説明

自動車用ゴムタイヤ性能向上剤

【課題】自動車用ゴムタイヤに塗布するだけで、あらゆる路面において安定した走行を可能とするグリップ力を発揮するタイヤ性能向上剤を提供する
【解決手段】有機溶媒を主成分とし、ゴムタイヤ下地を調整するためのゴムタイヤ下地調整剤と、アルコキシシランと脂肪族炭化水素化合物を含有しゴムタイヤに含浸してグリップ力を向上させるためのグリップ力向上剤からの2液よりなるタイヤ性能向上剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、特に、ラジオコントロール自動車のゴムタイヤに塗布することで、転がり抵抗を増大させることなくゴムタイヤのグリップ力を向上させるゴムタイヤ性能向上剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ラジオコントロール自動車を走行させる場合、走行させる場所の気温や路面状況に応じてゴムタイヤの銘柄と、特許文献1にあるような高いグリップ力を持ったタイヤ銘柄と、特許文献2にあるようなインナー材銘柄を組み合わせることによって、安定した走行を可能とするゴムタイヤのグリップ力を確保していた。
【0003】
また、ゴムタイヤに塗布することにより、有効成分をゴムタイヤに含浸させ軟化させて、ゴムタイヤのグリップ力を向上させるグリップ力向上剤を使用することもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−189707号公報
【特許文献2】特開2007−252426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ラジオコントロール自動車を走行させる場所、その走行させる場所の気温や路面状況等に応じて、ゴムタイヤの銘柄、およびインナー材銘柄を組み合わせることは、数多くのゴムタイヤ銘柄およびインナー材銘柄が存在するために多大な労力と出費を必要とする。
【0006】
とくに、ラジオコントロール自動車のレース競技ともなると、ゴムタイヤ銘柄とインナー材の組み合わせは競技結果に大きく影響するので、特許文献1にあるようなゴムタイヤの銘柄、および特許文献2にあるようなインナー材銘柄を組み合わせることにより安定した走行性能を可能とするグリップ力を確保することは重要な課題となっている。
【0007】
しかし、ラジオコントロール自動車の入門者には、上記のようなゴムタイヤ銘柄とインナー材銘柄を組み合わせて安定した走行性能を可能とするグリップ力を確保していくことは、多くのノウハウと多大な出費を伴うため難しいことであり、ラジオコントロール自動車入門をためらわせる要因の一つとなっている。
【0008】
また、グリップ力向上剤の使用は、ゴムタイヤ銘柄とインナー材銘柄の組み合わせで安定した走行を可能とするグリップ力が不足している場合でも、ゴムタイヤにグリップ力向上剤を塗布することで高いグリップ力を発揮することが可能となる。
【0009】
しかし、グリップ力向上剤をゴムタイヤに塗布する場合においても、ゴムタイヤ銘柄とインナー材銘柄の組み合わせと同様多くのノウハウが必要となる。例えば、基本的な使用法では、ゴムタイヤトレッド面の洗浄、グリップ力向上剤の塗布、加温養生といった工程が必要となり、これらの工程はマニュアルが存在しないため、ラジオコントロール自動車入門者には敬遠される傾向にある。
【0010】
現在、主に使用されているグリップ力向上剤は、テレピン油を中心に脂肪族系炭化水素等で構成されている。テレピン油はサリチル酸を多く含むため刺激臭があり、住宅に隣接するラジオコントロール自動車用サーキットや、閉鎖的な環境、例えば、屋内のラジオコントロール自動車用サーキットにおいては使用を禁止される場合がある。
【0011】
また、グリップ力向上剤の成分はラジオコントロール自動車のゴムタイヤに浸透し、ゴムタイヤを軟化させることによってグリップ力を発揮するので、ゴムタイヤは数回使用すると劣化して走行不能の状態となってしまう。
【0012】
そこで、本発明は、ゴムタイヤ銘柄とインナー材銘柄の組み合わせによらず、ラジオコントロール自動車ゴムタイヤに塗布するだけで、刺激臭がなく、かつ、ゴムタイヤを軟化させることなく安定した走行を可能とするグリップ力を発揮するタイヤ性能向上剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明は、ゴムタイヤ下地を調整するためのゴムタイヤ下地調整剤と、ゴムタイヤに含浸してグリップ力を向上させるためのグリップ力向上剤からの2液よりなり、下記の(A)、(B)、(C)及び(D)の各成分を含有するゴムタイヤ下地調整剤およびグリップ力向上剤を作製することにより、上記の課題を解決したものである。
