説明

自動車用導風板及びシール構造

【課題】自動車用部品との間に形成される隙間に対する安定したシール性が十分に発揮され得ると共に、自動車部品との衝突が回避され得る構造が、容易に且つ低コストに実現可能な導風板を提供する。
【解決手段】樹脂製の導風板本体12の端縁部18,20に対して、少なくとも基端部32,38が可撓性を備えた薄肉のシール部26,28を、一体成形により突設した。また、該シール部26,28が、該導風板本体12の案内面13に対して90度を超え且つ180度未満の角度なして、該導風板本体12の端縁部18,20から延び出すように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用導風板及びシール構造に係り、特に、自動車の前部に配置されて、自動車の走行時に生ずる気流をラジエータに導く導風板の改良された構造と、そのような導風板と、その周囲に位置する自動車用部品との間に形成される隙間をシールするための新規な構造とに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車において、互いに異なる別個の自動車用部品同士を近接して組み付ける際には、それらの自動車用部品同士が、自動車の走行中の入力振動等により接触して、異音を発生したり、或いは各自動車用部品が損傷したり、変形したりするのを防止するために、互いに近接する自動車用部品同士の間に、所定の間隙、所謂設計隙が形成される。
【0003】
例えば、自動車の前部には、走行時に生ずる気流をラジエータに導く案内面を備えた導風板が、ラジエータの側部を覆うように配置されるシュラウドと、ラジエータの前方に位置するバンパとの間に、案内面同士を、車幅方向に対向配置した状態で、又はそれに加えて、上下方向にも対向配置した状態で、前後方向に延びるように設置されている。そして、そのような導風板の周囲に位置するシュラウドやラジエータ、ラジエータサポート、バンパ、バンパリーンホースメント、ロアアブソーバ、アッパーアブソーバ、ハーネス、或いはエアコンホース等の各種のホース、更には1個の導風板に隣り合って位置する別の導風板等の様々な自動車用部品と導風板との間には、上記の如き設計隙としての隙間が形成されている。
【0004】
しかしながら、導風板と、その周囲に位置する自動車用部品との間に隙間が形成されていると、導風板の案内面にて導かれた風が、かかる隙間を通じて外部に逃げてしまい、その分だけ、ラジエータの冷却効率が低下してしまう。また、そのような隙間を通じて、エンジンの熱気がラジエータ側に送り込まれることがあり、そうした場合にも、ラジエータの冷却効率の低下が惹起される恐れがある。更には、導風板と自動車用部品との間の隙間を通じての風抜けによって、空力性能が低下するといった問題も生ずる。
【0005】
そこで、従来では、スポンジ等の各種のクッション材が、導風板と、その周囲に位置する自動車用部品との間の隙間内に、かかる隙間を埋めるように取り付けられ、それによって、導風板と自動車用部品との間がシールされるようになっていた。ところが、そのようなクッション材は、通常、隙間を隔てて互いに対向位置する導風板と自動車用部品のそれぞれの対向部位に対して、両面テープ等により接着、固定されている。そのため、例えば、隙間が比較的に複雑な形状とされている場合等においては、導風板と自動車用部品の各対向部位に対するクッション材の接着力にバラツキが生じて、安定したシール性を確保することが困難となる可能性があった。しかも、自動車の走行時の入力振動等により、導風板と自動車用部品が、それぞれ、互いに離間する方向に相対変位したときに、クッション材が、導風板と自動車用部品のうちの何れか一方から剥がれてしまう恐れさえもあった。加えて、クッション材の接着工程が面倒であるといった問題も存していた。
【0006】
また、従来においては、導風板の本体の外周部に、ゴム製やエラストマ製のシール部材を二色成形により一体形成し、導風板の自動車への設置状態下で、導風板に一体形成されたシール部材を、導風板の周囲に位置する自動車用部品に接触、配置することによって、そのような自動車用部品と導風板との間の隙間からの風抜けを防止する対策も採用されている。しかしながら、そこで用いられる導風板は、一般に、導風板本体が樹脂材料にて形成されている。そのため、ゴム製やエラストマ製のシール部材が一体形成された導風板は、ゴム材料又はエラストマ材料と樹脂材料の互いに異なる2種類の材料を用いて形成されることとなる。それ故、かかる導風板にあっては、材料費が嵩んでコスト高となるといった欠点を有していた。その上、使用済みとなった後に再利用するに際して、導風板本体とシール部材を分離しなければならず、リサイクルが面倒であるといった問題をも内在していたのである。
【0007】
かかる状況下、例えば、特開平8−295122号公報(特許文献1)には、車両用空調装置に適用される樹脂製の通風ダクトとして、弾性変形乃至は撓み変形可能な薄肉小片状のシール部をダクト本体に一体成形してなる構造を有するものが、開示されている。この通風ダクトでは、ダクト本体に設けられたシール部を撓み変形させた状態で、通風ダクトに連結(接続)される相手部品に接触させることにより、互いに連結される通風ダクトと相手部品との間の隙間のシールが実現されるようになっている。
【0008】
このような通風ダクトにおけるシール部の形成構造を自動車用導風板に採用することが、考えられる。即ち、樹脂製の導風板本体に、可撓性を有する薄肉小片状のシール部を一体成形し、かかるシール部を撓み変形させた状態で、導風板の周囲に位置する自動車用部品に接触させることにより、それら導風板と自動車用部品との間の隙間をシールするように為すのである。そうすれば、導風板と自動車用部品との間の隙間を埋めるためのクッション材を導風板に接着する場合や、導風板本体にゴム製やエラストマ製のシール部材を二色成形により一体形成する場合等において生ずる、前述した数々の問題を一挙に解消することが可能となる。
【0009】
ところが、従来のシール部付きの通風ダクトでは、シール部の基端部が、ダクト本体の端縁部から、ダクト本体内での空気の流通方向となるダクト本体の軸方向に真っ直ぐに延び出しているか、或いはダクト本体の内側又は外側に向かって、軸直角方向に真っ直ぐに延び出している。そのため、そのようなシール部付きの通風ダクトの構造を、そのまま自動車用導風板に採用した場合には、以下の如き問題が新たに生ずることが、本発明者の研究によって明らかとなったのである。
【0010】
すなわち、シール部を、導風板本体の端縁部から、自動車の走行時に生ずる気流の流通方向となる、導風板本体の案内面の延出方向に真っ直ぐに延び出させた構造を採用した場合には、シール部を撓み変形させたときに、シール部の基端部に対して、撓み方向への荷重と共に、基端部を縮小させる方向への圧縮荷重が掛かる。そのため、シール部と接触する自動車部品には、シール部から、それの撓み変形状態からの復元力に基づく大きな反力が加えられる。従来の通風ダクトでは、シール部が一体成形されるダクト本体と相手部品とが互いに連結されているため、相手部品に対するシール部からの反力が大きくとも、何等の問題も生じない。しかしながら、自動車部品との間で相対変位が生ずる導風板では、自動車部品に対するシール部からの反力が大きいと、例えば、自動車への振動入力等により、導風板本体の自動車部品に対する相対変位が繰り返し惹起されることによって、自動車部品のシール部との接触部分や、シール部の自動車部品との接触部分が、摩耗したり、或いは削れたりする恐れがある。そして、そうなった場合には、シール部と自動車部品との間のシール性が低下する事態が生ずる可能性がある。
【0011】
また、シール部を、導風板本体の端縁部から、導風板本体の案内面側に、案内面の延出方向と直角な方向に延び出せた構造を採用した場合には、シール部を自動車部品と接触させた状態で撓み変形させたときに、シール部と案内面とのなす角が鋭角となる。そうなると、案内面に沿って導かれた気流のスムーズな流動がシール部によって阻止されて、気流の流動抵抗が増大し、その結果、自動車の空力性能に悪影響を及ぼす恐れが生ずる。
