説明

自己光開始性多官能アクリレートと脂環族エポキシ化合物との二元硬化反応生成物

光重合性液状オリゴマー組成物を開示する。本オリゴマー組成物は、多官能アクリレート類とβ−ジカルボニルマイケル供与体、特にβ−ケトエステル類、β−ジケトン類、β−ケトアミド類、もしくはβ−ケトアニリド類、又はそれらの組み合わせとから合成されたマイケル付加ポリアクリレート樹脂と、脂環族エポキシド類とから形成される。本オリゴマー組成物を、それらの使用及び製造法とともに提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概略、光重合性樹脂に関する。本発明は、特に脂環族エポキシド化合物と、多官能アクリレート、及びβ−ケトエステル、β−ジケトン、β−ケトアミド又はβ−ケトアニリドから合成される多官能アクリレートオリゴマーとを含む、オリゴマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
以下に提示する情報は本発明の先行技術であるとは認めないが、単に読者の理解を助けるために提供する。
【0003】
アクリレート、メタクリレート、及びその他の不飽和モノマーは、コーティング、接着剤、シーラント、及びエラストマーに広く用いられ、光開始剤の存在下で紫外線によって、又はパーオキシド開始フリーラジカル硬化によって架橋されうる。これらの光開始剤及び/又はパーオキシドは典型的には低分子量多官能化合物であり、揮発性もしくは容易に皮膚から吸収される可能性があり、健康への悪影響を引き起こす可能性がある。官能化されたオリゴマー光開始剤はこれらの欠点のいくつかを解決しうる;通常、ポリマー状光開始剤は不揮発性化合物であり、皮膚から容易に吸収されない。しかし、多段階合成が必要とされ、低官能性が反応性及び最終特性に不利であるかもしれず、架橋をさせるために触媒又は開始剤がなお必要とされうる。
【0004】
多価アクリレート受容体化合物へのアセトアセテート供与体化合物のマイケル付加は文献に記載されている。例えば、MoznerとRheinbergerは、トリアクリレート及びテトラアクリレートへのアセトアセテートのマイケル付加を報告した(16 Macromolecular Rapid Communications 135(1995))。形成された生成物は架橋したゲルであった。図1に描いたように、一つのそのような反応において、Moznerは2つの官能基を有するポリエチレングリコール(分子量600)(PEG600-DAA)1モルに、3つの官能基を有するトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)1モルを付加させた。(各アセトアセテート「官能基」は2回反応し、ジアセトアセテートの各モルは4反応当量を有する。)得られる網目(ネットワーク)は、未反応アクリル官能基の存在にもかかわらず、「ゲル化」または硬化したと考えられる。さらなる反応が進行可能であると同時に、この網目は熱又は溶媒のいずれによっても液体にされることはできない。なぜなら実質的に架橋しているからである。
【0005】
上記反応は反応剤を説明するための様々な割合によって特徴づけることができる:TMPTA:PEG600DAA=1:1、アクリレート数とアセトアセテート官能基の官能基割合=3:2、及び反応性当量の比=3:4。
【0006】
本発明の譲り受け人であるAshland社に譲渡された、Moyら米国特許第5,945,489号及び同6,025,410号は、ある種の可溶性液状未架橋オリゴマーを開示しており、これは多官能アクリレートに対するβ−ジカルボニル供与体化合物(例えば、アセトアセテート)の一段階マイケル付加によって作られ、高価な光開始剤を必要とすることなく、紫外線を用いてさらに架橋することができる。開示されたオリゴマーは、自己光開始性アクリレート樹脂として説明されうる。その上、β−ジカルボニル供与体化合物に対して正確な割合の多官能アクリレート受容体化合物を塩基性触媒の存在下で結合された場合、液状オリゴマー組成物が生じる。上に引用した特許文献中に開示された範囲を下回る割合を用いた場合は、架橋したゲルもしくは固体生成物が作られる。加えて、開示された液状オリゴマー組成物は、紫外線硬化の前に、従来のコーティング手法、例えば、ロールもしくはスプレーを用いて、様々な基材に容易に適用することができる。
【特許文献1】米国特許第5,945,489号明細書
【特許文献2】米国特許第6,025,410号明細書
【非特許文献1】MoznerとRheinberger,16 Macromolecular Rapid Communications 135(1995)
【非特許文献2】The Encyclopedia of Polymer Science and Engneering, 第2版,Wiley-International Publication (1985)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
「モノマー」という用語は、本明細書中では、炭素を含み、比較的低分子量であり、簡単な構造の分子又は化合物であって、その他の類似及び/又は非類似の分子もしくは化合物と組み合わされて、ポリマー、合成樹脂又はエラストマーに変換されうるものとして定義される。
【0008】
「オリゴマー」という用語は、本明細書中では、わずか数個の類似及び/又は非類似モノマー単位からなるポリマー分子として定義される。
【0009】
「樹脂(レジン)」という用語は、本明細書中では、その他の類似及び/又は非類似の分子もしくは化合物との組み合わせによって、高分子量ポリマーに変換されうるオリゴマーとして定義される。
【0010】
「熱硬化」という用語は、本明細書中では、加熱した場合に非可逆的に固化又は硬化する樹脂の高分子量ポリマー生成物であると定義される。
【0011】
本発明の譲受人に譲渡された 同時係属している出願、Attorney Docket番号20435/0141(
その全開示を明確に援用する)は、実際上、多官能チオールで架橋された自己開始されたアクリレート樹脂を含む二元硬化チオレンシステムを開示している。
【0012】
アクリレート系樹脂システムの利用は、金属基材へのそれらの比較的劣る接着性によって制限されている。金属への接着は、カチオン硬化された脂肪族エポキシ化合物を用いることによって強められうる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
〔本発明のまとめ〕
適切なカチオン性開始剤の存在下で、上に開示したポリアクリレート樹脂への適切な脂環族エポキシドの付加が、高められた接着性、硬さ、及び耐摩耗性を有するさらに良好な表面硬化を有するコーティングをもたらすことを我々は開示する。
【0014】
本発明は、二元硬化重合性樹脂組成物を提供する。コーティング、接着剤、シーラント、及びインクが、2種の異なるメカニズムによって硬化する本発明の樹脂を用いて製造されうる。第一のメカニズムは、ペンダントアクリレート官能基を有するマイケル付加樹脂のUV開始フリーラジカル重合である。第二のメカニズム、いわゆるカチオン硬化は、光によって発生した強酸によって触媒される、エポキシ樹脂のUV開始酸重合をもたらす。このカチオン硬化プロセスにおいて、カチオン光開始剤はUV光によって開裂され、強ルイス酸又は強ブレンステッド酸が生じる。カチオン光開始剤は、パーフルオロメタレートオニウム塩であることが好ましい。
