3,4のポリウレタンプレポリマーは、主として湿気硬化型1成分系ポリウレタンフォームの形成に用いられるものであり、自動車用座席用ウレタンフォームではない。
【0007】
また、非特許文献1のウレタンフォームの反発弾性率(JIS K6400)は1%であり自動車用途の目標値45%以上には程遠い。この反発弾性率は自動車座席用ウレタンフォーム材の特性値としては最も重要であり、反発弾性率が低いとウレタンフォームを自動車座席に用いる場合には、厚くして底づき感をなくす必要がある。しかし、フォームを厚くすることは限られた自動車の空間を狭めることにつながり好ましくない。また、底づき感をなくすためにフォームを硬くすると、座り心地が悪化してしまう。更に、非特許文献1のウレタンフォームの永久圧縮歪み(JIS K6400の50%圧縮)は47%であり、自動車用途の目標値20%以下には程遠い。
【0008】
本発明は上記事情を考慮してなされたもので、植物由来脂肪酸含有率を大幅に向上させた、環境貢献度が高く、より反発弾性率が向上された自動車座席用ウレタンフォーム及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る自動車座席用ウレタンフォームは、少なくともポリオール成分とイソシアネート成分とを反応させて得られ、かつポリオール成分とイソシアネート成分のうちの少なくともいずれか1つが植物由来成分である軟質ポリウレタンフォームからなる自動車座席用ウレタンフォームであって、前記自動車座席用ウレタンフォーム重量に占める植物由来成分の脂肪酸含有率が15〜30重量%であり、かつ反発弾性率が45〜70%であることを特徴とする。
【0010】
本発明のウレタンフォームにおいて、前記植物由来成分としては、ヒドロキシ脂肪酸を構成成分とする油脂、及びその誘導体からなる群から選ばれる1種以上のものが挙げられる。
【0011】
ここで、前記ポリオール成分としては、ひまし油とイソシアネートとを反応させてなる水酸基末端ウレタンプレポリマーが挙げられる。また、イソシアネート成分としては、ひまし油とイソシアネートとを反応させてなるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーが挙げられる。
【0012】
前記イソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリエチレングリコールジイソシアネートのいずれかが挙げられる。また、前記ポリオール成分は石油由来ポリオールであり、石油由来ポリオールの数平均分子量は6000〜10000であることが好ましい。
【0013】
本発明に係る自動車座席用ウレタンフォームの製造方法は、少なくともポリオール成分とイソシアネート成分とを反応させて得られる軟質ポリウレタンフォームからなる自動車座席用ウレタンフォームの製造方法であって、前記ポリオール成分又はイソシアネート成分の少なくとも一方の成分に、ひまし油とイソシアネートとを反応させてなるウレタンプレポリマーを用いることを特徴とする。
【0014】
本発明のウレタンフォームの製造方法において、前記ポリオール成分100重量部のうち、ひまし油とイソシアネートとを反応させてなる水酸基末端ウレタンプレポリマーを25〜50重量部用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、従来技術では得られなかった植物由来成分含有率を大幅に向上させた、環境貢献度が高く、より反発弾性率が向上された座り心地の良い自動車座席用ウレタンフォーム及びその製造方法を提供できる。具体的には、本発明により、目的とする自動車座席の快適性や性能値、あるいは環境貢献の必要性に応じて植物由来成分含有量の異なる自動車座席用ウレタンフォームを任意に選択することのできる自動車座席用ウレタンフォーム及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、この発明に係る自動車座席用ウレタンフォーム及びその製造方法について、更に詳しく説明する。
本発明において、植物由来脂肪酸含有率(%)は、次式(1)のように定義される。
植物由来脂肪酸含有率(%)=(植物由来脂肪酸重量÷ウレタンフォーム重量)×100
…(1)
前記植物由来脂肪酸重量は、FT−IRやGS−MS等の分析装置を用いて、その含有割合を定量し、植物由来脂肪酸重量=ウレタンフォーム重量×植物由来脂肪酸(カルボン酸(RCOOH)換算)含有割合として算出することができる。