【0014】
ここで(A)成分とは、下記式(1)で示されるアルコキシラン化合物、およびその部分加水分解縮合物から選ばれる1種類の化合物又は複数種の化合物の混合物である。
Si(OR4−n (1)
(上記式(1)中、Rは炭素数1〜10の芳香族基を含んでも良い炭化水素基を示す。Rは、炭素数1〜4のアルキル基を示す。上記RとRとは、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、nは1〜3の整数を示す。)
【0015】
また、(B)成分とは、下記式(2)で示されるアルコキシシラン化合物、およびその部分加水分解縮合物から選ばれる1種類の化合物又は複数種の化合物の混合物である。
(R−RSi(OR (2)
(上記式(2)中、Rは、メルカプト基、アミノ基、フェニルアミノ基、アミノエチルアミノ基、メタクリロキシ基、グリドキシ基、イソシアネート基、又はビニル基を示す。Rは)炭素数0〜4の二価の炭化水素基を示す。Rは炭素数1〜4のアルキル基を示す。Rは炭素数1〜10の芳香族基を含んでもよい炭化水素基を示す。また、mは1〜3の整数を、pは1〜3の整数を、qは0〜2の整数を示し、m+p+q=4である)
【0016】
(C)成分とは、炭素数9〜16の脂肪族炭化水素化合物である。
【0017】
(D)成分とは、沸点が50〜100℃である有機溶媒である。
【0018】
すなわち、このタイヤ性能向上剤は、ゴムタイヤ下地調整剤によりゴムタイヤ表面に存在する埃、劣化したゴムおよび、ゴムタイヤ内部より浮き出てきたオイルを除去し、かつ、ゴムタイヤ表面に適当な空隙を作成した後、グリップ力向上剤を塗布して、有効成分を含浸させることによりゴムタイヤのグリップ力を向上させる。
【0019】
ただし、(C)成分である炭素数9〜16の脂肪族炭化水素化合物、(D)成分である沸点が50〜100℃である有機溶媒の種類、添加量によっては、ゴムタイヤを軟化させる可能性があるので、予めゴムタイヤの膨潤試験をおこなったほうがよい。
【発明の効果】
【0020】
この発明にかかるタイヤ性能向上剤により、ゴムタイヤを軟化させることなく、ゴムタイヤの剛性を保ったまま、もしくはゴムタイヤの剛性を向上させた上でゴムタイヤのグリップ力の向上ができる。ゴムタイヤを軟化させることがないので、ゴムタイヤの転がり抵抗が増大することもなく、エネルギーロスを抑制し、高い走行性能を発揮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明について詳細に説明する。
この発明は、自動車ゴムタイヤ表面に塗布し、ゴムタイヤ内部へ含浸することで、ゴムタイヤのグリップ力を向上させることができる、ゴムタイヤ下地調整剤とグリップ力向上剤からなる自動車用ゴムタイヤ性能向上剤である。
【0022】
この発明で対象とする自動車ゴムタイヤは、特に、ラジオコントロールにより走行させる模型自動車のゴムタイヤである。例えば、動力源を蓄電池とモーター、またはガソリンエンジンとした、実車の構造を模倣し、実車と同モデルのボディを持つツーリングカー。同様に動力源を蓄電池とモーター、またはガソリンエンジンとした、未舗装の土路面を走行することを目的としたオフロードカーが挙げられる。
【0023】
この発明にかかる自動車用ゴムタイヤ性能向上剤は、アルコキシシラン化合物、その部分加水分解縮合物又はその両方、および、脂肪族炭化水素化合物と、有機溶媒とを含む。具体的には、アルコキシシラン化合物、又はその部分加水分解縮合物としては、少なくとも下記の(A)成分を有し、下記の(B)成分を含んでいてもよい。また、前記脂肪族炭化水素化合物を(C)成分、前記有機溶媒を(D)成分と記載する。
【0024】
上記(A)成分は、下記式(1)で示されるアルコキシシラン化合物及びその部分加水分解縮合物から選ばれる、1種の化合物又は複数種の化合物の混合物である。この(A)成分を用いることにより、ゴムタイヤのグリップ力を向上させることができる。
【0025】
Si(OR4−n (1)
【0026】
上記式(1)中、Rは炭素数1〜10の芳香族基を含んでも良い炭化水素基を示す。Rは、炭素数1〜4のアルキル基を示す。上記RとRとは、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、nは1〜3の整数を示す。