【0015】
本発明は、2官能脂環族エポキシド;及び有機可溶性のゲル化していない未架橋のマイケル付加樹脂、を含む液状オリゴマー組成物を提供し、このマイケル付加樹脂は多官能アクリレートマイケル受容体(acceptor)と、β−ジカルボニルマイケル供与体(donor)(特にβ−ケトエステル、β−ジケトン、β−ケトアミド、シアノアセテート、もしくはβ−ケトアニリド、又はこれらの組み合わせ)とから形成されるがこれに限定されない。
【0016】
1ヶ月より長い貯蔵安定性があり、(不飽和ポリエステル樹脂の製造において得られるような、オリゴマー「骨格」中の不飽和と対照的に)残余のペンダント不飽和アクリレート基を有し、さらにこれがUV線への曝露時には非常に速く光重合する液状オリゴマー組成物を、本発明は提供する。
【0017】
本発明は、顔料、光沢調整剤、流動化剤及びレベリング剤、並びに、コーティング、塗料、ラミネート材、シーラント、接着剤、及びインクを配合するために適切なその他の添加剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を任意選択でさらに含む液状オリゴマー組成物を提供する。そのような添加剤を開示している優れた一般的参考文献は、The Encyclopedia of Polymer Science and Engneering, 第2版,Wiley-International Publication (1985)である。
【0018】
本発明は、残余のペンダント不飽和アクリレート基を有する液状オリゴマー組成物を作成する方法を提供し、本方法は以下のステップを含む:多官能アクリレートマイケル受容体とβ−ジカルボニルマイケル供与体を用意するステップ;塩基触媒を用いて前記供与体と前記受容体とを反応させてマイケル付加体を形成するステップ;酸性化剤を加えて、全ての残りの塩基性種を中和し、少なくとも1種の脂環族エポキシドを混合するステップ。
【0019】
本発明の1つの側面では、少なくとも1種の変性用エポキシドをさらに含む液状オリゴマー組成物を提供する。変性用エポキシドは、硬化したコーティングのフィルム特性(例えば、金属への接着性、及び/又は適用目的のためにコーティングの粘度を低減するためなど)を改善するために選択される。本マイケルポリアクリレート樹脂/エポキシド二元硬化システムは、わずかなUVパルス又は微量のアミンもしくはパーオキシド触媒によって、「グリーン強度」又は「耐ブロッキング性」を発現することができる。ひとたび硬化の第一段階又は硬化の初期程度が達成されると、次にコーティングは完全硬化を行う前に成形、印刷、又はラミネート操作によって処理されうる。したがって、二元硬化の能力は、従来のUV硬化コーティングを含めた従来システムが真似することのできなかった方法で基材を操作することを可能にする。
【0020】
本発明は、脂環族エポキシドと、有機可溶性でゲル化していない未架橋のマイケル付加ポリアクリレート反応生成物とを含む液状オリゴマー組成物の使用法であって、表面に前記オリゴマー組成物を適用するステップと、カチオン光開始剤及び化学作用光線の存在下で前記組成物を硬化させるステップとを含む方法を提供する。
【0021】
本発明のある側面は、本発明のオリゴマー組成物から形成された熱硬化物を提供する。
【0022】
本発明は、上記組成物が、顔料、光沢調整剤、流動化剤及びレベリング剤、ならびにコーティング、塗料、ラミネート材、シーラント、接着剤、及びインクを配合するために適切なその他の添加剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含む液状オリゴマー組成物の使用方法を提供する。
【0023】
本発明のある側面は、さらに架橋して、コーティング(例えば、塗料、ワニス)、インク、ラミネート材、シーラント、接着剤、エラストマー、及び複合材マトリクスを作成しうるオリゴマー組成物を提供する。
【0024】
本発明は、脂環族エポキシドと、有機可溶性のゲル化していない未架橋のマイケル付加ポリアクリレート反応生成物とを含み、カチオン光開始剤の存在下でさらに架橋された重合生成物を提供する。
【0025】
〔図面についての説明〕
本発明は、付属する図面と関連させて読んだ場合に、以下の詳細な説明によって最も良く理解される。通常の実施によれば、図面の様々な特徴は縮尺によるものではないことを強調しておく。反対に、様々な特徴の寸法は明確さのために任意に拡大または縮小される。
付属の図面は本発明の典型的態様のみを説明しており、本発明はその他の同様の有効な態様を可能にするので、本発明の範囲を制限していると考えられるべきではないことに注意すべきである。
【0026】
〔好ましい態様の詳細な説明〕
本発明の実施に係る選択した態様及び好ましい方法を説明するための図に言及する。本発明は、図に表された側面に限定されないことが理解されるべきである。
【0027】
本発明のある側面は、脂環族エポキシドと、カチオン光開始剤と、有機可溶性のゲル化していない非架橋のマイケル付加ポリアクリレート反応生成物との制御された割合の混合物を含む液状オリゴマー組成物を提供する。マイケル付加ポリアクリレートオリゴマーは、多官能アクリレートマイケル受容体とβ−ジカルボニルマイケル供与体から形成される。β−ジカルボニルマイケル供与体は、β−ケトエステル、β−ジケトン、β−ケトアミド、及びβ−ケトアニリドの中から適切に選択される。多官能アクリレートマイケル受容体は、ジアクリレート、トリアクリレート、及びテトラアクリレートの中から適切に選択される。β−ジカルボニル供与体及び多官能アクリレート受容体の幅は、組成物の設計者に、最終生成物の特性において大きな幅の選択性を用いる機会を提供する。
【0028】
好ましいジアクリレートは以下を含むがこれらに限定されない:エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、エトキシル化ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジアクリレート、レゾルシノールジグリシジルエーテルジアクリレート、1,3−プロパンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、エトキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、エトキシル化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、プロポキシル化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、エポキシジアクリレート、アリールウレタンジアクリレート、脂肪族ウレタンジアクリレート、ポリエステルジアクリレート、及びそれらの混合物。
【0029】
