説明

自己免疫および臓器または造血幹細胞移植に関連する免疫学的欠損を有する患者における免疫レパートリー回復のための組成物および方法

本発明は全体として、T細胞を刺激するための方法に関するものであり、特に混合T細胞集団から不要な(例えば、自己反応性、アロ反応性、病原性)T細胞亜集団を排除し、それによってT細胞の正常な免疫レパートリーを回復するための方法に関する。本発明は、免疫レパートリーを回復した刺激T細胞を含む細胞の組成物およびその用途にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
発明の分野
本発明は全体として、T細胞を刺激するための方法に関し、特に混合T細胞集団から不要な(例えば、自己反応性、アロ反応性、病原性)T細胞亜集団を排除し、それによってT細胞の正常な免疫レパートリーを回復するための方法に関する。本発明は、免疫レパートリーを回復した刺激T細胞を含む細胞組成物およびその用途にも関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明
T細胞が様々な癌または感染性生物に関連する広範な抗原を認識する能力は、そのT細胞抗原レセプター(TCR)によって付与され、このTCRはα(アルファ)鎖およびβ(ベータ)鎖またはγ(ガンマ)およびδ(デルタ)鎖から構成される。これらの鎖を構成するタンパク質はDNAによってコードされ、TCRの極めて大きな多様性を生むための独特のメカニズムを採用している。このマルチサブユニット型の免疫認識レセプターはCD3複合体と関連し、抗原提示細胞(APC)の表面にある主要組織適合性遺伝子複合体(MHC)クラスIおよびIIタンパク質によって示されるペプチドに結合する。TCRのAPC上の抗原ペプチドへの結合はT細胞活性化の中心的イベントであり、T細胞とAPCが接触する免疫学的シナプスにおいて生じる。
【0003】
T細胞の活性化を維持するためには、Tリンパ球は一般に第二の共刺激シグナルを必要とする。共刺激は、一般に、ヘルパーT細胞がクローン性増幅を誘発し得る十分なサイトカイン量を産生するために必要である。Bretscher, Immunol. Today 13:74, 1992;Juneら、Immunol. Today 15:321, 1994。主な共刺激シグナルは、活性化された抗原提示細胞(APC)上のB7ファミリーリガンドのメンバー(CD80(B7.1)またはCD86(B7.2))がT細胞上のCD28に結合した際に発生する。
【0004】
T細胞の特定のサブセットの増幅を刺激する方法は、免疫療法において有益な様々なT細胞組成物を生成する可能性を持つ。適切な免疫療法は、効率的な刺激によってT細胞の反応性および量を増大させることによって促進することができる。さらに、自己免疫または移植の状況において、適切な免疫療法は不要な自己反応性またはアロ反応性細胞を排除することによって促進することができる。
【0005】
ヒトT細胞の増幅に利用することのできる様々な技術は、主にアクセサリー細胞および/またはインターロイキン-2(IL-2)のような外因性成長因子の使用に依拠している。IL-2は、T細胞増殖、主にT細胞のCD8+亜集団の増幅を刺激するために抗CD3抗体と共に用いられている。TCR/CD3複合体に方向付けられたAPCシグナルとT細胞表面上のCD28は共に、最適なT細胞活性化、増幅、および再注入時のT細胞の長期生存のために必要と考えられる。アクセサリー細胞としてのMHC適合APCの要件は、APCの生存期間が比較的短いために長期培養系にとって重大な問題である。従って、長期培養系の場合、APCを供給源から絶えず得て補充しなければならない。アクセサリー細胞の継続可能な供給の必要性は、アクセサリー細胞が影響を受けている免疫欠損の治療において問題となる。さらに、ウイルス感染を治療する場合、アクセサリー細胞がウイルスのキャリアであれば、これらの細胞が長期培養中にT細胞集団全体を汚染する可能性がある。
【0006】
外因性成長因子またはアクセサリー細胞がない場合、例えばビーズのような固相表面に接着させたCD3リガンドおよびCD28リガンドに細胞を曝露することによって共刺激シグナルをT細胞集団に伝達することが可能である。C. Juneら、(米国特許第5,858,358号);C. Juneら、国際公開公報第99/953823号を参照されたい。これらの方法によって治療上有用なT細胞集団を獲得することはできるが、T細胞調製物の頑健性および簡便性の増大は依然として理想には及ばない。
【0007】
T細胞の増幅に関して、当技術分野でこれまで用いられていた方法は抗CD3および抗CD28を利用している。さらに、当技術分野において現在用いられている方法はT細胞の短期増幅またはより頑健なT細胞集団の取得およびそれらの有益な結果には注目していない。これらのいずれの方法も、T細胞集団から不要なクローン性またはオリゴクローン性T細胞集団を排除するためのこのような方法または類似の方法を用いての説明を行っておらず、その有益な結果についても述べていない。さらに、これまでに利用可能であった方法は、T細胞集団から不要な反応性クローンを排除して正常な免疫レパートリーを回復するというよりは、T細胞集団のクローン性をさらに歪める傾向がある。インビボにおける最大有効性のために、理論上はエキソビボまたはインビボにおいて作製された活性化T細胞集団は、癌、感染性疾患、またはその他の疾患状態に対する免疫応答を最大限に調整できる状態になければならない。自己免疫または移植の状況において、活性化T細胞集団は、正常なT細胞レパートリーを再構成し、自己反応性または病原性である可能性があるアロ反応性T細胞の存在を抑制、または全く存在しない状態になければならない。現在、自己免疫疾患患者は、疾患を惹起する自己反応性T細胞を阻害するための長期免疫抑制により治療される。免疫抑制剤が中止されると、これらの患者において再度出現する疾患誘発性T細胞の再発生を伴ってしばしば疾患が再発する。造血系幹細胞移植における主たる問題は、移植片対宿主疾患(GVHD)であり、これは注入される造血系幹細胞調製物中に含まれるアロ反応性T細胞によって惹起される。臓器移植の場合は、アロ反応性宿主T細胞に介される移植片拒絶が主たる問題であり、通常は移植レシピエントの長期免疫抑制によって解決される。
【0008】
本発明は、他の増幅方法よりもさらに健常かつ自然であると思われる表面レセプターおよびサイトカイン産生特性を持つより高度に活性化されたより純粋な多数のT細胞を作製するための方法を提供し、さらにT細胞の不要な自己反応性またはアロ反応性集団を抑制または排除するための方法を提供する。本発明は、自己免疫疾患、造血幹細胞および臓器移植の状況下、ならびに除去、阻害、またはその他の方法で機能不全となっているT細胞免疫系の再構築が望まれるその他の状況下において、T細胞集団の利用に関する方法を提供する。さらに、本発明は、T細胞集団を含む任意の標的細胞の細胞集団の組成物、およびそのT細胞集団産生のためのパラメータを提供し、その他の関連する利点も併せて提供する。
【0009】
さらに、免疫系の老化は外因性抗原および腫瘍に対する応答性の段階的な低下とこれに相反する自己免疫の亢進の共存を特徴とすることが、十分に認識されるようになってきている(C. Weyandら、Mechanisms of Ageing and Development 102:131-147, 1998;D. Schmidtら、Molecular Medicine 2:608-618, 1996;G. Liuzzoら、Circulation 100:2135-2139, 1999)。これらの試験は、老化がCD28発現の消失を特徴とするヘルパーT細胞サブセットの出現に関連することを述べている。CD4+CD28- T細胞は寿命が長く、一般にインビボにおいてクローン性増幅を受けて、インビトロでは自己抗原に対して反応する。CD28発現の消失は、これらのCD4+ T細胞に対してB細胞分化および免疫グロブリン分泌の促進を不可能とさせるCD40リガンド発現の欠失に関連する。老化に関連してCD4+CD28- T細胞が蓄積する結果、免疫コンパートメントは自己反応性応答に偏って、外因性抗原に対する高親和性B細胞応答の発生は減少する。
【発明の開示】
【0010】
発明の概要
本発明の一つの局面は、個体に由来する混合T細胞集団からクローン性T細胞集団の少なくとも実質的な部分を排除するための方法であって、少なくともその一部がT細胞を含む細胞集団を提供する工程;その細胞集団をエキソビボにおいて一つまたは複数のプロアポトーシス組成物に曝露して、この曝露によってT細胞の少なくとも一部にアポトーシスを誘発する工程;それによって混合集団からクローン性T細胞の少なくとも実質的な部分を排除する工程を含む方法を提供する。
【0011】
本発明は、個体に由来する混合T細胞集団からクローン性T細胞亜集団の少なくとも実質的な部分を排除するための方法であって、少なくともその一部がT細胞を含む細胞集団を一つまたは複数のプロアポトーシスもしくは成長阻害組成物に曝露し、この曝露が混合T細胞集団に含まれる少なくとも一つのクローン性T細胞集団の少なくとも実質的な部分にアポトーシスを誘発するか成長を阻害し、それによって混合T細胞集団からクローン性T細胞集団の少なくとも実質的な部分を排除する工程を含む方法を提供する。一つの態様において、この方法は、残留混合T細胞集団をプロアポトーシス組成物に曝露し、この曝露が混合T細胞集団における増殖を誘発することによって、混合T細胞集団を増幅させる工程をさらに含む。一つの特定の態様において、プロアポトーシス組成物はビーズ上に共固定された抗CD3抗体および抗CD28抗体を含む。一部の態様において、混合T細胞集団からクローン性T細胞集団の少なくとも実質的な部分を排除するために用いられるプロアポトーシス組成物は、残留混合T細胞集団を増幅させるために用いられるものと同一の組成物である。
【0012】
一つの態様において、この方法は残留細胞集団を増幅させる工程をさらに含む。もう一つの態様において、この方法は残留細胞集団を、残留T細胞の少なくとも一部の細胞表面部分をライゲートして残留T細胞を刺激する一つまたは複数の物質をそこに接着させている表面に曝露することによって、残留細胞集団を増幅させる工程をさらに含む。関連する態様において、表面はT細胞の第一のT細胞表面部分をライゲートする第一の物質をそこに接着させて、同一または第二の表面はT細胞の第二の部分をライゲートする第二の物質をそこに接着させて、第一および第二の物質によるライゲーションがT細胞の増殖を誘発する。
【0013】
一つの態様において、表面に接着する物質は抗体または抗体フラグメントである。もう一つの態様において、第一の物質は抗体またはそのフラグメントであり、第二の物質は抗体またはそのフラグメントである。一つの態様において、第一および第二の物質は異なる抗体である。一つの特定の態様において、第一の物質は抗CD3抗体、抗CD2抗体、または抗CD3もしくは抗CD2抗体の抗体フラグメントである。もう一つの態様において、第二の物質は抗CD28抗体またはその抗体フラグメントである。さらなる態様において、第一の物質は抗CD3抗体であり、第二の物質は抗CD28抗体である。
【0014】
もう一つの態様において、細胞は、多クローン性を高めるために十分な期間、本発明の表面に曝露される。一部の態様において、この多クローン性の増大は、少なくとも一つのVβ、Vα、VγまたはVδファミリー遺伝子のVβ、Vα、VγまたはVδスペクトルタイププロフィールによって測定される、T細胞集団の単一クローン性からオリゴクローン性または多クローン性への推移を含む。
【0015】
本発明の例示的なプロアポトーシス組成物には、抗CD3抗体、抗CD2抗体、抗CD28抗体、抗CD20抗体、標的抗原、MHCペプチド四量体、Fasリガンド、抗Fas抗体、IL-2、IL-4、TRAIL、ロリプラム、ドキソルビシン、クロラムブシル、フルダラビン、シクロホスファミド、アザチオプリン、メトトレキセート、シクロスポリン、ミコフェノレート、FK506、bcl-2阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、インターロイキン-1β転換酵素(ICE)-結合物質、赤痢菌IpaBタンパク質、スタウロスポリン、紫外線照射、ガンマ線照射、腫瘍壊死因子、標的抗原核酸分子、タンパク質またはペプチド、および非タンパク性または非ポリヌクレオチド化合物が含まれるが、これらに限定されるものではない。一部の態様において、これらの組成物の一つまたは複数が同時に使用される。
【0016】
本発明の一部の態様において、プロアポトーシス組成物は自己抗原を含む。本発明の例示的な自己抗原には、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、MBP84-102、MBP143-168、膵島細胞抗原、コラーゲン、CLIP-170、甲状腺抗原、核酸、アセチルコリンレセプター、S抗原、およびII型コラーゲンが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0017】
本発明は、上記の任意の方法に従って作製されるT細胞集団をさらに提供する。
【0018】
本発明は、個体に由来する混合T細胞集団からクローン性T細胞亜集団の少なくとも実質的な部分を排除する方法であって、少なくともその一部がT細胞を含む細胞集団を一つまたは成長阻害組成物に曝露して、この曝露が混合T細胞集団に含まれる少なくとも一つのクローン性T細胞集団の少なくとも実質的な部分の生育を阻害する工程を含む方法を提供し;その方法は、生育阻害されていない細胞集団、即ち残留混合T細胞集団を、細胞表面分子に結合する一つまたは複数の物質をそこに接着させている表面に曝露することによって、混合T細胞集団を増幅する工程をさらに含む。一つの態様において、表面は、ビーズ上に共固定化された抗CD3抗体および抗CD28抗体を含む。
【0019】
本発明の一つの局面は、本発明のT細胞集団を患者に投与する工程を伴う、患者における自己免疫疾患を治療するための方法を提供する。一つの態様において、患者は、T細胞集団の投与前に化学療法剤を用いた治療を受けている。本発明の例示的な化学療法剤には、キャンパス(campath)、抗CD3抗体、サイトキシン、フルダラビン、シクロスポリン、FK506、ミコフェノール酸、ステロイド、FR901228、および放射線療法が含まれるが、これらに限定されるものではない。一部の態様において、患者は本発明のT細胞集団の投与に先立ってT細胞除去療法により治療される。
【0020】
本発明の一つの局面は、個体に由来するT細胞集団からクローン性T細胞集団の少なくとも実質的な部分を排除するための方法であって、少なくともその一部がT細胞を含む細胞の集団を提供する工程;その細胞集団をT細胞の少なくとも一部を感作してさらに活性化または刺激する一つまたは複数の物質に曝露し、その細胞集団を、感作したT細胞の少なくとも一部の細胞表面部分にライゲートして感作T細胞を刺激する一つまたは複数の物質をそこに接着させている表面に曝露して、感作T細胞の表面への曝露が感作T細胞のアポトーシスを誘発し得る十分な期間である工程;それによってその集団から感作T細胞を排除する工程を含む方法である。一つの態様において、この方法は、細胞集団を表面に残留T細胞の少なくとも一部を刺激し得る十分な期間にわたって曝露して、残留細胞の少なくとも一部が増殖する工程をさらに含む。さらなる態様において、この方法は、表面がT細胞の第一のT細胞表面部分をライゲートする第一の物質をそこに接着させて、同一または第二の表面がT細胞の第二の部分をライゲートする第二の物質をそこに接着させていて、第一および第二の物質によるライゲーションがT細胞の増殖を誘発することを提供する。一つの態様において、少なくとも一つの物質は抗体または抗体フラグメントである。もう一つの態様において、第一の物質は抗体またはそのフラグメントであり、第二の物質は抗体またはそのフラグメントである。さらにもう一つの態様において、第一および第二の物質は異なる抗体である。関連する態様において、第一の物質は、抗CD3抗体、抗CD2抗体、または抗CD3もしくは抗CD2抗体の抗体フラグメントである。さらにもう一つの態様において、第二の物質は抗CD28抗体またはその抗体フラグメントである。もう一つの態様において、第一の物質は抗CD3抗体であり、第二の物質は抗CD28抗体である。
【0021】
関連する態様において、細胞は表面に対して多クローン性を高めるために十分な期間、曝露される。もう一つの態様において、多クローン性の増大は、少なくとも一つのVβ、Vα、VγまたはVδファミリー遺伝子のVβ、Vα、VγまたはVδスペクトルタイププロフィールによって測定される、T細胞集団の単一クローン性からオリゴクローン性または多クローン性への推移を含む。
【0022】
一部の態様において、患者は造血幹細胞移植を必要とする。関連する態様において、分裂を継続することができないように処理されたレシピエントのPBMCおよび細胞集団を感作する組成物はドナーT細胞を含む。本発明はまた、上記の方法に従って作製されたT細胞の集団を提供する。本発明は、本明細書に述べる方法に従ってT細胞集団を患者に投与する工程を含み、造血幹細胞移植を受けている患者における有害なGVHDの影響のリスクまたはその重篤度を軽減するための方法も提供する。
【0023】
一部の態様において、本発明の細胞を受ける患者は臓器移植を必要とする。関連する態様において、感作する組成物は放射線照射されたドナー細胞を含み、細胞集団はレシピエントのT細胞を含む。本発明はまた、この方法に基づいて作製される細胞集団を提供する。一つの態様において、これらの細胞は、臓器拒絶のリスクを軽減するために臓器移植を受ける患者に投与される。関連する態様において、臓器移植患者はT細胞集団の投与に先立ってT細胞除去療法を受ける。
【0024】
本発明の一つの局面において、感作する組成物は自己抗原を含む。本発明の例示的な自己抗原には、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、MBP84-102、MBP143-168、膵島細胞抗原、S抗原、およびII型コラーゲンが含まれるが、これらに限定されるものではない。本発明の一つの態様において、自己免疫疾患患者はこの方法に基づいて作製されるT細胞集団の投与によって治療される。関連する態様において、患者はT細胞集団の投与前にT細胞除去療法を受ける。
【0025】
本発明は、個体に由来するB細胞集団からクローン性B細胞集団を排除するための方法であって、少なくともその一部がB細胞を含む細胞集団を提供する工程、その細胞集団を一つまたは複数のプロアポトーシス組成物に曝露し、この曝露によってB細胞の少なくとも一部にアポトーシスを誘発する工程、それによってその集団からB細胞の一部を排除する工程を含む方法も提供する。一つの態様において、この方法は、残留細胞集団を、残留B細胞の少なくとも一部の細胞表面部分をライゲートして残留B細胞を刺激する一つまたは複数の物質をそこに接着させている表面に曝露する工程をさらに含む。一部の態様において、プロアポトーシス組成物は自己抗原を含む。
【0026】
本発明はまた、上記の方法に基づいて作製されるB細胞組成物を提供する。
【0027】
本発明の一つの態様において、自己免疫疾患患者は本発明の方法を用いて作製されるB細胞集団を含む組成物を用いて治療される。関連する態様において、患者はB細胞集団の投与に先立ってB細胞除去療法を受ける。
【0028】
本発明の一つの局面は、個体に由来するT細胞集団か実質的に純粋なT細胞集団を作製するための方法であって、少なくともその一部がT細胞を含む細胞集団を提供する工程、そのT細胞集団をエキソビボにおいて表面CD3+およびCD28+分子を優先的に選択および/または刺激する組成物に曝露して、それによってCD3+/CD28+ T細胞の実質的に純粋な集団を作製する工程を含む方法を提供する。関連する態様において、作製される純粋なT細胞集団はCD4+/CD3+/CD28+ T細胞の実質的に純粋な集団である。関連する態様において、この純粋なT細胞集団はCD8+/CD3+/CD28+ T細胞の実質的に純粋な集団である。
【0029】
本発明の一つの局面において、CD3+/CD28+ T細胞の純度は少なくとも90%である。さらなる態様において、CD3+/CD28+T細胞の純度は91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%または98%である。もう一つの態様において、CD3+/CD28+T細胞の純度は少なくとも99%である。関連する態様において、CD3+/CD28+T細胞の純度は少なくとも99.9%である。従って、本発明の一つの局面はCD28-細胞が10%よりも少ないCD3+/CD28+T細胞の集団である。一部の態様において、このCD3+/CD28+T細胞集団のCD28-T細胞は9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%または0.1%よりも少ない。
【0030】
一つの態様において、CD3+表面分子は抗CD3抗体を用いて刺激され、CD28+表面分子は抗CD28抗体を用いて刺激される。
【0031】
従って、本発明は、CD4+CD3+CD28+T細胞およびCD8+CD3+CD28+T細胞を含む、実質的に純粋なCD3+CD28+T細胞集団を作製するための方法も提供する。続いて、これらのT細胞集団は、慢性関節リウマチ、多発性硬化症、インスリン依存性糖尿病、アジソン病、セリアック病、慢性疲労症候群、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、線維筋痛、全身性エリテマトーデス、乾癬、シェーグレン症候群、甲状腺機能亢進症/グレーブス病、甲状腺機能低下症/橋本病、インスリン依存性糖尿病(I型)、重症筋無力症、子宮内膜症、強皮症、悪性貧血、グッドパスチャー症候群、ヴェゲナー病、糸球体腎炎、再生不良性貧血、発作性夜間血色素尿症、骨髄異形成症候群、特発性血小板減少性紫斑病、自己免疫性溶血性貧血、エヴァンズ症候群、第VIII因子阻害剤症候群、全身性血管炎、皮膚筋炎、多発性筋炎およびリウマチ熱のような自己免疫疾患患者の治療に用いることができる。
【0032】
本発明は、細胞表面部分ライゲーションによってT細胞集団を活性化および増幅するための方法であって、少なくともその一部がT細胞を含む細胞集団を提供する工程、その細胞集団をT細胞の少なくとも一部の細胞表面部分をライゲートしてT細胞を刺激する一つまたは複数の物質を接着させている表面に接触させる工程であって、表面が細胞に対して抗原特異的T細胞の少なくとも一つの集団の少なくとも実質的な部分が約8日間の培養後に消失するような割合で存在する工程を含む方法をさらに提供する。本発明の一つの態様において、この割合は約50:1から約5:1である。一部の態様において、この割合は約100:1から約2:1である。一つの態様において、この割合は少なくとも約45:1である。一部の態様において、この割合は少なくとも約40:1、35:1、30:1、25:1、20:1、15:1、14:1、13:1、12:1、11:1、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1または2:1である。一つの特定の態様において、この割合は約5:1である。
【0033】
本発明は、個体に由来する混合T細胞集団からクローン性T細胞亜集団の少なくとも実質的な部分を排除するための方法であって、少なくともその一部がT細胞を含む細胞集団を一つまたは複数のプロアポトーシス組成物に曝露して混合T細胞集団に含まれる少なくとも一つのクローン性T細胞集団の少なくとも実質的な部分にアポトーシスを誘発し、それによって混合T細胞集団からクローン性T細胞集団の少なくとも実質的な部分を排除する工程を含む方法を提供する。
【0034】
発明の詳細な説明
本発明について述べる前に、以下に用いられる一部の用語の定義を説明することがその理解に役立つであろう。
【0035】
本明細書で用いられるように「生物適合可能」という用語は、生細胞に対して顕著な毒性を示さないという特性を示す。
【0036】
本明細書で用いられるように「刺激」という用語は、細胞表面部分のライゲーションによって誘発される主要な反応を示す。例えば、レセプターに関して用いられる場合、このような刺激はレセプターのライゲーションおよびその後のシグナルトランスダクションイベントを引き起こす。T細胞の刺激に関して、このような刺激は一つの態様において、後にTCR/CD3複合体の結合などのシグナルトランスダクションイベントを誘発するT細胞表面部分のライゲーションを示す。さらに、刺激イベントは細胞を活性化して、レセプターまたは接着分子のような細胞表面分子の発現をアップレギュレートまたはダウンレギュレートし、または腫瘍増殖因子ベータ(TGF-β)のダウンレギュレーションのような分子の分泌をアップレギュレートあるいはダウンレギュレートすることができる。このように、細胞表面部分のライゲーションは直接的なシグナルトランスダクションイベントがない場合でも、細胞骨格構造の再構成または細胞表面部分の融合を起こす可能性があり、それぞれはその後の細胞反応を促進、修飾または変化させることができる。
【0037】
本明細書で用いられるように「活性化」という用語は、測定可能な形態学的、表現型および/または機能的変化を誘発するための十分な細胞表面部分ライゲーション後の細胞の状態を示す。T細胞に関して用いられる場合、このような活性化は細胞増殖を誘発するために十分に刺激されているT細胞の状態であることができる。T細胞の活性化は、サイトカインの産生および/または分泌、ならびにレセプターまたは接着分子のような細胞表面分子の発現のアップレギュレーションもしくはダウンレギュレーション、または一部の分子の分泌および調節または細胞溶解エフェクター機能の効率のアップレギュレーションもしくはダウンレギュレーションも誘発することができる。その他の細胞に関して用いられる場合、この用語は、特定の物理化学的プロセスのアップレギュレーションまたはダウンレギュレーションを意味する。
【0038】
本明細書で用いられるように「標的細胞」という用語は、細胞表面部分ライゲーションによって刺激されることを意図される細胞を示す。
【0039】
