説明

自動車用照明装置

【課題】発光ダイオードによる高い指向性の光を実現することができる自動車用照明装置を提供する。
【解決手段】自動車用照明装置10は、ハウジング11と、ハウジング11内に取付けられた白熱電球12、12′及び発光ダイオード13、13′と、ハウジング11の開口に固定された光輝部材14と、を備えている。ハウジング11は、自動車の室内側に形成されるように構成された開口と、開口を囲む開口縁から起立した側壁15bと、側壁15bに連結され対向して設けられた底壁16aと、を有する。光輝部材14は、透明な母材に散乱子を分散して作られている。光輝部材14は、厚肉部14dと、厚肉部14dに対して相対的に厚みが低減された薄肉部14c、14c′と、を有し、薄肉部14c、14c′は、発光ダイオード13、13′から照射された光の行路が貫通する位置に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車室内を照らす自動車用照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車室内を照らす照明装置としては、従来から様々な種類のランプを、自動車室内を装飾する内装材や車体を構成するパネルなどに配設することが行なわれている。たとえば、自動車の天井部には、乗員の乗降の際に自動車室内や乗員の足元を照らして、夜間や暗闇の中にいても、乗員の安全や利便性を確保することができるように、ドームランプと呼ばれる比較的広い範囲を照らす照明装置が設けられている。また、天井部には、このドームランプの他に、夜間や暗闇において、地図を読んだり、高速道路のチケットや駐車券などの文字を読んだりする場合など車内の比較的狭い範囲を集中的に照らすことを目的としたマップランプが配設される。
【0003】
ドームランプは、光源として、一般的に白熱電球が用いられ、光の放出側には白熱電球から照射された光を拡散する機能を有する薄板状のカバー部材(光輝部材)を配設することが行なわれている。白熱電球は、内装材に設けられた凹部、あるいは、開口を有する中空のハウジング内に組みつけられる。カバー部材(光輝部材)は、凹部やハウジングの開口に嵌め合わされて、白熱電球から照射された光を散乱するとともに、白熱電球を自動車室内側から視認できないよう遮蔽する機能を有している。また、カバー部材(光輝部材)は、天井部のアクセントとなって、自動車室内のインテリアとして好ましい意匠性を付与する機能も有している。
【0004】
マップランプは、光源として、チップ型の発光ダイオードが用いられ、その周囲をアクリルなどで形成したレンズキャップで被覆されている。このような構成とすることにより、チップ型発光ダイオードより照射された光が集められ、指向性をもった光となって自動車室内に照射され、比較的狭い範囲を集中的に照らすことが可能となる。
従来の自動車用照明装置において、ドームランプとマップランプとは、通常、成形天井などの内装材において、夫々別の場所に取付けられている。そのため、内装材の構成要素が増え、雑然とした印象を与えるようになり、内装材の意匠性を低下させている。
【0005】
また、自動車室内に露出されるレンズ(光輝部材)が、ドームランプの白熱電球から照射された光のみを散乱させる目的で、内装材の凹部開口またはハウジングの開口に配設されている。一般的に、表面または裏面にダイヤカット加工が施された平板状のレンズが用いられるため、ドームランプの光り方が平面的で単調なものとなるため、内装材の意匠性を低下させる要因となっている。 さらに、ドームランプとしての白熱電球が照らし出す照明範囲内において照度ムラが大きいことで、均一な輝度を有する照明装置が得られないという問題も有している。一方、マップランプにおいても、発光ダイオードを覆うレンズキャップが直接視認できるため、マップランプの自動車室内側から見え方が直接的であることにより、内装材の意匠性を低下させている。
【0006】