好ましいトリアクリレートは以下を含むがこれらに限定されない:トリメチロールプロパントリアクリレート、グリセロールトリアクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、エトキシル化グリセロールトリアクリレート、プロポキシル化グリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、アリールウレタントリアクリレート、脂肪族ウレタントリアクリレート、メラミントリアクリレート、エポキシノボラックトリアクリレート、脂肪族エポキシトリアクリレート、ポリエステルトリアクリレート、及びそれらの混合物。
【0030】
好ましいテトラアクリレートは以下を含むがこれらに限定されない:ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、プロポキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシル化ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、プロポキシル化ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、アリールウレタンテトラアクリレート、脂肪族ウレタンテトラアクリレート、ポリエステルテトラアクリレート、メラミンテトラアクリレート、エポキシノボラックテトラアクリレート、及びそれらの混合物。
【0031】
好ましい態様において、β−ジカルボニルマイケル供与体はβ−ジケトン(例えば、2,4−ペンタンジオン)である。適切には、本発明はまた、所望する樹脂品質及び最終用途にしたがって、β−ケトエステル(例えば、エチルアセトアセテート)、β−ケトアニリド(例えば、アセトアセトアニリド)、又はβ−ケトアミド(例えば、アセトアセトアミド)又はマイケル供与体混合物で実施しうる。本発明の好ましい態様においては、β−ジカルボニルは官能性(N)(N=2)を有する。より高い官能性(すなわち、N=4、6...)のβ−ジカルボニル供与体は適しているが、システムの望ましくないゲル化を避けるためにいっそう注意深い反応化学量論の制御を行わなければならない。
【0032】
官能性=2を有する適切なβ−ジカルボニル供与体化合物は以下を含むがこれらに限定されない:エチルアセトアセテート、メチルアセトアセテート、2−エチルへキシルアセトアセテート、ラウリルアセトアセテート、t−ブチルアセトアセテート、アセトアセトアニリド、N−アルキルアセトアセトアニリド、アセトアセトアミド、2−アセトアセトキシルエチルアクリレート、2−アセトアセトキシルエチルメタクリレート、アリルアセトアセテート、ベンジルアセトアセテート、2,4−ペンタンジオン、イソブチルアセトアセテート、及び2−メトキシエチルアセトアセテート。
【0033】
官能性=4を有する適切なβ−ジカルボニル供与体化合物は以下を含むがこれらに限定されない:1,4−ブタンジオールジアセトアセテート、1,6−ヘキサンジオールジアセトアセテート、ネオペンチルグリコールジアセトアセテート、シクロヘキサンジメタノールジアセトアセテート、及びエトキシル化ビスフェノールAジアセトアセテート。
【0034】
官能性=6を有する適切なβ−ジカルボニル供与体化合物は以下を含むがこれらに限定されない:トリメチロールプロパントリアセトアセテート、グリセリントリアセトアセテート、及びポリカプロラクトントリアセトアセテート。
【0035】
官能性=8を有する適切な、しかし限定されないβ−ジカルボニル供与体化合物は、ペンタエリスリトールテトラアセトアセテートである。
【0036】
上記マイケル付加反応は強塩基によって触媒される。好ましい塩基はジアザビシクロウンデセン(DBU)であり、これは充分に強く且つモノマー混合物中に容易に溶解する。その他の環状アミジン類、例えば、ジアザビシクロノネン(DBN)及びグアニジン類もまた、この重合を触媒するために適している。カリウムtert−ブトキシドなどのI族アルコキシド塩基は、それらが反応溶媒に充分な溶解度を有するならば、所望する反応を促進するために通常は適している。第四級水酸化物及びアルコキシド、たとえば、水酸化テトラブチルアンモニウムまたはベンジルトリメチルアンモニウムメトキシドは、マイケル付加反応を促進するための別の群の好ましい塩基触媒を構成する。最後に、強い、親有機性アルコキシド塩基は、ハロゲンアニオン(例えば、第四級ハライド)とエポキシド基との間の反応によりその場で(in situ)生成されうる。そのようなin situ触媒は本出願の譲受人であるAshland Inc.に譲渡された係属中の出願10/255,541号に開示されている。出願10/255,541号の全ての内容を、その全体を実際上参照し援用する。
【0037】
ジアクリレートモノマーへの、メタクリレート官能性β−ジカルボニル化合物(例えば、2−アセトアセトキシエチルメタクリレート(AAEM))のマイケル付加は、反応性ペンダントメタクリレート基をもつ液状ポリアクリレートを生成し、これは次の硬化反応において架橋されうる。アクリレートとアセトアセテートは相互に反応性であり、かつ所望するマイケル付加反応の条件下ではメタクリレートは実質的に不活性であるため、高度に官能化された(1繰り返し単位当たり1メタクリレート)、液状の未架橋オリゴマーを一段階、常温、無溶媒反応で得ることができる。
【0038】
本発明は、溶媒を必要としないことについて利点をもたらす。しかし、マイケル反応の高い選択性は、様々なラミネート用樹脂中に容易に組み込まれる低粘度システムを与えるために、不活性溶媒としてスチレンおよびメチルメタクリレートなどのモノマーを使用することを可能にする。適切な、これらに制限されることのない非反応性溶媒には、スチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、酢酸アリル、メタクリル酸アリル、フタル酸ジアリル、C〜C18−メタクリル酸エステル、ジメタクリレート、及びトリメタクリレートが含まれる。
【0039】
本発明は、残余のペンダント不飽和アクリレート基を有する樹脂を提供する。残余のペンダント不飽和基とは、反応剤の化学量論を注意深く制御することによって、重合可能なアクリル基が保たれていることを意味する。すなわち、マイケル供与体上の反応部位よりも多くのアクリル基が存在する。その付加反応の性質が、マイケル付加の部位から離れたペンダントアクリル基(ペンダントは、2つの側で結合している構造の「バックボーン」の一部として存在するのに対比される)を残す。ペンダントアクリル基は、フリーラジカル重合、さらなるマイケル付加架橋、又は、例えば、アミンとの「偽マイケル付加(pseudo Michael addition)」反応に利用可能である。UV照射におけるメルカプタンとのチオール−エン付加による偽マイケル付加反応は、同時係属出願Attorney Docket20435/0141に開示しており、その開示全体を実際上、参照により特に援用する。マイケルポリアクリレート樹脂のペンダントアクリレート基はまた、強酸発生カチオン光開始剤の存在下でのフリーラジカル機構によって架橋するために利用でき、なぜなら、光分解プロセスによってフリーラジカルも形成されるからである。
【0040】
以下の実施例において、他に指定のない限り、全ての部数は重量(質量)による。
【0041】
