説明

自動食器洗い機用の洗剤ブラスト材

【課題】食器類の洗浄において、投射材や洗剤の収容スペースの削減と、使用するブラスト材を削減することで、材料費の削減と洗剤による効果を高めたブラスト洗浄をできる洗浄装置の提供を目的としている。
【解決手段】食器洗い機用の粒状の洗剤であって、前記洗剤は、被洗浄物を化学的に洗浄するための洗浄剤と、前記洗浄剤の表面を覆う外面コーティング材とを有しており、前記コーティング材は、所定条件で溶解するとともに、被洗浄物に付着した固形汚れを剥離するブラスト洗浄に用いられるブラスト材としたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚れた食器や調理器具を洗浄する食器洗浄機の洗浄、洗剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、食器洗浄機は、膨潤や汚れの拡散といった水自体の洗浄力に加え、噴射水による機械力、加える熱量、さらに洗剤成分による化学力を複合させた洗浄を行っている。
特に、機械力は頑固な米粒や固形汚れの剥離、熱量は米粒の剥離を促進するでんぷんの糊化や油脂の溶解に効果がある。また、化学力は、酵素によるでんぷんやタンパク質の分解、アルカリ成分による汚れの分散、分離、分解効果、漂白剤による汚れの酸化もしくは還元による分解効果がある。
【0003】
具体的に、一般的な食器洗浄機は、洗剤を溶かした水またはお湯を、ポンプにより加圧して食器や調理器具に噴射することにより汚れを洗浄する方式を採用しており、洗浄水を循環している間に水温をヒーターなどで上昇させることで熱量を加えている。ところが、前記従来の食器洗浄機は、水またはお湯をポンプで加圧して、食器や調理器具に噴射するだけの衝突エネルギーでは、米粒などのこびり付いた汚れの剥離に長時間を要したり、米の糊化を促すための高温加熱を余技なくされていた。それを解決するため、粒状物が被洗浄物に衝突する際に発生する衝撃エネルギーを利用して汚れの剥離力を高めるブラスト材を食器類に投射する手段がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図11は、上記特許文献1に記載された洗浄装置の断面図であり、洗浄槽34に手、または、食器類35が入れられたことを検知して、加圧装置36が駆動され、外部から吸引した空気を加圧して貯留装置39に溜められた粒子38が配管39を介してノズル40から食器類35に吹き付けられ、油等の汚れを剥離、除去し、受け皿41に溜める構成になっている。粒子38は氷のように時間とともに自己溶融する物質でもよく、その場合は、溶融した状態の液体を排出する排出手段が設けられる。
【0005】
また、食器洗い機用洗剤(ADD)については、多くの場合、酸素系漂白剤を含んでいるため、酵素成分の酸化をもたらし、酵素活性および洗剤の全体的な性能を低下させることが知られている。そのため、漂白剤もしくは酵素を所定条件で溶解する材料でコーティングして保存時の酵素劣化を防ぐとともに、各成分における洗浄水中への溶解のタイミングをずらすことで、洗浄水中の酵素の酸化を防ぎ、有効に汚れに作用するような工夫がなされている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
図12は、上記特許文献2に記載された、洗剤組成物、特に自動食器洗い機用の洗剤である複合粒子の断面図である。洗剤粒子43は、バリア層44がその上にコーティングされた酵素含有コア物質45を含んでいる。酵素コア物質45自体は、担体層46の上にコーティングされた酵素層47を含んでいる。バリア層44は、主に水溶性カルボキシレートからなり、酵素層47を洗剤粒子43の外部に存在する漂白剤などの他成分からの酸化劣化や退色、および臭いの発生から保護することを目的としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−139796号公報
