説明

自己免疫疾患の治療方法及びそれに関する試薬

【課題】1型糖尿病の治療用組成物の改善。
【解決手段】1型糖尿病治療のための経口投与用の医薬組成物の製造におけるDPIV阻害剤の使用であって、該DPIV阻害剤がDPIVの高親和性阻害剤であり、しかも耐糖能障害を軽減しかつ膵臓組織再生を促進させるのに十分な量で1日1回の投与用に処方される、前記使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、動物被検体(ヒトを含む)における1型糖尿病、敗血症ショック、多発性硬化症、炎症性腸疾患(IBD)及びクローン病を含む自己免疫疾患の改善された治療又は予防方法に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫系は、一般に、「自己」と「非自己」を識別することができる。いくつかの免疫系細胞(リンパ球)は、「自己」組織に対して敏感になるが、通常は他のリンパ球によって制御されている。この一般的な制御プロセスが破壊され、リンパ球が抑制を逃れると、又はいくつかの体組織に変化があり、その結果これがもはや「自己」として免疫系によって認識されないと、自己免疫疾患が発症する。制御の破壊又は組織の変化を生じさせる機構はよく知られていない。一説では、様々な微生物及び薬剤が、特に遺伝的に自己免疫疾患になりやすい素質を持つ人々においてこれらの変化のうちいくつかの引き金になる可能性があると言われている。例えば、多発性硬化症(MS)、リウマチ性関節炎(RA)及び1型糖尿病を含めて、多数の自己免疫疾患が存在する。
【0003】
1型糖尿病は、インスリンを産生するβ細胞が身体自身の免疫系によって徐々に破壊される進行性の自己免疫疾患である。T細胞と呼ばれる白血球は、膵臓のβ細胞を攻撃し且つ徐々に破壊するサイトカインと呼ばれる免疫因子を産生する。重要なサイトカインは、インターロイキン−1β、腫瘍壊死因子−α及びインターフェロン−γである。また、特定の蛋白質もこのプロセスに重要である。これらのものとしては、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)、インスリン及び膵島細胞抗原が挙げられる。これらの蛋白質は自己抗原としての役割を果たす。即ち、これらのものは、その身体自身のβ細胞に免疫系が自己攻撃する引き金となる。この免疫現象のカスケードを最初に開始させるものは知られていないが、遺伝的素質及びウイルス感染のような環境因子の両方が関係していることが示唆される。
【0004】
自己免疫性糖尿病の結果として、膵臓はほとんど又は全くインスリンを産生しなくなり、そしてインスリンを糖尿病患者の生存のために毎日注射しなければならない。膵臓によって産生されるホルモンであるインスリンは、砂糖、澱粉及びその他の食品をグルコースに変換させ且つこれをエネルギーとして体細胞に利用できるようにするために必要である。筋肉、脂肪及び結合組織では、インスリンは、細胞膜上の作用によりグルコースが細胞に入るのを促進させる。摂取されたグルコースは、一般に、肝臓でCO2とH2Oに(50%)、グリコーゲンに(5%)及び脂肪に(30〜40%)変換される(脂肪は脂質貯蔵所中に貯蔵される)。脂肪細胞からの脂肪酸は循環し、トリアシルグリセロールの再合成のために肝臓に戻され、そして組織による利用のためにケトン体にまで代謝される。また、脂肪酸は、その他の器官でも代謝される。脂質形成は、糖質利用のための主要な経路である。このインスリンの正味の効果は、この貯蔵並びに炭水化物、蛋白質及び脂質の使用を促進させることである。
【0005】
長年にわたる糖尿病から生じるいくつかの合併症は、血管系疾患、細小血管障害、眼の合併症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害、糖尿病性下肢障害並びに皮膚及び粘膜の障害である。1型糖尿病の作用は、高血糖(高い血中グルコース濃度)を生じさせること及び糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)に向かう傾向を生じさせることである。今のところ、治療にはインスリンの慢性投与が必要である。高血糖の散発的又は永続的な発生率は、インスリンを投与することによって制御できる。高血糖を制御しないと、インスリンを産生する膵臓の細胞をさらに損傷させ且つ長期的に見てより大きなインスリンの欠乏を生じさ得る。
【0006】
1型糖尿病(インスリン依存性真性糖尿病、IDDM)は、全てのヒトの糖尿病の20%を占め且つこの病気の最も重い形であり、罹患率が高ければ高いほど死亡率も高い。米国内の80000もの人々が1型糖尿病にかかっていると見積もられており、約30000の新たな患者が毎年診断されている。さらに、IDDMの発生率は、米国及びいくつかの欧州諸国のある地方、特にフィンランド及び英国で過去数十年にわたって増加してきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許第363284号明細書
【特許文献2】欧州特許第364344号明細書
【特許文献3】国際公開第88/10266号パンフレット
【特許文献4】欧州特許第393457号明細書
【特許文献5】米国特許第4935493号明細書
【特許文献6】米国特許第5462928号明細書
【特許文献7】米国特許第5543396号明細書
【特許文献8】米国特許第5296604号明細書
【特許文献9】PCT/GB94/02615号明細書
【特許文献10】PCT/US99/02294号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Xu外,Diabetes 48:2270−2276,1999
【非特許文献2】Stoffers外,Diabetes 49:741−748,2000
【非特許文献3】関谷外,Biochem Biophys Res Comm,2000,276(1):211−216
【非特許文献4】Drucker外,PNAS,93:7911,1996
【非特許文献5】Delgado,Nat Med,7(5)563−568,2001
【非特許文献6】Gomariz,Curr Pharm Des 7(2):89−111,2001
【非特許文献7】Kubiak外,Peptide Res,7:153,1994
【非特許文献8】Angelastro外,J.Med.Chem.,33:11−13,1990
【非特許文献9】Ewoldt外,Molecular Immunology,29(6):713−721,1992
【非特許文献10】Hernandez外,Journal of Medicinal Chemistry,35(6):1121−1129,1992
【非特許文献11】Vlasak外,J.Virology,63(5):2056−2062,1989
【非特許文献12】Hudig外,J.Immunol,147(4):1360−1368,1991
【非特許文献13】Odakc外,Biochemistry,30(8):2217−2227,1991
【非特許文献14】Vijayalakshmi外,Biochemistry,30(8):2175−2183,1991
【非特許文献15】Kam外,Thrombosis and Haemostasis,64(1):133−137,1990
【非特許文献16】Powers外,J.Cell.Biochem.,39(1):33−46,1989
【非特許文献17】Powers外,Proteinase Inhibitors,Barrett外著,Elsevier,pp.55−152,1986
【非特許文献18】Powers外,Biochemistry,29(12):3108−3118,1990
【非特許文献19】Oweida外、Thrombosis Research,58(2):391−397,1990
【非特許文献20】Hudig外,Molecular Immunology,26(8):793−798,1989
【非特許文献21】Orlowski外,Archives of Biochemistry and Biophysics,269(1):125−136,1989
【非特許文献22】Zunino外,Biochimca et Biophisica Acta.,967(3):331−340,1988
【非特許文献23】Kam外,Biochemistry,27(7):2547−2557,1988
【非特許文献24】Parkes外,Biochem J.,230:509−516,1985
【非特許文献25】Green外,J.Biol.Chem.,256:1923−1928,1981
【非特許文献26】Angliker外,Biochem.J.,241:871−875,1987
【非特許文献27】Puri外,Arch.Biochem.Biophys.,27:346−358,1989
【非特許文献28】花田外,Proteinase Inhibitors:Medical and Biological Aspects,勝沼外著,Springer−Verlag,pp.25−36,1983
【非特許文献29】梶原外,Biochem.Int.,15:935−944,1987
【非特許文献30】Rao外、Thromb.Res.,47:635−637,1987
【非特許文献31】辻中外,Biochem.Biophys.Res.Commun.,153:1201−1208,1988
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
現在、経口スルホニル尿素剤及びインスリン注射液が真性糖尿病の治療のために米国内で利用できる唯一2種の治療剤である。両方の薬剤は、副作用として低血糖を生じさせる可能性があり、これは血中グルコース濃度を危険なレベルにまで減少させる。一般的には、本質的に正常のグルコースレベルの変動をDMにおいて維持する適切で且つ一貫して効果的な手段は存在しない。その結果として生じた治療は、グルコースレベルを目標の値以下に維持させつつ低血糖の危険性を最小にすることを試みている。この薬剤療法は、グルコースレベルを制御した状態に維持するために、炭水化物の食事摂取の規制と組み合わされている。しかしながら、今までのところ、1型糖尿病を含めた多くの自己免疫疾患のための治療法はなかった。明らかに、新規でより効果的なこれらの病気の治療法に対する大きな必要性が存在している。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、一般に、動物被検体(ヒトを含む)における1型糖尿病、敗血症ショック、多発性硬化症、炎症性腸疾患(IBD)及びクローン病を含む自己免疫疾患の改善された治療方法又は予防方法に関する。
【0011】
本発明の一態様は、1型糖尿病、敗血症ショック、多発性硬化症、IBD又はクローン病のような自己免疫性疾患にかかった動物の治療方法であって、その動物にジペプチジルペプチダーゼIV(DPIV)阻害剤を投与することを含むものに関し、ここで、該阻害剤の投与は、免疫抑制を誘導させ且つ組織再生のために必要なポリペプチドホルモンの体内動態を調節する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】ボロ−Pro化合物の合成を表す図である。
【図2】シクロヘキシルグリシン−ボロ−Alaの合成を示す図である。
【図3】pH8でのシクロヘキシルグリシン−ボロ−Alaの不活性化曲線の経時変化を示す図である。
【図4】シクロヘキシルグリシン−ボロ−Alaの投与前及び投与1時間後のラット血清試料から測定されるようなDPPIV酵素活性を例示する棒グラフ図である。
【図5】対照と比較した、Val−ボロ−Pro又はシクロヘキシルグリシン−ボロ−Alaの投与を受けたNODマウスにおける1型糖尿病の発生率の経時変化を示す図である。
【図6】処理の開始後120日目での対照と比較したVal−ボロ−Pro又はシクロヘキシルグリシン−ボロ−Alaの投与を受けたNODマウスにおける1型糖尿病の発生率を例示する棒グラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明の詳細な説明
i.本発明の大要
本発明は、一般に、1型糖尿病、敗血症ショック、多発性硬化症、IBD又はクローン病のような動物の自己免疫疾患を予防し、低減させ、又は消滅させるための方法及び組成物を提供する。以下に詳しく説明するように、この主題の方法は、1種以上のジペプチジルペプチダーゼ阻害剤、具体的にはジペプチジルペプチダーゼIV(DPIV)酵素又は同様の特異性の他の酵素の阻害剤を含む組成物を、組織再生を生じさせる態様(例えば、組織量の増加が明らかになり得るような)でペプチドホルモンの体内動態を調節する量で動物に投与することを包含する。いかなる特定の理論にも拘束されないが、この疾患の自己免疫成分を抑制するのに十分な(標的組織に対する細胞性及び/又体液性応答を減少させるような)量のDPIV阻害剤を送達させることが有用であるかもしれない。その他の免疫抑制剤も併せて投与できる。
【0014】