マイケルポリアクリレート樹脂(マイケルオリゴマー、マイケル付加体、もしくはマイケル付加生成物とも称される)の合成の例を図2に示す。トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)59.2g及びジアザビシクロウンデセン(DBU)0.4gを、機械式撹拌機と滴下ロートを備えた500mlの三口丸底フラスコ中に秤量した。エチルアセトアセテート(EAA)13.0gを滴下ロート中に秤量した。TMPTA及びDBUをEAAの添加に先立って5分間混合した。EAAは次に15分にわたって、撹拌したTMPTA/DBU混合物に滴下して加えた。EAAの添加が完了した後、この溶液を54℃に加温した。100分で発熱がおさまった後、粘稠な黄色液体が得られた。これは静置しておいてもゲル化しなかった。
【0042】
アクリレート:マイケル供与体の当量比が液状の未架橋生成物を製造するために充分であるという条件で、アクリレートとβ−ジカルボニルマイケル供与体のさまざまな組み合わせに対して同じ一般法を用いることができる。特に発熱性もしくは大きな規模での反応については、マイケル供与体の制御された段階的な添加及び/又は反応の冷却が、アクリレート官能基の早計な、熱によって開始される架橋を防止するために必要とされうる。
【0043】
本発明のある面は、二元硬化メカニズムを提供する。脂環族エポキシド化合物が適切なカチオン光開始剤とともにマイケルアクリレート樹脂に添加される。カチオン光開始剤は、紫外(UV)光によって励起された場合に光分解するオニウム化合物である。様々なオニウム種の光分解はルイス酸又はブレンステッド酸を生じさせる。(Koleske, J.V., Radiation Curing of Coatings, ASTM Manual 45, (2002))。光分解プロセスの一部として、フリーラジカルが形成され、それが樹脂中に存在するエチレン性不飽和基の重合を触媒することができる。エポキシドとエチレン性不飽和化合物との重合は、オニウム光開始剤の光分解で解離した強酸によって触媒される。
【0044】
本発明のカチオン光開始剤は、UV照射した場合に分解して強酸を生成するオニウム塩である。より具体的には、光開始剤には、アリールスルホニウム金属塩、アリールヨードニウム金属塩、及びアリールホスホニウム金属塩が含まれる。これら及びその他のカチオン光開始剤は、G. Bradley編Wiley/SITA Series in Surface Coatings Technology, Vol.III, John Wiley and Sons Ltd., Chichester, England, 1998, p.329の、J.V.Crivello及びK.Dietlikerによる「photoinitiators for Cationic Polymerisation(カチオン光重合のための光開始剤)」のChapter IIIに含まれている。引用されているオニウム塩は、適切かつ好ましいカチオン光開始剤の非制限的な例であることが理解される。当業者は、その他の適切なカチオン光開始剤に精通しているか又は最小の実験でそれらを決定することができよう。
【0045】
アリールスルホニウムカチオンの例は、トリアリールスルホニウム(例えば、トリフェニルスルホニウム)カチオンである。トリアリールスルホニウムカチオンは、アリールスルホニウム塩の複合体混合物として存在することがわかっている。「トリアリールスルホニウム」の語は、本明細書において、アリールスルホニウム種の複合体混合物及び/又はそのような種のいずれか1つを意味するために用いられる。
【0046】
アリールヨードニウムカチオンの例は、ジアリールヨードニウム(例えば、ジフェニルヨードニウム)カチオンである。ジアリールヨードニウムカチオンは、ジアリールヨードニウム塩の複合体混合物として存在することがわかっている。「ジアリールヨードニウム」の語は、本明細書において、アリールヨードニウム種の複合体混合物及び/又はそのような種のいずれか1つを意味するために用いられる。
【0047】
アリールホスホニウムカチオンの例は、テトラアリールホスホニウム(例えば、テトラフェニルホスホニウム)カチオンである。テトラアリールホスホニウムカチオンは、テトラアリールホスホニウム塩の複合体混合物として存在することがわかっている。「テトラアリールホスホニウム」の語は、本明細書中で、アリールホスホニウム種の複合体混合物及び/又はそのような種のいずれか1つを意味するために用いられる。
【0048】
未解離のオニウムカチオン光開始剤は、偽メタル(pseudo-metal)アニオン(X)と錯形成しているオニウムカチオン、好ましくはポリアリールオニウムカチオンからなる。好ましい偽メタルアニオンは、パーフルオロメタレートアニオンである。適切な偽メタルアニオン(X)は当技術分野で公知である。適切かつ好ましい偽メタルアニオンの非制限的な例には、BF、PF、SbF、及びB(Cが含まれる。
【0049】
本発明のカチオン光開始剤にはまた、有機金属化合物、例えば、鉄アレーン塩、ジルコノセン塩、マンガンデカカルボニル塩がふくまれうる。適切な有機金属化合物は、Koleske, JV, Radiation Curing of Coatings, ASTM Manual 45(2002)に開示されている。
【0050】
マイケル付加は、強塩基、例えば、ジアザビシクロウンデセン(DBU)によって触媒される。マイケル反応に続いて、塩基を、酸性化剤の添加によって反応させ且つ中和させることが好ましい。適切な酸性化剤には、リン酸類、カルボン酸類、酸ハーフエステル類、及び無機酸エステル類(例えば、ヒドロキシエチルメタクリレートホスフェート又はヒドロキシエチルアクリレートホスフェート)が含まれるがこれらに限定されない。好ましくは、酸性化剤は塩基に対して少なくとも化学量論量で添加される。しかし、酸性化剤は、超化学量論量で添加されることもできるが、これは貯蔵安定性の問題を生じさせるかもしれない。
【0051】
硬化に先立ち、架橋を触媒しうるいかなる塩基性種(例えば、アミン類、アルコキシド類、フェノキシド類など)も存在しない場合は、反応剤を任意のときに混合し、安定で均一な混合物を形成することができる。時期尚早のゲル化及び樹脂粘度の最小限の増加もないこととして定量的に定義される貯蔵安定性は、本システムが充分に酸性化され且つ混合物が化学活性光線へ曝露されずに保たれていることを条件に達成されうる。この点に関していかなる確立された「基準」もない。許容可能性の判定基準は、最終ユーザーによって定められる。
【0052】
本発明の目的に適したエポキシドは、広範囲の市販のエポキシド類から当業者によって選択されうる。エポキシドの選択は、最終的に硬化した生成物がもつことが望まれる特性によって定められる。架橋を生じさせるためには、エポキシドは少なくとも二官能でなければならない。好ましい二官能エポキシドは、ビス−(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペートである。さらに好ましい二官能エポキシドは、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートである。2より多いエポキシ官能性を有する化合物もまた、本発明の目的に適している。
【0053】