本明細書で用いられるように「抗体」は、多クローン性および単一クローン性の抗体(mAb)、霊長類化(例えば、ヒト化)、マウス、マウス-ヒト、マウス-霊長類、およびキメラを含み、完全な分子、そのフラグメント(scFv、Fv、Fd、Fab、Fab'およびF(ab)'2フラグメントなど)、または完全分子および/もしくはフラグメントの多量体もしくは凝集物であることができ、天然に生じることもあれば、例えば免疫、合成または遺伝子組換え技術によって産生することも可能であり、本明細書で用いられるように「抗体フラグメント」は、抗原に結合して、いくつかの態様においては誘導体を形成して例えばガラクトース残渣の取り込みによるなど、クリアランスおよび取り込みを促進する構造的特徴を示す抗体に由来または関連するフラグメントを示す。これには、例えば、F(ab)、F(ab)'2、scFv、軽鎖可変領域(VL)、重鎖可変領域(VH)、およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0040】
本明細書で用いられる「タンパク質」という用語には、タンパク質、糖タンパク質、ならびにその他の細胞由来の修飾タンパク質、ポリペプチドおよびペプチドが含まれ、完全な分子、そのフラグメント、または完全分子および/もしくはフラグメントの多量体もしくは凝集物であり得、天然に生じることもあれば、例えば合成(化学的および/または酵素的合成を含む)または遺伝子組換え技術によって産生することも可能である。
【0041】
本明細書で用いられるように「物質」、「リガンド」または「細胞表面部分に結合する物質」という用語は、一定の細胞集団に結合する分子を示す。その物質は、レセプター、抗原決定基、または標的細胞集団上にあるその他の結合部位のような何らかの細胞表面部分に結合することができる。その物質は、タンパク質、ペプチド、抗体およびその抗体フラグメント、融合タンパク質、合成分子、有機分子(例えば、小分子)などであることができる。本明細書およびT細胞刺激に関して用いられる場合、このような物質の典型例として抗体が用いられる。
【0042】
本明細書で用いられるように「細胞表面部分」という用語は、細胞表面レセプター、抗原決定基、または標的細胞集団上にあるその他の何らかの結合部位を示しうる。
【0043】
本明細書で用いられるように「細胞表面部分に結合する物質」および「細胞表面部分」という用語は、一般に比較的高い親和性を持つ特異的結合を示す相補的/反相補的分子セットとして見なされるべきである。
【0044】
本明細書で用いられるように「共刺激シグナル」は、TCR/CD3ライゲーションのような一次シグナルと連携してT細胞の増殖および/または活性化を起こすシグナルを示す。
【0045】
本明細書で用いられるように「分離」は、(例えば、ろ過、親和性、浮遊密度、または磁気引力によって)一つの成分をもう一つの成分から実質的に精製するあらゆる方法を含む。
【0046】
本明細書で用いられるように「表面」はそこに物質を接着させることのできるあらゆる表面を示し、金属、ガラス、プラスチック、コポリマー、コロイド、脂質、細胞表面などが含まれるが、制限されるものではない。本質的に、そこに結合または接着した物質を保持することのできる任意の表面である。
【0047】
本明細書で用いられるように「単一クローン性」は、T細胞集団に関して用いられる場合、スペクトルタイプ分析(TCRのVβ、Vα、VγまたはVδ鎖超可変領域レパートリーの指標)によって示されるシグナル特異性を持つT細胞集団を示す。所与のTCR Vβ、Vα、VγおよびまたはVδファミリーに対するVβ、Vα、VγおよびまたはVδのスペクトルタイププロフィールが単一の優勢ピークを示す場合、T細胞集団は単一クローン性(または単一特異性)と考えられる。スペクトルタイプ分析は、配列ではなく、特定の大きさの再配置された可変遺伝子を識別する。従って、単一のピークは、接合部位に4種類の可能なヌクレオチド(アデニン(a)、グアニン(g)、シトシン(c)またはチミン(t))、または4種類のヌクレオチドの組み合わせのいずれか一つを持つ一定数の再配置されたTCR可変遺伝子(Vβ、Vα、VγまたはVδ)のいずれか一つを発現しているT細胞の集団を表しうることが理解される。本発明の一部の態様において、特定の長さのバンドに含まれる再配置された可変遺伝子の配列を決定するために特定のバンドをクローニングおよび配列決定することが望ましいこともある。
【0048】
本明細書で用いられるように「オリゴクローン性」は、T細胞集団について用いられる場合、多様ではあるが狭い抗原特性を持つT細胞集団を示す。これはスペクトル分析(TCRのVβ、Vα、VγまたはVδ鎖超可変領域レパートリーの指標)によって定義することができる。所与のTCR Vβ、Vα、VγまたはVδファミリーに対するVβスペクトルタイププロフィールが約2〜約4の優勢ピークを示す場合、T細胞集団はオリゴクローン性と考えられる。これは、関心対象の抗原に対する抗原特異的クローンの作製および性状分析によっても定めることができる。
【0049】
本明細書で用いられるように「多クローン性」は、T細胞集団に関して用いられる場合、多様な幅広い抗原特異性を持つT細胞の集団を示す。これは、スペクトルタイプ分析(TCRのVβ、Vα、VγまたはVδ鎖超可変領域レパートリーの指標)によって分類することができる。所与のTCR Vβ、Vα、VγまたはVδファミリーに対するVβスペクトルタイプのプロフィールが多くのピーク、一般的には5つまたはそれよりも多い優勢ピークを示す場合、またガウス分布である大半の場合、T細胞集団は多クローン性と考えられる。多クローン性も、関心対象の抗原に対する抗原特異的クローンの作製および性状分析によって定めることができる。
【0050】
本明細書で用いられるように「多クローン性の回復または亢進」は、スペクトルタイプ分析またはフローサイトメトリーもしくは配列分析のような同様の分析によって測定される、T細胞集団のTCR Vβ、Vα、VγまたはVδ発現遺伝子における、単クローン性からオリゴクローンもしくは多クローン性へ、またはオリゴクローン性から多クローン性への推移を示す。T細胞集団における単クローン性Vβ、Vα、VγまたはVδ発現プロフィールからオリゴクローン性プロフィールまたは多クローン性プロフィールへの推移は、一般に少なくとも一つのTCR Vβ、Vα、Vγおよび/またはVδファミリーに見られる。本発明の一つの態様において、この推移は2、3、4または5つのVβファミリーに見られる。本発明の一部の態様において、推移は6、7、8、9または10のVβファミリーに見られる。本発明のさらなる態様において、推移は11、12、13または14のVβファミリーに見られる。本発明のさらなる態様において、推移は15から20のVβファミリーに見られる。本発明のさらなる態様において推移は20〜24のVβファミリーに見られる。もう一つの態様において、推移はすべてのVβファミリーに見られる。T細胞集団の卓論性の回復または亢進の機能的な重要性は、T細胞集団の免疫力価および一連の抗原に対する応答能力が回復または亢進することである。本発明の一部の局面において、集団内のいくつかのT細胞は本明細書に記載される方法(例えば、TCR発現がダウンレギュレートされたT細胞)に関与するTCRを持たない可能性がある。しかし、本明細書に記載される方法によって活性化されるT細胞およびそれらに分泌される因子の近傍にあることによって、これらのT細胞は次にそれらのTCR発現をアップレギュレートして、それによってT細胞集団の多クローン性をさらに高めることができる。多クローン性の回復または亢進も、例えば、抗原特異的細胞によって認識される異なるエピトープの数を測定するなど、関心対象の特定の抗原に対する応答の幅を調べることによって求めることができる。これは、インビトロにおける抗原特異的T細胞の作製およびクローニングに関する標準的技術を用いて実施することができる。
【0051】
本明細書で用いられるように「クローン性T細胞集団」という用語は、所与の標的抗原に対する所与の範囲の特異性を持つT細胞集団を示す。これは、例えば、所与の集団における抗原特異的クローンを作製して特異性の幅(即ち、異なる特異性の数)を測定するなど、当技術分野において既知の任意の数のアッセイによって測定することができる。クローン性T細胞集団も、スペクトルタイプ分析(TCRのVβ、Vα、VγまたはVδ鎖超可変領域レパートリーの指標)によって定められる単一クローン性またはオリゴクローン性の特異性のいずれかを持つことによって定義することができる。
【0052】
本明細書で用いられるように「動物」または「哺乳動物」という用語は、ヒトを含むすべての哺乳動物を内包する。好ましくは、本発明の動物はヒトである。
【0053】
本明細書で用いられるように「曝露」という用語は、極めて近くまたは直接的な接触の状態または条件にすることを示す。
【0054】
本明細書で用いられるように「増殖」という用語は、成長または新しい細胞の産生による倍化を意味する。
【0055】
本明細書で用いられるように「免疫応答または反応性」は、特定の細胞の特定のエフェクター機能が誘発されるような、T細胞その他の免疫系の細胞の活性化を示す。エフェクター機能には、増殖、サイトカインの分泌、抗体の分泌、調節分子および/または接着分子の発現、ならびに細胞溶解誘発能が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0056】
本明細書で用いられるように「免疫応答の刺激」は、免疫系細胞のエフェクター機能の活性化および誘導が達成されるようなあらゆる刺激を示す。
【0057】
本明細書で用いられるように「免疫応答機能不全」は、免疫系細胞の不適切な活性化および/もしくは増殖またはそれらの欠除、ならびに/またはサイトカインの不適切な分泌もしくはそれらの欠除、ならびに/または調節レセプター、接着レセプターおよび/もしくはホーミングレセプターの発現のような免疫系細胞のその他のエフェクター機能の不適切もしくは不十分な誘導、ならびに細胞溶解の誘導を示す。
【0058】
本明細書で用いられる「粒子」または「表面」には、コロイド粒子、ミクロスフェア、ナノ粒子、ビーズなどが含まれうる。表面は、細胞表面(例えば、K562細胞)を含めてそこにリガンドを結合させるまたは内部に取り込ませることのできる任意の表面であることができ、つまり、刺激されるべき標的細胞に対して生体適合性であり、実質的に無毒である。様々な態様において、ビーズまたはその他の粒子のような市販されている表面が有用である(例えば、Miltenyi Particles, Miltenyi Biotec, Germany;セファロースビーズ、Pharmacia Fine Chemicals, Sweden;DYNABEADS(商標)、Dynal Inc., New York;PURABEADS(商標)、Prometic Biosciences, 磁気ビーズ、Immunicon, Huntingdon Valley, PA、ミクロスフェア、Bangs Laboratories, Inc., Fishers, INなど)。
【0059】
本明細書で用いられるように「常磁性粒子」は、上記に定義されるように、磁場に反応して局在化する粒子を示す。
【0060】
本明細書で用いられるように「プロアポトーシス組成物」、「アポトーシス組成物」または「アポトーシスインディーサー」は、単独または他のプロアポトーシス組成物と併用して投与された際に細胞のアポトーシス活性を高める組成物または刺激物を示す。本発明の方法において用いられるプロアポトーシス組成物は、好ましくは、活性化されたT細胞、NKT、NKまたはB細胞にアポトーシスを誘発する。一部の態様において、本発明のプロアポトーシス組成物は、さらなる活性化/刺激を伴うことなくアポトーシスを誘発する。このような組成物または刺激物の例示的な例として、成長因子の除去、酸化状態、熱ストレス、血清飢餓、ホルボールミリスチン酸酢酸(PMA)およびイオノマイシン、スーパー抗原(例えば、SEA、SEBなど)、抗CD2、抗CD3、抗CD28、抗CD20、抗Fas抗体のような様々な抗体またはそれらの任意の組み合わせ、MHC-ペプチドの四量体または二量体、Fasリガンド、IL-2、IL-4、TRAIL、ロリプラム、ドキソルビシン、クロラムブシル、フルダラビン、コルチコステロイド、グルココルチコイド、シクロスポリン、シクロホスファミド、FK506、アザチオプリン、メトトレキセート、ミコフェノレート、アネキシン、カスパーゼ、bcl-2阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、インターロイキン-1β転換酵素(ICE)-結合物質、赤痢菌IpaBタンパク質、スタウロスポリン、紫外線照射、ガンマ線照射、放射線照射、腫瘍壊死因子、各種ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、および当技術分野において周知であるその他の物質が挙げられるが、これらに限定されるものではない。一部の態様において、プロアポトーシス組成物は、細胞表面部分と結合する一つまたは複数の物質をそこに接着させている磁気ビーズのような表面を持つ。この点において、その物質は本明細書で述べられるように任意の物質であることができる。一つの態様において、表面は少なくとも抗CD3抗体をそこに接着させている。もう一つの態様において、表面は抗CD3および抗CD28抗体をそこに接着させている。さらに、アポトーシスの刺激物質は、細胞のアポトーシス活性を亢進または誘導することのできるポリペプチドであることができる。このようなポリペプチドには、Bax、Bad、Bcl-xS、Bak、Bikおよび活性カスパーゼのようにアポトーシス経路を直接調節する物質、ならびにその経路を間接的に調節する物質が含まれる。一部の態様において、特にB細胞集団におけるアポトーシスの誘発に関して、そのプロアポトーシス組成物は(米国特許出願第10/133,236号に述べられるような)XCELLERATED T細胞(商標)のような活性化T細胞を含む。その他の例示的なプロアポトーシス組成物には、放射線照射細胞(例えば、ドナーまたはレシピエント(同種異系)の細胞)、標的抗原(例えば、多発性硬化症においてミエリン塩基性タンパク質(MBP)として同定される標的抗原であるMBP84-102またはMBP143-168;膵島細胞抗原;ブドウ膜炎におけるS抗原;または慢性関節リウマチにおけるII型もしくはその他のコラーゲンなどの限定的自己免疫標的抗原;グレーブス病における甲状腺レセプター;重症筋無力症におけるアセチルコリンレセプター)、細胞質リンカータンパク質-170(CLIP-170)、核酸分子、タンパク質またはペプチド、および非タンパク性および非ポリヌクレオチド性化合物が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0061】
本明細書で用いられるように「さらなる活性化または刺激のために細胞を感作する組成物」または「感作組成物」は、その後の活性化/刺激に対して細胞を感作する組成物である。感作した細胞は、その後の活性化/刺激を受けるとアポトーシスを起こす。本発明の感作組成物は、プロアポトーシス組成物の影響に対しても細胞を感作する。さらなる活性化、刺激、またはプロアポトーシス組成物の影響に対して細胞を感作する例示的な組成物には、例えば放射線照射によって分裂が継続できないように処理された細胞(ドナーまたはレシピエント(同種異系)の細胞など)、スーパー抗原(例えばSEA、SEBなど)、標的抗原(例えば、多発性硬化症におけるミエリン塩基性タンパク質(MBP)として定義される標的抗原であるMBP84-102またはMBP143-168;膵島細胞抗原;ブドウ膜炎におけるS抗原;または慢性関節リウマチにおけるII型もしくはその他のコラーゲンような限定的自己免疫標的抗原;グレーブス病における甲状腺レセプター;重症筋無力症におけるアセチルコリンレセプター、核酸分子、タンパク質またはペプチド、および非タンパク性または非ポリヌクレオチド性化合物)、タンパク質、糖タンパク質、ペプチド、抗体/抗原複合体、細胞溶解物、不溶性細胞崩壊物、アポトーシス体、壊死性細胞、分裂を継続できないように処理されたセルラインに由来する全細胞、天然または合成型炭水化物複合体、リポタンパク質、形質転換された細胞もしくはセルライン、トランスフェクトされた細胞もしくはセルライン、または形質導入された細胞もしくはセルライン、またはその組み合わせが含まれる。
【0062】
本発明の用途におけるアポトーシスは、プログラムされた細胞死として定義される。アポトーシスは、多くの生理学的および病理学的プロセスにおいて極めて重要な役割を担う幅広い現象であるプログラムされた細胞死である。アポトーシスは、胚発生、変態、内分泌依存組織萎縮、正常な組織代謝回転、および免疫胸腺細胞の死(抗原-レセプター複合体を介して、またはグルココルチコイドによって誘発される)において生じる(Itohら、Cell 66:233, 1991)。胸腺でのT細胞成熟期間中に、自己抗原を認識するT細胞はアポトーシス過程を通じて破壊され、その他はポジティブ選択される。一部の自己エピトープ(例えば、プロセスが非効率的であって、所与の自己タンパク質の抗原決定基が提示される)を認識するいくつかのT細胞がこの排除プロセスを免れて、その後、自己免疫疾患に関与する可能性が示唆されている(Gammonら、Immunology Today 12:193, 1991)。壊死は、様々な有害条件および毒性物質に対する細胞の反応である偶発的細胞死である。アポトーシスは壊死とは形態学的に異なり、各種条件下において多くの異なる組織に生じる自然状態の細胞死である。アポトーシスは2つの段階で生じる。細胞は核および細胞質の凝集を起こして、最終的には構造的に完全なアポトーシス体を含む多くの膜結合型フラグメントに分裂する可能性があり、これは近隣の細胞に貪食されて速やかに分解される。または、アポトーシス経路に入った細胞は膜結合体への変性前に貪食される可能性がある。アポトーシスは、健常組織、腫瘍性組織、加齢組織および胚組織の多くの異なる組織において観察される。細胞死は自然発生性に生じるか、または物理的もしくは有害物質によって誘発される。アポトーシスは、細胞集団の調節において重要な役割を担う基本的な生理学的プロセスである。
【0063】
アポトーシスを測定するための方法は当技術分野において周知である。アポトーシスは、例えばDNAラダー、電子または光学顕微鏡、フローサイトメトリー、およびアポトーシス測定用の様々な市販キットのような方法によって測定することができる。
【0064】
本明細書で用いられるように、「成長阻害組成物」は、単独または本発明のその他の組成物と併用して投与された際に細胞の成長を阻害する、またはその他の点では細胞を機能不全および分裂不能とする任意の物質である。本発明の方法で用いられる成長阻害組成物は、好ましくは、活性化T細胞、NKT、NKまたはB細胞の成長を阻害する。このような組成物または刺激物の例示的な例として、成長因子の除去、酸化状態、熱ストレス、血清飢餓、ホルボールミリスチン酸酢酸(PMA)およびイオノマイシン、スーパー抗原(例えば、SEA、SEBなど)、抗CD2、抗CD3、抗CD28、抗CD20、抗Fas抗体のような様々な抗体またはそれらの任意の組み合わせ、MHC-ペプチドの四量体または二量体、Fasリガンド、IL-2、IL-4、TRAIL、ロリプラム、ドキソルビシン、クロラムブシル、フルダラビン、コルチコステロイド、グルココルチコイド、シクロスポリン、シクロホスファミド、FK506、アザチオプリン、メトトレキセート、ミコフェノレート、アネキシン、カスパーゼ、bcl-2阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、インターロイキン-1β転換酵素(ICE)-結合物質、赤痢菌IpaBタンパク質、スタウロスポリン、紫外線照射、ガンマ線照射、放射線照射、腫瘍壊死因子、各種ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、および当技術分野において周知であるその他の物質が挙げられるが、これらに限定されるものではない。一部の態様において、成長阻害組成物は、細胞表面部分を結合する一つまたは複数の物質をそこに接着させている磁気ビーズのような表面を持つ。この点において、その物質は本明細書に述べられるような任意の物質であることができる。一つの態様において、その表面は少なくとも抗CD3抗体をそこに接着させている。もう一つの態様において、表面は抗CD3および抗CD28抗体をそこに接着させている。さらに、成長阻害組成物は、細胞の生育を阻害することのできるポリペプチドを含むことができる。このようなポリペプチドには、Bax、Bad、Bcl-xS、Bak、Bikおよび活性カスパーゼのようなペプチドが含まれる。その他の例示的な成長阻害組成物には、放射線照射細胞(例えば、ドナーまたはレシピエント(同種異系)の細胞)、標的抗原(例えば、多発性硬化症においてミエリン塩基性タンパク質(MBP)として同定される標的抗原であるMBP84-102またはMBP143-168;膵島細胞抗原;ブドウ膜炎におけるS抗原;または慢性関節リウマチにおけるII型もしくはその他のコラーゲンなどの限定的自己免疫標的抗原;グレーブス病における甲状腺レセプター;重症筋無力症におけるアセチルコリンレセプターなど)、細胞質リンカータンパク質-170(CLIP-170)、核酸分子、タンパク質またはペプチド、および非タンパク性および非ポリヌクレオチド性化合物が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0065】
本明細書で用いられるように、CD3+/CD28+T細胞の「実質的に純粋」な集団は、少なくとも約90%のCD3+/CD28+T細胞を含む細胞集団である。本発明の一部の局面において、「実質的に純粋」なCD3+/CD28+T細胞集団は、少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%または98%のCD3+/CD28+T細胞を含み、好ましくは少なくとも約99%、さらにより好ましくは約99.9%またはそれよりも多いCD3+/CD28+T細胞を含む細胞集団である。
【0066】
混合細胞集団の供給源
一つの態様において、プロアポトーシスまたは成長阻害組成物および/または感作組成物に曝露されるべき細胞は個体の循環血に由来して、一単位もしくはそれよりも多い単位の血液またはアフェレーシスもしくは白血球搬出法から得られる。アフェレーシス産物は、一般に、T細胞を含むリンパ球、単球、顆粒球、B細胞、またはその他の有核白血球、赤血球および血小板を含む。感作組成物への曝露ならびにその後の活性化および/または刺激に先立って、対象からT細胞の供給源が得られる。「対象」という用語は、免疫応答を起こすことのできる生存有機体(例えば、哺乳動物)を含むことが意図される。対象の例には、ヒト、イヌ、ネコ、マウス、ラットおよびそれらのトランスジェニック動物が含まれる。T細胞は、末梢血単核細胞、骨髄、胸腺、組織生検、腫瘍、リンパ節組織、消化管関連リンパ組織、粘膜関連リンパ組織、脾臓、またはその他の何らかのリンパ組織、および腫瘍を含む多くの供給源から得ることができる。T細胞は、Tセルラインおよび自家または同種供給源から得ることができる。T細胞は、異種供給源、例えばマウス、ラット、ヒト以外の霊長類およびブタから得ることもできる。本発明の一部の態様において、T細胞は、Ficoll分離のような当業者に既知の任意の数の技術を用いて対象から採取した血液単位から得ることができる。一つの好ましい態様において、個体の循環血に由来する細胞はアフェレーシスまたは白血球搬出法によって得られる。アフェレーシス産物は、一般に、T細胞を含むリンパ球、単球、顆粒球、B細胞、その他の有核白血球、赤血球、および血小板を含む。一つの態様において、アフェレーシスによって採取される細胞は、血漿分画を除去するため、および後続の加工工程に備えて細胞を適切な緩衝液または媒質に混合するために洗浄することができる。本発明の一つの態様において、細胞はリン酸緩衝生理食塩液(PBS)で洗浄される。代替の態様において、洗浄液はカルシウムを含まず、かつ、マグネシウムを含まない可能性があり、または、必ずしもすべてが二価陽イオンでない場合は多くを含まない可能性がある。当業者が容易に認識するように、洗浄工程は、製造業者の説明書に基づく半自動「フロースルー」遠心分離(例えば、Cobe 2991セルプロセッサー、Baxter)を用いるなど、当業者に既知の方法によって行うことができる。洗浄後、細胞は、例えばカルシウム(Ca)フリー、マグネシウム(Mg)フリーPBSのような様々な生体適合緩衝液に再懸濁することができる。または、アフェレーシス試料の不要な成分を除去して、細胞を直接、培養培地に再懸濁することができる。
【0067】
もう一つの態様において、T細胞は、例えばPERCOLL(商標)グラジエントによる遠心分離による赤血球の溶解または除去および単球の除去によって末梢血リンパ球から単離される。CD28+、CD4+、CD8+、CD45RA+およびCD45RO+T細胞のようなT細胞の具体的な亜集団は、ポジティブまたはネガティブ選択技術によってさらに単離することができる。例えば、好ましい一つの態様において、T細胞は、DYNABEADS(登録商標) M-450 CD3/CD28 Tのような抗CD3/抗CD28(即ち、3×28)抱合型ビーズと共に所望のT細胞のポジティブ選択に十分な期間、インキュベートすることによって単離される。一つの態様において、この期間は約30分である。さらなる態様において、この期間は30分から36時間またはそれよりも長い時間、およびそれらの間のすべての整数値の範囲である。さらなる態様において、この期間は少なくとも1、2、3、4、5または6時間である。もう一つの好ましい態様において、この期間は10〜24時間である。一つの好ましい態様において、インキュベート期間は24時間である。白血病患者からのT細胞の分離に関して、24時間のようなより長いインキュベート時間を用いることによって細胞収量を高めることができる。より長いインキュベート時間は、腫瘍組織または免疫無防備状態の個体からの腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の単離の場合のように、その他の細胞種類に比べてT細胞が少ない何らかの状況においてT細胞を単離するために用いることができる。さらに、より長いインキュベート時間を使用すると、CD8+ T細胞の捕捉効率を高めることができる。例えば、CD3+、CD28+ T細胞は、CD3/CD28抱合型磁気ビーズ(例えば、DYNABEADS(登録商標)M-450 CD3/CD28 T細胞エキスパンダー)を用いてポジティブ選択することができる。本発明の一つの局面において、ネガティブ選択によるT細胞集団の濃厚化は、ネガティブ選択される細胞に固有の表面マーカーに指向性の抗体を併用して行うことができる。好ましい方法は、ネガティブ磁気免疫吸着法またはネガティブ選択される細胞にある細胞表面マーカーに指向性の単一クローン性抗体のカクテルを用いるフローサイトメトリーによる細胞のソーティングおよび/または選択である。例えば、ネガティブ選択によりCD4+細胞を濃厚化するため、単一クローン性抗体カクテルには一般にCD14、CD20、CD11b、CD16、HLA-DRおよびCD8に対する抗体が含まれる。