【特許文献2】特表2002−502461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に記載のものでは、洗浄後の食器および庫内の壁面やくぼみにブラスト材が付着したまま残る可能性があること、また、ブラスト洗浄では落としきれない汚れを洗浄するために水や洗剤を投入する場合、循環ポンプや配管経路にブラスト材が詰まって故障の原因になるという課題があった。詰りを解消するため、水を循環させない、もしくは、ブラスト材を自己溶融する材質にするという手段があるが、前者では水道代がかかり、後者では、洗浄水中に溶解した大量のブラスト材が、洗剤成分を消費し、汚れに対する洗浄効果を阻害するという課題がある。
【0009】
また、大量のブラスト材が自己溶融する場合、もしくは磨耗や破砕によりフィルターを通過して洗浄槽から排出される場合、生分解性のものであっても、水質の富栄養化につながり、処理コストやエネルギーを消耗して環境負荷の増大につながるという課題がある。
【0010】
さらに、ブラスト材と洗剤を各々使用すると、製造費とランニングコストが高くなる点、ブラストもしくは洗剤の貯留スペースが必要になる点が課題である。
【0011】
また、上記特許文献2に記載のものでは、酵素成分が溶解する時点で、大方の汚れを剥離していないと、剥離では落としにくい、食器と汚れの薄い付着層に酵素を効率よく作用させることができずに洗浄工程が終了し、水の入れ替えおよび、それに伴う酵素の排出が行われ、最終的に上記の薄い付着層が残ってしまうという課題があった。
【0012】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、剥離力と化学力による洗浄効果を相乗的に高めるとともに、ブラスト材による庫内残りや詰り、環境負荷、洗剤成分の阻害などを解消するブラスト材の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、前記従来の課題を解決するために、洗剤自体を所定条件で溶解するコーティング材で覆ってブラスト材としたものである。
【0014】
これにより、ブラスト材としての剥離洗浄で早期に大方の汚れを剥離するとともに、剥離では落としきれない食器と汚れの薄い付着層を初期工程中に表層に出すことができる。それによって、続いて、ブラスト材が溶解して洗浄水中に溶出した酵素などによる化学洗浄を上記薄い付着層にダイレクトに作用させることができ、最終的に残りやすい薄い付着層を洗浄することが可能となる。
【0015】
また、ブラスト材自体を溶解する洗剤にすることで、食器や庫内へのブラスト材の残り、循環経路へのブラスト材の詰りによる故障を解決できる。また、ブラスト材の全体積に溶解成分が使われていないため、ブラスト材から溶解した成分による洗浄阻害、および、排水に伴う環境負荷を大幅に低減することができる。さらに、ブラスト材と洗剤を同一にしたことで、製造費やランニングコスト、貯留スペースを削減することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の食器洗い機用のブラスト材は、剥離力と化学力による洗浄効果を相乗的に高めるとともに、ブラスト材による庫内残りや詰り、環境負荷、洗剤成分の阻害などを解消するブラスト材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(a)ブラスト材による汚れへの衝撃が原因で発生する剥離効果の概要図、(b)ブラスト材による汚れをこすることで発生する剥離効果の概要図
【図2】本発明の実施の形態1の粒状の洗剤の断面図
【図3】本発明の実施の形態1の食器洗浄機用の洗剤を用いた食器洗い乾燥機の平面図
【図4】本発明の実施の形態1の洗浄プロセスを説明した概略図
【図5】本発明の実施の形態2の粒状の洗剤の断面図
【図6】本発明の実施の形態2の粒状の洗剤を用いた食器洗い乾燥機の貯留部近傍の磁気手段が設けられた経路の平面図
【図7】本発明の実施の形態3の粒状の洗剤1の断面図
【図8】本発明の実施の形態3の粒状の洗剤1を用いる食器洗い乾燥機の洗浄プロセスの概要図
【図9】本発明の実施の形態3の粒状の洗剤1の断面図
【図10】本発明の実施の形態3の粒状の洗剤1を用いる食器洗い乾燥機の洗浄プロセスの概要図
【図11】従来の粒子噴射を利用した食器洗浄機の断面図
