説明

自動車用フードシール構造及び自動車用フードシール

【課題】先端縁が曲線状に形成されたフードにおいても、先端縁に取り付けたフードシールのシール性能を維持できるような自動車用フードシール構造を提供する。
【解決手段】自動車のフード先端縁22の裏面に設けられた台座21に自動車用フードシール1を取り付けて、フード先端縁22と対向する車体パネル3との見切り部Xをシールする自動車用フードシール構造において、台座21は、見切り部Xよりも車内側に位置するとともに、自動車用フードシール1は、台座21に結合部材を介して取り付けられる取付基部11と、取付基部11から見切り部X方向に膨出する中空シール部12からなり、中空シール部12の一端は取付基部11の見切り部X側の側面15から張り出し、中空シール部12の他端は取付基部11の下面17から張り出してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のフード先端縁と対向する車体パネルとの見切り部をシールする自動車用フードシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図3に示すように、自動車のエンジンルーム上部には、エンジンルームを覆うようにフード2が設けられている。このフード2は、車両前方側が開口部となるように、開閉可能に配置されている。
また、フード2の車両前方側の先端縁22は、フード2を閉めた時に、対向する車体パネル3との間に見切り部Xを形成するようになっている。
【0003】
図4は、図3のA−A拡大断面図であり、フード2の先端縁22と車体パネル3との見切り部Xの部分を拡大して示している。
図4に示すように見切り部Xには、異音防止、雪止め、大量の水の浸入防止、熱気漏れ防止等のために、フード2の先端縁22に沿ってフードシール100が配置されて、フード2と車体パネル3との間をシールするようになっている。
このフードシール100は、フード2の先端縁22の裏面に設けられた台座21に取り付けられる取付基部111と、取付基部111から見切り部Xの方向に膨出する中空シール部112から構成されている。
そして、取付基部111は固定用クリップ4によりフード2の台座21に固定されている。
【0004】
このように、フードシール100の中空シール部112は、取付基部111の側面から張り出して横方向(車外側)に延びており、フードシール100の断面形状は全体として横長となっている。
これは、フード2の台座21が、構造上見切り部Xよりも車内側に配置されていることに起因しており、フードシール100が取り付けられる部位(台座21)と、フードシール100がシールすべき部位(見切り部X)が横方向にずれているためである。
【0005】
一方、エンジンルーム上部のフードシール構造として、特許文献1には、フードシール部材に厚肉と薄肉の二つの中空シール部を設け、フードとの間を二つの中空シール部により二重シールするように構成した発明が開示されている。
【特許文献1】実開平1−113061号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、フード先端部分の形状についていえば、従来は、図3に示すフード2のように先端縁22が略直線状のものが一般的であった。
これに対して、最近の自動車においては、車両デザインの多様化からフード先端部分の形状も様々に変化しており、例えば図5に示すフード200のように、先端縁222が湾曲した形状のものも出現している。
そして、このようなフード200に対しては、湾曲した先端縁222に沿って、フードシール100を取り付けることとなる。
【0007】
しかしながら、図4に示すような従来例のフードシール100を、先端縁222が湾曲したフード200に取り付けた場合には、以下のような問題が生じる。
すなわち、図5に示す湾曲部Zなどの曲線部分において、フードシール100の中空シール部112が、曲線に追従できず取付基部111側に変形してしまう(いわゆる、「転ぶ」状態)のである。
これは、取付基部111の固定の基準となる固定用クリップ4の位置と、中空シール部112の位置が横方向にずれていることを原因としている。つまり、固定基準位置と、フードシール断面の曲げ中心となる重心位置がずれてしまい、固定基準位置の曲がり具合に、中空シール部112の曲がり具合が追従できなくなってしまうのである。
その結果、曲線部分においてフードシール100のシール性能が低下してしまうこととなる。
【0008】
これに対して、特許文献1に記載された発明によれば、二重シール構造によりシール性能を向上させることはできても、先端縁222の曲線部分において、中空シール部112が取付基部111側に変形してしまうのを防止することはできない。
【0009】
