説明

自動車用内装材構造

【課題】蓋体における車室側表面部に蓋体側表皮材を張設すると共にたとえ内装材における開口部周辺部に内装材側表皮材を張設したとしても、従来のような剥離や段差なく開口と蓋体との間の分割稜線が明確な直線状に形成されるようにすると共に、両表皮材の擦れ合いがないようになした。
【解決手段】内装材としてのダッシュサイドトリム1に開口3を形成すると共に、開口3を蓋体4により開閉可能に構成し、蓋体4の車室側表面における外周端部に蓋体側突条部4aを形成し、蓋体側突条部4aにより囲まれた蓋体4の車室側表面内に蓋体側表皮材6を張設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のダッシュサイドトリム等の内装材に開口を形成すると共に、該開口を蓋体により開閉可能に構成し、且つ、前記内装材の車室側表面に内装材側表皮材を張設すると共に前記蓋体の車室側表面に蓋体側表皮材を張設して構成する自動車用内装材構造に関するものである。
【0002】
本発明に係る上記内装材としては、ダッシュサイドトリムの他に、ドアトリム、ピラーガーニッシュ、トランクサイドトリム、ラゲージサイドトリム、バックドアトリム、延いてはコンソールボックスの表面を表装するトリム部品等がある。
【背景技術】
【0003】
従来におけるこの種の自動車用内装材構造は、例えば、図5及び図6に示すものが知られている(類似する技術として、例えば、特許文献1乃至3参照)。
【特許文献1】実開平1−145043号公報。
【特許文献2】特公平2−3966号公報。
【特許文献3】実開平5−32046号公報。
【0004】
先ず、図5及び図6によれば、内装材としてのダッシュサイドトリムaには、ヒューズボックス等の収納凹部bを構成するために、開口cが形成されており、開口cはダッシュサイドトリムaにヒンジ結合された蓋体dにより開閉可能に構成されている。
【0005】
そして、ダッシュサイドトリムaの車室側表面部における開口cの周辺及び蓋体dを除いた状態で、表皮材eが張設されて、美装されている。
【0006】
しかしながら、最近のユーザーの多様性等の要求から、ダッシュサイドトリムaにおける周辺部及び蓋体dの表面にも、表皮材を張設することが求められている。
【0007】
このような要求に答えるべく、図7に示すものが最近使用されるようになってきている。
【0008】
図7によれば、ダッシュサイドトリムaの車室側表面部における開口cの周辺部にも、内装材側表皮材gを張設すると共に、蓋体dにおける車室側表面部に蓋体側表皮材hを張設するようにしている。
【0009】
しかしながら、内装材側表皮材gの端部は、開口cの周辺において位置すると共に、蓋体側表皮材hの端部は、蓋体dの車室側表面部における外周端部に位置して、それぞれ端末処理されているために、蓋体dを開閉動させ、収納凹部b内の収納物を取り出すような場合、乗員の手等が内装材側表皮材gや蓋体側表皮材hの端末に触れた場合等により、内装材側表皮材gや蓋体側表皮材hの端末が、ダッシュサイドトリムaや蓋体dから剥離しやすい構成になっている。
【0010】
そこで、このような剥離しやすい点に鑑み、図8に示すようなものが考えられている。
【0011】
すなわち、内装材側表皮材gの端末は、開口cの外郭部に巻き込むように端末処理されるとともに、蓋体側表皮材hの端末は蓋体dの端部に形成した折曲部iを巻込むように端末処理されて、剥離の問題を解決している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
この結果、ダッシュサイドトリムaおよび蓋体dにおける車室側表面部全体が両表皮材g、hにより表装されることになって、ユーザーの要求等を満足することになる。
【0013】
しかしながら、両表皮材g、hを、それぞれ、開口cの外郭部および蓋体dの折曲部iに巻き込まれた結果、開口部cの外郭部に存する内装材側表皮材gの端末と蓋体dの折曲部iに存する蓋体側表皮材hとが、互いに対向して重なり合うことになってしまう。