上記課題を解決する特徴を有する自動車用照明装置である車両用ルームランプが、特許文献1で開示されている。この車両用ルームランプ6は、発光ダイオード61と白熱電球62とを並列して配置して構成されている(図10参照)。この並列配置の構成により、車両用ルームランプ6が簡易な構造を有することができる。さらに、この車両用ルームランプ6の光輝部材である透過性レンズ3が、散乱子を含有し、白熱電球62と発光ダイオード61との両方を覆っている。そのため、白熱電球62から照射される光が、透過性レンズ3に含まれる散乱子により方向性に依存せずに広域に、かつ均一な輝度を有して散乱される。したがって、この透過性レンズ3を有する車両用ルームランプ6により、白熱電球が照らし出す照明範囲での照度ムラの課題と白熱電球及び発光ダイオードの車両室内側からの視認性に起因する照明装置の意匠性の課題とが解決されている。
【特許文献1】特開2005−170079号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、この透過性レンズは、発光ダイオードから照射された光も白熱電球から照射された光と同様に広域に散乱してしまう。そのため、発光ダイオードを有する車両用ルームランプが、マップランプとして要求される高い指向性の光を実現できていないという問題を有している。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑み、発光ダイオードによる高い指向性の光を実現することができる自動車用照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様の自動車用照明装置は、自動車の室内側に形成されるように構成された開口、開口を囲む開口縁から起立した側壁、及び側壁に連結され対向して設けられた底壁を有するハウジングと、ハウジング内に取付けられた白熱電球及び発光ダイオードと、 透明な母材に散乱子を分散して作られており、ハウジングの開口に固定された光輝部材と、を備えており、光輝部材は、厚肉部と、厚肉部に対して相対的に厚みが低減された薄肉部と、を有し、薄肉部は、発光ダイオードから照射された光の行路が貫通する位置に設けられていることを特徴とする。
本発明の一態様の自動車用照明装置によれば、光輝部材において、薄肉部のみが、発光ダイオードから照射された光の行路が貫通する位置に設けられている。これにより、発光ダイオードが照射する光は、光輝部材の薄肉部のみを透過することになる。ゆえに、この発光ダイオードの照射光が薄肉部の散乱子により散乱される割合が、発光ダイオードの照射光が光輝部材の厚肉部も透過するケースにおいて散乱される割合に比べ減少する。したがって、発光ダイオードが照射する光は、光輝部材を透過しても指向性が高く維持されたまま、自動車の室内の対象物を照らし出すことが可能となる。
光輝部材の母材は、樹脂でできているのが好適である。
光輝部材の母材に分散された散乱子は、ガラス、シリコーン、酸化チタン、酸化バリウム、アクリル系架橋ビーズ、スチレン系架橋ビーズのいずれか一つ、またはそれらを組み合わせた光散乱体でできているのが好適である。
光輝部材の薄肉部の散乱子の濃度が、光輝部材の厚肉部の散乱子の濃度以下であることが好適である。
光輝部材の下縁部が、ハウジングの開口に対向しており、開口に沿う形状に成形されているのが好適である。
厚肉部は光輝部材の中央付近に設けられているとともに、薄肉部は光輝部材の縁部に設けられているのが好適である。
光輝部材はさらに第1の厚み変移部を有し、第1の厚み変移部は、厚肉部と薄肉部との間に、厚肉部から薄肉部に向かって厚みが低減するように設けられていることが好適である。
ハウジングの側壁には、底壁と開口との間に、開口に対向する段部が設けられているとともに、白熱電球は、底壁に配設されていて、発光ダイオードは、段部に設けた開孔の中に配設されていることが好適である。
ハウジングの側壁は開口縁から底壁へとテーパー状に形成されているとともに、側壁のコーナー部が湾曲していることが好適である。
第1の厚み変移部の表面と厚肉部の表面とのなす角度が、45°以下であることが好適である。
光輝部材は、さらに中央部に厚み低減部を備えているとともに、厚み低減部と厚肉部との間に第2の厚み変移部を有し、第2の厚み変移部の表面と厚肉部の表面とのなす角度が、45°以下であることが好適である。
