説明

自動車

【課題】フェンダパネルのエンジンルーム側の面を覆うフェンダサイドカバーを有し、該フェンダサイドカバーは、閉鎖されたフードパネルによって覆われるフェンダパネル上部のフェンダフランジに着脱可能に取り付けられている自動車において、フードパネルを開いたときの自動車の外観を向上させる。
【解決手段】フェンダサイドカバー6の上部にクリップ10が一体に形成され、そのクリップ10がフェンダフランジ4に形成された取付孔9に着脱可能に嵌合している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェンダパネルのエンジンルーム側の面を覆うフェンダサイドカバーを有し、該フェンダサイドカバーは、閉鎖されたフードパネルによって覆われるフェンダパネル上部のフェンダフランジに着脱可能に取り付けられている自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車は、通常、エンジンルームの側部を区画するフェンダパネルを有している(特許文献1の図1参照)。その際、車体に開閉可能に支持されたフードパネルを開いてエンジンルームを外部に露出させたとき、フェンダパネルのエンジンルーム側の面が剥き出しになっていると、自動車の見栄えが低下する。そこで、従来より、フェンダパネルのエンジンルーム側の面をフェンダサイドカバーによって覆い、その見栄え低下を防止している。
【0003】
従来のフェンダサイドカバーは、閉鎖されたフードパネルによって覆われるフェンダパネル上部のフェンダフランジに、その上方から差し込まれたクリップによって固定されている。このようにフェンダサイドカバーによりフェンダパネルのエンジンルーム側の面を覆い隠すことによって、フードパネルを開いたときの自動車の見栄えを向上させることができる。
【0004】
ところが、従来のフェンダサイドカバーは、上方から差し込まれたクリップによってフェンダフランジに固定されていたので、フードパネルを開くと、そのクリップが丸見えとなり、そのクリップによって自動車の外観が低下する欠点を免れない。しかも、フェンダサイドカバーをフェンダフランジに取り付けるためにクリップが必要であるため、自動車の部品点数が増大する欠点も免れない。また、フェンダサイドカバーをフェンダフランジから外すには、工具を用いてクリップを取り外す必要があるため、その作業に手間がかかる欠点もある。
【0005】
【特許文献1】特開2005−145303号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上述した従来の欠点を除去した冒頭に記載した形式の自動車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、冒頭に記載した形式の自動車において、フェンダサイドカバーの上部にクリップが一体に形成され、該クリップがフェンダフランジに形成された取付孔に着脱可能に嵌合していることを特徴とする。
【0008】
また、上記自動車において、フェンダサイドカバーの折り曲げ部に、該折り曲げ部を折れやすくするための切欠が形成されていると有利である
【0009】
さらに、上記自動車において、フェンダサイドカバーの前端部とフェンダフランジの上面により区画された前部開口を塞ぐ蓋部材を有し、該蓋部材はフェンダサイドカバーの前端部にインテグラルヒンジを介して一体に連結されていると有利である
【0010】
また、上記自動車において、蓋部材の先端部に、指を掛ける切欠が形成されていると有利である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、フードパネルを開いたとき、外部からクリップが見えないため、自動車の見栄えをより一層向上させることができる。しかも、自動車の部品点数を減少させることができ、さらに、フェンダサイドカバーを容易にフェンダフランジから取り外すこともできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態例を図面に従って説明し、併せて前述の従来の欠点を図面に即してより具体的に明らかにする。
【0013】
図1は自動車の外観斜視図であり、この図における符号Frは自動車の前進方向を示し、符号Wは車幅方向を示している。本明細書における「前」又は「後」なる文言は、自動車の前進方向を基準とした前後を意味する。
【0014】
図1に示すように、車体1には、エンジンルームの上部を覆うフードパネル2が回動開閉可能に支持され、エンジンルームの車幅方向各側部は、左右のフェンダパネル3,103によって区画されている。図2は図1に示したフードパネル2を取り外してエンジンルームの内部を示した概略斜視図であり、図3はフードパネル2が図1に示したようにエンジンルームの上部を覆った状態で、図2のIII−III線に沿って切断した拡大断面図である。
【0015】
図2及び図3に示すように、フェンダパネル3は、閉鎖されたフードパネル2によって覆われるフェンダパネル上部のフェンダフランジ4を有しており、フェンダパネル3のエンジンルーム側の面5は、フェンダサイドカバー6によって覆われている。フェンダサイドカバー6は、その上部がフェンダフランジ4に沿って延び、しかもフェンダパネル3のフードパネル側の面5を覆い隠すように下方に延びている。かかるフェンダサイドカバー6の上部と下部は、フェンダフランジ4と、車体の骨格構造体を構成するエプロンアンダー7に後述するように固定されている。
