自動2輪車の車体フレーム構造
【目的】エンジンを車体フレームの一部に利用するフレーム形式において、前部車体フレームのメインフレームを左右分割してボルトで締結する簡易構造にしても、ブレーキング時の剛性を高める。
【構成】前部車体フレーム2をヘッドパイプ14とメインフレーム15で構成し、メインフレーム15を左右分割構造とし、ヘッドパイプ14を挟んでボルト止めし、メインフレーム15の後部に形成された取付アーム部16,17をエンジン3のクランクケース18における左右側面へボルト止めする。メインフレーム15の上方には開口面積の大きな後方開放部55を設け、下方にはより開放面積の小さい前方開放部56を設け、メインフレーム15の下部側をブレーキング時の圧縮荷重に耐える高剛性にする。
【構成】前部車体フレーム2をヘッドパイプ14とメインフレーム15で構成し、メインフレーム15を左右分割構造とし、ヘッドパイプ14を挟んでボルト止めし、メインフレーム15の後部に形成された取付アーム部16,17をエンジン3のクランクケース18における左右側面へボルト止めする。メインフレーム15の上方には開口面積の大きな後方開放部55を設け、下方にはより開放面積の小さい前方開放部56を設け、メインフレーム15の下部側をブレーキング時の圧縮荷重に耐える高剛性にする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エンジンを車体フレームの一部に利用した自動2輪車の車体フレーム構造に関する。
なお、本願において、前後・左右・上下とは、それぞれ自動2輪車の使用状態を基準とし、進行方向前方を前方、進行方向に向かって車体の左右方向を左右、車体の上下方向を上下とする。
【背景技術】
【0002】
エンジンを車体フレームの一部に利用した自動2輪車の車体フレーム構造は公知であり、例えば、ヘッドパイプとこれから車体後方へ延出するメインフレームとを一体鋳造した前部車体フレームとし、メインフレームの後部をエンジンの前部に取付けることにより、エンジンを車体フレームの一部に利用したものがある(特許文献1参照)。
【特許文献1】実開平1−170090号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記従来技術のように、前部車体フレームを一体鋳造したものは、大型部品になるので鋳造のための金型も大型化を招くことになり、高価なものになってしまった。
また、一体鋳造にしているため、前部車体フレームの一部を交換したい場合にも、前部車体フレーム全体を交換していた。
さらに、エンジンを車体フレームの一部に利用した場合、前部車体フレームのメインフレームは、エンジンのクランクケース前部に向けて斜め下がり後方へ延出しているので、ブレーキ操作等によって車体の重心が前方へ移動すると、前部車体フレームの下部側に大きな荷重がかかることがあるので、前部車体フレームの下部側における剛性を高めることが求められる。
本願はこのような事情に鑑みたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため自動2輪車の車体フレーム構造にかかる請求項1の発明は、ヘッドパイプとこのヘッドパイプからエンジンのクランクケースに向けて延出するメインフレームとで前部車体フレームを形成し、このメインフレームの後端部をエンジンの前部に取付けてエンジンを車体フレームの一部に利用した自動2輪車の車体フレーム構造において、
前記メインフレームは、左右別体に形成され相互に結合一体化される左側メインフレーム部と右側メインフレーム部を備え、
これらの左側メインフレーム部及び右側メインフレーム部は、それぞれの下部に対向する下縁当接面を設け、
これらの下縁当接面を相互に当接させて結合することにより前記メインフレームを構成するとともに、
前記各下縁当接面はそれぞれ、前記ヘッドパイプの後方からエンジンの上端よりも下方まで延びていることを特徴とする。
【0005】
請求項2の発明は上記請求項1において、前記左側メインフレーム部と前記右側メインフレーム部は、それぞれの上部に対向する上縁当接面を設け、これらの上縁当接面を相互に当接させて結合すること特徴とする。
【0006】
請求項3の発明は上記請求項2において、前記メインフレームは、後部が前記エンジンの左右側面に重なるように左右へ枝分かれして拡開する拡開部を有し、この左右の拡開部の各後端部にて前記クランクケースへ締結したこと特徴とする。
【0007】
請求項4の発明は上記請求項3において、前記左右の拡開部は、前記メインフレームの後部上側で前記上縁当接面よりも後方に、車両前後方向へ開放される後方開放部を形成し、
前記メインフレームの後部下側で前記下縁当接面よりも後方に、車両前後方向へ開放される前方開放部を形成するとともに、
前記前方開放部の開口面積が前記後方開放部の開口面積よりも小さいこと特徴とする。
【0008】
請求項5の発明は上記請求項4において、前記後方開放部は、前記クランクケースと前記メインフレームとの締結部分からシリンダヘッド部の上方に渡って開口していること特徴とする。
【0009】
請求項6の発明は上記請求項3において、前記メインフレームは、前記クランクケースに加えてシリンダ部とも締結し、さらにこのシリンダ部との締結部分でシートレールの前端も一緒に締結支持すること特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、メインフレームを左右別体の左側メインフレーム部と右側メインフレーム部とから構成し、この左側メインフレーム部と右側メインフレーム部を結合し、メインフレームを構成したので、個々の部品が小さくなり、鋳造した場合でも金型を小さくすることができる。また、各部品で交換を要する場合、その部品のみを交換すればよくなる。
また、左側メインフレーム部と右側メインフレーム部の下縁は互いに当接する下縁当接面を有し、この当接面を結合するようにしたので、下縁の当接部分が左右一対のフレームを繋ぐクロスパイプと同じ役目を果たし、前部車体フレームの剛性を向上させることができる。
さらに、下縁当接面はヘッドパイプの後方からエンジンの上端よりも下方になる程度にあるため、クロスパイプとして機能する部分が大きくなり、より前部車体フレームの剛性を向上させることができ、ブレーキ操作等によって、前部車体フレームの下縁側に荷重が強くかかった場合でもその力を受けることが十分にできる。
【0011】
請求項2の発明によれば、左側メインフレーム部と前記右側メインフレーム部の上縁とは当接し、結合されるので、上縁の当接部分が左右一対のフレームを繋ぐクロスパイプと同じ役目を果たし、下縁の当接部分と協働して、さらに前部車体フレームの剛性を向上させることができる。
【0012】
請求項3の発明によれば、上記のような構成にしたので、請求項1と2の効果を得ながら、メインフレームを高い剛性のあるクランクケースに締結することができる。
【0013】
請求項4の発明によれば、メインフレームの下縁(左側メインフレーム部と右側メインフレーム部の下縁)部分には、ブレーキ操作等で、圧縮の大きな力がかかるが、前方開放部の開口面積が後方開放部の開口面積よりも小さいので、メインフレームの下縁(左側メインフレーム部と右側メインフレーム部の下縁)部分の当接代メインフレーム上縁よりも大きくとることができ、車体の剛性を向上させることができる。また、シリンダ部が配置されている拡開部は車両前後方向に向けて開口する前方及び後方解放部を有しているので、走行風をエンジンのシリンダ部に当てることができる。
【0014】
請求項5の発明によれば、後方開放部がシリンダ部の上方に渡って開口しているので、シリンダ部のメンテナンスを行いやすい。
【0015】
請求項6の発明によれば、メインフレームとエンジンを締結する箇所のうち、シリンダ部の後面で、シートレールの前端も一緒に支持するようにしたので、エンジンにシートレールを別途支持するためのボスを設ける必要がない。また、締結に用いるボルトもエンジンとメインフレームとを締結するボルトと共用にすることで、部品点数を削減することができる。さらに、エンジンとメインフレームとを締結するのに複数箇所(クランクケースとシリンダ部)にしたので、クランクケースに負荷が集中するのを避けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面に基づいて一実施例を説明する。図1は本実施例に係る自動2輪車の左側面図、図2はその車体前部側の一部を拡大した図である。
図1において、この自動2輪車は、前輪1,前部車体フレーム2,エンジン3,燃料タンク4,後部車体フレーム5,シート6,リヤスイングアーム7,後輪8を備える。9は車体カバーである。
【0017】
前輪1は左右一対のフロントフォーク10の下端に支持され、フロントフォーク10の上端側が取付けられたステアリング軸を11介してハンドル12により操向される。ステアリング軸11はブリッジ13を介してフロントフォーク10と連結し、前部車体フレーム2の前端部に設けられたヘッドパイプ14へ回動自在に支持されている。