【0017】
なお、植物由来脂肪酸含有率(%)は、配合処方が分かっている場合には、次式(2)のようにして求めることができる。
植物由来脂肪酸含有率(%)={植物由来脂肪酸重量÷(各原料成分重量の総和−ガスロス重量)}×100 …(2)
但し、植物由来脂肪酸重量(カルボン酸(RCOOH)換算)=植物由来成分重量×植物由来成分中の脂肪酸含有割合で表わされる。ここで、ウレタンフォーム生成反応は下記化[1]に示す式(3)のように表わされるが、同時に発泡剤として加えられた水とイソシアネートとが反応して二酸化炭素が発生し、ウレタンフォームの発泡反応が起る。この時の反応は下記化[2]に示す式(4)のように表わされる。
【化1】

【0018】
【化2】

【0019】
イソシアネートと水との反応により二酸化炭酸ガスは大気中に放出され、ウレタンフォーム中には残らないため、その損失分を「ガスロス」という。このガスロスの重量(放出されるCO重量)の算出は、原料中の水が全て二酸化炭素として放出されると考えて、次式(5)のように定義される。
放出されるCO重量=(CO分子量÷水分子量)×水重量 …(5)
本発明において、自動車座席用ウレタンフォーム重量に占める植物由来の脂肪酸含有率は15〜30重量%である。ここで、脂肪酸含有率が15重量%未満の場合、ウレタンフォームが焼却処理された場合の地球規模での二酸化炭素収支に大きく貢献できず、本願の目的を達成できない。また、脂肪酸含有率が30重量%を超えると、得られたフォームの反発弾性率が低くなってしまい、目的とする反発弾性率45%以上を得ることができない。なお、反発弾性率が70%を越えると、座り心地が悪くなってしまい、自動車座席用ウレタンフォームに適さない。このような数値範囲のウレタンフォームとすることにより、環境への貢献度も高く、石油系由来原料だけから製造された自動車座席用ウレタンフォームと比較して遜色のない座り心地の自動車座席用ウレタンフォームを提供することが可能となる。なお、座り心地の観点からは、反発弾性率は50〜60%とすることがより好ましい。
【0020】
ところで、軟質ポリウレタンフォームは、周知のように、少なくともポリオール成分とイソシアネート成分とを反応させることにより得ることができる。本発明において、「ポリオール成分」には、従来公知のポリオール及び活性水素を含有する化合物を用いることができる。この中でも、ポリオールは、数平均分子量の大きさに起因して良好な座り心地が得られるので、好適に用いることができる。
【0021】
上記ポリオールとしては、石油由来ポリオールと植物由来ポリオールの1種あるいは2種以上の混合物のいずれを用いてもよい。例えば、次のようなものを挙げることができる。石油由来ポリオールとしては、例えばポリエーテルポリオール,ポリエステルポリオール,ポリエーテルエステルポリオール,ポリマーポリオールが挙げられる。植物由来ポリオールとしては、ヒドロキシ脂肪酸を構成成分とする油脂及びその誘導体(水酸基末端ウレタンプレポリマーを含む)を挙げることができる。次に、活性水素を含有する化合物としては、例えばグリコール、アルコール、カルボン酸、アミン、及びそれらの誘導体を挙げることができる。
【0022】
ここで、ポリオール成分として石油由来ポリオールのみを用いる場合は、イソシアネート成分に植物由来ポリオールとイソシアネートとのウレタンプレポリマーを用いる必要がある。また、石油由来ポリオールと植物由来ポリオールの併用により、所望の植物由来脂肪酸含有率の自動車座席用ウレタンフォームを得てもよい。いずれにしても、自動車座席用ウレタンフォームの植物由来脂肪酸含有率が15〜30重量%となるような配合量とすればよい。
【0023】
本発明において、「植物由来成分」とは、主に植物種子を圧搾するか又は溶剤で抽出し、精製、脱色及び脱臭して得られる油脂及びその誘導体をいう。油脂の例としては、ひまし油、レスクレラ油等が挙げられる。また、その誘導体の例としては、油脂及び/又はそれを構成している脂肪酸や多価アルコール(ポリアルキレングリコール等の化合物を含む)や他の酸類(一塩基酸、二塩基酸や多塩基酸を含む)等を用いて水素添加、酸化重合、脱水反応、縮合反応等、一般的な公知の方法により得られるヒドロキシ脂肪酸含有の誘導体(水酸基末端ウレタンプレポリマーを含む)が挙げられる。中でも、元来ヒドロキシル基(水酸基)を有するリシノール酸を90%以上含有しているひまし油は植物由来成分(植物由来ポリオール)として最も好ましく用いることができる。