例えば、ある具体例では、この方法は、DPIV阻害剤を、好ましくは24時間中所定の時間に1型糖尿病、敗血症ショック、多発性硬化症、IBD又はクローン病に関わる1種以上の異常な兆候を改善させるのに有効な量で投与することを包含する。
【0015】
本発明は、自己免疫疾患の結果として損傷し又は破壊された組織を、DPIVによる1種以上のペプチドホルモンの蛋白質加水分解又はいくつかの他の蛋白質加水分解活性を阻害することにより様々な異なるポリペプチドホルモンの半減期を変更させることによって再生させるための方法及び組成物を提供する。
【0016】
主題の方法は、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、グルカゴン様ペプチド−2(GLP−2、PG126〜158)、グリセンチン(PG1〜69に相当する)、オキシントモジュリン(PG33〜69)、グリセンチン類縁膵臓ポリペプチド(GRRP、PG1〜30)、介在ペプチド−2(IP−2、PG111〜122アミド)、グルコース依存性インスリン分泌性ペプチド、血管作動性腸管ポリペプチド(VIP)、バソスタチンI及びII、ペプチドヒスチジンメチオニン(PHM)、ペプチドヒスチジンイソロイシン(PHI)、セクレチン、胃抑制ペプチド、ガストリン産生ペプチド(GRP)、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)、ヘロスペクチン、ヘロデルミン、下垂体細胞アデニレートシクラーゼ活性ペプチド(PACAP、PACAP27及びPACAP38)及びPACAP類縁ペプチド(PRP)並びにカルシトニン及びセクレチンを含めてプログルカゴン由来ペプチドの半減期を増大させるために使用できる。
【0017】
例えば、自己免疫性(1型)糖尿病は、インスリン分泌の原因である膵島β細胞のアポトーシス破壊に至る。グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)のアナログであるエキセンジン−4のようなポリペプチドホルモンがβ細胞の再生及び増殖の両方のプロセスによって膵臓の再生及びβ細胞量の増加を刺激することが示された。エキセンジン−4の直接的な影響であるβ細胞の新生についての裏付けは、胆管細胞がmRNA及び蛋白質レベルの両方でGLP−1受容体を発現したという知見に基づく(Xu外,Diabetes 48:2270−2276(1999))。従って、GLP−1及びそのアナログの血漿内半減期の調節は、新規な治療法では、β細胞の成長及びβ細胞量が減少した糖尿病個体に投与されるときに分化を刺激することが期待できる。
【0018】
さらに、GLP−1及びその長期作用性GLP−1アゴニストのエキセンジン−4は、マウスに投与されたときに、膵臓中のIDX−1ホメオドメイン蛋白質の発現を刺激する。免疫反応性IDX−1及びIDX−1プロモーターによって働くLacZレポーター遺伝子から発現するβ−ガラクトシダーゼの両方の発現は、膵管及び膵臓外分泌腺で起こる。また、IDX−1が膵臓の成長にとって必要であり、しかも胞状組織における膵管及び小葉中心性末端管の上皮が新生β細胞(β細胞新生)の分化源であることも知られている(Stoffers外,Diabetes 49:741−748(2000))。従って、GLP−1及びそのアナログの血漿内半減期の調節も同様に新規な治療法においてβ細胞新生を刺激することが期待できる。
【0019】
さらに、炎症性サイトカインによる誘導性一酸化窒素合成酵素(iNOS)の活性化は、β細胞の破壊を仲介するものであると考えられる。近年の発見により、神経ペプチドである下垂体細胞アデニレートシクラーゼ活性ペプチド(PACAP)(その分布が膵臓神経細胞内に確認された)がサイトカイン活性化マクロファージの一酸化窒素(NO)産生を阻害することが示された(関谷外,Biochem Biophys Res Comm(2000),276(1):211−216)。従って、PACAP及びそのアナログの半減期の調節は、1型糖尿病の治療に有用である。
【0020】
例えば、GLP−2は、腸上皮組織の増殖の誘導を担当する因子として同定された。例えば、Drucker外,PNAS,93:7911(1996)を参照されたい。この主題の方法は、腸組織の損傷、炎症又は腸組織の切除を処置するための治療法の一部分として使用でき、例えば、この場合には、腸粘膜上皮の向上した成長及び回復が望まれる。従って、GLP−2及びそのアナログの半減期の調節は、例えば、炎症性腸疾患(IBD)のような内臓系自己免疫疾患の治療のために期待できる。
【0021】
リウマチ様関節炎(RA)は、関節の慢性炎症及びその後の軟骨と骨の破壊を特徴とする、病因が知られていない慢性及び衰弱性の自己免疫疾患である。神経ペプチドである血管作動性腸管ペプチド(VIP)は、関節炎の発生率及び度合いを有意に低減させ、関節の膨化及び軟骨と骨の破壊を完全に阻止することが示されている(Delgado,Nat Med,7(5)563−568(2001))。従って、VIP及びそのアナログの半減期の調節は、リウマチ様関節炎の治療のために期待できる。さらに、VIPそれ自体並びにより安定なVIP由来の薬剤が敗血性ショック、多発性硬化症、クローン病及び自己免疫性糖尿病のようないくつかの自己免疫性疾患の効果的な治療上の処置として使用され、又は提案されている(Gomariz,Curr Pharm Des 7(2):89−111(2001))。
【0022】
さらに、主題の方法は、膵臓ポリペプチドファミリーの一員であるペプチドYY(PYY)及び神経ペプチドY(NPY)の体内動態を改変させるために使用できる。というのは、DPIVは、受容体の選択性を改変させる態様でこれらのペプチドのプロセッシングに関わっているからである。
【0023】
また、DPIVは、成長ホルモン放出因子(GHRF)の代謝及び不活性化にも関わっている。GHRFは、グルカゴン、セクレチン、血管作動性腸管ペプチド(VIP)、ペプチドヒスチジンイソロイシン(PHI)、下垂体細胞アデニレートシクラーゼ活性ペプチド(PACAP)、胃抑制ペプチド(GIP)及びヘロデルミンを含む相同ペプチドファミリーの一員である(Kubiak外,Peptide Res,7:153(1994))。GHRFは、視床下部で分泌され、且つ下垂体前葉からの成長ホルモン(GH)の放出を刺激する。従って、この主題の方法は、ある種の成長ホルモンが欠乏した子供のための臨床治療を改善させるために使用でき、また、成人の臨床治療においては栄養を改善させ且つ身体組成(筋肉対脂肪)を変更させるために使用できる。また、この主題の方法は、獣医学の業務においては、例えば、より大量の乳生産及びより多産の家畜を生み出すためにも使用できる。
【0024】
本発明の方法で治療できるさらに別の自己免疫疾患及び異常は、全身紅はん性エリテマトーデス(SLE)、免疫脈管炎、重症筋無力症、急性免疫性関節炎、ハシモト甲状腺炎、グレーブ病、リウマチ様滑膜炎、遺伝性血管浮腫、超急性同種移植反応、異種移植反応、感染症及び敗血症、内毒素血症、強皮症、糸状球体腎炎、HIV感染、多発性硬化症、萎縮性胃炎、膵炎、アレルギー性脳脊髄炎、甲状腺中毒、交感性眼炎、アレルギー反応、多臓器不全、水疱症、蕁麻疹、クリオグロブリン血症、靱皮質部壊死、移植臓器再灌流障害、後虚血再灌流異常、ループス腎炎、クローン病、皮膚筋炎、増殖性腎炎、II型膠原誘導関節炎、Bahcet症候群、シェーグレン症候群、熱傷害、子癇前症、甲状腺炎、急性痛風性関節炎、原発性胆汁性肝硬変、髄膜炎の脳神経損傷、腎臓虚血、アナフィラキシー並びに腸炎である。
【0025】
一般に、主題の方法の阻害剤は、例えば、7500amu以下、好ましくは5000amu以下、さらに好ましくは2000amu以下、さらには1000amuの分子量を有する小分子である。好ましい具体例では、この阻害剤は経口で効力がある。
【0026】
好ましい具体例では、本発明のDPIV阻害剤は、10nM以下、さらに好ましくは0.1nM以下、さらに好ましくは0.01nM以下のDPIVについてのKiを有する。実際に、ピコモル及びさらにフェムトモルの範囲のKi値を有する阻害剤が意図される。
【0027】
好ましくは、この主題の方法に使用される化合物は、例えば、組織再生をミクロモル以下の範囲、さらに好ましくはナノモル以下の範囲、さらに好ましくはピコモル又はフェムトモルの範囲で促進させるペプチドホルモンの血漿内半減期の増大のような所望の生物学的効果のためのEC50を有している。
【0028】
ある具体例では、主題の阻害剤は、例えば、一般には、標的の蛋白質加水分解活性の基質特異性のためCα置換基の選択によって最適化されるペプチジル化合物(ペプチドミメティックを含む)である。これらのペプチジル化合物は、適宜にセリン型、システイン型又はアスパラギン酸型プロテアーセの阻害を促進させる、切断されやすいペプチド結合の代わりになるようなある種の官能基を含む。例えば、この阻害剤は、ペプチジルα−ジケトン又はペプチジルα−ケトエステル、ペプチドハロアルキルケトン、ペプチド弗化スルホニル、ペプチジルボロン酸エステル、ペプチドエポキシド、ペプチジルジアゾメタン、ペプチジルホスホネート、イソクマリン、ベンゾキサジン−4−オン、カルバミン酸エステル、イソシアン酸エステル、イサト酸無水物などであることができる。このような官能基は、その他のプロテアーゼ阻害剤に与えられており、これらの合成のための一般的な経路が知られている。例えば、「Angelastro外,J.Med.Chem.,33:11−13(1990)」、「Bey外,EPO363284号」、「Bey外,EPO364344号」、「Grubb外,WO88/10266号」、「樋口外,EPO393457号」、「Ewoldt外,Molecular Immunology,29(6):713−721(1992)」、「Hernandez外,Journal of Medicinal Chemistry,35(6):1121−1129(1992)」、「Vlasak外,J.Virology,63(5):2056−2062(1989)」、「Hudig外,J.Immunol,147(4):1360−1368(1991)」、「Odakc外,Biochemistry,30(8):2217−2227(1991)」、「Vijayalakshmi外,Biochemistry,30(8):2175−2183(1991)」、「Kam外,Thrombosis and Haemostasis,64(1):133−137(1990)」、「Powers外,J.Cell.Biochem.,39(1):33−46(1989)」、「Powers外,Proteinase Inhibitors,Barrett外著,Elsevier,pp.55−152(1986)」、「Powers外,Biochemistry,29(12):3108−3118(1990)」、「Oweida外、Thrombosis Research,58(2):391−397(1990)」、「Hudig外,Molecular Immunology,26(8):793−798(1989)」、「Orlowski外,Archives of Biochemistry and Biophysics,269(1):125−136(1989)」、「Zunino外,Biochimca et Biophisica Acta.,967(3):331−340(1988)」、「Kam外,Biochemistry,27(7):2547−2557(1988)」、「Parkes外,Biochem J.,230:509−516(1985)」、「Green外,J.Biol.Chem.,256:1923−1928(1981)」、「Angliker外,Biochem.J.,241:871−875(1987)」、「Puri外,Arch.Biochem.Biophys.,27:346−358(1989)」、「花田外,Proteinase Inhibitors:Medical and Biological Aspects,勝沼外著,Springer−Verlag,pp.25−36(1983)」、「梶原外,Biochem.Int.,15:935−944(1987)」、「Rao外、Thromb.Res.,47:635−637(1987)」、「辻中外,Biochem.Biophys.Res.Commun.,153:1201−1208(1988)」を参照されたい。また、Bachovchin外の米国特許第4935493号、Bachovchin外の米国特許第5462928号、Powers外の同5543396号、Hanko外の同5296604号及びFerringのPCT公開PCT/GB94/02615号も参照されたい。
【0029】
その他の具体例では、この阻害剤は、例えば、本明細書に記載されるような薬剤スクリーニングアッセイによって同定できる非ペプチジル化合物である。これらの阻害剤は、単に例示であるが、合成有機化合物、天然産物、核酸又は炭水化物であることができる。
【0030】
本発明の方法に使用するための化合物の代表的な種類は、次の一般式(PCT特許出願第PCT/US99/02294号に記載されるような)によって表される。
【化1】