本発明に適したエポキシドは、25℃で約1000cP未満のブルックフィールド粘度を有する。適切なエポキシドは、硬化時に金属に対する強い接着をもたらす。当業者は、その他の方法のなかでも当分野で公知のASTM D3359によって、接着力の適切な値を容易に決定することができる。適切なエポキシドは、標準温度及び標準圧力下で、透明な、単一相の液体である。さらに、適切なエポキシドは、混合したマイケルオリゴマー類から分離し又はそれと反応する最小限の傾向によって定義されるとおりに安定である。
【0054】
最終組成物の特性は、「変性用エポキシド」を含有させることによって適切に変えることができる。変性剤として適切なエポキシドには、リモネンモノオキシド、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、及びエポキシフェノールノボラックが含まれる。最後の2つの引用したエポキシドは、脂環族エポキシドとは考えられない。しかし、それらは本発明の目的に適している。
【0055】
紫外線光重合は、表面に本発明の組成物の一部を適用することによって実証される。本組成物を約3mil以下の厚さに表面上に広げる。本樹脂を、「引き延ばし」法によってアルミニウム又はステンレススチール基材に適用する。600ワットHバルブ及び40フィート/分のベルトスピードを用いるFusion Systems社のUV硬化ユニットで試験体を硬化させた。
【0056】
コーティング性能特性は、当業者によく知られている様々な試験方法によって測定される。硬度及び耐化学薬品性はアルミニウムパネル上で評価し、接着性はスチールパネル上で評価し、耐摩耗性の測定は白色塗装したアルミニウムパネル上で行った。
【0057】
硬度。フィルム硬度は硬い物体による切断、剪断、又は貫通に抵抗するコーティングの能力である。コーティング硬度の測定方法は、既知の硬度の鉛筆の芯でフィルムを引っかくことである。この結果は、基材まで達するようにフィルムを引っ掻くか又は切断しない最も硬い芯として報告される。この試験は非常に主観的ではあるけれども、フィルム硬度を決定するための迅速且つかなり信頼性のある方法を提供する。鉛筆法による測定として:柔らかい<6B−5B−4B−3B−2B−B−HB−F−H−2H−3H−4H−5H−6H>硬い。本方法は、ASTM D3363の方法に準拠している。
【0058】
耐溶剤性。耐溶剤性は、溶媒の攻撃又はフィルムの変形に抵抗するコーティングの能力である。適切な溶剤を充分含ませた布でコーティングをこすること(ラビング)が、耐溶剤性の特定レベルを達成しているかどうかを評価する一つの方法である。全てのラビング試験は、メチルエチルケトン(MEK)を用いて行い、コーティングされた表面上での1回の完全な前後の動きである二重こすり法を使用した。試験動作を標準化するために、チーズクロスを16オンスの丸頭ハンマーの丸端部に固定した。測定者はハンドルの基部でハンマーを保持するので、この二重こすり法はハンマー重量を利用している。この試験は、二重こすり動作がフィルム中に切り込みを入れるか又は目立つフィルムの不調が明らかになるまで行った。本試験は、ASTM D4752の方法からの変形である。
【0059】
光沢(グロス)。光沢計を使用して測定した。本方法は、ASTM D523の方法に準拠している。
【0060】
耐摩耗性。Atlas Crockmeter(登録商標)及び0000スチールウールを使用して測定した。用いた試験方法はASTM D6279によるものであり、基材として黒く着色したパネルを用い、摩耗前後の20°光沢を測定するか、又はASTM6279の変形であり、白色に着色された基材パネルを使用し、60°光沢を測定することによる。耐摩耗性は、(摩耗されたコーティングの光沢/摩耗されていないコーティングの光沢)X 100として定義される、%光沢保持率によって報告される。
【0061】
接着性は、試験コーティング基材として、リン酸化処理したスチールQ-panels(登録商標)を用いて行った(Q-panels(登録商標)は、Q-Panel Lab Products、クリーブランド、オハイオ州、の商標である)。接着性試験は、剛性基材上でのクロスハッチ法によって行い、Gardco Blade PA-2054(11歯、1.5mmカッター)を使用し、テストテープ法BによるASTM D3359の変形法を用いた。用いたテストテープは、Permacel #99だった。このASTM試験は、0B〜5Bの値で報告され、0Bは完全に剥離、5Bは優れた接着性を特徴づける。
【0062】
〔実施例1〕
マイケル供与体であるエチルアセトアセテート及び2,4−ペンタンジオン(2,4−PD)に基づく新規なマイケル付加ポリアクリレート樹脂を、米国特許第5,945,489号明細書及び同6,025,410号明細書にしたがって合成した。本マイケルポリアクリレート樹脂を、様々な水準で様々な脂環族エポキシドと混合した。樹脂/エポキシド組成物を次にリン酸化スチール基材に適用し、1500mJ/cmのUV照射量で硬化させた。続いておこるエポキシ組成物のいわゆる「ダークキュア」が完了することを確かなものにするために、全ての試験は、UV照射24時間後に、硬化した樹脂コーティングについて行った。結果はまとめて表I、II、及びIIIに報告する。
【0063】
【表1】

【0064】
表Iにおいて、マイケル付加ポリアクリレート樹脂Aは、合計の受容体と供与体とが2.2:1モルの割合になるように、エチルアセトアセテートと反応させたヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)及びトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)の75/25モル混合物であり、さらにEbecryl 168(ヒドロキシエチルメタクリレートホスフェート)で中和した。エポキシ化合物は、CYRACURE(登録商標)UVR-6150とCYRACURE(登録商標)UVR-6128(Union Carbide社)で、それぞれ3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート及びビス−(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペートである。用いた光開始剤はCD-1010(登録商標)(Sartomer)であり、プロピレンカーボネート中のトリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート塩類の混合物(50%)であった。用いたレベリング剤は、Fluorad(登録商標)FC4430(3M社)だった。
【0065】
【表2】

【0066】
表II中のマイケル付加ポリアクリレート樹脂Bは、HDDA及びLaromer PE 55F(BASF社)(約1000の分子量をもつポリエステルアクリレート)の94.4/5.6モル混合物を2,4−ペンタンジオンと、2.2:1モル比で反応させ、Ebecryl 168で中和したものである。
【0067】
【表3】

【0068】
表III中のマイケル付加ポリアクリレート樹脂Cは、2.2:1のモル比でジプロピレングリコールジアクリレートをエチルアセトアセテートと反応させ、Ebecryl 168で中和したものである。
【0069】