【0018】
前部車体フレーム2はヘッドパイプ14と、このヘッドパイプ14から斜め下がりに後方へ延びるメインフレーム15とを締結による結合で一体にしたものであり、メインフレームの前部はヘッドパイプ14との連結部であるヘッドパイプ支持部をなし、後部は後述するように左右へ2又状に拡開してエンジン3の左右側面へ重なる。また後部の側面視においては前後へ2又状に分かれた取付アーム部16,17をなし、それぞれエンジン3へボルト止めされている。
【0019】
エンジン3は空冷4サイクル式であり、クランクケース18の前部にやや前傾してシリンダ部19が上方へ突出して設けられている。シリンダ部19の左右両側をメインフレーム15の後端部が覆っている。シリンダ部19の後方には気化器20が位置して、シリンダ部19へ燃料タンク4の燃料とエアクリーナ29の清浄空気との混合気を供給し、シリンダ部19の前部には排気管21が接続し、排気を車体後方へ排出する。
【0020】
後部車体フレーム5は前端をメインフレーム15の取付アーム部16とシリンダ部19へ共締めされて、斜め上がり後方へ延びるシートレール22と、側面視でV字形をなすサブフレーム23,24を備える。サブフレーム23・24の各上端はシートレール22へ接続され、各下端はブラケット26で一体化されてクランクケース18の後ろ上部へボルト止めされる。
【0021】
リヤスイングアーム7はクランクケース18の後端部に左右方向へ貫通支持されるピボット軸25により前端を揺動自在に支持され、後端部に後輪8を回転自在に支持する。シートレール22とサブフレーム24の接続部を補強するガセット27に設けられたステー27aとリヤスイングアーム7の後端部のとの間にはリヤクッションユニット28が設けられている。
【0022】
この車体構造は、前部車体フレーム2をエンジン3の前部へ取付け、かつ後部車体フレーム5をエンジン3へ取付け、さらにリヤスイングアーム7をクランクケース18へ直接ピボット軸25で取付けることにより、エンジン3を車体フレームの一部として利用したものであり、実質的には前部車体フレーム2,エンジン3及び後部車体フレーム5により高剛性の車体フレームを形成している。
【0023】
図2に示すように、シリンダ部19はシリンダブロック30,シリンダヘッド31,ヘッドカバー32を積み重ねてボルトにより結合一体化し、かつクランクケース18の前部へ固定したものであり、エンジン3は全体として高剛性構造体となっている。
【0024】
シリンダヘッド31の背面には吸気ポート(図示省略)が設けられて、ここに気化器20が接続される。但し気化器10の代わりに電子燃料噴射装置を接続することは任意にできる。シリンダヘッド31の前面には排気ポート(後述)が設けられ、ここに排気管21が接続される。
シリンダヘッド31の背面にはボス33が設けられ、ここに取付アーム部16の上部とシートレール22の前端部が共締めされる。
【0025】
メインフレーム15は後述するように左右分割して形成されたものをボルト・ナットで締結して結合一体化したものであり、その前部は前方へ向かって2又状に拡開するヘッドパイプ支持部34をなす。ヘッドパイプ支持部34の前端部上下には前方へ突出するボス部35が設けられている。
【0026】
ヘッドパイプ支持部34と取付アーム部16及び17の間は中間部36をなし、ここに肉抜きを兼ねたメンテナンスホール37が形成されている。
中間部36の上下部分は連続一体に車体内方へ折れ曲がった上縁部及び下縁部をなし、各上縁部及び下縁部の車体内方側先端部はさらに上方又は下方へ折れ曲がって立てフランジ状の上フランジ38及び下フランジ39をなす。この上フランジ38及び下フランジ39はメインフレームの左右の分割部にそれぞれ対面するように設けられ、互いに当接されて締結による結合で一体化されている。これら上フランジ38及び下フランジ39は本願発明の上縁当接面及び下縁当接面に相当する。
【0027】
下縁当接面である下フランジ39は、ヘッドパイプ14の後方からエンジンの上端であるヘッドカバー32の上端部よりも下方まで延びている。このように長い下フランジ39を設けることにより、高い剛性を要求されるメインフレーム15の下部側における剛性を高めることができる。
なお、上縁当接面である上フランジ38は、ヘッドパイプ14の後方からエンジンの上端よりも上方部分で車両の前後方向でエンジンの前端部まで延び、下フランジ39と比較してより短くなっている。上フランジ38の長さをA、下フランジ39の長さをBとしたとき、A<Bとなっている。
【0028】
図中の符号40は左右のボス部35を締結により結合する第1締結部である。41はヘッドパイプ支持部34と中間部36との境界部をヘッドパイプ14の後ろ側に沿って上下方向へ設けられる3個の第2締結部である。
42は上フランジ38に前後方向へ設けられる2個の第3締結部である。
43は下フランジ39に前後方向へ設けられる3個の第4締結部である。
44はメインフレーム15の前後方向中間部にて、メンテナンスホール37の後端部上側近傍部左右を連結する第5締結部である。
45は取付アーム部16の前部及びシートレール22の前端をシリンダヘッド31の背面におけるボス33へ締結する第6締結部である。
46は取付アーム部16の後端部をクランクケース18へ取付ける第7締結部である。
47は取付アーム部17の後端部をクランクケース18へ取付ける第8締結部である。
【0029】
締結部40〜44は、メインフレーム15を構成する左右の分割部を互いに締結で結合一体化して前部車体フレーム2を形成するための部分であり、いずれもボルト・ナットで構成される。各締結部の詳細構造は後述する。
なお、これらの締結部のうち第1〜第5締結部40〜44を締結以外の結合手段(例えば、溶接)による結合部とすることは任意に可能である。
【0030】
図2中の符号48は燃料タンク4の底部前側を固定するステーであり、本図からは明らかでないが、メインフレーム15の右側部分に下端を固定され、屈曲して立ち上がった上端を燃料タンク4の底部下面と重ねボルトにより締結して結合される。4aは燃料タンク4の底部左右に設けられた下方へ突出する取付ステーであり、シートレール22のサブフレーム23が接続する部分近傍に設けられたブラケット49へボルト49aにて締結で結合されている。燃料タンク4はこれら3ヶ所(ステー48及び左右の取付ステー4a)で車体フレームへ3点支持される。なお、図3以降の図にはこれらステー48及びブラケット49は省略されている。
【0031】
また、図2中の直線L1はエンジンの前端(本実施例ではシリンダヘッドカバー32の側面視上部前端)を通る垂線であり、第3締結部42はこの線よりも前方に位置し、上フランジ38の後端はこの直線l1より後方に位置する。また、この直線L1上には後述する前方開放部56の前端部P2(図8が)ほぼ位置している。
直線L2はエンジンの上端(本実施例ではシリンダヘッドカバー32の側面視上部後端)を通る水平線であり、この線よりも上方に第1締結部40、第2締結部41、第3締結部42及び第5締結部44が位置し、下方に第6締結部45、第7締結部46、第8締結部47が位置する。第4締結部43はこの直線L2の上下に位置している。
【0032】
次に、車体フレーム構造についてより詳細に説明する。図3は、車体フレームを斜め上方から示す斜視図、図4はその平面図、図5は正面図、図6は後部車体フレーム5を省略した斜め後方から示す斜視図、図7は前部車体フレーム2と後部車体フレーム5を組み立てた状態で側面斜め下方から示す斜視図、図8は組み立て状態の後部車体フレーム5を図1のZ矢示方向から示す図、図9はヘッドパイプ14の斜視図、図10はメインフレーム15を構成する左側メインフレーム部の外側面を示す斜視図、図11はその反対側(内側面)を示す斜視図である。
【0033】
これらの図に明らかなように、メインフレーム15は左右に分割形成されたほぼ対掌構造の左分割体である左側メインフレーム部15L及び右分割体である右側メインフレーム部15Rで構成され、左側メインフレーム部15L及び右側メインフレーム部15Rを向かい合わせて最中合わせ構造とし、相互に締結による結合で一体化したものである。
なお、以下の説明において、左右共通部の構造部分については、煩雑を避けるため、原則として左右を区別しない共通符号にて説明する。
【0034】
後部車体フレーム5も同様にシートレール22,サブフレーム23,24がそれぞれ左右一対で設けられ、全体として一体化されたものである。これらを左右区別する場合には、右側にR,左側にLを添字する(図3)。
【0035】
図3・7・8等における符号22a,22bは、左右のシートレール22R,22L間を連結するクロスメンバであり、前方のクロスメンバ22aはサブフレーム23の上端接続部近傍に設けられ、後方のクロスメンバ22bはサブフレーム24の上端接続部近傍に設けられている。
【0036】