この式において、
AはN及びCα炭素を含む4〜8員の複素環を表し、
ZはC又はNを表し、
Wは標的プロテアーゼの活性部位残基と反応する官能基、例えば、−CN、−CH=NR5
【化2】

を表し、
1は、C末端結合アミノ酸残基若しくはアミノ酸アナログ又はC末端結合ペプチド若しくはペプチドアナログ又はアミノ保護基又は
【化3】

を表し、
2は存在せず又は環Aに対する1個以上の置換基を表し、そのそれぞれは、独立してハロゲン、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、カルボニル(カルボキシル、エステル、ホルメート又はケトンのような)、チオカルボニル(チオエステル、チオアセテート又はチオホルメート)、アミノ、アシルアミノ、アミド、シアノ、ニトロ、アジド、スルフェート、スルホネート、スルホンアミド、−(CH2m−R7、−(CH2m−OH、−(CH2m−O−低級アルキル、−(CH2m−O−低級アルケニル、−(CH2n−O−(CH2m−R7、−(CH2m−SH、−(CH2m−S−低級アルキル、−(CH2m−S−低級アルケニル、−(CH2n−S−(CH2m−R7であることができ、
XがNである場合には、R3は水素を表し、XがCである場合には、R3は水素又はハロゲン、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、カルボニル(カルボキシル、エステル、ホルメート又はケトンのような)、チオカルボニル(チオエステル、チオアセテート又はチオホルメートのような)、アミノ、アシルアミノ、アミド、シアノ、ニトロ、アジド、スルフェート、スルホネート、スルホンアミド、−(CH2m−R7、−(CH2m−OH、−(CH2m−O−低級アルキル、−(CH2m−O−低級アルケニル、−(CH2n−O−(CH2m−R7、−(CH2m−SH、−(CH2m−S−低級アルキル、−(CH2m−S−低級アルケニル、−(CH2n−S−(CH2m−R7を表し、
5は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、−C(X1)(X2)X3、−(CH2m−R7、−(CH2n−OH、−(CH2n−O−アルキル、−(CH2n−O−アルケニル、−(CH2n−O−アルキニル、−(CH2n−O−(CH2m−R7、−(CH2n−SH、−(CH2n−S−アルキル、−(CH2n−S−アルケニル、−(CH2n−S−アルキニル、−(CH2n−S−(CH2m−R7、−C(O)C(O)NH2、−C(O)C(O)OR'7を表し、
6は、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、−(CH2m−R7、−(CH2m−OH、−(CH2m−O−アルキル、−(CH2m−O−アルケニル、−(CH2m−O−アルキニル、−(CH2m−O−(CH2m−R7、−(CH2m−SH、−(CH2m−S−アルキル、−(CH2m−S−アルケニル、−(CH2m−S−アルキニル、−(CH2m−S−(CH2m−R7
【化4】

を表し、
7は、それぞれの存在について独立して、置換又は非置換のアリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル又は複素環を表し、
R'7は、それぞれの存在について独立して、水素又は置換若しくは非置換のアルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル又は複素環を表し、
1及びY2は、独立して、OH又は、Y1とY2が共に環であってその環構造中に5〜8個の原子を有するものを形成する場合には環状誘導体を含めて、ヒドロキシル基に加水分解され得る基であることができ、
50はO又はSを表し、
51はN3、SH2、NH2、NO2又はOR'7を表し、
52は、水素、低級アルキル、アミン、OR'7若しくは製薬上許容できる塩を表し、又はR51とR52は、これらのものが結合する燐原子と共に複素環であってその環構造に5〜8個の原子を有するものを完成させ、
1はハロゲンを表し、
2及びX3は、それぞれ独立して水素又はハロゲンを表し、
mはゼロ又は1〜8の範囲の整数であり、
nは1〜8の範囲の整数である。
【0031】
好ましい具体例では、環Aは、例えば、次式:
【化5】

によって表される5、6又は7員環であり、より好ましくは、5又は6員環である。この環は、随意としてさらに置換されていてよい。
【0032】
好ましい具体例では、Wは、
【化6】

を表す。
【0033】
好ましい具体例では、R1は、次式:
【化7】

(式中、R36は小疎水性基、例えば、低級アルキル若しくはハロゲンであり、R38は水素であり、又はR36とR37は、上記Aについて定義されるように、共にN及びCα炭素を含む4〜7員の複素環を形成し、R40はC末端結合アミノ酸残基若しくはアミノ酸アナログ又はC末端結合ペプチド若しくはペプチドアナログ又はアミノ保護基を表す。)である。
【0034】
好ましい具体例では、R2は存在せず、又は低級アルキル若しくはハロゲンのような小疎水性基を表す。
【0035】
好ましい具体例では、R3は水素又は低級アルキル若しくはハロゲンのような小疎水性基である。
【0036】
好ましい具体例では、R5は水素又はハロゲン化低級アルキルである。
【0037】
好ましい具体例では、X1は弗素であり、X2及びX3は、ハロゲンである場合には弗素である。
【0038】
また、均等物と考えられるものは、ボロン酸エステル及びハライドを含めて、加水分解によって上記化合物のうち任意のものに変換できる任意の化合物であり、カルボニル均等物として、アセタール、ヘミアセタール、ケタール、ヘミケタール及び環状ジペプチドアナログが挙げられる。
【0039】
より長いペプチド配列は、ある種のプロテアーゼの阻害にとって必要であり、且つ場合によってはこの阻害の特異性を向上させる。
【0040】
好ましい具体例では、この主題の方法は、DPIV阻害剤として、アミノ酸のボロン酸アナログを使用する。例えば、本発明は、この主題の方法においてボロ−プロリル誘導体を使用することを意図している。本発明の代表的なボロン酸誘導阻害剤は、次の一般式:
【化8】

で表される。この式において、
1は、C末端結合アミノ酸残基若しくはアミノ酸アナログ又はC末端結合ペプチド若しくはペプチドアナログ又はアミノ保護基又は次式:
【化9】

を表し、
6は、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、−(CH2m−R7、−(CH2m−OH、−(CH2m−O−アルキル、−(CH2m−O−アルケニル、−(CH2m−O−アルキニル、−(CH2m−O−(CH2m−R7、−(CH2m−SH、−(CH2m−S−アルキル、−(CH2m−S−アルケニル、−(CH2m−S−アルキニル、−(CH2m−S−(CH2m−R7、次式:
【化10】

を表し、
7はアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル又は複素環を表し、
8及びR9は、それぞれ独立して、水素、アルキル、アルケニル、−(CH2m−R7、−C(=O)−アルキル、−C(=O)−アルケニル、−C(=O)−アルキニル、−C(=O)−(CH2m−R7を表し、又はR8とR9は、これらのものが結合するN原子と共に複素環であってその環構造中に4〜8個の原子を有するものを完成させ、
11及びR12は、それぞれ独立して、水素、アルキル若しくは製薬上許容できる塩を表し、又はR11とR12は、これらのものが結合するO−B−O原子と共に複素環であってその環構造中に5〜8個の原子を有するものを完成させ、
mはゼロ又は1〜8の範囲の整数であり、
nは1〜8の範囲の整数である。
【0041】
その他の具体例では、主題のDPIV阻害剤は、プロリンのアルデヒドアナログ又はプロリル誘導体を包含する。本発明の代表的なアルデヒド誘導阻害剤は、次の一般式:
【化11】

で表される。この式において、
1は、C末端結合アミノ酸残基若しくはアミノ酸アナログ又はC末端結合ペプチド若しくはペプチドアナログ又はアミノ保護基又は
【化12】

を表し、
6は、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、−(CH2m−R7、−(CH2m−OH、−(CH2m−O−アルキル、−(CH2m−O−アルケニル、−(CH2m−O−アルキニル、−(CH2m−O−(CH2m−R7、−(CH2m−SH、−(CH2m−S−アルキル、−(CH2m−S−アルケニル、−(CH2m−S−アルキニル又は−(CH2m−S−(CH2m−R7
【化13】

を表し、
7はアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル又は複素環を表し、
8及びR9は、それぞれ独立して、水素、アルキル、アルケニル、−(CH2m−R7、−C(=O)−アルキル、−C(=O)−アルケニル、−C(=O)−アルキニル、−C(=O)−(CH2m−R7を表し、又はR8とR9は、これらのものが結合するN原子と共に複素環であってその環構造中に4〜8個の原子を有するものを完成させ、
mはゼロ又は1〜8の範囲の整数であり、
nは1〜8の範囲の整数である。
【0042】
さらなる具体例では、主題のDPIV阻害剤は、アミノ酸のハロ−メチルケトンアナログである。この種類の代表的な阻害剤としては、次の一般式:
【化14】

で表される化合物が挙げられ、この式において、
1は、C末端結合アミノ酸残基若しくはアミノ酸アナログ又はC末端結合ペプチド若しくはペプチドアナログ又はアミノ保護基又は
【化15】

を表し、
6は、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、−(CH2m−R7、−(CH2m−OH、−(CH2m−O−アルキル、−(CH2m−O−アルケニル、−(CH2m−O−アルキニル、−(CH2m−O−(CH2m−R7、−(CH2m−SH、−(CH2m−S−アルキル、−(CH2m−S−アルケニル、−(CH2m−S−アルキニル若しくは−(CH2m−S−(CH2m−R7
【化16】