光輝部材の厚肉部は、3つの第3の厚み変移部を備えており、第3の厚み変移部の表面と厚肉部の表面とのなす角度が、45°を超え90°未満であることが好適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の自動車用照明装置によれば、ドームランプ機能を有する白熱電球とマップランプ機能を有する発光ダイオードとが一つのハウジング内に設けられている。そのため、ドームランプとマップランプとを同一のハウジング内に集約することができる。
さらに、光輝部材が、白熱電球と発光ダイオードとを収納するハウジングの開口に配設され、光を散乱させるように機能している。この光輝部材の母材に適切な濃度で分散された散乱子により、自動車室内からの白熱電球の視認性を低下させることができる。
また、光輝部材の厚みを部分的に変化させることによって、厚みが変わる境界部分の光輝部材の光り方にライン状の模様などを浮き立たせることができる。これにより、立体感、奥行き感のある意匠を演出することが可能となる。
上記の効果に加えてさらに、光輝部材において、厚肉部に対して相対的に厚みを低減した薄肉部が、発光ダイオードから照射された光の行路が貫通する位置に設けられている。そのため、ドームランプに要求される広範囲を照らす光を白熱電球により実現することができるとともに、マップランプに要求される高い指向性の光を発光ダイオードにより実現することができる。すなわち、単一の自動車用照明装置において、2つの異なる種類の光を両立することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照して説明する。図1は、本発明による自動車用照明装置10を採用した車両の乗員室内を示した要部斜視図である。
【0012】
図1は、自動車の前席側上部を示している。自動車の前席側上部の構成としては、フロントピラー、サイドピラー等の複数の鋼板製のピラーパネルによって、自動車の天井を形成するルーフパネルが支持されている。各ピラーパネルの間には、フロントガラス3やサイドウインドウ4が配設されている。これらルーフパネルやピラーパネルの乗員室側は、ヘッドライニング1やピラーガーニッシュ2などの樹脂製の内装材で被覆されている。この内装材により鋼板製のパネルを覆い隠すことによって、乗員室内に意匠性を付与したり、車外騒音やパネルに伝播した振動などを遮断したりする機能が与えられている。
【0013】
これらの内装材は、基材として、熱可塑性樹脂やガラス繊維を配合した樹脂を車体パネルに沿う形状に成形し、基材の表面に意匠性の表皮材を貼着し、また、基材の裏面には各種の防音材や衝撃吸収材を配設することが一般的である。
【0014】
また、ヘッドライニング1の前縁部の乗員室側にはサンバイザ5、5′が、ヘッドライニング1に沿った収納位置とフロントガラス3と乗員との間の使用位置とに回動可能に取付けられている。本発明に係る自動車用照明装置10は、ヘッドライニング1の前縁部におけるサンバイザ5とサンバイザ5′との中間位置近傍に配置され前部座席を照明する構成とされている。しかし、これに限られるものではなく、ヘッドライニング1の略中央に配設し、前部座席または後部座席を照明する構成としても良い。また、自動車用照明装置を前部座席上方および後部座席上方に複数設けても良く、任意の配設が可能である。本実施形態における自動車用照明装置10では、ヘッドライニング1に、自動車用照明装置10に対応した切欠が形成され、ルーフパネルに取付けられている。しかし、これに限らず、自動車用照明装置10をヘッドライニング1に取付ける構成としても構わない。
【0015】
図2に、本発明による自動車用照明装置10の外観図を示す。また、図3(a)には、図2のA−A線断面図、図3(b)には、図2のB−B線断面図を示す。
【0016】
本発明の自動車用照明装置10は、全体として断面凹形状をなし、自動車の室内側に形成されるように構成された開口、開口を囲む開口縁から起立した側壁、および側壁に連結され対向して設けられた底壁を有するハウジング11と、ハウジング11の底壁に取付けられている白熱電球12、12′と、ハウジング11の側壁に取付けられている発光ダイオード13、13′と、透明な母材に散乱子を分散して作られており、ハウジング11の開口に固定されている光輝部材14とで構成されている。
(ハウジング)