【0024】
しかし、ひまし油は数平均分子量が930と非常に小さく、しかも1分子当りの水酸基数が2.7(水酸基価160)であり、非常に反応性が高いため、イソシアネートを加え攪拌したとたんに反応が始まってしまう。例えば、ひまし油を用いて自動車座席用ウレタンフォームを製造した場合、金型注入直後に反応が始まってしまうことで、成形性が悪く、工業的生産には適さなかった。具体的には、植物由来脂肪酸含有率が10%を超えると、成形性が悪化してしまう。そのため、植物由来脂肪酸含有率が20%を超えると、成形自体が不可能となり、それ以上の植物由来成分含有率の自動車由来成分の含有率の自動車座席用ウレタンフォームを得ることができなかった(比較例2参照)。このような植物由来ポリオールをウレタンプレポリマー化することにより、その水酸基数を減少させることが可能となり、自動車座席用ウレタンフォーム製造時における原料混合攪拌時のウレタンフォーム成形性を制御しやすくすることができる。目的とする自動車座席用ウレタンフォームの物性あるいは製造設備に合わせて、植物由来成分含有率の高い自動車座席用ウレタンフォームを設計しやすくなるので、植物由来ポリオールをウレタンプレポリマー化することが好ましい。
【0025】
ここで、本発明における「ウレタンプレポリマー」は、植物由来ポリオールとイソシアネートを混合し、反応させたものである。この反応を行う際に用いる植物由来ポリオールの官能基数にモル数を乗じた数をA、用いるイソシアネートの官能基数にモル数を乗じた数をBとしたときに、A>Bとなる条件下で反応させると水酸基末端ウレタンプレポリマーが得られ、A<Bとなる条件下で反応させるとイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーが得られる。なお、ウレタンプレポリマーの重合は公知の方法を用いればよい。例えば水酸基末端ウレタンプレポリマーを得るには、植物由来ポリオールに触媒を添加した後、減圧脱水させ、所定の温度まで昇温させた後に、所定量のイソシアネートを滴下し、所定温度により反応させることで得られる。
【0026】
ウレタンプレポリマー化する植物由来ポリオールとしては、上述のとおり、植物由来脂肪酸含有量が元来多いひまし油を用いることが好ましい。なお、ひまし油とイソシアネートとを反応させて水酸基末端ウレタンプレポリマーとする場合には、その水酸基価が60〜150mgKOH/gとすることが好ましい。ひまし油を用いた場合、水酸基価が60未満のウレタンプレポリマーは合成ができない。この理由は、合成の際にゲル化してしまい、流動性ウレタンプレポリマーを得ることができないためである。また、水酸基価が150を越えると、ウレタンフォーム作製の際に必要なイソシアネート量が多くなり、反応が早すぎ、成形性が悪くなる。水酸基価は好ましくは70〜130mgKOH/gであり、より好ましくは80〜110mgKOH/gであり、更に好ましくは90〜100mgKOH/gである。
【0027】
本発明において、ウレタンプレポリマー化する植物由来ポリオールは、1種あるいは2種以上の植物由来ポリオールの混合物を用いてもよい。また、植物由来ポリオール及びそれらの誘導体と、グリセリン、多価アルコール、多価ポリオール、糖、及びそれらの誘導体(以下、その他のポリオールという)との混合物を用いたウレタンプレポリマーとしてもよい。ここで、植物由来ポリオールとその他のポリオールの混合物とイソシアネートを反応させて水酸基末端ウレタンプレポリマーとする場合には、その水酸基価が30〜70mgKOH/gにすることで、ウレタンフォーム作製の際に必要なイソシアネート量を減らすことができる。その結果、初期反応がゆるやかになり、ウレタンフォームの成形性が非常によい。
【0028】
また、本発明において、ウレタンプレポリマーは、その末端を水酸基としてもイソシアネート基としてもよいが、水酸基末端とした方が保存安定性がよくなるため好ましい。更に、配合処方においては、ポリオール成分使用量の方がイソシアネート成分使用量より多いため、水酸基末端ウレタンプレポリマーを用いる方が植物含有率のより高い自動車座席用ウレタンフォームを作成しやすいので好ましい。
【0029】
本発明において、「イソシアネート成分」には、従来公知のイソシアネートを用いることができる。