【0068】
本発明のもう一つの局面は、感作、刺激および増幅に先立って、CD62L、CD45RAまたはCD45RO、サイトカイン(IL-2、IFN-γ、IL-4、IL-10など)、サイトカインレセプター(CD25など)、パーフォリン、接着分子(VLA-1、VLA-2、VLA-4、LPAM-1、LFA-1など)、および/またはホーミング分子(L-セレクチンなど)のような様々なマーカーを発現している細胞集団について除去または濃厚化されているT細胞集団または組成物を提供する。一つの態様において、これらのマーカーのいずれかを発現している細胞は、そのマーカーに指向性である抗体またはその他のリガンド/結合物質によって除去またはポジティブ選択される。当業者は、所望のマーカーを発現している細胞の試料について除去またはポジティブ選択のための様々な特定の方法を容易に識別することができる。
【0069】
単球集団(即ち、CD14+細胞)は、除去を促進するためにまたはプラスチックへの吸着を通して、抗CD14でコーティングしたビーズまたはカラムを含む様々な方法またはこれらの細胞の貪食活性を利用して、エキソビボでの増幅前に血液調製物から除去することができる。従って、一つの態様において、本発明は貪食単球に内包され得る大きさの常磁性粒子を使用する。一部の態様において、常磁性粒子は、例えば、Dynal ASよりDYNABEADS(商標)の商標名で生産されるような市販のビーズである。この観点における例示的なDYNABEADS(商標)は、M-280、M-450およびM-500である。一つの局面において、その他の非特異的細胞は常磁性粒子を「無関係」のタンパク質(血清タンパク質または抗体など)でコーティングすることによって除去される。無関係のタンパク質および抗体には、増幅されるべきT細胞を特異的な標的としないタンパク質および抗体またはそれらのフラグメントが含まれる。一部の態様において、無関係のビーズには、ヒツジ抗マウス抗体、ヤギ抗マウス抗体、およびヒト血清アルブミンでコーティングされるビーズが含まれる。
【0070】
要約すると、単球の除去は、Ficollを用いて全血から、またはアフェレーシスした末梢血液から単離されたPBMCを一種類または数種類の無関係または抗体以外と結合した常磁性粒子と、単球を除去できる任意の量(ビーズ:細胞比 約20:1)で約30分ないし2時間、22〜37℃でプレインキュベートして、その後、常磁性粒子に接着しているまたはこれを取り込んでいる細胞を磁気的に除去することによって実施される。3〜4℃の低い温度でプレインキュベートすることもできる。このような分離は、当技術分野において有効な標準的方法を用いて実施することができる。例えばDYNAL(登録商標) Magnetic Particle Concentrator(DYNAL MPC(登録商標))などの様々な市販品を含む任意の磁気分離法を用いることができる。必要な除去の確保は、CD14陽性細胞のフローサイトメトリー分析など、除去の前後における当業者に既知の様々な方法によってモニターすることができる。
【0071】
プロアポトーシスおよび/または感作組成物ならびにその後の刺激に曝露するためのT細胞は洗浄工程後に凍結することも可能であり、この場合、単球除去工程は不要である。理論によって結びつけられることは意図しないが、凍結およびその後の融解工程は、細胞集団中の顆粒球およびある程度の単球を除去することによってより均一な生成物を提供する。血漿および血小板を除去する洗浄工程後、細胞は凍結液に懸濁することができる。多くの凍結液およびパラメータが当技術分野において既知であり、この状況において有用であるが、一つの方法は最終濃度10%のDMSOおよび4%ヒト血清アルブミンを含むPBS、またはその他の適切な細胞凍結媒質を使用し、続いて、細胞は毎分1℃の割合で−80℃まで凍結して、液体窒素貯蔵タンクの蒸気相に保管される。
【0072】
混合細胞集団からの不要な細胞亜集団の除去
プロアポトーシス組成物への直接曝露
本発明は、免疫細胞集団から不要なクローン細胞集団、一般的にはT細胞、B細胞、NKTまたはNK細胞の少なくとも一部を排除するための方法を提供する。本発明は、不要な細胞をもはや含まない、または不要な細胞の数が著しく減少した細胞集団を持つ組成物およびそれらの用途をさらに提供する。
【0073】
不要な細胞集団は、直接的な細胞のプロアポトーシス組成物への曝露を介して排除または統計学的に有意に減量することができる。プロアポトーシス組成物への曝露は、インビボまたはインビトロにおいて実施することができる。理論によって結びつけられることはないが、予め活性化された細胞はナイーブまたは非活性化細胞よりもアポトーシス組成物に対してより感受性であると考えられる。従って、アポトーシスを誘発する用量および条件を用いてのインビボまたはインビトロにおけるアポトーシス組成物への曝露は患者における好ましくない自己反応性細胞のような高度に活性化された細胞を選択的に死滅させる。本発明の好ましい態様において、排除されるべき自己反応性細胞はT細胞、NKT、NKまたはB細胞を含む。
【0074】
従って、本発明は、免疫細胞の混合集団から(T、B、NKTまたはNK細胞のような)いずれかの好ましくないクローン性細胞亜集団の少なくとも実質的な部分を排除するための方法を提供する。本発明において、実質的な部分とは、細胞の好ましくない亜集団の少なくとも70%を意味する。一部の態様において、実質的な部分は、細胞の好ましくない亜集団の75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%およびそれよりも高い割合を意味する。細胞の排除は、様々な抗体および/またはペプチド-MHC四量体を用いたフローサイトメトリー分析ならびに増殖アッセイおよびクロム放出アッセイのような機能アッセイなどを含む、当技術分野において既知の任意の様々な技術を用いて測定することができる。
【0075】
プロアポトーシス組成物またはアポトーシスインデューサーは、単独または他のプロアポトーシス組成物と併用して投与された際に細胞のアポトーシス活性を増大させる組成物または刺激物を示す。本発明の方法において用いられるプロアポトーシス組成物は、好ましくは活性化されたT細胞、NKT細胞、NK細胞およびB細胞においてアポトーシスを誘発する。プロアポトーシス組成物が所望のアポトーシスを誘発する量および条件は異なる可能性があり、当業者は定型の至適化を用いてこれらを測定することができる。一部の態様において、本発明のプロアポトーシス組成物はさらなる活性化/刺激を伴うことなくアポトーシスを誘発する。このような物質または刺激物の例示的な例には、成長因子の除去、酸化状態、熱ストレス、凍結-融解ストレス、血清飢餓、抗CD2、抗CD3、抗CD28、抗CD20または抗Fas抗体のような様々な抗体、MHC-ペプチド四量体、Fasリガンド、TRAIL、FR901228(米国特許第6,403,555号に述べられる)、FK506、アネキシン、カスパーゼ、IL-2またはIL-4のようなサイトカイン、シクロホスファミド、化学療法剤、UV、ステロイド、コルチコステロイド、グルココルチコイド、ロリプラム、ドキソルビシン、クロラムブシル、フルダラビン、bcl-2阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、インターロイキン-1β転換酵素(ICE)-結合物質、赤痢菌IpaBタンパク質、スタウロスポリン、紫外線照射、ガンマ線照射、放射線照射、腫瘍壊死因子、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、および当技術分野において周知であるその他の物質が挙げられるが、これらに限定されるものではない。一部の態様において、プロアポトーシス組成物は、細胞表面部分を結合する一つまたは複数の物質を接着させる磁気ビーズのような表面を持つ。この点において、その物質は本明細書で述べられるように任意の物質であることができる。一つの態様において、表面は少なくとも抗CD3抗体をそこに接着させる。もう一つの態様において、表面は抗CD3および抗CD28抗体をそこに接着させる。さらに、アポトーシスの刺激物質は、細胞のアポトーシス活性を亢進または誘発することのできるポリペプチドであることができる。このようなポリペプチドには、Bax、Bad、Bcl-xL、Bak、Bikおよび活性カスパーゼのようにアポトーシス経路を直接調節する物質、ならびにその経路を間接的に調節する物質が含まれる。その他の例示的なプロアポトーシス組成物には、放射線照射細胞(例えば、ドナーまたはレシピエント(同種異系)の細胞)、標的抗原(例えば、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、膵島細胞抗原、細胞質リンカータンパク質-170(CLIP-170)、シェーグレン症候群抗原A(SS-A/Ro)、シェーグレン症候群抗原B(SS-B/La)、シェーグレンループス抗原(SL)、強皮症抗原70(Scl-70)のような限定的自己免疫標的抗原)、核酸分子、タンパク質またはペプチド、および非タンパク性および非ポリヌクレオチド性化合物が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0076】
本発明の一つの局面において、一つまたは複数のプロアポトーシス組成物がインビボにおいて薬学的に許容可能な賦形剤と併用して個体に投与される。プロアポトーシス組成物の任意の組み合わせは、抗CD3抗体のようにIL-2またはIL-4のようなサイトカインと併用して投与することが可能であり、その投与については特許出願番号国際公開公報第9428926号に述べられている。当業者が容易に認識するように、本発明の方法において用いられるプロアポトーシス組成物に関して、1)これらの物質の薬物動態学的行動;および2)安全性およびあらゆる不都合な影響の同定、3)排除されるべき細胞におけるアポトーシスの効果的誘導のための至適用量を調べるために一連の用量にわたって定型的に試験が行われる必要がある。これは、第I相臨床試験を構成する。このように、本明細書で述べられる方法において用いられる特定のプロアポトーシス組成物は個々の定型的な至適化を必要とする。本発明のプロアポトーシス組成物は、一般的には非経口的、または吸入によって投与することができる。「非経口的」という用語には、皮下、静脈内、筋肉内、槽内の注射または注入技術が含まれる。これらの組成物は、一般に、プロアポトーシス組成物の有効量を単独またはその他の何らかの活性物質の有効量と配合して含有する。組成物に含まれるこのような用量および所望の薬剤濃度は、意図する用途、哺乳動物の体重および年齢、ならびに投与経路を含む多くの要因に応じて変えることができる。予備的用量は動物試験に基づいて定めることができ、ヒトへの投与に関する用量のスケーリングは当技術分野において許容される手法に従って実施することができる。
【0077】
本発明の一つの局面において、細胞集団はインビトロにおいて一つまたは複数のプロアポトーシス組成物に曝露される。当業者が容易に認識する通り、本発明の方法において用いられるプロアポトーシス組成物に関しては、1)これらの物質の動態;および2)安全性およびあらゆる不都合な影響の同定、3)排除されるべき細胞におけるアポトーシスの効果的誘導のための至適用量を調べるために一連の用量にわたって定型的に試験が行われる必要がある。このように、本明細書で述べられる方法において用いられる特定のプロアポトーシス組成物は個々の定型的な至適化を必要とする。一つの特定の態様において、細胞の好ましくない反応性亜集団が除去された残留細胞集団はさらなる刺激/活性化または増幅を行わずに患者に投与することができる。
【0078】
本発明の一つの態様において、細胞は単独または他のプロアポトーシス組成物と併用して何回もプロアポトーシス組成物に曝露される。本発明の一部の局面において、一つまたは複数のプロアポトーシス組成物への曝露に先立って、下記の「細胞集団の刺激/活性化」および「細胞集団の増幅」のセクションに示す通り混合細胞集団を活性化/刺激、さらにいくつかの場合には増幅することが好ましい可能性がある。一つの好ましい態様において、本発明のプロアポトーシス組成物への暴露後に集団中に残留する細胞は下記の「細胞集団の刺激/活性化」および「細胞集団の増幅」のセクションに述べるようにインビトロにおいて活性化/刺激および増幅される。一部の態様においてプロアポトーシス組成物ならびに活性化/刺激および増幅のために用いられる組成物は同一の組成物である。一つの特定の態様において、本明細書に述べるように、そこに物質を接着させている表面はプロアポトーシス組成物として使用され、混合集団を活性化/刺激および増幅するためにさらに使用される。この点に関して、集団の一部のクローン性細胞はアポトーシスを受けるために誘導されて、その他はその組成物に反応して刺激/活性化および増幅される。この状況において、T細胞の亜集団におけるアポトーシスを誘発するため、ならびにT細胞混合集団を刺激/活性化および増幅するために用いることのできる例示的な組成物は、ビーズ上に共固定された抗CD3および抗CD28抗体(3×28ビーズ)を持つ。
【0079】
本発明のもう一つの態様において、一つまたは複数のプロアポトーシス組成物への暴露後に残留する細胞はインビボにおいてさらに刺激/活性化および増幅される。本発明の細胞のインビボにおける刺激および増幅は、IL-2およびIL-4のような任意の数のサイトカインまたは本明細書に述べられる細胞を刺激するその他の物質を用いて実施することができる。
【0080】
本発明のさらなる態様において、一つまたは複数のプロアポトーシス組成物への暴露後に残った細胞を、下記の「細胞集団の刺激/活性化」および「T細胞集団の増幅」のセクションで述べる通り、表面およびそこに結合した物質を用いてインビトロにおいてさらに刺激/活性化および増幅する。本発明の表面を用いたアポトーシスを受けなかった残留細胞の刺激および活性化は、所与の抗原に対するその集団の反応性の幅により測定される通り、T細胞の残留集団の多クローン性を亢進することができる。多クローン性の回復または亢進は、例えば、抗原特異的細胞によって認識される異なるエピトープの数を測定することによって、関心対象の特定の抗原に対する反応の幅を測定して調べることができる。これは、インビトロにおいて抗原特異的T細胞の作製およびクローニングのための標準的技術を用いて実施することができる。
【0081】
アポトーシスを受けなかった残留細胞の本発明の表面を用いた刺激および活性化は、スペクトルタイプ分析によって示されるように発現したTCR遺伝子に関してT細胞の残留集団に対する多クローン性を回復する。本発明のT細胞組成物の多クローン性については、米国特許出願第60/375,733号に述べられている。スペクトルタイプ分析は、T細胞プールによるTCR Vβ、Vα、VγまたはVδ遺伝子利用および(米国特許第5,837,447号に述べられるように)T細胞発生の遺伝子組換え過程におけるヌクレオチド挿入量を測定するための方法である。スペクトルタイプ分析は、T細胞免疫応答能の幅または狭さを測定するために使用することができる。さらに、スペクトルタイプ分析は、特異的な不要のT細胞クローン集団がT細胞混合集団から除去されたかどうかを調べるために用いることができる。
【0082】
V、DおよびJ遺伝子セグメントの連結能力は、無作為に、TCRレパートリーに大きな組み合わせ多様性を導入する。V、DおよびJセグメントが連結する正確な位置は変化することができ、結合部位における局所のアミノ酸多様性を生じる。正確なヌクレオチド連結部位は10残基も変動することが可能であり、その結果、V、DおよびJ遺伝子セグメントの末端からヌクレオチドが欠失して、それによってこれらのセグメントの連結部位では生成するコドンが変化する。いずれの遺伝子セグメントにもコードされない別のヌクレオチドが連結した遺伝子セグメント間の結合部位に付加されると、再配置プロセス中にさらに多様性が高まる。(このプロセスによって生じる変動性は、「N領域多様性」と呼ばれる。)(Janeway, Travers, Walport. Immunobiology. 第4版、98 and 150. Elsevier Science Ltd/Garland Publishing. 1999)。
【0083】
T細胞レパートリーの多様性レベルは、TCR Vβ、Vα、VγまたはVδ鎖が循環T細胞プール内の個々のT細胞によって利用されていることを調べることによって、またV-D-JまたはV-J遺伝子結合部位のVβ遺伝子に隣接して挿入される任意のヌクレオチドの数によって、ある程度測定することができる。一般に、循環T細胞プールがTCR Vβ、Vα、VγまたはVδ鎖の全範囲を発現しているT細胞を含む場合、およびそれらの各V領域鎖が挿入されたヌクレオチドの最も広い配列を用いる遺伝子組換えイベントから派生する場合、免疫系のT細胞群は抗原候補集団の認識に関して最大能力を発揮する。T細胞循環プールが発現したTCR V領域鎖の範囲が限定的または抑制される場合、また発現したTCRが限定されたヌクレオチド挿入を持つ組換え遺伝子によってコードされる鎖を利用する場合、免疫応答能の幅はそれに従って減少する。この結果は様々な抗原に対する応答能の抑制であり、感染および癌のリスク増大を招く。
【0084】
アポトーシスの測定方法は当技術分野において既知であり、例えば、Current Protocols in Immunology, John Wiley & Sons, New York, N.Y.または米国特許第6,312,684号に述べられている。アポトーシスを測定するための例示的なアッセイは、DNAラダー、電子または光学顕微鏡、フローサイトメトリー、およびアポトーシス測定用の異なる市販キットを含む。一部の態様において、細胞はクロマチン凝集、細胞収縮、粒状度の増加、および当業者に既知であるアポトーシスのその他の徴候のような形態学的変化について観察される。クロマチン凝集は、染色した細胞調製物の光学顕微鏡検査のような標準的方法によって検出することができる。細胞収縮および粒状度は、細胞の光散乱特性を測定することによって容易に検出することができる(Kerrら、前記、 およびWyllieら、前記)。DNAが一本鎖または二本鎖の断片化を起こしてオリゴヌクレオソームラダーとなる観察所見は、しばしば、アポトーシスが誘発されたことを示すもう一つの指標である(Arendら、Am. J. Pathol, 136:593, 1990;Wyllieら、J. Pathol, 142.:67, 1984)。しかし、時にアポトーシス細胞が二本鎖ヌクレオソーム内DNA断片化を起こさないことがある(Collinsら、Int. J. Rad. Biol., 62:45 1992;Cohenら、Biochem. J., 286:331 1992)。その代わり、一本鎖DNAの切断が観察される。一本鎖の切断は、DNAのインサイチューニックエンド標識法を用いて容易に検出することができる。この方法についてはWyllieら(Br. J. Cancer, 67:20, 1993)によって説明されている。
【0085】
一つの態様において、本発明の細胞は本明細書に述べられる通り成長阻害組成物に曝露される。一部の態様において、本発明の成長阻害組成物はT細胞の少なくとも一つのクローン集団の少なくとも実質的な部分の成長を阻害して、混合細胞集団が本明細書に述べられるように活性化/刺激および増幅される場合、成長を阻害される細胞は増幅せず、最終的には混合細胞集団によって淘汰される。この結果、混合細胞集団から生育阻害された細胞が効果的に排除される。
【0086】
細胞を感作する組成物のさらなる刺激/活性化への曝露
または、不要な細胞集団の少なくとも実質的な部分は、先ず細胞をさならる刺激/活性化に対して感作した後、本発明の表面に曝露することによってそれらをさらに刺激または活性化して、排除することができる。この追加の刺激/活性化は感作細胞のアポトーシスを誘発して、集団からそれらを排除する。本発明の感作組成物は上記のプロアポトーシス組成物の影響に対しても細胞を感作する。従って、本発明は、細胞の不要な集団をさらなる刺激/活性化またはプロアポトーシス組成物の影響に感作する一つまたは複数の組成物に曝露することによって、不要な細胞クローン集団の少なくとも実質的な部分、一般にT細胞またはB細胞を免疫細胞集団から排除するための方法を提供する。本発明は、もはや不要な細胞を含まない細胞集団を含む組成物およびその用途をさらに提供する。
【0087】
本発明の一つの局面において、免疫細胞集団は、細胞の少なくとも一部、例えば予め高度に活性化されたT細胞またはB細胞などをさらなる活性化または刺激に対して感作する一つの組成物またはいくつかの組成物に曝露される。一つの好ましい態様において、感作された細胞は不要な自己反応性T細胞またはB細胞を含む。一つのさらなる態様において、感作された細胞はドナーの造血幹細胞に含まれるアロ反応性細胞を含む。さらなる態様において、感作された細胞は臓器移植レシピエント候補由来のアロ反応性細胞を含む。
【0088】
本発明の一つの態様において、感作組成物は放射線照射細胞を含む。一つの特定の態様において、放射線照射細胞は造血幹細胞移植レシピエントに由来し、感作対象細胞は造血幹細胞移植ドナーに由来する。もう一つの態様において、感作組成物は、臓器ドナーに由来する放射線照射細胞を含み、感作対象細胞は臓器レシピエント由来の細胞である。一部の態様において、感作対象細胞は移植後の臓器レシピエント由来の細胞である。細胞は一般に、約3000〜3600rad、より好ましくは約3300radの範囲のガンマ線照射を受ける。リンパ幼若細胞または腫瘍細胞のセルラインのような本発明において有用である可能性のあるその他の放射線照射細胞は一般に約6000〜10,000radの範囲、より好ましくは約8000radのガンマ線の照射を受ける。細胞は化学的物質(エチポシド、マイトマイシンなど)のようなその他の方法によって処理することもできる。
【0089】
本発明の感作組成物には、後続の刺激または活性化がアポトーシスを誘発するようにT細胞、NKT細胞、NK細胞またはB細胞のような免疫細胞を後続の刺激に対して感作する任意の組成物または組成物の組み合わせが含まれる。本発明の感作組成物には、T細胞またはB細胞のような免疫細胞を後続のプロアポトーシス組成物への曝露に対して感作する任意の組成物または組成物に組み合わせも含まれる。本発明の感作組成物には、抗CD2、抗CD3、抗FASのような抗体;MHC-ペプチドの二量体または四量体、IL-2のようなサイトカイン、TRAIL、ロリプラム、ドキソルビシン、クロラムブシルおよびフルダラビンのような化合物が含まれるが、これらに限定されるものではない。感作組成物には、FASリガンドならびにCD2およびCD3の天然型リガンドも含まれる。感作組成物は、米国特許第6,277,844号に述べられるようなblc-2の阻害物質、エトポシド、CPT-11およびトポテカンのようなトポイソメラーゼ阻害物質、ならびに米国特許第5,834,012号に述べられるようなその他の物質も含む。その他の例示的な感作組成物は、米国特許第5,972,899号に述べられる赤痢菌IpaBタンパク質のようなアポトーシスを誘発するインターロイキン-1β転換酵素(ICE)-結合物質、または米国特許第6,350,741号、第6,294,546号および第6,329,365号に述べられる化合物を含む。
【0090】
本発明の例示的な感作組成物は自己抗原も含む。自己抗原は、例えば多発性硬化症においてミエリン塩基性タンパク質(MBP)として同定される標的抗原であるMBP 84-102またはMBP 143-168;膵島細胞抗原;ブドウ膜炎におけるS抗原;または慢性関節リウマチにおけるII型もしくはその他のコラーゲンのような限定的自己免疫標的抗原;SLEにおける細胞質リンカータンパク質-170(CLIP-170);シェーグレン症候群抗原A(SS-A/Ro)、シェーグレン症候群抗原B(SS-B/La)、シェーグレンループス抗原(SL)、強皮症抗原70(Scl-70);グレーブス病における甲状腺レセプター;重症筋無力症におけるアセチルコリンレセプター、核酸分子、タンパク質またはペプチド、および非タンパク性および非ポリヌクレオチド性化合物などの限定的自己免疫標的抗原が含まれるが、これらに限定されるものではない。本発明の自己抗原は、例えばI型糖尿病、慢性関節リウマチおよび多発性硬化症のようないくつかの一般的自己免疫疾患に対する感受性を付与するHLA-DQおよび-DR分子、反応性関節炎および強直性脊椎炎に対する感受性を付与することが知られているHLA-B27分子などの、自己免疫に関連することが知られているMHC分子から溶出されるペプチド混合物も含む。本発明の自己抗原は、自己免疫疾患に関連するMHC分子に結合すると予測される合成ペプチドであることもできる。
【0091】
本発明は、特異的なVβ、Vα、VγまたはVδ遺伝子を発現しているT細胞集団の少なくとも実質的な部分を選択的に排除するための感作組成物をさらに提供する。例えば、特定のVβ、Vα、VγまたはVδ遺伝子に特異的な抗体は本発明の方法に従ってT細胞を特異的に感作するために用いることができる。または関心対象の特定のVβ、Vα、VγまたはVδ遺伝子を発現しているT細胞はネガティブ選択することが可能であり、それによって集団からそれらの少なくとも実質的な部分が排除される。
【0092】
本発明のさらなる態様において、一つまたは複数の感作組成物は同時に、所望の感作を誘発するために十分な期間にわたって使用することができる。
【0093】
プロアポトーシス組成物について上述した通り、本発明は、さらなる刺激/活性化またはプロアポトーシス組成物の影響に対して細胞を感作する組成物をインビボもしくはインビトロにおいて、またはその二つを併用して投与する方法を提供する。あらゆる医療上の物質または生物学的物質と同様に、免疫化のために用いられる多くのプロアポトーシス化合物、抗体、ペプチドおよびタンパク質のようにインビボにおいて投与されるべきさらなる刺激/活性化に対して細胞を感作するあらゆる物質に対する試験は、1)これらの物質の薬物動態学的行動;2)それらの免疫原性および3)安全性およびあらゆる不都合な影響の同定を調べるために一連の用量を通して定型的に行われる必要がある。これは、第I相臨床試験を構成する。このように、細胞を本発明の方法において用いられるさらなる刺激/活性化に対して感作する特定の物質(例えば、多発性硬化症におけるMBP 84-102として同定される標的抗原またはMBP 143-168;ブドウ膜炎におけるS抗原;慢性関節リウマチにおけるII型コラーゲン)は個々の定型的至適化を必要とする。本発明の感作組成物は、一般に非経口的または吸入により投与することができる。「非経口」という用語には、皮下、静脈内、筋肉内、槽内注射または注入技術が含まれる。これらの組成物は一般に感作組成物の有効量を単独またはその他の何らかの活性物質の有効量と配合して含む。その組成物に含まれるこのような用量および所望の薬剤濃度は、意図する用途、哺乳動物の体重および年齢、ならびに投与経路を含む多くの要因に応じて変えることができる。予備用量は動物試験に基づいて定めることができ、ヒトへの投与における用量のスケーリングは当技術分野において許容される手法に従って実施することができる。