ハウジング11は、内部に白熱電球12、12′や発光ダイオード13、13′を収容するための中空部を有し、自動車室内側に向けて開口が形成されている。本実施形態においては、側壁を構成する中空筒状の筐体15と、底壁を構成する基板16とを別体で形成し一体化することによって、ハウジング11を形成している。ハウジング11を構成する筐体15には、ポリプロピレンやポリエチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンといった熱可塑性樹脂の樹脂材料を射出成形やプレス成形等により成形したものが好適に用いられる。さらに、反射効果を高めるため、明るい色(白色に近い色)を有する筐体が好ましい。また、基板16には、反射効果を高めるため、表面に白色の塗装を施したガラスエポキシ基板やフレキシブル基板が好適に用いられる。
【0017】
ハウジング11の側壁をなす筐体15には、底壁と開口との間に、開口に対向する段部15aが形成されている。段部15aは、開口縁近くに、筐体15の内部に向けて側壁を突出形成させてなり、ハウジング内において、四方全てに形成している。図4は、本発明による自動車用照明装置10において、光輝部材14の組付前の状態に示した外観図である。略矩形状をなす筐体15の開口に形成された段部15aのうちの一辺は、突出量を多くするとともに、円筒状の開孔15d、15d′を形成し、開孔15d、15d′内に発光ダイオード13、13′が配設される。このような構成とすることにより、発光ダイオード13、13′の視認性が低下し、自動車用照明装置10の意匠性が向上する。また、円筒状の開孔15d、15d′内に発光ダイオードを配設することにより、発光ダイオード13、13′から照射された光が集束されて、指向性が高められる効果も得られる。
【0018】
また、ハウジング11の側壁をなす筐体15は、開口縁から底壁へと、その内部空間が減少するように側壁がテーパー状に傾斜するように形成されている。これにより、底壁に取付けられた白熱電球から照射された光の一部が、段部15aによって遮られ、これに対応する車室内の被照射部の一部に陰が形成されるような不具合の発生を防止できる。さらに、筐体15において、底壁と側壁との接続部、および、側壁と段部15aとの接続部などのコーナー部を緩やかに湾曲した形状とされている。これにより、たとえ白熱電球12、12′から照射された光の一部が若干遮られても、筐体15における側壁15bと段部15aの境界に形成された湾曲形状によって光が周りこみ、光輝部材14の端末まで光が到達可能となる。そのため、被照射部に影ができるなどの照度ムラの発生を防止でき、また、光輝部材14を端末部まで光らせることが可能となり、自動車用照明装置10の意匠性が向上する。また、発光時に、光輝部材14の端末部において光に奥行き感が生まれ、従来の照明装置の画一的な見栄えに比べ上質な意匠性を照明装置に付与できるなど、照明装置の装飾効果を高めることも可能となる。
(光源)
白熱電球12、12′は、ハウジング11の底壁16aを構成する基板16に組み付けられている。白熱電球12、12′は、バルブランプとも呼ばれ、照射された光は拡散性を有し、比較的広範囲を照らすことができる。本実施形態においては、白熱電球12、12′の2つを配設しているが、これに限られるものではなく、一つでも良いし、三つ以上でも構わない。白熱電球12、12′は、自動車室内の広範囲を満遍なく照らす全体照明としての役割を担っており、暗闇や夜間において、乗員の乗降時に足元を照らしたり、自動車室内の視認性を向上させて、乗員の利便性が高められる。白熱電球12、12′から発せられる光の色としては、白色に近い色が好適に用いられるが、青みを帯びた色、赤みを帯びた色、等でもよい。
【0019】
発光ダイオード13、13′は、段部15aに形成された開孔15d、15d′内に配設される。本実施形態による発光ダイオード13、13′は、基板に発光ダイオードチップを埋め込み、発光ダイオードチップを覆うように集光レンズが組み付けられている。さらに、基板の発光ダイオードチップが組み付けられたのと反対側には、アルミニウム製の放熱フィンが配設されてなる。発光ダイオードから照射される光は白色が好ましいが、青色、赤色などでもよい。発光ダイオードチップから照射された光は、集光レンズによって、集束され指向性を有する光となって、自動車室内に照射される。本実施形態において、発光ダイオードは、略矩形状に形成されたハウジング11内において、図4に示すように、段部15aの両サイドに配設されている。これにより、発光ダイオードは、自動車室内の運転席および助手席に座った乗員の手元を集中的に照らす、スポット照明として機能する。