を表し、
7はアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル又は複素環を表し、
8及びR9は、それぞれ独立して、水素、アルキル、アルケニル、−(CH2m−R7、−C(=O)−アルキル、−C(=O)−アルケニル、−C(=O)−アルキニル、−C(=O)−(CH2m−R7を表し、又はR8とR9は、これらのものが結合するN原子と共に複素環であってその環構造中に4〜8個の原子を有するものを完成させ、
1、X2及びX3は、それぞれ水素又はハロゲンを表し、
mはゼロ又は1〜8の範囲の整数であり、
nは1〜8の範囲の整数である。
【0043】
好ましい具体例では、DPIV阻害剤は、ペプチド又はペプチドミメティックであってそのP1特異性位置にプロリル基若しくはそのアナログを含み且つそのP2特異性位置に非極性アミノ酸、例えば、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン若しくはメチオニンのような非極性アミノ酸若しくはそのアナログを含むものである。例えば、DPIV阻害剤は、Ala−Pro若しくはPro−Proジペプチド配列又はその均等物を含むことができ、且つ次の一般式:
【化17】

で表される。
【0044】
好ましい具体例では、環Aは、例えば、次式:
【化18】

で表される5、6又は7員環である。
【0045】
好ましい具体例では、R32は、小疎水性基、例えば、低級アルキル又はハロゲンである。
【0046】
好ましい具体例では、R30は、C末端結合アミノ酸残基若しくはアミノ酸アナログ又はC末端結合ペプチド若しくはペプチドアナログ又はアミノ保護基を表す。
【0047】
好ましい具体例では、R2は存在せず、又は低級アルキル若しくはハロゲンのような小疎水性基を表す。
【0048】
好ましい具体例では、R3は水素又は低級アルキル若しくはハロゲンのような小疎水性基である。
【0049】
主題の方法に使用するための化合物の別の代表的な種類は、例えば、置換基のジアステレオマー配向を維持する(D)−Ala−(L)−Alaのペプチド及びペプチドミメティックを包含する。このような阻害剤としては、次の一般式:
【化19】

で表される化合物が挙げられ、この式において、
Wは、標的プロテアーゼの活性部位残基と反応する官能基、例えば、−CN、−CH=NR5
【化20】

を表し、
1は、C末端結合アミノ酸残基若しくはアミノ酸アナログ又はC末端結合ペプチド若しくはペプチドアナログ又はアミノ保護基又は
【化21】

を表し、
3は、水素又はハロゲン、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、カルボニル(カルボキシル、エステル、ホルメート又はケトンのような)、チオカルボニル(チオエステル、チオアセテート又はチオホルメートのような)、アミノ、アシルアミノ、アミド、シアノ、ニトロ、アジド、スルフェート、スルホネート、スルホンアミド、−(CH2m−R7、−(CH2m−OH、−(CH2m−O−低級アルキル、−(CH2m−O−低級アルケニル、−(CH2n−O−(CH2m−R7、−(CH2m−SH、−(CH2m−S−低級アルキル、−(CH2m−S−低級アルケニル、−(CH2n−S−(CH2m−R7を表し、
5は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、−C(X1)(X2)X3、−(CH2m−R7、−(CH2n−OH、−(CH2n−O−アルキル、−(CH2n−O−アルケニル、−(CH2n−O−アルキニル、−(CH2n−O−(CH2m−R7、−(CH2n−SH、−(CH2n−S−アルキル、−(CH2n−S−アルケニル、−(CH2n−S−アルキニル、−(CH2n−S−(CH2m−R7、−C(O)C(O)NH2、−C(O)C(O)OR'7を表し、
6は、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、−(CH2m−R7、−(CH2m−OH、−(CH2m−O−アルキル、−(CH2m−O−アルケニル、−(CH2m−O−アルキニル、−(CH2m−O−(CH2m−R7、−(CH2m−SH、−(CH2m−S−アルキル、−(CH2m−S−アルケニル、−(CH2m−S−アルキニル、−(CH2m−S−(CH2m−R7
【化22】

を表し、
7は、それぞれの存在について独立して、置換又は非置換のアリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル又は複素環を表し、
R'7は、それぞれの存在について、水素又は置換若しくは非置換のアルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル又は複素環を表し、
61及びR62は、独立して、小疎水性基を表し、
1及びY2は、独立して、OH又は、Y1とY2が共に環であってその環構造中に5〜8個の原子を有するものを形成する場合には環状誘導体(ピナコールなどのような)を含めて、ヒドロキシル基に加水分解され得る基であり、
50はO又はSを表し、
51はN3、SH2、NH2、NO2又はOR'7を表し、
52は、水素、低級アルキル、アミン、OR'7若しくは製薬上許容できる塩を表し、又はR51とR52は、これらのものが結合する燐原子と共に複素環式環であってその環構造に5〜8個の原子を有するものを完成させ、
1はハロゲンを表し、
2及びX3は、それぞれ独立して水素又はハロゲンを表し、
mはゼロ又は1〜8の範囲の整数であり、
nは1〜8の範囲の整数である。
【0050】
好ましい具体例では、R1は、次式:
【化23】

(式中、R36は小疎水性基、例えば、低級アルキル若しくはハロゲンであり、R38は水素であり、又はR36とR37は、上記Aについて定義されるように、共にN及びCα炭素を含む4〜7員の複素環を形成し、R40はC末端結合アミノ酸残基若しくはアミノ酸アナログ又はC末端結合ペプチド若しくはペプチドアナログ又はアミノ保護基を表す。)である。
【0051】
好ましい具体例では、R3は水素又は低級アルキル若しくはハロゲンのような小疎水性基である。
【0052】
好ましい具体例では、R5は水素又はハロゲン化アルキルである。
【0053】
好ましい具体例では、X1は弗素であり、X2及びX3は、ハロゲンであるならば弗素である。
【0054】
好ましい具体例では、R61及びR62は、独立して、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、t−ブチルなどのような低級アルキルを表す。
【0055】
また、オレフィン、ホスホネート、アザアミノ酸アナログなどのようなペプチドミメティックも挙げられる。
【0056】
本発明の方法に使用するための化合物の別の代表的な種類は、次式:
【化24】

で表され(2001年11月26日に出願された米国特許出願「発明の名称:Method for Regulating Glucose Metabolism,and Reagents Related Thereto」に記載されるように)、この式において、
1は、水素、ハロゲン、低級アルキル、低級アルケニル又は低級アルキニル、好ましくは、随意としてハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシなどのような1個以上の小置換基で置換された低級アルキル、例えばメチル、エチルなどを表し、
2は、分岐低級アルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、ヘテロアリール、シクロアルキル又はシクロアルキルアルキル、好ましくは、随意としてハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシなどのような1個以上の小置換基で置換された嵩高疎水性基、例えば、シクロヘキシル、t−ブチルなどを表し、
3は、水素又はアミノ保護基、好ましくは水素を表し、
4は、水素、C末端結合アミノ酸残基若しくはアミノ酸アナログ、C末端結合ペプチド若しくはペプチドアナログ、アミノ保護基又は
【化25】

を表し、
6は、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、−(CH2m−R7、−(CH2m−OH、−(CH2m−O−アルキル、−(CH2m−O−アルケニル、−(CH2m−O−アルキニル、−(CH2m−O−(CH2m−R7、−(CH2m−SH、−(CH2m−S−アルキル、−(CH2m−S−アルケニル、−(CH2m−S−アルキニル、−(CH2m−S−(CH2m−R7を表し、
7は、それぞれの存在について、置換又は非置換のアリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル又は複素環を表し、
R'7は、それぞれの存在について、水素又は置換若しくは非置換のアルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル又は複素環を表し、
Uは存在せず、又は−C(=O)−、−C(=S)−、−P(=O)(OR8)−、−S(O2)−又は−S(O)−、好ましくは−C(=O)−、−C(=S)−又は−S(O2)−を表し、
Wは、標的プロテアーゼの活性部位残基と反応する官能基、例えば、−CN、−CH=NR53
【化26】

好ましくは、
【化27】

を表し、
1及びY2は、独立して、OH又は、Y1とY2が環であってその環構造中に5〜8個の原子を有するものを介して結合する場合には環状誘導体(ピナコールなどのような)を含めて、生理的条件下でヒドロキシル基に加水分解され得る基、例えばアルコキシ、アリールオキシなどであり、
50はO又はSを表し、
51はN3、SH、NH2、NO2又はOR'7を表し、
52は、水素、低級アルキル、アミン、OR'7若しくは製薬上許容できる塩を表し、又はR51とR52は、これらのものが結合する燐原子と共に複素環であってその環構造中に5〜8個の原子を有するものを完成させ、
53は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、−C(X1)(X2)X3、−(CH2m−R7、−(CH2n−OH、−(CH2n−O−アルキル、−(CH2n−O−アルケニル、−(CH2n−O−アルキニル、−(CH2n−O−(CH2m−R7、−(CH2n−SH、−(CH2n−S−アルキル、−(CH2n−S−アルケニル、−(CH2n−S−アルキニル、−(CH2n−S−(CH2m−R7、−C(O)C(O)NH2、−C(O)C(O)OR'7を表し、
1はハロゲン、好ましくは弗素を表し、
2及びX3は、それぞれ水素又はハロゲン、好ましくは水素又は弗素を表し、
mはゼロ又は1〜8の範囲の整数であり、
nは1〜8の整数である。
【0057】
好ましい具体例では、主題の方法は、DPIV阻害剤として、アミノ酸のボロン酸アナログを使用する。例えば、本発明は、主題の方法にボロ−アラニン誘導体を使用することを意図する。本発明の代表的なボロン酸誘導阻害剤としては、次の一般式:
【化28】

で表され、この式において、
1は、水素、ハロゲン、低級アルキル、低級アルケニル又は低級アルキニル、好ましくは、随意としてハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシなどのような1個以上の小置換基で置換された低級アルキル、例えば、メチル、エチルなどを表し、
2は、分岐低級アルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、ヘテロアリール、シクロアルキル又はシクロアルキルアルキル、好ましくは、随意としてハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシなどのような1個以上の小置換基で置換された嵩高疎水性基、例えば、シクロヘキシル、t−ブチルなどを表し、
3は水素又はアミノ保護基、好ましくは水素を表し、
4は、水素、C末端結合アミノ酸残基若しくはアミノ酸アナログ、C末端結合ペプチド若しくはペプチドアナログ、アミノ保護基又は
【化29】

、好ましくは水素を表し、
6は、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、−(CH2m−R7、−(CH2m−OH、−(CH2m−O−アルキル、−(CH2m−O−アルケニル、−(CH2m−O−アルキニル、−(CH2m−O−(CH2m−R7、−(CH2m−SH、−(CH2m−S−アルキル、−(CH2m−S−アルケニル、−(CH2m−S−アルキニル、−(CH2m−S−(CH2m−R7を表し、
7は、それぞれの存在について、置換又は非置換のアリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル又は複素環を表し、
11及びR12は、それぞれ独立して、水素、アルキル若しくは製薬上許容できる塩を表し、又はR11とR12は、これらのものが結合するO−B−O原子と共に複素環であってその環構造中に5〜8個の原子を有するものを完成させ、
mはゼロ又は1〜8の範囲の整数である。
【0058】
その他の具体例では、主題のDPIVとして、アラニンのアルデヒドアナログ又はアラニル誘導体が挙げられる。本発明の代表的なアルデヒド誘導阻害剤は、次の一般式:
【化30】

