説明

自動車用収納トレイ構造

【課題】自動車用収納トレイ構造において、仕切り板が確実に収納トレイ内の所定位置に嵌合保持された状態で、クリック感を出すことによって、仕切り板が常時収納トレイ内で浮いた状態で保持されないように構成した。
【解決手段】収納トレイ6内を仕切り板16によって小部屋に仕切る場合、仕切り板16の一端側部16−1側を凹溝10内に挿入するとともに、他端側部16−2側を挟合溝部12内に嵌合する。この時、仕切り板16が、他端側部16−2側が収納トレイ16内において下方となるように傾斜状態となりながら、仕切り板16の他端側部16−2側が挟合溝部12内に形成した突起13a、14aの間に嵌合され、この過程において、係合突起16dが係合部15に係合して、クリック感を生じさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラゲージフロアの下部に形成した凹状の収納部内に収納トレイを設置し、該収納トレイ内を小部屋に区画可能な仕切り板を備えて構成した自動車用収納トレイ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の自動車用収納トレイ構造としては、例えば、図10及び図11に示すものが知られている(特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−114104号公報
【特許文献2】特開2004−299628号公報
【0004】
図10及び図11によれば、従来の収納トレイ構造は、ラゲージフロアaを凹設することによって収納部を形成し、この収納部に収納トレイbを嵌め込んで構成しており、収納トレイb内を複数の小部屋に仕切るべく、仕切り板cを用いていた。
【0005】
仕切り板cは、矩形状の板材により構成されるとともに、その板厚が上端部より下端部に従って漸次薄くなる雄テーパー状に形成されている。
【0006】
そして、仕切り板cを収納トレイb内に起立設置させて、収納トレイb内を複数の小部屋に仕切るために、収納トレイbはその両長手方向側壁d、eに、互いに離間対向する突条部f、gを複数組突設しており、各突条部f、gによりそれぞれ、仕切り板嵌合保持溝hを複数形成している。
【0007】
仕切り板嵌合保持溝fは、仕切り板cの形状に適合するように、収納トレイbの開口部b−1から底壁部b−2に向かって漸減するような雌テーパー状を呈して形成されている。
【0008】
従って、仕切り板cによって収納トレイb内を小部屋に仕切る場合には、仕切り板cにおける板厚が薄く形成された下端部を、収納トレイbの仕切り板嵌合保持溝hの開口部b−1側から順次底壁部b−2側へ嵌合することによって、収納トレイb内において、仕切り板cを起立保持させて、収納トレイb内を小部屋に仕切ることができることになる。
【0009】
このように仕切り板嵌合保持溝h内に嵌合された仕切り板cは、突状及び凹状のテーパーの働きにより、容易に抜けないように保持されていることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のように構成する場合、仕切り板cは、仕切り板嵌合保持溝hに雌雄のテーパー形状が合致するように真っ直ぐに嵌合されるとは限らず、嵌合初期には、仕切り板嵌合保持溝hの凹状のテーパーにおける幅広な部分に、仕切り板cの突状のテーパーにおける幅狭な部分が嵌合されることから、仕切り板cが傾いた状態で仕切り板嵌合保持溝h内に嵌合してしまうことがあり、この場合、仕切り板cは、仕切り板嵌合保持溝hにおける収納トレイbの底壁部b−2まで確実に嵌合されず、仕切り板嵌合保持溝hの途中で止まってしまい、仕切り板嵌合保持溝hの最下端部まで嵌合されず、浮いた状態となってしまう。
【0011】
しかし、仕切り板cを嵌合する操作者にとっては、仕切り板cが仕切り板嵌合保持溝h内においてこれ以上嵌合を進めることができない状態を完全嵌合したものと誤って判断してしまい、このままの状態で自動車を走行させたような場合、収納トレイb内に収納した荷物等が自動車の走行中に仕切り板cに当接して、仕切り板cを倒してしまうおそれがあり、この結果、収納トレイb内に荷物が散乱してしまい、仕切り板cの役目を果たさないことになってしまうおそれがある。
【0012】