【0027】
上記Rとしては、具体的には、メチル基、エチル基、ブチル基、ヘキシル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基等の芳香族基等が挙げられる。
【0028】
このようなアルコキシシラン化合物の例としては、メチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ジブチルジメトキシシラン等のアルキルトリアルコキシシランやジアルキルジアルコキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン等のフェニル基含有アルコキシシラン等が挙げられる。
【0029】
次に、上記(B)成分は、下記式(2)で示されるアルコキシシラン化合物及びその部分加水分解縮合物から選ばれる1種の化合物又は複数種の化合物の混合物である。なお、(B)成分としては、下記式(2)の構造を有する1種類の化合物でもよいし、2種類以上の化合物を併用してもよい。この(B)成分を用いることにより、ゴムタイヤのグリップ力を向上させることができる。ただし、この(B)成分は必ずしも含まなくてもよい。
【0030】
(R−RSi(OR (2)
【0031】
上記式(2)中、Rは、メルカプト基、アミノ基、フェニルアミノ基、アミノエチルアミノ基、メタクリロキシ基、グリドキシ基、イソシアネート基、又はビニル基を示す。Rは)炭素数0〜4の二価の炭化水素基を示す。Rは炭素数1〜4のアルキル基を示す。Rは炭素数1〜10の芳香族基を含んでもよい炭化水素基を示す。また、mは1〜3の整数を、pは1〜3の整数を、qは0〜2の整数を示し、m+p+q=4である。
【0032】
上記(B)成分を構成するアルコキシシラン化合物の例としては、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0033】
上記(C)成分は、炭素数9〜16の脂肪族炭化水素化合物である。ここでいう脂肪族炭化水素化合物とは、例えば、ガソリン、灯油やミネラルターペン等が挙げられる。
【0034】
上記(D)成分は、沸点が50〜100℃である有機溶媒である。ここでいう有機溶媒とは、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロパノールや酢酸エチル等が挙げられる。これらは1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用して使用してもよい。
【0035】
ゴムタイヤ下地調整剤には、(D)成分および(C)成分が含有される。ただし、(C)成分は必ずしも含まなくてもよい。
【0036】
ゴムタイヤ下地調整剤中の(D)成分の好ましい配合は、イソプロパノールが70重量部以上である。イソプロパノールが70重量部未満であると、アセトン、メチルエチルケトンおよび酢酸エチル等は、ゴムタイヤ中のオイル成分を溶出するため、ゴムタイヤ表面が劣化したり、ミクロレベルの巣ができたりしてしまう。
【0037】
ゴムタイヤ下地調整剤における、上記(C)成分の配合量は、(D)成分の合計量100重量部に対して、15重量部以下であるとよく、10重量部以下であると好ましい。添加量が15重量部より多くなると、ゴムタイヤが膨潤して軟化してしまい、転がり抵抗の増大を招き、また、タイヤの劣化を促進する場合がある。
【0038】
グリップ力向上剤には(A)、(B)、(C)及び(D)の各成分が含有される。
【0039】
上記(A)成分および(B)成分の好ましい混合比は、(B)成分/(A)成分=0/100〜20/80がよく、0/100〜10/90が好ましい。上記(B)成分がアルコキシシラン化合物中に占める割合が20重量%より多くなると、ゴムタイヤが軟化する傾向がある。
【0040】
グリップ力向上剤における、上記(C)成分の配合量は、アルコキシシラン化合物やその部分加水分解縮合物である(A)成分および(B)成分の合計量100重量部に対して、45重量部以下であるとよく、35重量部以下であると好ましい。添加量が50重量部より多くなると、ゴムタイヤが膨潤して軟化してしまい、転がり抵抗の増大を招き、また、タイヤの劣化を促進する場合がある。
【0041】
グリップ力向上剤において、上記(D)成分の配合量は、アルコキシシラン化合物やその部分加水分解縮合物である(A)成分および(B)成分の合計量100重量部に対して、300重量部以上が好ましい。添加量が300重量部未満になると、ゴムタイヤへの含浸が遅くなり、また、使用量も増大してしまう。さらに、ゴムタイヤ表面に(A)成分および(B)成分が浮いてしまい、転がり抵抗の増大を招く可能性がある。