で表され、この式において、
1は、水素、ハロゲン、低級アルキル、低級アルケニル又は低級アルキニル、好ましくは、随意としてハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシなどのような1個以上の小置換基で置換された低級アルキル、例えば、メチル、エチルなどを表し、
2は、分岐低級アルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、ヘテロアリール、シクロアルキル又はシクロアルキルアルキル、好ましくは、随意としてハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシなどのような1個以上の小置換基で置換された嵩高疎水性基、例えば、シクロヘキシル、t−ブチルなどを表し、
3は水素又はアミノ保護基、好ましくは水素を表し、
4は、水素、C末端結合アミノ酸残基若しくはアミノ酸アナログ、C末端結合ペプチド若しくはペプチドアナログ、アミノ保護基又は
【化31】

、好ましくは水素を表し、
6は、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、−(CH2m−R7、−(CH2m−OH、−(CH2m−O−アルキル、−(CH2m−O−アルケニル、−(CH2m−O−アルキニル、−(CH2m−O−(CH2m−R7、−(CH2m−SH、−(CH2m−S−アルキル、−(CH2m−S−アルケニル、−(CH2m−S−アルキニル、−(CH2m−S−(CH2m−R7を表し、
7は、それぞれの存在について、置換又は非置換のアリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル又は複素環を表し、
mはゼロ又は1〜8の範囲の整数である。
【0059】
さらなる具体例では、主題のDPIV阻害剤は、アミノ酸のハロ−メチルケトンアナログである。この種類の阻害剤の例としては、次の一般式:
【化32】

で表される化合物が挙げられ、この式において、
1は、水素、ハロゲン、低級アルキル、低級アルケニル又は低級アルキニル、好ましくは、随意としてハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシなどのような1個以上の小置換基で置換された低級アルキル、例えば、メチル、エチルなどを表し、
2は、分岐低級アルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、ヘテロアリール、シクロアルキル又はシクロアルキルアルキル、好ましくは、随意としてハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシなどのような1個以上の小置換基で置換された嵩高疎水性基、例えば、シクロヘキシル、t−ブチルなどを表し、
3は水素又はアミノ保護基、好ましくは水素を表し、
4は、水素、C末端結合アミノ酸残基若しくはアミノ酸アナログ、C末端結合ペプチド若しくはペプチドアナログ、アミノ保護基又は
【化33】

、好ましくは水素を表し、
6は、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、−(CH2m−R7、−(CH2m−OH、−(CH2m−O−アルキル、−(CH2m−O−アルケニル、−(CH2m−O−アルキニル、−(CH2m−O−(CH2m−R7、−(CH2m−SH、−(CH2m−S−アルキル、−(CH2m−S−アルケニル、−(CH2m−S−アルキニル、−(CH2m−S−(CH2m−R7を表し、
7は、それぞれの存在について、置換又は非置換のアリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル又は複素環を表し、
1、X2及びX3は、それぞれ水素又はハロゲンを表し、
mはゼロ又は1〜8の範囲の整数である。
【0060】
好ましい具体例では、DPIV阻害剤は、ペプチド又はペプチドミメティックであってそのP1特異性位置にアラニル基又はそのアナログを含み且つそのP2特異性位置に非天然型アミノ酸若しくはそのアナログを含むものである。例えば、DPIV阻害剤は、シクロヘキシルグリシン−Ala若しくはt−ブチルグリシン−Alaジペプチド配列又はこれらの均等物を含むことができ、そして次の一般式:
【化34】

で表され、この式において、
1は、水素、ハロゲン、低級アルキル、低級アルケニル又は低級アルキニル、好ましくは、随意としてハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシなどのような1個以上の小置換基で置換された低級アルキル、例えば、メチル、エチルなどを表し、
2は、分岐低級アルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、ヘテロアリール、シクロアルキル又はシクロアルキルアルキル、好ましくは、随意としてハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシなどのような1個以上の小置換基で置換された嵩高疎水性基、例えば、シクロヘキシル、t−ブチルなどを表し、
3は水素又はアミノ保護基、好ましくは水素を表し、
4は、水素、C末端結合アミノ酸残基若しくはアミノ酸アナログ、C末端結合ペプチド若しくはペプチドアナログ、アミノ保護基又は
【化35】

、好ましくは水素を表し、
6は、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、−(CH2m−R7、−(CH2m−OH、−(CH2m−O−アルキル、−(CH2m−O−アルケニル、−(CH2m−O−アルキニル、−(CH2m−O−(CH2m−R7、−(CH2m−SH、−(CH2m−S−アルキル、−(CH2m−S−アルケニル、−(CH2m−S−アルキニル、−(CH2m−S−(CH2m−R7を表し、
7は、それぞれの存在について、置換又は非置換のアリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル又は複素環を表し、
Wは、標的プロテアーゼの活性部位残基と反応する官能基、例えば、−CN、−CH=NR53
【化36】

好ましくは、
【化37】

を表し、
1及びY2は、独立して、OH又は、Y1とY2が環であってその環構造中に5〜8個の原子を有するものを介して結合する場合には環状誘導体(ピナコールなどのような)を含めて、生理的条件下でヒドロキシル基に加水分解され得る基、例えばアルコキシ、アリールオキシなどであり、
50はO又はSを表し、
51はN3、SH、NH2、NO2又はOR'7を表し、
52は、水素、低級アルキル、アミン、OR'7若しくは製薬上許容できる塩を表し、又はR51とR52は、これらのものが結合する燐原子と共に複素環であってその環構造中に5〜8個の原子を有するものを完成させ、
53は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、−C(X1)(X2)X3、−(CH2m−R7、−(CH2n−OH、−(CH2n−O−アルキル、−(CH2n−O−アルケニル、−(CH2n−O−アルキニル、−(CH2n−O−(CH2m−R7、−(CH2n−SH、−(CH2n−S−アルキル、−(CH2n−S−アルケニル、−(CH2n−S−アルキニル、−(CH2n−S−(CH2m−R7、−C(O)C(O)NH2、−C(O)C(O)OR'7、好ましくは、水素又はハロゲン化低級アルキルを表し、
1はハロゲン、好ましくは弗素を表し、
mはゼロ又は1〜8の範囲の整数であり、
nは1〜8の範囲の整数である。
【0061】
主題の方法に使用するための化合物の別の代表的な種類としては、例えば、立体配置を保存する(L)−Ala−(L)−シクロヘキシルグリシンのペプチド及びペプチドミメティックが挙げられる。このような阻害剤としては、次の一般式:
【化38】

で表される化合物が挙げられ、この式において
1は、水素、ハロゲン、低級アルキル、低級アルケニル又は低級アルキニル、好ましくは、随意としてハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシなどのような1個以上の小置換基で置換された低級アルキル、例えば、メチル、エチルなどを表し、
2は、分岐低級アルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、ヘテロアリール、シクロアルキル又はシクロアルキルアルキル、好ましくは、随意としてハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシなどのような1個以上の小置換基で置換された嵩高疎水性基、例えば、シクロヘキシル、t−ブチルなどを表し、
3は水素又はアミノ保護基、好ましくは水素を表し、
4は、水素、C末端結合アミノ酸残基若しくはアミノ酸アナログ、C末端結合ペプチド若しくはペプチドアナログ、アミノ保護基又は
【化39】

、好ましくは水素を表し、
6は、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、−(CH2m−R7、−(CH2m−OH、−(CH2m−O−アルキル、−(CH2m−O−アルケニル、−(CH2m−O−アルキニル、−(CH2m−O−(CH2m−R7、−(CH2m−SH、−(CH2m−S−アルキル、−(CH2m−S−アルケニル、−(CH2m−S−アルキニル、−(CH2m−S−(CH2m−R7を表し、
7は、それぞれの存在について、置換又は非置換のアリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル又は複素環を表し、
Wは、標的プロテアーゼの活性部位残基と反応する官能基、例えば、−CN、−CH=NR53
【化40】