【0014】
このために、内装材側表皮材gおよび蓋体側表皮材hは、互いに軟質材料から構成しているために、蓋体dの開閉動等により、蓋体側表皮材hと内装材側表皮材gとが重なり合った部位でお互いが潰れて、蓋体側表皮材hと内装材側表皮材gの車室側表面側が段差となり、開口cと蓋体dとの間において形成される分割稜線が波を打ってしまって明確な直線状に形成されず、また、蓋体側表皮材hと内装材側表皮材gとが互いに擦れ合うことにより両表皮材g、hに毛倒れ等が起きてしまい、この部位における見栄えを劣化させてしまうことがある。
【0015】
そこで、本発明は、蓋体における車室側表面部に蓋体側表皮材を張設すると共にたとえ内装材における開口部周辺部に内装材側表皮材を張設したとしても、従来のような剥離や段差なく開口と蓋体との間の分割稜線が明確な直線状に形成されるようにすると共に、両表皮材の擦れ合いがないようになした自動車用内装材構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る自動車用内装材構造は、自動車のダッシュサイドトリム等の内装材に開口を形成すると共に、該開口を蓋体により開閉可能に構成し、且つ、前記内装材の車室側表面に内装材側表皮材を張設すると共に前記蓋体の車室側表面に蓋体側表皮材を張設して構成する場合、前記蓋体の車室側表面における外周端部に蓋体側突条部を形成し、該蓋体側突条部により囲まれた前記蓋体の車室側表面内に前記蓋体側表皮材を張設したことを特徴とする。
【0017】
かかる構成によれば、蓋体の車室側表面における外周端部に蓋体側突条部を形成し、蓋体側突条部により囲まれた蓋体の車室側表面内に蓋体側表皮材を張設するように構成したために、蓋体側表皮材と内装材側表皮材が重なり合うことなく、蓋体側表皮材と内装材側表皮材の車室側表面側とが段差にならないと共に、開口と蓋体との間において形成される分割稜線が波を打ってしまうことがなく、また、蓋体側表皮材と内装材側表皮材とが互いに擦れ合うことによる両表皮材の毛倒れ等を起すことが無く、この部位における見栄えを向上させることになる。
【0018】
また、本発明は、前記内装材に、前記開口の開口端部に内装材側突条部を形成し、該内装材側突条部の外側部分における前記内装材の車室側表面に前記内装材側表皮材を張設しても良い。
【0019】
かかる構成により、蓋体側突条部により囲まれた蓋体の車室側表面内に蓋体側表皮材を張設されると共に、開口の開口端部に形成した内装材側突条部の外側部分における内装材の車室側表面に内装材側表皮材が張設されていることにより、蓋体側突条部および内装材側突条部により、蓋体側表皮材と内装材側表皮材とが分離されることになり、蓋体と開口との間の稜線が更に明確に分割され、美感向上にさらに寄与することになる。
【発明の効果】
【0020】
上記のように構成する本発明によれば、蓋体の車室側表面における外周端部に蓋体側突条部を形成し、蓋体側突条部により囲まれた蓋体の車室側表面内に蓋体側表皮材を張設するように構成したために、蓋体側表皮材と内装材側表皮材が重なり合うことなく、蓋体側表皮材と内装材側表皮材の車室側表面側とが段差にならないと共に、開口と蓋体との間において形成される分割稜線が波を打ってしまうことがなく、また、蓋体側表皮材と内装材側表皮材とが互いに擦れ合うことによる両表皮材の毛倒れ等を起すことが無く、この部位における見栄えを向上させることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、本発明に係る実施の形態について、図1及び図2を用いて説明する。
【0022】
図1は本発明の実施の形態に係る内装材としてのダッシュサイドトリムを車室側から描画した斜視図、図2は図1におけるA−A断面図である。
【0023】