【0016】
図4はフェンダサイドカバー6を取り外した状態を示す、図2と同様な斜視図である。この図4から判るように、フェンダサイドカバー6を設けないと、フードパネル2を開いたとき、フェンダパネル3のエンジンルーム側の面5が丸見えとなり、その見栄えが低下する。これに対し、図2及び図3に示したように、フェンダサイドカバー6を設けることによって、フェンダパネル3のエンジンルーム側の面5を覆い隠すことができるので、フードパネル2を開いたときの自動車の外観を向上させることができる。
【0017】
上述のように、本例の自動車は、フェンダパネル3のエンジンルーム側の面5を覆うフェンダサイドカバー6を有し、そのフェンダサイドカバー6は、閉鎖されたフードパネル2によって覆われるフェンダパネル上部のフェンダフランジ4に、後述するように着脱可能に取り付けられている。
【0018】
ここで、図9は従来のフェンダサイドカバー6Aがフェンダフランジ4Aに固定された状態を示す、図3と同様な断面図である。ここに示したフェンダサイドカバー6Aとフェンダフランジ4Aには、互いに整合する取付孔8A,9Aが形成され、これらの取付孔8A,9Aに、上方からクリップ10Aが差し込まれ、これによってフェンダサイドカバー6Aがフェンダパネル3Aのフェンダフランジ4Aに着脱可能に固定されている。フェンダサイドカバー6Aは、通常、複数のクリップ10Aによってフェンダフランジ4Aに固定される。かかる構成によると、先に説明したように、フードパネル2Aを開いたとき、クリップ10Aの頭部が丸見えとなり、その外観が低下する。しかも、フェンダサイドカバー6Aの取り付けのためにクリップ10Aを必要とするため、自動車の部品点数が増大する。さらに、フェンダサイドカバー6Aを外すには、先ずクリップ10Aを工具によって取付孔8A,9Aから取り外す必要があるため、その作業が煩雑なものとならざるを得ない。
【0019】
上述した欠点を除去するため、本例の自動車においては、図3に示したように、樹脂によって成形されたフェンダサイドカバー6の上部に、クリップ10が一体に形成されている。このクリップ10はフェンダサイドカバー6の成形時に同時に成形される。かかるクリップ10がフェンダフランジ4に形成された取付孔9(図4も参照)に着脱可能に嵌合している。図に一例として示したクリップ10は、図5にも示すように一対の爪部11と、これらの爪部11をフェンダサイドカバー6に一体に連結するステー12とから成り、各爪部11の先端に係合段部13が形成されている。また、クリップ10の近傍のフェンダサイドカバー部分には、一対の突部14が突設されている。
【0020】
フェンダサイドカバー6をフェンダパネル3に取り付けるには、フェンダサイドカバー6の上部をフェンダフランジ4の上方から下降させて、クリップ10を取付孔9に嵌合すればよい。その際、図3に示すように、一対の突部14の下面がフェンダフランジ4の上面に当り、このときクリップ10の各爪部11に形成された各係合段部13が取付孔9の縁部に係合して、クリップ10が取付孔9に着脱可能に嵌合する。このように、一対の突部14は、爪部11の先端部が取付孔9に完全に入り込んでしまうことを阻止するストッパとしての用をなす。
【0021】
図4に示すように、フェンダフランジ4の後部にも取付孔15が形成され、この取付孔15にも上述したクリップ10と同様にフェンダサイドカバー6に一体に形成されたクリップ(図示せず)が、上述したところと全く同様にして嵌着される。このように、本例の自動車は、複数のクリップによってフェンダサイドカバー6がフェンダパネル3に取り付けられるように構成されているが、1つのクリップだけでフェンダサイドカバー6をフェンダパネル3に取り付けることも可能である。
【0022】
また、フェンダサイドカバー6の下部も、これに一体に形成された図示していないクリップによってエプロンアンダー7に形成された取付孔(図示せず)に、上述したところと同じ態様で着脱可能に取り付けられている。
【0023】
上述のように、本例の自動車においては、フェンダサイドカバー6のフェンダフランジ4を向いた側の面に突設されたクリップ10によって、そのフェンダサイドカバー6がフェンダパネル4に取り付けられているので、フードパネル2を開いたとき、そのクリップ10を外部から目視することはできない。このため、フードパネル2の開放時の自動車の見栄えを向上させることができる。
【0024】
しかも、クリップ10はフェンダサイドカバー6に一体に成形されているので、自動車の部品点数を減少させることができる。
【0025】
さらに、フェンダサイドカバー6をフェンダパネル3のフェンダフランジ4から外すときは、単に、フェンダサイドカバー6を上方に持ち上げれば、クリップ10が取付孔9から外れるので、楽に作業を行うことができる。フェンダサイドカバー6を上方に持ち上げたとき、フェンダサイドカバー6の下部のクリップもエプロンアンダー7に形成された取付孔から外される。
【0026】
その際、特に、本例の自動車においては、取付孔9に嵌合したクリップ10の両爪部11に形成された係合段部13が取付孔9の縁部に係合して、クリップ10が取付孔9に嵌合しているので、フェンダサイドカバー6を上方に持ち上げるだけで、楽にクリップ10を取付孔9から外すことができる。これは、フェンダサイドカバー6の下部に一体に形成されたクリップをエプロンアンダー7に形成された取付孔から外すときも同様である。このように、フェンダサイドカバー6を上方に持ち上げることによって、そのフェンダサイドカバー6をフェンダパネル3とエプロンアンダー7から容易に取り外すことができるのである。