メインフレーム15の平面視及び上面視(図4・8)で、ボス35を含むヘッドパイプ支持部34は前方へ向って2又状に拡開する略U字状をなし、この略U字状の空間内に、円筒状をなし鋳造等適宜方法で形成されるヘッドパイプ14が上下方向へ長く収容され、前後を第1締結部40及び第2締結部41で締結で結合することにより、ヘッドパイプ14とメインフレーム15が一体化される。左側メインフレーム部15L及び右側メインフレーム部15Rはさらに第3〜5締結部42〜44で連結一体化されて前部車体フレーム2となる。
【0037】
このようにして組み立てられた前部車体フレーム2は、中間部36より後方側の後部が左右へ拡開してエンジン3の左右側面へ重なる拡開部をなす。この拡開部のうち上部側には図4・7・8・9等に示すように、前後方向へ開放された略U字状の後方開放部55が、上フランジ38の後方に形成される。後方開放部55はクランクケース18との締結部である取付アーム部16の後端における第7締結部46からシリンダヘッドカバー32の上方に渡って大きく開口し、その縁部は横フランジ52で縁取られている。前端部P1は左右の上フランジ38の後端部に近接する車体中心C上にある。また後方開放部55の開口縁部における左右部分は取付アーム部16の上面によって形成される。
【0038】
図4に明らかなように、後方開放部55の内側にはヘッドカバー32,気化器20が臨み、上方からメンテナンス可能になっている。また、この図4において、車体中心線C上には、左側メインフレーム部15L及び右側メインフレーム部15Rを締結で結合する第3及び第4締結部42及び43並びに第5締結部45におけるボス33及び第6締結部46におけるボス53がそれぞれ位置している。
【0039】
図6に示すように、気化器20はカラー44c,ボス33及びカラー45c、左右の取付アーム部16の後方に位置し、メンテナンス容易かつ飛石等から保護される位置にある。
【0040】
図8に示すように、ボス33とクロスメンバ22aの間は十分に間隔が保たれ、この間を通して気化器20等をメンテナンス可能になっている。左右のシートレール22R,22Lは後端で相互が連結されて全体として一体化した上面視略U字状をなしている。
【0041】
図5・7・8等に明らかなように、メインフレーム15の後部側下面には、前後方向へ開放された略U字状の前方開放部56が設けられる。図5に明らかなように、前方開放部56は横フランジ52と同様に内側へ略水平に折り曲げられた横フランジ57に縁取られ、その前端部(上端部)P2は、下フランジ39の後端部近傍の車体中心C上に位置している。また前方開放部56の左右部分は取付アーム部17の下面によって形成される。
【0042】
図5に明らかなように、前方開放部56内には、エンジン3の前面部分、特に、シリンダブロック30及びシリンダヘッド31の各前面部が臨み、シリンダヘッド31の前面には、排気ポート58が車体中心より若干右側位置にて斜め右側へ指向して開口している。このように、排気温によって高温となる排気ポート58を中心とするシリンダヘッド31等のシリンダ部19の前面を車体前方へ露出させることにより、これらへ走行風を接触させて冷却させることができ。
【0043】
図4・8等に明らかなように、左右の中間部36上面がそれぞれ車体中心C方向へ略水平に屈曲した上縁部36aとなって天井部をなす。左右の上縁部36aの各対向する端部(車体中心側先端部)は再び上方へ折れ曲がって上フランジ38をなす。本願発明の上縁当接面に相当する左右の上フランジ38は左右方向にて互いに対面し、当接して第3締結部42にて締結により結合される。このため、左右の上縁部36aは左右の中間部36間を連結して実質的なクロスメンバをなす。このクロスメンバ状構造部は前後方向の面積が比較的大きくなるので、剛性の高いクロスメンバとして機能し、メインフレーム15の剛性を高めることができる。
【0044】
図5等に明らかなように、左右の中間部36の下面もそれぞれ車体中心C方向へ略水平に屈曲した下縁部36bとなって底壁部をなす。左右の下縁部36bの各対向する端部(車体中心側先端部)は再び下方へ折れ曲がって下フランジ39をなす。本願発明の上縁当接面に相当する左右の下フランジ39は左右方向にて互いに当接して第4締結部43にて締結により結合される。このため、左右の下縁部36bは左右の中間部36間を連結して実質的なクロスメンバをなす。このクロスメンバ状構造部は前後方向の面積が比較的大きくなるので、メインフレーム15の剛性を高めることができる。しかも、上縁部36aの面積よりも大きいので、メインフレーム15の下側における剛性をより高めることができる。
【0045】
また、図8に明らかなように、後方開放部55の前端部P1よりも前方開放部56の前端部P2の方が後方に位置し、その開放面積は後方開放部55よりも前方開放部56の方が小さい。この開放面積の大小は図7においても明らかである。
【0046】
そのうえ、図2に示すように、上フランジ38の長さAは下フランジ39の長さBよりも短く、下フランジ39の長さBはシリンダヘッドカバー32の上部前端に至る程度の長さであり、締結数も上フランジ38が2ヶ所であるのに対して下フランジ39が3ヶ所である。このため、メインフレーム15の下部側における剛性がより高くなる。
【0047】
そこで、ブレーキング時に車体の重心が前方へ移動すると、メインフレーム15の下部側へ大きな荷重が加わった場合、下フランジ39側は締結数が多く、かつ長くなっており、メインフレーム15の下部側が予め高剛性構造になっているので、この力に耐えることができる。また、車両の左右方向に荷重が加わったときは、左側メインフレーム部15L及び右側メインフレーム部15Rには分割部を突き合わせる方向へ力がかかるが、この部分は上フランジ38及び下フランジ39を当接して締結により結合することにより高剛性になっているから、これらの上フランジ38及び下フランジ39で受け止めることができ、分割構成にしても十分に剛性を高めることができる。
【0048】
しかも、メインフレーム15の上側には開口面積の大きな後方開放部55を設けることにより、シリンダ部のメンテナンス用開口を大きく確保してメンテナンス性を向上させることができる。
また、開口面積の小さな前方開放部56を設けることにより、メインフレーム15の下部側における剛性を確保しつつも、シリンダヘッド31を中心とするシリンダ部19の前方を開放しているので、前方からの走行風をシリンダヘッド31を中心とするシリンダ部19の前部へ導入し,特に温度が高くなる排気ポート58の周辺を冷却することができるので、エンジン3の冷却効率を向上させることができる。
【0049】
図9は、ヘッドパイプ14の斜視図である。ヘッドパイプ14の前面には上下2ヶ所にカラー40cが横向きにして溶接等で一体化されている。上下のカラー40cの間隔は上下のボス部35の間隔と同じである。
ヘッドパイプ14の背面には上下方向へ3個のカラー41cが同様に取付けられている。このうち3個のカラー41cは上下方向へ3個設けられる第2締結部41と対応している。
なお、この実施例ではヘッドパイプ14とカラー40cとカラー41cが溶接で一体化されているが、これを鋳造で一体に作ってもよい。
【0050】
このようにすると、図4,5等に示すように、左右のヘッドパイプ支持部34の内側へヘッドパイプ14を入れ、第1締結部40,第2締結部41にて各ボルト40b,41bを対応するカラー40c、41cに通してナット40a,41aで締結により結合すれば、ヘッドパイプ14とメインフレーム15が強固に一体化される。このため、従来のように、ヘッドパイプ14とメインフレーム15を鋳造等で一体成形しなくても、強固に一体化したものを形成できる。
【0051】
また、ヘッドパイプ14又はメインフレーム15のいずれか交換する必要が生じて交換するときなどは、いずれか一方をのみ交換することができる。しかもメインフレーム15は左右分割構造であるから、メインフレーム15を交換する場合は、左右いずれかの分割体のみを交換するだけで済む。
【0052】
さらに、仕様の変更により、形状や構造等が異なるヘッドパイプ14を交換する場合にも、カラー40c、41cが共通であれば、新たなヘッドパイプ14をヘッドパイプ支持部34間へ入れて締結により結合できるので、容易に交換可能となり、メインフレーム15を共通部品としてヘッドパイプ14のみを別仕様のものに交換することができるから、仕様変更が容易になる。
【0053】
図10は左側メインフレーム部15Lの外側面を示す斜視図、図11はその反対側(内側面)を示す斜視図である。なお、右側メインフレーム部15Rもほぼ同様の対掌構造になっているので、以下、左分割体15Lについてのみ説明する。
図10,11において、左側メインフレーム部15Lは鉄板等の適宜金属板をプレス成形して安価に形成される。但しプレス成形によらず鋳造や鍛造で成形することも自由にできる。
【0054】