図1及び図2において、内装材としてのダッシュサイドトリム1は、自動車のダッシュパネル側部(不図示)を内装するもので、当該ダッシュパネル側部の形状にほぼ適合するように形成されており、且つ、ダッシュサイドトリム1の車外側に配置されたヒューズボックスのヒューズ等を交換するために、開口3が形成されている。
【0024】
開口3は、蓋体4により開閉可能となっている。蓋体4は、その下部に設けたフック(図示せず)を開口の下側の縁に係止させ、蓋体4の下方を回転軸として蓋体4の上部を回転させて、蓋体4の上部に設けたロック体5を開口3の上部の縁に係合させることにより閉状態となるように構成されている。
【0025】
さらに、蓋体4には、その車室側表面における外周端部全体を囲繞するように、蓋体側突条部4aが形成され、蓋体側突条部4aにより囲まれた蓋体4の車室側表面部に蓋体側表皮材設置部4bを形成し、蓋体側表皮材設置部4b内には、蓋体側表皮材6が張設設置されている。蓋体側表皮材6の端末は、蓋体側突条部4aに接しており、蓋体側突条部4aは、蓋体側表皮材6の表面と同じ高さになっている。
【0026】
また、ダッシュサイドトリム1の車室側表面には、内装材側表皮材7が張設設置されており、内装材側表皮材7における開口3周囲の端末7aは、図2に明瞭に示すように、開口3の外郭部を巻込むことによって端末処理されている。
【0027】
かかる構成により、蓋体4の車室側表面における外周端部全体を囲繞するように蓋体側突条部4aを形成し、蓋体側突条部4aにより囲まれた蓋体4の車室側表面内に蓋体側表皮材6を張設するように構成することによって、蓋体側表皮材6の端末が、蓋体側突条部4aにより覆われているため、蓋体側表皮材6の端末を乗員に触られることなく、蓋体側表皮材6の剥離が防止でき、また、蓋体側表皮材6と内装材側表皮材7が重なり合うことがないため、蓋体側表皮材6と内装材側表皮材7の潰れによる蓋体側表皮材6と内装材側表皮材7との車室側表面側の段差を防止することができると共に、開口3と蓋体4との間において形成される分割稜線が波を打ってしまうことがなく、さらに、蓋体側表皮材6と内装材側表皮材7とが互いに擦れ合うことによる両表皮材の毛倒れ等を起すことが無く、この部位における見栄えを向上させることになる。
【0028】
図3及び図4は、本発明に係る他の実施の形態を示すものである。
【0029】
図3及び図4によれば、ダッシュサイドトリム1に、開口3の端部全体を囲繞するように内装材側突条部1aを形成し、ダッシュサイドトリム1における内装材側突条部1aの外側部分に内装材側表皮材設置部1bを形成し、内装材側表皮材設置部1b内におけるダッシュサイドトリム1の車室側表面に内装材側表皮材7を張設した点、および、内装材側表皮材7の端末は、内装材側突条部1aに接しており、内装材側突条部1aは、内装材側表皮材7の表面と同じ高さになっている点において、上記実施の形態の構成と異なっており、その他の構成は同じであるので、図に同一符号を付すことによって、詳細説明を割愛する。
【0030】
かかる構成により、蓋体側突条部4aにより囲まれた蓋体4の車室側表面内に蓋体側表皮材6を張設されると共に、開口3の端部を囲繞する内装材側突条部1aの外側部分におけるダッシュサイドトリム1の車室側表面に内装材側表皮材7が張設されていることにより、蓋体側表皮材6の端末が、蓋体側突条部4aにより覆われ、内装材側表皮材7の端末が内装材側突条部1aにより覆われるため、蓋体側表皮材6の端末と、内装材側表皮材7の端末を乗員が触ることができず、蓋体側表皮材6と内装材側表皮材7の剥離を防止することができる。
【0031】
また、蓋体側表皮材6と内装材側表皮材7とが重なり合うことがないため、蓋体側表皮材6と内装材側表皮材7の潰れによる蓋体側表皮材6と内装材側表皮材7の車室側表面の段差を防止できると共に、蓋体4と開口3との間の稜線が更に明確に分割され、美感向上にさらに寄与することになる。
【0032】