【0094】
ワクチン開発から得られた豊富な証拠によって、合成ペプチドまたは組換え型DNAに由来するタンパク質はいずれもヒトにおける免疫応答の発現に有効であることが示唆される。これらの試験は、免疫化に有効な用量範囲に関する指針も提供する(Zajoc, B. A., D. J. West, W. J. McAleerおよびE. M. Scolnick, Overview of clinical studies with Hepatitis B vaccine made by recombinant DNA, J. Infect. 13:(Suppl A)39-45 (1986). Yamamoto, S., T. Kuroki, K. KuraiおよびS. Iino, Comparison of results for phase I studies with recombinant and plasma-derived hepatitis B vaccines, and controlled study comparing intramuscular and subcutaneous injections of recombinant hepatitis B vaccine, J. Infect. 13:(Suppl A)53-60 (1986). Francis, D. P.ら、The prevention of Hepatitis B with vaccine, Ann. Int. Med. 97:362-366 (1982). Putneyら、Features of HIV envelope and development of a subunit vaccine, AIDS Vaccine Research and Clinical Trials, S. PutneyおよびB. Bolognesi編、(New York: Dekker) pp. 3-62 (1990). Steven, V. C.およびW. R. Jones, Vaccines to prevent pregnancy, New Generation Vaccines, G. C. WoodrowおよびM. M. Levine編、 (New York:Dekker) pp.879-900 (1990). Herringtonら、Safety and immunogenicity in man of a synthetic peptide malaria vaccine against Plasmodium Falciparium sporozoites, Nature, 328:257-259 (1987))。
【0095】
本発明の一つの態様において、細胞をさらなる刺激/活性化またはプロアポトーシス組成物への曝露に対して感作する物質を用いた免疫化(即ち、インビボにおける感作)の後に待機期間を設けて、この期間中にその物質は反応性TCRを発現しているT細胞または特異抗体レセプターを発現しているB細胞のような反応性レセプターを持つ細胞サブセットを活性化して、IL-2レセプターのようなサイトカインレセプターの発現が惹起される。例えば、このプロセスは抗原刺激を受けたT細胞のみにIL-2レセプターを誘導する。インビトロにおけるヒトおよびマウスのT細胞を用いた試験によると、顕著な数のIL-2レセプターを発現するには抗原暴露後に約12時間から約24時間が必要であり、大部分のT細胞において最適な数のIL-2レセプターを発現するには約72時間もの長い時間が必要である。このように、待機期間は約12時間の短時間または約72時間もの長時間であることが可能であり、様々な疾患状態の場合には、免疫応答性の遅延のために、この期間は120時間もの長時間になる可能性があり、この範囲の上限に向けて次第に至適となる。
【0096】
本発明の一つの態様において、IL-2、またはIL-4のようなその他の適切なサイトカインが上記の活性化細胞におけるアポトーシスを誘導するために患者に投与される。ヒトへのIL-2の投与については癌患者を対象として十分に検討されていて、様々な用量が評価されている(Loize, M. T., L. W. Frana, S. O. Sharrow, R. J. RobbおよびS. A. Rosenberg, In vivo administration of purified human interleukin 2. I. Half-life and immunologic effects of the Jurkat cell line-derived interleukin 2. J. Immunol. 134:157-166 (1985). Lotze, J. T., Y. L. Malory, S. E. Ettinghausen, A. A. Rayner, S. O. Sharrow, C. A. Y. Seipp, M. C. CusterおよびS. A. Rosenberg, In vivo administration of purified human interleukin 2. II. Half-life, immunologic effects, and expansion of peripheral lymphoid cells in vivo with recombinant IL 2. J. Immunol. 135:2865-2875 (1985). Donahue, J. H.およびS. A. Rosenberg, The fate of interleukin-2 after in vivo administration, J. Immunol. 130:2203-2208 (1983). Belldegrun, A., M. M. MuulおよびS. A Rosenberg, Interleukin 2 expanded tumor-infiltrating lymphocytes in human renal cell cancer: isolation, characterization, and antitumor activity, Cancer Research 48:206-214 (1988). Rosenberg, S. A., M. T. Lotze, L. M. Muul, S. Leitman, A. E. Chang, S. E. Ettinghausen, Y. L. Malory, J. M. Skibber, E. Shiloni, J. T. Vetto, C. A. Seipp, C. SimpsonおよびC. M. Reichert, Observations on the systemic administration of autologous lymphokine-activated killer cells and recombinant interleukin-2 to patients with metastatic cancer, New Eng. J. Med. 313:1485-1492 (1985).)。データより、IL-2は頻繁なボーラス投与または点滴として静脈内に投与されるべきことが示されている。既に確立されている用量は約300〜約3000単位/kg/時の点滴、または104〜106単位/kg I.V.ボーラスの範囲である。
【0097】
本発明の一つの局面において、細胞集団はインビトロにおいて一つまたは複数の感作組成物に曝露される。当業者が容易に認識するように、本発明の方法において用いられる感作組成物に関して、1)これらの物質の薬物動態学的行動;および2)安全性およびあらゆる不都合な影響の同定、3)排除されるべき細胞におけるアポトーシスの効果的誘導のための至適用量を調べるために一連の用量にわたって定型的に試験が行われる必要がある。このように、本明細書に記載される方法において用いられる特定の感作組成物は個々の定型的な至適化を必要とする。
【0098】
本発明の一つの態様において、細胞は、細胞をさらなる刺激/活性化に対して感作する物質で予めインビボにおいて処置した個体から採取される。その後、以下に述べるようにインビトロにおいて、アポトーシスを誘発するために細胞をさらに刺激/活性化して、次に増幅する。
【0099】
混合細胞集団から排除されるべき細胞のアポトーシスを誘発するための感作細胞の刺激
本発明の一つの局面において、上記のような感作細胞を含む免疫細胞集団は、下記の「細胞集団の刺激/活性化」のセクションに述べられるようにアポトーシスを誘発するためにさらに活性化または刺激されて、それによって、混合細胞集団から自己反応性またはアロ反応性のT細胞またはB細胞のような感作細胞が排除される。同時に、アポトーシスを受けるように感作されていない細胞などの残っている所望の細胞を活性化および刺激して増幅し、それによって、T(またはB細胞)の不要な亜集団の少なくとも実質的な部分が排除された活性化細胞集団が得られる。前記の通り、本明細書に述べられる刺激/活性化は混合細胞集団をプロアポトーシス組成物に直接曝露した後に残った細胞について実施することができる。さらに、本発明によって提供されるその後の刺激および活性化は、スペクトルタイプ分析によって示される通り、発現したTCR遺伝子に関してT細胞集団の多クローン性を回復する。
【0100】
本発明の一つの態様において、感作した細胞は、不要な細胞の少なくとも実質的な部分を排除するために必要な回数、時には追加の感作組成物を用いて何回も下記の通り刺激/活性化される。例えば、自己免疫疾患の状況において、本発明は一回目の刺激/活性化後に抗原(即ち、感作組成物)の存在下にて二回目またはそれ以降に細胞を刺激するための方法を提供する。同様に、造血幹細胞移植の状況において、本発明は、造血幹細胞移植レシピエント由来の放射線照射細胞の存在下にて、造血幹細胞ドナー由来の細胞を二回目もしくはそれ以降に、または不要な細胞の少なくとも実質的な部分を排除するために必要な回数刺激するための方法を提供する。臓器移植の状況においては、本発明は臓器レシピエント由来の細胞を二回目もしくはそれ以降に、または臓器ドナー由来の放射線照射細胞の存在下において必要ならば不要な細胞の少なくとも実質的な部分を排除するために必要な回数だけ、刺激するための方法を提供する。一つの態様において、本発明の方法は不要な細胞を排除するために移植後に患者由来の細胞(例えば、宿主細胞)について実施される。一部の態様において、不要なすべての細胞を排除する必要はない可能性があり、例えばある類の癌における造血幹細胞移植の状況では移植片対白血球細胞効果が望ましい可能性がある。
【0101】
本発明の一部の局面において、さらなる刺激/活性化およびその後の刺激に対して細胞を感作する一つまたは複数の物質に暴露する前に、以下の「細胞集団の刺激/活性化」および「細胞集団の増幅」において述べるように、混合細胞集団の刺激/活性化、場合によっては増幅することが好ましい可能性がある。
【0102】
本発明のさらなる局面において、細胞を感作した後にプロアポトーシス組成物に曝露し、それによってプロアポトーシス組成物の影響に対して感作性となった細胞の少なくとも実質的な部分が排除される。続いて、その集団における残留細胞は、下記のようにさらに刺激/活性化および増幅することができる。
【0103】
一つの態様において、本発明の細胞は本明細書に述べられるような成長阻害組成物に曝露される。一部の態様において、本発明の成長阻害組成物は少なくとも一つのT細胞クローン集団の少なくとも実質的な部分の生育を阻害して、混合細胞集団が本明細書に述べられるように活性化/刺激および増幅された場合、成長阻害された細胞は増幅せずに最終的にはその混合細胞集団によって淘汰される。この結果、混合細胞集団から生育阻害された細胞が効果的に排除される。
【0104】
純粋なCD3+CD28+ T細胞集団の作製
本発明は、免疫細胞集団からCD3+CD28+ T細胞の実質的に純粋な集団を作製するための方法を提供する。本発明において、実質的に純粋なCD3+CD28+ T細胞の集団のCD3+CD28- T細胞含有率は10%よりも少ない。一部の態様において、実質的に純粋なCD3+CD28+ T細胞の集団のCD3+CD28- T細胞含有率は、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%または0.1%よりも少ない。
【0105】
CD3+CD28+ T細胞の実質的に純粋な集団は、磁気的濃縮、選択、ならびにT細胞表面おけるCD3およびCD28分子の双方を刺激できる組成物で混合T細胞集団を刺激することによって作製することができる。細胞表面のCD3およびCD28分子の双方の選択および刺激によって、この細胞サブセットが活性化されて増殖する。反対に、本明細書に記載される条件において、CD3およびCD28表面分子を選択および刺激できる組成物へのCD3+CD28- T細胞の曝露は、このT細胞集団の活性化および増幅を誘発するには不十分である。さらに、本明細書に述べられるようなCD3/CD28ビーズを用いた短いインキュベート時間はCD3+CD28-細胞を除去してのCD3+CD28+細胞の選択に有利である(例えば、室温で1r.p.m.にて15分間選択した後、磁気的濃縮によって多くのまたはほとんどのCD3+CD28-細胞が除去される)。特異抗原、または例えば抗CD3抗体のようなCD3表面分子を刺激することのできる分子によるTCRの惹起は、共刺激シグナル、即ち、CD28分子の特異的刺激による補助がない限り、増幅およびリンホカイン分泌を誘発するには不十分と考えられる。実際、共刺激がない場合、これらのT細胞は不応答性またはアネルギー状態を獲得する可能性がある。
【0106】
このように、CD3の誘発およびCD28の刺激が可能な組成物を用いた混合T細胞集団の刺激および選択などの本発明の方法によって、実質的に純粋なCD3+CD28+ T細胞の集団が作製される。
【0107】
本発明の一つの態様において、実質的に純粋なこのCD3+CD28+ T細胞集団を用いて急性または慢性GVHDを治療することができる。その他の態様において、実質的に純粋なCD3+CD28+ T細胞集団を、慢性関節リウマチ、多発性硬化症、インスリン依存性糖尿病、アジソン病、セリアック病、慢性疲労症候群、 大腸炎、クローン病、線維筋痛、ループス、乾癬、シェーグレン症候群、甲状腺機能亢進症/グレーブス病、甲状腺機能低下症/橋本病、インスリン依存性糖尿病(I型)、重症筋無力症、子宮内膜症、強皮症、悪性貧血、グッドパスチャー症候群、ヴェグナー病およびリウマチ熱のような自己免疫疾患の治療に使用することができる。さらなる態様において、本発明の細胞は大顆粒性リンパ球白血病(LGL)に伴う自己免疫の治療に用いることができる。免疫細胞の混合集団をドナーから採取して、これらの細胞をCD3およびCD28分子を刺激することのできる組成物で刺激することができる。理論によって結びつけられることは期待されないが、この刺激によってCD3+CD28+ T細胞が特異的に活性化および増幅して、その結果、共刺激分子であるCD28を発現しないT細胞のアネルギーが生じる。CD3+CD28+ T細胞の純粋な集団が作製されると、続いてこれらの細胞は自己免疫疾患であるLGLまたはGVHDの治療のために注入することができる。
【0108】
細胞集団の刺激/活性化
本発明の刺激および活性化されたT細胞は、活性化を誘発する細胞表面部分のライゲーションによって作製される。一部の態様において、刺激および活性化されたT細胞は、例えば抗CD3抗体またはTCRに対する天然のリガンドを用いるなど、単にTCRの接触を介してT細胞集団を活性化することによって作製される。一部の態様において、刺激および活性化されたT細胞は、T細胞集団を活性化して、例えば米国特許出願第08/253,694号、第08/435,816号、第08/592,711号、第09/183,055号、第09/350,202号および第09/252,150号、ならびに米国特許第6,352,694号、第5,858,358および第5,883,223号に述べられるように、アクセサリー分子を結合するリガンドを用いてT細胞表面のアクセサリー分子を刺激することによって作製される。上記の感作細胞の状況において、T細胞の感作集団の活性化、およびアクセサリー分子を結合するリガンドを用いた感作T細胞表面のアクセサリー分子の刺激はその細胞のアポトーシスおよびその後の排除を誘発する。
【0109】
一般に、細胞のT細胞活性化は、T細胞レセプター(TCR)/CD3複合体またはCD2表面タンパク質の刺激のように、細胞表面部分のライゲーションによって行うことができる。多くの抗ヒトCD3単一クローン性抗体が市販されていて、例示的にクローンBC3(XR-CD3;Fred Hutchinson Cancer Research Center, Seattle, WA)、American Type Culture Collectionより入手されるハイブリドーマ細胞から調製されるOKT3、および単一クローン性抗体であるG19-4が挙げられる。同様に、抗CD2抗体の刺激型が知られていて、入手可能である。抗CD2抗体を用いたCD2を介しての刺激は、一般に少なくとも2つの異なる抗CD2抗体を併用して実施される。既述の抗CD2抗体の刺激組み合わせには次のものが含まれる:T11.3抗体とT11.1またはT11.2抗体の組み合わせ(Meuerら、Cell 36 : 897-906, 1984)、および9.6抗体(T11.1と同一のエピトープを認識する)と9-1抗体との組み合わせ(Yangら、J. Immunol. 137:1097-1100, 1986)。上記のいずれかの抗体と同一のエピトープに結合するその他の抗体も使用することができる。標準的な技術によって、追加の抗体または抗体の組み合わせを作製して識別することができる。刺激は、スーパー抗原(ブドウ球菌エンテロトキシンA(SEA)、ブドウ球菌エンテロトキシンB(SEB)、中毒性ショック症候群トキシン1(TSST-1))、エンドトキシンとの接触を介して、またはフィトヘマグルチニン(PHA)、ホルボールミリスチン酸酢酸(PMA)およびイオノマイシン、リポポリサッカライド(LPS)、T細胞マイトジェンおよびIL-2などを含む様々なマイトジェンを介しても達成することができる。
【0110】
T細胞集団のさらなる活性化のため、CD28のようなT細胞表面の共刺激またはアクセサリー分子を、アクセサリー分子を結合するリガンドで刺激する。従って、当業者は、CD28分子と架橋結合することのできる抗CD28抗体もしくはそのフラグメント、またはCD28の天然のリガンドを含む任意の物質がT細胞を刺激するために使用できることを認識する。本発明の状況において有用である例示的な抗CD28抗体またはそのフラグメントとして、単一クローン性抗体9.3(IgG2a)(Bristol-Myers Squibb, Princeton, NJ)、単一クローン性抗体KOLT-2(IgG1)、15E8(IgG1)、248.23.2(IgM)、クローンB-T3(XR-CD28;Diaclone, Besancon, France)およびEX5.3D10(IgG2a)(ATCC HB11373)が挙げられる。例示的な天然リガンドには、B7-1(CD80)およびB7-2(CD86)のようなタンパク質B7ファミリーが含まれる(Freedmanら、J. Immunol. 137:3260-3267, 1987;Freemanら、J. Immunol. 143:2714-2722, 1989;Freemanら、J. Exp. Med. 174:625-631, 1991;Freemanら、Science 262:909-911,1993;Azumaら、Nature 366:76-79, 1993;Freemanら、J. Exp. Med. 178:2185-2192, 1993)。
【0111】
本発明においてアクセサリー分子を結合するリガンドを用いて刺激することのできるT細胞の表面にあるその他の例示的なアクセサリー分子には、CD54、LFA-1、ICOSおよびCD40が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0112】
さらに、天然または化学的もしくは遺伝子組換え技術による合成に関わらず、天然リガンドの結合類似体も本発明に従って使用することができる。その他の物質は、天然および合成リガンドを含むことができる。物質には、その他の抗体もしくはそのフラグメント、成長因子、サイトカイン、ケモカイン、可溶性レセプター、ステロイド、ホルモン、PHAのようなマイトジェン、またはその他のスーパー抗原が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0113】
先に述べたように、アポトーシスを受けなかったまたはアポトーシスを受けるように感作されなかった残留細胞のその後の刺激および活性化は、スペクトルタイプ分析によって示される通り、発現したTCR遺伝子に関してT細胞の残留集団の多クローン性を回復する。
【0114】
細胞集団の増幅
一般に、本発明はプロアポトーシス組成物または感作組成物への集団の曝露およびその後の不要な細胞亜集団、好ましくは自己反応性または不要なアロ反応性T細胞におけるアポトーシスの誘発後に残る細胞集団の増幅について定める。本発明の一つの態様において、残留T細胞は単一の物質によって刺激することができる。もう一つの態様において、残留T細胞は2つまたはそれよりも多い物質を用いて刺激され、一つは一次シグナルを誘発して、補足的物質は一つまたは複数の共刺激シグナルを誘発する。単シグナルの刺激または一次シグナルおよび第二シグナルを刺激するアクセサリー分子の刺激に有用なリガンドは、可溶性物質として使用して、細胞表面に接着して、または本明細書に述べるように表面に固定することができる。表面に接着するリガンドまたは物質は、「代理」抗原提示細胞(APC)として機能する。好ましい態様において、一次および二次的物質の双方が表面に共固定される。一つの態様において、CD3リガンドのような一次活性化シグナルを提供する分子およびCD28リガンドのような共刺激分子は、例えば粒子のような同一の表面に結合する。さらに、既述の通り、一つ、二つまたはそれよりも多い刺激分子を同一表面または異なる表面で使用することができる。
【0115】
細胞集団は、表面に固定した抗CD3抗体もしくは抗CD2抗体と接触させることによって、またはカルシウムイオノフォアと共にタンパク質キナーゼC活性化物質(ブリオスタチンなど)と接触させるなど、本明細書に述べられるように刺激することができる。T細胞表面のアクセサリー分子の共刺激には、アクセサリー分子を結合するリガンドが使用される。例えば、CD4+細胞の集団は、T細胞の増殖を刺激するための適切な条件下において、抗CD3抗体および抗CD28抗体と接触させることができる。または、細胞集団はPMAおよびイオノマイシンと接触させることができる。同様に、CD8+ T細胞の増殖を刺激するために、当技術分野において周知のその他の方法が使用できるのと同じく、抗CD3抗体および抗CD28抗体B-T3、XR-CD28(Diaclone, Besancon, France)を使用することができる(Bergら、Transplant Proc. 30(8):3975-3977, 1998;Haanenら、J. Exp. Med. 190(9):1319-1328, 1999;Garlandら、J. Immunol Meth. 227(1-2):53-63, 1999)。
【0116】
T細胞の一次刺激シグナルおよび共刺激シグナルは異なるプロトコールによって発生させることができる。例えば、各シグナルを発生させる物質は、溶液の状態であるか、または表面に連結させることができる。表面に連結する場合、それらの物質は同一表面(即ち、「シス」配置)または異なる表面(即ち、「トランス」配置)に連結させることができる。または、一つの物質を表面に連結させて、もう一方の物質を溶液とすることができる。一つの態様において、共刺激シグナルを発生させる物質は細胞表面に結合させて、一次活性化シグナルを発生させる物質は溶液とするか、または表面に連結させる。一部の態様において、双方の物質を溶液とすることができる。もう一つの態様において、物質は可溶性物質として、続いてFcもしくはScレセプターを発現している細胞またはその物質に結合する抗体もしくはその他の物質などの表面に架橋結合することができる。好ましい態様において、2つの物質は球面または半球面の表面に−典型的な例はビーズまたは細胞である−、同一のビーズ、即ち「シス」、または異なるビーズ、即ち「トランス」のいずれかにて固定される。例として、一次活性化シグナルを発生させる物質は抗CD3抗体であり、共刺激シグナルを発生させる物質は抗CD28抗体である;双方の物質は同一ビーズに等しい分子量で共固定される。一つの態様において、T細胞の増幅およびT細胞生育のためにビーズに結合した1:1の割合の各抗体が用いられる。本発明の一部の局面において、ビーズに結合した抗CD3抗体:抗CD28抗体(CD3:CD28)の割合は、1:1の割合を用いた場合の増幅に比べてT細胞の増幅の亢進が認められるような割合が用いられる。一つの特定の態様において、1:1の割合を用いた場合に認められる増幅に比べて、約0.5倍〜約3倍の増加が認められる。一つの態様において、ビーズに結合する抗CD3抗体:抗CD28抗体(CD3:CD28)の割合は約100:1から約1:100までと、その間のすべての整数値の範囲である。一部の態様において、CD3:CD28の割合は、少なくとも約95:1、90:1、85:1、80:1、75:1、70:1、65:1、60:1、55:1、50:1、45:1、40:1、35:1、30:1、25:1、20:1、15:1、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1または1:1である。本発明の一つの局面において、抗CD3抗体よりも多くの抗CD28抗体が粒子に結合し、即ち、CD3:CD28の割合は1よりも小さい。本発明の一部の態様において、ビーズに結合した抗CD3抗体に対する抗CD28抗体の割合は2:1よりも大きい。一つの特定の態様において、ビーズに結合した抗体のCD3:CD28の1:200の割合が用いられる。一つの特定の態様において、ビーズに結合した抗体のCD3:CD28の1:150の割合が用いられる。一つの特定の態様において、ビーズに結合した抗体のCD3:CD28の1:100の割合が用いられる。もう一つの特定の態様において、ビーズに結合した抗体のCD3:CD28の1:75の割合が用いられる。さらなる態様において、ビーズに結合した抗体のCD3:CD28の1:50の割合が用いられる。もう一つの態様において、ビーズに結合した抗体のCD3:CD28の1:45の割合が用いられる。もう一つの態様において、ビーズに結合した抗体のCD3:CD28の1:40の割合が用いられる。もう一つの態様において、ビーズに結合した抗体のCD3:CD28の1:35の割合が用いられる。もう一つの態様において、ビーズに結合した抗体のCD3:CD28の1:30の割合が用いられる。もう一つの態様において、ビーズに結合した抗体のCD3:CD28の1:25の割合が用いられる。もう一つの態様において、ビーズに結合した抗体のCD3:CD28の1:20の割合が用いられる。もう一つの態様において、ビーズに結合した抗体のCD3:CD28の1:15の割合が用いられる。もう一つの態様において、ビーズに結合した抗体のCD3:CD28の1:10の割合が用いられる。もう一つの態様において、ビーズに結合した抗体のCD3:CD28の1:5の割合が用いられる。もう一つの態様において、ビーズに結合した抗体のCD3:CD28の1:4の割合が用いられる。もう一つの態様において、ビーズに結合した抗体のCD3:CD28の1:3の割合が用いられる。さらにもう一つの態様において、ビーズに結合した抗体のCD3:CD28の3:1の割合が用いられる。