ボス部35にはボルト通し穴35aが設けられる。ヘッドパイプ支持部34の第2締結部41に相当する部分には内方へ突出するボス59(図11)が設けられ、これらにボルト通し穴59aが設けられている。
上フランジ38、下フランジ39、ボス50、ボス51及び取付アーム部16,17の後端部にもそれぞれボルト通し穴38a,39a,50a,51a,16a及び17aが形成されている。
メンテナンスホール37は前後方向へ長い長穴状であり、その縁部は内側へ折り曲げられた環状のフランジ37aをなし、メンテナンスホール37の周囲を補強する。
【0055】
左側メインフレーム部15Lの周囲は上側の横フランジ52及び下側の横フランジ57をなして縁取られ、これらの横フランジ52・57によって高剛性構造をなしている。取付アーム部16と17の接続部は上側の横フランジ52と下側の横フランジ57が連続一体化する部分である。
【0056】
次ぎに、各締結部の詳細構造を説明する。図12は第1締結部40を示す図2の12−12線断面図である。この図に明らかなように、左右のボス部35間に配置されたカラー40cにボルト40bを車体左側から通し、車体右側にてナット40aにて締結により結合される。なお、ボルト40bとナット40aは左右反対でもよい(以下の各締結部も同様)。
【0057】
第2締結部41も同様の構造で、左右のヘッドパイプ支持部34のボス部59の内側へヘッドパイプ14の背面側に設けられているカラー41cを配置してボルト穴59aをカラー41cの穴に位置決めし、ボルト41bを通してナット41aで締結により結合する。
【0058】
図13は第3締結部42及びに第4締結部43関する図2の13−13線断面である。左右の中間部36は、車体中心C上にて、左右の上フランジ38,下フランジ39を左右から合わせ、第3締結部42はボルト42bを両上フランジ38へ通して他側でナット42aで締結により結合することにより、結合一体化する。第4締結部43では、ボルト43bを両下フランジ39に通して他側でナット43aで締結により結合することにより一体化する。
【0059】
この締結状態にて、左右の中間部36はその上端及び下端から略水平に屈曲して上フランジ38及び下フランジ39に連続する上縁部36a及び下縁部36bを有するため、この部分が天井部及び底壁部をなし、一部にメンテナンスホール37が開口するものの、全体として閉じられた断面のボックス形状をなすため高剛性を実現する。
【0060】
しかも、上縁部36a及び下縁部36bは実質上左右の中間部36を連結する際のクロスメンバとして機能し、中間部36の剛性を高めるとともに、別部材のクロスメンバを省略できるので、部品点数を削減し、組立を容易にする。
【0061】
また、左右の上フランジ38,下フランジ39を合わせてナット42aとボルト42b及びナット43aとボルト43bにて締結により結合するので、左右の上フランジ38,下フランジ39間にカラーを省略でき、短いボルトで締結により結合できる。
【0062】
図14は第5締結部44に関する図2の14−14線断面図である。この図に示すように、左右のボス50間に長尺のカラー44cを入れ、ボルト44bをカラー44cへ通してナット44aにて締結により結合することにより左右の中間部36が一体化される。ボス50は外表面から内方へ凹入され、この凹部内へナット44a及びボルト44bの頭部が収容される。
【0063】
図15は第6締結部45に関する図2の15−15線断面図であり、シリンダヘッド31と一体のボス33の左右へ左右一対のカラー45c,45cを配置し、これらカラー45c,ボス33及びカラー45cにボルト45bを通してナット45aで締結により結合することにより一体化される。左右のカラー45cはシートレール22の左右部分22R,22Lの各先端に外周部を溶接一体化されている。
【0064】
ボス51は取付アーム部16に外方へ突出し、内面が凹状をなし、この内面側の凹部内へカラー45cの外方端部が嵌合位置決めされる。
横フランジ52は取付アーム部16の上下縁部から屈曲して内方へ略水平に曲がって形成され、取付アーム部16の剛性を高めている。また、クランクケース18と別にシリンダヘッド31へ締結で結合することにより、エンジン3へかかる荷重をシリンダヘッド31へ分散させることができ、クランクケース18へ力が集中することを回避できる。
そのうえ、シートレール22を取付アーム部16の取付用部材である第6締結部45を共用して取付できるので、部品点数を削減でき、シートレール22取付用の専用ボスをエンジンへ設ける必要がなく、取付も容易になる。
【0065】
図16は第7締結部46に関する図2の16−16線断面図であり、クランクケース18の上面でシリンダブロック30の背面側基部近傍に設けられたボス53の左右にカラー46cを配置し、ボルト46bをこれらに通し、ナット46aで締結により結合することにより一体化される。横フランジ52はカラー46cの外周のほぼ半周分を囲み、カラー46cの外方端部を位置決めする。
【0066】
また、第8締結部47も第7締結部46と同様構造であり、クランクケース18の前部に設けられたボス54(図5)へ締結される。
【0067】
なお、本願発明は上記の実施例に限定されるものではなく、発明の原理内において種々に変形や応用が可能である。例えば、上記実施例では左右のメインフレーム構成部相互の結合について締結による結合を説明したが、締結に代えて溶接で結合してもよい。
また、上フランジ38の長さAよりも下フランジ39の長さBを長くしてメインフレーム15の下側を高剛性にする発明と、後方開放部55の開口面積よりも前方開放部56の開放面積を小さくしてメインフレーム15の下側を高剛性にする発明は必ずしも同一の車体フレーム構造に併用する必要はなく、それぞれを単独で設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】実施例に係る自動2輪車の側面図
【図2】上記要部の拡大図
【図3】車体フレームを側面側から示す斜視図
【図4】車体フレームの平面図
【図5】車体フレームの正面図
【図6】後部車体フレームを省略した車体フレームを後方側から示す斜視図
【図7】前部車体フレームと後部車体フレームの組立体の斜視図
【図8】上記組立体を図1のZ矢示方向から示す図
【図9】ヘッドパイプの斜視図
【図10】左側メインフレーム部を外側面側から示す斜視図
【図11】上記分割体を内面側から示す斜視図
【図12】図2の12−12線断面図
【図13】図2の13−13線断面図
【図14】図2の14−14線断面図
【図15】図2の15−15線断面図
【図16】図2の16−16線断面図
【符号の説明】
【0069】
2:前部車体フレーム、3:エンジン、5:後部車体フレーム、14:ヘッドパイプ、15:メインフレーム、16:取付アーム部、17:取付アーム部、18:クランクケース、19:シリンダ部、20:気化器、31:シリンダヘッド、32:ヘッドカバー、38:上フランジ(上縁当接面)、39:下フランジ(下縁当接面)、40:第1締結部、41:第2締結部、42:第3締結部、43:第4締結部、44:第5締結部、45:第6締結部、46:第7締結部、47:第8締結部
【技術分野】
【0001】
この発明は、エンジンを車体フレームの一部に利用した自動2輪車の車体フレーム構造に関する。
なお、本願において、前後・左右・上下とは、それぞれ自動2輪車の使用状態を基準とし、進行方向前方を前方、進行方向に向かって車体の左右方向を左右、車体の上下方向を上下とする。
【背景技術】
【0002】
エンジンを車体フレームの一部に利用した自動2輪車の車体フレーム構造は公知であり、例えば、ヘッドパイプとこれから車体後方へ延出するメインフレームとを一体鋳造した前部車体フレームとし、メインフレームの後部をエンジンの前部に取付けることにより、エンジンを車体フレームの一部に利用したものがある(特許文献1参照)。
【特許文献1】実開平1−170090号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記従来技術のように、前部車体フレームを一体鋳造したものは、大型部品になるので鋳造のための金型も大型化を招くことになり、高価なものになってしまった。
また、一体鋳造にしているため、前部車体フレームの一部を交換したい場合にも、前部車体フレーム全体を交換していた。
さらに、エンジンを車体フレームの一部に利用した場合、前部車体フレームのメインフレームは、エンジンのクランクケース前部に向けて斜め下がり後方へ延出しているので、ブレーキ操作等によって車体の重心が前方へ移動すると、前部車体フレームの下部側に大きな荷重がかかることがあるので、前部車体フレームの下部側における剛性を高めることが求められる。
本願はこのような事情に鑑みたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため自動2輪車の車体フレーム構造にかかる請求項1の発明は、ヘッドパイプとこのヘッドパイプからエンジンのクランクケースに向けて延出するメインフレームとで前部車体フレームを形成し、このメインフレームの後端部をエンジンの前部に取付けてエンジンを車体フレームの一部に利用した自動2輪車の車体フレーム構造において、