【図12】従来の食器洗い乾燥機用洗剤の断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
第1の発明は、食器洗い機用の粒状の洗剤であって、前記洗剤は、被洗浄物を化学的に洗浄するための洗浄剤と、前記洗浄剤の表面を覆う外面コーティング材とを有しており、前記コーティング材は、所定条件で溶解するとともに、被洗浄物に付着した固形汚れを剥離するブラスト洗浄に用いられるブラスト材としたことにより、洗浄初期に固形汚れの剥離が行われることで、剥離力では落としきれない、食器と汚れの薄い付着層を初期工程中に表層に出すことができるため、ブラスト材が溶解して洗浄水中に溶出した酵素などによる化学洗浄を上記薄い付着層にダイレクトに作用させることができ、最終的に残りやすい薄い付着層を洗浄することができる。また、食器や庫内へのブラスト材の残り、循環経路へのブラスト材の詰りによる故障を解決でき、ブラスト材から溶解した成分による洗浄阻害、および、排水に伴う環境負荷を大幅に低減することができる。さらに、ブラスト材と洗剤を同一にしたことで、製造費やランニングコスト、貯留スペースを削減することができる。
【0019】
第2の発明は、前記洗剤は、水に接して所定時間が経過した後に溶解するようにしたことにより、洗浄水の加熱やpH調整などの機能がない簡単な洗浄系であっても、ブラスト洗浄と化学洗浄の双方を効率よく行うことができる。
【0020】
第3の発明は、前記洗剤は、所定の温度の水で溶解するようにしたことにより、加熱手段を備えた食器洗い機において、汚れの程度によって、洗浄水の温度設定を調節することで、効率のよいブラスト洗浄と化学洗浄を行うことができ、汚れに合わせた最適運転と高い洗浄仕上りを得ることが出来る。
【0021】
第4の発明は、前記洗剤は、pHが6以上8以下の水に溶解するようにしたことにより、すすぎ工程のpHが下がった時点で溶解した親水性のリンス成分が食器に付着することで、乾燥効率を高めたり、最終すすぎ水の温度を低くするなど、電力を削減することができる。
【0022】
第5の発明は、前記洗剤は、外形が略球形であるようにしたことにより、被洗浄物への衝突エネルギーを弱めることができ、食器の傷みを防止することができる。
【0023】
第6の発明は、前記洗剤は、前記コーティング材の内部に磁性体を内包したことにより、電磁石などの磁気発生手段を備えた食器洗い機において、磁気の調節で前記粒状の洗剤を回収することができるので、排水時に機外への排出を防止することができる。また、排
水時に前記粒状の洗剤が機外に排出されずに洗浄槽内に残るので、洗浄水中の汚れ濃度が所定レベルに低下するまで粒状の洗剤を排出せずに水を入れ替えすることができ、洗剤溶解時の洗剤効果を高めることができる。
【0024】
第7の発明は、前記洗剤は、洗浄剤である酵素の内側に、前記外面コーティング材とは異なる条件で溶解する内部コーティング材を有し、前記内部コーティング材の内側に、前記洗浄剤とは異なる成分である漂白剤を有していることにより、1種類の粒状の洗剤で、溶出する成分の溶出のタイミングを調節することができ、運転時における洗剤成分の割合を常に一定に保つことができる。また、先に酵素による洗浄を行い、後に漂白剤による洗浄を行うことで、漂白剤による酵素の酸化を防ぎ、効率よく、酵素を汚れに作用させることができる。
【0025】
第8の発明は、前記洗剤は、前記洗浄剤の内側に、前記外面コーティング材とは異なる条件で溶解する内部コーティング材を有し、前記内部コーティング材の内側に、前記洗浄剤とは異なる成分であるリンス剤を有していることにより、1つの洗剤で、剥離を目的としたブラスト洗浄、化学洗浄、乾燥補助を目的としたリンス効果の3つを行うことが可能となり、洗浄剤およびリンス剤を別々に投入する手間を省くことができる。
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0027】
(実施の形態1)
図2は本発明の実施の形態1の粒状の洗剤の断面図、図3は前記洗剤を用いた食器洗い乾燥機の平面図、図4は、洗浄プロセスの概要図である。
【0028】
