説明

自動車用カウル構造

【課題】ボンネットに加わる上部からの衝撃荷重により、ボンネットの後端部が変形して下側に移動する際、ボンネットに近接したカウルパネルが突っ張ることなく、該荷重を効率的に吸収できる。
【解決手段】自動車のフロントウインドパネル2の下端部2aと、ボンネット3の後端部3aと、ダッシュパネル4の上端部4aとの間に配されてなるカウルトップカバー6であって、前記ボンネット3の後端部3aをシール材7を介して支持してなるシール乗せ部8と、該シール乗せ部8の後端部8aを始点5として下側LWRに形成されてなる縦壁部9と、前記ダッシュパネル4の上端部4aに支持されてなるパネル乗せ部10aとよりなり、前記縦壁部9は、前記シール乗せ部8の後端部8aを始点5とした垂線11を基準に後部側RRに所定角度θ1になるよう形成されてなる第1斜面部12と、該第1斜面部12の前側FRに折曲形成されてなる第2斜面部13とよりなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用カウル構造、特に自動車のフロントウインドパネルの下端部と、ボンネットと、ダッシュパネルとの間に跨って配される自動車用カウル構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の自動車のフロントウインドパネルの下端部と、ボンネットと、ダッシュパネルとの間に跨って配される自動車用カウル構造として、例えば、カウルパネルの断面形状は、ボンネットの後端部を下から保持するように、前方に突出して形成されてなり、該カウルパネルの先端部に固設されたシール部材を介して、ボンネットを保持してなる(先行技術文献1。)ものが、従来技術として知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−090787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、かかる従来技術は、歩行者等に自車がぶつかり、バンパーより歩行者等を押すことで、反作用により、歩行者等の上半身、特に頭部がボンネットの後端部にぶつかるおそれがある。かかる場合に、ボンネットの後端部に発生した衝撃荷重により、ボンネットの後端部が変形して下側に移動する際、該ボンネットの後端部を下から保持する前記カウルパネルが障壁になるおそれがある、という課題がある。
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明は、ボンネットに加わる上部からの衝撃荷重により、ボンネットの後端部が変形して下側に移動する際、ボンネットに近接したカウルパネルが突っ張ることなく、該荷重を効率的に吸収できる自動車用カウル構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の請求項1記載の自動車用カウル構造は、自動車のフロントウインドパネルの下端部と、ボンネットの後端部と、ダッシュパネルの上端部との間に配されてなるカウルトップカバーであって、該カウルトップカバーは、前記ボンネットの後端部をシール材を介して支持してなるシール乗せ部と、該シール乗せ部の後端部を始点として下側に形成されてなる縦壁部と、前記ダッシュパネルの上端部に支持されてなるパネル乗せ部とより少なくとも形成されてなり、前記縦壁部は、前記シール乗せ部の後端部を始点とした垂線を基準に後部側に所定角度になるよう形成されてなる第1斜面部と、該第1斜面部の前側に折曲形成されてなる第2斜面部とよりなることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の請求項2記載の自動車用カウル構造が、請求項1記載の前記縦壁部は、前記シール乗せ部の後端部と、前記第1斜面部及び前記第2斜面部の折曲部との上下寸法が一定であることを特徴とする。
【0008】