そこで、本発明は、かかる点に鑑み、仕切り板が確実に収納トレイ内の所定位置に嵌合保持された状態において、クリック感を出すことによって、仕切り板が常時収納トレイ内で浮いた状態で保持されないように構成した自動車用収納トレイ構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明に係る自動車用収納トレイ構造は、ラゲージフロアの下部に形成した凹状の収納部内に収納トレイを設置し、該収納トレイ内を小部屋に区画可能な仕切り板を備えて構成した自動車用収納トレイ構造であって、前記収納トレイを、上部が開口部となったボックス型に形成するとともに、前記収納トレイには、その一側部壁に離間した状態で、前記仕切り板の一端側部側を嵌合する凹溝が形成されており、且つ、前記凹溝に対向して前記仕切り板の他端側部側を挟合する挟合溝部が形成されるように、前記一側部壁側に一対の起立突片を前記凹溝部に対して離間する状態で突設するとともに、前記底部壁と前記収納トレイの前記一側部壁とが交差形成する隅角部又は前記両起立突片側に、係合部を形成し、該係合部に係合する係合突起を前記収納トレイの他端側部側に形成して、前記凹溝に前記仕切り板の一端側部側を嵌合し、且つ、前記挟合溝部に前記仕切り板の他端側部側を挟合させるとともに、前記係合部に前記係合突起を係合させることにより、前記仕切り板を前記収納トレイに起立させた状態で配置して、該収納トレイ内を区画するように構成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
かかる構成において、本発明における自動車用収納トレイ構造は、収納トレイ内を仕切り板によって小部屋に仕切る場合、仕切り板の一端側部側を凹溝内に挿入するとともに、仕切り板の他端側部側を挟合溝部に嵌合する。
【0015】
この時、仕切り板は、他端側部側が収納トレイ内において下方となるように傾斜状態となりながら、仕切り板の他端側部側が挟合溝部内に嵌合されて行き、この過程において、係合突起が係合部に係合して、クリック感を生じさせる。
【0016】
従って、このようなクリック感によって、仕切り板が凹溝及び挟合溝部内に完全に嵌合されたことを確認でき、仕切り板が凹溝或いは挟合溝部内において浮いた状態となって、自動車の走行中等に収納していた荷物が収納トレイ内において散乱するような事態を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る一実施例を採用した自動車の後部側を描画した一部破断斜視図である。
【図2】図1における仕切り板を取り外した状態の収納トレイを描画した斜視図である。
【図3】図1における仕切り板を用いて小部屋に仕切られた状態の収納トレイを描画した斜視図である。
【図4】図1における不使用時の仕切り板を保管した状態を描画した斜視図である。
【図5】同じく仕切り板の一側端部と凹溝との関係を描画した要部分解斜視図である。
【図6】は同じく仕切り板の他側端部と挟合溝部との関係を描画した要部分解斜視図である。
【図7】図3のA−A断面図である。
【図8】本発明に係る他の実施の形態による仕切り板の他側端部と挟合溝部との関係を描画した要部斜視図である。
【図9】図8のB−B断面図である。
【図10】従来の自動車用収納トレイ構造を描画した斜視図である。
【図11】図10のC−C断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図を用いて、本発明を実施するための実施例について説明する。
【0019】
図1は本発明に係る一実施例を採用した自動車の後部側を描画した一部破断斜視図、図2は図1における仕切り板を取り外した状態の収納トレイを描画した斜視図、図3は図1における仕切り板を用いて小部屋に仕切られた状態の収納トレイを描画した斜視図、図4は図1における不使用時の仕切り板を保管した状態を描画した斜視図、図5は同じく仕切り板の一側端部と凹溝との関係を描画した要部分解斜視図、図6は同じく仕切り板の他側端部と挟合溝部との関係を描画した要部分解斜視図、図7は図3のA−A断面図である。
【0020】
先ず、図1において、自動車1の後部側には、ラゲージルーム2を構成するラゲージフロア3が設けられており、ラゲージフロア3の下方には、収納部4が凹設されている。
【0021】
収納部4は、自動車の前後方向略中央部に仕切り壁4aが設けられて、2つの分割収納部4−1、4−2に分割されている。