【0012】
さらに、シール部を、導風板本体の端縁部から、導風板本体の案内面側とは反対側に、案内面の延出方向と直角な方向に延び出せた構造を採用した場合には、導風板の周辺部に位置する自動車部品が、例えば、ファンシュラウド等、ラジエータを外側から取り囲んで配置されるものであると、シール部を自動車部品と接触させた状態で撓み変形させたときに、導風板本体が、自動車部品の内側に配置されるようになる。そうすると、例えば、衝突事故の発生時等に、導風板本体が車両後方側に大きく変位したときに、ラジエータに対して導風板本体が接触して、ラジエータを損傷させる事態が惹起される可能性があるのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平8−295122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ここにおいて、本発明は、上述せる如き事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、自動車の走行時に生ずる気流をラジエータに対してよりスムーズに導きつつ、周囲に配置される自動車用部品との間の隙間を通じての風抜けを防止可能な安定したシール性が、容易に且つ低コストに実現され得、しかも、自動車の前後方向に大きく変位したときにも、周囲に配置される自動車部品やラジエータとの衝突が効果的に回避され得るように改良された自動車用導風板を提供することにある。また、本発明にあっては、導風板と、その周囲に位置する自動車用部品との間の安定したシール性が極めて有利に確保され得るシール構造を提供することをも、その解決課題とするところである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記した課題、又は本明細書全体の記載や図面から把握される課題を解決するために、以下に列挙する各種の態様において、好適に実施され得るものである。また、以下に記載の各態様は、任意の組み合わせにおいても、採用可能である。なお、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに何等限定されることなく、明細書全体の記載並びに図面に開示の発明思想に基づいて、認識され得るものであることが、理解されるべきである。
【0016】
<1> 自動車の前部に、前後方向に延びるように設置されて、自動車の走行時に生ずる気流をラジエータに導く導風板であって、(a)前記気流を導く案内面を有し、自動車の前部において、該前部に配置された自動車部品と非連結の状態で、該案内面が自動車の前後方向に延びるように設置される、樹脂製の導風板本体と、(b)該導風板本体の端縁部に対して一体成形により突設された、該導風板本体よりも薄肉の突出片からなると共に、少なくとも基端部が可撓性を有し、且つ該基端部が、該導風板本体の前記案内面に対して90度を超え且つ180度未満の角度をなして、該導風板本体の端縁部から延び出しているシール部とを有していることを特徴とする自動車用導風板。
【0017】
<2> 前記シール部が、平板形状を有している上記態様<1>に記載の自動車用導風板。
【0018】
<3> 前記導風板本体の端縁部に対して一体成形により突設された、該導風板本体よりも薄肉の突出片からなると共に、少なくとも基端部が可撓性を有し、且つ該基端部が、該導風板本体の前記案内面に対して180度を超え且つ270度未満の角度をなして、該導風板本体の端縁部から延び出しているシール部を、更に有している上記態様<1>又<2>に記載の自動車用導風板。
【0019】
<4> 前記導風板本体と前記シール部とを形成する樹脂材料として、ポリプロピレンとゴムとのブレンド材が用いられている上記態様<1>乃至<3>のうちの何れか一つに記載の自動車用導風板。なお、ここで言うゴムには、熱可塑性エラストマも含まれる。
【0020】
<5> 前記導風板本体と前記シール部とを形成する樹脂材料の曲げ弾性率が、250〜1200MPaの範囲内の値とされている上記態様<1>乃至<4>のうちの何れか一つに記載の自動車用導風板。
【0021】
<6> 前記導風板本体の厚さが1.2〜2.5mmの範囲内の値とされ、且つ前記シール部の厚さが0.3〜0.8mmの範囲内の値とされている上記態様<1>乃至<5>のうちの何れか一つに記載の自動車用導風板。
【0022】
<7> 自動車のラジエータの側部を覆うように配置されるシュラウドと、該シュラウドの前方に位置するバンパとの間に、自動車の前後方向に延びるように設置されて、自動車の走行時に生ずる気流を該ラジエータに導く自動車用導風板が、(a)前記気流を導く案内面を有し、前記シュラウドと前記バンパとの間において、それらシュラウド及びバンパと非連結の状態で、該案内面が自動車の前後方向に延びるように設置される、樹脂製の導風板本体と、(b)該導風板本体の端縁部に対して一体成形により突設された、該導風板本体よりも薄肉の突出片からなると共に、少なくとも基端部が可撓性を有し、且つ該基端部が、該導風板本体の前記案内面に対して90度を超え且つ180度未満の角度をなして、該導風板本体の端縁部から延び出しているシール部とを有して構成されていることを特徴とする自動車用導風板。
【0023】
<8> 前記導風板本体の端縁部に対して一体成形により突設された、該導風板本体よりも薄肉の突出片からなると共に、少なくとも基端部が可撓性を有し、且つ該基端部が、該導風板本体の前記案内面に対して180度を超え且つ270度未満の角度をなして、該導風板本体の端縁部から延び出しているシール部を、更に有している上記態様<7>に記載の自動車用導風板。
【0024】
<9> 自動車の前部に前後方向に延びるように設置された、自動車の走行時に生ずる気流をラジエータに導く導風板と、該導風板の周囲に配置された自動車用部品との間に形成される隙間を通じての風抜けを防止するためのシール構造であって、前記導風板として、上記態様<1>乃至<6>のうちの何れか一つに記載の導風板を用いて、該導風板の前記導風板本体を、前記自動車部品と非連結で且つ前記案内面が自動車の前後方向に延びるように、自動車の前部に設置すると共に、前記シール部の前記基端部を撓み変形させた状態で、該シール部を該自動車部品に接触させて配置することにより、該導風板本体と該自動車部品との間に形成される前記隙間を該シール部にて閉塞して、該隙間を通じての風抜けを防止するようにしたことを特徴とするシール構造。
【0025】
<10> 前記自動車部品と前記導風板本体とが互いの接近方向に相対変位したときに、前記シール部の更なる撓み変形が許容される状態において、該シール部が、該自動車部品に対して接触配置されるようになっている上記態様<9>に記載のシール構造。
【0026】
<11> 前記シール部の前記基端部と該案内面とのなす角が90度を超え且つ180度未満の角度である場合には、かかるなす角が小さくなるように該基端部を撓み変形させた状態で、該シール部が該自動車部品に接触して配置され、該シール部の基端部と該案内面とのなす角が180度を超え且つ270度未満の角度である場合には、かかるなす角が大きくなるように該基端部を撓み変形させた状態で、該シール部が該自動車部品に接触して配置されている上記態様<9>又は<10>に記載のシール構造。
【0027】
