説明

自動車用窓ガラス

【課題】自動車内の電装部品の作動により発生するノイズをノイズ遮蔽パターンで遮蔽して、棒状のルーフアンテナにノイズを伝達させないようにする。
【解決手段】自動車のルーフ上部後方に棒状のルーフアンテナを有し、後部窓ガラスに複数本の水平加熱線条とその両端をバスバーで接続したデフォッガを配設した自動車用窓ガラスにおいて、該後部窓ガラスの近傍位置にある電装部品の作動により発生する電磁波がノイズとしてルーフアンテナに与える環境下で、デフォッガの上部余白部に少なくとも3本の水平線条と、少なくとも1本の垂直線条とを互いに交差させて左右対称形状とした線条パターンをノイズ遮蔽パターンとし、該ノイズ遮蔽パターンとデフォッガとを中央部とその左右の対称となる位置に少なくとも3本の接続線条で接続して、電装部品による電磁波のノイズをノイズ遮蔽パターンで遮蔽して、棒状のルーフアンテナにノイズを伝達させないようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のルーフ上部後方に設けた棒状のルーフアンテナ(RMA、Roof Mounted Antenna)に、自動車の各種電装部品によるノイズを伝達させないようにした自動車用窓ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車用アンテナとして、窓ガラスの表面に導電性のセラミックペーストによる導電線条を印刷して焼き付けたガラスアンテナが普及しているが、自動車のルーフ上に装着された棒状のルーフアンテナについても、依然として使用され、ガラスアンテナとダイバーシティ受信させることが多い。
【0003】
一方、最近の自動車は一層エレクトロニクス化が進み、数多くの電装部品が使用されつつあるが、これらの電装部品のうちノイズを発生するものもあり、該ノイズがルーフアンテナ等のアンテナに影響し、該ルーフアンテナが受信するFMラジオ放送波の受信性能を低下させる不具合も数多く見受けられる。
【0004】
従来、これらのノイズを発生させる電装部品によっては、ノイズを極力発生させないように導電体によりシールドを施したり、車体にアースさせる等の対策を行い、電装部品からのノイズの発生を抑制させるようにしていたが、これらの対策を行ってもノイズを低減させることができない場合もあった。
【0005】
このため、これらの電装部品から発生したノイズを、極力アンテナ側に伝達させないために、種々の方法が紹介されている。
【0006】
例えば、特開2004−260504号公報には、車両の後部窓ガラスに設けられた通電加熱式のデフォッガの上部余白部にアンテナ線条を設けた車両用アンテナ構造であって、前記デフォッガと前記アンテナ線条との間のスペースに、ノイズ放射源となる前記リアデフォッガを電磁気的に隔離するシールドラインを設けた車両用アンテナ構造が開示されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2004−260504号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1に記載の発明は、自動車の後部窓ガラスのデフォッガから発生するノイズを上部余白部に設けたアンテナに伝達させないように遮蔽することを目的として、デフォッガとアンテナ間にシールドラインを挿入したものであるが、デフォッガに発生するノイズのアンテナへの伝達を防ぐことは可能であるが、自動車の随所で使用される各種電装部品は、夫々その作動によりノイズが発生し、これによってアンテナ側に伝達するノイズは抑制することができないという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記問題点、すなわち、自動車の各種電装部品によるノイズを、ルーフ上部後方に設けた棒状のルーフアンテナに伝達させず、またルーフアンテナの受信感度に悪影響を及ぼさないようにすることを目的とするものである。
【0009】
すなわち、本発明は、自動車のルーフ上部後方に棒状のルーフアンテナを有し、後部窓ガラスに複数本の水平加熱線条とその両端をバスバーで接続したデフォッガを配設した自動車用窓ガラスにおいて、該後部窓ガラスの近傍位置にある電装部品の作動により発生する電磁波がノイズとしてルーフアンテナに与える環境下で、デフォッガの上部余白部に少なくとも3本の水平線条と、少なくとも1本の垂直線条とを互いに交差させて左右対称形状とした線条パターンをノイズ遮蔽パターンとし、該ノイズ遮蔽パターンとデフォッガとを中央部とその左右の対称となる位置に少なくとも3本の接続線条で接続して、前記電装部品による電磁波のノイズを前記ノイズ遮蔽パターンで遮蔽して、前記棒状のルーフアンテナにノイズを伝達させないようにしたことを特徴とする自動車用窓ガラスである。