好ましくは、
【化41】

を表し、
1及びY2は、独立して、OH又は、Y1とY2が環であってその環構造中に5〜8個の原子を有するものを介して結合する場合には環状誘導体(ピナコールなどのような)を含めて、生理的条件下でヒドロキシル基に加水分解され得る基、例えばアルコキシ、アリールオキシなどであり、
50はO又はSを表し、
51はN3、SH、NH2、NO2又はOR'7を表し、
52は、水素、低級アルキル、アミン、OR'7若しくは製薬上許容できる塩を表し、又はR51とR52は、これらのものが結合する燐原子と共に複素環であってその環構造中に5〜8個の原子を有するものを完成させ、
53は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、−C(X1)(X2)X3、−(CH2m−R7、−(CH2n−OH、−(CH2n−O−アルキル、−(CH2n−O−アルケニル、−(CH2n−O−アルキニル、−(CH2n−O−(CH2m−R7、−(CH2n−SH、−(CH2n−S−アルキル、−(CH2n−S−アルケニル、−(CH2n−S−アルキニル、−(CH2n−S−(CH2m−R7、−C(O)C(O)NH2、−C(O)C(O)OR'7、好ましくは、水素又はハロゲン化低級アルキルを表し、
1はハロゲン、好ましくは弗素を表し、
mはゼロ又は1〜8の範囲の整数であり、
nは1〜8の範囲の整数である。
【0062】
均等物とみなされるものは、加水分解によってボロン酸エステル及びハライドを含めて上記の化合物のうち任意のものに変換できる任意の化合物であり、また、カルボニル均等物として、アセタール、ヘミアセタール、ケタール、ヘミケタール及び環状ジペプチドアナログが挙げられる。
【0063】
本明細書で使用するときに、それぞれの表現の定義、例えば、アルキル、m、nなどは、これが任意の構造中で1回以上出現するときに、その同一の構造における他の部分のその定義とは無関係であることを意図する。
【0064】
主題の化合物の製薬上許容できる塩としては、例えば、非毒性の有機酸又は無機酸からの該化合物の慣用型の非毒性塩又は第四アンモニウム塩が挙げられる。例えば、このような慣用の非毒性塩としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、燐酸、硝酸などのような無機酸から誘導されるもの及び酢酸、プロピオン酸、琥珀酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パルミチン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2−アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、蓚酸、イソチオン酸などのような有機酸から製造される塩が挙げられる。
【0065】
本発明の製薬上許容できる塩は、塩基又は酸部分を含有する主題の化合物から慣用の化学的方法によって合成できる。一般には、これらの塩は、好適な溶媒中で遊離の塩基又は酸を化学量的な量又は超過量の所望の塩形成用無機酸若しくは有機酸又は塩基と反応させることによって製造される。また、主題の化合物の酸の製薬上許容できる塩も、ある種の酸を適切な量のアルカリ若しくはアルカリ土類金属メトキシド(例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム又はマグネシウム)のような塩基又はアミン、ピペリジン、ピロリジン、ベンジルアミンなどのような有機塩基又は水酸化テトラメチルアンモニウムなどのような水酸化第四アンモニウムで処理するような慣用の手順によって容易に製造される。
【0066】
上記化合物の意図される均等物としては、その他の点でそれらに相当し、しかもそれらの同一の一般的性質(例えば、GLP−1又はその他のペプチドホルモン又はその前駆体の蛋白質加水分解を阻害する能力)を有する化合物であって、意図される方法に使用する際にその化合物の効力に悪影響を及ぼさない1個以上の単純な置換基の変種になるものが挙げられる。一般に、本発明の化合物は、容易に入手できる出発原料、試薬及び慣用の合成手順を使用して、例えば、以下に記載されるような一般的な反応式で例示される方法又はその変法によって製造できる。これらの反応においては、それら自体周知の変法(ここでは言及しない)を使用することも可能である。
【0067】
この方法の他の具体例では、本発明は、例えば、TMC−2A、TMC−2B及びTMC−2C(野中,J.Antibiot(Tokyo)50(8):646−652(1997))、Lys[Z(NO2)]チアゾリジド、Lys[Z(NO2)]ピペリジド及びLys[Z(NO2)]ピロリジド(Reinhold外,Immunology,91(3):354−360(1997))、フェニルアラニンピロリジン−2−ニトリル及びアルギニル(PMC)ピロリジン−2−ニトリル(Jiang外,Res.Virol.,148(4):255−266(1997))、Ara−Pro−ニトロベンゾイルヒドロキシルアミン(田中外,Int.J.Immunopharmacol.,19(1):15−24、Ala−PipP(OPh−4−Cl)2、Ala−ProP(OPh)2、Ala−ProP(OPh−4−Cl)2(Boduszek外,J.Med.Chem.,37(23):3969−3976(1994))、ジプロチンA及びジプロチンB(梅沢外,J.AntiBiotics.,37:422−425(1984))、4−アミノ(2,6−ジメチルフェニル)フタルイミド、4−及び5−ヒドロキシ(2,6−ジエチルフェニル)フタルイミド及び4−ヒドロキシ(2,6−ジイソプロピルフェニル)フタルイミド(島沢外,Bioorg.Med.Chem.lett.,9(4):559−562(1999))のような斯界に周知のDPIV阻害剤の使用をさらに意図する。また、DPIV阻害剤の探索における最近の進展も検討した(Augustyns外,Curr.Med.Chem.,6(4):311−327)。上に挙げた引用文献及び刊行物の全ては、参考のためにここに示されている。
【0068】
ii.定義
便宜上、本発明をさらに説明する前に、本明細書、実施例及び添付の請求の範囲で使用するある種の用語をここにまとめる。
【0069】
用語「アルキル」とは、直鎖アルキル基、分岐鎖アルキル基、シクロアルキル(脂環式)基、アルキル置換シクロアルキル基及びシクロアルキル置換アルキル基を含めて、飽和脂肪族の基をいう。好ましい具体例では、直鎖又は分岐鎖アルキルは、その主鎖に30個以下の炭素原子(例えば、直鎖についてはC1〜C30、分岐鎖についてはC3〜C30)、さらに好ましくは20個以下の炭素原子を有する。同様に、好ましいシクロアルキルは、その環構造中に3〜10個の炭素原子、より好ましくは、環構造中に5、6又は7個の炭素を有する。
【0070】
さらに、明細書及び請求の範囲全体にわたって使用するときに、用語「アルキル」(又は「低級アルキル」)は、「非置換アルキル」及び「置換アルキル」の両方を包含することを意図し、この「置換アルキル」とは、炭化水素主鎖の1個以上の炭素原子上の水素を置換する置換基を有するアルキル部分をいう。このような置換基として、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボニル(カルボキシル、エステル、ホルミル又はケトンのような)、チオカルボニル(チオエステル、チオアセテート又はチオホルメートのような)、アルコキシル、ホスホリル、ホスホネート、ホスフィネート、アミノ、アミド、アミジン、イミン、シアノ、ニトロ、アジド、スルフィドリル、アルキルチオ、スルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、スルホニル、ヘテロシクリル、アラルキル又は芳香族若しくは複素環式芳香族部分を挙げることができる。当業者であれば、炭化水素鎖上で置換された部分は、それら自体適宜置換されていてよいことが分かるであろう。例えば、置換アルキルの置換基としては、アミノ、アジド、イミノ、アミド、ホスホリル(ホスホネート及びホスフィネートを含めて)、スルホニル(スルフェート、スルホンアミド、スルファモイル及びスルホネートを含めて)及びシリル基並びにエーテル、アルキルチオ、カルボニル(ケトン、アルデヒド、カルボン酸エステル及びエステルを含めて)、−CF3、−CNなどの置換及び非置換の形が挙げられる。代表的な置換アルキルは、以下に説明される。シクロアルキルは、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルキルチオ、アミノアルキル、カルボニル置換アルキル、−CF3、−CNなどでさらに置換されていてよい。
【0071】
ここで使用するときに、用語「アラルキル」とは、アリール基(例えば、芳香族又は複素環式芳香族基)で置換されたアルキル基をいう。
【0072】
用語「アルケニル」及び「アルキニル」とは、長さ及び見込まれる置換基の点で上記アルキルに類似するが、ただし、それぞれ少なくとも1個の2重又は3重結合を含有する不飽和脂肪族基をいう。
【0073】
炭素数を特に特定しない限り、ここで使用するときに「低級アルキル」とは、上に定義されるようなアルキル基であるが、ただし、その主鎖構造中に1〜10個の炭素原子、より好ましくは1〜6個の炭素原子を有するものを意味する。同様に、「低級アルケニル」及び「低級アルキニル」は、同様の鎖の長さを有する。好ましいアルキル基は低級アルキルである。好ましい具体例では、アルキルとしてここに示される置換基は低級アルキルである。
【0074】
ここで使用するときに用語「アリール」には、0〜4個のヘテロ原子を含むことができる5、6又は7員の単環芳香族基、例えば、ベンゼン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン及びピリミジンなどが含まれる。また、環構造中にヘテロ原子を有するアリール基は、「アリール複素環」又は「複素環式芳香族」とも呼ばれる。芳香族環は、1つ以上の環位置で、上記のような置換基、例えば、ハロゲン、アジド、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、スルフィドリル、イミノ、アミド、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、スルホンアミド、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、芳香族又は複素環式芳香族部分、−CF3、−CNなどで置換されていてよい。また、用語「アリール」には、2個以上の環を有する多環式系が含まれ、ここで、2個以上の炭素は、隣接する2個の環(これらの環は「縮合環」である)であって、そのうちの少なくとも1個が芳香族であり、例えば、その他の環がシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール及び/又は複素環であるものに共通している。
【0075】
用語「複素環」又は「複素環式基」とは、3〜10員環構造、より好ましくは3〜7員環構造であって、その環構造が1〜4個のヘテロ原子を含むものをいう。また、複素環は多環であることもできる。複素環式基としては、例えば、チオフェン、チアントレン、フラン、ピラン、イソベンゾフラン、クロメン、キサンテン、フェノキサチイン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、イソチアゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドール、インドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、ピリミジン、フェナントロリン、フェナジン、フェナルサジン、フェノチアジン、フラザン、フェノキサジン、ピロリジン、オキソラン、チオラン、オキサゾール、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ラクトン、アゼチジノン及びピロリジノンのようなラクタム、スルタム、スルトンなどが挙げられる。複素環式環は、1つ以上の位置で、上記のような置換基、例えば、ハロゲン、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、スルフィドリル、イミノ、アミド、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、芳香族又は複素環式芳香族部分、−CF3、−CNなどで置換されていてよい。
【0076】
用語「ポリシクリル」又は「多環式基」とは、2個以上の環(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール及び/又はヘテロシクリル)であって2個以上の炭素が2個の隣接する環(例えば、これらの環は「縮合環」である)に共通するものをいう。隣接していない原子を介して結合する環は、「架橋」環と呼ばれる。多環の環のそれぞれは、上記のような置換基、例えば、ハロゲン、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、スルフィドリル、イミノ、アミド、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、芳香族又は複素環式芳香族部分、−CF3、−CNなどで置換されていてよい。
【0077】
ここで使用するときに用語「炭素環」とは、芳香族又は非芳香族環であってその環のそれぞれの原子が炭素であるものをいう。
【0078】
ここで使用するときに用語「ヘテロ原子」とは、炭素又は水素以外の任意の原子を意味する。好ましいヘテロ原子は、窒素、酸素、硫黄及び燐である。
【0079】
ここで使用するときに、用語「ニトロ」とは−NO2を意味し、用語「ハロゲン」は−F、−Cl、−Br又は−Iを示し、用語「スルフィドリル」とは−SHを意味し、用語「ヒドロキシル」とは−OHを意味し、そして用語「スルホニル」とは−SO2−を意味する。
【0080】
用語「アミン」及び「アミノ」とは、斯界に周知であり、そして非置換アミン及び置換アミンの両方をいい、例えば、次の一般式:
【化42】

(式中、R9、R10及びR'10は、それぞれ独立して、水素、アルキル、アルケニル、−(CH2m−R8を表し、又はR9とR10は、これらのものが結合するN原子と共に複素環であってその環構造中に4〜8個の原子を有するものを完成させ、R8はアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、複素環又は多環を表し、mはゼロ又は1〜8の範囲の整数である。)
で表すことができる部分をいう。好ましい具体例では、R9又はR10のうち一つのみがカルボニルであることができ、例えば、R9、R10及び窒素は共にイミドを形成しない。さらに好ましい具体例では、R9及びR10(及び随意としてR'10)は、それぞれ独立して、水素、アルキル、アルケニル又は−(CH2m−R8を表す。従って、ここで使用するときに、用語「アルキルアミン」とは、上に定義するように、アミン基であって置換又は置換アルキルがそれに結合してなるもの、即ち、R9及びR10の少なくとも一つがアルキル基であるものを意味する。
【0081】
用語「アシルアミノ」とは、斯界に周知であり、そして次の一般式:
【化43】

(式中、R9は上に定義されるようなものであり、R'11は水素、アルキル、アルケニル又は−(CH2m−R8を表し、ここで、R8は上に定義されるようなものである)
で表すことができる部分をいう。
【0082】
用語「アミド」とは、アミノ置換カルボニルとして斯界に周知であり、そして次の一般式:
【化44】