表I、II、及びIIIの結果は、マイケル付加ポリアクリレート樹脂のUV照射硬化したコーティングの性能の利点及びエポキシ化合物のUV照射硬化したコーティングの性能の利点を、その2つを一緒に組み合わせることによって得ることができることを示している。
【0070】
〔実施例2〕
HDDA及びTMPTA(75:25比)とエチルアセトアセテートとに基づくマイケル付加ポリアクリレート樹脂は、米国特許第5,945,489号明細書及び同6,025,410号明細書に記載された方法に従って合成した。この樹脂を、アクリレートとエポキシ官能基の両方を有するアクリレート−脂環族エポキシドブレンドであるUvacure(登録商標)1562(UCB Chemicals)と混合した。この混合物を次にリン酸化スチール又はアルミニウム基材に適用し、1500mJ/cmのUV照射量で硬化させた。接着性、耐溶剤性、鉛筆硬度、光沢、及び耐摩耗性は上の先の実施例で示したとおりである。実施例1で説明したように、全ての試験はUV照射後24時間に行った。
【0071】
【表4】

【0072】
二元硬化又は「ハイブリッド硬化」コーティングシステムの使用は、標準的コーティングの使用と同様であり、例えば基材保護及び/又は修飾のためである。しかし、二元硬化能力の有用性は、従来のコーティング技術よりも大きな自由度をもつ最高のフィルム特性の開発を可能にする。例えば、完全硬化(フィルム硬度及び耐溶剤性によって特徴づけられる)は、アルキッド又はメラミン系コーティングに対する30分の高温「焼付け」と比較して、わずか500mJ/cmほどのUV照射(又はそれ未満)によって数秒で達成されうる。従来のUV系コーティングとの直接対比で、本マイケルポリアクリレート樹脂/エポキシド二元硬化システムは、非常に小さなUVパルス又はわずかな量のアミン触媒もしくはパーオキシド触媒で、「初期強度(グリーン強度)」又は「耐ブロッキング性」を発現できる。ひとたび硬化の第一段階又は初期程度に到達したら、完全硬化を達成する前に、コーティングは次に成形、印刷、またはラミネート操作によって扱われることができる。ひとたび完全に硬化すれば、多くのコーティングは曲げたり成形したりすることがよりいっそう困難であり、及び/又はそれらは成形操作時に接着することもない。したがって、二元硬化の可能性は、従来のUV硬化コーティングを含めた従来システムがまねることのできない方法での基材の取り扱いを可能にする。
【0073】
モノアクリレートは、必要なときには樹脂特性をやわらげるために使用することができる。例えば、25モル%以下の一官能アクリレート(例えば、イソボルニルアクリレート、IBOA)の添加は、より多い架橋によって脆さを増加させることなく、コーティングを「強靱にすること」を可能にする。その他の一官能モノマー、例えば、2−(2−エトキシエトキシエチル)アクリレート(EOEOEA)又はドデシルアクリレートは、基材に対するフィルム接着性を和らげるため、又は、顔料、ナノ粒子、ワックス、もしくはシリコーン類のコーティング配合中への組み込みを高めるために添加されうる。適切なモノアクリレートには、単純なC〜C18アクリレートエステル類、イソボルニルアクリレート(IBOA)、テトラヒドロフルフリルアクリレート(THFFA)、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート(EOEOEA)、フェノキシエチルアクリレート(PEA)、ヒドロキシアルキルアクリレート、モノアルキルポリアルキレングリコールアクリレート、シロキサンアクリレート、シランアクリレート、シリコーンアクリレート、パーフルオロアルキルアクリレート、カプロラクトンアクリレート、及びそれらの混合物、が含まれるがこれらに限定されない。
【0074】
本明細書中で引用した全ての刊行物、特許、特許出願公開、及びASTM試験法は、各個別の刊行物、特許、特許出願公開、及びASTM試験法が具体的かつ個別に参照により援用されるごとくに、任意且つ実際上、本明細書に援用する。矛盾がある場合は本開示が優先する。特に、同時係属出願(番号はまだ付されていない;Attorney Docket Number 20435/141; 20435/144; 20435/146; 20435/147; 及び20435/148)は参照により、実際上ここに援用する。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】図1は、架橋されたマイケルポリアクリレートゲルの合成スキームである。
【図2】図2は、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)とエチルアセトアセテート(EAA)とのマイケル付加反応による、UV硬化性オリゴマーの合成のスキームである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂環族エポキシド;及び
有機可溶性の、ゲル化していない、未架橋のマイケル付加ポリアクリレート反応生成物、を含む液状オリゴマー組成物。
【請求項2】
前記マイケル付加ポリアクリレート生成物が、多官能アクリレートマイケル受容体とβ−ジカルボニルマイケル供与体とから形成される、請求項1に記載の液状オリゴマー組成物。
【請求項3】
前記β−ジカルボニルマイケル供与体が、β−ケトエステル、β−ジケトン、β−ケトアミド、β−ケトアニリド、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の液状オリゴマー組成物。
【請求項4】
前記多官能アクリレートマイケル受容体が、ジアクリレート、トリアクリレート、及びテトラアクリレートからなる群から選択される、請求項1に記載の液状オリゴマー組成物。
【請求項5】
前記β−ジカルボニルマイケル供与体が、β−ジケトン又はβ−ケトエステルである、請求項1に記載の液状オリゴマー組成物。
【請求項6】
前記β−ジカルボニルが当量官能性(N)(N=2、4、6又は8)を有する、請求項3に記載の液状オリゴマー組成物。
【請求項7】
前記ジアクリレートマイケル受容体のアクリル官能基と前記β−ジカルボニル供与体とのモル比が:
前記β−ジカルボニル官能性=2である場合は、≧1:1、
前記β−ジカルボニル官能性=4である場合は、≧4.5:1、
前記β−ジカルボニル官能性=6である場合は、≧4.5:1、及び
前記β−ジカルボニル官能性=8である場合は、≧3.5:1
である、請求項4に記載の液状オリゴマー組成物。
【請求項8】
前記トリアクリレートマイケル受容体のアクリル官能基と前記β−ジカルボニル供与体とのモル比が:
前記β−ジカルボニル官能性=2である場合は、≧2.25、
前記β−ジカルボニル官能性=4である場合は、≧6.4:1、
前記β−ジカルボニル官能性=6である場合は、≧7.8:1、及び
前記β−ジカルボニル官能性=8である場合は、≧7.4:1
である、請求項4に記載の液状オリゴマー組成物。
【請求項9】
前記テトラアクリレートマイケル受容体のアクリル官能基と前記β−ジカルボニル供与体とのモル比が:
前記アセトアセテート官能性=2である場合は、≧6.6、
前記β−ジカルボニル官能性=4である場合は、≧12.3:1、
前記β−ジカルボニル官能性=6である場合は、≧13.2:1、及び