更に、本発明の請求項3記載の自動車用カウル構造が、請求項1又は請求項2に記載の前記第2斜面部は、前記第1斜面部に対して、80度以上で100度以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、請求項1記載の発明によれば、自動車のフロントウインドパネルの下端部と、ボンネットの後端部と、ダッシュパネルの上端部との間に配されてなるカウルトップカバーであって、該カウルトップカバーは、前記ボンネットの後端部をシール材を介して支持してなるシール乗せ部と、該シール乗せ部の後端部を始点として下側に形成されてなる縦壁部と、前記ダッシュパネルの上端部に支持されてなるパネル乗せ部とより少なくとも形成されてなり、前記縦壁部は、前記シール乗せ部の後端部を始点とした垂線を基準に後部側に所定角度になるよう形成されてなる第1斜面部と、該第1斜面部の前側に折曲形成されてなる第2斜面部とよりなることにより、ボンネットの後端部の上方から下方に向けて加わった衝撃荷重は、第1斜面部と第2斜面部との折曲部に加わり、該折曲部が弾性変形又は塑性変形することにより、シール乗せ部が初期状態を維持したまま下方へ移動するので、前記縦壁部が突っ張らず、ボンネットから加わる衝撃荷重を効率的に吸収できることになる、という効果を奏する。
【0010】
また、本発明は、請求項2記載の発明によれば、前記縦壁部は、前記シール乗せ部の後端部と、前記第1斜面部及び前記第2斜面部の折曲部との上下寸法が一定であることにより、歩行者等がボンネットの左右中央から左右端部までのどこにぶつかっても、衝撃荷重の吸収レベルは同一を保持できる、という効果を奏する。
【0011】
更に、本発明は、請求項3記載の発明によれば、前記第2斜面部は、前記第1斜面部に対して、80度以上で100度以下であることにより、前記衝撃荷重を受けた時に、第2斜面部を下方へ容易に変形しやすくなり、確実な衝撃吸収が出来る、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例1に係る自動車用カウル構造を示し、図2のSA−SA線に沿った断面図。
【図2】図1のカウルトップカバーを示す斜視図。
【図3】図2のB部の拡大斜視図。
【図4】本発明の実施例2に係る図1に相当する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。本発明において、ボンネットに加わる上部からの衝撃荷重により、ボンネットの後端部が変形して下側に移動する際、ボンネットに近接したカウルパネルが突っ張ることなく、該荷重を効率的に吸収できる自動車用カウル構造を提供するという目的を、自動車のフロントウインドパネルの下端部と、ボンネットの後端部と、ダッシュパネルの上端部との間に配されてなるカウルトップカバーであって、該カウルトップカバーは、前記ボンネットの後端部をシール材を介して支持してなるシール乗せ部と、該シール乗せ部の後端部を始点として下側に形成されてなる縦壁部と、前記ダッシュパネルの上端部に支持されてなるパネル乗せ部とより少なくとも形成されてなり、前記縦壁部は、前記シール乗せ部の後端部を始点とした垂線を基準に後部側に所定角度になるよう形成されてなる第1斜面部と、該第1斜面部の前側に折曲形成されてなる第2斜面部とよりなることで、実現した。以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0014】
本発明の実施例1に係る構造を、図1〜図3を用いて説明する。この実施例1の自動車用カウル構造1は、自動車のフロントウインドパネル2の下端部2aと、エンジンルームERを上部から覆うボンネット3の後端部3aと、前記エンジンルームER及び乗員居室PR間を仕切るダッシュパネル4の上端部4aとの間に配されてなる合成樹脂製のカウルトップカバー6である。
【0015】
該カウルトップカバー6は、前記ボンネット3の後端部3aに接してエンジンルームER内の異臭を遮断するシール材7(図1のシール材7は、ボンネット3がエンジンルームERを閉じることで、圧接する前の常態を示す)を介して支持してなるシール乗せ部8と、該シール乗せ部8の後端部8aを始点5として下側LWRに形成されてなる縦壁部9と、前記ダッシュパネル4の上端部4aに支持されてなる車体パネル10の前端のパネル乗せ部10aとより形成されてなる。
【0016】
前記縦壁部9は、前記シール乗せ部8の後端部8aを始点5とした垂線11を基準に後部RR側に所定角度θ1になるよう形成されてなる第1斜面部12と、該第1斜面部12の下端部より前側FRに折曲形成されてなる第2斜面部13とよりなる。符号14は、第1斜面部12の下端部に形成されて、第2斜面部13の折曲部である。
【0017】
また、前記縦壁部9は、前記シール乗せ部8の後端部8aと、前記第1斜面部12及び前記第2斜面部13の折曲部14との上下寸法15が、自動車の左右中央部においても、自動車の左右端部においても、一定である。
【0018】