(R9、R10は上に定義されるようなものである)
で表すことができる部分を包含する。アミドの好ましい具体例には、不安定であり得るイミドは含まれない。
【0083】
用語「アルキルチオ」とは、上に定義されるようなアルキル基であってそれに硫黄基が結合したものをいう。好ましい具体例では、「アルキルチオ」部分は、−S−アルキル、−S−アルケニル、−S−アルキニル及び−S−(CH2m−R8(式中、m及びR8は上に定義されるようなものである)で表される。代表的なアルキルチオ基としては、メチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。
【0084】
用語「カルボニル」は斯界に周知であり、これには、次の一般式:
【化45】

(式中、Xはある種の結合であり、又は酸素若しくは硫黄を表し、R11は水素、アルキル、アルケニル、−(CH2m−R8又は製薬上許容できる塩を表し、R'11は水素、アルキル、アルケニル又は−(CH2m−R8を表し、ここで、m及びR8は上に定義されるようなものである)
で表すことができるような部分が含まれる。Xが酸素であり、そしてR11又はR'11が水素ではない場合には、その式は「エステル」を表す。Xが酸素であり、そしてR11が上に定義されるようなものである場合には、その部分は、ここではカルボキシル基と呼ばれ、具体的には、R11が水素であるときには、その式は「カルボン酸」を表す。Xが酸素であり、そしてR'11が水素である場合には、その式は「ホルメート」を表す。一般に、上記式の酸素原子が硫黄で置換される場合には、その式は「チオールカルボニル」基を表す。Xが硫黄であり、そしてR11又はR'11が水素でない場合には、その式は「チオエステル」を表す。Xが硫黄であり、そしてR11が水素である場合には、その式は「チオカルボン酸」を表す。Xが硫黄であり、そしてR'11が水素である場合には、その式は「チオホルメート」を表す。一方、Xが結合であり、R11が水素でない場合には、上記式は「ケトン」基を表す。Xが結合であり、R11が水素である場合には、上記式は「アルデヒド」基を表す。
【0085】
ここで使用するときに、用語「アルコキシル」又は「アルコキシ」とは、上に定義されるように、アルキル基であってそれに酸素基が結合したものをいう。代表的なアルコキシル基としては、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、t−ブトキシなどが挙げられる。「エーテル」とは、酸素原子によって共有結合した2個の炭化水素である。従って、アルキルをエーテルにするそのアルキルの置換基は、−O−アルキル、−O−アルケニル、−O−アルキニル、−O−(CH2m−R8(式中、m及びR8は上に定義されるようなものである)で表すことができるようなアルコキシであり、又はそれに類似する。
【0086】
用語「スルホネート」は、斯界に周知であり、この用語には、次の一般式:
【化46】

(式中、R41は電子対、水素、アルキル、シクロアルキル又はアリールである)
で表すことができる部分が含まれる。
【0087】
用語「スルフェート」は斯界に周知であり、この用語には、次の一般式:
【化47】

(式中、R41は上に定義されるようなものである)
で表すことができる部分が含まれる。
【0088】
用語「スルホンアミド」は斯界に周知であり、この用語には、次の一般式:
【化48】

(式中、R9及びR'11は上に定義されるようなものである)
で表すことができる部分が含まれる。
【0089】
用語「スルファモイル」は斯界に周知であり、この用語には、次の一般式:
【化49】

(式中、R9及びR10は上に定義されるようなものである)
で表すことができる部分が含まれる。
【0090】
ここで使用するときに、用語「スルホキシド」又は「スルフィニル」とは、次の一般式:
【化50】

(式中、R44は水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アラルキル又はアリールよりなる群から選択される)
で表すことができる部分をいう。
【0091】
「ホスホリル」は、一般に、次式:
【化51】

(式中、Q1はS又はOを表し、R46は水素、低級アルキル又はアリールを表す)
で表すことができる。例えばアルキル基を置換するために使用されるときに、ホスホリルアルキルのホスホリル基は、次の一般式:
【化52】

(式中、Q1はS又はOを表し、それぞれのR46は独立して水素、低級アルキル又はアリールを表し、Q2はO、S又はNを表す)
で表すことができる。Q1がSであるときに、このホスホリル部分は「ホスホロチオエート」である。
【0092】
「ホスホロアミダイト」は、次の一般式:
【化53】

(式中、R9及びR10は上に定義されるようなものであり、Q2はO、S又はNを表す)
で表すことができる。
【0093】
「ホスホンアミダイト」は、次の一般式:
【化54】

(式中、R9及びR10は上に定義されるようなものであり、Q2はO、S又はNを表し、R48は低級アルキル又はアリールを表し、Q2はO、S又はNを表す)
で表すことができる。
【0094】
「セレノアルキル」とは、アルキル基であってそれに置換セレノ基が結合したものをいう。アルキル上で置換されていてよい代表的な「セレノエーテル」は、−Se−アルキル、−Se−アルケニル、−Se−アルキニル及び−Se−(CH2m−R7の1種から選択され、m及びR7は上に定義されるようなものである。
【0095】
類似の置換基をアルケニル及びアルキニル基にもたらして、例えば、アミノアルケニル、アミノアルキニル、アミドアルケニル、アミドアルキニル、イミノアルケニル、イミノアルキニル、チオアルケニル、チオアルキニル、カルボニル置換アルケニル又はアルキニルを生じさせることができる。
【0096】
「置換」又は「で置換された」には、このような置換が置換原子及び置換基の許容される原子価に従い、しかもこの置換が、例えば転位、環形成、離脱などによるような変換を自発的に受けない安定な化合物を生じさせるという暗黙の条件が含まれるものとする。
【0097】
ここで使用するときに、用語「置換の」とは、有機化合物のうち許容できる全ての置換基を包含することを意図する。広い態様では、この許容できる置換基としては、有機化合物の非環状及び環状、分岐及び非分岐、炭素環式及び複素環式、芳香族及び非芳香族の置換基が挙げられる。代表的な置換基としては、例えば、上記のものが挙げられる。許容できる置換基は、1種以上で、且つ適宜には同種又は異種の有機化合物であることができる。本発明の目的のために、窒素のようなヘテロ原子は、水素置換基及び/又はヘテロ原子の原子価を満足するここに記載される任意の許容できる有機化合物の置換基を有することができる。本発明は、許容できる有機化合物の置換基による任意の態様に限定されるものではない。
【0098】
「小」置換基とは、10個以下の原子のものである。
【0099】
用語「アミノ酸残基」及び「ペプチド残基」とは、アミノ酸又はペプチド分子であってそのカルボキシル基の−OHがないものを意味する。一般に、アミノ酸及び保護基を示すためにここで使用される略語は、生化学命名法に関するIUPAC−IUB委員会の推奨に基づいている(Biochemistry,11:1726−1732(1972)を参照されたい)。例えば、Met、Ile、Leu、Ala及びGlyは、それぞれ、メチオニン、イソロイシン、ロイシン、アラニン及びグリシンの「残基」を表す。この残基とは、カルボキシル基のOH部分及びα−アミノ基のH部分を除去することによって、その相当するα−アミノ酸から誘導される基を意味する。用語「アミノ酸側鎖」とは、K.D.Kopple,「Peptides and Amino Acid」,W.A.ベンジャミン社,ニューヨーク及びアムステルダム.1966年,第2項及び33項に定義されるように、−CH(NH2)COOH部分を除くアミノ酸の部分である。一般的なアミノ酸のこのような側鎖の例は、−CH2CH2SCH3(メチオニンの側鎖)、−CH2(CH3)−CH2CH3(イソロイシンの側鎖)、−CH2CH(CH32(ロイシンの側鎖)又はH−(グリシンの側鎖)である。
【0100】
大部分について、本発明の用途で使用されるアミノ酸は、蛋白質中に見出される天然型アミノ酸又はアミノ基及びカルボキシル基を含有するこのようなアミノ酸の天然型同化若しくは代謝産物である。特に好適なアミノ酸側鎖としては、次のアミノ酸:グリシン、アラニン、バリン、システイン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、メチオニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、グルタミン、アスパラギン、リシン、アルギニン、プロリン、ヒスチジン、フェニルアラニン、チロシン及びトリプトファン並びにペプチジルグリカン細菌細胞壁の構成成分として同定されたアミノ酸及びアミノ酸アナログの側鎖から選択されるものが挙げられる。
【0101】
用語「アミノ酸残基」には、ここにいう任意の特定のアミノ酸のアナログ、誘導体及び同族体並びにC末端又はN末端保護アミノ酸誘導体(例えば、N末端又はC末端保護基で修飾されたもの)がさらに含まれる。例えば、本発明は、カルボキシ、アミノ又は環形成のための他の反応性前駆体官能基をさらに与えつつ側鎖が長く又は短くされたアミノ酸アナログ並びに適切な官能基の異なる側鎖を有するアミノ酸アナログを使用することを意図する。例えば、主題の化合物として、例えば、シアノアラニン、カナバニン、ジェンコル酸、ノルロイシン、3−ホスホセリン、ホモセリン、ジヒドロキシフェニルアラニン、5−ヒドロキシトリプトファン、1−メチルヒスチジン、3−メチルヒスチジン、ジアミノピメリン酸、オルニチン又はジアミノ酪酸を挙げることができる。ここで好適な側鎖を有するその他の天然型アミノ酸代謝産物又は前駆体は当業者に周知であり、且つ本発明の範囲に包含されるであろう。
【0102】
また、アミノ酸の構造が立体異性の形をとる余地があるときには、そのようなアミノ酸の(D)及び(L)立体異性体も含まれる。ここでのアミノ酸及びアミノ酸残基の立体配置は、適切な記号(D)、(L)又は(DL)によって示され、さらに、立体配置を示さないときにも、アミノ酸又は残基は立体配置(D)、(L)又は(DL)を有し得る。本発明の化合物のうちいくつかの構造は不斉炭素原子を含むことに留意されたい。従って、このような不斉炭素から生じる異性体は、本発明の範囲内に含まれると理解すべきである。このような異性体は、伝統的な分離技術及び立体制御された合成によって実質的に純粋な形で得られ得る。本願の目的のために、特に反対の注記をしない限り、指定されたアミノ酸は、(D)又は(L)立体異性体の両方を包含すると解釈されたい。
【0103】
ここで使用するときに、語句「保護基」とは、反応性官能基を望ましくない化学反応から保護する置換基を意味する。このような保護基の例としては、カルボン酸及びボロン酸のエステル、アルコールのエーテル並びにアルデヒド及びケトンのアセタール及びケタールが挙げられる。例えば、ここで使用されるときに、語句「N末端保護基」又は「アミノ保護基」とは、合成手順中の望ましくない反応に対してアミノ酸又はペプチドのN末端を保護するために使用できる様々なアミノ保護基をいう。好適な基の例としては、例示すると、ホルミル、ダンシル、アセチル、ベンゾイル、トリフルオルアセチル、スクシニル及びメトキシスクシニルのようなアシル保護基、例えば、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)のような芳香族ウレタン保護基並びにt−ブトキシカルボニル(Boc)又は9−フルオレニルメトキシカルボニル(FMOC)のような脂肪族ウレタン保護基が挙げられる。
【0104】
上述のように、本発明のある種の化合物は、特に幾何異性又は立体異性の形で存在する。本発明は、本発明の範囲内にある限り、シス及びトランス異性体、R及びS鏡像異性体、ジアステレオマー、(D)−異性体、(L)−異性体、これらのラセミ混合物並びにこれらの他の混合物を含めて、このような化合物の全てを意図する。追加の不斉炭素原子がアルキル基のような置換基に存在していてもよい。このような異性体並びにその混合物の全てが本発明に包含されることが意図される。
【0105】
例えば、本発明の化合物のうち特定の鏡像異性体が望ましいならば、このものは、不斉合成又はキラル補助による誘導によって製造でき、そしてこの場合には、得られたジアステレオマー混合物を分離し、そしてその補助基を開裂させて純粋な所望の鏡像異性体を生じさせる。別法では、その分子がアミノのような塩基性官能基又はカルボキシルのような酸性官能基を含有する場合には、ジアステレオマー塩を適切な光学活性酸又は塩基で形成させ、その後このようにして形成されたジアステレオマーを斯界に周知の分別結晶又はクロマトグラフィー手段によって分割し、そしてその後純粋な鏡像異性体を回収する。
【0106】
本発明において、化学元素は、元素の周期律表(CAS版,Handbook of Chemistry and Physics,67版,1986−87,内表紙)に従って確認される。また、本発明において、用語「炭化水素」とは、少なくとも1個の水素及び1個の炭素原子を有する許容できる全ての化合物を含むことを意図する。広い態様では、この許容できる炭化水素としては、置換されていてもされていなくてもよい非環状及び環状、分岐及び非分岐、炭素環式及び複素環式、芳香族及び非芳香族の有機化合物が挙げられる。
【0107】
ある化合物がホルモンであるインスリンを刺激できる又はその刺激、その合成若しくはその発現を生じさせる場合には、その化合物が「インスリン分泌活性」を有するという。
【0108】
語句「〜による標的となる」とは、自己免疫疾患によって攻撃され及び/又は徐々に破壊される細胞をいう。例えば、1型糖尿病では、Tリンパ球と呼ばれる白血球が膵臓のβ細胞を攻撃し且つ徐々に破壊するサイトカインと呼ばれる免疫因子を産生する。
【0109】
iii.代表的な処方物
主題の方法のプロセスに有用な阻害剤は、ある具体例では、血中グルコースのレベルを低下させ、肥満を軽減させ、耐糖能障害を低減させ、肝臓のグルコース再生を阻害し、糖尿病性ケトアシドーシスを抑制し、血中脂質レベルを低下させ、及びアルドースレダクターゼを阻害する能力を有する。しかして、これらのものは、高血糖、肥満、高脂血症、糖尿病性合併症(網膜障害、腎症、神経障害、白内障、冠状動脈疾患及び動脈硬化を含む)の予防及び/又は治療のために、またさらには、肥満に関連する高血圧及び骨粗鬆症のために有用である。
【0110】
真性糖尿病は、相対的又は絶対的なインシュリン分泌の減少、インシュリン感受性の低下又はインシュリン耐性の低下により生じる高血糖によって特徴付けられる病気である。この病気の罹患率及び死亡率は、脈管、腎臓及び神経の合併症に起因する。経口耐糖能試験は、糖尿病を診断するために使用される臨床試験である。経口耐糖能試験では、グルコース負荷又はチャレンジに対する患者の生理的応答が評価される。グルコースを摂取した後に、グルコースチャレンジに対する患者の生理的応答が評価される。一般的には、これは、いくつかの所定の時点についての患者の血中グルコースレベル(患者の血漿、漿液又は全血中のグルコース濃度)を決定することによって達成される。
【0111】
実施例で説明するように、本発明者は、生体内で、DPIVの高親和性阻害剤がグルコース代謝の調節に関して生物学的に活性であることを示す。例えば、阻害剤Pro−ボロ−Pro(構造に関しては実施例参照)の単回注射がグルコース制御を改善させるのにそれだけで十分であった。また、Pro−ボロ−Proの単回注射は、治療効果を得るために必要な投与量以下のGLP−1に対する応答を強化することも観察された。また、本発明者は、Pro−ボロ−Pro単独での慢性(>5日)治療が空腹時血糖及び経口グルコースチャレンジに対する血糖エクスカーションの両方を低下させることも観察した。
【0112】
上に示したように、主題の方法に有用な阻害剤は、標的蛋白質加水分解活性のペプチド若しくはペプチドミメティック由来阻害剤であることができ、又は、例えば、ここに記載される薬剤スクリーニングアッセイによって同定される非ペプチド化合物であることができる。
【0113】
以下でさらに議論するように、斯界では、DPIVなどの候補阻害剤を同定し、並びにこのような阻害剤の様々な生物活性(副作用及び毒性を含めて)を評価するために様々なアッセイが利用できる。
【0114】
A.ペプチジルDPIV阻害剤の例
DPIV阻害剤の場合には、阻害剤の好ましい種類は、ジペプチドのPro−Pro又はAla−Proを主体とするペプチジル化合物である。ペプチジル阻害剤の別の好ましい種類は、ジペプチドである(D)−Ala−(L)−Alaを主体とする化合物である。多くの具体例では、ペプチジル部分をペプチドミメティックとして与えて、例えば、当量のペプチドに対して生物学的利用効率を増大させ及び/又はそれに対して血漿内半減期を増大させることが望ましい。例えば、様々なペプチド主鎖アナログが斯界において入手でき、且つ主題の方法に使用するために容易に適合する。
【0115】
代表的な具体例では、ペプチドミメティックは、ペプチドのレトロインベルソアナログから誘導できる。例示のために、主題のペプチドのある種のものは、レトロインベルソアナログ(その保護されていない状態で示す):
【化55】