【0117】
T細胞またはその他の標的細胞を刺激するために、1:500から500:1までと、その間の任意の整数値の細胞に対する粒子の割合を用いることができる。当業者が容易に認識できるように、細胞に対する粒子の割合は標的細胞に対する粒子サイズに依存する可能性がある。例えば、小さなビーズは数個の細胞のみを結合することができ、大きなビーズは多くを結合することができる。一部の態様において、粒子に対する細胞の割合は1:100から100:1とその間にある任意の整数値であり、さらなる態様において、この割合は1:50〜50:1とその間にある任意の整数値を含む。もう一つの態様において、1:9から9:1とその間にある任意の整数値の粒子に対する細胞の割合も、T細胞を刺激するために使用することができる。T細胞の刺激を起こすT細胞に対する抗CD3および抗CD28結合粒子の割合は上記のように変更することができるが、一部の好ましい値は少なくとも1:150、1:125、1:100、1:75、1:50、1 :40、1:30、1:20、1:10、1:9、1:8、1:7、1:6、1 :5、1:4、1:3、1:2.5、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1および15:1を含み、一つの好ましい割合は少なくとも1:1の粒子対T細胞である。一つの特定の態様において、細胞に対する粒子の好ましい割合は1:5または1:10である。一つの態様において、1:1またはそれよりも小さい細胞に対する粒子の割合が用いられる。
【0118】
さらなる態様において、細胞に対する粒子の割合は、刺激日に応じて変更することができる。例えば、一つの態様において、細胞に対する粒子の割合は一日目には1:1から10:1であり、その後、毎日または一日おきに最高10日間にわたって細胞に追加の粒子を加えて、最終的な割合は1:1から1:10(追加日の細胞数に基づく)とする。もう一つの態様において、細胞に対する粒子の割合は1日目には少なくとも約1:2.5であり、5日目には約1:10、1:25、1:50または1:100にて細胞に追加粒子を加えて、7日目には1:10、1:25、1:50または1:100、9日目には1:10、1:25、1:50または1:100にて加える。一つの特定の態様において、細胞に対する粒子の割合は刺激一日目には1:1であり、刺激3および5日目に1:5に調整する。もう一つの態様において、粒子は、刺激1日目には1:1の最終割合まで、刺激3および5日目には1:5の最終割合まで毎日または一日おきに加えられる。もう一つの態様において、細胞に対する粒子の割合は刺激1日目には2:1であり、刺激3および5日目には1:10に調整する。もう一つの態様において、粒子は、刺激1日目には1:1の最終割合まで、刺激3および5日目には1:10の最終割合まで毎日または一日おきに加えられる。当業者は、その他の様々な割合が本発明における使用に適切である可能性があることを認識する。特に、割合は、粒子の大きさならびに細胞の大きさおよび種類に応じて変化する。
【0119】
本発明の一つの局面は、異なるビーズ:細胞比を使用すると抗原特異的T細胞の増幅の点で異なる結果が得られるという驚くべき所見に由来する。特に、ビーズ:細胞比は抗原特異的な(メモリー)T細胞を選択的に増幅または除去するように変更することができる。一つの態様において、使用する特定のビーズ:細胞比が抗原特異的T細胞を選択的に除去する。特に、約5:1、10:1、15:1、20:1、25:1、30:1、35:1、40:1、45:1、50:1およびそれより高いなどの高いビーズ:細胞比は抗原特異的T細胞の除去を誘発する。理論的に結びつけられることはないが、抗原特異的T細胞はさらなる刺激に対して感作されると考えられる。高いビーズ:細胞比を用いた刺激によって高濃度の刺激抗体が得られて、その結果、抗原特異的T細胞が過剰に刺激されて、アポトーシスまたはその他のメカニズムのいずれかによってそれらのT細胞の死滅が惹起される。このように、この点に関して、本明細書に述べられるビーズ組成物はプロアポトーシス組成物として機能している。さらに、この点に関して、当業者が認識する通り、一部の態様においてはプロアポトーシス組成物として用いられる同一の組成物(本明細書に述べられるビーズ組成物のように、細胞表面部分を刺激する物質をそこに接着させている表面など)を用いて、本明細書に述べられる任意の様々な免疫療法状況において使用するために残留混合細胞集団が増幅される。ビーズ:細胞比が低いと、抗原特異的T細胞に対して過剰刺激ではなくむしろこれらの細胞の速やかな増殖を誘発する刺激シグナルが発せられる。さらなる態様において、用いられる特定のビーズ:細胞比は抗原特異的T細胞を選択的に増幅する。当業者は、所望の増幅または除去が得られる限り、任意の割合を用いることができることを認識する。従って、本明細書に記載される組成物および方法は、本明細書に述べられる任意の様々な免疫療法の状況における用途に関して、T細胞の特定の集団を増幅するためまたはT細胞の特定の集団を除去するために使用することができる。
【0120】
一部の方法を用いて、約7日間〜約14日間の期間後にT細胞を刺激物から分離することによって、最初の活性化および刺激後にT細胞の集団の長期刺激を維持することは有利である可能性がある。T細胞の増殖率は、例えば、Coulter Counterを用いるなどT細胞の大きさまたは容積を測定することによって、定期的(例えば、毎日)モニターする。この点に関して、休止T細胞の平均直径は約6.8ミクロンであり、最初の活性化および刺激を受けると、刺激リガンドの存在下においてT細胞の平均直径は4日目までに12ミクロンよりも大きくなり、約6日目までに減少し始める。T細胞の平均直径が約8ミクロンに減少した時点で、T細胞を再活性化および再刺激してT細胞のさらなる増殖を誘発することができる。または、T細胞増殖率およびT細胞再刺激の時期は、活性化T細胞上に誘導されるCD154、CD54、CD25、CD137、CD134のような細胞表面分子の存在をアッセイすることによってモニターすることができる。
【0121】
CD4+および/またはCD8+ T細胞集団の長期刺激を誘発するためには、抗CD3抗体および抗CD28抗体(例えば、B-T3、XR-CD28(Diaclone, Besancon, France))のような刺激物質を用いてT細胞を数回、再活性化および再刺激して最初のT細胞集団の約10倍から約1000倍に増数したCD4+またはCD8+細胞の集団を作製することが必要である可能性がある。例えば、本発明の一つの態様において、T細胞は2〜3回、記載するように刺激される。さらなる態様において、T細胞は4または5回、記載するように刺激される。この方法を用いて、刺激前に比べて多クローン性が増大した約100倍から約100,000倍のT細胞数を得ることが可能である。さらに、本発明の方法によって増幅されるT細胞は培養上清中に顕著な量のサイトカイン(例えば、IL-2、IFN-γ、IL-4、GM-CSFおよびTNF-α)を分泌する。例えば、IL-2を用いた刺激に比べて、抗CD3および抗CD28の共刺激を用いて増幅されるCD4+ T細胞は培養培地中に多量のGM-CSFおよびTNF-αを分泌する。これらのサイトカインは培養上清から精製することが可能であり、またはこの上清を培養中の細胞の維持に直接使用することができる。同様に、培養上清およびサイトカインと共に本発明の方法によって増幅されるT細胞は、インビボにおいて細胞の生育を支持するために投与することができる。
【0122】
一つの態様において、T細胞刺激は、例えばビーズ上に共固定した抗CD3および抗CD28抗体(3×28ビーズ)を用いて、細胞が静止期(低増殖または無増殖)に戻るために十分な期間(初回刺激後約8〜14日間)、実施する。続いて、刺激シグナルを細胞から除去して、細胞を洗浄した上で患者に注入して戻す。刺激期の終了時における細胞は、実施例に示される通り、抗原に対する応答能およびこれらの細胞の記憶型表現型発現能力に実証されるように、本発明の方法によって「超誘導性」となる。従って、注入後にインビボにおいて外因性または抗原によって再刺激されると、活性化T細胞は、持続性のCD154発現、サイトカイン産生の亢進などのような固有の表現型の特性によって特徴付けられる頑健な応答を示す。
【0123】
本発明のさらなる態様において、T細胞のような細胞を、抗原でコーティングまたは抗原と結合したビーズと混合した後に、ビーズおよび細胞を分離して、次に細胞を培養する。選択的態様において、培養前に抗原でコーティングまたは抗原と結合したビーズおよび細胞を分離せずに一緒に培養する。さらなる態様において、ビーズおよび細胞を先ず力をかけることによって濃縮して、細胞表面部分のライゲーションを起こし、それによって細胞刺激および/または活性化シグナルの分極化を誘発する。
【0124】
例として、T細胞が標的細胞集団である場合、抗CD3および抗CD28抗体を接着させた常磁性ビーズ(3×28ビーズ)を調製したT細胞に接触させることによって細胞表面部分をライゲートすることができる。一つの態様において、細胞(例えば104〜109のT細胞)およびビーズ(例えば、DYNABEADS(登録商標)M-450 CD3/CD28 T常磁性ビーズ、混合比 1:1)を緩衝液中、好ましくはPBS中(カルシウムおよびマグネシウムのような二価陽イオンを含まない)で混合する。この場合も、当業者は、任意の細胞濃度を用いることができることを容易に認識する。例えば、標的細胞は試料中で極めて稀であって、試料のわずか0.01%である可能性があり、または試料全体(即ち、100%)が関心対象の標的細胞である可能性がある。従って、任意の細胞数が本発明の状況の範囲内である。一部の態様において、細胞および粒子を最大限に接触させるために、粒子および細胞が混在する液量を著しく減少させる(即ち、細胞濃度を高める)ことが望ましい可能性がある。例えば、一つの態様において、細胞 約20億個/mlの濃度が用いられる。もう一つの態様において、細胞1億個/mlよりも高い濃度が用いられる。さらなる態様において、1ml当たり1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5または5千万個の細胞濃度が用いられる。さらにもう一つの態様において、1ml当たり7.5、8、8.5、9、9.5千万または1億個の細胞濃度が用いられる。さらなる態様において、1ml当たり1億2500万個または1億5000万個の細胞濃度を用いることができる。高濃度を用いると高い細胞収量、細胞活性化および細胞増幅を得ることができる。さらに、高い細胞濃度を用いると、CD28ネガティブT細胞のように、関心対象の標的抗原の発現が弱い可能性のある細胞をより効率的に捕捉することができる。このような細胞集団は治療価値がある可能性があり、入手することが望ましい。例えば、高濃度の細胞を用いると、正常な状態でCD28の発現が弱いCD8+T細胞をより効率的に選択することができる。
【0125】
関連する態様において、より低い濃度の細胞を用いることが望ましい可能性がある。T細胞および粒子の混合物を著しく希釈することによって、粒子と細胞の相互作用が最小限に抑制される。これにより、粒子に結合させるべき所望の抗原を多量に発現する細胞が選択される。例えば、CD4+ T細胞はCD28をより多く発現して、希薄濃度中のCD8+ T細胞よりもより効率的に捕捉および刺激される。一つの態様において、用いる細胞の濃度は約5×106/mlである。その他の態様において、用いる濃度は約1×105/mlから約1×106/mlと、その間の任意の整数値とすることができる。
【0126】
細胞を懸濁する緩衝液は、特定の細胞タイプに適切な任意の懸濁液とすることができる。ある種の細胞タイプを用いる場合、緩衝液には、加工中に細胞の完全性を維持するために必要な1〜5%血清などのその他の成分を加えることができる。もう一つの態様において、細胞およびビーズは細胞培養培地内で混合することができる。例えば、細胞およびビーズは、1分から数時間までの期間にわたって回転、攪拌または任意の混合方法によって混合することができる。続いて、ビーズおよび細胞の容器を、磁場に置くなど、力をかけて濃縮する。培地および結合しなかった細胞を除去して、ビーズまたはその他の表面に接着した細胞は、例えば蠕動ポンプを介したポンプ作用によって洗浄した後、細胞培養に適した培地に改めて懸濁する。
【0127】
本発明の一つの態様において、混合物を30分〜数時間(約3時間)ないし約14日間、またはその間の整数値の任意の時間もしくは分にわたって培養することができる。もう一つの態様において、混合物は21日間培養することができる。本発明の一つの態様において、ビーズおよびT細胞は約8日間、一緒に培養する。もう一つの態様において、ビーズおよびT細胞は2〜3日間、一緒に培養する。上記のように、T細胞の培養時間が60日以上であることができるように、数回の刺激サイクルも望ましい可能性がある。T細胞の培養に適した条件には、血清(例えば、ウシ胎児血清またはヒト血清)またはインターロイキン-2(IL-2)などの増殖および生存に必要な因子、インスリン、または当業者に既知である細胞の生育のためのその他の任意の添加物を加えることができる適切な培地(例えば、最小必須培地もしくはRPMI培地1640、またはX-vivo 15(BioWhittaker))が含まれる。培地にはRPMI 1640、AIM-V、DMEM、MEM、α-MEM、F-12、X-Vivo 15およびX-Vivo 20などがあり、アミノ酸およびビタミンが添加されて、血清フリーであるかまたは適切な量の血清(または血漿)もしくは一定量のホルモン、および/またはT細胞の成長および増幅に十分な量のサイトカインが添加される。ペニシリンおよびストレプトマイシンのような抗生物質は実験的培養の場合にのみ加えられて、対象に注入される予定の細胞の培養には加えられない。標的細胞は、例えば適切な温度(例えば、37℃)および大気(例えば、5%CO2加空気)など、成長を支持するために必要な条件下にて維持される。
【0128】
本発明の一つの態様において所望のT細胞表現型を得るために、ビーズ:細胞比を調整することができる。一つの特定の態様において、ビーズ:細胞比は、抗原特異的(メモリー)T細胞を選択的に増幅または除去するために変更することができる。一つの態様において、用いられる特定のビーズ:細胞比は抗原特異的T細胞を選択的に除去する。さらなる態様において、用いられる特定のビーズ:細胞比は抗原特異的T細胞を選択的に増幅する。当業者は、抗原特異的T細胞の所望の増幅または除去が得られる限り、任意の割合を使用することができることを容易に認識する。従って、本明細書で述べられる組成物および方法は、本明細書で述べられる任意の様々な免疫療法の状況における用途に関して、特定のT細胞集団を増幅し、または特定のT細胞集団を除去するために使用することができる。
【0129】
もう一つの態様において、抗CD3/抗CD28(即ち、3×28)でコーティングしたビーズのような刺激物質への曝露時期は、所望のT細胞表現型が得られるように変更または調整することができる。または、所望のT細胞集団は、刺激前に任意の数の選択技術を用いて選択することができる。より大きなヘルパーT細胞(TH)の集団、一般にCD8+細胞傷害性またはレギュラトリーT細胞に対立するものとしてCD4+が所望される可能性があるが、これはTH細胞の増幅が免疫応答全体を改善または回復することができるためである。多くの特異的免疫応答が標的細胞を直接溶解または死滅させることのできるCD8+抗原特異的T細胞によって介在されるものの、大半の免疫応答は例えばGM-CSF、CD40LまたはIL-2のような重要な免疫調節分子を発現するCD4+T細胞の協力を必要とする。CD4介在性の協力が好ましく、本明細書に述べられるようなCD4:CD8比を維持または高める方法が極めて有利である可能性がある。CD4+ T細胞の数が増えると、患者に導入される細胞が発現したCD40Lをの量を増やすことができ、潜在的に標的細胞の生存性が増大する(APC機能の改善)。同様の影響は、いずれも主にCD4+ T細胞によって発現されるGM-CSFまたはIL-2を発現している注入細胞数を増やすことによって得ることができる。または、CD4の協力がそれほど必要でなく、かつ、CD8+ T細胞数の増加が望ましい状況において、例えば刺激および/または培養前にCD8+細胞を予め選択することによって、本明細書に記載されるXCELLERATE(商標)の方法を使用することもできる。このような状況は、IFN-γ量の増加または標的細胞の細胞溶解の増加が好ましい場合に見られる可能性がある。所望のVβファミリー遺伝子を発現しているなど、所望のTCRレパートリーを持つT細胞を増幅するために、刺激物質に対する曝露の時間およびタイプを変更することもできる。
【0130】
異なるT細胞集団の分離を実施するために、粒子への曝露時間を変更することができる。例えば、一つの好ましい態様において、T細胞は、所望のT細胞をポジティブ選択するために十分な期間にわたってDYNABEADS(登録商標)M-450のような3×28ビーズと共にインキュベートすることによって単離される。一つの態様において、この期間は約30分である。さらなる態様において、この期間は少なくとも1、2、3、4、5または6時間である。さらにもう一つの好ましい態様において、この期間は10〜24時間以上である。一つの好ましい態様において、インキュベート期間は24時間である。癌患者からのT細胞の単離には、24時間のようにより長いインキュベート時間を用いることによって細胞収量を高めることができる。
【0131】
一部の態様において、刺激および/または増幅時間は、10週以下、8週以下、4週以下、2週以下、10日以下、または8日以下とすることができる(4週以下には、4週間から1日(24時間)までのすべての時間域、またはこれらの間の任意の値が含まれる)。いくつかの態様において、より長い刺激時間が必要である可能性がある場合、例えば、限界希釈またはセルソーティングを用いてT細胞をクローニングすることが望ましい可能性がある。いくつかの態様において、刺激および増幅は、6日以下、4日以下、2日以下の期間、実施することが可能であり、その他の態様においては、24時間以下の短い時間、好ましくは4〜6時間またはそれよりも短い期間、実施することが可能である(これらの範囲は中間の任意の整数値を含む)。T細胞の刺激が比較的短い期間に実施される場合、T細胞集団は劇的には増数しないかもしれないが、その集団はインビボにおいて引き続き増殖することができて天然のエフェクターT細胞プールにより一層類似するより頑健かつ健康な活性化T細胞を提供する。T細胞の協力の有効性がしばしばタンパク質抗原に対する抗体反応における制限因子であることから、CD4+濃厚化T細胞集団を選択的に増幅または対象に選択的に注入する能力は非常に有益である。このような濃厚化集団のさらなる利点は、Bリンパ球によって提示される抗原を認識する活性化ヘルパーT細胞が2種類の刺激物である物理的接触およびサイトカイン産生をもたらして、その結果、B細胞が増殖および分化する場合に容易に明らかとなる。
【0132】
様々な態様において、当業者は細胞からの刺激シグナルの除去は使用する表面のタイプに依存することを理解する。例えば、常磁性ビーズが用いられる場合、磁気による分離は実行可能な選択肢である。分離技術は、常磁性ビーズ製造業者の取り扱い説明書(例えば、DYNAL Inc., Oslo, Norway)に詳細に記載されている。さらに、表面が十分な大きさを持つビーズであり細胞から分離できる場合は、ろ過を使用することができる。加えて、20ミクロンおよび80ミクロン輸血用フィルター(Baxter)などの様々な輸血用フィルターが市販されている。従って、ビーズがフィルターのメッシュサイズよりも大きい限り、このようなろ過は極めて有効である。関連する態様において、ビーズはフィルターを通過することができるが、細胞は残留する可能性があり、よって分離される。一つの特定の態様において、用いられる生物適合性表面は曝露期間中に培養物内で分解する(即ち、生分解性である)。
【0133】
本明細書に記載される方法において用いられる抗体はAmerican Type Culture Collection(ATCC)のような公的供給源から容易に入手することができるが、T細胞アクセサリー分子およびCD3複合体に対する抗体は標準的な技術によって作製することができる。本発明の方法において用いるための抗体の作製方法は当技術分野において周知であり、本明細書においてさらに詳細に考察される。
【0134】
表面上でのリガンドの固定
上記の通り、本発明の方法は好ましくは表面に結合したリガンドを使用する。この表面は、リガンドをそこに結合または内部に取り込ませることができ、生体適合性、つまり刺激対象である標的細胞に対して実質的に無毒である任意の表面とすることができる。生体適合性の表面は、生分解性または非生分解性であることができる。表面は天然または合成であることができ、合成表面はポリマーであることができる。表面はコラーゲン、精製タンパク質、精製ペプチド、ポリサッカライド、グリコサミノグリカン、細胞外マトリックス組成物、リポソームまたは細胞表面を含むことができる。ポリサッカライドは、例えば、セルロース、アガロース、デキストラン、キトサン、ヒアルロン酸またはアルギン酸を含むことができる。その他のポリマーは、ポリエステル、ポリエーテル、ポリ無水物、ポリアルキルシアノアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリオルトエステル、ポリホスファゼン、ポリ酢酸ビニル、ブロック共重合体、ポリプロポレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、またはポリウレタンを含むことができる。ポリマーは、乳酸または共重合体であることができる。共重合体は、乳酸・グリコール酸(PLGA)を含むことができる。非生分解性表面は、ポリ(ジメチルシロキサン)およびポリ(エチレン酢酸ビニル)のようなポリマーを含むことができる。生体適合性表面は、例えば、ガラス(バイオグラスなど)、コラーゲン、キチン、金属、ヒドロキシアパタイト、アルミン酸塩、バイオセラミックス材、ヒアルロン酸ポリマー、アルギン酸塩、アクリル酸エステルポリマー、乳酸ポリマー、グリコール酸ポリマー、乳酸/グリコール酸ポリマー、精製タンパク質、精製ペプチド、または細胞外マトリックス組成物を含むことができる。表面を含むその他のポリマーには、ガラス、シリカ、シリコン、ヒドロキシアパタイト、ヒドロゲル、コラーゲン、アクロレイン、ポリアクリルアミド、ポリプロピレン、ポリスチレン、ナイロン、または任意の数のプラスチックもしくは合成有機ポリマーなどを含むことができる。表面は、リポソームまたは細胞表面のような生物学的構造を持つことができる。表面は脂質、プレート、バッグ、ペレット、繊維、メッシュまたは粒子の形態をとることができる。粒子は、コロイド状粒子、ミクロスフェア、ナノ粒子、ビーズなどを含むことができる。様々な態様において、ビーズまたはその他の粒子のような市販の表面が有用である(例えば、Miltenyi Particles, Miltenyi Biotec, Germany;Sepharose beads, Pharmacia Fine Chemicals, Sweden;DYNABEADS(商標)、Dynal Inc., New York;PURABEADS(商標)、Prometic Biosciences)。
【0135】
ビーズが用いられる場合、ビーズは標的細胞刺激を達成する任意のサイズとすることができる。一つの態様において、ビーズは好ましくは約5ナノメーターから約500μmのサイズである。従って、ビーズの大きさの選択はビーズが機能する特定の用途に依存する。例えば、単球除去のためにビーズが使用される場合、単球の摂取を容易にするために小さなサイズが選択される(例えば、直径1.0μmおよび4.5μm、またはナノメーターサイズのように取り込まれることのできる任意の大きさ);しかし、ろ過によるビーズの分離が望ましい場合、一般に50μm以上のビーズサイズが用いられる。さらに、常磁性ビーズを用いる場合、ビーズは一般に約2.8μmから約500μmのサイズであり、より好ましくは約2.8μmから約50μmの範囲である。最後に、約10-5nmという小さな超常磁性ナノ粒子の使用を選択することができる。従って、上記から容易に明らかなように、実質的に任意の粒子サイズを使用することができる。
【0136】