例えば、前記第1斜面部12の自動車の左右中央部においての角度θ1は、前記垂線11に対して約45度をなし且つ自動車の左右端部においての角度θ1は、前記垂線11に対して25度をなす。また、自動車の左右端部においての角度θ1は、前記垂線11に対して45度よりも小さい角度を適宜設定することが出来る。そして、角度θ1は、自動車の左右中央部及び自動車の左右端部において一定角度であっても良い。
【0019】
更に、前記第2斜面部13は、前記第1斜面部12に対して前側FRに折曲形成されてなる角度θ2は、80度以上で100度以下である。前記第2斜面部13の下端部には、前記車体パネル10の前端のパネル乗せ部10aの上に乗る水平面部16が形成されてなる。符号17は、前記シール乗せ部8の下面部8bと、前記第1斜面部12の前面部12aと、前記第2斜面部13の前面部13aとに連続的に立設されてなる補強リブである。
【0020】
前記カウルトップカバー6は、図2に示すように、左右方向LH、RHに長尺であり、一体に形成されてなり、外気の取り入れ口18が桟状に形成されてなる。
【0021】
次に、この実施例1の作用を説明する。
【0022】
自動車のフロントウインドパネル2の下端部2aと、ボンネット3の後端部3aと、ダッシュパネル4の上端部4aとの間に配されてなるカウルトップカバー6であって、該カウルトップカバー6は、前記ボンネット3の後端部3aをシール材7を介して支持してなるシール乗せ部8と、該シール乗せ部8の後端部8aを始点5として下側LWRに形成されてなる縦壁部9と、前記ダッシュパネル4の上端部4aに支持されてなるパネル乗せ部10aとより少なくとも形成されてなり、前記縦壁部9は、前記シール乗せ部8の後端部8aを始点5とした垂線11を基準に後部RR側に所定角度θ1になるよう形成されてなる第1斜面部12と、該第1斜面部12の前側FRに折曲形成されてなる第2斜面部13とよりなることにより、ボンネット3の後端部3aの上方から下方に向けて加わった衝撃荷重Fは、第1斜面部12と第2斜面部13との折曲部14に加わり、該折曲部14が図1に二点鎖線で示すように、弾性変形又は塑性変形することにより、シール乗せ部8が初期状態、即ち、図1に示すような水平状態を維持したまま下方LWRへ移動するので、前記縦壁部9が突っ張らず、ボンネット3から加わる衝撃荷重Fを効率的に吸収できることになる、という効果を奏する。
【0023】
また、前記縦壁部9は、前記シール乗せ部8の後端部8aと、前記第1斜面部12及び前記第2斜面部13の折曲部14との上下寸法15が一定であることにより、図示しない歩行者等がボンネット3の左右中央から左右端部までのどこにぶつかっても、衝撃荷重Fの吸収レベルは同一を保持できる、という効果を奏する。
【0024】
更に、前記第1斜面部12は、自動車の左右中央部が、前記垂線11に対して約45度後ろ側RRを向き且つ自動車の左右端部が、前記垂線11に対して25度後ろ側RRを向くことにより、自動車の左右中央部に図示しない歩行者等がぶつかった場合は、該衝撃力が左右に大きく分散し、自動車の左右端部に図示しない歩行者等がぶつかった場合は、該衝撃力の分散代が少ないので、第1斜面部12の前記垂線11に対しての角度θ1が異なるものの、衝撃吸収値はほぼ同じレベルにある、という効果を奏する。
【0025】
更に、前記第2斜面部13は、前記第1斜面部12に対して、80度以上で100度以下であり、好ましくは略直角状をなすことにより、前記衝撃荷重Fを受けた時に、前記第2斜面部13を下方へ容易に変形しやすくなり、確実な衝撃吸収が出来る、という効果を奏する。前記第1斜面部12に対する前記第2斜面部13のなす角度が、80度より小さい場合には、折曲部14が車両後部RR側への突出量が大きくなり、車両レイアウト上の自由度が制限されてしまう。また、前記第2斜面部13のなす角度が、100度より大きい場合には、衝撃荷重入力時に前記第2斜面部13が、突っ張ってしまう傾向にあり、前記第2斜面部13の下方への移動を妨げてしまい、衝撃吸収効果が低下する傾向にある。
【0026】
更に、前記第1斜面部12及び前記第2斜面部13には、補強リブ17を形成してなることにより、ボンネット3への積雪や手つきなどによっても、カウルトップカバー16の変形が生じないことになり、一定の剛性を付与することができる、という効果を奏する。
【実施例2】
【0027】
