説明

自動車用スロットアンテナ

【課題】ヒンジを介して接続される2つの車体部を利用して構成される自動車用スロットアンテナにおいて、送受信すべき電波に対し適正なアンテナ性能が得られるようにする。
【解決手段】スロットアンテナ10は、ドア4とフェンダー6とがヒンジを介して接続されるヒンジ部8において互いに対向するエッジ同士を、所定長さL(λ/2)だけ離れた2箇所で接続し、更に、その2箇所の接続点の中間位置を給電部12として給電線16を接続することにより構成されている。この結果、ドア4とフェンダー6とを接続するヒンジの位置やその間隔に影響されることなく、所望周波数帯の電波を良好に送受信することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒンジを介して接続される2つの車体部の間で、互いに対向するエッジを利用して形成される自動車用スロットアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のボンネットやドア等、車両本体に対してヒンジを介して開閉自在に固定される車体部と、車両本体との間で互いに対向するエッジ(換言すればエッジ間の隙間)を利用してスロットアンテナを構成することが提案されている(例えば、特許文献1等、参照)
【特許文献1】特開2005−244981号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記提案の自動車用スロットアンテナは、車両本体に対してボンネット等の車体部が開閉される開口部分に、車体部が閉じられたときに車体部と容量結合して、車体部への給電点を構成するRF接続プラグを設けることで、車体部への給電線の接続を簡単に行うことができるようにしたものであるが、車体部と車両本体とは、単にヒンジを介して接続されているだけであるため、これら各部の給電点から、これら各部が相互に接続される接続点までの長さを、送受信すべき電波の周波数に対応して設定することができず、適正なアンテナ性能が得られないという問題があった。
【0004】
本発明は、こうした問題に鑑みなされたものであり、ヒンジを介して接続される2つの車体部を利用して構成される自動車用スロットアンテナにおいて、送受信すべき電波に対し適正なアンテナ性能が得られるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的を達成するためになされた請求項1に記載の発明は、ヒンジを介して接続される2つの車体部の間で、互いに対向するエッジを利用して形成される自動車用スロットアンテナであって、前記2つの車体部において、前記ヒンジが取り付けられる側で互いに対向するエッジ同士を、送受信する電波の波長に対応して設定される所定長さだけ離れた2箇所でそれぞれ電気的に接続し、該2箇所の接続点の間で互いに対向するエッジ部分に、それぞれ、給電線を接続してなることを特徴とする。
【0006】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の自動車用スロットアンテナにおいて、前記エッジ同士を2箇所で接続する接続部材は、可撓性を有するフラットケーブルからなることを特徴とする。
【0007】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の自動車用スロットアンテナにおいて、前記エッジ同士を2箇所で接続する接続部材は、各エッジにそれぞれ設けられ、前記2つの車体部間の開閉に応じて互いに摺動するよう、摺動部が円弧状に形成された導電性部材からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の自動車用スロットアンテナによれば、ヒンジを介して接続される2つの車体部において、前記ヒンジが取り付けられる側で互いに対向するエッジ同士を、送受信する電波の波長に対応して設定される所定長さだけ離れた2箇所でそれぞれ電気的に接続し、その2箇所の接続点の間で互いに対向するエッジ部分に、それぞれ、給電線を接続することにより構成される。このため、給電点からその両側の接続点までの長さを、送受信する電波の波長に応じて設定でき、その信号を送受信するのに適したスロットアンテナを実現できる。
【0009】
なお、このスロットアンテナの長さを規定するためにエッジ同士を接続する接続部材は、請求項2に記載のように、可撓性を有するフラットケーブルにて構成するか、或いは、請求項3に記載のように、2つの車体部間の開閉に応じて互いに摺動するよう摺動部が円弧状に形成された一対の導電性部材にて構成するとよい。