本発明において、「イソシアネート成分」とは、分子中にイソシアネート基を2個以上含有する芳香族ポリイソシアネート及び脂肪族ポリイソシアネート、あるいはそれらの変性物を言う。勿論、前述のイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを用いてもよい。
【0030】
イソシアネート成分の具体的な例としては、例えば脂肪族ジイソシアネート類、脂環式ジイソシアネート類、芳香族イソシアネート類、ポリイソシアネート類、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0031】
脂肪族イソシアネート類としては、例えばトリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、エチリデンジイソシアネート、ブチリデンジイソシアネートが挙げられる。
【0032】
脂環式ジイソシアネート類としては、例えば1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,2−シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートが挙げられる。
【0033】
芳香族ジイソシアネート類としては、例えばm−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ビフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,4−ナフタレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−又は2,6−トルエンジイソシアネート、ポリジフェニルニチルジイソシアネート又はそれらの混合物、4,4‘−トルイジンジイソシアネート、1,4−キシレンジイソシアネート、ジアニシジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、クロロジフェニルジイソシアネートが挙げられる。
【0034】
芳香族イソシアネート類としては、例えばトリフェニルメタンー4,4’、4”トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、2,4,6−トリイソシアネートトルエンが挙げられる。芳香族テトライソシアネート類としては、例えば4,4’ジフェニル−ジメチルメタンー2,2’,5,5’テトライソシアネートが挙げられる。ポリイソシアネート類としては、例えばトルエンジイソシアネートダイマー、トルエンジイソシアネートトリマーが挙げられる。
【0035】
ここで、植物由来ポリオールのウレタンプレポリマー化に用いるイソシアネートは、上記した従来公知のイソシアネートを用いることができるが、その汎用性と得られるウレタンプレポリマーの粘度による取り扱いのしやすさの観点から、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリエチレングリコールジイソシアネート(OCN−CHCH−O−CHCH−O−CHCH−NCO)
のいずれかを選択することが好ましい。
【0036】
本発明において、ポリオール成分に用いる石油由来ポリオールの好ましい数平均分子量は、併用する植物油由来ポリオールの分子量、あるいはイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーの分子量によるため一概には言えないが、6000〜10000であるものを用いることが好ましい。特に、低分子量である植物由来ポリオールを多量に併用する場合に生じる、反発弾性率の低下を、高分子量石油由来ポリオールによって補うことができる。これにより、植物由来成分含有率が高含有率であるにも関わらず、高反発弾性率を有する自動車座席用ウレタンフォームを得ることができる。ここで、石油由来ポリオールは分子量が大きくなるほど反発弾性率は高くなるが、使用量によっては水酸基数の少なさから自動車座席に必要な硬さの不足が生じるため、好ましくは6000〜8000、より好ましくは6500〜7500とするのがよい。
【0037】