図2において、粒状の洗剤1は、所定条件で溶解するコーティング材2で外表面をコーティングされており、内部には、酵素や有機酸塩などの洗剤成分3が含まれている。粒状の洗剤1は、被洗浄物4に付着した頑固な米粒汚れなどの固形汚れを剥離し、かつ、食器を傷めない硬度を持つ。なお、洗剤成分はこの限りではない。
【0029】
図3において、洗浄槽5に、食品汚れなどが付着した食器などの被洗浄物4、および被洗浄物4がセットされる食器カゴ6が所定の箇所に設置されている。食器カゴ6の下には、被洗浄物4に向けて洗浄水を噴射する洗浄ノズル7が配置され、洗浄ノズル7は洗浄水を循環させる洗浄ポンプ8に連結されている。また、洗浄中に洗浄水が貯留する貯留部9には、粒状の洗剤1が通過できる径の孔が多数あいた残菜フィルター10と、洗浄水を加熱するヒーター11が設けられており、排水ポンプ12と排水経路13からなる排水手段14の入口には、粒状の洗剤1が通過できない径の孔が多数あいた多孔仕切板15が設置されている。
【0030】
図4は、横軸を運転時間、縦軸を洗浄水の温度および循環水中の洗剤濃度として、運転時間に伴う洗浄水の温度と循環水中の洗剤濃度の推移を示したものである。水温と洗剤濃度のプロットの上部には、各プロセス時に対応した食器洗浄の概略図を示している。
【0031】
以上のように構成された食器洗浄機について、以下その動作を説明する。被洗浄物4がセットされた洗浄槽5に給水手段15から水が供給され、貯留部9に貯留する。貯留部9には、被洗浄物4の汚れを剥離するのに適した素材、形状、硬度、大きさ等を持つブラスト材の粒状の洗剤1が所定量投入されている。この状態で、大きな汚れを剥離することを目的とした第1の洗浄工程17(以下、ブラスト洗浄)の第1洗浄が始まり、貯留部9に貯留している水と粒状の洗剤1が洗浄ポンプ8で加圧され、洗浄ノズル7から被洗浄物4に向けて噴射される。この際、噴射された水に混入した粒状の洗剤1が固形汚れ18に衝
突し、汚れの破砕と剥離が行われる。噴射された粒状の洗剤1は、水に乗って再び貯留部9に戻り、溶解することなく同じ動作が繰り返され、汚れの剥離が進む。運転時間が図4の時間(a)に達した時点で第1洗浄が終了し、汚れを含む洗浄水は、排水ポンプ12によって機外に排水される。
【0032】
次に、清浄な水が洗浄槽5に給水され、ブラスト洗浄17の第2洗浄が開始される。第2洗浄が開始すると、ヒーター9による貯留部9の水の加熱が開始される。貯留部9の水は加熱されながら、水温が所定の温度、この場合は38℃に達する図3の運転時間(b)まで、第1洗浄と同じ動作で繰り返し被洗浄物4に向けて噴射され、粒状の洗剤1によるブラスト洗浄17が行われる。運転時間(b)で水温が38℃に達すると、粒状の洗剤1のコーティング材2が溶解し、内部の洗剤成分3が洗浄水中に溶出して洗浄水中の洗剤濃度が急激に高くなる。この洗剤濃度が高くなった洗剤液による第2の洗浄工程19(以下、化学洗浄)が、図3の運転時間(c)に到達するまで繰り返し被洗浄物4に向けて噴射される。この際、被洗浄物4に付着していた固形汚れ18はブラスト洗浄17の第1洗浄および、第2洗浄で粒状の洗剤1が溶解するまでにほぼ剥離されており、被洗浄物4と汚れの界面に残った薄い汚れの層が残っている。この薄い汚れの層に対して、洗剤成分3が直接浸透し、例えば酵素やアルカリの分解効果で、汚れの化学洗浄が効率よく実施される。運転時間が図3の時間(c)に達した時点で化学洗浄19が終了し、洗剤成分3と汚れを含む洗浄水は、排水ポンプ12によって機外に排水される。その後、1回以上のすすぎ工程および乾燥補助を目的として所定の温度まですすぎ水を加温する最終すすぎ工程へと移行し、所定時間の乾燥が実施され、運転が終了する。
【0033】
なお、粒状の洗剤1のコーティング材2は温度ではなく、水に接して、所定時間経過した時点で溶解するものでもよい。また、温度に溶解する場合は、溶解する温度は38℃に限らず、何度でもよい。また、粒状の洗剤1が溶解するタイミングは1回である必要はなく、異なる温度で溶解する異なるコーティング材で同じ成分または異なる成分ごとにコーティングしてもよい。一例として、漂白剤で酸化される酵素の保護を目的として、別々の材料でコーティングし、さらに、溶解するタイミングをずらすことで、洗浄水中における漂白剤による酵素の酸化を防止するなどが挙げられる。