物質は、当技術分野において既知であり有効な様々な方法によって表面に接着させて、内部に取り込み、連結または一体化させることができる。物質は、天然のリガンド、タンパク質リガンド、または合成リガンドであることができる。接着は共有結合もしくは非共有結合、静電気性、または疎水性であることが可能であり、例えば化学的、機械的、酵素的、静電気的、またはリガンドが細胞を刺激することのできるその他の方法を含む様々な接着方法によって行うことができる。物質の接着は直接的または間接的(例えば、係留)であることができる。例えば、先ずリガンドに対する抗体を表面に接着させて(直接的接着)、またはアビジンもしくはストレプトアビジン、即ち、第一の抗体に結合する第二の抗体をビオチン化したリガンドへの結合に備えて表面に接着させることができる(間接的接着)。細胞表面に関して、この接着は、関心対象の物質のコード領域を含む発現ベクターのトランスフェクションまたはトランスダクションなど、当技術分野において既知の任意の数の技術を用いて物質の遺伝的発現を介在とすることができる。リガンドに対する抗体は、抗イディオタイプ抗体を介して表面に接着させることができる。もう一つの例として、タンパク質Aもしくはタンパク質G、または抗体を結合するために表面に接着したその他の非特異的な抗体結合分子が含まれる。または、リガンドは市販の架橋結合試薬(Pierce, Rockford, IL)またはその他の方法を用いて表面に架橋結合させるなどの化学的方法によって表面に接着させることができる。一部の態様において、リガンドは共有結合により表面に結合する。さらに、一つの態様において、エポキシ表面反応基を持つ市販のトシル活性化DYNABEADS(商標)またはDYNABEADS(商標)を製造業者の取り扱い説明書に従って関心対象のポリペプチドリガンドとインキュベートする。つまり、このような条件は、一般に4〜37℃の温度範囲におけるpH 4〜pH 9.5のリン酸緩衝液中でのインキュベートを意味する。
【0137】
一つの局面において、一部のリガンドのような物質は単一の起源または多くの起源を持つ可能性があり、抗体またはその断片である可能性があり、もう一つの局面においてT細胞を使用する場合、共刺激リガンドはB7分子(例えば、B7-1、B7-2)である。これらのリガンドは上記の異なる接着方法のいずれかによって表面に連結される。表面に連結させるべきB7分子は共刺激分子を発現している細胞から単離することができ、または本明細書に述べられるような共刺激分子の産生および単離を可能とする標準的な組換えDNA技術および発現系を用いて得ることができる。細胞の表面に連結した際のT細胞において共刺激シグナル誘発能を維持するB7分子のフラグメント、突然変異型または変異型も使用することができる。さらに、当業者は、T細胞サブセットの活性化および増殖の誘導に有用な任意のリガンドはビーズまたは培養容器の表面もしくは任意の表面にも固定することができることを認識する。加えて、表面へのリガンドの共有結合は一つの好ましい方法であるが、二次的な単一クローン性抗体による吸着または捕捉も使用することができる。表面に接着する特定のリガンドの量は、表面がビーズの表面である場合はフローサイトメトリー分析によって容易に求めることができて、表面が例えばシャーレ、メッシュ、繊維、バッグである場合は酵素捕捉免疫吸着法(ELISA)によって求めることができる。
【0138】
特定の態様において、B7分子の刺激型または抗CD28抗体もしくはそのフラグメントは、抗CD3抗体のようにTCR/CD3複合体を刺激する物質と同一の固相表面に接着する。抗CD3抗体に加えて、抗原シグナルに類似するレセプターに結合する他の抗体を使用することができる。例えば、ビーズまたはその他の表面を抗CD2抗体およびB7分子の配合物、特に抗CD3抗体および抗CD28抗体の配合物によってコーティングすることができる。
【0139】
表面に連結する場合、それらの物質は同一表面(即ち、「シス」配置)または異なる表面(即ち、「トランス」配置)に連結させることができる。または、一つの物質を表面に連結させて、他方の物質を溶液とすることができる。一つの態様において、共刺激シグナルを発する物質は細胞表面に結合させて、一次活性化シグナルを発生させる物質は溶液とするか、または表面に連結させる。好ましい態様において、2つの物質は同一のビーズ、即ち「シス」、または異なるビーズ、即ち「トランス」のいずれかに固定される。例として、一次活性化シグナルを発する物質は抗CD3抗体であり、共刺激シグナルを発する物質は抗CD28抗体であり、双方の物質は等しい分子量で同一のビーズに共固定される。一つの態様において、CD4+ T細胞の増幅およびT細胞の生育のためにビーズに結合される各抗体の1:1の割合が用いられる。本発明の一部の局面において、ビーズに結合した抗CD3:CD28抗体の割合は、1:1の割合を用いた場合の増幅に比べてT細胞の増幅の亢進が認められるような割合が用いられる。一つの特定の態様において、1:1の割合を用いた場合に認められる増幅に比べて、約0.5倍〜約3倍の増加が認められる。一つの態様において、ビーズに結合するCD3:CD28抗体の割合は100:1から1:100と、その間のすべての整数値の範囲である。本発明の一つの局面において、抗CD3抗体よりも多くの抗CD28抗体が粒子に結合して、即ち、CD3:CD28の割合は1よりも小さい。本発明の一部の態様において、ビーズに結合した抗CD3抗体に対する抗CD28抗体の割合は2:1よりも大きい。一つの特定の態様において、ビーズに結合した抗体のCD3:CD28の1:200の割合が用いられる。一つの特定の態様において、ビーズに結合した抗体のCD3:CD28の1:150の割合が用いられる。一つの特定の態様において、ビーズに結合した抗体のCD3:CD28の1:100の割合が用いられる。もう一つの特定の態様において、ビーズに結合した抗体のCD3:CD28の1:75の割合が用いられる。さらなる態様において、ビーズに結合した抗体のCD3:CD28の1:50の割合が用いられる。もう一つの態様において、ビーズに結合した抗体のCD3:CD28の1:45の割合が用いられる。もう一つの態様において、ビーズに結合した抗体のCD3:CD28の1:40の割合が用いられる。もう一つの態様において、ビーズに結合した抗体のCD3:CD28の1:35の割合が用いられる。もう一つの態様において、ビーズに結合した抗体のCD3:CD28の1:30の割合が用いられる。もう一つの態様において、ビーズに結合した抗体のCD3:CD28の1:25の割合が用いられる。もう一つの態様において、ビーズに結合した抗体のCD3:CD28の1:20の割合が用いられる。もう一つの態様において、ビーズに結合した抗体のCD3:CD28の1:15の割合が用いられる。もう一つの態様において、ビーズに結合した抗体のCD3:CD28の1:10の割合が用いられる。もう一つの態様において、ビーズに結合した抗体のCD3:CD28の1:5の割合が用いられる。もう一つの態様において、ビーズに結合した抗体のCD3:CD28の1:4の割合が用いられる。もう一つの態様において、ビーズに結合した抗体のCD3:CD28の1:3の割合が用いられる。さらにもう一つの態様において、ビーズに結合した抗体のCD3:CD28の3:1の割合が用いられる。
【0140】
表面関連物質
本発明により企図される物質には、タンパク質リガンド、天然リガンドおよび合成リガンドが含まれる。細胞表面部分に結合して一定条件においてシグナリングに至るライゲーションおよび凝集を惹起することのできる物質には、レクチン(例えば、フィトヘマグルチニン(PHA)、レンチルレクチン、コンカナバリンA)、抗体、抗体フラグメント、ペプチド、ポリペプチド、グリコペプチド、レセプター、B細胞レセプターおよびT細胞レセプターのリガンド、MHC-ペプチド二量体または四量体、細胞外マトリックスコンポーネント、ステロイド、ホルモン(例えば、成長ホルモン、コルチコステロイド、プロスタグランジン、テトラヨードチロニン)、細菌性部分(リポポリサッカライドなど)、マイトジェン、スーパー抗原およびそれらの誘導体、成長因子、サイトカイン、接着分子(L-セレクチン、LFA-3、CD54、LFA-1など)、ケモカインおよび小分子が含まれるが、これらに限定されるものではない。これらの物質は、細胞、血液製剤および組織のような天然の供給源から単離されるか、またはインビトロにおいて増殖した細胞から単離して、遺伝子組換え技術、化学的合成、または当業者に既知のその他の方法によって調製することができる。
【0141】
本発明の一つの局面において、T細胞を刺激しようとする場合、有効な物質には、CD3/TCR複合体、CD2、および/またはCD28を結合して、それぞれ、活性化または増殖を開始することのできるリガンドが含まれる。従って、リガンドという用語には、CD28におけるB7分子のような細胞表面タンパク質における「天然」のリガンド、ならびに細胞表面タンパク質に指向性である抗体のような人工的リガンドが含まれる。このような抗体およびそのフラグメントは、ハイブリドーマ法ならびに組換えDNA技術およびタンパク質発現技術のような、従来の技術に従って作製することができる。有効な抗体およびフラグメントはヒトを含む任意の動物種から由来する可能性があり、あるいは二種以上の動物種に由来する配列を用いるキメラタンパク質として形成することができる。
【0142】
当技術分野において周知の方法を用いて、リガンドに特異的な抗体、多クローン性抗血清または単一クローン性抗体を作製することができる。抗体は、望ましい特性を持つようにデザインされて遺伝子工学により作製された免疫グロブリン(Ig)またはIgフラグメントとして作製することもできる。例えば、制限ではなく例として、抗体は第一哺乳動物種に由来する少なくとも一つの可変(V)領域ドメインおよび第二の異なる哺乳動物種に由来する少なくとも一つの定常領域ドメインを持つキメラ融合タンパク質である組換え型IgGを含むことができる。最も一般的には、キメラ抗体はマウス可変領域配列およびヒト定常領域配列を持つ。このようなマウス/ヒトキメラ免疫グロブリンは、抗原に関する結合特異性を付与するマウス抗体由来の相補性決定領域(CDR)をヒト由来V領域フレームワーク領域およびヒト由来定常領域に移植することによって「ヒト化」することができる。異なる特異性のCDRを含む抗体を組み合わせて、多重特異性(二重または三重特異性など)抗体を作製することができる。これらの分子のフラグメントは、タンパク質分解性消化により、または選択的にタンパク質分解性消化およびこれに続くジスルフィド結合の軽度の還元およびアルキル化、もしくは組換え遺伝子工学技術によって作製することができる。
【0143】
抗体は、約104M-1以上、好ましくは約105M-1以上、より好ましくは約106M-1以上、さらにより好ましくは約107M-1以上の親和性定数Kaにて抗原と特異的に結合する場合、「免疫特異的」であると定義される。結合パートナーまたは抗体の親和性は、例えば、Scatchardら(Ann. N.Y. Acad. Sci. USA 51:660, 1949)の方法または表面プラズモン共鳴(BIAcore, Biosensor, Piscataway, NJ)による従来の技術によって容易に調べることができる。Wolffら、Cancer Res., 53:2560-2565, 1993などを参照されたい)。
【0144】
抗体は、一般に当業者に既知である任意の様々な技術によって調製することができる(例えば、Harlowら、Antibodies: A Laboratory Manual, 1988, Cold Spring Harbor Laboratoryを参照されたい)。このような一つの技術において、動物は多クローン性抗血清を作製するために抗原であるリガンドで免疫される。適切な動物としては、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウシが含まれて、マウス、ラットおよびハムスターのようなより小型の哺乳動物も含めることができる。本発明の抗体は米国特許第6,150,584号、第6,130,364号、第6,114,598号、第5,833,985号、第6,071,517号、第5,756,096号、第5,736,137号および第5,837,243号に述べられるように作製することもできる。
【0145】
免疫原は、リガンドを発現している細胞、精製またはある程度精製されたリガンドポリペプチドまたはその変異型もしくはフラグメント、またはリガンドペプチドを含むことができる。リガンドペプチドはタンパク質分解による分割により作製することができ、または化学的に合成することができる。免疫化のためのペプチドは、宿主動物に抗原反応を起こす可能性のより高いアミノ酸配列を調べるために当業者に既知の方法に従ってリガンドの一次、二次または三次構造を解析することによって選択することができる(Novotny, Mol. Immunol. 28:201-207, 1991;Berzoksky, Science 229:932-40, 1985などを参照されたい)。
【0146】
免疫原の調製は、リガンドポリペプチドまたはその変異型もしくはフラグメント、またはペプチドと、キーホールリンペットヘモシアニンまたはウシ血清アルブミンのようなもう一つの免疫原性タンパク質との共有結合を含む可能性がある。さらに、ペプチド、ポリペプチドまたは細胞はアジュバント中に乳化することができる(Harlowら、Antibodies: A Laboratory Manual, 1988 Cold Spring Harbor Laboratoryを参照されたい)。一般に、初回注射後、動物はその動物種における好ましいスケジュールに従って1回または複数回の追加免疫を受ける。免疫応答は、動物を定期的に採血して、血清を分離し、オークターロニー法のような免疫アッセイにおいて血清を分析して特異的抗体価を調べることによってモニターすることができる。抗体価が確立されたら、多クローン性抗血清を蓄積するために動物から定期的に採血することができる。続いて、例えばタンパク質Aまたは適切な固相支持体に結合したリガンドポリペプチドもしくはペプチドを用いたアフィニティークロマトグラフィーによって、これらの抗血清からリガンドポリペプチドまたはペプチドに特異的に結合する多クローン性抗体を精製することができる。
【0147】
リガンドポリペプチドまたはそのフラグメントもしくは変異型に特異的に結合する単一クローン性抗体は、例えば、KohlerおよびMilstein(Nature, 256:495-497, 1975;Eur. J. Immunol. 6:511-519, 1976)の方法およびその改良法を用いて調製することができる。リガンドポリペプチドまたはその変異型もしくはフラグメントに対して所望の特異性を持つ抗体を産生する不死化真核細胞セルラインであるハイブリドーマを作製することができる。例えば、ラット、ハムスターまたは好ましくはマウスなどの動物は、上記のように調製したリガンド免疫原を用いて免疫化することができる。免疫化された動物から得られるリンパ系細胞、最も一般的には脾細胞は、薬剤感作したミエローマ細胞融合パートナー、好ましくは免疫化した動物と同一遺伝子型である融合パートナーとの融合によって不死化することができる。脾細胞およびミエローマ細胞はポリエチレングリコールまたは非イオン性界面活性剤のような膜融合促進物質と数分間混合した後、ハイブリドーマ細胞の成長は支持するがミエローマ細胞の成長は支持しない選択培地に低密度で播種することができる。好ましい選択培地はHAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)である。十分な期間、通常は約1〜2週間の後、細胞のコロニーが観察される。単一コロニーを単離して、細胞が産生する抗体についてリガンドポリペプチドまたはその変異型もしくはフラグメントとの結合活性を調べることができる。リガンド抗原に対して高い親和性および特異性を持つ抗体を産生するハイブリドーマが好ましい。リガンドポリペプチドまたはその変異型もしくはフラグメントに特異的に結合する単一クローン性抗体を産生するハイブリドーマは本発明によって企図される。
【0148】
単一クローン性抗体は、ハイブリドーマ培養物の上清から単離することができる。マウス単一クローン性抗体のもう一つの産生方法は、ハイブリドーマ細胞を同一遺伝子型マウスの腹腔に注射することである。マウスは単一クローン性抗体を含む腹水を産生する。混入物は、クロマトグラフィー、ゲルろ過、沈降法または抽出のような従来の技術によって抗体から除去することができる。
【0149】
ヒト単一クローン性抗体は任意の数の技術によって作製することができる。これらの方法には、エプスタイン-バーウイルス(EBV)のヒト末梢血細胞形質転換(米国特許第4,464,456号を参照されたい)、インビトロにおけるヒトB細胞免疫化(Boernerら、J. Immunol. 147:86-95, 1991などを参照されたい)、ヒト免疫グロブリン遺伝子を持つ免疫化したトランスジェニックマウスに由来する脾細胞の融合および酵母人工染色体(YAC)により挿入した免疫グロブリン遺伝子を持つ免疫化トランスジェニックマウス由来脾細胞の融合(米国特許第5,877,397号;Bruggemannら、Curr. Opin. Biotechnol. 8:455-58, 1997;Jakobovitsら、Ann. N. Y. Acad. Sci. 764:525-35, 1995などを参照されたい)、またはヒト免疫グロブリンV領域ファージライブラリーからの単離が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0150】
本発明において使用するためのキメラ抗体およびヒト化抗体を作製することができる。キメラ抗体は、第一哺乳動物種に由来する少なくとも一つの定常領域ドメインおよび第二の異なる哺乳動物種に由来する少なくとも一つの可変領域ドメインを持つ(例えば、Morrisonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-55, 1984を参照されたい)。最も一般的には、キメラ抗体は、マウス、ラットまたはハムスターの単一クローン性抗体に由来する可変領域のようなヒト以外の単一クローン性抗体由来の少なくとも一つの可変領域ドメインをコードするポリヌクレオチド配列をクローニングすることによって、少なくとも一つのヒト定常領域をコードする配列を含むベクター内に構築することができる(例えば、Shinら、Methods Enzymol. 178:459-76, 1989;Wallsら、Nucleic Acids Res. 21:2921-29, 1993を参照されたい)。選択するヒト定常領域は、特定の抗体に所望されるエフェクター機能に依存することができる。キメラ抗体の作製に関する技術分野において既知のもう一つの方法は同種遺伝子組換えである(米国特許第5,482,856号)。好ましくは、ベクターはこのキメラ抗体の安定的発現のために真核細胞にトランスフェクトされる。
【0151】
ヒト以外/ヒトのキメラ抗体は、「ヒト化」抗体を作製するためにさらに遺伝子工学的に処理することができる。このような抗体は、ヒト以外の哺乳動物の免疫グロブリンに由来する複数のCDR、少なくとも一つのヒト可変フレームワーク領域、および少なくとも一つのヒト免疫グロブリン定常領域の多能性を持つ。ヒト化によって、ヒト以外の単一クローン性抗体またはキメラ抗体に比べて、結合親和性の低い抗体が得られる可能性がある。従って、当業者は、ヒト化抗体のデザインには一つまたは複数の方法を使用する。
【0152】
一部の態様において、抗体の抗原結合フラグメントの使用が好ましいとされる可能性がある。このようなフラグメントには、それぞれパパインまたはペプシンを用いたタンパク質分解性消化によって調製することのできるFabフラグメントまたはF(ab')2フラグメントが含まれる。抗原結合フラグメントは、例えば固定化したタンパク質Aまたは固定化したリガンドポリペプチドまたはその変異型もしくはフラグメントを用いたアフィニティークロマトグラフィーによってFcフラグメントと分離することができる。Fabフラグメントを作製するための代替法は、F(ab')2フラグメントの軽度の還元およびその後のアルキル化を含む(例えば、Weir, Handbook of Experimental Immunology, 1986, Blackwell Scientific, Bostonを参照されたい)。
【0153】
ヒト以外、ヒトまたはヒト化した上記の任意のIg分子における重鎖および軽鎖可変領域は単鎖Fv(sFv)フラグメント(単鎖抗体)として構築することができる。例えば、Birdら、Science 242:423-426, 1988;Hustonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883, 1988を参照されたい。多機能性融合タンパク質は、sFVインフレームをコードするポリヌクレオチド配列を、異なるエフェクタータンパク質をコードするポリヌクレオチド配列と連結させることによって作製することができる。これらの方法は当技術分野では既知であり、例えば、EP-B1-0318554、米国特許第5,132,405号、第5,091,513号および第5,476,786号に開示されている。
【0154】
リガンドポリペプチドまたはその変異型もしくはフラグメントに特異的に結合する抗体を選択するためのもう一つの方法は、ファージディスプレイ法である(例えば、Winterら、 Annul. Rev. Immunol. 12:433-55, 1994;Burtonら、Adv. Immunol. 57:191-280, 1994を参照されたい)。ヒトまたはマウス免疫グロブリン可変領域遺伝子組み合わせライブラリは、スクリーニングしてリガンドポリペプチドまたはその変異型もしくはフラグメントに特異的に結合するIgフラグメント(Fab、Fv、sFv、またはそれらの多量体)を選択することのできるファージベクターを用いて作製することができる(例えば、米国特許第5,223,409号;Huseら、Science 246:1275-81,1989;Kangら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:4363-66, 1991;Hoogenboomら、J. Molec. Biol. 227:381-388, 1992;Schlebuschら、Hybridoma 16:47-52, 1997、およびそれらに引用される参考文献を参照されたい)。
【0155】
使用方法
一般に、本明細書に述べられる組成物および方法は、免疫細胞集団から少なくとも一部の不要なクローン性細胞集団、一般的にはT細胞、B細胞、NKTまたはNK細胞を排除するために用いることができる。本発明は、もはや不要な細胞を含まない、または不要な細胞の数が著しく減少した細胞集団を含む組成物、ならびにその用途をさらに提供する。本発明の組成物および方法は、造血幹細胞移植(血液、臍帯血および骨髄などの供給源から得られるアロ移植および自家移植を含む)、臓器移植(急性または慢性GVHDなど)、ならびに大顆粒性リンパ球(LGL)白血病、慢性リンパ性白血病(CLL)のような癌、または一般的な様々な免疫欠損症によって惹起される自己免疫疾患などの自己免疫疾患に伴う免疫欠損症の治療での使用に備えて、不要なクローン性集団について除去された細胞集団を選択的に増幅するために用いることもできる。結果として、T細胞集団の場合、抗原反応性に関しては多クローン性であるがCD4+またはCD8+に関しては本質的に均一であって、自己反応性細胞またはアロ反応性細胞のような不要なあらゆる細胞亜集団が除去されているTCRを発現する細胞集団を作製することができる。B細胞については、自己反応性抗体を産生する不要なB細胞亜集団が除去されている細胞集団を作製することができる。さらに、この方法は得られるT細胞またはB細胞の集団を、各個体のCD4+またはCD8+のT細胞集団全体またはB細胞集団を再構築するために十分な数に増幅させる(個体のリンパ球集団は約5×1011個である)。得られる細胞集団は当業者に既知の様々な技術を用いて遺伝的に導入して、免疫療法において使用することができる。
【0156】
一つの態様において、本発明のT細胞またはB細胞組成物は造血幹細胞移植の状況下において使用することができる。造血幹細胞移植における主な問題は移植片対宿主病(GVHD)であり、これは注入される造血幹細胞調製物に含まれるアロ反応性T細胞によって惹起される。従って、本発明は、患者への注入に備えて、アロ反応性T細胞を除去して残留T細胞集団を増幅するために用いることができる。本発明の細胞組成物は、単独または他の療法と併用することができる。
【0157】
一つの態様において、本発明のT細胞またはB細胞組成物は任意の自己免疫疾患の状況において使用することができる。例証的な自己免疫疾患には、全身性エリテマトーデス(SLE)、多発性硬化症(MS)、慢性関節リウマチ、進行性全身性硬化症、シェーグレン症候群、多発性硬化症、多発性筋炎、皮膚筋炎、ブドウ膜炎、関節炎、I型インスリン依存性糖尿病、橋本病、グレーブス甲状腺炎、重症筋無力症、自己免疫性心筋炎、血管炎、再生不良性貧血、自己免疫性溶血性貧血、骨髄異形成症候群、エヴァンズ症候群、全身強直症候群、アトピー性皮膚炎、乾癬、ベーチェット症候群、クローン病、胆汁性肝硬変、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、グッドパスチャー症候群、ヴェゲナー肉芽腫症、発作性夜間血色素尿症、骨髄異形成症候群、枯草熱、外因性喘息または昆虫刺咬アレルギーおよび虫刺されアレルギー、ならびに食物アレルギーおよび薬物アレルギーのようなアレルギー性疾患が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0158】
本発明のT細胞およびB細胞組成物のさらなる用途は、炎症性および高増殖性皮膚疾患、ならびに脂漏性皮膚炎, 血管浮腫、紅斑、ざ瘡および円形脱毛症のような免疫学的に介在される疾患の皮膚臨床像;様々な眼の疾患(自己免疫およびその他);花粉アレルギー、喘息(例えば、気管支喘息、アレルギー性喘息、内因性喘息、外因性喘息および塵埃喘息)、特に慢性または痼疾性喘息(例えば、遅発性喘息および気道反応性亢進)のような状態を含む可逆性閉塞性気道疾患、気管支炎、アレルギー性鼻炎などのようなアレルギー反応;粘膜および血管の炎症の治療および/または予防を含むことができる。
【0159】
上記のように、本発明のT細胞およびB細胞組成物は、例えば宿主対移植片疾患などの臓器移植に関連する免疫欠損症の治療に用いることができる。何らかの臓器移植に伴う免疫欠損症の治療は本明細書に企図される。例えば、本発明の方法および細胞は、腎、心臓、肺および肝移植に伴う免疫欠損症の治療に使用することができる。
【0160】