本発明の実施例2に係る構造を、図4を用いて説明する。この実施例2の自動車用カウル構造20は、自動車のフロントウインドパネル2の下端部2aと、エンジンルームERを上部から覆うボンネット3の後端部3aと、前記エンジンルームER及び乗員居室PR間を仕切るダッシュパネル4の上端部4aとの間に配されてなる合成樹脂製のカウルトップカバー21である。
【0028】
該カウルトップカバー21は、前記ボンネット3の後端部3aに接してエンジンルームER内の異臭を遮断するシール材7(図4のシール材7は、ボンネット3がエンジンルームERを閉じることで、圧接する前の常態を示す)を介して支持してなるシール乗せ部8と、該シール乗せ部8の後端部8aを始点5として下側LWRに形成されてなる縦壁部22と、前記ダッシュパネル4の上端部4aに支持されてなる車体パネル10の前端のパネル乗せ部10aとより形成されてなる。
【0029】
前記縦壁部22は、前記シール乗せ部8の後端部8aを始点5とした垂線11を基準に後部RR側に所定角度θ1になるよう形成されてなる第1斜面部12と、該第1斜面部12の下端部より前側FRに折曲形成されてなる第2斜面部13と、前記第1斜面部12の下端部及び第2斜面部13の上端部に折曲形成されてなる折曲部14とよりなり、前記シール乗せ部8の後端部8aと前記第1斜面部12の上端部との間、前記折曲部14、第2斜面部13の下端部と前記水平面部16との間には、それぞれ丸で囲んだ薄肉状の脆弱部23,24,25が形成されてなる。
【0030】
次に、この実施例2の作用を説明する。
【0031】
前記縦壁部22には、脆弱部23,24,25を形成してなることにより、歩行者等によりボンネット3に衝撃Fを受けた際に、脆弱部23,24,25により下側KWRへの移動量が大きく、確実な衝撃吸収が出来る、という効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0032】
前記実施例1,2で歩行者等としている。この歩行者等とは、人が路上を歩いている場合だけでなく、ジョキング等状態の違いも含むし、鹿など対象が人以外である場合も含む概念である。
【符号の説明】
【0033】
1、20 自動車用カウル構造
2 自動車のフロントウインドパネル
2a フロントウインドパネルの下端部
3 ボンネット
3a ボンネットの後端部
4 ダッシュパネル
4a ダッシュパネルの上端部
5 始点
6、21 カウルトップカバー
7 シール材
8 シール乗せ部
8a シール乗せ部の後端部
9,22 縦壁部
10a パネル乗せ部
11 垂線
12 第1斜面部
13 第2斜面部
14 折曲部
15 上下寸法
17 補強リブ
23,24、25 脆弱部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のフロントウインドパネルの下端部と、ボンネットの後端部と、ダッシュパネルの上端部との間に配されてなるカウルトップカバーであって、
前記カウルトップカバーは、前記ボンネットの後端部をシール材を介して支持してなるシール乗せ部と、該シール乗せ部の後端部を始点として下側に形成されてなる縦壁部と、前記ダッシュパネルの上端部に支持されてなるパネル乗せ部とより少なくとも形成されてなり、前記縦壁部は、前記シール乗せ部の後端部を始点とした垂線を基準に後部側に所定角度になるよう形成されてなる第1斜面部と、該第1斜面部の前側に折曲形成されてなる第2斜面部とより構成されてなることを特徴とする自動車用カウル構造。
【請求項2】
請求項1記載の自動車用カウル構造であって、
前記縦壁部は、前記シール乗せ部の後端部と、前記第1斜面部及び前記第2斜面部の折曲部との上下寸法が一定であることを特徴とする自動車用カウル構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の自動車用カウル構造であって、
前記第2斜面部は、前記第1斜面部に対して、80度以上で100度以下であることを特徴とする自動車用カウル構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−51450(P2011−51450A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−201633(P2009−201633)
【出願日】平成21年9月1日(2009.9.1)
【出願人】(000229955)日本プラスト株式会社 (740)
【Fターム(参考)】