<12> 自動車のラジエータの側部を覆うように配置されるシュラウドと、該シュラウドの前方に位置するバンパとの間に、自動車の前後方向に延びるように設置されて、自動車の走行時に生ずる気流を該ラジエータに導く自動車用導風板と、該シュラウド及び該バンパとの間に形成される隙間を通じての風抜けを防止するためのシール構造が、前記自動車用導風板として、(a)前記気流を導く案内面を有し、前記シュラウドと前記バンパとの間において、それらシュラウド及びバンパと非連結の状態で、該案内面が自動車の前後方向に延びるように設置される、樹脂製の導風板本体と、(b)該導風板本体の端縁部に対して一体成形により突設された、該導風板本体よりも薄肉の突出片からなると共に、少なくとも基端部が可撓性を有し、且つ該基端部が、該導風板本体の前記案内面に対して90度を超え且つ180度未満の角度をなして、該導風板本体の端縁部から延び出しているシール部とを有するものを用いて、該導風板の該導風板本体を、前記シュラウドと前記バンパとの間において、それらシュラウド及びバンパと非連結の状態で、前記案内面が自動車の前後方向に延びるように設置すると共に、前記シール部の前記基端部を撓み変形させた状態で、該シール部を該自動車部品に接触させて配置することにより、該シュラウド及び該バンパと該導風板本体との間に形成される前記隙間を該シール部にて閉塞して、該隙間を通じての風抜けを防止するようにしたことを特徴とするシール構造。
【0028】
<13> 前記自動車用導風板として、前記導風板本体の端縁部に対して一体成形により突設された、該導風板本体よりも薄肉の突出片からなると共に、少なくとも基端部が可撓性を有し、且つ該基端部が、該導風板本体の前記案内面に対して180度を超え且つ270度未満の角度をなして、該導風板本体の端縁部から延び出しているシール部を、更に有するものを用いて、かかるシール部の基端部を撓み変形させた状態で、該シール部が該自動車部品に接触して配置されている上記態様<12>に記載のシール構造。
【0029】
<14> 前記シール部の前記基端部と該案内面とのなす角が90度を超え且つ180度未満の角度である場合には、かかるなす角が小さくなるように該基端部を撓み変形させた状態で、該シール部が該自動車部品に接触して配置され、該シール部の基端部と該案内面とのなす角が180度を超え且つ270度未満の角度である場合には、かかるなす角が大きくなるように該基端部を撓み変形させた状態で、該シール部が該自動車部品に接触して配置されている上記態様<12>又は<13>に記載のシール構造。
【発明の効果】
【0030】
本発明に従う自動車用導風板にあっては、自動車の走行時に生ずる気流を、ラジエータに対してよりスムーズに導くことができると共に、周囲に配置される自動車用部品との間の隙間を通じての風抜けを防止可能な安定したシール性を、容易に且つ低コストに実現することが可能となる。しかも、自動車の前後方向に大きく変位したときにも、導風板本体が、その周囲に配置される自動車部品やラジエータとの接触することが有利に回避され、以て、そのような自動車部品やラジエータの導風板本体との接触による損傷を効果的に防止することができる。
【0031】
そして、本発明に従うシール構造によれば、本発明に従う自動車用導風板と実質的に同一の作用・効果が、極めて有効に享受され得ることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に従う構造を有する導風板の一実施形態を示す正面説明図である。
【図2】図1のA−A断面における部分拡大説明図である。
【図3】図1に示された導風板をシュラウド及びバンパとの間に設置して、それら導風板とシュラウド及びバンパとの間に形成される隙間をシールした状態を示す縦断面説明図である。
【図4】図2のB−B断面説明図である。
【図5】本発明に従う構造を有する導風板の別の実施形態を示す、図2に対応する図である。
【図6】図5に示された導風板をシュラウド及びバンパとの間に設置した状態を示す、図4に対応する図であるのA−A断面における部分拡大説明図である。
【図7】本発明に従う構造を有する導風板と従来構造を有する導風板とにおいて、シール片に接触して、導風板本体に接近移動することにより、シール片を圧縮して、撓み変形させる圧縮治具の導風板本体への接近移動量と、かか圧縮治具の導風板本体への接近によって撓み変形するシール片で生ずる反力との関係を示すグラフである。
【図8】本発明に従う構造を有する導風板の更に別の実施形態を示す、図2に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0034】
先ず、図1には、本発明に従う自動車用導風板の一実施形態として、自動車のバンパカバーとシュラウドとの間に設置される導風板が、その正面形態において示されており、また、図2には、かかる導風板が、その断面形態において示されている。それら図1及び図2から明らかなように、本実施形態の導風板10は、樹脂製の導風板本体12を有している。なお、以下からは、導風板10の自動車への設置状態(図3及び図4参照)に基づいて、図1の上下方向を、導風板10の上下方向と言い、また、図1の左右方向を、導風板10の前後方向と言うこととする。
【0035】
より具体的には、導風板本体12は、全体として、略長手矩形の平板形状を呈している。そして、一方の板面が、平坦な案内面13とされている。この案内面13は、導風板10がバンパカバーとシュラウドとの間において前後方向に延びるように立設された状態下で、自動車内に取り込まれた気流をバンパカバー側からシュラウド側に導くようになっている。
【0036】
また、導風板本体12は、上下方向に真っ直ぐに延びる第一長辺部14a及び第二長辺部14bと、それら第一及び第二長辺部14a,14bの上端部同士を連結するように延びる第一短辺部16aと、第一及び第二長辺部14a,14bの下端部同士を連結するように延びる第二短辺部16bとを有している。そして、第一長辺部14aを含む導風板本体12の端縁部が、後述するシュラウドの縦壁部の前端面の形状に対応した形状、つまり、上下方向に真っ直ぐに延びる形状を呈する後側端縁部18とされている。また、第二長辺部14bを含む導風板本体12の端縁部が、後述するバンパカバーの内面形状に対応した形状、つまり、上側の一部が湾曲しつつ上下方向に延び、且つそれ以外の部分が上下方向に真っ直ぐに延びる形状を呈する前側端縁部20とされている。この前側端縁部20の長さ方向の略中央部には、矩形の切欠部22が設けられている。また、導風板本体12の厚さ方向一方の面における切欠部22の周辺部には、平板状を呈する二つの取付突起24,24が、一体的に突設されている。
【0037】
そして、導風板本体12の後側端縁部18には、かかる後側端縁部18から後方に突出する突出片からなる後側シール部26が、一体的に設けられている。また、前側端縁部20の切欠部22を間に挟んだ上下両側の部分には、それら上下両側部分から前方に突出する突出片からなる前側シール部28が、それぞれ一体的に設けられている。そのような後側シール部26と前側シール部28,28は、何れも、導風板本体12よりも薄い厚さと一定の狭い幅とを備えている。そして、後側端縁部18(第一長辺部14a)や前側端縁部20(第二長辺部14b)に沿って、その全長に亘って連続して延びる細長い薄肉平板形状を呈している。
【0038】
すなわち、導風板10は、導風板本体12と後側及び前側シール部26,28,28とが同一の樹脂材料を用いて一体成形された一体成形品(例えば、射出成形品)にて構成されている。そして、ここでは、かかる導風板10を形成する樹脂材料として、ポリプロピレンとゴムのブレンド材が、用いられている。このポリプロピレンとゴムのブレンド材は、公知の如く、十分な厚さとされることにより、十分な曲げ剛性を発揮する一方、薄肉とされることにより、適度な可撓性を発揮する特性を備えている。
【0039】
従って、ポリプロピレンとゴム材料のブレンド材からなる、本実施形態の導風板10にあっては、一体成形品でありながら、導風板本体12が厚肉で広幅の平板形状を有していることによって、導風板本体12の曲げ剛性が大きくされている一方、後側及び前側シール部26,28が薄肉で狭幅の平板形状を呈していることによって、それら後側及び前側シール部26,28の全体に対して、適度な可撓性が付与されている。
【0040】