【0022】
そして、収納部4の上部開口4bは、フロアボード5によって閉塞されるようになっており、また、分割収納部4−1、4−2は、それぞれ自動車1の後部側に側部開口部4−1a、4−2aを有して構成しており、側部開口部4−1a、4−2aが出入口となって、収納トレイ6がそれぞれ収容されるように構成している。
【0023】
収納トレイ6は、図2乃至図4に示すように、上部が開口部7となった平面視矩形状のボックス型を呈して形成されている。
【0024】
収納トレイ6の互いに対向する側部壁である両長手方向側壁6a、6bのうち、一側壁としての一方の長手方向側壁6aに離間添設しながら延在するように、底部壁6cには突条部8が這設形成されている。
【0025】
突条部8は、一端側が収納トレイ6の一対の短手方向側壁6d、6eのうち一方の短手方向側壁6dに連続するまで延在しており、他端側が底部壁6cにおける他方の短手方向側壁6eまで連続しない途中で切断しているとともに他方の長手方向側壁6bに一端が連続する連結突起9の他端が連続している。
【0026】
突条部8には、3個の凹溝10が互いに適宜の間隙をもって形成されているとともに、一方の短手方向側壁6d側に偏在した状態で、保管用凹溝部11が3個形成されている。これに関連して、収納トレイ6の一方の長手方向側壁6aにおける保管用凹溝部11に対向する位置に、やはり3個の保管用凹溝部11−1が形成されている。
【0027】
また、一方の長手方向側壁6aには、凹溝10に対向するように、3個の挟合溝部12を形成するために、それぞれ一対の起立突片13、14が離間する状態で突設されている。
【0028】
各起立突片13、14の内壁には、それぞれ図6に示すように挟合溝部12を狭窄するように、突起13a、14aが形成されている。
【0029】
更に、収納トレイ6の一方の長手方向側壁6aと底部壁6cとが交差する隅角部6fには、挟合溝部12に対向連続するように、貫通孔からなる係合部15がそれぞれ形成されており、係合部15の上側部には、突起13a、14a側に突出するように、凸部15aが形成されている。
【0030】
そして、収納トレイ6の分割収納部4−1(又は4−2)を小部屋に区画する仕切り板16は、それぞれ矩形状を呈する板状基体16aと板状基体16aの外周部を囲繞するように形成された縁取り片部16bからなる3枚組で構成している。
【0031】
仕切り板16の一端側部16−1の下端には、図5に示すように、縁取り片部16bから突出するように、凹溝10に嵌合する突条部16cが形成されている。
【0032】
仕切り板16の他端側部16−2の下端部における縁取り片部16bの横方向壁部16b−1における縦方向壁部16b−2に交差する隅角部は、図6に示すように、所定幅に渡って切り欠かれており、板状基体16aが突起13a、14a間に直接嵌合できるように構成している。
【0033】
また、仕切り板16の他端側部16−2における縁取り片部16bの縦方向壁部16b−2には、切欠き凹部16b−2aを形成することによって、先端部に係合部15に係合する係合突起16dが形成されている。
【0034】
上記のように構成する場合、収納トレイ6内を仕切り板16によって小部屋に仕切る場合、仕切り板16の一端側部16−1側を凹溝10内に挿入するとともに、仕切り板16の他端側部16−2側を挟合溝部12に嵌合する。
【0035】
この時、仕切り板16は、他端側部16−2側が収納トレイ6内において下方となるように傾斜状態となりながら、仕切り板16の他端側部16−2側が挟合溝部12内に嵌合されて行き、この過程において、仕切り板16の縁取り片部16bが切り欠かれた部位における板状基体16aが、突起13a、14aの間に嵌合するとともに、係合突起16dが凸部15aを押し退け収納トレイ6の一方の長手方向側壁6aを弾性変形させながら、係合部15に係合することになり(図7参照)、この係合突起16dが係合部15に係合する際に、クリック感が生じることになる。
【0036】
従って、このようなクリック感によって、仕切り板16が凹溝10及び挟合溝部12内に完全に嵌合されたことを確認でき、仕切り板16が凹溝10或いは挟合溝部12内において浮いた状態となって自動車の走行中等に収納していた荷物が収納トレイ6内において散乱するような事態を防止することができる。