本発明の一部の態様において、本発明の細胞は、化学療法、放射線、シクロスポリン、アザチオプリン、メトトレキセート、ミコフェノレートおよびFK506のような免疫抑制剤、抗体、またはCAMPATH、抗CD3抗体、シクロホスファミド、フルダラビン、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、ミコフェノール酸、ステロイド、FR901228および放射線照射のようなその他の免疫除去剤などの薬剤を用いた治療後に患者に投与する。これらの薬剤は、カルシウム依存性リン酸カルシニューリン(シクロスポリンおよびFK506)を阻害するか、あるいは成長因子誘導性シグナリングにとって重要なp70S6キナーゼ(ラパマイシン)を阻害する。(Liuら、Cell 66:807-815, 1991;Hendersonら、Immun. 73:316-321, 1991;Biererら、Curr. Opin. Immun. 5:763-773, 1993;Isoniemi(前記))。さらなる態様において、本発明の細胞組成物は、自己免疫疾患患者に対して、フルダラビン、外照射療法(XRT)、シクロホスファミドなどの化学療法剤、またはOKT3もしくはCAMPATHのような抗体を用いたT細胞除去療法後に投与する。もう一つの態様において、本発明の細胞組成物は、自己免疫疾患患者に対して、リツキサン(Rituxan)などのCD20と反応する物質などのB細胞除去療法後に投与する。患者に投与すべき上記療法の用量は、治療が行われている疾患および治療のレシピエントの正確な状態によって変動する。ヒトへの投与における用量のスケーリングは、当技術分野において許容される手法に従って実施することができる。例えば、CAMPATHの用量は一般に成人患者において1ないし約100mgの範囲内であり、通常は1日から30日の期間に毎日投与される。好ましい一日用量は一日当たり1〜10mgであるが、場合によっては一日当たり40mgまでのより高い用量を用いることができる(米国特許第6,120,766号に述べられている)。
【0161】
本発明のさらなる局面において、患者に由来する自己反応性細胞の少なくとも実質的な部分がインビトロにおいて本発明の方法を用いて排除されて、その後、さらに刺激および増幅されて、患者に投与される。関連する態様において、患者に由来する自己反応性細胞の少なくとも実質的な部分がインビトロにおいて本発明の方法を用いて排除されて、その後、患者に投与されてインビボにおいて増幅される。一つの局面として、本発明の組成物が自己免疫疾患の治療に関する技術分野において有効なその他の療法と連携して使用できることが予見される。
【0162】
一つの態様において、T細胞は、造血幹細胞移植に付随する治療の結果として免疫無防備状態にある個体における応答性を誘導または高めるために、本明細書に述べられるように刺激および増幅することができる。本発明は、造血幹細胞移植を受けている患者における有害なGVHDの影響のリスクまたはその重篤度を軽減するための方法であって、本発明のT細胞集団を患者に投与する工程を伴う方法を提供する。一つの特定の態様において、ドナーの造血幹細胞に含まれるアロ反応性細胞の少なくとも実質的な部分が本発明の方法によって排除される。さらなる態様において、本発明のT細胞組成物は、化学療法剤の投与後に造血幹細胞移植を受ける患者に投与される。さらなる態様において、ドナー骨髄由来のアロ反応性細胞の少なくとも実質的な部分が本発明の方法を用いてインビトロにおいて排除されて、その後、さらに刺激および増幅された後に患者に投与される。さらなる態様において、ドナー骨髄由来のアロ反応性細胞の少なくとも実質的な部分が本発明の方法を用いてインビトロにおいて排除されて、その後、患者に投与されてインビボにおいて増幅される。一つの局面として、本発明の組成物は、G-CSF、IL-2、IL-11、IL-7、IL-12および抗ウイルス療法剤の投与のような、造血幹細胞移植における用途に関して当技術分野において有効なその他の療法と併用することができる。
【0163】
一つの態様において、T細胞は、腎、心、肺および肝移植などの臓器移植に付随する治療の結果として免疫無防備状態にある個体における応答性を誘導または高めるために、本明細書に述べられるように刺激および増幅することができる。一つの特定の態様において、レシピエントに含まれるアロ反応性細胞の少なくとも実質的な部分が本発明の方法によって排除される。従って、本発明は、臓器拒絶のリスクまたはその重篤度を軽減するための方法を提供する。さらなる態様において、本発明のT細胞組成物は化学療法剤の投与後に臓器移植を受ける患者に投与される。さらなる態様において、移植レシピエントに由来するアロ反応性細胞の少なくとも実質的な部分が本発明の方法を用いてインビトロにおいて排除されて、その後、さらに刺激および増幅された後に患者に投与される。一つの局面として、本発明の組成物は臓器移植における用途に関して当技術分野において有効なその他の療法と併用することができる。
【0164】
本発明のもう一つの態様は、CD4+ T細胞集団からTH1細胞集団を選択的に増幅するための方法を提供する。この方法において、CD4+ T細胞は単一クローン性抗体9.3のような抗CD28抗体を用いて共刺激されて、IFN-γを含むTH1特異的サイトカインの分泌が誘発され、その結果、TH2細胞よりもTH1細胞が濃厚化する。
【0165】
本発明は、CD4+ T細胞集団からTH2細胞集団を選択的に増幅するための方法をさらに提供する。この方法において、CD4+ T細胞は単一クローン性抗体であるB-T3、XR-CD28のような抗CD28抗体を用いて共刺激されて、TH2特異的サイトカインの分泌が誘発され、その結果、TH1細胞よりもTH2細胞が濃厚化する(例えば、Fowlerら、Blood 1994 Nov 15;84(10):3540-9;Cohenら、Ciba Found Symp 1994;187:179-93を参照されたい)。
【0166】
本発明は、レギュラトリーT細胞と併用するインスタント細胞組成物の使用方法をさらに提供する。レギュラトリーT細胞は、例えば、Wooら、J Immunol. 2002 May 1;168(9):4272-6;Shevach, E. M., Annu. Rev. Immunol. 2000, 18:423;Stephensら、Eur. J. Immunol. 2001, 31:1247;Salomonら、Immunity 2000, 12:431;およびSakaguchiら、Immunol. Rev. 2001, 182:18に述べられるような当技術分野において認識された技術を用いて作製することができる。
【0167】
本発明は、特異的Vβ、Vα、VγまたはVδ遺伝子を発現しているT細胞集団を選択的に増幅するための方法をさらに提供する。例えば、この方法において、特定のVβ、Vα、VγまたはVδ遺伝子を発現しているT細胞はポジティブまたはネガティブ選択されて、その後、本発明の方法に従ってさらに増幅/刺激される。または、関心対象の特定のVβ、Vα、VγまたはVδ遺伝子を発現している刺激および増幅されたT細胞をポジティブまたはネガティブ選択して、さらに刺激および増幅する。
【0168】
もう一つの例において、患者から血液を採取して、感作組成物およびまたは2種類もしくはそれよりも多い固定化した抗体(例えば、抗CD3および抗CD28)、または細胞を対象に投与する前にT細胞の活性化に必要なレセプターを刺激するためのその他の成分(例えば、プラスチック表面または分離可能な微粒子に固定)を入れた独立型ディスポーザブル装置に直接回収する。一つの態様において、このディスポーザブルの装置は、シリンジとの接続/連結に適した然るべきチュービング接続回路および無菌の連結装置を持つ容器(例えば、プラスチックバッグまたはフラスコ)を含むことができる。この装置はT細胞活性化コンポーネント(例えば、抗CD3および抗CD28抗体)の固定化のための固相表面を持つ;これらは容器自体または挿入物の表面であることができて、典型的には平坦な表面、エッチングされた平坦な表面、不規則な表面、有孔性のパッド、繊維、臨床的に許容される/安全な鉄含有液、ビーズなどがある)。加えて、独立型装置を用いる場合、対象はその装置と接続したままでいることもできれば、装置を患者から離すこともできる。さらに、装置は室温で使用することもできれば、携帯型インキュベーターを用いて生理学的な温度でインキュベートすることもできる。
【0169】
血液および血液製剤を採取および加工するための装置および方法は周知であることから、当業者は本明細書に示される教示が与えられれば、上記に示す必要性を満たす様々な装置が容易にデザインされること、または既存の装置が変更できることを容易に認識する。従って、このような装置および方法は本明細書に記載される具体的な態様によって限定されるものではないが、無菌性を維持することのできる装置または方法であって、血液を補体活性化が抑制される液体の状態に保ち、T細胞の活性化に必要な成分(例えば、抗CD3および抗CD28抗体、またはそれらのリガンド)を固定または対象への投与前に血液もしくは血液製剤から分離することができる装置または方法が含まれる。さらに、当業者は本明細書に記載される装置および方法と関連して様々な血液製剤が使用することができることを容易に理解する。例えば、これらの方法および装置は、融解後、対象への投与前に、凍結保存した全血、末梢血単核細胞、その他の凍結保存した血液由来細胞、または凍結保存したT細胞セルラインからのT細胞の迅速な活性化を提供するために使用することができる。もう一つの例では、これらの方法および装置は、対象への投与前に予めエキソビボにおいて増幅したT細胞産物またはT細胞セルラインの活性を増大させるために使用することができ、従って、高度に活性化されたT細胞産物が提供される。最後に、容易に認識されるように、上記の方法および装置は対象およびドナーと同時に自家細胞または同種細胞療法のために使用することができる。
【0170】
本発明の方法は、抗原の反応性を高めてインビボにおける効果を増強するために、ワクチンと共に使用することもできる。一つの態様において、本発明の組成物は、インビボにおけるT細胞、例えばIL-2、IL-4、IL-7、IL-10、IL-12およびIL-15を増強する組成物と併用して患者に投与される。さらに、本発明によって増幅されるT細胞が生体内で比較的長い半減期を持つことから、これらの細胞は、関心対象の所望の核酸配列を伴って、癌、疾患または感染部位に潜在的にホーミングすることによって、遺伝子療法における完璧な賦形剤として機能することができる。従って、本発明によって増幅される細胞は、ワクチン、一つまたは複数のサイトカイン、一つまたは複数の治療用抗体などと組み合わせて患者に送達することができる。実際、より頑健なT細胞集団が有利となるあらゆる治療法が本明細書に述べられる使用方法の状況に含まれる。
【0171】
本発明の細胞組成物および特定の免疫系に関連する疾患へのそれらの応用または適用について検査およびバリデートするために、様々なインビトロおよび動物モデルがある。従って、当業者は、現時点で当技術分野に存在するモデルから適切なモデルを容易に選択することができる。このようなモデルにはNODマウスの使用が含まれて、このマウスの場合、インスリン産生膵臓β細胞の自然発生性のT細胞依存性自己免疫崩壊によってIDDMが発生して年齢に伴って亢進する(Bottazzoら、J. Engl. J. Med., 113:353, 1985;Miyazakiら、Clin. Exp. Immunol., 60:622, 1985)。ヒトIDDMのモデルであるNODマウスでは、T細胞を標的とする治療方法がIDDMの予防に奏功している(Makinoら、Exp. Anim., 29:1, 1980)。これらには、新生児胸腺切除、シクロスポリンの投与、および抗汎T細胞、抗CD4、または抗CD25(IL-2R)の単一クローン性抗体(mAb)の注入が含まれる(Taruiら、Insulitis and Type I Diabetes Lessons from the NOD Mouse, Academic Press, Tokyo, p.143, 1986)。その他のモデルには、例えば、多発性硬化症(EAEモデル)、慢性関節リウマチ、移植片対宿主疾患(皮膚移植片、心移植、ランゲルハンス島移植、大腸および小腸移植などを用いた移植片拒絶に関する試験のための移植モデル)、喘息モデル、全身性エリテマトーデス(全身性自己免疫−lprまたはNZBx NZWF1モデル)などの自己免疫性および炎症性疾患において一般的に用いられるモデルが含まれる(例えば、Takakuraら、Exp. Hematol. 27 (12):1815-821, 1999;Huら、Immunology 98(3):379-385, 1999;Blythら、Am. J. Respir. Cell Mol. Biol. 14(5):425-438, 1996;TheofilopoulosおよびDixon, Adv. Immunol. 37:269-389, 1985;Eisenbergら、J. Immunol. 125:1032-1036, 1980;Bonnevilleら、Nature 344:163-165, 1990;Dentら、Nature 343:714-719, 1990;Toddら、Nature 351:542-547, 1991;Watanabeら、Biochem Genet. 29:325-335, 1991;Morrisら、Clin. Immunol. Immunopathol. 57:263-273, 1990;Takahashiら、Cell 76:969-976, 1994;Current Protocols in Immunology, Richard Coico(編)、John Wiley & Sons, Inc., 第15章、1998を参照されたい)。
【0172】
コラーゲン誘導関節炎(CIA)は、慢性関節リウマチ(RA)のT細胞依存動物モデルである(D. E. Trenthamら、"Autoimmunity to Type II Collagen:An Experimental Model of Arthritis," J. Exp. Med. 146: 857-868 (1977))。IFAにおいてII型コラーゲン(CII)を用いて免疫化後2週間以内に、感受性ラットはパンヌス形成および骨/軟骨糜爛の組織学的変化を伴う多発性関節炎を発症する。さらに、CIIに対する液性および細胞性応答はCIAならびにRAにおいて発現する(E. Brahn, "Animal Models of Rheumatoid Arthritis: Clues to Etiology and Treatment" in Clinical Orthopedics and Related Research (B. Hahn編、Philadelphia, JB Lippincott Company, 1991)。その結果、CIAは本発明に述べられるように潜在的に新しい治療的介入探索のためのインビボの系となる有効なRA動物モデルである。
【0173】
薬学的組成物
本発明のT細胞集団は、単独または希釈剤および/またはIL-2もしくはその他のサイトカインのような他のコンポーネントまたは細胞集団と組み合わせた薬学的組成物として投与することができる。つまり、本発明の薬学的組成物は本明細書に述べられるような標的細胞集団を一つまたは複数の薬学的または生理学的に許容される担体、希釈剤もしくは賦形剤と配合して含むことができる。このような組成物は、中性緩衝生理食塩液、リン酸緩衝生理食塩液などの緩衝液;グルコース、マンノース、ショ糖またはデキストラン、マンニトールのような炭水化物;タンパク質;ポリペプチドまたはグリシンのようなアミノ酸;抗酸化剤;EDTAまたはグルタチオンのようなキレート剤;アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム);および防腐剤を含むことができる。本発明の組成物は、好ましくは静脈内投与用に調製される。本発明は、本明細書に述べられるような感作組成物を含む薬学的組成物をさらに提供する。
【0174】
本発明の薬学的組成物は治療(または予防)すべき疾患に適した方法で投与することができる。適切な用量は臨床試験によって求めることができるが、投与の量および頻度は患者の状態、ならびに患者の疾患の種類および重篤度などの要因によって決定される。「免疫学的に有効な量」または「治療上有効な量」が示される場合、投与すべき本発明の組成物の正確な量は、患者の年齢、体重、疾患の重篤度および状態における個々の相違、ならびに患者の治療に関連するその他のあらゆる要因を考慮して医師が決定することができる。一般論として述べると、対象であるTまたはB細胞を含む薬学的組成物は104〜107 APC/kg体重、好ましくは105〜106 APC/kg体重の、その範囲内のすべての整数値を含む用量で投与することができる。細胞組成物はこれらの用量で複数回投与することもできる。これらの細胞は、免疫療法の分野で周知である注入技術を用いることによって投与することができる(例えば、Rosenbergら、New Eng. J. of Med. 319:1676, 1988を参照されたい)。医療に関する技術分野の業者は、疾患の徴候について患者をモニターし、それに応じて治療を調節することによって、特定の患者における至適な用量および治療計画を容易に決定することができる。
【0175】
一部の養子免疫療法試験において、T細胞は約1×109〜2×1011個が患者に投与される。(例えば、米国特許第5,057,423号を参照されたい)。本発明のいくつかの局面において、特に同種または異種細胞の使用において、106個/kg(患者当たり106〜1011個)の範囲のより少量の細胞を投与することができる。一部の態様において、TまたはB細胞は1×105、1×106、1×107、1×108、5×108、1×109、5×109、1×1010、5×1010、1×1011、5×101lまたは1×1012個が対象に投与される。TまたはB細胞組成物は、これらの範囲内の用量で数回投与することができる。TまたはB細胞は、治療を受ける患者に対して自己由来または異種由来(同種または異種)であることができる。望ましいならば、免疫応答の回復を促進するために本明細書に述べられるようにマイトジェン(PHAなど)またはリンホカイン、サイトカイン、および/またはケモカイン(例えば、GM-CSF、IL-4、IL-13、Flt3-L、RANTES、MIP1αなど)の投与を加えることもできる。
【0176】
本発明は、動物における自己免疫疾患を予防、阻害または重篤度を減少させるための方法であって、不要な自己反応性T細胞亜集団が除去されている対象である活性化多クローン性T細胞の有効量を動物に投与する工程を含む方法も提供する。本発明のT細胞組成物は、T細胞除去療法および/または自己免疫疾患の治療のためのその他の療法と併用して投与することができる。
【0177】
本発明は、造血幹細胞移植を必要とする動物における移植片対宿主疾患を予防、阻害または重篤度を減少させるための方法であって、不要なアロ反応性T細胞亜集団が除去されている対象となるドナー骨髄の有効な量を動物に投与する工程を含む方法も提供する。本発明の組成物は、造血幹細胞移植に関連する免疫欠損の治療のためのその他の療法と併用して投与することができる。
【0178】
本発明は、臓器移植を必要とする動物における宿主対移植片疾患または移植片拒絶を予防、阻害または重篤度を減少させるための方法であって、不要なアロ反応性T細胞の亜集団が除去されている対象となるT細胞組成物の有効な量を動物に投与する工程を含む方法も提供する。本発明の組成物は、臓器移植に関連する免疫欠損の治療のためのその他の療法と併用して投与することができる。
【0179】
対象である薬学的組成物の投与は、エーロゾル吸入、注射、経口摂取、輸液、埋め込みまたは移植を含む任意の簡便な方法で実施することができる。本発明の組成物は、皮下、皮内、筋肉内、静脈内(i.v.)注射、腫瘍内、または腹腔内投与によって患者に投与することができる。好ましくは、本発明のT細胞組成物はi.v.注射により投与される。活性化T細胞組成物は腫瘍またはリンパ節内に直接注射することができる。
【0180】
さらにもう一つの態様において、この薬学的組成物は放出制御系にて送達することができる。一つの態様において、ポンプを使用することができる(Langer, 1990, Science 249:1527-1533;Sefton 1987, CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14:201;Buchwaldら、1980; Surgery 88:507;Saudekら、1989, N. Engl. J. Med. 321: 574を参照されたい)。もう一つの態様において、ポリマー材料を使用することができる(Medical Applications of Controlled Release, 1974, LangerおよびWise(編)、CRC Pres., Boca Raton, Fla.;Controlled Drug Bioavailability, Drug Product Design and Performance, 1984, Smolen およびBall(編)、Wiley, New York;RangerおよびPeppas, 1983; J. Macromol. Sci. Rev. Macromol. Chem. 23:61を参照されたい;Levyら、1985, Science 228:190;Duringら、1989, Ann. Neurol. 25:351;Howardら、1989, J. Neurosurg. 71:105も参照されたい)。もう一つの態様において、放出制御系は治療ターゲットの近位にセットすることが可能であり、従って、全身性投与量の一部のみが必要とされる(例えば、Medical Applications of Controlled Release, 1984, LangerおよびWise(編)、CRC Pres., Boca Raton, Fla., 第2巻、pp.115-138を参照されたい)。
【0181】
本発明のT細胞および/または感作組成物の組成物は、任意の数のマトリックスを用いて投与することもできる。マトリックスは、組織工学の状況において長年用いられている(例えば、Principles of Tissue Engineering (Lanza, LangerおよびChick(編)、1997を参照されたい)。本発明は、これらのマトリックスを一般にT細胞の調節を介して免疫系を支持、維持または調節するために人工的リンパ様臓器として作用するという新しい状況において使用する。従って、本発明は組織工学における実用性が実証されているマトリックス組成物および調製物を利用することができる。従って、本発明の組成物、装置および方法で用いることのできるマトリックスの種類は実質的に無制限であり、生物マトリックスおよび合成マトリックスの双方を含むことができる。一つの特定の例において、米国特許第5,980,889号、第5,913,998号、第5,902,745号、第5,843,069号、第5,787,900号または第5,626,561号に記載された組成物および装置が使用される。マトリックスは、哺乳動物宿主に投与された際に生体適合性であるということに広く関連する特徴を持つ。マトリックスは天然材料および合成材料の双方から形成することができる。マトリックスは、インプラントなど、動物の体内に永久的構造物または脱着可能な構造物を留置することが望ましい場合には非生物分解性であることが可能であり、そうでない場合には生物分解性であることができる。マトリックスは、スポンジ、インプラント、チューブ、テルファパッド、繊維、中空繊維、凍結乾燥成分、ゲル、粉末、多孔性組成物、リポソーム、細胞またはナノ粒子の形態をとることができる。さらに、マトリックスは播種した細胞または産生されるサイトカインもしくはその他の有効物質を持続的に放出するようにデザインすることができる。一部の態様において、本発明のマトリックスは屈曲性および伸縮性であり、無機塩、水性液体、および酸素を含む溶存ガス性物質のような物質を透過させることのできる半固体足場と表現することができる。
【0182】
本明細書において、マトリックスは生体適合性物質の例として用いられる。但し、本発明はマトリックスに限定されるものではなく、よって、マトリックス(matrix)またはマトリックス(matrices)の用語が用いられている場合は必ず、これらの用語は、細胞の保持または細胞のトラバーサル(traversal)を可能として、生体適合性であり、かつ、物質そのものが半透膜であるような物質を介して高分子を直接トラバーサルさせるかまたは特定の半透過性物質と併用されて高分子をトラバーサルさせることのできる装置およびその他の物質を含むものと理解されるべきである。
【0183】
本文中に引用されるすべての参照は、参照として本明細書に全体が組み入れられる。さらに、本明細書において用いられるすべての数値範囲はその範囲内のすべての整数値を含むことが明らかであり、その範囲内の具体的な数値の選択は特定の用途に依存して企図される。また、次の実施例は例証のために示すものであって、制限のためではない。
【0184】
実施例1
CD3/CD28 XCELLERATE(商標)ビーズを用いた再刺激後の抗原特異的細胞の除去
この実施例は、CD3/CD28 XCELLERATE(商標)ビーズ(3×28ビーズ)を用いた再刺激による細胞混合集団からの抗原特異的T細胞の除去について説明する。本明細書に述べられるプロセスを用いたXCELLERATED T細胞(商標)の作製は、本質的に、米国特許出願第10/133,236号に述べられている通りである。
【0185】
ヒトPBMCは、CMVpp65ペプチドと共にロードするHLA-A2四量体(HLA-A2-CMVpp65)を用いたフローサイトメトリーにより、HLA-A2 CMVpp65陽性についてスクリーニングした。選択されたドナーのCD3+CD8+ T細胞の約3%が、HLA-A2-CMVpp65に特異的なTCRを発現した(図1)。
【0186】
ドナー(ドナー2)および対照ドナー(ドナー1)由来のPBMCを常磁性ビーズにコーティングしたCMV抗原で活性化した結果、培養10日目にはフローサイトメトリー解析によって多くの細胞がCD25(IL-2R)陽性であることが示され、すべてのHLA-A2 CMVpp65+ T細胞が多量のCD25を発現し、活性化が示された(図2、右図)。
【0187】
続いて予備刺激後14日目に培養を無刺激のままとするか(図3、パネルA1〜A4)、あるいは3×28ビーズを用いたXCELLERATE(商標)プロセスにより16時間にわたって再刺激した(図3、パネルB1〜B4)。図3に示される通り、CD25は再刺激された細胞上でアップレギュレートされるが(パネルB2)、四量体陽性(即ち、CMVpp65-Ag特異的)の予備刺激された細胞は3×28ビーズが発する強い二次的刺激によって除去されて(パネルB3およびB4)、その他の細胞は影響を受けなかった。同様の結果は、細胞をビーズに接着させた場合、またはビーズに接着させた細胞と関連させて、磁気により選別し、3×28ビーズを用いた再刺激前に培養中に戻した場合に認められた。追加試験では、細胞をさらに4日間、再刺激した。3×28再刺激培養物において、さらに4日後にも、依然、四量体陽性細胞の除去が認められた。