(光輝部材)
図5は、本実施形態における自動車用照明装置10に用いられる光輝部材14を、ハウジング11に組み付けられる際に光源側に配設される側から見た斜視図である。光輝部材14は、略矩形状の外形を有し、その外周には、枠体14aが立設されている。この枠体14aは、図3(a)、(b)に図示したように、筐体15の段部15aに当接して、光輝部材14を安定的に位置決めすることを可能としている。また、光輝部材14は、厚肉部14dと、厚肉部に対して相対的に厚みが低減された薄肉部14c、14c′と、を有する。さらに、光輝部材14の下縁部が、ハウジング11の開口に対向しており、開口に沿う形状に成形されている。
【0020】
光輝部材14の材料としては、耐衝撃性に優れるポリカーボネートやアクリル等の透明樹脂に散乱子を混合したものが好適に用いられる。これにより、白熱電球12、12′から照射された光を散乱することが可能となり、光輝部材の表面に従来のダイヤカットなどのような複雑な加工を施すことなく、全体照明として好適な散乱効果が得られる。そのため、光輝部材は、ギラギラとした光り方から、すっきりとした奥行き感のある光り方とすることができて、白熱電球12、12′点灯時における自動車用照明装置10の意匠性を高めることが可能となる。
【0021】
散乱子としては、ガラス、シリコーン、酸化チタン、酸化バリウム、アクリル系架橋ビーズ、スチレン系架橋ビーズなどの化学的に安定で母材樹脂との間で屈折率差を有する透明粒子が好適に用いられる。
【0022】
光輝部材14において、発光ダイオード13、13′から照射された光の行路が貫通する位置に、光輝部材14の厚肉部14dに対して相対的に厚みが低減された薄肉部14c、14c′が設けられている。さらに、厚肉部14dは光輝部材14の中央付近に設けられているとともに、薄肉部14c、14c′は光輝部材14の縁部に設けられている。この構成によれば、厚みが低減された薄肉部14c、14c′は、相対的に散乱子の量も少なくなる。これにより、発光ダイオード13、13′から照射された光が、光輝部材14に含まれる散乱子によって散乱される割合を低減できる。そのため、比較的狭い範囲を集中的に照らすスポット照明としての機能を損うことなく、指向性の高い光を自動車室内にもたらすことが可能となる。即ち、同一ハウジング内に、全体照明として機能する白熱電球と、スポット照明として機能する発光ダイオードを共存させることが可能となる。
【0023】
薄肉部14c、14c′は、その平均半径rと、発光ダイオード13、13′から薄肉部14c、14c′までの距離Lとの関係が、発光ダイオード13、13′の照射角度が15°〜45°の場合は、0.27L<r<1.0Lとなることが好ましい。さらに、発光ダイオードの照射角度が18°〜25°の範囲にある場合は、0.32L<r<0.46Lとなることが好ましい。照射角度を下限以上とすることによって、発光ダイオードから照射された光の略全てが薄肉部14cを透過することが可能となる。ゆえに、発光ダイオードから照射された光の一部が薄肉部14cから外れて、光輝部材14の厚みの大きい厚肉部を透過することによって散乱される。したがって、自動車室内における被照射部における照度が低下するといった不具合の発生を防止できる。照射角度を上限以下とすることによって、光輝部材14において、白熱電球12、12′から照射された光を拡散するために十分な面積の厚肉部を確保できる。さらに、光輝部材14の強度低下による割れなどの不具合を可及的に防止できる。
【0024】
薄肉部14c、14c′の平均厚みは、0.7〜2.0mmであることが好ましく、1.0〜1.3mmであることがより好ましい。平均厚みが下限以上であると、光輝部材14c、14c′の強度が十分得られ、割れや変形といった不具合の発生を低減できる。平均厚みを上限以下とすれば、発光ダイオード13、13′から照射された光が、薄肉部14c、14c′によって散乱される量が低減される。したがって、発光ダイオード13、13′から発せられ薄肉部14c、14c′を透過した光が、スポット照明として必要とされる指向性を保持することが可能となる。なお、薄肉部14c、14c′の平行光線透過率は、25%以上が好ましく、30%以上がより好ましい。