前記メインフレームは、左右別体に形成され相互に結合一体化される左側メインフレーム部と右側メインフレーム部を備え、
これらの左側メインフレーム部及び右側メインフレーム部は、それぞれの下部に対向する下縁当接面を設け、
これらの下縁当接面を相互に当接させて結合することにより前記メインフレームを構成するとともに、
前記各下縁当接面はそれぞれ、前記ヘッドパイプの後方からエンジンの上端よりも下方まで延びていることを特徴とする。
【0005】
請求項2の発明は上記請求項1において、前記左側メインフレーム部と前記右側メインフレーム部は、それぞれの上部に対向する上縁当接面を設け、これらの上縁当接面を相互に当接させて結合すること特徴とする。
【0006】
請求項3の発明は上記請求項2において、前記メインフレームは、後部が前記エンジンの左右側面に重なるように左右へ枝分かれして拡開する拡開部を有し、この左右の拡開部の各後端部にて前記クランクケースへ締結したこと特徴とする。
【0007】
請求項4の発明は上記請求項3において、前記左右の拡開部は、前記メインフレームの後部上側で前記上縁当接面よりも後方に、車両前後方向へ開放される後方開放部を形成し、
前記メインフレームの後部下側で前記下縁当接面よりも後方に、車両前後方向へ開放される前方開放部を形成するとともに、
前記前方開放部の開口面積が前記後方開放部の開口面積よりも小さいこと特徴とする。
【0008】
請求項5の発明は上記請求項4において、前記後方開放部は、前記クランクケースと前記メインフレームとの締結部分からシリンダヘッド部の上方に渡って開口していること特徴とする。
【0009】
請求項6の発明は上記請求項3において、前記メインフレームは、前記クランクケースに加えてシリンダ部とも締結し、さらにこのシリンダ部との締結部分でシートレールの前端も一緒に締結支持すること特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、メインフレームを左右別体の左側メインフレーム部と右側メインフレーム部とから構成し、この左側メインフレーム部と右側メインフレーム部を結合し、メインフレームを構成したので、個々の部品が小さくなり、鋳造した場合でも金型を小さくすることができる。また、各部品で交換を要する場合、その部品のみを交換すればよくなる。
また、左側メインフレーム部と右側メインフレーム部の下縁は互いに当接する下縁当接面を有し、この当接面を結合するようにしたので、下縁の当接部分が左右一対のフレームを繋ぐクロスパイプと同じ役目を果たし、前部車体フレームの剛性を向上させることができる。
さらに、下縁当接面はヘッドパイプの後方からエンジンの上端よりも下方になる程度にあるため、クロスパイプとして機能する部分が大きくなり、より前部車体フレームの剛性を向上させることができ、ブレーキ操作等によって、前部車体フレームの下縁側に荷重が強くかかった場合でもその力を受けることが十分にできる。
【0011】
請求項2の発明によれば、左側メインフレーム部と前記右側メインフレーム部の上縁とは当接し、結合されるので、上縁の当接部分が左右一対のフレームを繋ぐクロスパイプと同じ役目を果たし、下縁の当接部分と協働して、さらに前部車体フレームの剛性を向上させることができる。
【0012】
請求項3の発明によれば、上記のような構成にしたので、請求項1と2の効果を得ながら、メインフレームを高い剛性のあるクランクケースに締結することができる。
【0013】
請求項4の発明によれば、メインフレームの下縁(左側メインフレーム部と右側メインフレーム部の下縁)部分には、ブレーキ操作等で、圧縮の大きな力がかかるが、前方開放部の開口面積が後方開放部の開口面積よりも小さいので、メインフレームの下縁(左側メインフレーム部と右側メインフレーム部の下縁)部分の当接代メインフレーム上縁よりも大きくとることができ、車体の剛性を向上させることができる。また、シリンダ部が配置されている拡開部は車両前後方向に向けて開口する前方及び後方解放部を有しているので、走行風をエンジンのシリンダ部に当てることができる。
【0014】
請求項5の発明によれば、後方開放部がシリンダ部の上方に渡って開口しているので、シリンダ部のメンテナンスを行いやすい。
【0015】
請求項6の発明によれば、メインフレームとエンジンを締結する箇所のうち、シリンダ部の後面で、シートレールの前端も一緒に支持するようにしたので、エンジンにシートレールを別途支持するためのボスを設ける必要がない。また、締結に用いるボルトもエンジンとメインフレームとを締結するボルトと共用にすることで、部品点数を削減することができる。さらに、エンジンとメインフレームとを締結するのに複数箇所(クランクケースとシリンダ部)にしたので、クランクケースに負荷が集中するのを避けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面に基づいて一実施例を説明する。図1は本実施例に係る自動2輪車の左側面図、図2はその車体前部側の一部を拡大した図である。
図1において、この自動2輪車は、前輪1,前部車体フレーム2,エンジン3,燃料タンク4,後部車体フレーム5,シート6,リヤスイングアーム7,後輪8を備える。9は車体カバーである。
【0017】
前輪1は左右一対のフロントフォーク10の下端に支持され、フロントフォーク10の上端側が取付けられたステアリング軸を11介してハンドル12により操向される。ステアリング軸11はブリッジ13を介してフロントフォーク10と連結し、前部車体フレーム2の前端部に設けられたヘッドパイプ14へ回動自在に支持されている。
【0018】
前部車体フレーム2はヘッドパイプ14と、このヘッドパイプ14から斜め下がりに後方へ延びるメインフレーム15とを締結による結合で一体にしたものであり、メインフレームの前部はヘッドパイプ14との連結部であるヘッドパイプ支持部をなし、後部は後述するように左右へ2又状に拡開してエンジン3の左右側面へ重なる。また後部の側面視においては前後へ2又状に分かれた取付アーム部16,17をなし、それぞれエンジン3へボルト止めされている。
【0019】
エンジン3は空冷4サイクル式であり、クランクケース18の前部にやや前傾してシリンダ部19が上方へ突出して設けられている。シリンダ部19の左右両側をメインフレーム15の後端部が覆っている。シリンダ部19の後方には気化器20が位置して、シリンダ部19へ燃料タンク4の燃料とエアクリーナ29の清浄空気との混合気を供給し、シリンダ部19の前部には排気管21が接続し、排気を車体後方へ排出する。
【0020】
後部車体フレーム5は前端をメインフレーム15の取付アーム部16とシリンダ部19へ共締めされて、斜め上がり後方へ延びるシートレール22と、側面視でV字形をなすサブフレーム23,24を備える。サブフレーム23・24の各上端はシートレール22へ接続され、各下端はブラケット26で一体化されてクランクケース18の後ろ上部へボルト止めされる。
【0021】
リヤスイングアーム7はクランクケース18の後端部に左右方向へ貫通支持されるピボット軸25により前端を揺動自在に支持され、後端部に後輪8を回転自在に支持する。シートレール22とサブフレーム24の接続部を補強するガセット27に設けられたステー27aとリヤスイングアーム7の後端部のとの間にはリヤクッションユニット28が設けられている。
【0022】
この車体構造は、前部車体フレーム2をエンジン3の前部へ取付け、かつ後部車体フレーム5をエンジン3へ取付け、さらにリヤスイングアーム7をクランクケース18へ直接ピボット軸25で取付けることにより、エンジン3を車体フレームの一部として利用したものであり、実質的には前部車体フレーム2,エンジン3及び後部車体フレーム5により高剛性の車体フレームを形成している。
【0023】
図2に示すように、シリンダ部19はシリンダブロック30,シリンダヘッド31,ヘッドカバー32を積み重ねてボルトにより結合一体化し、かつクランクケース18の前部へ固定したものであり、エンジン3は全体として高剛性構造体となっている。
【0024】
シリンダヘッド31の背面には吸気ポート(図示省略)が設けられて、ここに気化器20が接続される。但し気化器10の代わりに電子燃料噴射装置を接続することは任意にできる。シリンダヘッド31の前面には排気ポート(後述)が設けられ、ここに排気管21が接続される。
シリンダヘッド31の背面にはボス33が設けられ、ここに取付アーム部16の上部とシートレール22の前端部が共締めされる。
【0025】
メインフレーム15は後述するように左右分割して形成されたものをボルト・ナットで締結して結合一体化したものであり、その前部は前方へ向かって2又状に拡開するヘッドパイプ支持部34をなす。ヘッドパイプ支持部34の前端部上下には前方へ突出するボス部35が設けられている。