前記β−ジカルボニル官能性=8である場合は、≧12.7:1
である、請求項4に記載の液状オリゴマー組成物。
【請求項10】
前記脂環族エポキシドが25℃で1,000cP未満のブルックフィールド粘度を有する、請求項1記載の液状オリゴマー組成物。
【請求項11】
前記脂環族エポキシドが、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート及びビス−(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペートからなる群から選択される、請求項10に記載の液状オリゴマー組成物。
【請求項12】
さらに変性用エポキシドを含む、請求項1記載の液状オリゴマー組成物。
【請求項13】
前記変性用エポキシドが、リモネンモノオキシド、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、及びエポキシフェノールノボラックからなる群から選択される、請求項12記載の液状オリゴマー組成物。
【請求項14】
好ましい脂環族エポキシドが3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートである、請求項11に記載の液状オリゴマー組成物。
【請求項15】
前記マイケル付加反応が強塩基の存在下で行われる、請求項1に記載の液状オリゴマー組成物。
【請求項16】
前記塩基が、環状アミジン類、グアニジン類、I族アルコキシド類、第四級ヒドロキシド類、第四級アルコキシド類、及びハライドアニオンとエポキシ基との間の反応によってその場(in situ)で生成したアルコキシド塩基からなる群から選択される、請求項13に記載の液状オリゴマー組成物。
【請求項17】
前記塩基が、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、ジアザビシクロ−ノネン(DBN)、及び1,1,3,3−テトラメチルグアニジンからなる群から選択される、請求項14に記載の液状オリゴマー組成物。
【請求項18】
前記アルコキシドが、第四級ハライドとエポキシド基との間の反応によってその場(in situ)で生成される、請求項14に記載の液状オリゴマー組成物。
【請求項19】
前記ジアクリレートが、
エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、エトキシル化ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジアクリレート、レゾルシノールジグリシジルエーテルジアクリレート、1,3−プロパンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、エトキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、エトキシル化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、プロポキシル化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、アクリル化エポキシジアクリレート、アリールウレタンジアクリレート、脂肪族ウレタンジアクリレート、ポリエステルジアクリレート、及びそれらの混合物、からなる群から選択される、請求項4に記載の液状オリゴマー組成物。
【請求項20】
前記トリアクリレートが、
トリメチロールプロパントリアクリレート、グリセロールトリアクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、エトキシル化グリセロールトリアクリレート、プロポキシル化グリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、アリールウレタントリアクリレート、脂肪族ウレタントリアクリレート、メラミントリアクリレート、脂肪族エポキシトリアクリレート、エポキシノボラックトリアクリレート、ポリエステルトリアクリレート、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項4に記載の液状オリゴマー組成物。
【請求項21】
前記テトラアクリレートが、
ジ−トリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、プロポキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシル化ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、プロポキシル化ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、アリールウレタンテトラアクリレート、脂肪族ウレタンテトラアクリレート、ポリエステルテトラアクリレート、メラミンテトラアクリレート、エポキシノボラックテトラアクリレート、及びそれらの混合物から選択される、請求項4に記載の液状オリゴマー組成物。
【請求項22】
官能性=2を有する前記β−ジカルボニル供与体化合物が、
エチルアセトアセテート、メチルアセトアセテート、2−エチルへキシルアセトアセテート、ラウリルアセトアセテート、t−ブチルアセトアセテート、アセトアセトアニリド、N−アルキルアセトアセトアニリド、アセトアセトアミド、2−アセトアセトキシエチルメタクリレート、アリルアセトアセテート、ベンジルアセトアセテート、2,4−ペンタンジオン、イソブチルアセトアセテート、及び2−メトキシエチルアセトアセテート、
からなる群から選択される、請求項6に記載の液状オリゴマー組成物。
【請求項23】
官能性=4を有する前記β−ジカルボニル供与体化合物が、
1,4−ブタンジオールジアセトアセテート、1,6−ヘキサンジオールジアセトアセテート、ネオペンチルグリコールジアセトアセテート、シクロヘキサンジメタノールジアセトアセテート、及びアルコキシル化ビスフェノールAジアセトアセテート
からなる群から選択される、請求項6に記載の液状オリゴマー組成物。
【請求項24】
官能性=6を有する前記β−ジカルボニル供与体化合物が、
トリメチロールプロパントリアセトアセテート、グリセリントリアセトアセテート、及びポリカプロラクトントリアセトアセテート、及びこれらのアルコキシル化誘導体
からなる群から選択される、請求項6に記載の液状オリゴマー組成物。
【請求項25】
官能性=8を有する前記β−ジカルボニル供与体化合物が、ペンタエリスリトールテトラアセトアセテート及びそのアルコキシル化誘導体である、請求項6に記載の液状オリゴマー組成物。
【請求項26】
前記マイケル付加反応が、少なくとも1種の非反応性溶媒の存在下で起こる、請求項2に記載の液状オリゴマー組成物。
【請求項27】
前記非反応性溶媒が、スチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、酢酸アリル、メタクリル酸アリル、フタル酸ジアリル、C〜C18−メタクリル酸エステル、ジメタクリレート、及びトリメタクリレートからなる群から選択される、請求項24に記載の液状オリゴマー組成物。
【請求項28】