【0034】
なお、粒状の洗剤1は、食器を傷めない硬度と噴射強度で用いられるものとする。また、被洗浄物4や固形汚れ18に衝突した際に、破壊されないで繰り返し洗浄に使用できる硬度もしくは弾性を持つことが望ましい。
【0035】
なお、所定の時間、温度で溶解する粒状の洗剤1は、必ずしもコーティング材2で覆う必要はなく、洗剤成分3自体が所定温度で溶解するようなものを使用したり、所定温度で溶解するような成分を練りこむなどして洗剤を固めたものでもよい。
【0036】
なお、粒状の洗剤1の洗剤成分3は、必ずしも洗浄を目的とした成分だけに限られるものではなく、リンス効果を目的とした成分など、他の用途を目的とした成分でもよい。リンス効果を目的とした場合は、すすぎ工程などでpHが8以下に低下した際に溶解したり、最終すすぎの高温時に溶解するようにするなどしてもよい。
【0037】
さらに、節水のために、粒状の洗剤1が溶解するタイミングを第1洗浄中に実施してもよい。
【0038】
(実施の形態例2)
図5は、本発明の実施の形態2の粒状の洗剤の断面図、図6は、本発明の実施の形態2の粒状の洗剤を洗剤として用いる食器洗い乾燥機の貯留部9近傍の磁気手段20が設けられた経路の平面図である。本実施の形態において、実施の形態1と同様の部分については
同一符号を附し、その詳細な説明は省略する。
【0039】
図5において、粒状の洗剤1は、コーティング材2で内包されるコア部分もしくは内部に酸化鉄などの磁性体21を内包している。なお、磁性体21は環境に誤って排出されても環境に害がないものが望ましい。また、磁性体21はコーティング材2で内包されるコア部分に含まれる場合、必ずしも固定されている必要はない。
【0040】
図6において、電磁石などの磁気を発生する磁気手段20が残菜フィルター10を経由する循環経路22とは別の経路23に設けられており、粒状の洗剤1が選択的に回収されるようになっている。さらに、経路23の入口は残菜フィルター10を入口とする循環経路22に向けて傾斜しており、残菜24が自重で残菜フィルター10上に堆積する構成となっている。また、経路23の入口には、粒状の洗剤1が通過できるフィルター25が設置されており、残菜24が経路23に入るのを防いでいる。
【0041】
以上のように構成された食器洗浄機について、以下その動作を説明する。まず、実施の形態1と同様の動作でブラスト洗浄17の第1洗浄が開始される。洗浄開始と同時もしくは前後して、磁気手段20が駆動し、磁気が発生する。貯留部9に貯留した洗浄水および内部に磁性体21を含む粒状の洗剤1は、洗浄ポンプ8によって加圧され、洗浄ノズル7から被洗浄物4に向けて噴射され、再び貯留部9に戻る。貯留部9に戻った粒状の洗剤1は磁気手段20から発生する磁気に引き付けられ、フィルター25を介し経路23内に回収される。この間も、洗浄ポンプ8は駆動を続けており、貯留部9および循環経路22と経路23に貯留している洗浄水を循環し続ける。この間、磁気手段20は定期的に磁気の発生を停止するよう駆動し、磁気の消失とともに回収された粒状の洗剤1は経路23から洗浄ポンプ8に供給され、都度、洗浄に使用される。その後の動作は実施の形態1および2と同様に行われる。
【0042】
なお、磁気手段20を設置した経路23は、必ずしも残菜フィルター10を介した通常の循環経路22と分けて設ける必要はなく、例えば、排水時の粒状の洗剤1の排出防止として、排水経路13の入口付近に設けたるなどしてもよい。
【0043】
なお、磁気手段20は、電磁石に限ったものではなく、磁気の発生や強弱を調整できる他の手段でもよい。また、磁気手段20の駆動タイミング、駆動方式は上記方式に限定されるものではない。
【0044】
(実施の形態3)
図7は本発明の実施の形態3の粒状の洗剤1の断面図、図8は、本発明の実施の形態3の粒状の洗剤1を用いる食器洗い乾燥機の洗浄プロセスの概要図である。本実施の形態において、実施の形態1および2と同様の部分については同一符号を附し、その詳細な説明は省略する。