【0026】
ヘッドパイプ支持部34と取付アーム部16及び17の間は中間部36をなし、ここに肉抜きを兼ねたメンテナンスホール37が形成されている。
中間部36の上下部分は連続一体に車体内方へ折れ曲がった上縁部及び下縁部をなし、各上縁部及び下縁部の車体内方側先端部はさらに上方又は下方へ折れ曲がって立てフランジ状の上フランジ38及び下フランジ39をなす。この上フランジ38及び下フランジ39はメインフレームの左右の分割部にそれぞれ対面するように設けられ、互いに当接されて締結による結合で一体化されている。これら上フランジ38及び下フランジ39は本願発明の上縁当接面及び下縁当接面に相当する。
【0027】
下縁当接面である下フランジ39は、ヘッドパイプ14の後方からエンジンの上端であるヘッドカバー32の上端部よりも下方まで延びている。このように長い下フランジ39を設けることにより、高い剛性を要求されるメインフレーム15の下部側における剛性を高めることができる。
なお、上縁当接面である上フランジ38は、ヘッドパイプ14の後方からエンジンの上端よりも上方部分で車両の前後方向でエンジンの前端部まで延び、下フランジ39と比較してより短くなっている。上フランジ38の長さをA、下フランジ39の長さをBとしたとき、A<Bとなっている。
【0028】
図中の符号40は左右のボス部35を締結により結合する第1締結部である。41はヘッドパイプ支持部34と中間部36との境界部をヘッドパイプ14の後ろ側に沿って上下方向へ設けられる3個の第2締結部である。
42は上フランジ38に前後方向へ設けられる2個の第3締結部である。
43は下フランジ39に前後方向へ設けられる3個の第4締結部である。
44はメインフレーム15の前後方向中間部にて、メンテナンスホール37の後端部上側近傍部左右を連結する第5締結部である。
45は取付アーム部16の前部及びシートレール22の前端をシリンダヘッド31の背面におけるボス33へ締結する第6締結部である。
46は取付アーム部16の後端部をクランクケース18へ取付ける第7締結部である。
47は取付アーム部17の後端部をクランクケース18へ取付ける第8締結部である。
【0029】
締結部40〜44は、メインフレーム15を構成する左右の分割部を互いに締結で結合一体化して前部車体フレーム2を形成するための部分であり、いずれもボルト・ナットで構成される。各締結部の詳細構造は後述する。
なお、これらの締結部のうち第1〜第5締結部40〜44を締結以外の結合手段(例えば、溶接)による結合部とすることは任意に可能である。
【0030】
図2中の符号48は燃料タンク4の底部前側を固定するステーであり、本図からは明らかでないが、メインフレーム15の右側部分に下端を固定され、屈曲して立ち上がった上端を燃料タンク4の底部下面と重ねボルトにより締結して結合される。4aは燃料タンク4の底部左右に設けられた下方へ突出する取付ステーであり、シートレール22のサブフレーム23が接続する部分近傍に設けられたブラケット49へボルト49aにて締結で結合されている。燃料タンク4はこれら3ヶ所(ステー48及び左右の取付ステー4a)で車体フレームへ3点支持される。なお、図3以降の図にはこれらステー48及びブラケット49は省略されている。
【0031】
また、図2中の直線L1はエンジンの前端(本実施例ではシリンダヘッドカバー32の側面視上部前端)を通る垂線であり、第3締結部42はこの線よりも前方に位置し、上フランジ38の後端はこの直線l1より後方に位置する。また、この直線L1上には後述する前方開放部56の前端部P2(図8が)ほぼ位置している。
直線L2はエンジンの上端(本実施例ではシリンダヘッドカバー32の側面視上部後端)を通る水平線であり、この線よりも上方に第1締結部40、第2締結部41、第3締結部42及び第5締結部44が位置し、下方に第6締結部45、第7締結部46、第8締結部47が位置する。第4締結部43はこの直線L2の上下に位置している。
【0032】
次に、車体フレーム構造についてより詳細に説明する。図3は、車体フレームを斜め上方から示す斜視図、図4はその平面図、図5は正面図、図6は後部車体フレーム5を省略した斜め後方から示す斜視図、図7は前部車体フレーム2と後部車体フレーム5を組み立てた状態で側面斜め下方から示す斜視図、図8は組み立て状態の後部車体フレーム5を図1のZ矢示方向から示す図、図9はヘッドパイプ14の斜視図、図10はメインフレーム15を構成する左側メインフレーム部の外側面を示す斜視図、図11はその反対側(内側面)を示す斜視図である。
【0033】
これらの図に明らかなように、メインフレーム15は左右に分割形成されたほぼ対掌構造の左分割体である左側メインフレーム部15L及び右分割体である右側メインフレーム部15Rで構成され、左側メインフレーム部15L及び右側メインフレーム部15Rを向かい合わせて最中合わせ構造とし、相互に締結による結合で一体化したものである。
なお、以下の説明において、左右共通部の構造部分については、煩雑を避けるため、原則として左右を区別しない共通符号にて説明する。
【0034】
後部車体フレーム5も同様にシートレール22,サブフレーム23,24がそれぞれ左右一対で設けられ、全体として一体化されたものである。これらを左右区別する場合には、右側にR,左側にLを添字する(図3)。
【0035】
図3・7・8等における符号22a,22bは、左右のシートレール22R,22L間を連結するクロスメンバであり、前方のクロスメンバ22aはサブフレーム23の上端接続部近傍に設けられ、後方のクロスメンバ22bはサブフレーム24の上端接続部近傍に設けられている。
【0036】
メインフレーム15の平面視及び上面視(図4・8)で、ボス35を含むヘッドパイプ支持部34は前方へ向って2又状に拡開する略U字状をなし、この略U字状の空間内に、円筒状をなし鋳造等適宜方法で形成されるヘッドパイプ14が上下方向へ長く収容され、前後を第1締結部40及び第2締結部41で締結で結合することにより、ヘッドパイプ14とメインフレーム15が一体化される。左側メインフレーム部15L及び右側メインフレーム部15Rはさらに第3〜5締結部42〜44で連結一体化されて前部車体フレーム2となる。
【0037】
このようにして組み立てられた前部車体フレーム2は、中間部36より後方側の後部が左右へ拡開してエンジン3の左右側面へ重なる拡開部をなす。この拡開部のうち上部側には図4・7・8・9等に示すように、前後方向へ開放された略U字状の後方開放部55が、上フランジ38の後方に形成される。後方開放部55はクランクケース18との締結部である取付アーム部16の後端における第7締結部46からシリンダヘッドカバー32の上方に渡って大きく開口し、その縁部は横フランジ52で縁取られている。前端部P1は左右の上フランジ38の後端部に近接する車体中心C上にある。また後方開放部55の開口縁部における左右部分は取付アーム部16の上面によって形成される。
【0038】
図4に明らかなように、後方開放部55の内側にはヘッドカバー32,気化器20が臨み、上方からメンテナンス可能になっている。また、この図4において、車体中心線C上には、左側メインフレーム部15L及び右側メインフレーム部15Rを締結で結合する第3及び第4締結部42及び43並びに第5締結部45におけるボス33及び第6締結部46におけるボス53がそれぞれ位置している。
【0039】
図6に示すように、気化器20はカラー44c,ボス33及びカラー45c、左右の取付アーム部16の後方に位置し、メンテナンス容易かつ飛石等から保護される位置にある。
【0040】
図8に示すように、ボス33とクロスメンバ22aの間は十分に間隔が保たれ、この間を通して気化器20等をメンテナンス可能になっている。左右のシートレール22R,22Lは後端で相互が連結されて全体として一体化した上面視略U字状をなしている。
【0041】
図5・7・8等に明らかなように、メインフレーム15の後部側下面には、前後方向へ開放された略U字状の前方開放部56が設けられる。図5に明らかなように、前方開放部56は横フランジ52と同様に内側へ略水平に折り曲げられた横フランジ57に縁取られ、その前端部(上端部)P2は、下フランジ39の後端部近傍の車体中心C上に位置している。また前方開放部56の左右部分は取付アーム部17の下面によって形成される。
【0042】
図5に明らかなように、前方開放部56内には、エンジン3の前面部分、特に、シリンダブロック30及びシリンダヘッド31の各前面部が臨み、シリンダヘッド31の前面には、排気ポート58が車体中心より若干右側位置にて斜め右側へ指向して開口している。このように、排気温によって高温となる排気ポート58を中心とするシリンダヘッド31等のシリンダ部19の前面を車体前方へ露出させることにより、これらへ走行風を接触させて冷却させることができ。
【0043】