【実施例】
【0042】
<(A)成分>
・メチル基およびフェニル基含有アルコキシシランオリゴマー…信越化学工業(株)製:KR−213(以下、「KR213」と称する。)メチルトリメトキシシランおよびフェニルトリメトキシシランを部分加水分解縮合した4量体。分子量約440、粘度18mPa・s。
・メチルトリメトキシシランオリゴマー…信越化学工業(株)製:KC89S(以下、「KC89S」と称する。)メチルトリメトキシシランを部分加水分解縮合した約2量体。分子量約280、粘度5mPa・s。
・メチル基含有アルコキシシランオリゴマー…信越化学工業(株)製:X−40−9225(以下、「X25」と称する。)メチルトリメトキシシランを部分加水分解縮合した約20量体。分子量約1700、粘度80mPa・s。
<(B)成分>
・3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン…信越化学工業(株)製:KBM−803(以下、「KBM803」と称する。)部分加水分解していないモノマー。分子量196、粘度4mPa・s。
・3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン…東レ・ダウコーニング(株)製:SH6040(以下、「SH6040」と称する。)部分加水分解していないモノマー。分子量236、粘度4mPa・s。
<(C)成分>
・脂肪族炭化水素化合物…和光純薬工業(株)製:ミネラルスピリット(以下、「MSP」と称する。)
<(D)成分>
・イソプロピルアルコール…和光純薬工業(株)製:IPA(以下、「イソプロパノール」と称する。)
・アセトン…和光純薬工業(株)製:アセトン(以下、「アセトン」と称する。)
【0043】
<ゴムタイヤの膨潤試験>
下記に示すそれぞれの構成の試料について、30mlのポリエチレンカップに10mlの試料を入れ、電動ツーリングカー用ゴムタイヤ((有)サイキゴム工業所社製、GM SOREX 28R)を2cm角に切断し投入。24時間静置した後、ゴムタイヤ片の変形度合い、試料の変色度合いを目視で観察した。
【0044】
<オフロードカーによるラップタイム測定>
下記に示すそれぞれの構成の試料について、まず、ゴムタイヤ下地調整剤を清潔なペーパーウエスに適量浸み込ませ、ゴムタイヤの表面をムラなく拭いた。このとき、用いたゴムタイヤは後輪には、パンサー社(USA)製、1/10オフロード用スイッチ2.0 2WD/4WDリアタイヤ、前輪にはパンサー社(USA)製、1/10オフロード用ラプター4WDフロントタイヤである。ゴムタイヤ表面が乾燥したら、グリップ力向上剤をスポンジに含浸させ、ゴムタイヤの表面にムラなく均一になるように塗布した。グリップ力向上剤が乾燥したら、ゴムタイヤを評価用のラジオコントロール自動車へ装着し、ラジオコントロール自動車用オフロードサーキットにおいて5分間の連続周回走行を行い、その平均ラップタイムをAMBポンダーシステムにて測定した。測定は各2回おこない、衝突等によるタイムロスがある周回はデータから排除した。ここで、評価用のラジオコントロール自動車は(株)ヨコモ社製、MR−4 BXである。
【0045】
<操縦性>
タイヤ性能向上剤で処理したタイヤを、評価用のラジオコントロール自動車に装着し、操縦者による官能評価をおこなった。比較例18を5として10段階で評価した。操縦者は、ラジオコントロール自動車のレース競技において、国内上位に入賞した経験を有する者である。
【0046】
<燃費性>
タイヤ性能向上剤で処理したタイヤを、評価用のラジオコントロール自動車に装着し、7.2V4600mAhのニッケル水素バッテリーにて走行可能な時間を計測した。測定は3回おこない、衝突等によるタイムロスがなかった回を計測データとした。操縦者はラジオコントロール自動車のレース競技において、国内上位に入賞した経験を有する者である。測定は平均ラップタイプが20%減少した時間を終点とした。
【0047】
表1に記載の組成で、(株)特殊機化工業社製、TK ホモディスパーに4cm径ステンレス羽根を装着し、1000rpmにて、(A)、(B)、(C)および(D)成分を30分混合して得られたゴムタイヤ下地調整剤とグリップ力向上剤について上記の評価を行った。その結果を表1〜3に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