【0045】
図7において、粒状の洗剤1は、洗浄剤である酵素を含む層3aを内包する外面コーティング材2と、酵素を含む層3aの内側に、洗浄剤である漂白剤を含む層3bを内包する内部コーティング材26からなる。前記外面コーティング材2は、38℃で溶解する材料であり、前記内部コーティング材26は、50℃で溶解する材料である。なお、コーティング材の溶解条件は所定の温度に限られたものではなく、温度以外の所定条件、例えば、pHなどで溶解する材料でも構わない。
【0046】
図8において、横軸は運転時間、縦軸は洗浄水の温度および循環水中の酵素濃度と漂白剤濃度であり、運転時間に伴う洗浄水の温度と循環水中の洗剤濃度の推移を示したものである。
【0047】
以上のように構成された食器洗浄機について、以下その動作を説明する。まず、実施の形態1と同様に、運転時間(b1)で洗浄水の温度が38℃に達するまで、ブラスト洗浄17が行われる。次に、38℃で溶解する外面コーティング材2が溶解し、酵素を含む層3aが洗浄水中に溶解する。酵素濃度が急激に高まった洗浄水で被洗浄物4に付着したたんぱく質やでんぷんの分解を目的とした酵素洗浄27が実施される。この際、実施の形態1で上述したように、ブラスト洗浄によって、頑固な米粒や固まった卵などの固形汚れの剥離が進んでおり、食器と汚れの薄い付着層が残った状態になっている。この薄い層に対して、酵素が効率よく接することで剥離で落としにくい薄い層が酵素によって分解され、洗浄される。その後、運転時間(b2)で水温が50℃に達した時点で50℃で溶解する内部コーティング材26が溶解し、内部の漂白剤を含む層3bが洗浄水中に溶解し、漂白剤濃度が急激に高まった洗浄水で、洗浄工程が終了する運転時間(c)まで漂白剤洗浄28が行われる。この際、漂白剤の供給により、洗浄水中にあり、洗浄に使用されていた酵素は徐々に酸化分解され、洗浄水中の酵素濃度は減少していく。漂白剤自体も、分解により、濃度が徐々に減少していく。運転時間(c)で洗浄工程が終了すると、実施の形態1と同様に、水の入れ替えが行われ、すすぎ工程、最終すすぎ工程、最後に乾燥工程へと移行し、全運転が終了する。
【0048】
なお、酵素洗浄27が行われている際、循環水中に存在する漂白剤を含む層3bを内包する粒状の洗剤29は、内部コーティング材26に硬度を持たせることで、ブラスト効果を発揮するようにしてもよい。
【0049】
なお、粒状の洗剤1に内包される洗浄剤を含む層の種類、および、層の数、さらに、コーティング材の溶解条件は上記に記載のものに限定されるものではない。
【0050】
(実施の形態4)
図9は、本発明の実施の形態4の粒状の洗剤1の断面図、図10は本発明の実施の形態4の粒状の洗剤1を用いる食器洗浄機の洗浄プロセスの概要図である。本実施の形態において、実施の形態1、2および3と同様の部分については同一符号を附し、その詳細な説明は省略する。
【0051】
図9において、粒状の洗剤1は、アルカリ成分や酵素などの洗浄剤を含む層3を内包する外面コーティング材2と、前記洗浄剤を含む層3の内側に、硝酸ナトリウムなどのリンスを含む層31を内包する内部コーティング材32からなる。前記外面コーティング材2は、38℃で溶解する材料であり、前記内部コーティング材32は、pHが6以上8以下で溶解する材料である。なお、外面コーティング材2の溶解条件は所定の温度に限られたものではなく、温度以外の所定条件、例えば、pHなどで溶解する材料でも構わない。
【0052】
図10において、横軸は運転時間、縦軸は洗浄水の温度、循環水中の洗剤濃度、循環水のpH、および、洗浄水中のリンス濃度であり、運転時間に伴う洗浄水の温度とpH、循環水中の洗剤およびリンス濃度の推移を示したものである。
【0053】
以上のように構成された食器洗浄機について、以下その動作を説明する。まず、実施の形態1と同様に、運転時間(b)で洗浄水の温度が38℃に達するまで、ブラスト洗浄17が行われる。次に、38℃で溶解する外面コーティング材2が溶解し、洗浄剤を含む層3が洗浄水中に溶解し、内部にあった粒状の洗剤30が残る。洗浄剤濃度が急激に高まった洗浄水で実施の形態1と同様に、化学洗浄19が運転時間(c1)に達するまで実施される。この間、洗浄水のpHは10程度まで高まっており、汚れの分離、分散、分解などが行われる。