【0010】
あるいはまた、本発明は、前記ノイズ遮蔽パターンの水平線条のエレメント長を300〜500mmとし、垂直線条の間隔を100mm以下としたことを特徴とする上述の自動車用窓ガラスである。
【発明の効果】
【0011】
自動車の後部窓ガラスに設けたデフォッガの上部余白部に、左右対称形状のノイズ遮蔽パターンを設け、該ノイズ遮蔽パターンを3本以上の接続線条により左右対称位置でデフォッガに接続したことにより、自動車のルーフ上部後方に設けた棒状のルーフアンテナに各種電装部品の作動によるノイズの発生をなくすことができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、自動車の後部窓ガラスのデフォッガの上部余白部に設けたノイズ遮蔽パターンを有する車両用窓ガラスであり、前記ノイズ遮蔽パターンによって、図8に示したようなルーフの上部後方に設けた棒状のルーフアンテナ(RMA)に自動車内の電装部品の作動により発生するノイズを伝達させないように遮断するものである。
【0013】
前記デフォッガとしては、複数本の水平加熱線条の両端をバスバーで接続し、該バスバー間に直流電源を接続して通電加熱により曇りを除去させるものである。
【0014】
本発明の前記ノイズ遮蔽パターンは、図1、図2に示したように、前記デフォッガの上部余白部に設けるものであり、少なくとも3本の水平線条と、少なくとも1本の垂直線条とを互いに交差するように配設し、全体形状が略左右対称形状となるようにしたノイズ遮蔽パターンと、前記デフォッガの水平加熱線条の最上線とを少なくとも3本の接続線条が左右対称となる位置で接続したものである。
【0015】
前記ノイズ遮蔽パターンとデフォッガとの接続について、図5に示すように、中央の1本の接続線条だけで接続すると、ノイズ遮蔽パターンがデフォッガの正極と負極の2つのバスバー3のうち、負極を介して車体アースへ繋がるインピーダンスが高くなって、ノイズ遮蔽効果が十分に得られない。
【0016】
このためインピーダンスを低くしてノイズ遮蔽効果を上げるために、図1のようにノイズ遮蔽パターンとデフォッガのバスバーの上端とを最短距離で接続するのが望ましい。
【0017】
また、前記ノイズ遮蔽パターンを左右対称形状とし、該ノイズ遮蔽パターンとデフォッガとの接続も左右対称形状としたのは、デフォッガに通電したときに、ノイズ遮蔽パターンの一部にも電流が流れるため、デフォッガの通電バランスを保つためである。
【0018】
前記ノイズ遮蔽パターンの水平線条を3本以上としたのは、ノイズが上部余白部を経由してルーフアンテナに伝達するため、上部余白部全体に帯状に線条を設けて、上部余白部を経由するノイズをデフォッガからアースに流すためである。
【0019】
また、ノイズ遮蔽パターンの水平線条の本数については、多くても問題ないが、ノイズ遮蔽パターンの線間隔が、デフォッガの水平加熱線条の線間隔に略一致した間隔とするのが、見栄えも良く望ましい。
【0020】
ノイズ遮蔽パターンの垂直線条については、1本以上であれば良く、図2に示したように1本の場合は中央に設けるのが良いが、図1に示したように複数本の垂直線条を設ける場合については、中央から左右に100mm以内で左右対称形状となるように設けるのが好ましい。
【0021】
これは、図6のように、垂直線条の位置が中心から離れた位置にあると、ノイズ遮蔽パターンの水平線条や垂直線条の一部に流れる電流が大きくなり、ノイズ遮蔽パターンの多くの部分が発熱し、本来のデフォッガに流すべき電流が減少し、デフォッガの最も必要とされる防曇用加熱線条領域における晴れ性能、つまり窓ガラスの曇りを除去して透視性を回復させる防曇性能が低下するためである。
【0022】
また、前記ノイズ遮蔽パターンの水平線条のエレメント長をチューニングにより調整し、ノイズ遮蔽パターンの共振周波数とルーフアンテナの共振周波数が重複しないようにすることで、ルーフアンテナのFM放送波の受信時の受信利得を調整可能とすることができる。
【0023】
すなわち、前記ノイズ遮蔽パターンの水平線条の長さを、中心位置から左右に300〜500mmの長さとすると、ノイズ遮蔽パターンの共振周波数が88MHz〜108MHzのFM帯域より大きく外れ、ノイズ遮蔽パターンの共振周波数とルーフアンテナの共振周波数が重複しなくなり、ルーフアンテナの受信に悪影響を与えなくなるので好ましい。