そこで本発明は上記従来の課題を解決するためのものであり、先端縁が曲線状に形成されたフードにおいても、先端縁に取り付けたフードシールのシール性能を維持できるような自動車用フードシール構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記従来の課題を解決するために、請求項1に係る発明の自動車用フードシール構造は、自動車のフード先端縁(22)の裏面に設けられた台座(21)に自動車用フードシール(1)を取り付けて、前記フード先端縁(22)と対向する車体パネル(3)との見切り部(X)をシールする自動車用フードシール構造において、前記台座(21)は、前記見切り部(X)よりも車内側に位置するとともに、前記自動車用フードシール(1)は、前記台座(21)に結合部材を介して取り付けられる取付基部(11)と、前記取付基部(11)から前記見切り部(X)方向に膨出する中空シール部(12)からなり、前記中空シール部(12)の一端は前記取付基部(11)の前記見切り部(X)側の側面(15)から張り出し、前記中空シール部(12)の他端は前記取付基部(11)の下面(17)から張り出してなることを特徴とする。
【0011】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記結合部材は、係止部(42)が形成された脚部(41)と、頭部(43)からなる固定用クリップ(4)であり、前記取付基部(11)の上面(14)及び前記台座(21)に形成された孔(13,23)に前記脚部(41)を連通させて、前記取付基部(11)を前記台座(21)に係止するとともに、前記取付基部(11)に形成された中空部(Y)に前記頭部(43)を収納させてなることを特徴とする。
【0012】
また、請求項3に係る発明の自動車用フードシールは、自動車のフード先端縁(22)と対向する車体パネル(3)との見切り部(X)をシールするため、前記フード先端縁(22)の裏面に設けられた台座(21)に取り付けられる自動車用フードシール(1)において、前記台座(21)に結合部材を介して取り付けられる取付基部(11)と、前記取付基部(11)から前記見切り部(X)方向に膨出する中空シール部(12)からなり、前記中空シール部(12)の一端は前記取付基部(11)の前記見切り部(X)側の側面(15)から張り出し、前記中空シール部(12)の他端は前記取付基部(11)の下面(17)から張り出してなることを特徴とする。
【0013】
なお、括弧内の記号は、発明を実施するための最良の形態および図面に記載された対応要素または対応事項を示す。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、フード先端縁と対向する車体パネルとの見切り部を自動車用フードシールによりシールするので、異音防止、雪止め、大量の水の浸入防止、熱気漏れ防止等が可能となる。
また、自動車用フードシールは、取付基部と中空シール部からなり、中空シール部が取付基部から見切り部方向に膨出している。従って、取付基部を取り付けるためにフード先端縁の裏面に設けられた台座が、見切り部よりも車内側に位置していても、シールすべき適切な位置に中空シール部を配置することができる。
さらに、中空シール部の一端は取付基部の見切り部側の側面から張り出し、中空シール部の他端は取付基部の下面から張り出しているので、フード先端縁が湾曲した曲線部分においても、フードシールの中空シール部が取付基部側に変形することを防止し、シール性能を維持することができる。
【0015】
また、請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の作用効果に加えて、係止部が形成された脚部と、頭部からなる固定用クリップにより、フードシールの取付基部をフードに設けられた台座に係止するので、フードーシールのフードへの取付を容易に行うことができる。特にフード先端縁が湾曲した曲線部分においては、固定用クリップの間隔を狭めるなどして調整することにより、フードシールを曲線に応じて適切に取り付けることができる。
さらに、取付基部には中空部が形成されており、固定用クリップの頭部を中空部に収納させるので、頭部が外部から見えず美観を向上させることができる。しかも、中空シール部の他端を取付基部の下面から張り出させるときに、固定用クリップの頭部が邪魔にならない。
【0016】
また、請求項3に記載の発明によれば、自動車用フードシールは、取付基部と中空シール部からなり、中空シール部が取付基部から見切り部方向に膨出している。従って、取付基部を取り付けるためにフード先端縁の裏面に設けられた台座が、見切り部よりも車内側に位置していても、シールすべき適切な位置に中空シール部を配置することができる。