本発明に係る「自動車座席用ウレタンフォーム」の製造方法としては、スラブフォーム法(前者)、モールドフォーム法(後者)のいずれの製造方法によっても製造できる。ここで、前者で得られたウレタンフォームは、所望の大きさ、形状に切り出して自動車座席用ウレタンフォームに用いればよい。一方、後者であれば、所望の大きさ、形状の金型に発泡原液を注入して発泡、硬化させることにより自動車座席用ウレタンフォームを得ることができる。いずれの製造方法でも、ポリオール成分の他に、発泡剤、触媒、整泡剤、必要に応じてその他の添加剤を攪拌混合したものに、イソシアネート成分を加えて更に攪拌混合して製造することができる。
【0038】
発泡剤としては、例えば、水、有機系発泡剤、無機系発泡剤、空気、二酸化炭素、HFC−245fa等のヒドロキシフルオロカーボン類や、シクロペンタン等の炭化水素類を使用することができる。有機系発泡剤としては、例えば、アセトン、ジクロロメタン、ニトロアルカン、ニトロ尿素、アルドオキシム、活性メチレン化合物、酸アミド、3級アルコール、シュウ酸水和物が挙げられる。無機系発泡剤としては、例えば、ホウ酸、固体炭素、水酸化アルミニウムが挙げられるが、イソシアネートと反応して二酸化炭素を放出して発泡作用を与えつつ、ポリ尿素が生成してフォームが強化されるので、水を使用することが好ましい。
【0039】
本発明において、ポリオールとイソシアネートの反応速度を調整するための触媒としては、ポリウレタンの製造に通常用いられる触媒、例えば三級アミンや反応性アミンが挙げられる。具体的には、三級アミンとしては、例えばトリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、ジメチルベンジルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、ビスー(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、トリエチレンジアミン、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、1,2−ジメチルイミダゾール、1−ブチルー2−メチルイミダゾールが挙げられる。反応性アミンとしては、例えばジメチルエタノールアミン、N−トリオキシエチレン−N,N−ジメチルアミン、N,N−ジメチルアミン、N,N−ジメチル−ヘキサノールアミンが挙げられる。これらの有機酸塩、スタネスオクトエート、ジブチルチンジラウレート、酢酸カリウム、2−エチルヘキサン酸カリウム等のカルボン酸金属塩、ジブチルチンジラウレート、スタナスオクトエート等の有機金属化合物(他にアルミニウム、スズ)等を用いても良い。触媒の添加量は、0.01〜10重量%であることが好ましく、0.3〜2重量%であることが更に好ましい。
【0040】
整泡剤としては、ポリウレタンの製造に通常用いられる整泡剤、例えばシリコーン系整泡剤、フッ素系整泡剤等が挙げられるが、シリコーン系整泡剤を用いることが好ましい。
上記の他に、必要に応じてこれらに更に連通化剤、架橋剤、光安定化剤、可塑剤、酸化防止剤、熱安定化剤、充填剤、着色防止剤、顔料、その他の添加剤等を添加することができる。
【0041】
本発明の自動車座席用ウレタンフォームの製造方法において、使用する水酸基末端ウレタンプレポリマーの水酸基価によるので一概に言えないが、ポリオール成分100重量部のうち、25〜50重量部に、ひまし油とイソシアネートとを反応させてなる水酸基末端ウレタンプレポリマーを用いることで、植物由来の脂肪酸含有率が15〜30重量%であり、かつ反発弾性率が45〜70%の自動車座席用ウレタンフォームを得ることができる。ここで、水酸基末端ウレタンプレポリマーが25重量部未満の場合、得られたフォームが焼却処理された際の地球規模での二酸化炭素収支に大きく貢献できず、本願の目的を達成できない。また、50重量部を越えると、得られたフォームの反発弾性率が低くなってしまい、目的とする反発弾性率を有するフォームを得ることができない。
【0042】
以下、本発明の具体的な実施例及び比較例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
(実施例及び比較例)
[水酸基末端ウレタンプレポリマーの合成例]
試料1:(ひまし油/TDI=2/1mol)
まず、常温において、ひまし油100部とトルエンジイソシアネート(TDI)9.4部を仕込んだところに、触媒としてジブチルチンジラウレートを0.0055g添加し、窒素雰囲気中にて85℃まで昇温させた。つづいて、85℃に到達後、3時間窒素雰囲気中にて反応を継続させた。次に、反応確認後、5mmHg、1時間で減圧脱泡した。脱泡後、水酸基価94mmgKOH/g水酸基末端ウレタンプレポリマー(試料1)を得ることができた。また、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)測定による数平均分子量は2901であった。