図4・8等に明らかなように、左右の中間部36上面がそれぞれ車体中心C方向へ略水平に屈曲した上縁部36aとなって天井部をなす。左右の上縁部36aの各対向する端部(車体中心側先端部)は再び上方へ折れ曲がって上フランジ38をなす。本願発明の上縁当接面に相当する左右の上フランジ38は左右方向にて互いに対面し、当接して第3締結部42にて締結により結合される。このため、左右の上縁部36aは左右の中間部36間を連結して実質的なクロスメンバをなす。このクロスメンバ状構造部は前後方向の面積が比較的大きくなるので、剛性の高いクロスメンバとして機能し、メインフレーム15の剛性を高めることができる。
【0044】
図5等に明らかなように、左右の中間部36の下面もそれぞれ車体中心C方向へ略水平に屈曲した下縁部36bとなって底壁部をなす。左右の下縁部36bの各対向する端部(車体中心側先端部)は再び下方へ折れ曲がって下フランジ39をなす。本願発明の上縁当接面に相当する左右の下フランジ39は左右方向にて互いに当接して第4締結部43にて締結により結合される。このため、左右の下縁部36bは左右の中間部36間を連結して実質的なクロスメンバをなす。このクロスメンバ状構造部は前後方向の面積が比較的大きくなるので、メインフレーム15の剛性を高めることができる。しかも、上縁部36aの面積よりも大きいので、メインフレーム15の下側における剛性をより高めることができる。
【0045】
また、図8に明らかなように、後方開放部55の前端部P1よりも前方開放部56の前端部P2の方が後方に位置し、その開放面積は後方開放部55よりも前方開放部56の方が小さい。この開放面積の大小は図7においても明らかである。
【0046】
そのうえ、図2に示すように、上フランジ38の長さAは下フランジ39の長さBよりも短く、下フランジ39の長さBはシリンダヘッドカバー32の上部前端に至る程度の長さであり、締結数も上フランジ38が2ヶ所であるのに対して下フランジ39が3ヶ所である。このため、メインフレーム15の下部側における剛性がより高くなる。
【0047】
そこで、ブレーキング時に車体の重心が前方へ移動すると、メインフレーム15の下部側へ大きな荷重が加わった場合、下フランジ39側は締結数が多く、かつ長くなっており、メインフレーム15の下部側が予め高剛性構造になっているので、この力に耐えることができる。また、車両の左右方向に荷重が加わったときは、左側メインフレーム部15L及び右側メインフレーム部15Rには分割部を突き合わせる方向へ力がかかるが、この部分は上フランジ38及び下フランジ39を当接して締結により結合することにより高剛性になっているから、これらの上フランジ38及び下フランジ39で受け止めることができ、分割構成にしても十分に剛性を高めることができる。
【0048】
しかも、メインフレーム15の上側には開口面積の大きな後方開放部55を設けることにより、シリンダ部のメンテナンス用開口を大きく確保してメンテナンス性を向上させることができる。
また、開口面積の小さな前方開放部56を設けることにより、メインフレーム15の下部側における剛性を確保しつつも、シリンダヘッド31を中心とするシリンダ部19の前方を開放しているので、前方からの走行風をシリンダヘッド31を中心とするシリンダ部19の前部へ導入し,特に温度が高くなる排気ポート58の周辺を冷却することができるので、エンジン3の冷却効率を向上させることができる。
【0049】
図9は、ヘッドパイプ14の斜視図である。ヘッドパイプ14の前面には上下2ヶ所にカラー40cが横向きにして溶接等で一体化されている。上下のカラー40cの間隔は上下のボス部35の間隔と同じである。
ヘッドパイプ14の背面には上下方向へ3個のカラー41cが同様に取付けられている。このうち3個のカラー41cは上下方向へ3個設けられる第2締結部41と対応している。
なお、この実施例ではヘッドパイプ14とカラー40cとカラー41cが溶接で一体化されているが、これを鋳造で一体に作ってもよい。
【0050】
このようにすると、図4,5等に示すように、左右のヘッドパイプ支持部34の内側へヘッドパイプ14を入れ、第1締結部40,第2締結部41にて各ボルト40b,41bを対応するカラー40c、41cに通してナット40a,41aで締結により結合すれば、ヘッドパイプ14とメインフレーム15が強固に一体化される。このため、従来のように、ヘッドパイプ14とメインフレーム15を鋳造等で一体成形しなくても、強固に一体化したものを形成できる。
【0051】
また、ヘッドパイプ14又はメインフレーム15のいずれか交換する必要が生じて交換するときなどは、いずれか一方をのみ交換することができる。しかもメインフレーム15は左右分割構造であるから、メインフレーム15を交換する場合は、左右いずれかの分割体のみを交換するだけで済む。
【0052】
さらに、仕様の変更により、形状や構造等が異なるヘッドパイプ14を交換する場合にも、カラー40c、41cが共通であれば、新たなヘッドパイプ14をヘッドパイプ支持部34間へ入れて締結により結合できるので、容易に交換可能となり、メインフレーム15を共通部品としてヘッドパイプ14のみを別仕様のものに交換することができるから、仕様変更が容易になる。
【0053】
図10は左側メインフレーム部15Lの外側面を示す斜視図、図11はその反対側(内側面)を示す斜視図である。なお、右側メインフレーム部15Rもほぼ同様の対掌構造になっているので、以下、左分割体15Lについてのみ説明する。
図10,11において、左側メインフレーム部15Lは鉄板等の適宜金属板をプレス成形して安価に形成される。但しプレス成形によらず鋳造や鍛造で成形することも自由にできる。
【0054】
ボス部35にはボルト通し穴35aが設けられる。ヘッドパイプ支持部34の第2締結部41に相当する部分には内方へ突出するボス59(図11)が設けられ、これらにボルト通し穴59aが設けられている。
上フランジ38、下フランジ39、ボス50、ボス51及び取付アーム部16,17の後端部にもそれぞれボルト通し穴38a,39a,50a,51a,16a及び17aが形成されている。
メンテナンスホール37は前後方向へ長い長穴状であり、その縁部は内側へ折り曲げられた環状のフランジ37aをなし、メンテナンスホール37の周囲を補強する。
【0055】
左側メインフレーム部15Lの周囲は上側の横フランジ52及び下側の横フランジ57をなして縁取られ、これらの横フランジ52・57によって高剛性構造をなしている。取付アーム部16と17の接続部は上側の横フランジ52と下側の横フランジ57が連続一体化する部分である。
【0056】
次ぎに、各締結部の詳細構造を説明する。図12は第1締結部40を示す図2の12−12線断面図である。この図に明らかなように、左右のボス部35間に配置されたカラー40cにボルト40bを車体左側から通し、車体右側にてナット40aにて締結により結合される。なお、ボルト40bとナット40aは左右反対でもよい(以下の各締結部も同様)。
【0057】
第2締結部41も同様の構造で、左右のヘッドパイプ支持部34のボス部59の内側へヘッドパイプ14の背面側に設けられているカラー41cを配置してボルト穴59aをカラー41cの穴に位置決めし、ボルト41bを通してナット41aで締結により結合する。
【0058】
図13は第3締結部42及びに第4締結部43関する図2の13−13線断面である。左右の中間部36は、車体中心C上にて、左右の上フランジ38,下フランジ39を左右から合わせ、第3締結部42はボルト42bを両上フランジ38へ通して他側でナット42aで締結により結合することにより、結合一体化する。第4締結部43では、ボルト43bを両下フランジ39に通して他側でナット43aで締結により結合することにより一体化する。
【0059】
この締結状態にて、左右の中間部36はその上端及び下端から略水平に屈曲して上フランジ38及び下フランジ39に連続する上縁部36a及び下縁部36bを有するため、この部分が天井部及び底壁部をなし、一部にメンテナンスホール37が開口するものの、全体として閉じられた断面のボックス形状をなすため高剛性を実現する。
【0060】
しかも、上縁部36a及び下縁部36bは実質上左右の中間部36を連結する際のクロスメンバとして機能し、中間部36の剛性を高めるとともに、別部材のクロスメンバを省略できるので、部品点数を削減し、組立を容易にする。
【0061】
また、左右の上フランジ38,下フランジ39を合わせてナット42aとボルト42b及びナット43aとボルト43bにて締結により結合するので、左右の上フランジ38,下フランジ39間にカラーを省略でき、短いボルトで締結により結合できる。
【0062】
図14は第5締結部44に関する図2の14−14線断面図である。この図に示すように、左右のボス50間に長尺のカラー44cを入れ、ボルト44bをカラー44cへ通してナット44aにて締結により結合することにより左右の中間部36が一体化される。ボス50は外表面から内方へ凹入され、この凹部内へナット44a及びボルト44bの頭部が収容される。