上記実施の形態においては、蓋体4の外周端部全体を囲繞するように、蓋体側突条部4aが形成され、ダッシュサイドトリム1の開口3の端部全体を囲繞するように内装材側突条部1aが形成されているが、これに限定されるものではなく、蓋体側突条部4aと内装材側突条部1aとは、蓋体側表皮材6或いは内装材側表皮材7の端末を乗員が触れることができない程度の隙間を有するような断続的な突条部形状にしても良い。
【0033】
また、上記の実施の形態においては、蓋体側突条部4aが蓋体側表皮材6の表面と同じ高さになっており、内装材側突条部1aが内装材側表皮材7の表面と同じ高さになっているが、各突条部4a、1aを各表皮材6、7の表面より高くすることで、より確実に各表皮材6、7の剥離を防止するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0034】
以上説明したように、本発明は、蓋体の車室側表面における外周端部を蓋体側突条部を形成し、蓋体側突条部により囲まれた蓋体の車室側表面内に蓋体側表皮材を張設するように構成したために、蓋体側表皮材と内装材側表皮材が重なり合うことなく、蓋体側表皮材と内装材側表皮材の車室側表面側とが段差にならないと共に、開口と蓋体との間において形成される分割稜線が波を打ってしまうことがなく、また、蓋体側表皮材と内装材側表皮材とが互いに擦れ合うことによる両表皮材の毛倒れ等を起すことが無く、この部位における見栄えを向上させることになるために、自動車のダッシュサイドトリム等の内装材に開口を形成すると共に、該開口を蓋体により開閉可能に構成し、且つ、前記内装材の車室側表面に内装材側表皮材を張設すると共に前記蓋体の車室側表面に蓋体側表皮材を張設して構成する自動車用内装材構造等に好適であるといえる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施の形態に係る内装材としてのダッシュサイドトリムを車室側から描画した斜視図である。
【図2】図2は図1におけるA−A断面図である。
【図3】本発明の他の実施の形態に係る内装材としてのダッシュサイドトリムを車室側から描画した斜視図である。
【図4】図3のB−B断面図である。
【図5】従来における内装材としてのダッシュサイドトリムを描画した斜視図である。
【図6】図5のC−C断面図である。
【図7】従来技術を改良したダッシュサイドトリムの図6と同じ断面図である。
【図8】従来技術をさらに改良したダッシュサイドトリムの図6と同じ断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 ダッシュサイドトリム(内装材)
1a 内装材側突条部
1b 内装材側表皮材設置部
3 開口
4 蓋体
6 蓋体側表皮材
7 内装材側表皮材





【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のダッシュサイドトリム等の内装材に開口を形成すると共に、該開口を蓋体により開閉可能に構成し、且つ、前記内装材の車室側表面に内装材側表皮材を張設すると共に前記蓋体の車室側表面に蓋体側表皮材を張設して構成する場合、前記蓋体の車室側表面における外周端部に蓋体側突条部を形成し、該蓋体側突条部により囲まれた前記蓋体の車室側表面内に前記蓋体側表皮材を張設したことを特徴とする自動車用内装材構造。
【請求項2】
前記内装材に、前記開口の開口端部に内装材側突条部を形成し、該内装材側突条部の外側部分における前記内装材の車室側表面に前記内装材側表皮材を張設したことを特徴とする請求項1記載の自動車用内装材構造。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−184132(P2008−184132A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−21504(P2007−21504)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(000124454)河西工業株式会社 (593)
【Fターム(参考)】