【0025】
光輝部材14に含まれる散乱子の濃度は、0.1〜0.3wt%であることが好ましく、0.15〜0.2wt%であることがより好ましい。散乱子の濃度を下限以上とすると、白熱電球12、12′から照射される光が光輝部材14によって散乱されて、自動車室内の全体照明として広範囲を照明することが可能となる。さらに、光輝部材14の光り方に奥行き感が生まれることで照明装置の意匠性が高められる。さらに、自動車室内からの白熱電球12、12′の視認性が低下し、照明装置の見栄えの低下を防止できる。また、散乱子の濃度を上限以下とすると、光輝部材14の薄肉部14c、14c′を透過する、発光ダイオード13、13′から照射された光の拡散が抑えられる。したがって、スポット照明として要求される発光ダイオード13、13′から照射された光の指向性を保持させたまま自動車室内の被照射部を照明することができる。なお、薄肉部の散乱子の濃度が、厚肉部の散乱子の濃度以下であることが好ましい。
【0026】
光輝部材14の成形については、次の射出成形を好ましく適用できる。すなわち、この射出成形とは、所要の成形形状をなすキャビティを有する一対の成形型を型締めする状態において、予め光輝部材の透明樹脂に散乱子を充填及び混合し、成形型のキャビティ内に、溶融させた透明樹脂を射出充填する成形方法である。プレス成形など他の成形方法も好適に用いられる。射出成形の一例として、2色成形により散乱子の濃度が異なる2つの樹脂を一体的に成形することで、光輝部材は、散乱子の濃度の濃い厚肉部および散乱子の濃度の薄い薄肉部で構成することができる。
【0027】
図6に示すように、本発明による光輝部材14の、自動車室内側に露出する側の表面には、鏡面加工が施されている。さらに、表面とは反対側であって、ハウジング11内部に面する裏面には、薄肉部14c、14c′を除く全面に、サンドブラスト加工が施されることで、無数の凹凸からなるシボが形成されている。これによって、透明な光輝部材14を曇らせるとともに、光の散乱性が高められて、白熱電球12、12′の点灯時に、自動車用照明装置10の意匠性がより一層高められる。また、ハウジング内部に配設されている白熱電球12、12′を自動車室内側からより一層見え難くすることができ、自動車用照明装置10の意匠性が向上する。また、薄肉部14c、14c′には、サンドブラスト加工を施していない。これにより、発光ダイオード13、13′から照射された光が、サンドブラスト加工によって形成されたシボによって散乱されることがないため、指向性が阻害されることはない。本実施形態におけるシボ付けは、サンドブラスト加工によって行なっているが、これに限られるものではなくエッチング加工、切削加工などでもかまわない。
【0028】
光輝部材14の厚肉部14dと薄肉部14c、14c′との間に、第1の厚み変移部14e、14e′が設けられており、この第1の厚み変移部14e、14e′は、厚肉部14dから薄肉部14c、14c′に向かって厚みが低減するように、かつ、厚みを徐々に変化させるように設置されている。ここで言う “厚みを徐々に変化させる”とは、厚肉部14dの表面と第1の厚み変移部14e、14e′の表面とのなす角度θ(図3参照)が45°以下であることが好ましいことを意味する。以下での各部材における同様の記載(すなわち、徐々に変化、徐々に低減)においても、ここでの意味と同義であると解することを注記する。光輝部材14に、このような形状を設けることで、白熱電球12、12′から照射される光によって、第1の厚み変移部14e、14e′にライン状の模様が浮き立つようになり、自動車用照明装置10が独特な意匠を演出することができる。本実施形態においては、第1の厚み変移部14e、14e′を徐々に変化させることによって、厚みが変化する境界を暈し、幅のあるライン模様としている。しかし、これに限られるものではなく、厚みを急激に変化させてクリアなラインとしてもよいし、ライン模様以外にも、円形、波形といった意匠や、文字やマークなど種々の意匠を演出することが可能となる。ここで言う “厚みを急激に変化させて”とは、厚肉部14dの表面と第1の厚み変移部14e、14e′の表面とのなす角度θが45°を超え90°未満であることが好ましいことを意味する。以下での各部材における同様の記載においても、ここでの意味と同義であると解することを注記する。