【0054】
次に、水の入れ替えが行われ、すすぎ工程へと移行する。この際、循環水のpHは水の入れ替えによって、pHが8以上、9以下にまで低下し運転時間(c2)まですすぎが行われる。運転時間(c2)に達すると、再び、水の入れ替えが行われ、次のすすぎ工程へと移行するが、水の入れ替えによって、pHは6以上8以下まで低下している。この際、洗浄水中に残っていた粒状の洗剤30は、pHが6以上、8以下で溶解する内部コーティング材32が溶解することで内部のリンスを含む層31が洗浄水中に溶解することで消失する。続いて、循環水中に溶解したリンス成分を含む循環水によって運転時間(d)まですすぎ工程が行われ、被洗浄物4の表面の親水性が高まる。このため、その後の最終すすぎ時が終了した際に、被洗浄物4の表面に水滴が残りにくくなり、最後の乾燥工程時に、効率のよい乾燥を行うことができる。
【0055】
なお、化学洗浄19が行われている際、循環水中に存在する粒状の洗剤30は、内部コーティング材32に硬度を持たせることで、ブラスト効果を発揮するようにしてもよい。
【0056】
なお、すすぎの回数、また、pHが6以上、8以下になる工程は、2回目のすすぎである必要はなく、最終すすぎ時であっても構わない。
【0057】
また、最終すすぎは循環水を利用したものではなく、スチームを用いた手段でも構わない。
【0058】
なお、本発明の食器洗浄機は、実施の形態に限定されるものではなく、目的、用途等にあわせて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の食器洗浄装置は、特にこびりついた米粒などの強固な食品汚れに対する洗浄として有用である。
【符号の説明】
【0060】
1 粒状の洗剤
2 外面コーティング材
3 洗浄剤
3a 酵素を含む層
3b 漂白剤を含む層
4 被洗浄物
21 磁性体
26 漂白剤を含む層3bを内包する内部コーティング材
32 リンスを含む層31を内包する内部コーティング材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食器洗い機用の粒状の洗剤であって、前記洗剤は、被洗浄物を化学的に洗浄するための洗浄剤と、前記洗浄剤の表面を覆う外面コーティング材とを有しており、前記コーティング材は、所定条件で溶解するとともに、被洗浄物に付着した固形汚れを剥離するブラスト洗浄に用いられるブラスト材。
【請求項2】
前記洗剤は、水に接して所定時間が経過した後に溶解する請求項1に記載のブラスト材。
【請求項3】
前記洗剤は、所定の温度の水で溶解する請求項1に記載のブラスト材。
【請求項4】
前記洗剤は、pHが6以上8以下の水に溶解する請求項1に記載のブラスト材。
【請求項5】
前記洗剤は、外形が略球形である請求項1〜4のいずれか1項に記載のブラスト材。
【請求項6】
前記洗剤は、前記コーティング材の内部に磁性体を内包した請求項1〜5のいずれか1項に記載のブラスト材。
【請求項7】
前記洗剤は、洗浄剤である酵素の内側に、前記外面コーティング材とは異なる条件で溶解する内部コーティング材を有し、前記内部コーティング材の内側に、前記洗浄剤とは異なる成分である漂白剤を有している請求項1〜6のいずれか1項に記載のブラスト材。
【請求項8】
前記洗剤は、前記洗浄剤の内側に、前記外面コーティング材とは異なる条件で溶解する内部コーティング材を有し、前記内部コーティング材の内側に、前記洗浄剤とは異なる成分であるリンス剤を有している請求項1〜6のいずれか1項に記載のブラスト材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−280834(P2010−280834A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−135852(P2009−135852)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】