さらに、中空シール部の一端は取付基部の見切り部側の側面から張り出し、中空シール部の他端は取付基部の下面から張り出しているので、フード先端縁が湾曲した曲線部分においても、フードシールの中空シール部が取付基部側に変形することを防止し、シール性能を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、図1及び図2を参照して、本発明の実施形態に係る自動車用フードシール構造について説明する。
図1及び図2はともに、本発明の実施形態に係る自動車用フードシール構造を示す断面図であり、図3のA−A拡大断面図に該当する。
図1はフード2が閉じた状態を示したものであり、図2はフード2が開いた状態を示したものである。
本実施形態に係る自動車用フードシール構造は、フード2の先端縁22と対向する車体パネル3との見切り部Xをシールするものである。
【0018】
自動車のエンジンルーム上部には、エンジンルームを覆うようにフード2が設けられている。このフード2は、車両前方側が開口部となるように、開閉可能に配置されている。
フード2の先端縁22の裏面には台座21が設けられ、フードシール1の取付基部11を取り付けるようになっている。この台座21は、フード2の先端縁22に沿って形成されているが、見切り部Xよりも車内側の部分に位置している。
その結果、フードシール1が取り付けられる部位(台座21)と、フードシール1がシールすべき部位(見切り部X)が横方向にずれた状態になっている。
【0019】
フードシール1は、台座21に取り付けられる取付基部11と、取付基部11に一体成形され、取付基部11から見切り部Xの方向に膨出する中空シール部12から構成されている。
取付基部11は、断面略矩形状であり、台座21側に位置する上面14、及び側面15,16、下面17から構成され内側に中空部Yが形成されている。
中空シール部12の一端は、取付基部11の見切り部X側の側面15から、車外側に向けて張り出している。また、中空シール部12の他端は、取付基部11の下面17から下側に向けて張り出し湾曲しながら、上記側面15から張り出した部分に接続され、中空シール部12を形成している。
【0020】
フードシール1の取付基部11は、固定用クリップ4を介してフード2の台座21に取り付けられている。
固定用クリップ4は、脚部41と頭部43からなり、脚部41の先端には係止部42が形成されている。
取付基部11の上面14には、孔13が形成されている。この孔13の大きさは、固定用クリップ4の脚部41が挿通可能で、かつ頭部43が挿通不可能な大きさになっている。
同様に台座21にも、孔13と略等しい大きさの孔23が形成されている。
【0021】
フードシール1の取付基部11を台座21に取り付けるには、固定用クリップ4を孔13,23に連通させることにより行う。
この結果、固定用クリップ4の係止部42が台座21にひっかかり、取付基部11を台座21に係止することができる。
一方、固定用クリップ4の頭部は、孔13を挿通せず、取付基部11内部に形成された中空部Yに収納されることとなる。
なお、中空シール部12の他端は、取付基部11の下面17のうち、固定用クリップ4の頭部43の延長線上に相当する位置から張り出すようになっている。もちろん、下面17であれば他の位置から張り出してもよい。ただし、中空部Yの範囲内であることが好ましい。
【0022】
上記構成の本実施形態に係る自動車用フードシール構造により、フード2の開時には図2に示すように、フードシール1の中空シール部12が膨らんだ状態となる。
一方、フード2の閉時には図1に示すように、中空シール部12がフード2の先端縁22と車体パネル3に挟まれて変形し、見切り部Xをシールすることができる。
【0023】
本実施形態に係る自動車用フードシール構造によれば、フード先端縁22と対向する車体パネル3との見切り部Xを自動車用フードシール1によりシールするので、異音防止、雪止め、大量の水の浸入防止、熱気漏れ防止等が可能となる。
また、自動車用フードシール1は、取付基部11と中空シール部12からなり、中空シール部12が取付基部11から見切り部X方向に膨出している。従って、取付基部11を取り付けるためにフード先端縁22の裏面に設けられた台座21が、見切り部Xよりも車内側に位置していても、シールすべき適切な位置に中空シール部12を配置することができる。
【0024】
さらに、中空シール部12の一端は取付基部11の見切り部X側の側面15から張り出し、中空シール部12の他端は取付基部11の下面17から張り出しているので、フード先端縁22が湾曲した曲線部分においても、フードシール1の中空シール部12が取付基部11側に変形することを防止し、シール性能を維持することができる。