[取付方法]
光輝部材14の外周からは突起14bが突出形成されており、ハウジング11の筐体15に形成された溝15cに係止することによって、光輝部材14はハウジング11に取付固定される。ハウジング11の筐体15は、可撓性を有する。そのため、光輝部材14を筐体15の開口を押し拡げながら挿入し、突起14bを溝15cに嵌め合わせると、筐体15は弾性的に復元し、光輝部材14を係止、保持することができる。光輝部材14のハウジング11への取付方法としては、これに限られるものではなく、ハウジング11に設けられた収納ボックス17側から突起14bを溝15cへスライド挿入することによって取付けてもよい。さらに、光輝部材14とハウジング11との固定方法については、突起14bと溝15cとの接合による固定に限らない。例えば、光輝部材14とハウジング11とをネジ部材によりネジ止めする方法や、光輝部材14及びハウジング11の各縁部に磁性体を設け、この磁性体同士の磁気的相互作用により光輝部材14とハウジング11とを接合する方法などを用いてもよい。
【0029】
本発明の実施形態により、自動車用照明装置10の意匠性を向上させることができるが、以下に、この効果を達成することができる構成を有する本発明の実施形態の変形例を挙げる。
(第1の変形例)
図7に示すように、この形状の特徴は、光輝部材141の厚肉部14d1において、光輝部材141の両側に形成された薄肉部14c1へと徐変する第1の厚み変移部14e1の他に、光輝部材141の中央に厚み低減部14f1を形成していることである。さらに、厚肉部14d1から厚み低減部14f1へと板厚を徐々に低減させてなる第2の厚み変移部14g1を設けたことも特徴とする。これにより、自動車室内側に露出する側である表面から照明装置を見た際に、照明装置の中央部とその外側とで色の濃さの違うエリアが見えるという意匠を演出することができる。
(第2の変形例)
図8に示すように、この形状の特徴は、第1の厚み変移部14e2が、厚肉部14d2から光輝部材142の両側に形成された薄肉部14c2へと、光輝部材142の厚みを徐々に変化させて設けられていることである。これにより、自動車室内側に露出する側である表面から照明装置を見た際に、滑らかに色の濃さが異なるエリアが照明装置上に見えるという意匠を演出することができる。
(第3の変形例)
図9に示すように、厚肉部14d3から光輝部材143の両側に形成された薄肉部14c3へと厚みが徐々に変化する第1の厚み変移部14e3が設けられている。さらに、この形状の特徴は、光輝部材143の厚肉部14d3に3箇所の肉厚を急激に変化させて形成された第3の厚み変移部14h3を細長く作っていることである。これにより、自動車室内側に露出する側である表面から照明装置を見た際に、照明装置上に3本のラインが見えるという意匠を演出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明による自動車用照明装置を採用した車両の乗員室内を示した要部斜視図である。
【図2】本発明による自動車用照明装置の外観図である。
【図3】(a)は、図2のA−A線断面図である。(b)は、図2のB−B線断面図である。
【図4】本発明による自動車用照明装置の光輝部材の取付前の状態を示した外観図である。
【図5】光輝部材の斜視図である。
【図6】光輝部材の正面図である。
【図7】本発明による光輝部材の第1の変形例を示した斜視図である。
【図8】本発明による光輝部材の第2の変形例を示した斜視図である。
【図9】本発明による光輝部材の第3の変形例を示した斜視図である。
【図10】従来の自動車用照明装置を示した断面図である。
【符号の説明】
【0031】
10 自動車用照明装置
11 ハウジング
12、12′ 白熱電球
13、13′ 発光ダイオード
14、141、142、143 光輝部材
14a 枠体
14b 突起
14c、14c′、14c1、14c2、14c3 薄肉部
14d、14d1、14d2、14d3 厚肉部
14e、14e′、14e1、14e2、14e3 第1の厚み変移部