【0063】
図15は第6締結部45に関する図2の15−15線断面図であり、シリンダヘッド31と一体のボス33の左右へ左右一対のカラー45c,45cを配置し、これらカラー45c,ボス33及びカラー45cにボルト45bを通してナット45aで締結により結合することにより一体化される。左右のカラー45cはシートレール22の左右部分22R,22Lの各先端に外周部を溶接一体化されている。
【0064】
ボス51は取付アーム部16に外方へ突出し、内面が凹状をなし、この内面側の凹部内へカラー45cの外方端部が嵌合位置決めされる。
横フランジ52は取付アーム部16の上下縁部から屈曲して内方へ略水平に曲がって形成され、取付アーム部16の剛性を高めている。また、クランクケース18と別にシリンダヘッド31へ締結で結合することにより、エンジン3へかかる荷重をシリンダヘッド31へ分散させることができ、クランクケース18へ力が集中することを回避できる。
そのうえ、シートレール22を取付アーム部16の取付用部材である第6締結部45を共用して取付できるので、部品点数を削減でき、シートレール22取付用の専用ボスをエンジンへ設ける必要がなく、取付も容易になる。
【0065】
図16は第7締結部46に関する図2の16−16線断面図であり、クランクケース18の上面でシリンダブロック30の背面側基部近傍に設けられたボス53の左右にカラー46cを配置し、ボルト46bをこれらに通し、ナット46aで締結により結合することにより一体化される。横フランジ52はカラー46cの外周のほぼ半周分を囲み、カラー46cの外方端部を位置決めする。
【0066】
また、第8締結部47も第7締結部46と同様構造であり、クランクケース18の前部に設けられたボス54(図5)へ締結される。
【0067】
なお、本願発明は上記の実施例に限定されるものではなく、発明の原理内において種々に変形や応用が可能である。例えば、上記実施例では左右のメインフレーム構成部相互の結合について締結による結合を説明したが、締結に代えて溶接で結合してもよい。
また、上フランジ38の長さAよりも下フランジ39の長さBを長くしてメインフレーム15の下側を高剛性にする発明と、後方開放部55の開口面積よりも前方開放部56の開放面積を小さくしてメインフレーム15の下側を高剛性にする発明は必ずしも同一の車体フレーム構造に併用する必要はなく、それぞれを単独で設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】実施例に係る自動2輪車の側面図
【図2】上記要部の拡大図
【図3】車体フレームを側面側から示す斜視図
【図4】車体フレームの平面図
【図5】車体フレームの正面図
【図6】後部車体フレームを省略した車体フレームを後方側から示す斜視図
【図7】前部車体フレームと後部車体フレームの組立体の斜視図
【図8】上記組立体を図1のZ矢示方向から示す図
【図9】ヘッドパイプの斜視図
【図10】左側メインフレーム部を外側面側から示す斜視図
【図11】上記分割体を内面側から示す斜視図
【図12】図2の12−12線断面図
【図13】図2の13−13線断面図
【図14】図2の14−14線断面図
【図15】図2の15−15線断面図
【図16】図2の16−16線断面図
【符号の説明】
【0069】
2:前部車体フレーム、3:エンジン、5:後部車体フレーム、14:ヘッドパイプ、15:メインフレーム、16:取付アーム部、17:取付アーム部、18:クランクケース、19:シリンダ部、20:気化器、31:シリンダヘッド、32:ヘッドカバー、38:上フランジ(上縁当接面)、39:下フランジ(下縁当接面)、40:第1締結部、41:第2締結部、42:第3締結部、43:第4締結部、44:第5締結部、45:第6締結部、46:第7締結部、47:第8締結部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドパイプとこのヘッドパイプからエンジンのクランクケースに向けて延出するメインフレームとで前部車体フレームを形成し、このメインフレームの後端部をエンジンの前部に取付けてエンジンを車体フレームの一部に利用した自動2輪車の車体フレーム構造において、
前記メインフレームは、左右別体に形成され相互に結合一体化される左側メインフレーム部と右側メインフレーム部を備え、
これらの左側メインフレーム部及び右側メインフレーム部は、それぞれの下部に対向する下縁当接面を設け、これらの下縁当接面を相互に当接させて結合することにより前記メインフレームを構成するとともに、
前記各下縁当接面はそれぞれ、前記ヘッドパイプの後方からエンジンの上端よりも下方まで延びていることを特徴とする自動2輪車の車体フレーム構造。
【請求項2】
前記左側メインフレーム部と前記右側メインフレーム部は、それぞれの上部に対向する上縁当接面を設け、これらの上縁当接面を相互に当接させて結合すること特徴とする請求項1に記載した自動2輪車の車体フレーム構造。
【請求項3】
前記メインフレームは、後部が前記エンジンの左右側面に重なるように左右へ枝分かれして拡開する拡開部を有し、この左右の拡開部の各後端部にて前記クランクケースへ締結したこと特徴とする請求項2に記載した自動2輪車の車体フレーム構造。
【請求項4】
前記左右の拡開部は、前記メインフレームの後部上側で前記上縁当接面よりも後方に、車両前後方向へ開放される後方開放部を形成し、
前記メインフレームの後部下側で前記下縁当接面よりも後方に、車両前後方向へ開放される前方開放部を形成するとともに、
前記前方開放部の開口面積が前記後方開放部の開口面積よりも小さいこと特徴とする請求項3に記載した自動2輪車の車体フレーム構造。
【請求項5】
前記後方開放部は、前記クランクケースと前記メインフレームとの締結部分からシリンダヘッド部の上方に渡って開口していること特徴とする請求項4に記載した自動2輪車の車体フレーム構造。
【請求項6】
前記メインフレームは、前記クランクケースに加えてシリンダ部とも締結し、さらにこのシリンダ部との締結部分でシートレールの前端も一緒に締結支持すること特徴とする請求項3に記載した自動2輪車の車体フレーム構造。
【請求項1】
ヘッドパイプとこのヘッドパイプからエンジンのクランクケースに向けて延出するメインフレームとで前部車体フレームを形成し、このメインフレームの後端部をエンジンの前部に取付けてエンジンを車体フレームの一部に利用した自動2輪車の車体フレーム構造において、
前記メインフレームは、左右別体に形成され相互に結合一体化される左側メインフレーム部と右側メインフレーム部を備え、
これらの左側メインフレーム部及び右側メインフレーム部は、それぞれの下部に対向する下縁当接面を設け、これらの下縁当接面を相互に当接させて結合することにより前記メインフレームを構成するとともに、
前記各下縁当接面はそれぞれ、前記ヘッドパイプの後方からエンジンの上端よりも下方まで延びていることを特徴とする自動2輪車の車体フレーム構造。
【請求項2】
前記左側メインフレーム部と前記右側メインフレーム部は、それぞれの上部に対向する上縁当接面を設け、これらの上縁当接面を相互に当接させて結合すること特徴とする請求項1に記載した自動2輪車の車体フレーム構造。
【請求項3】
前記メインフレームは、後部が前記エンジンの左右側面に重なるように左右へ枝分かれして拡開する拡開部を有し、この左右の拡開部の各後端部にて前記クランクケースへ締結したこと特徴とする請求項2に記載した自動2輪車の車体フレーム構造。
【請求項4】
前記左右の拡開部は、前記メインフレームの後部上側で前記上縁当接面よりも後方に、車両前後方向へ開放される後方開放部を形成し、
前記メインフレームの後部下側で前記下縁当接面よりも後方に、車両前後方向へ開放される前方開放部を形成するとともに、
前記前方開放部の開口面積が前記後方開放部の開口面積よりも小さいこと特徴とする請求項3に記載した自動2輪車の車体フレーム構造。
【請求項5】
前記後方開放部は、前記クランクケースと前記メインフレームとの締結部分からシリンダヘッド部の上方に渡って開口していること特徴とする請求項4に記載した自動2輪車の車体フレーム構造。
【請求項6】
前記メインフレームは、前記クランクケースに加えてシリンダ部とも締結し、さらにこのシリンダ部との締結部分でシートレールの前端も一緒に締結支持すること特徴とする請求項3に記載した自動2輪車の車体フレーム構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−83380(P2010−83380A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−255672(P2008−255672)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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