【0010】
つまり、フラットケーブルで2つの車体部のエッジ同士を接続するようにすれば、ヒンジを介して車体部間が開閉されても、エッジ同士の接続を保つことができ、しかも、フラットケーブルであれば、車体部間の開閉により簡単に切断されることはないので、自動車用スロットアンテナの信頼性を確保できる。
【0011】
また、各車体部のエッジに、車体部間の開閉に伴い摺動する円弧状の摺動部を備えた導電性部材を設けた場合には、車体部間が開閉されても、導電性部材同士の摺動により各エッジ間の接続(少なくとも容量結合)を保つことができることから、フラットケーブルを使って直接接続した場合と同様、自動車用スロットアンテナの信頼性を確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
図1は本発明が適用された実施形態の自動車2の外観を表す斜視図であり、図2は自動車2の助手席(本実施形態では左側前席)側のドア4と車両本体であるフェンダー6との接続部分(図1に示すヒンジ部8)を車両内側からみた状態を表す斜視図である。
【0013】
図1に示すように、本実施形態の自動車2において、助手席側のドア4がヒンジを介してフェンダー6に開閉自在に接続されるヒンジ部8には、スロットアンテナ10が形成されている。
【0014】
図2に示すように、このスロットアンテナ10は、ヒンジ部8(換言すればドア4の回動中心位置)で互いに対向するドア4及びフェンダー6のエッジ同士を、送受信する電波の波長λを基準とする所定の長さL(本実施形態では略2分の1の長さ:λ/2)だけ離れた2箇所で、接続部14を介してそれぞれ接続し、更に、その2箇所の接続点の中間に位置する各部4、6のエッジを給電部12として、それぞれの給電部12に給電線16を接続することにより構成されている。
【0015】
そして、ドア4及びフェンダー6の給電部12に接続された2本の給電線16の他端には、平衡/不平衡変換器18を介して、車室内に配線された同軸ケーブル20に接続されている。
【0016】
なお、このスロットアンテナ10は、例えば、UHFのテレビ放送電波を受信するのに用いられるものであり、上記2つの接続部14の間に形成されるスリット(換言すればアンテナ部分)の長さLは、UHFのテレビ放送電波の周波数470MHz〜770MHzの略中心の周波数に対応して、約27cm(λ/2)に設定されている。
【0017】
このため、本実施形態のスロットアンテナ10によれば、ドア4とフェンダー6とを接続するヒンジの位置やその間隔に影響されることなく、UHFのテレビ放送電波等、2つの接続部14の間のエッジの長さに対応した所定周波数帯の電波の受信(又は送信)を良好に行うことができる。
【0018】
なお、2つの接続部14の間にヒンジがあると、スリットの長さが短くなるので、ヒンジとは別に2つの接続部14を設ける場合には、その間にヒンジが配置されないように、各接続部14の位置を設定する必要はある。
【0019】
また、2つの接続部14のうち、一方はヒンジを利用して構成し、他方の接続部14の配置位置を、そのヒンジからの距離が電波の波長に対応した適正長さとなるように設定し、これらの中間点に給電線16を接続するようにしてもよい。
【0020】
次に、本実施形態のスロットアンテナ10を実際に構成するのに適した接続部14及び給電部12の構成について説明する。
まず、接続部14は、ドア4とフェンダー6のエッジ部分を、送受信する電波の周波数帯域で短絡に接続できればよい。
【0021】
このため、接続部14は、図3(a)に示すように、両端がこれら各部4、6に接続され、ドア4の開閉に応じて変形可能な導電性部材にて構成してもよく、或いは、図4に示すように、その導電性部材を、ドアの4の開閉により互いに摺動可能な円弧状の摺動部14aを有する一対の導電性部材にて構成してもよい。
【0022】
そして、接続部14を一つの導電材にて構成する場合には、図3(b)に示すように、可撓性を有するフラットケーブルにて構成するとよい。つまり、フラットケーブルの場合、多数の信号線を平行に並べ、非導電性の被覆材にて被覆したものであるため、耐久性に優れ、また、ドア4及びフェンダー6に全ての信号線を接続することで、信号線の断線によりアンテナ性能が低下するのを防止できる。
【0023】
なお、接続部14は可撓性を有する導電材であれば他のものでもよい。例えば、細い導電性の素線で構成されたメッシュ状のものであってもよい(金属メッシュ、カーボン繊維等)。またシート状に加工された導電性の樹脂を使用してもよい。