【0024】
また、前記ノイズ遮蔽パターンの水平線条のエレメント長をチューニングにより調整することにより、ルーフアンテナのFM放送波の受信時の受信利得を調整可能とすることができる。すなわち、前記ノイズ遮蔽パターンの水平線条は、中心位置から左右に300〜500mmの長さとすると、ルーフアンテナの受信に悪影響を与えず好ましい。
【0025】
前記水平線条の長さを300mmよりも短くすると、ノイズ遮蔽パターンの左右に余白部が存在し、該余白部を経由してノイズがルーフアンテナに伝達され、ノイズ遮蔽効果が十分ではない。
【0026】
尚、前記ルーフアンテナ(RMA)は、76〜92MHzの国内FMラジオ帯、88〜108MHz帯の国外FMラジオ帯のいずれでも良いが、例えば、周波数周波数が88〜108MHz帯の北米地区向けのFMラジオ放送波受信用として、使用されるものである。
【0027】
ノイズ遮蔽パターンの水平線条、および垂直線条は、0.5〜1.0mm程度の線幅の導電性のセラミックペーストをスクリーン印刷によって印刷後、加熱炉内で焼付したものであり、デフォッガのバスバーや加熱線条に同じくセラミックペーストの印刷、焼付けによって配設され、接続されたものであり、外部に接続する等の端子はない。
【0028】
尚、前記電装部品とは、ワイパー装置、エンジン、電源電圧昇圧機、各種駆動モーターなどの高周波ノイズを発生する装置である。
【実施例】
【0029】
[実施例1]
図8に示したようなルーフアンテナを有する自動車の後部窓ガラスのデフォッガの上部余白部に、図1に示したようなノイズ遮蔽パターンを設けた。
【0030】
該ノイズ遮蔽パターンは、後部窓ガラスの上部余白部に5本の水平線条と3本の垂直線条を互いに交差するように設けたものであり、最下線の水平線条の中心とデフォッガの水平加熱線条の最上線の中心とを接続線条で接続するとともに、ノイズ遮蔽パターンの最下線の水平線条の左右両端位置と、デフォッガの両バスバーとを垂直に延ばした接続線条で接続した。
【0031】
前記ノイズ遮蔽パターンの水平線条の各長さは、上辺側より、400mm、530mm、535mm、540mm、545mmであり、第1の水平線条からデフォッガの最上線までの隣接する各水平線条間の間隔は、それぞれ38mm、30mm、35mm、35mm、30mmである。
【0032】
また、3本の垂直線条の1本は、5本の水平線条を等分した各中心を結ぶ中心線の位置に設け、残る2本の垂直線条は、中心線から左右に100mm離れた位置で第1番目の水平線条から第5番目の水平線条まで接続した。
【0033】
ノイズ遮蔽パターンとデフォッガとを接続する3本の接続線条の、中心線の位置に設けた前記垂直線をデフォッガの最上線まで延長したものであり、残りの接続線は5本目の水平線の両端とバスバーとを接続したものである。
【0034】
このような寸法の前記ノイズ遮蔽パターン、およびデフォッガを導電性銀ペーストにより線幅約0.7mmでプリントし、焼成して形成した後部窓ガラスを自動車の後部窓に装着し、さらに両側のバスバー3、3には直流電源回路を接続した。
【0035】
このようなノイズ遮蔽パターンをデフォッガに接続した窓ガラスを自動車の後部窓に装着するとともに、ルーフアンテナで北米向けの88〜108MHzのFMラジオ放送波受信帯の水平偏波を測定したところ、当該周波数帯域の平均利得が−6.4dBとなり、ルーフアンテナが受信したノイズレベルは、表1の比較例1に示したデフォッガの上部余白部に何も設けていない場合のノイズレベルに較べて、7.9dB低下するという大幅な改善がみられ、当該周波数帯域において局所的に大きなディップもなく、良好な周波数特性が得られた。
【0036】
また、デフォッガに通電加熱時においても、晴れ性能は充分実用レベルにあり、問題は無かった。
【0037】
[実施例2]
図2に示したようなノイズ遮蔽パターンは、前記実施例1と比較して、5本の水平線条の長さ、間隔は同一であり、これに1本の垂直線条を前記水平線条の中心を結んだ位置で互いに交差するように設けたものであり、ノイズ遮蔽パターンとデフォッガとの接続は実施例1と同一で、3本の接続線条で接続したものである。
【0038】
このような寸法の前記ノイズ遮蔽パターン、およびデフォッガを導電性銀ペーストにより線幅約0.7mmでプリントし、焼成して形成した後部窓ガラスを自動車の後部窓に装着し、さらに両側のバスバー3、3には直流電源回路を接続した。
【0039】