なお、導風板10の形成材料には、ポリプロピレンとゴム材料のブレンド材以外の各種の公知の樹脂材料が適宜に用いられ得る。例えば、ポリプロピレンとポリエチレン(低密度ポリエチレン)のブレンド材(ポリマーアロイ)や、ポリエチレン(低密度ポリエチレン)とゴムのブレンド材、或いはポリプロピレン単独の材料やポリエチレン単独の材料等が、導風板10の形成材料として、適宜に使用可能である。ポリプロピレンやポリエチレンとブレンドされるゴムの種類は、特に限定されるものではなく、従来からポリプロピレンやポリエチレンに対するブレンドゴムとして用いられる公知のものが、何れも使用できる。また、そのようなゴムには、公知の熱可塑性エラストマが含まれる。
【0041】
また、そのような各種の材料の中でも、曲げ弾性率が250〜1200MPa程度の範囲内の値とされたものが、導風板10の形成材料として好適に用いられる。何故なら、導風板10の形成材料の曲げ弾性率が250MPa未満である場合には、導風板本体12を厚肉化しても十分な曲げ剛性が得られない恐れがあるからであり、また、かかる形成材料の曲げ弾性率が1200MPaを超える場合には、薄肉の後側及び前側シール部26,28における可撓性が不十分となる可能性があるからである。
【0042】
導風板本体12と後側及び前側シール部26,28のそれぞれの厚さも、何等限定されるものではないものの、導風板本体12の厚さは、好ましくは1.2〜2.5mm程度とされる。何故なら、導風板本体12の厚さが1.2mmを下回る場合には、導風板本体12の曲げ剛性が不十分となり、そのために、バンパカバーとシュラウドとの間に設置されたときに、バンパカバー側からシュラウド側に気流をスムーズに導くことが困難となる恐れがあるからである。また、導風板本体12の厚さが2.5mmを上回る場合には、導風板本体12ひいては導風板10の全体重量が増大するといった問題が生ずる可能性があるからである。
【0043】
後側及び前側シール部26,28の厚さは、望ましくは0.3〜0.8mm程度とされる。何故なら、後側及び前側シール部26,28のそれぞれの厚さが0.3mmを下回る場合には、各シール部26,28の強度が極端に小さくなってしまう恐れがあるからであり、また、後側及び前側シール部26,28のそれぞれの厚さが0.8mmを上回る場合には、各シール部26,28において十分な可撓性が得られなくなる可能性があるからである。
【0044】
そして、図2から明らかなように、後側シール部26は、導風板本体12の後側端縁部18側に位置する後側端面30の幅方向(図2中、上下方向)の中央より案内面13側(図2中、下側)に偏倚した部分から、後方に向かって、後側端面30の幅方向の案内面13側に傾斜して延び出している。換言すれば、後側シール部26の基端部32(後側シール部26の幅方向両端部のうちの導風板本体12側の部分)と案内面13とのなす角:α1 の大きさが90°を超え且つ180°未満の範囲内の値となるように、後側シール部26が、後側端縁部18(後側端面30)から後方に突出しているのである。
【0045】
また、そのような後側シール部26においては、二つの板面(厚さ方向両側の面)のうち、案内面13と連続して、案内面13となす角:α1 を形成する一方の板面が、平坦な後側ガイド面34とされている。即ち、後側ガイド面34は、案内面13の後端から、後方に向かって、後側端面30の幅方向の案内面13側に傾斜して延び出している。
【0046】
一方、前側シール部28は、導風板本体12の前側端縁部20側に位置する前側端面36の幅方向(図2中、上下方向)の中央より案内面13側(図2中、下側)に偏倚した部分から、前方に向かって、前側端面36の幅方向の案内面13側に傾斜して延び出している。換言すれば、前側シール部28の基端部38(前側シール部28の幅方向両端部のうちの導風板本体12側の部分)と案内面13とのなす角:β1 の大きさが90°を超え且つ180°未満の範囲内の値となるように、前側シール部28が、前側端面36から前方に突出しているのである。
【0047】
また、そのような前側シール部28においては、二つの板面(厚さ方向両側の面)のうち、案内面13と連続して、案内面13となす角:β1 を形成する一方の板面が、平坦な前側ガイド面40とされている。そして、前側ガイド面40は、案内面13の前端から、前方に向かって、前側端面36の幅方向の案内面13側に傾斜して延び出している。
【0048】
かくして、本実施形態の導風板10においては、後側シール部26の先端側部分が、前方側(図2に矢印:Xで示される方向)に向かって押圧されたときに、後側シール部26に対して、その基端部32における後側端面30との接続部分を回転中心とした回転モーメント、若しくは基端部32を屈曲部とする曲げモーメントが加えられる。それにより、図2に二点鎖線で示されるように、後側シール部26の基端部32が撓み変形して、かかる基端部32と案内面13とのなす角:α1 の大きさが小さくなるように、後側シール部26の全体が曲げ変形させられるようになっている。
【0049】
一方、前側シール部28の先端側部分が、後方側(図2に矢印:Yで示される方向)に向かって押圧されたときには、前側シール部28に対して、その基端部38における前側端面36との接続部分を回転中心とした回転モーメント、若しくは基端部38を屈曲部とする曲げモーメントが加えられる。それにより、図2に二点鎖線で示されるように、前側シール部28の基端部38が撓み変形して、かかる基端部38と案内面13とのなす角:β1 の大きさが小さくなるように、前側シール部26の全体が曲げ変形させられるようになっている。
【0050】
なお、後側シール部(26)や前側シール部(28)が、後側端面(30)や前側端面(36)に対して、それら後側端面(30)や前側端面(36)から案内面(13)と平行に延びるように突設された従来の導風板では、後側シール部(26)の先端側部分が後方側に向かって押圧されたときや、前側シール部(28)の先端側部分が前方側に向かって押圧されたときには、後側シール部(26)の基端部(32)と前側シール部(28)の基端部(38)とに対して、圧縮荷重が加えられつつ、後側シール部(26)の全体と前側シール部(28)の全体とが撓み変形させられるようになる。
【0051】
これに対して、本実施形態の導風板10では、上記のように、後側シール部26と前側シール部28の各先端側部分が前方側や後方側に押圧されたときに、各シール部26,28に対して回転モーメントや曲げモーメントが加えられて、後側シール部26の全体と前側シール部28の全体とが傾斜方向に更に倒れ込むように曲げ変形する。そのため、各シール部26,28が前方側や後方側に押圧されたときに、それらの基端部32,38に対して圧縮荷重が加えられることが解消乃至は可及的に抑制される。そうして、後側シール部26と前側シール部28の各先端側部分が前方側や後方側に押圧されたときに、各シール部26,28において生ずる反力が、効果的に小さくされるようになっている。
【0052】
なお、本実施形態において、90°を超え且つ180°未満の範囲内の値とされた、後側シール部26の基端部32と案内面13とのなす角:α1 の大きさ、及び前側シール部26の基端部38と案内面13とのなす角:β1 の大きさは、かかる範囲内の値であれば、具体的に限定されるものではないものの、それら二つのなす角:α1 、β1 の大きさは、何れも115°〜145°程度の範囲内の値とされていることが、望ましい。
【0053】
また、後側及び前側シール部26,28のそれぞれの幅(図2にW1 ,W2 にて示される寸法)は、特に限定されるものではないものの、好ましくは5〜50mmの範囲内の値とされる。何故なら、後側及び前側シール部26,28の幅が5mm以上とされることにより、かかる幅が、導風板本体10とシュラウドとの間に形成される隙間(後述する後側隙間56)や、導風板本体10とバンパカバーとの間に形成される隙間(後述する前側隙間58)の一般的な幅よりも大きくされて、後側及び前側シール部26,28の曲げ変形下で、それらの先端側部分が、シュラウドやバンパカバーに確実に接触するようになるからである。また、後側及び前側シール部26,28の幅が50mm以下とされることにより、後側及び前側シール部26,28が必要以上に大きな幅となることが防止されて、それら後側及び前側シール部26,28の形成による導風板10の重量の増大が可及的に抑制されるようになるからである。