【0024】
また、ドア4及びフェンダー6への接続部14の取付方法は、例えば、接続部14の端部を溶接又はビス止めする方法、接続部14の先端を金属板で挟み、その金属板を溶接又はビス止めする方法、接続部14(フラットケーブル等)の先端を金属板に半田付けして、その金属板を溶接又はビス止めする方法、接続部14の端部若しくは接続部14に接続された金属板を導電性接着剤にて接着する方法等、2つの導電性部材を電気的に接続するのに従来より利用されている方法であれば何でもよい。
【0025】
一方、給電部12には、給電線16を接続する必要があることから、図5に示すように、ドア4及びフェンダー6のエッジへ上述した各種接続方法で電気的に接続可能な金属板12aに、給電線16を挿入してかしめ接続するための端子12bを一体形成したものを使用すればよい。
【0026】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の態様をとることができる。
例えば、上記実施形態では、助手席側のドア4がヒンジを介してフェンダー6に固定されるヒンジ部8に、スロットアンテナ10を設けるものとして説明したが、本発明の自動車用スロットアンテナは、ヒンジを介して連結される2つの車体部間のヒンジ部であればよく、例えば、他のドアと車両本体との間のヒンジ部に設けてもよく、或いは、図1に示すスロットアンテナ10′のように、自動車のトランクルーム(或いはエンジンルーム)を覆う開閉式の天板(ボンネット)と、車両本体とを接続するヒンジ部に設けてもよい。
【0027】
また、給電部12の位置は、接続部14の中間位置以外にしてもよい。例えば、2つの接続部14の間隔を、使用する波長(1λ)に設定し、片方の接続部14から1/4波長の位置に給電部14を設けることにより、指向性やインピーダンスを換えることができる。
【0028】
また、本実施形態の自動車用スロットアンテナは、自動車における複数のヒンジ部にそれぞれ設け、図6に示すように、その複数のスロットアンテナ10a、10b、…からの受信信号を、切替器22を介して選択し、その選択した受信信号を増幅器24で増幅して、車両に搭載されたチューナー等へ伝送すると共に、その伝送信号の一部をコントローラ26に入力して、コントローラ26がチューナー等に伝送される受信信号の信号レベル等が最もよくなるように切替器22を制御するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施形態の自動車2の外観を表す斜視図である。
【図2】図1の自動車の助手席側ヒンジ部を車両内側からみた状態を表す斜視図である。
【図3】スロットアンテナを構成する接続部の一例を表す説明図である。
【図4】スロットアンテナを構成する接続部の他の例を表す説明図である。
【図5】スロットアンテナを構成する給電部の構成例を表す説明図である。
【図6】自動車に複数のスロットアンテナを設けて出力を切り換えるのに用いられる回路例を表すブロック図である。
【符号の説明】
【0030】
2…自動車、4…ドア、6…フェンダー、8…ヒンジ部、10,10a,10b…スロットアンテナ、12…給電部、14…接続部、16…給電線、18…平衡/不平衡変換器、20…同軸ケーブル、22…切替器、24…増幅器、26…コントローラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒンジを介して接続される2つの車体部の間で、互いに対向するエッジを利用して形成される自動車用スロットアンテナであって、
前記2つの車体部において、前記ヒンジが取り付けられる側で互いに対向するエッジ同士を、送受信する電波の波長に対応して設定される所定長さだけ離れた2箇所でそれぞれ電気的に接続し、
該2箇所の接続点の間で互いに対向するエッジ部分に、それぞれ、給電線を接続してなることを特徴とする自動車用スロットアンテナ。
【請求項2】
前記エッジ同士を2箇所で接続する接続部材は、可撓性を有するフラットケーブルからなることを特徴とする請求項1に記載の自動車用スロットアンテナ。
【請求項3】
前記エッジ同士を2箇所で接続する接続部材は、各エッジにそれぞれ設けられ、前記2つの車体部間の開閉に応じて互いに摺動するよう、摺動部が円弧状に形成された導電性部材からなることを特徴とする請求項1に記載の自動車用スロットアンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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