【0037】
そして、収納トレイ6内を仕切る必要がない場合には、図4に示すように、仕切り板16は、突条部8側の保管用凹溝部11と一方の長手方向側壁6a側の保管用凹溝部11−1との間に嵌合され、3枚まとめるような状態で保管することができる。
【0038】
図8及び図9は本発明に係る他の実施の形態を示すものである。
【0039】
図8及び図9によれば、上記実施の形態において収納トレイ6の一方の長手方向側壁6a側に形成した係合部15が、突起13a、14aの先端に一方の長手方向側壁6a側に突出する凸部15a、15aを形成することによって構成しており、これに関連して、仕切り板16に設けた係合突起16dが挟合溝部12側に突出するように形成され、更に、凸部15a、15aよりも上部側における一方の長手方向側壁6aに挟合溝部12側に突出する突起部15bが形成されている点、相違する。
【0040】
かかる構成により、係合突起16dが係合部15に係合する際にクリック感が生じる点においては、上記実施の形態と同じであるが、係合突起16dの係合部15への係合関係が、突起部15bが仕切り板16の縁取り片部16bを押圧することにより保持している点異なっている。
【0041】
なお、上記両実施の形態においては、仕切り板16の他端側部16−2を嵌合する凹溝10は、収納トレイ6の底部壁6cに設けた突条部8に形成したが、これに限定されるものではなく、例えば、収納トレイ6の他方の長手方向側壁6b側に配置してもよい、この場合、仕切り板16は、その長さ寸法が長くなり、収納トレイ6の短手方向全幅に略延在することになる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
以上説明したように、本発明は、仕切り板を収納トレイに起立設置する際に、係合突起が係合部に係合されることによってクリック感が発生し、このクリック感によって仕切り板を凹溝及び挟合溝部内に完全に嵌合されたことを確認でき、自動車の走行後に仕切り板が倒れて、収納していた荷物が収納トレイ内において散乱するような事態を防止することができるために、ラゲージフロアの下部に形成した凹状の収納部内に収納トレイを設置し、該収納トレイ内を小部屋に区画可能な仕切り板を備えて構成した自動車用収納トレイ構造等に好適である。
【符号の説明】
【0043】
3 ラゲージフロア
4 収納部
6 収納トレイ
6a 一方の長手方向側壁(一側壁部)
6c 底部壁
6f 隅角部
8 突条部
10 凹溝
12 挟合溝部
13、14 起立突片
15 係合部
16 仕切り板
16−1 一端側部
16−2 他端側部
16d 係合突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラゲージフロアの下部に形成した凹状の収納部内に収納トレイを設置し、該収納トレイ内を小部屋に区画可能な仕切り板を備えて構成した自動車用収納トレイ構造であって、
前記収納トレイを、上部が開口部となったボックス型に形成するとともに、前記収納トレイには、その一側部壁に離間した状態で、前記仕切り板の一端側部側を嵌合する凹溝が形成されており、
且つ、前記凹溝に対向して前記仕切り板の他端側部側を挟合する挟合溝部が形成されるように、前記一側部壁側に一対の起立突片を前記凹溝部に対して離間する状態で突設するとともに、前記底部壁と前記収納トレイの前記一側部壁とが交差形成する隅角部又は前記両起立突片側に、係合部を形成し、該係合部に係合する係合突起を前記収納トレイの他端側部側に形成して、
前記凹溝に前記仕切り板の一端側部側を嵌合し、且つ、前記挟合溝部に前記仕切り板の他端側部側を挟合させるとともに、前記係合部に前記係合突起を係合させることにより、前記仕切り板を前記収納トレイに起立させた状態で配置して、該収納トレイ内を区画するように構成したことを特徴とする自動車用収納トレイ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−42317(P2011−42317A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−193232(P2009−193232)
【出願日】平成21年8月24日(2009.8.24)
【出願人】(000124454)河西工業株式会社 (593)
【Fターム(参考)】