【0054】
そして、かくの如き構造を有する本実施形態の導風板10にあっては、図3及び図4に示されるように、例えば、自動車用部品としてのバンパカバー42と、それの後方に位置するラジエータ44を外側から取り囲んで配置された、別の自動車用部品たるシュラウド46との間において、自動車の幅方向(車幅方向)に間隔を隔てて、案内面13同士を互いに対向させた状態で、それぞれ1個ずつ配されて、自動車の前後方向に延びるように設置される。これにより、自動車の走行時に生ずる気流が、二つの導風板10,10の各案内面13にて、ラジエータ44に向かって導かれるようになっているのである。
【0055】
バンパカバー42は、その縦断面形状が、前方に向かって凸となる湾曲形状を呈している。そして、かかるバンパカバー42は、自動車の前部に対して、車幅方向に延びるように設置されたバンパリーンホースメント48に固定されている。また、バンパカバー42には、車幅方向に沿って延びる延出方向の中間部に、空気取入口50が設けられている。
【0056】
シュラウド46は、全体として、ラジエータ44よりも一周り大きな矩形の筒形状を呈している。そして、自動車の前後方向に延びるように配置され、ラジエータ44に対して外嵌された状態で固定されている。換言すれば、シュラウド46は、上下方向に真っ直ぐに延びる二つの縦壁部52a,52bと、車幅方向に真っ直ぐに延びる二つの横壁部54a,54bとを一体的に有し、それら二つの縦壁部52a,52bと二つの横壁部54a,54bとが、ラジエータ44の上下左右の四つの側面のそれぞれから側方に所定距離を隔てた位置において、ラジエータ44の四つの側面をそれぞれ外側から覆うように配置されているのである。
【0057】
そして、そのようなバンパカバー42とシュラウド46との間に設置される二つの導風板10,10は、シュラウド46の二つの縦壁部52a,52bのそれぞれの前方における各縦壁部52a,52bよりも車幅方向外側に位置して、後側シール部26を車幅方向内側に延び出させた状態で配置されている。また、それら二つの導風板10,10の各導風板本体12は、後側端面30,30を、各縦壁部52a,52bの前端面に対して、前後方向に所定距離を隔てて位置させた状態で、各縦壁部52a,52bに沿って上下方向に延出させるように配置されている。これによって、後側端面30,30と各縦壁部52a,52bの前端面との間に、設計隙としての後側隙間56,56が、上下方向に延びるように形成されている。つまり、各導風板本体12が、シュラウド46に対して非連結とされている(何等固定されていない)のである。
【0058】
また、二つの導風板10,10は、バンパカバー42の後方において、各導風板本体12の前側端縁部20をバンパカバー42の内面に沿って上下方向に延出させるように配置されている。更に、そのような配置下において、各導風板本体12の前側端面36とバンパカバー42の内面とが、前後方向に所定距離を隔てて対向配置されている。これによって、それら前側端面36とバンパカバー42の内面との間にも、設計隙としての前側隙間58が、上下方向に延びるように形成されている。つまり、各導風板本体12が、バンパカバー42に対しても非連結とされている(何等固定されていない)のである。
【0059】
さらに、二つの導風板10,10は、前側端縁部20の切欠部22内に挿通されたバンパリーンホースメント48に対して、前記取付突起24においてボルト止めされること等により、固定されて、自動車の前部に取り付けられている。なお、各導風板10を、ラジエータサポート等のバンパリーンホースメント48とは異なる部材に取り付けることも、勿論可能である。
【0060】
そして、そのようにして自動車の前部に取り付けられた二つの導風板10,10の各後側シール部26が、その基端部32と案内面13とのなす角:α1 の大きさを小さくするように曲げ変形させられた状態で、先端側部分において、シュラウド46の各縦壁部52a,52bの前端面に接触している。つまり、後側シール部26の基端部32以外の部分が殆ど撓み変形せずに、基端部32のみが撓み変形して、全体が殆ど湾曲することなしに曲げ変形させられた状態で、後側シール部26の先端側部分が、シュラウド46の各縦壁部52a,52bの前端面に接触している。なお、各後側シール部26の基端部32が撓み変形させられて、各後側シール部26の先端側部分が各縦壁部52a,52bの前端面に接触した状態下においても、後側シール部26の基端部32と案内面13とのなす角:α1 の大きさは90°を超える値に維持される。
【0061】
また、各前側シール部28も、その基端部38と案内面13とのなす角:β1 の大きさを小さくするように曲げ変形させられた状態で、先端側部分において、バンパカバー42の内面に接触している。つまり、前側シール部28の基端部38以外の部分が殆ど撓み変形せずに、基端部38のみが撓み変形して、全体が殆ど湾曲することなしに曲げ変形させられた状態で、前側シール部28の先端側部分が、バンパカバー42の内面に接触している。なお、各前側シール部28の基端部38が撓み変形させられて、各前側シール部28の先端側部分がバンパカバー42の内面に接触した状態下においても、前側シール部28の基端部38と案内面13とのなす角:β1 の大きさは90°を超える値に維持される。
【0062】
換言すれば、二つの導風板10,10の各後側シール部26の先端側部分が、シュラウド46の二つの縦壁部52a,52bにそれぞれ接触した状態において、後側シール部26に対して、基端部32を回転中心とした回転モーメント若しくは基端部32を屈曲部位とした曲げモーメントが加えられている。また、各前側シール部28の先端側部分が、バンパカバー42の内面にそれぞれ接触した状態において、前側シール部28に対して、基端部38を回転中心とした回転モーメント若しくは基端部38を屈曲部位とした曲げモーメントが加えられている。
【0063】
これによって、二つの導風板10,10の各導風板本体12,12の後側端縁部18,18とシュラウド46の二つの縦壁部52a,52bとの間にそれぞれ形成される後側隙間56,56が、後側シール部26,26にて確実に閉塞されるようになっている。また、各導風板本体12,12の前側端縁部20,20とバンパカバー42との間にそれぞれ形成される前側隙間58,58が、前側シール部28,28にて確実に閉塞されるようになっている。更に、そのような後側及び前側シール部26,28による後側及び前側隙間56,58の閉塞状態下で、後側シール部26や前側シール部28からシュラウド46の各縦壁部52a,52bやバンパカバー42に及ぼされる、各シール部26,28の曲げ変形に対する反力が可及的に小さくされている。
【0064】
そして、導風板10の後側シール部26と前側シール部28は、各基端部33,38の撓み変形による曲げ変形下で、シュラウド46とバンパカバー42に接触した状態において、各基端部32,38の更なる撓み変形が可能とされている。
【0065】
それ故、導風板10がバンパカバー42とシュラウド46との間に設置された状態下で、例えば、自動車の走行中の入力振動等により、自動車の前後方向において、導風板本体12とシュラウド46とが相対変位したり、或いは導風板本体12とバンパカバー42とが相対変位した際に、それらの相対変位に追従して、後側及び前側シール部26,28の各基端部32,38の撓み変形量が増減し、各シール部26,28の曲げ変形量が変化するようになっている。それによって、各シール部26,28のシュラウド46やバンパカバー42との接触状態が可及的に維持され、その結果、自動車の走行中においても、後側及び前側隙間56,58の後側及び前側シール部26,28による閉塞状態が、有利に確保されるようになっているのである。