このようなノイズ遮蔽パターンをデフォッガに接続した窓ガラスを自動車の後部窓に装着するとともに、ルーフアンテナで北米向けの88〜108MHzのFMラジオ放送波受信帯の水平偏波を測定したところ、当該周波数帯域の平均利得が−6.4dBとなり、ルーフアンテナが受信したノイズレベルは、表1の比較例1に示したデフォッガの上部余白部に何も設けていない場合のノイズレベルに較べて、7.4dB低下するという大幅な改善がみられ、当該周波数帯域において局所的に大きなディップもなく、良好な周波数特性が得られた。
【0040】
また、デフォッガに通電加熱時においても、晴れ性能は充分実用レベルにあり、問題は無かった。
【0041】
[比較例1]
図3に示す比較例1は、後部窓ガラスのデフォッガの上部余白部にノイズ遮蔽パターンを設けていない状態である
このノイズ遮蔽パターンを設けていない窓ガラス板を自動車の後部窓に装着するとともに、ルーフアンテナで北米向けの88〜108MHzのFMラジオ放送波受信帯の水平偏波を測定したところ、当該周波数帯域において局所的に大きなディップはなく、平均利得も−6.7dBであり、デフォッガに通電加熱時の晴れ性能は充分実用レベルにあり、アンテナ受信性能や晴れ性能には特に問題は無かったが、ルーフアンテナが受信したノイズレベルは高く、ノイズ不良となって実用レベルには無かった。
【0042】
[比較例2]
図4に示す比較例2は、後部窓ガラスのデフォッガの上部余白部全体にノイズ遮蔽用として厚さ40ミクロンの銅箔を貼り付け、銅箔の下部コーナー部よりデフォッガの片方のバスバーに接続線で接続したものである。
【0043】
この余白部に銅箔を貼り付けた窓ガラス板を自動車の後部窓に装着するとともに、ルーフアンテナで北米向けの88〜108MHzのFMラジオ放送波受信帯の水平偏波を測定したところ、デフォッガに通電加熱時の晴れ性能に与える影響はなく、当該周波数帯域の平均利得が−8.0dBであり、ルーフアンテナが受信したノイズレベルは表1の比較例1に示したデフォッガの上部余白部に何も設けていない場合のノイズレベルに較べて8.6dBと大幅に低下しノイズ不良も見られなかったが、当該周波数帯域において局所的にディップの発生が見られる点、運転席側から見て銅箔部の後方視界が確保できない等の問題があった。
【0044】
また、自動車の走行中に銅箔部によって外来電波や、電装部品が発する電磁波の反射波が発生するために、ルーフアンテナ(RMA)のアンテナ利得に悪影響を与えることが解った。
【0045】
[比較例3]
図5に示す比較例3は、実施例1のノイズ遮蔽パターンとデフォッガとの接続を、ノイズ遮蔽パターンの左右中心線上に設けた1本の接続線だけで接続したものである。
【0046】
このようなノイズ遮蔽パターンをデフォッガに接続した窓ガラスを自動車の後部窓に装着するとともに、ルーフアンテナで北米向けの88〜108MHzのFMラジオ放送波受信帯の水平偏波を測定したところ、当該周波数帯域の平均利得が−6.5dBとなり、また、当該周波数帯域において局所的に大きなディップもなく、良好な周波数特性が得られ、さらに、デフォッガに通電加熱時においても、晴れ性能は充分満足できる状態ではあったが、ルーフアンテナが受信したノイズレベルは高く、表1の比較例1に示したデフォッガの上部余白部に何も設けていない場合のノイズレベルに較べて5.1dBとやや低下し改善したが、実用レベルにないことがわかった。
【0047】
[比較例4]
図6に示す比較例4は、実施例1のノイズ遮蔽パターンの3本の垂直線条の配設位置が異なる以外は、実施例1と同一であり、ノイズ遮蔽パターンとデフォッガとの接続も実施例1と同一である。
【0048】
前記3本の垂直線条のうちの中央の1本は実施例1と同一位置にあり、中央の1本の垂直線条を挟むように左右に設けた垂直線条は、各水平線条の両端をほぼ直線的に結んだ線条である。
【0049】
このようなノイズ遮蔽パターンをデフォッガに接続した窓ガラスを自動車の後部窓に装着するとともに、ルーフアンテナで北米向けの88〜108MHzのFMラジオ放送波受信帯の水平偏波を測定したところ、当該周波数帯域の平均利得が−6.3dBとなり、ルーフアンテナが受信したノイズレベルも表1の比較例1に示したデフォッガの上部余白部に何も設けていない場合のノイズレベルに較べて8dBの改善がみられ、また、当該周波数帯域において局所的に大きなディップもなく、良好な周波数特性が得られた。
【0050】