【0188】
これらの結果は、活性化されたCMVpp65-抗原特異的T細胞であって3×28ビーズで再刺激される細胞は細胞集団から排除されて、これはアポトーシスによる可能性が最も高いことを示している。
【0189】
実施例2
アポトーシスの測定
この実施例は、アポトーシス測定のための例示的なアッセイについて説明する。
【0190】
DNAフラグメンテーションアッセイ:細胞は溶解緩衝液(10mM EDTA、50mMトリス pH8、0.5%ドデシル硫酸ナトリウム、0.5mg/mlプロテイナーゼK)50μlに入れて溶解する。RNAseA(0.5mg/ml)を加えて、溶解物を37℃にて1時間、インキュベートする。フェノール(等量)で2回抽出し、続いてクロロホルムで1回抽出する。二倍量の氷冷エタノールを加えてDNAを析出させて、−80℃にて1時間、インキュベートする。4℃、14,000rpmにて10分間遠心分離してDNAを沈降させる。沈渣を30分間風乾して、トリス-EDTA pH8の50μlに再度懸濁する。Prestonら、Cancer Res., 1994, 54, 4214-4223の方法に従って、1×TBEランニングバッファー(0.05Mトリス塩基、0.05Mホウ酸、1mM EDTA二ナトリウム塩)中1.8%アガロースゲルを用いてDNAを電気泳動する。
【0191】
実施例3
XCELLERATED T細胞(商標)との同時培養によるB細胞におけるアポトーシスの誘発
この実施例は、XCELLERATED T細胞(商標)との同時培養によってB-CLL患者のサンプル中の白血病性B細胞の除去について述べる。
【0192】
本質的に米国特許出願第10/133,236号に述べられるように作製されたXCELLERATED T細胞(商標)を、B-CLL患者から得られた未処理自家白血病性細胞と同時培養した。CD54、CD80、CD95(FAS)およびCD86に対する細胞表面マーカーならびにアネキシン/PI(アポトーシス)を、24および48時間の時点でフローサイトメトリーにより測定した。XCELLERATED T細胞(商標)は、白血病性B細胞上のCD95(FAS)の発現を増加させることが示された(図4)。12日目のXCELLERATED T細胞(商標)との48時間同時培養後、自家白血病性B細胞はフローサイトメトリーにより測定される通り、CD95の発現および抗FASに対する感受性の亢進を示す(図5)。図5に示す通り、同時培養したT:B細胞に抗FAS抗体を加えると、白血病性B細胞のアポトーシスが増加した。追加試験では、XCELLERATE(商標)プロセス中にT細胞は生育するが白血病性B細胞は排除されることが示された(図6)。
【0193】
要約すると、XCELLERATED T細胞(商標)は白血病性B細胞上の重要なエフェクター分子をアップレギュレートして、白血病性B細胞上に機能性FASを誘導し、白血病性B細胞をアポトーシス経路に導くことができる。白血病性B細胞は、XCELLERATE(商標)プロセスの終了までは事実上検出不可能であった。従って、XCELLERATED T細胞(商標)は、混合細胞集団からの白血病性B細胞の排除のための感作組成物またはプロアポトーシス組成物として使用することができる。
【0194】
実施例4
異なるビーズ:細胞比はメモリーCD8 T細胞を選択的に増幅または除去することができる
この実施例は、異なるT細胞集団の増幅に対してビーズ:細胞比が顕著な影響を及ぼすことができることを示す。特に、高いビーズ:細胞比(3:1〜10:1)は抗原特異的T細胞の死を誘発する傾向があり、ビーズ:細胞比が低いと(1:1〜1:10)、抗原特異的T細胞が増幅される。さらに、次に示すデータは、低いビーズ:細胞比が多クローン性細胞集団の細胞増幅も回復させることを示している。従って、この実施例は、低いビーズ:細胞比が全体の細胞増幅を改善することを示す。さらに、この実施例はビーズ:細胞比が高い場合、本明細書に示されるビーズはプロアポトーシス組成物として使用することができることを実証している。
【0195】
細胞は、本質的に2002年6月28日にファイルされた米国特許出願第10/187,467号に述べられるようにXCELLERATE I(商標)プロセスを用いて調製および刺激した。要約すると、このプロセスにおいて、XCELLERATED T細胞(商標)は末梢血単核細胞(PBMC)のアフェレーシス産物から製造される。医療機関において患者から採取後、PBMCアフェレーシスを洗浄して凍結保存する。続いて、細胞を融解して、単球およびその他の接着細胞を培養プレートに結合させるために、37℃/5%CO2にて1時間培養した。非接着細胞は、次のような刺激に備えて新しい培養プレートに移した。この単球除去工程の後、合計5×108個のCD3+ T細胞を含む液量を採取して、XCELLERATE(商標)プロセス(ビーズ対T細胞 約3:1)を開始するために1.5×109 DYNABEADS(登録商標)M-450 CD3/CD28 Tを用いてセットする。続いて、この細胞およびDYNABEADS(登録商標)M-450 CD3/CD28 Tの混合物を、初回注入用のXCELLERATED T細胞(商標)を作製するために37℃、5%CO2にて約8日間インキュベートする。残りの単球除去PBMCは、二回目またはその後の細胞産物増幅(約21日後)まで凍結保存して、この時点で細胞を融解して洗浄した後、合計5×108個のCD3+ T細胞を含む液量を採取して、二回目注入のためのXCELLERATE(商標)プロセスを開始するために1.5×109 DYNABEADS(登録商標)M-450 CD3/CD28 Tを用いてセットする。37℃、5%CO2での約8日間のインキュベート期間中にCD3+ T細胞は活性化および増幅する。用いる抗CD3 mAbはBC3(XR-CD3;Fred Hutchinson Cancer Research Center, Seattle, WA)であり、抗CD28 mAb(B-T3, XR-CD28)はDiaclone, Besancon, Franceから入手する。
【0196】
以下に示す実験において、接着細胞が除去された細胞を含む培養に、続いて、表1に示すビーズ:T細胞比でビーズを加える。この実施例で用いられるビーズには、CD3:CD28抗体が1:1の割合でビーズに結合したDYNABEADS(登録商標)M-450 CD3/CD28が含まれた。
【0197】
(表1)異なるビーズ:細胞比はメモリーCD8 T細胞を選択的に増幅または除去することができる

【0198】
表1にまとめて図7にグラフで示す結果は、抗原特異的T細胞が高いビーズ:細胞比を用いることによって選択的に除去されて、低いビーズ:細胞比を用いると選択的に増幅できることを示している。同様の結果が、EBV特異的およびインフルエンザ特異的CD8 T細胞を用いて認められた(データは示さない)。理論によって結びつけられることはないが、抗原特異的T細胞はさらなる刺激に対して感作されると考えられる。高いビーズ:細胞比を用いた刺激によって高い刺激抗体濃度が得られて、抗原特異的T細胞の過剰刺激を招き、それらの細胞はアポトーシスまたはその他のメカニズムによって死滅する。従って、この点に関して、ビーズはプロアポトーシス組成物として機能する。低いビーズ:細胞比を用いると、抗原特異的T細胞に対して、過剰刺激ではなくむしろこれらの細胞の急激な増殖を誘発する刺激シグナルが生じる。増殖の亢進は、低いビーズ:細胞比を用いた多クローン性T細胞集団においても認められる。特に、これらの結果は、多クローン性T細胞増幅にとっては1:1のビーズ:細胞比が最適であることを示している。
【0199】
従って、この実施例では、所望の転帰に応じて異なるビーズ:細胞比を用いることを支持するための証拠が提供される。抗原特異的T細胞の増幅には、より低いビーズ:細胞比が好ましい。抗原特異的T細胞の除去が所望の転帰である場合は、高いビーズ:細胞比が好ましい。
【0200】
実施例5
CD3/CD28 XCELLERATE(商標)ビーズを用いた再刺激後のアロ反応性T細胞の除去
この実施例は、CD3/CD28 XCELLERATE(商標)ビーズを用いた再刺激後のアロ反応性T細胞の除去について説明する。
【0201】
PBMCは、同種PBMCまたはJY Bリンパ芽球同種セルラインのいずれかを用いて3日間刺激した。続いて3日目に、同種PBMCまたはJYで刺激したPBMCは、本質的には、CD3/CD28ビーズを用いた30分ポジティブ選択を行うまたは行わない米国特許出願第10/350,305号に述べられたXCELLERATE(商標)プロセスを用いてCD3/CD8ビーズを加えて培養した。XCELLERATE(商標)プロセス後、細胞を同種PBMCまたはJY同種抗原のいずれかを用いて再刺激して、CD25のアップレギュレートを測定した。XCELLERATE(商標)プロセス後に同種細胞を用いて再刺激しても、(フローサイトメトリー分析で測定される)CD25発現のアップレギュレートは起こらず、アロ反応性細胞が除去されていたことを示している。特に、XCELLERATE(商標)プロセス中のJY刺激されたCD8+ T細胞のポジティブ選択によって、アロ反応性が著しく低下した。しかし、第三者の同種PBMCおよびJY反応(例えば、JY刺激した培養物の同種PBMCでの再刺激、または同種PBMCで刺激した培養物のJYによる再刺激)により示されるように、T細胞は、依然、XCELLERATED(商標)培養物中の無関係の抗原に対する反応についてコンピテントであった。
【0202】
このように、これらの結果は、活性化されたアロ反応性T細胞はCD3/CD28ビーズを用いた再刺激によって除去されるが、任意の数の免疫療法応例での用途に備えて残留多クローン性T細胞を急激に増幅することができる。
【図面の簡単な説明】
【0203】
【図1】図1は、HLA-A2陽性ドナーにCD3+CD8+ HLA-A2CMVpp65抗原特異的T細胞が存在することを示すドットプロットである。
【図2】図2は、CMVで活性化されたHLA-A2CMVpp65抗原特異的T細胞におけるCD25発現の増加を示すドットプロットである。
【図3】図3は、再刺激された細胞でのCD25のアップレギュレート、および3×28ビーズにより与えられる二次的強刺激によって前刺激された四量体陽性細胞(即ち、CMVpp65-Ag特異的)の消失を示すドットプロットである。一次刺激後14日目に、培養物は無刺激のままとするか(パネルA1〜A4)、または3×28ビーズを用いたXCELLERATE(商標)プロセスを用いて16時間、再刺激した(パネルB1〜B4)。再刺激された細胞ではCD25がアップレギュレートされたが(パネルB2)、四量体陽性(即ち、CMVpp65-Ag特異的な)前刺激された細胞は3×28ビーズにより与えられた二次的強刺激によって消失した(パネルB3)。
【図4】図4は、XCELLERATED T細胞(商標)と同時培養した白血病性B細胞上での、CD95を含む主要エフェクター分子の発現増加を示すヒストグラムである。
【図5】図5は、XCELLERATED T細胞(商標)と同時培養した白血病性B細胞におけるアポトーシスの誘発を示すドットプロットである。
【図6】図6は、XCELLERATE(商標)プロセス中の白血病性B細胞の消失および同時に見られるT細胞増幅を示すグラフである。
【図7】図7は、様々なビーズ:細胞比を用いた、多クローン性T細胞の増加倍率とCMV pp65 A2-四量体+(抗原特異的)T細胞の増加倍率を比較するグラフである。黒塗りのバーは、多クローン性T細胞を示す。縦縞のバーはCMV特異的T細胞を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体由来の混合T細胞集団からクローン性T細胞亜集団の少なくとも実質的な部分を排除するための方法であって、少なくともその一部がT細胞を含む細胞集団を一つまたは複数のプロアポトーシス組成物または成長阻害組成物に曝露する工程であって、該曝露がその混合T細胞集団に含まれる少なくとも一つのクローン性T細胞集団の少なくとも実質的な部分にアポトーシスまたは生育阻害を引き起こす工程と、それによってその混合T細胞集団の該クローン性T細胞集団の少なくとも実質的な部分を排除する工程とを含む方法。
【請求項2】
残留混合T細胞集団を増幅する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
残留混合細胞集団を、少なくとも一部の残留T細胞の細胞表面部分をライゲートして該残留T細胞を刺激する一つまたは複数の物質をそこに接着させている表面に曝露することによって残留混合細胞集団を増幅する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
表面がT細胞の第一のT細胞表面部分をライゲートする第一の物質をそこに接着させ、同一または第二の表面が該T細胞の第二の部分をライゲートする第二の物質をそこに接着させて、第一および第二の物質による該ライゲーションが該T細胞の増殖を誘発する、請求項3記載の方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項記載の方法に従って作製されるT細胞集団。
【請求項6】
プロアポトーシス組成物または成長阻害組成物が自己抗原を含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
自己抗原が、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、MBP84-102、MBP143-168、膵島細胞抗原、コラーゲン、甲状腺抗原、Scl-70、核酸、アセチルコリンレセプター、S抗原、およびII型コラーゲンからなる群より選択される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
プロアポトーシス組成物が同種または異種細胞を含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
少なくとも一部がT細胞を含む細胞集団を、インビボにおいて一つまたは複数のプロアポトーシス組成物に曝露する、請求項1記載の方法。
【請求項10】
少なくとも一部がT細胞を含む細胞集団を、エキソビボにおいて一つまたは複数のプロアポトーシス組成物に曝露する、請求項1記載の方法。
【請求項11】
細胞の表面への曝露が多クローン性の増大に十分な期間である、請求項3記載の方法。
【請求項12】
増大が、少なくとも一つのVβ、Vα、VγまたはVδファミリー遺伝子のVβ、Vα、VγまたはVδスペクトルタイププロフィールによって測定される、T細胞集団の単一クローン性からオリゴクローン性または多クローン性への推移を含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
請求項6または11記載の方法に従って作製されるT細胞集団。
【請求項14】
患者に請求項13記載のT細胞集団を投与する工程を含む、患者における自己免疫疾患を治療するための方法。
【請求項15】
請求項10記載のT細胞集団の投与に先立って患者が免疫除去剤により処置される、請求項14記載の方法。
【請求項16】
免疫除去剤が、キャンパス、抗CD3抗体、シクロホスファミド、フルダラビン、シクロスポリン、FK506、ミコフェノール酸、ステロイド、FR901228、および放射線療法からなる群より選択される、請求項15記載の方法。
【請求項17】
請求項10記載のT細胞集団の投与に先立って患者がT細胞除去療法により処置される、請求項14記載の方法。
【請求項18】
プロアポトーシス組成物または成長阻害組成物が、抗CD3抗体、抗CD2抗体、抗CD20抗体、標的抗原、MHC-ペプチド四量体または二量体、Fasリガンド、抗Fas抗体、IL-2、IL-4、TRAIL、ロリプラム、ドキソルビシン、クロラムブシル、フルダラビン、シクロホスファミド、アザチオプリン、メトトレキセート、シクロスポリン、ミコフェノレート、FK506、bcl-2阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、インターロイキン-1β転換酵素(ICE)-結合物質、赤痢菌IpaBタンパク質、スタウロスポリン、紫外線照射、ガンマ線照射、腫瘍壊死因子、標的抗原核酸分子、タンパク質またはペプチド、および非タンパク質または非ポリヌクレオチド化合物からなる群より選択される一つまたは複数の組成物を含む、請求項1記載の方法。
【請求項19】
少なくとも一つの物質が抗体または抗体フラグメントである、請求項3記載の方法。
【請求項20】
第一の物質が抗体またはそのフラグメントであり、第二の物質が抗体またはそのフラグメントである、請求項3記載の方法。
【請求項21】
第一および第二の物質が異なる抗体である、請求項3記載の方法。
【請求項22】
第一の物質が、抗CD3抗体、抗CD2抗体、または抗CD3もしくは抗CD2抗体の抗体フラグメントである、請求項3記載の方法。
【請求項23】
第二の物質が抗CD28抗体またはその抗体フラグメントである、請求項3記載の方法。
【請求項24】
第一の物質が抗CD3抗体であり、第二の物質が抗CD28抗体である、請求項3記載の方法。
【請求項25】
個体由来の混合T細胞集団からクローン性T細胞亜集団の少なくとも実質的な部分を排除するための方法であって、次の工程を含む方法:
(a)少なくとも一部がT細胞を含む細胞集団をさらに活性化または刺激するためにT細胞の少なくとも一部を感作する一つまたは複数の組成物に曝露する工程;
(b)感作したT細胞の少なくとも一部の細胞表面部分をライゲートし該感作T細胞を刺激する一つまたは複数の物質をそこに接着させている表面に細胞集団を曝露する工程であって、該感作T細胞の該表面への曝露が該感作T細胞のアポトーシスを誘発するために十分な時間である工程;
それによって該感作T細胞をその集団から排除する工程。
【請求項26】
工程(b)が残留T細胞の少なくとも一部を刺激するために十分な期間にわたって細胞集団を表面に曝露する工程をさらに含み、該残留細胞の少なくとも一部が増殖する、請求項25記載の方法。
【請求項27】
表面がT細胞の第一のT細胞表面部分をライゲートする第一の物質をそこに接着させ、同一または第二の表面が該T細胞の第二の部分をライゲートする第二の物質をそこに接着させて、第一および第二の物質による該ライゲーションが該T細胞の増殖を誘発する、請求項25記載の方法。
【請求項28】
細胞の表面への曝露が多クローン性を増大させるために十分な期間である、請求項26記載の方法。
【請求項29】
増大が、少なくとも一つのVβ、Vα、VγまたはVδファミリー遺伝子のVβ、Vα、VγまたはVδスペクトルタイププロフィールによって測定される、T細胞集団の単一クローン性からオリゴクローン性または多クローン性への推移を含む、請求項28記載の方法。
【請求項30】
請求項25または28記載の方法に従って作製されるT細胞集団。
【請求項31】
個体が造血幹細胞移植を必要とする、請求項25記載の方法。
【請求項32】
感作する組成物が分裂を継続することができないように処理されているレシピエントPBMCを含み、細胞集団がドナーT細胞を含む、請求項31記載の方法。
【請求項33】
請求項32記載の方法に従って作製されるT細胞集団。
【請求項34】
請求項30または33記載のT細胞集団を患者に投与する工程を含む、造血幹細胞移植を受けている患者における有害なGVHDの影響のリスクまたは重篤度を軽減するための方法。
【請求項35】
個体が臓器移植を必要とする、請求項25記載の方法。
【請求項36】
感作する組成物が分裂できないように処理されているドナー細胞を含み、細胞集団がレシピエントT細胞を含む、請求項35記載の方法。
【請求項37】
細胞の表面への曝露が多クローン性を増大するために十分な期間である、請求項36記載の方法。
【請求項38】
増大が、少なくとも一つのVβ、Vα、VγまたはVδファミリー遺伝子のVβ、Vα、VγまたはVδスペクトルタイププロフィールによって測定される、T細胞集団の単一クローン性からオリゴクローン性または多クローン性への推移を含む、請求項37記載の方法。
【請求項39】
請求項36または37記載の方法に従って作製されるT細胞集団。
【請求項40】
請求項39記載のT細胞集団を患者に投与する工程を含む、臓器移植を受けている患者における臓器拒絶のリスクを軽減するための方法。
【請求項41】
請求項36記載のT細胞集団の投与に先立って患者がT細胞除去療法により処置される、請求項40記載の方法。
【請求項42】
感作する組成物が自己抗原を含む、請求項25記載の方法。
【請求項43】
自己抗原が、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、MBP84-102、MBP143-168、Scl-70、膵島細胞抗原、S抗原、およびII型コラーゲンからなる群より選択される、請求項42記載の方法。
【請求項44】
細胞の表面への曝露が多クローン性を増大するために十分な期間である、請求項43記載の方法。
【請求項45】
増大が、少なくとも一つのVβ、Vα、VγまたはVδファミリー遺伝子のVβ、Vα、VγまたはVδスペクトルタイププロフィールによって測定される、T細胞集団の単一クローン性からオリゴクローン性または多クローン性への推移を含む、請求項44記載の方法。
【請求項46】
請求項42または44記載の方法に従って作製されるT細胞集団。
【請求項47】
請求項46記載のT細胞集団を患者に投与する工程を含む、患者における自己免疫疾患を治療するための方法。
【請求項48】
請求項46記載のT細胞集団の投与に先立って患者がT細胞除去療法により処置される、請求項47記載の方法。
【請求項49】
少なくとも一つの物質が抗体または抗体フラグメントである、請求項26記載の方法。
【請求項50】
第一の物質が抗体またはそのフラグメントであり、第二の物質が抗体またはそのフラグメントである、請求項26記載の方法。
【請求項51】
第一および第二の物質が異なる抗体である、請求項50記載の方法。
【請求項52】
第一の物質が、抗CD3抗体、抗CD2抗体、または抗CD3もしくは抗CD2抗体の抗体フラグメントである、請求項26記載の方法。
【請求項53】
第二の物質が抗CD28抗体またはその抗体フラグメントである、請求項26記載の方法。
【請求項54】
第一の物質が抗CD3抗体であり、第二の物質が抗CD28抗体である、請求項26記載の方法。
【請求項55】
個体由来のT細胞集団からCD3+/CD28+ T細胞の実質的に純粋な集団を作製するための方法であって、次の工程を含む方法;
少なくとも一部がT細胞を含む細胞集団を、エキソビボにおいて表面CD3およびCD28分子を刺激および/または選択する組成物に曝露する工程;
それによってCD3+/CD28+ T細胞の実質的に純粋な集団を作製する工程。
【請求項56】
個体由来のT細胞集団からCD4+/CD3+/CD28+ T細胞の実質的に純粋な集団を作製するための方法であって、次の工程を含む方法;
少なくともその一部がT細胞を含む細胞集団を、エキソビボにおいて表面CD3およびCD28分子を刺激および/または選択する組成物に曝露する工程;
それによってCD4+/CD3+/CD28+ T細胞の実質的に純粋な集団を作製する工程。
【請求項57】
個体由来のT細胞集団からCD8+/CD3+/CD28+ T細胞の実質的に純粋な集団を作製するための方法であって、次の工程を含む方法;
少なくともその一部がT細胞を含む細胞集団を、エキソビボにおいて表面CD3およびCD28分子を刺激および/または選択する組成物に曝露する工程;
それによってCD8+/CD3+/CD28+ T細胞の実質的に純粋な集団を作製する工程。
【請求項58】
混入CD3+/CD28- T細胞の割合が約5%未満であるように十分な期間にわたってCD3+CD28+ T細胞を増幅する工程をさらに含む、請求項55〜57のいずれか一項記載の方法。
【請求項59】
混入CD3+/CD28- T細胞の割合が約1%未満であるように十分な期間にわたってCD3+CD28+ T細胞を増幅する工程をさらに含む、請求項55〜57のいずれか一項記載の方法。
【請求項60】
混入CD3+/CD28- T細胞の割合が0.1%未満であるように十分な期間にわたってCD3+CD28+ T細胞を増幅する工程をさらに含む、請求項55〜57のいずれか一項記載の方法。
【請求項61】
CD3分子が抗CD3抗体を用いて刺激され、CD28分子が抗CD28抗体を用いて刺激される、請求項55〜57のいずれか一項記載の方法。
【請求項62】
細胞表面部分のライゲーションによってT細胞集団を活性化および増幅するための方法であって、次の工程を含む方法:
少なくともその一部がT細胞を含む細胞集団を、少なくとも一部のT細胞の細胞表面部分をライゲートし該T細胞を刺激する一つまたは複数の物質を接着させている表面であって、約8日間培養後に抗原特異的T細胞の少なくとも一つの集団の少なくとも実質的な部分が除去されるような該細胞に対する割合で含まれる表面に接触させる工程。
【請求項63】
割合が約10:1から約5:1である、請求項62記載の方法。
【請求項64】
割合が約5:1である、請求項62記載の方法。
【請求項65】
割合が約10:1である、請求項62記載の方法。
【請求項66】
混合T細胞集団を増幅する工程をさらに含み、残留混合T細胞集団をプロアポトーシス組成物に曝露する工程であって、該曝露が混合T細胞集団の増殖を誘発する工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項67】
プロアポトーシス組成物がビーズ上に共固定された抗CD3および抗CD28抗体を含む、請求項66記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2006−506987(P2006−506987A)
【公表日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−549825(P2004−549825)
【出願日】平成15年6月24日(2003.6.24)
【国際出願番号】PCT/US2003/019842
【国際公開番号】WO2004/003142
【国際公開日】平成16年1月8日(2004.1.8)
【出願人】(505003137)エクサイト セラピーズ インコーポレーティッド (5)
【Fターム(参考)】