【0066】
従って、本実施形態の導風板10がバンパカバー42とシュラウド46との間に設置されることにより、自動車の走行時に生ずる気流がラジエータ44に向かって良好に導かれると共に、前側隙間58や後側隙間56を通じての風抜けの発生が、より確実に且つ安定的に防止され得る。そして、それによって、シュラウド46との間やバンパカバー42との間の安定したシール性が、効果的に発揮され得るのである。
【0067】
また、かかる導風板10においては、曲げ変形した後側及び前側シール部26,28の各先端側部分のシュラウド46やバンパカバー42への接触状態下で、特に、後側シール部26の基端部32と案内面13とのなす角:α1 の大きさが90°を超える値とされている。これによって、導風板本体12の案内面13に沿って導かれた気流を、後側シール部26の後側ガイド面34にて、ラジエータ44に向かってスムーズに且つ効率的に流動させることができる。
【0068】
しかも、かかる導風板10では、曲げ変形した後側及び前側シール部26,28の各先端側部分のシュラウド46やバンパカバー42への接触状態下で、後側シール部26や前側シール部28からシュラウド46の各縦壁部52a,52bやバンパカバー42に及ぼされる、各シール部26,28の曲げ変形に対する反力が可及的に小さくされている。そのため、自動車への振動入力等により、シュラウド46及びバンパカバー42と導風板本体12との間で相対変位が繰り返し惹起されたときにも、シュラウド46の後側シール部26との接触部分や、バンパカバー42の前側シール部28との接触部分、或いは後側及び前側シール部26,28のシュラウド46やバンパカバー42との接触部分が、摩耗したり、或いは削れたりするようなことが効果的に解消される。そして、その結果として、後側シール部26とシュラウド46との間のシール性と、前側シール部28とバンパカバー42との間のシール性とが、更に一層、安定的に確保され得る。
【0069】
従って、本実施形態の導風板10によれば、ラジエータ44の冷却効率の向上と空力性能の向上とが、極めて有利に達成され得ることとなるのである。
【0070】
また、本実施形態の導風板10では、後側及び前側シール部26,28が、導風板本体12の案内面13に対して90度を超え且つ180度未満の角度をなして、導風板本体12の後側及び前側端縁部18,20から傾斜して延び出していることで、導風板本体12を、シュラウド48の各縦壁部52a,52bよりも車幅方向外側に配置させることが可能となっている。これによって、例えば、衝突事故の発生時等に、導風板本体12が車両後方側に大きく変位したときにも、導風板本体12がシュラウド48やラジエータ44に接触することが有利に回避され、以て、それらシュラウド48やラジエータ44が損傷するようなことが、効果的に防止され得る。
【0071】
さらに、かかる導風板10においては、導風板本体12と後側及び前側シール部26,28とが同一の樹脂材料からなっている。このため、各シール部(26,28)と導風板本体(12)とが互いに異なる種類の材料からなる従来品とは異なって、形成材料が1種類で済み、それによって、材料コストの低減化が有利に図られている。また、使用済みとなったときに、導風板本体12と各シール部26,28とを分離することなく、そのままリサイクルに供することが出来る。
【0072】
また、本実施形態の導風板10は、導風板本体12と後側及び前側シール部26,28とを有する一体成形品にて構成されている。そのため、導風板本体(12)の外周部に対して、シール部(26,28)の代わりに、クッション材が接着されてなる従来品とは異なって、導風板本体12の成形工程の他に、後接着工程を行う必要がなく、それによって、製作性の向上が有利に図られ得る。
【0073】
さらに、本実施形態の導風板10では、後側及び前側シール部26,28が平板形状を有している。このため、後側及び前側シール部26,28の先端側部分をシュラウド48とバンパカバー42とに接触させるのに必要な後側及び前側シール部26,28の幅が、後側及び前側シール部26,28を湾曲板形状とした場合よりも短くて済む。これによって、薄肉の後側及び前側シール部26,28を射出成形にて成形する場合に、それらのシール部26,28を形成するキャビティ内での溶融樹脂の流動性が高められるといった利点が得られる。
【0074】
従って、かくの如き本実施形態の導風板10にあっては、後側及び前側シール部26,28にて安定したシール性を発揮する構造が、優れたリサイクル性を確保しつつ、極めて容易に且つ低コストに実現され得るのである。
【0075】
また、本実施形態の導風板10においては、シュラウド46とバンパカバー42とに対して非連結とされている。それ故、軽衝突等による衝撃荷重が入力されて、シュラウド46やバンパカバー42と導風板10とが互いの接近方向に相対変位した際に、シュラウド46やバンパカバー42と撓み変形下で接触する後側及び前側シール部26,28の更なる撓み変形によって、衝撃荷重が有利に緩和乃至は吸収され得ることとなる。
【0076】
次に、図5には、本発明に従う構造を有する自動車用導風板の別の実施形態が示されている。この図5に示された本実施形態の導風板60は、前側シール部28の導風板本体12に対する形成形態のみが、前記第一の実施形態に係る導風板10と異なっており、その他の構造は、前記第一の実施形態に係る導風板10と同一とされている。従って、本実施形態に係る導風板60に関しては、図1及び図2に示される前記実施形態と同様な構造とされた部材及び部位について、図1及び図2と同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
【0077】
図5から明らかなように、本実施形態の導風板60では、前側シール部28が、導風板本体12の前側端縁部20側に位置する前側端面36の幅方向(図5中、上下方向)の中央より案内面13側(図5中、下側)に偏倚した部分から、前方に向かって、前側端面36の幅方向の案内面13側とは反対側に傾斜して延び出している。つまり、前側ガイド面40が、案内面13の前端から前方に向かって、前側端面36の幅方向の案内面13側とは反対側に傾斜して延び出している。換言すれば、前側シール部28の基端部38(前側シール部28の幅方向両端部のうちの導風板本体12側の部分)と案内面13とのなす角:β1 の大きさが180°を超え且つ270°未満の範囲内の値となるように、前側シール部28が、前側端面36から前方に突出しているのである。
【0078】
かくして、本実施形態の導風板60においては、前側シール部28の先端側部分が、後方側(図5に矢印:Yで示される方向)に向かって押圧されたときに、前側シール部28に対して、その基端部38における前側端面36との接続部分を回転中心とした回転モーメント、若しくは基端部38を屈曲部とする曲げモーメントが加えられる。それにより、図2に二点鎖線で示されるように、前側シール部28の基端部38が撓み変形して、かかる基端部38と案内面13とのなす角:β1 の大きさが大きくなるように、前側シール部28の全体が曲げ変形させられるようになっている。
【0079】
そして、上記の如き構造を有する前側シール部28を備えた導風板60は、図6に示されるように、二つのものが、互いに対向配置された状態で、バンパリーンホースメント48の取付突起24にボルト止めされて、自動車の前部に取り付けられるようになっている。
【0080】
また、それら二つの導風板60,60の自動車前部への取付状態下で、各導風板60の後側シール部26が、前記第一の実施形態に係る導風板10の後側シール部26と同様に、基端部32を撓み変形させつつ、先端側部分において、シュラウド46の各縦壁部52a,52bの前端面に接触している。
【0081】