【0050】
【表3】

【0051】
<ゴムタイヤ下地調整剤>
(実施例1〜5、比較例1〜7)
ゴムタイヤ下地調整剤にゴムタイヤ片を浸漬させたところ、実施例1〜5においてゴムタイヤ片の膨潤も、試料の着色も見られなかった。対して、比較例1〜7では、ゴムタイヤ片は膨潤し、試料にも薄黄色から黄緑の着色が見られた。ゴムタイヤ片を試料から取り出したところ、ゴムタイヤ片は容易にボロボロになっており、ゴムタイヤ中の成分が溶出していたと考えられる。
【0052】
<グリップ力向上剤>
(実施例6〜17、比較例8〜19)
実施例6〜14は、(A)成分と(B)成分100重量部に対し、(D)成分が300重量部以上になっているので、試料のゴムタイヤへの含浸がスムーズにおこり、高いグリップ力を発揮している。しかし、比較例8〜10においては、(A)成分と(B)成分100重量部に対し、(D)成分が300重量部未満になっているので、ゴムタイヤへの試料の含浸が遅くなり、さらに、走行させると転がり抵抗が大きくなり、走行前半での平均ラップタイムが遅くなり、そして、燃費も悪くなっている。
【0053】
実施例11〜14は、(B)成分/(A)成分=10/90となっているので、ゴムタイヤの膨潤を起こさず高いグリップ力を発揮している。対して、比較例11〜14では、(B)成分/(A)成分=20/70より(B)成分の比率が多くなっているため、ゴムタイヤが膨潤してしまい、平均ラップタイム、燃費ともに悪くなっている。
【0054】
実施例15〜17では、(C)成分が35重量部以下であるので、ゴムタイヤの膨潤を起こさず高いグリップ力を発揮している。しかし、比較例15〜17では、(A)成分および(B)成分の合計量100重量部に対しての(C)成分が50重量部以上となっているため、ゴムタイヤが膨潤してしまい、平均ラップタイム、燃費ともに悪くなっている。
【0055】
比較例18、19は走行準備に30分超を要し、平均ラップタイム、燃費とも実施例6〜17と比して良好ではなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(C)及び、(D)の各成分を含むゴムタイヤ下地調整剤と、(A)、(B),(C),及び(D)の各成分または、(A)と(D)成分、(A)、(B)と(D)成分を含有するグリップ力向上剤からなる自動車用ゴムタイヤ性能向上剤。
・(A)成分:下記式(1)で示されるアルコキシラン化合物、およびその部分加水分解縮合物から選ばれる1種類の化合物又は複数種の化合物の混合物。
Si(OR4−n (1)
(上記式(1)中、Rは炭素数1〜10の芳香族基を含んでも良い炭化水素基を示す。Rは、炭素数1〜4のアルキル基を示す。上記RとRとは、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、nは1〜3の整数を示す。)
・(B)成分:下記式(2)で示されるアルコキシシラン化合物、およびその部分加水分解縮合物から選ばれる1種類の化合物又は複数種の化合物の混合物。
(R−RSi(OR (2)
(上記式(2)中、Rは、メルカプト基、アミノ基、フェニルアミノ基、アミノエチルアミノ基、メタクリロキシ基、グリドキシ基、イソシアネート基、又はビニル基を示す。Rは炭素数0〜4の二価の炭化水素基を示す。Rは炭素数1〜4のアルキル基を示す。Rは炭素数1〜10の芳香族基を含んでもよい炭化水素基を示す。また、mは1〜3の整数を、pは1〜3の整数を、qは0〜2の整数を示し、m+p+q=4である)
・(C)成分:炭素数9〜16の脂肪族炭化水素化合物。
・(D)成分:沸点が50〜100℃である有機溶媒。
【請求項2】
請求項1に記載のゴムタイヤ下地調整剤とグリップ力向上剤を、自動車タイヤに塗布することにより、加温および養生の過程を必要としない自動車用ゴムタイヤ性能向上剤。
【請求項3】
自動車用ゴムタイヤに塗布することで、未舗装の土路面、アスファルト舗装路面、コンクリート舗装路面、塗装された舗装路面およびカーペット路面にて転がり抵抗の増大がなく、高いグリップ力を発揮する、請求項1〜2に記載の自動車用ゴムタイヤ性能向上剤。

【公開番号】特開2011−24985(P2011−24985A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−189544(P2009−189544)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(509232474)
【Fターム(参考)】