しかしながら、デフォッガに通電加熱すると、ノイズ遮蔽パターンのすべての水平線条の全長にわたって電流が流れ込むため、本来のデフォッガ領域部分の導電加熱線条に流れる電流がノイズ遮蔽パターン側にとられて減少し、デフォッガの晴れ性能は充分満足できる状態とならず、実用レベルにないことカ゛わかった。
【0051】
[比較例5]
図7に示す比較例5は、実施例1のノイズ遮蔽パターンの上辺側の4本の水平線条の長さを中心位置から左右にそれぞれ100mmとした以外は、実施例1と同一であり、ノイズ遮蔽パターンとデフォッガとの接続も実施例1と同一である。
【0052】
このようなノイズ遮蔽パターンをデフォッガに接続した窓ガラスを自動車の後部窓に装着し、デフォッガに通電加熱すると、ノイズ遮蔽パターンにも電流が分散して流れるが、ノイズ遮蔽パターンの線条のうち、電流が流れる線条で囲まれる面積が比較的小さいので、本来のデフォッガ領域部分の導電加熱線条に流れる電流が充分であり、晴れ性能は満足できる状態である。
【0053】
しかしながら、ルーフアンテナで北米向けの88〜108MHzのFMラジオ放送波受信帯の水平偏波を測定したところ、当該周波数帯域の平均利得が−7.3dBとなり、ルーフアンテナが受信したノイズレベルも、表1の比較例1に示したデフォッガの上部余白部に何も設けていない場合のノイズレベルに較べて3.5dBとやや低下して改善したものの、依然ノイズレベルは大きく、当該周波数帯域において局所的に大きなディップの発生もあり、ノイズ不良とルーフアンテナの周波数特性についても満足できるものではなかった。
【0054】
以上の2つの実施例、および5つの比較例について、そのノイズレベル、ルーフアンテナの周波数特性、デフォッガの晴れ性能について以下の通りである。
【0055】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0056】
ルーフの上部後方にルーフアンテナを有する自動車において、後部窓ガラスのデフォッガ(防曇用加熱線条)の上部余白部にノイズ遮蔽パターンを設けたので、該ノイズ遮蔽パターンがルーフアンテナに悪影響を及ぼすことなく、またノイズのないFMラジオ放送波の受信に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施例1を示す後部窓ガラスの正面図。
【図2】本発明の実施例2を示す後部窓ガラスの正面図。
【図3】比較例1を示す後部窓ガラスの正面図。
【図4】比較例2を示す後部窓ガラスの正面図。
【図5】比較例3を示す後部窓ガラスの正面図。
【図6】比較例4を示す後部窓ガラスの正面図。
【図7】比較例5を示す後部窓ガラスの正面図。
【図8】本発明のノイズ遮蔽パターンとルーフアンテナを設けた自動車の斜視図。
【符号の説明】
【0058】
1 後部窓ガラス
2 デフォッガ(防曇用加熱線条)
3 バスバー
4 ルーフアンテナ(RMA)
5 ノイズ遮蔽パターン
5' 銅箔
6 水平線条
7 垂直線条
8 接続線条

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のルーフ上部後方に棒状のルーフアンテナを有し、後部窓ガラスに複数本の水平加熱線条とその両端をバスバーで接続したデフォッガを配設した自動車用窓ガラスにおいて、
該後部窓ガラスの近傍位置にある電装部品の作動により発生する電磁波がノイズとしてルーフアンテナに与える環境下で、デフォッガの上部余白部に少なくとも3本の水平線条と少なくとも1本の垂直線条とを互いに交差させて左右対称形状とした線条パターンをノイズ遮蔽パターンとし、該ノイズ遮蔽パターンとデフォッガとを中央部とその左右の対称となる位置に少なくとも3本の接続線条で接続して、前記電装部品による電磁波のノイズを前記ノイズ遮蔽パターンで遮蔽して、前記棒状のルーフアンテナにノイズを伝達させないようにしたことを特徴とする自動車用窓ガラス。
【請求項2】
前記ノイズ遮蔽パターンの水平線条のエレメント長を300〜500mmとし、垂直線条の間隔を100mm以下としたことを特徴とする請求項1記載の自動車用窓ガラス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−120253(P2008−120253A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−306533(P2006−306533)
【出願日】平成18年11月13日(2006.11.13)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】