前記組成物が、1ヶ月よりも長く貯蔵安定であり、かつ、残存するペンダント不飽和アクリレート基を有する、請求項1に記載の液状オリゴマー組成物。
【請求項29】
さらに酸性化剤を含む、請求項2に記載の液状オリゴマー組成物。
【請求項30】
前記酸性化剤が、リン酸類、カルボン酸類、酸ハーフエステル類、及び無機酸エステル類からなる群から選択される、請求項29に記載の液状オリゴマー組成物。
【請求項31】
好ましい酸性化剤が、2−ヒドロキシルエチルアクリレートのリン酸エステル、2−ヒドロキシエチルメタクリレートのリン酸エステル、2−ヒドロキシプロピルアクリレートのリン酸エステル、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートのリン酸エステル、4−ヒドロキシブチルアクリレートのリン酸エステル、及び4−ヒドロキシブチルメタクリレートのリン酸エステルからなる群から選択される、請求項30に記載の液状オリゴマー組成物。
【請求項32】
さらにモノアクリレートを含む、請求項2に記載の液状オリゴマー組成物。
【請求項33】
前記モノアクリレートが、単純なC〜C18アクリレートエステル、イソボルニルアクリレート(IBOA)、テトラヒドロフルフリルアクリレート(THFFA)、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート(EOEOEA)、フェノキシエチルアクリレート(PEA)、ヒドロキシアルキルアクリレート、モノアルキルポリアルキレングリコールアクリレート、シロキサンアクリレート、シランアクリレートもしくはシリコーンアクリレート、パーフルオロアルキルアクリレート、カプロラクトンアクリレート、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項32に記載の液状オリゴマー組成物。
【請求項34】
前記モノアクリレートが約0〜約50モル%存在する、請求項32に記載の液状オリゴマー組成物。
【請求項35】
前記モノアクリレートが約0〜約25モル%存在する、請求項32に記載の液状オリゴマー組成物。
【請求項36】
前記モノアクリレートが約0〜約12.5モル%存在する、請求項32に記載の液状オリゴマー組成物。
【請求項37】
フリーラジカル発生剤をさらに含む、請求項2記載の液状オリゴマー組成物。
【請求項38】
前記フリーラジカル発生剤がパーオキシドを含む、請求項37に記載の液状オリゴマー組成物。
【請求項39】
前記パーオキシドが、ベンゾイルパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド(MEKP)、tert−ブチルパーベンゾエート(TBPB)、クミルパーオキシド、及びt−ブチルパーオキシドからなる群から選択される、請求項37に記載の液状オリゴマー組成物。
カチオン光開始剤をさらに含む、請求項2に記載の液状オリゴマー組成物。
【請求項40】
前記カチオン光開始剤が、パーフルオロメタレートオニウム塩類、鉄アレーン塩類、ジルコノセン塩類、及びマンガンデカカルボニル塩類からなる群から選択される、請求項39に記載の液状オリゴマー組成物。
【請求項41】
前記パーフルオロメタレートが、BF、PF、SbF、及びB(Cからなる群から選択されるアニオンである、請求項39に記載の液状オリゴマー組成物。
【請求項42】
前記オニウムが、アリールスルホニウムカチオン類、アリールヨードニウムカチオン類、及びアリールホスホニウムカチオン類からなる群から選択されるカチオンである、請求項39に記載の液状オリゴマー組成物。
【請求項43】
前記組成物が少なくとも1種の添加剤をさらに含む、請求項2に記載の液状オリゴマー組成物。
【請求項44】
前記添加剤が、顔料、光沢調整剤、流動化剤及びレベリング剤、並びに、コーティング、塗料、ラミネート材、シーラント、接着剤、及びインクを配合するために適切なその他の添加剤からなる群から選択される、請求項43に記載の液状オリゴマー組成物。
【請求項45】
脂環族エポキシド;
カチオン光開始剤;及び
有機可溶性の、ゲル化していない、未架橋のマイケル付加アクリレート反応生成物
を含む液状オリゴマー組成物から硬化された重合生成物。
【請求項46】
フリーラジカル発生剤をさらに含む、請求項43に記載の液状オリゴマー組成物から硬化された重合生成物。
【請求項47】
前記フリーラジカル発生剤が化学作用を有する光である、請求項44に記載の重合生成物。
【請求項48】
前記フリーラジカル発生剤がパーオキシドである、請求項45に記載の重合生成物。
【請求項49】
顔料、光沢調整剤、流動化剤及びレベリング剤、並びに、コーティング、塗料、ラミネート材、シーラント、接着剤、及びインクを配合するために適切なその他の添加剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含む、請求項45に記載の重合生成物。
【請求項50】
液状オリゴマー組成物の製造方法であって、前記オリゴマー組成物がペンダント不飽和アクリレート基を有し、以下のステップ:
多官能アクリレートマイケル受容体とβ−ジカルボニルマイケル供与体とを強塩基存在下で反応させて、マイケル付加体を生成させるステップ;
前記塩基について少なくとも化学量論量で、前記付加体に酸性化剤を添加するステップ;
脂環族エポキシドを混合するステップ;及び
カチオン光開始剤を混合するステップ、
を含む液状オリゴマー組成物の製造方法。
【請求項51】
液状オリゴマー組成物の使用方法であって、以下のステップ:
脂環族エポキシド、カチオン光開始剤、及び有機可溶性のゲル化していない未架橋のマイケル付加ポリアクリレート反応生成物を含む液状オリゴマー組成物を準備するステップ;
前記オリゴマー組成物を表面に適用するステップ;及び
前記組成物を硬化させるステップ、
を含む方法。
【請求項52】
前記組成物が、顔料、光沢調整剤、流動化剤及びレベリング剤、並びに、コーティング、塗料、ラミネート材、シーラント、接着剤、及びインクを配合するために適切なその他の添加剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含む、請求項49に記載の液状オリゴマー組成物の使用方法。
【請求項53】
請求項45に記載の重合生成物でコートされた基材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2007−511641(P2007−511641A)
【公表日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−539903(P2006−539903)
【出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【国際出願番号】PCT/US2004/037807
【国際公開番号】WO2005/048866
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(505301103)アシュランド・ライセンシング・アンド・インテレクチュアル・プロパティー・エルエルシー (40)
【出願人】(506162138)
【出願人】(506162116)
【出願人】(506161153)
【Fターム(参考)】