【0027】
ところで、図3に示したように、本例のフェンダサイドカバー6は、符号16,17で示した個所で折り曲げられている。しかも、これらの折り曲げ部16,17には、その折り曲げ部16,17を折れやすくするための切欠18,19が形成されている。このため、自動車に対して、図3に矢印Fで示した衝撃力が加えられたとき、図3に仮想線で示すように、フェンダサイドカバー6はその折り曲げ部16,17において比較的容易に折れ、これによって衝撃エネルギーを効率よく吸収して、その衝撃を弱めることができる。なお、図2にはフェンダサイドカバー6の折り曲げ部16,17と切欠の図示は省略してある。
【0028】
図6は、図2のVI−VI線拡大断面図であるが、これらの図に示すように、フェンダサイドカバー6の前端部20とフェンダフランジ4の上面によって前部開口21が区画されている。この前部開口21が図2及び図6に示すように開放されたままとなっていると、フードパネル2を開放したときの見栄えが低下する。特に図示した自動車においては、フェンダフランジ4がボルト23(図4も参照)によって、他の車体部材23に固定されているので、フードパネル2を開くと、前部開口21からボルト22が見えてしまい、その見栄えがますます低下する。
【0029】
そこで、図7及び図8に示すように、前部開口21を塞ぐ蓋部材24を設け、前部開口21の内部が目視されないように構成することが好ましい。その際、図7及び図8に示した蓋部材24は、フェンダサイドカバー6の前端部にインテグラルヒンジ25を介して一体に連結されている。蓋部材24も、樹脂によってフェンダサイドカバー6と同時に一体成形されるのである。その成形時には、蓋部材24は図7に仮想線で示した状態となっているが、フェンダサイドカバー6を前述のように車体に取り付けた後、蓋部材24を図7に矢印Aで示したように、インテグラルヒンジ25の個所で曲折し、その蓋部材24の先端部をフェンダフランジ4の上面に摩擦係合させる。これにより、前部開口21を蓋部材24によって塞ぐことができる。また、フェンダサイドカバー6の着脱時には、蓋部材24を図7に破線で示すように上方に立ち上げておくと、この蓋部材24を指で掴むことができるので、楽にフェンダサイドカバー6を着脱することができる。このように蓋部材24をつまみとして用いることもできるのである。
【0030】
さらに、図8に示すように、蓋部材24の先端部に指を掛ける切欠26が形成されている。このため、蓋部材24を図7に矢印Aで示したように回動させるとき、或いは逆に蓋部材24を矢印Aと反対の方向に回動させるとき、蓋部材24の切欠26に指を掛けて、楽に作業を行うことができる。
【0031】
以上、一方のフェンダパネル3のエンジンルーム側の面5を覆うフェンダサイドカバー6について説明したが、他方のフェンダパネル103のエンジンルーム側の面を覆うフェンダサイドカバーも、上述したフェンダサイドカバー6と全く同様に構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】自動車の外観斜視図である。
【図2】図1に示したフードパネルを取り外して、エンジンルーム内を示した斜視図である。
【図3】フードパネルを図1に示したように閉鎖した状態で、図2のIII−III線に沿って切断した断面図である。
【図4】フェンダサイドカバーを取り外した状態を示す、図2と同様な斜視図である。
【図5】クリップと突部を示す部分断面斜視図である。
【図6】図2のVI−VI線拡大断面図である。
【図7】蓋部材を設けた例を示す、図6と同様な断面図である。
【図8】蓋部材によって前部開口を閉鎖した状態を示す斜視図である。
【図9】従来のフェンダサイドカバーを示す、図3と同様な断面図である。
【符号の説明】
【0033】
2 フードパネル
3 フェンダパネル
4 フェンダフランジ
5 面
6 フェンダサイドカバー
9 取付孔
10 クリップ
16,17 折り曲げ部
18,19 切欠
20 前端部
21 前部開口
24 蓋部材
25 インテグラルヒンジ
26 切欠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェンダパネルのエンジンルーム側の面を覆うフェンダサイドカバーを有し、該フェンダサイドカバーは、閉鎖されたフードパネルによって覆われるフェンダパネル上部のフェンダフランジに着脱可能に取り付けられている自動車において、前記フェンダサイドカバーの上部にクリップが一体に形成され、該クリップが前記フェンダフランジに形成された取付孔に着脱可能に嵌合していることを特徴とする自動車。
【請求項2】
前記フェンダサイドカバーの折り曲げ部に、該折り曲げ部を折れやすくするための切欠が形成されている請求項1に記載の自動車。
【請求項3】
前記フェンダサイドカバーの前端部と前記フェンダフランジの上面により区画された前部開口を塞ぐ蓋部材を有し、該蓋部材はフェンダサイドカバーの前端部にインテグラルヒンジを介して一体に連結されている請求項1又は2に記載の自動車。
【請求項4】
前記蓋部材の先端部に、指を掛ける切欠が形成されている請求項3に記載の自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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