一方、各導風板60の前側シール部28は、基端部38が撓み変形して、基端部38と案内面13とのなす角:β1 の大きさを大きくするように曲げ変形させられた状態で、先端側部分において、バンパカバー42の内面に接触している。なお、このように、前側シール部28の基端部38が撓み変形させられて、前側シール部28の先端側部分がバンパカバー42の内面に接触した状態下においても、前側シール部28の基端部38と案内面13とのなす角:β1 の大きさは270°未満の値に維持される。
【0082】
かくして、二つの導風板60,60の各後側シール部26と各前側シール部28のそれぞれの先端側部分が、シュラウド46の二つの縦壁部52a,52bやバンパカバー42の内面に接触した状態において、後側シール部26と前側シール部28とに対して、基端部32,38を回転中心とした回転モーメント若しくは基端部32,38を屈曲部位とした曲げモーメントが加えられている。
【0083】
これによって、二つの導風板60,60の各導風板本体12とシュラウド46及びバンパカバー42との間にそれぞれ形成される後側及び前側隙間56,58が、後側シール部26や前側シール部28にて確実に閉塞されるようになっている。また、そのような後側及び前側シール部26,28による後側及び前側隙間56,58の閉塞状態下で、後側シール部26や前側シール部28からシュラウド46やバンパカバー42に及ぼされる、各シール部26,28の曲げ変形に対する反力が可及的に小さくされている。
【0084】
そして、導風板60の後側シール部26と前側シール部28は、各基端部32,38の撓み変形による曲げ変形下で、シュラウド46とバンパカバー42に接触した状態において、各基端部32,38の更なる撓み変形が可能とされている。
【0085】
従って、本実施形態に係る導風板60にあっても、前記第一の実施形態に係る導風板10において奏される作用・効果と実質的に同一の作用・効果が、有効に享受され得るのである。
【0086】
また、本実施形態の導風板60では、前側シール部28の基端部38と案内面13とのなす角:β1 の大きさが180°を超え且つ270°未満の範囲内の値となるように、前側シール部28が、前側端面36から前方に突出している。それ故、図6に示されるように、前側シール部28の基端部38を撓み変形させて、その先端側部分をバンパカバー42の内面に接触させた状態で、案内面13を、バンパカバー42の空気取入口50の開口周縁部のうちの車幅方向に対向する部分に対して、前後方向において対応位置させることができる。これによって、空気取入口50から取り入られる空気を、より効率的にラジエータ44側に導くことが可能となる。
【0087】
ここにおいて、本発明に従う構造を有する導風板が、前記の如き優れた特徴を発揮するものであることを確かめるために、本発明者が実施した試験について、以下に詳述する。
【0088】
すなわち、先ず、平板状の導風板本体の後側端縁部と前側端縁部とに対して、薄肉平板からなる後側シール部と前側シール部とが一体的に突設された、図1及び図2に示される如き構造を有すると共に、後側シール部と前側シール部の各基端部と案内面とのなす角:α1 、β1 の大きさが90°を超え且つ180未満の範囲内で、互いに異なる大きさとされた6種類の導風板を成形して、準備した。それら6種類の導風板のうち、二つのなす角:α1 、β1 の大きさが120°とされたものを試験例1、135°とされたものを試験例2、150°とされたものを試験例3、165°とされたものを試験例4、170°とされたものを試験例5、175°とされたものを試験例6とした。
【0089】
なお、試験例1〜6の各導風板は、1000MPaの曲げ弾性率を有するポリプロピレンとゴムのブレンド材を用いて、射出成形を実施することにより成形した。また、それら各導風板の導風板本体の厚さを1.5mm、後側及び前側シール部のそれぞれの厚さを0.5mm、後側及び前側シール部のそれぞれの幅を25mmとした。
【0090】
一方、比較のために、平板状の導風板本体の後側端縁部と前側端縁部とに対して、後側シール部と前側シール部とが一体的に突設されると共に、それら後側シール部と前側シール部の各基端部と案内面とのなす角:α1 、β1 の大きさ180°とされた導風板を成形して、準備した。かくして得られた導風板を比較例1とした。なお、この比較例1の導風板は、試験例1〜6の各導風板の形成材料と同一の材料を用いて、射出成形を行うことにより成形した。また、比較例1の導風板の導風板本体の厚さや、後側及び前側シール部の厚さ及び幅は、試験例1〜6の各導風板のそれらと同一の寸法とした。
【0091】
そして、上記のようにして得られた試験例1〜6と比較例1の7種類の導風板を用い、それら各導風板に設けられた後側シール部の先端側部分を押圧して、後側シール部を撓み変形させたときに、後側シール部において生ずる反力の大きさを、それぞれ、以下のようにして調べた。
【0092】
すなわち、市販のオートグラフ[型番:AG−50kNG、(株)島津製作所製]を用いて、先ず、試験例1の導風板の導風板本体を、オートグラフに位置固定にセットする一方、後側シール部の先端側部分に対して、オートグラフの圧縮治具を無負荷で接触させた。その後、圧縮治具を1mm/秒の速度で導風板本体側に移動させて、後側シール部に負荷を掛けることにより、後側シール部の基端部を撓み変形させつつ、後側シール部の曲げ変形量を漸増させた。そして、そのときに後側シール部から圧縮治具に及ぼされる荷重の大きさを、逐次、測定した。それによって、圧縮治具の導風板本体への接近移動量(後側シール部の撓み変形量に相当する)と後側シール部にて生ずる反力の大きさとの関係を調べた。
【0093】
引き続き、試験例2〜6と比較例1の各導風板をそれぞれ用いて、上記と同様な試験を実施した。それにより、試験例2〜6と比較例1の各導風板について、圧縮治具の導風板本体への接近移動量と後側シール部にて生ずる反力の大きさとの関係を、それぞれ調べた。試験例1〜6と比較例1の各導風板を用いた試験の結果を、図7に併せて示した。
【0094】
図7の結果から明らかなように、試験例1〜6の各導風板と比較例1の導風板とを比較した場合、圧縮治具の導風板本体への接近移動量の大きさに拘わらず、それが同一の値であるとき、試験例1〜6の各導風板の後側シール部において生ずる反力の大きさが、比較例1の導風板の後側シール部において生ずる反力の大きさよりも小さな値となっている。しかも、比較例1の導風板では、圧縮治具が後側シール部に無負荷で接触した位置から、導風板本体に接近移動し始めた初期段階において、後側シール部で生ずる反力の大きさが急上昇している。これに対して、試験例1〜6の各導風板においては、そのような後側シール部の反力の急激な上昇は、何等認められない。
【0095】
これらの結果は、本発明に従う構造を有する導風板が自動車に設置されて、シール部が、その基端部を撓み変形させつつ、先端部において自動車部品と接触して、かかる自動車部品との間に形成される隙間をシールしたときに、シール部から自動車部品に及ぼされる、シール部の曲げ変形に対する反力を、従来構造を有する導風板よりも効果的に小さく為し得ることを、如実に示している。
【0096】
以上、本発明の具体的な構成について詳述してきたが、これはあくまでも例示に過ぎないのであって、本発明は、上記の記載によって、何等の制約をも受けるものではない。
【0097】
例えば、導風板本体12に対するシール部26,28の形成位置は、例示されたものに、何等限定されるものではない。シール部26,28は、導風板本体12の端縁部に一体形成されておれば良い。従って、例えば、導風板本体12の後側及び前側端縁部18,20に加えて、或いはそれに代えて、導風板本体12の上側端縁部や下側端縁部にシール部を一体成形したり、或いは導風板本体12の切欠部22の周縁部にシール部を一体形成しても良い。切欠部22の周縁部にシール部を設けたときには、切欠部22に嵌め込まれるバンパリーンホースメント48と導風板本体12との間をシールすることができる。そうした場合には、導風板本体12とバンパリーンホースメント48とが相対移動したときに、シール部の先端部にて、バンパリーンホースメント48の表面に形成された被膜(例えば、防錆用)等を傷付ける等して、かかる被膜の機能を低下させてしまうようなことが有利に回避され得る。