【0043】
試料2:(ひまし油/TDI=2/0.5mol)
まず、常温において、ひまし油100部とトルエンジイソシアネート(TDI)4.7部を仕込んだところに、触媒としてジブチルチンジラウレートを0.0052g添加し、窒素雰囲気中にて85℃まで昇温させた。つづいて、85℃に到達後、3時間窒素雰囲気中にて反応を継続させた。次に、反応確認後、5mmHg、1時間で減圧脱泡した。脱泡後、水酸基価123mmgKOH/gの水酸基末端ウレタンプレポリマー(試料2)を得ることができた。数平均分子量は2190であった。
【0044】
試料3:(ひまし油/TDI=2/1.2mol)
まず、常温において、ひまし油100部とトルエンジイソシアネート(TDI)11.2部を仕込んだところに、触媒としてジブチルチンジラウレートを0.0056g添加し、窒素雰囲気中にて85℃まで昇温させた。つづいて、85℃に到達後、3時間窒素雰囲気中にて反応を継続させた。次に、反応確認後、5mmHg、1時間で減圧脱泡した。脱泡後、水酸基価80mmgKOH/gの水酸基末端ウレタンプレポリマー(試料3)を得ることができた。数平均分子量は4094であった。
【0045】
試料4:(ひまし油/HDI=2/1mol)
まず、常温において、ひまし油100部とヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)9部を仕込んだところに、触媒としてジブチルチンジラウレートを0.0055g添加し、窒素雰囲気中にて85℃まで昇温させた。つづいて、85℃に到達後、3時間窒素雰囲気中にて反応を継続させた。次に、反応確認後、5mmHg、1時間で減圧脱泡した。脱泡後、水酸基価92mmgKOH/gの水酸基末端ウレタンプレポリマー(試料4)を得ることができた。数平均分子量は3211であった。
【0046】
[自動車座席用ウレタンフォームの作成]
まず、ポリオール成分として試料1のウレタンプレポリマーと、石油由来ポリオール、触媒、シリコーン系整泡剤、水、連通化剤を室温で攪拌混合した。次に、イソシアネート成分を加え、ホモミキサーで攪拌混合した後、上金型及び下金型からなる70×350×350mmの金型に注入した。つづいて、上金型を閉め、下金型温度60℃で6分間発泡させ、自動車座席用ウレタンフォームを得た。
【0047】
この時の自動車座席用ウレタンフォームの成形性と、得られたウレタンフォームの反発弾性率をJIS6400により測定した。また、植物由来脂肪酸含有率を前述した式(2)を用いて算出した。
下記表1は、実施例1,2及び比較例1〜5に係るウレタンフォームの原料の配合割合と成形性、植物由来脂肪酸含有率及び反発弾性率を示す。
【表1】

【0048】
表1中、ひまし油としては、伊藤製油株式会社製の商品名:精製ヒマシ油LAVを使用した。石油由来ポリオールとしては、三井化学ポリウレタン株式会社製の商品名:アクトコールEP−901(分子量7000)を使用した。触媒aとしてはアミン系触媒(東ソー株式会社製の商品名:TEDA L−33)を、触媒bとしてはアミン系触媒(活材ケミカル株式会社製の商品名:)MINICO HR−20)を使用した。整泡剤1としては、シリコーン系整泡剤(東レ・ダウコーニング株式会社製の商品名:SF−2962)を使用した。整泡剤2としては、シリコーン系整泡剤(東レ・ダウコーニング株式会社製の商品名:SF−2969)を使用した。連通化剤としては、ポリオール(旭硝子株式会社製の商品名:エクセノール3040)を使用した。イソシアネート成分としては、トルエンジイソシアネートとポリジフェニルメチルジイソシアネート混合物(三井化学ポリウレタン株式会社製の商品名:コスモネートTM−20)を使用した。
【0049】
実施例1においては、植物由来脂肪酸含有率が18重量%で、反発弾性率が目標値の45%を大きく越えた自動車座席用ウレタンフォームが得られたことが分かる。実施例2においては、反発弾性率の目標値である45%以上をクリアしつつ、植物由来脂肪酸含有率は28重量%であり、比較例2と比較して植物由来脂肪酸含有率は大幅に向上し、環境貢献度の高い自動車座席用ウレタンフォームが得られたことが分かる。