これは、中空シール部12を取付基部11の下面17から張り出させることで、フードシール1断面の曲げ中心となる重心位置を固定基準位置である固定用クリップ4側に寄せることが可能となるためである。つまり、固定基準位置の曲がり具合に、中空シール部12の曲がり具合が追従しやすくなるのである。
【0025】
また、本実施形態に係る自動車用フードシール構造によれば、係止部42が形成された脚部41と、頭部43からなる固定用クリップ4により、フードシール1の取付基部11をフード2に設けられた台座21に係止するので、フードーシール1のフード2への取付を容易に行うことができる。特にフード先端縁22が湾曲した曲線部分においては、固定用クリップ4の間隔を狭めるなどして調整することにより、フードシール1を曲線に応じて適切に取り付けることができる。
さらに、取付基部11には中空部Yが形成されており、固定用クリップ4の頭部43を中空部Yに収納させるので、頭部43が外部から見えず美観を向上させることができる。
しかも、中空シール部12の他端を取付基部11の下面17から張り出させるときに、固定用クリップ4の頭部43が邪魔にならない。
【0026】
なお、本実施形態においては、取付基部11を略矩形状のものとしたが、これに限らず、例えば楕円形状のタイプのものであってもよい。すなわち中空シール部の一端が張り出す側面と、中空シール部の他端が張り出す下面は、必ずしも平面である必要はなく、曲面であっても差し支えない。
また、本実施形態においては、取付基部11に中空部Yを形成し、固定用クリップ4の頭部43を収納する構成としたが、中空部Yを設けない構成や、固定用クリップ以外の結合部材を用いた取付方法によってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態に係る自動車用フードシール構造のフード閉時における状態を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る自動車用フードシール構造のフード開時における状態を示す断面図である。
【図3】自動車の車体外観を示す斜視図である。
【図4】従来例に係る自動車用フードシール構造のフード閉時における状態を示す断面図である。
【図5】自動車のフード形状を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0028】
1 フードシール
2 フード
3 車体パネル
4 固定用クリップ
11 取付基部
12 中空シール部
13 孔
14 上面
15 側面
16 側面
17 下面
21 台座
22 先端縁
23 孔
41 脚部
42 係止部
43 頭部
100 フードシール
111 取付基部
112 中空シール部
200 フード
222 先端縁
X 見切り部
Y 中空部
Z 湾曲部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のフード先端縁の裏面に設けられた台座に自動車用フードシールを取り付けて、前記フード先端縁と対向する車体パネルとの見切り部をシールする自動車用フードシール構造において、
前記台座は、前記見切り部よりも車内側に位置するとともに、
前記自動車用フードシールは、前記台座に結合部材を介して取り付けられる取付基部と、前記取付基部から前記見切り部方向に膨出する中空シール部からなり、
前記中空シール部の一端は前記取付基部の前記見切り部側の側面から張り出し、前記中空シール部の他端は前記取付基部の下面から張り出してなることを特徴とする自動車用フードシール構造。
【請求項2】
前記結合部材は、係止部が形成された脚部と、頭部からなる固定用クリップであり、
前記取付基部の上面及び前記台座に形成された孔に前記脚部を連通させて、前記取付基部を前記台座に係止するとともに、
前記取付基部に形成された中空部に前記頭部を収納させてなることを特徴とする請求項1に記載の自動車用フードシール構造。
【請求項3】
自動車のフード先端縁と対向する車体パネルとの見切り部をシールするため、前記フード先端縁の裏面に設けられた台座に取り付けられる自動車用フードシールにおいて、
前記台座に結合部材を介して取り付けられる取付基部と、前記取付基部から前記見切り部方向に膨出する中空シール部からなり、
前記中空シール部の一端は前記取付基部の前記見切り部側の側面から張り出し、前記中空シール部の他端は前記取付基部の下面から張り出してなることを特徴とする自動車用フードシール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−213288(P2006−213288A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−30854(P2005−30854)
【出願日】平成17年2月7日(2005.2.7)
【出願人】(000196107)西川ゴム工業株式会社 (454)
【Fターム(参考)】