【0098】
また、前側及び後側隙間42,40のシール構造は、必ずしも、導風板本体12の端縁部に一体形成された後側及び前側シール部26,28のみによって実現されるものではない。即ち、導風板本体12の端縁部の一部分に対して、クッション材等からなるシール部材を接着し、このシール部材にて、前側及び後側隙間42,40の一部をシールすることも可能である。
【0099】
例えば、ラジエータ44の下側に位置するシュラウド46の横壁部54bと導風板本体12の後側端縁部18との間に、エアコンホース等のように高温となる自動車部品等が存在する場合には、かかる後側端縁部18の下端部に、耐熱性を有するクッション材からなるシール部材を取り付けて、このシール部材をエアコンホース等の自動車用部品に接触、配置することにより、導風板本体12の後側端縁部18とエアコンホース等の自動車用部品との間に形成される隙間をシールしても良い。また、導風板本体12の外周部の周囲に、隙間を隔てて位置する自動車用部品の外面が複雑な形状を有する場合にも、かかる自動車用部品に対する導風板本体12の対向部位に、クッション材等の変形自由度の高いシール部材を取り付けて、このシール部材を自動車用部品の外面に接触、配置することにより、かかる自動車用部品と導風板本体12との間に形成される隙間をシールしても良い。
【0100】
導風板本体12との間で、シールされるべき隙間を形成する自動車用部品は、上記に例示されたシュラウドやバンパカバー、エアコンホース等に何等限定されるものではなく、導風板10の自動車への設置状態下で、導風板本体12の周囲に位置して、導風板本体12との間に隙間を形成する全ての自動車用部品(例えば、ラジエータ、ラジエータサポート、バンパリーンホースメント、ロアアブソーバ、アッパーアブソーバ、ハーネス、或いは各種のホース、更には1個の導風板に隣り合って位置する別の導風板等)が、その対象となる。
【0101】
また、前記実施形態では、シュラウド46と導風板本体12との間に形成される後側隙間56と、バンパカバー42と導風板本体12との間に形成される前側隙間58との両方が、後側及び前側シール部26,28にてシールされるようになっていた。しかしながら、後側及び前側シール部26,28のうちの何れかを省略して、後側隙間56と前側隙間58のうちの何れか一方のみをシールするように構成しても良い。
【0102】
導風板本体12の全体形状は、それが設置されるべき自動車前部の設置空間の形状等に応じて、適宜に変更され得るものであることは、言うまでもないところである。
【0103】
シール部の個数や形状等は、特に限定されるものではない。
【0104】
例えば、図8に示されるように、後側シール部26と前側シール部28とが、湾曲板形状を有していても良い。この場合にあっても、後側シール部26と前側シール部28の各基端部32,38と案内面13とのなす角:α2 、β2 のうちの少なくとも何れか一方の大きさ、具体的には、各基端部32,38の接線と案内面13とのなす角:α2 、β2 のうちの少なくとも何れか一方の大きさが、90度を超え且つ180度未満とされている必要がある。なお、図8に示される本実施形態に関しては、図1及び図2に示される前記実施形態と同様な構造とされた部材及び部位について、図1及び図2と同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略した。
【0105】
また、後側シール部26と前側シール部28は、導風板本体12の後側端縁部18や前側端縁部20に一体形成されておれば、その具体的な形成位置が、特に限定されるものではない。後側及び前側シール部26,28は、後側端面30や前側端面36の幅方向の如何なる位置から延び出していても良いのである。
【0106】
さらに、前記第一実施形態では、基端部32,38と案内面13とのなす角:α1 、β1 の大きさが90度を超え且つ180度未満とされた後側シール部26や前側シール部28が、かかるなす角:α1 、β1 の大きさを小さくするように撓み変形させられた状態で、シュラウド46やバンパカバー42等の自動車部品に接触して、配置されていた。また、前記第二実施形態では、基端部38と案内面13とのなす角:β1 の大きさが180度を超え且つ270度未満とされた前側シール部28が、かかるなす角:β1 の大きさを大きくするように撓み変形させられた状態で、バンパカバー42等の自動車部品に接触して、配置されていた。しかしながら、基端部32,38と案内面13とのなす角:α1 、β1 の大きさが90度を超え且つ180度未満とされた後側シール部26や前側シール部28を、かかるなす角:α1 、β1 の大きさが大きくなるように撓み変形させた状態で、自動車部品に接触、配置しても良い。また、基端部32,38と案内面13とのなす角:α1 、β1 のうちの一方の大きさが180度を超え且つ270度未満とされた後側シール部26や前側シール部28のうちの何れか一方を、かかるなす角:α1 、β1 の大きさが小さくなるように撓み変形させた状態で、自動車部品に接触、配置しても良い。
【0107】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもないところである。
【符号の説明】
【0108】
10,60 導風板 12 導風板本体
13 案内面 18 後側端縁部
20 前側端縁部 26 後側シール部
28 前側シール部 32,38 基端部
42 バンパカバー 46 シュラウド
56 後側隙間 58 前側隙間


【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の前部に、前後方向に延びるように設置されて、自動車の走行時に生ずる気流をラジエータに導く導風板であって、
前記気流を導く案内面を有し、自動車の前部において、該前部に配置された自動車部品と非連結の状態で、該案内面が自動車の前後方向に延びるように設置される、樹脂製の導風板本体と、
該導風板本体の端縁部に対して一体成形により突設された、該導風板本体よりも薄肉の突出片からなると共に、少なくとも基端部が可撓性を有し、且つ該基端部が、該導風板本体の前記案内面に対して90度を超え且つ180度未満の角度をなして、該導風板本体の端縁部から延び出しているシール部と、
を有していることを特徴とする自動車用導風板。
【請求項2】
前記シール部が、平板形状を有している請求項1に記載の自動車用導風板。
【請求項3】
前記導風板本体の端縁部に対して一体成形により突設された、該導風板本体よりも薄肉の突出片からなると共に、少なくとも基端部が可撓性を有し、且つ該基端部が、該導風板本体の前記案内面に対して180度を超え且つ270度未満の角度をなして、該導風板本体の端縁部から延び出しているシール部を、更に有している請求項1又は請求項2に記載の自動車用導風板。
【請求項4】
自動車の前部に前後方向に延びるように設置された、自動車の走行時に生ずる気流をラジエータに導く導風板と、該導風板の周囲に配置された自動車用部品との間に形成される隙間を通じての風抜けを防止するためのシール構造であって、
前記導風板として、請求項1乃至請求項3に記載の導風板を用いて、該導風板の前記導風板本体を、前記自動車部品と非連結で且つ前記案内面が自動車の前後方向に延びるように、自動車の前部に設置すると共に、前記シール部の前記基端部を撓み変形させた状態で、該シール部を該自動車部品に接触させて配置することにより、該導風板本体と該自動車部品との間に形成される前記隙間を該シール部にて閉塞して、該隙間を通じての風抜けを防止するようにしたことを特徴とするシール構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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