14f1 厚み低減部
14g1 第2の厚み変移部
14h3 第3の厚み変移部
15 筐体
15a 段部
15b 側壁
15c 溝
16 基板
16a 底壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の室内側に形成されるように構成された開口と、該開口を囲む開口縁から起立した側壁と、該側壁に連結され対向して設けられた底壁と、を有するハウジングと、
前記ハウジング内に取付けられた白熱電球及び発光ダイオードと、
透明な母材に散乱子を分散して作られており、前記ハウジングの前記開口に固定された光輝部材と、
を備えた自動車用照明装置において、
前記光輝部材は、厚肉部と、該厚肉部に対して相対的に厚みが低減された薄肉部と、を有し、
前記薄肉部は、前記発光ダイオードから照射された光の行路が貫通する位置に設けられていることを特徴とする、
自動車用照明装置。
【請求項2】
前記光輝部材の前記母材は、樹脂でできていることを特徴とする、請求項1に記載の自動車用照明装置。
【請求項3】
前記光輝部材の前記母材に分散された前記散乱子は、ガラス、シリコーン、酸化チタン、酸化バリウム、アクリル系架橋ビーズ、スチレン系架橋ビーズのいずれか一つ、またはそれらを組み合わせた光散乱体でできていることを特徴とする、請求項1または2に記載の自動車用照明装置。
【請求項4】
前記薄肉部の前記散乱子の濃度が、前記厚肉部の該散乱子の濃度以下であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の自動車用照明装置。
【請求項5】
前記光輝部材の下縁部が、前記ハウジングの前記開口に対向しており、該開口に沿う形状に成形されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の自動車用照明装置。
【請求項6】
前記厚肉部は前記光輝部材の中央付近に設けられているとともに、前記薄肉部は前記光輝部材の縁部に設けられていることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の自動車用照明装置。
【請求項7】
前記光輝部材はさらに第1の厚み変移部を有し、該第1の厚み変移部は、前記厚肉部と前記薄肉部との間に、該厚肉部から該薄肉部に向かって厚みが低減するように設けられていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の自動車用照明装置。
【請求項8】
前記ハウジングの前記側壁には、前記底壁と前記開口との間に、該開口に対向する段部が設けられているとともに、
前記白熱電球は、前記底壁に配設されていて、前記発光ダイオードは、前記段部に設けた開孔の中に配設されていることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載の自動車用照明装置。
【請求項9】
前記ハウジングの前記側壁は前記開口縁から前記底壁へとテーパー状に形成されているとともに、該側壁のコーナー部が湾曲していることを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載の自動車用照明装置。
【請求項10】
前記第1の厚み変移部の表面と前記厚肉部の表面とのなす角度が、45°以下であることを特徴とする、請求項7から9のいずれか1項に記載の自動車用照明装置。
【請求項11】
前記光輝部材は、さらに中央部に厚み低減部を備えているとともに、該厚み低減部と前記厚肉部との間に第2の厚み変移部を有し、
前記第2の厚み変移部の表面と前記厚肉部の表面とのなす角度が、45°以下であることを特徴とする、請求項7から10のいずれか1項に記載の自動車用照明装置。
【請求項12】
前記光輝部材の前記厚肉部は、3つの第3の厚み変移部を備えており、該第3の厚み変移部の表面と前記厚肉部の表面とのなす角度が、45°を超え90°未満であることを特徴とする、請求項7から11のいずれか1項に記載の自動車用照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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