【0050】
比較例2においては、植物由来ポリオールにひまし油を用いた場合、植物由来脂肪酸含有率が20重量%であっても、反発弾性率が40%と本発明の目標である45%に到達できなかった。
比較例1,3,4においては、反発弾性率はいずれも本発明の目標値である45%をクリアしているが、植物由来脂肪酸含有率が10重量%程度であり、環境貢献度が低い。比較例5においては、植物由来脂肪酸含有率は36重量%で環境貢献度は高いが、反発弾性率は本発明の目標値である45%にほど遠く、自動車座席用ウレタンフォームに用いることができるものではなかった。
【0051】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。例えば、ポリオール成分や触媒、整泡剤等の種類は上述したものに限らず、他のポリオール成分や触媒、整泡剤等を用いることができ、それらの配合割合も上述した数値に限定されるものではない。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともポリオール成分とイソシアネート成分とを反応させて得られ、かつポリオール成分とイソシアネート成分のうちの少なくともいずれか1つが植物由来成分である軟質ポリウレタンフォームからなる自動車座席用ウレタンフォームであって、前記自動車座席用ウレタンフォーム重量に占める植物由来成分の脂肪酸含有率が15〜30重量%であり、かつ反発弾性率が45〜70%であることを特徴とする自動車座席用ウレタンフォーム。
【請求項2】
前記植物由来成分が、ヒドロキシ脂肪酸を構成成分とする油脂、及びその誘導体からなる群から選ばれる1種以上のものであることを特徴とする請求項1に記載の自動車座席用ウレタンフォーム。
【請求項3】
前記ポリオール成分が、ひまし油とイソシアネートとを反応させてなる水酸基末端ウレタンプレポリマーであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の自動車座席用ウレタンフォーム。
【請求項4】
前記イソシアネート成分が、ひまし油とイソシアネートとを反応させてなるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の自動車座席用ウレタンフォーム。
【請求項5】
前記イソシアネートが、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリエチレングリコールジイソシアネートのいずれかであることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の自動車座席用ウレタンフォーム。
【請求項6】
前記ポリオール成分が石油由来ポリオールであり、前記石油由来ポリオールの数平均分子量が6000〜10000であることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の自動車座席用ウレタンフォーム。
【請求項7】
少なくともポリオール成分とイソシアネート成分とを反応させて得られる軟質ポリウレタンフォームからなる自動車座席用ウレタンフォームの製造方法であって、前記ポリオール成分又はイソシアネート成分の少なくとも一方の成分に、ひまし油とイソシアネートとを反応させてなるウレタンプレポリマーを用いることを特徴とする自動車座席用ウレタンフォームの製造方法。
【請求項8】
前記ポリオール成分100重量部のうち、ひまし油とイソシアネートとを反応させてなる水酸基末端ウレタンプレポリマーを25〜50重量部用いることを特徴とする請求項7記載の自動車座席用ウレタンフォームの製造方法。

【公開番号】特開2008−56779(P2008−56779A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−233989(P2006−233989)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年5月24日 社団法人 高分子学会の「第55回高分子学会年次大会」において文書をもって発表
【出願人】(000003425)株式会社東洋クオリティワン (18)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(000118556)伊藤製油株式会社 (15)
【Fターム(参考)】