として生成できる。
【0116】
このようなレトロインベルソアナログは、Sisto外の米国特許第4522752号で説明されるような斯界に周知の方法に従って作られ得る。例えば、例示のレトロインベルソアナログは以下のように生成できる。N末端アミノ酸アナログに相当するジェミナルジアミンは、Radhakrishna外,J.Org.Chem.,44:1746(1979)に記載されるように、HOBT−DCC結合条件下でN−Boc保護アミノ酸(側鎖Rを有する)をアンモニアで処理してアミドを生成させ、次いで、1,1−ビス(トリフルオルアセトキシ)ヨードベンゼン(TIB)でホフマン型転位をもたらすことによって合成される。次いで、生成物であるアミン塩を、標準的な条件下で第2アミノ酸残基(例えば、側鎖R'を有する)の側鎖保護(例えば、ベンジルエステルとして)N−FmocD−鏡像異性体に結合させて偽ジペプチドを生じさせる。米国特許第5061811号(Pinori外)に記載されるように、Fmoc(フルオレニルメトキシカルボニル)基をピペリジンのジメチルホルムアミド溶液で除去し、そして得られたアミンをビストリメチルシリルアセトアミド(BSA)でトリメチルシリル化させ、その後好適にアルキル化されたメルドラム酸の側鎖保護誘導体と縮合させてレトロインベルソトリペプチドアナログを生じさせる。次いで、この偽トリペプチドを標準的な条件下で(保護)ボロ−プロリンと結合させて保護テトラペプチドアナログを与える。この保護基を除去して最終生成物を解放し、このものをHPLCで精製する。
【0117】
別の例示具体例では、ペプチドミメティックは、次式:
【化56】

のペプチドのレトロエナンチオアナログとして誘導できる。
【0118】
このようなレトロエナンチオアナログは、市販のD−アミノ酸又はその他のアミノ酸アナログ及び標準的な固相又は液相ペプチド合成技術を使用して合成できる。
【0119】
さらに別の例示具体例では、トランスオレフィン誘導体を主題のボロノフェニルアラニンアナログで作ることができる。例えば、代表的なオレフィンアナログは、次式:
【化57】

である。このトランスオレフィンアナログは、Y.K.Shue外,Tetrahedron Letters,28:3225(1987)の方法に従って合成できる。
【0120】
ペプチドミメティックのボロノフェニルアラニン誘導体のさらに別の種類としては、次式:
【化58】

のようなホスホネート誘導体が挙げられる。このようなホスホネート誘導体の合成は、既知の合成スキームから改変できる。例えば、Loots外,in Peptide:Chemistry and Biology,(エスコムサイエンス出版,ライデン,1988,p.118)、Petrillo外,in Peptide:Structure and Function(第9回アメリカンペプチドシンポジウム会報,ビアースケミカル社,ロックランド,IL,1985)を参照されたい。
【0121】
B.非ペプチジルDPIV阻害剤
製薬産業は、候補のリード化合物として1年当たり数百万の化合物を酵素に対する阻害活性に基づいて評価するための様々な異なる戦略を開発している。主題の方法の標的であるDPIV及びその他の蛋白質加水分解酵素は、好適な阻害剤のために多数の化合物及び天然抽出物を試用するに必要な高処理量スクリーニングのタイプに適用できる。
【0122】
例示の具体例として、被検物質がDPIVを阻害する能力は、Ala−Pro−パラニトロアニリドのような比色又は蛍光基質を使用して評価できる。米国特許第5462928号を参照されたい。さらに、DPIVは精製できるため、マルチウェルプレートのような高処理量型の用途に容易に適用できる。
【0123】
手短に言えば、DPIVは、ブタ腎臓皮質(Barth外,Acta.Biol.Med.Germ.,32:157(1974)、Wolf外,Acta.Bio.Mes.Germ.,37:409(1972))又はヒト胎盤(Puschel外,Eur.J.Biochem.,126:359(1982))から精製される。例示の反応混合物は、50μMのナトリウムHepes(pH7.8)、10μMのAla−Pro−p−ニトロアニリド、6ミリ単位のDPIV及び1.0mLの全容量中2%(v/v)のジメチルホルムアミドを含む。この反応は、酵素の添加によって開始され、そして試験化合物の存在下及び非存在下での反応生成物(p−ニトロアニリド)の生成は、例えば410nmで光度測定によって検出できる。
【0124】
DPIV(又はその他の適切な酵素)に対する活性のためにスクリーニングできる代表的な化合物としては、動物、植物、菌類及び/又は微生物から単離されるようなペプチド、核酸、炭水化物、有機小分子及び天然抽出物ライブラリーが挙げられる。
【0125】
C.インスリン分泌活性のアッセイ
主題の方法に使用するのに好適な化合物を選択する際には、ある種の化合物のインスリン分泌特性が、その化合物を動物細胞に与え又はその化合物を動物に注射し、そして免疫反応性インスリン(IRI)の該動物の中膜系又は循環器系への放出をそれぞれ監視することによって決定できることに留意されたい。IRIの存在は、インスリンを特異的に検出できる放射性免疫測定法の使用によって検出できる。
【0126】
非肥満性糖尿病(NOD)マウスは、1型糖尿病(IDDM)の確立モデルである。多くの同腹子では、高血糖を伴わない腎臓膵島炎を特徴とする前糖尿病期(>20週間)が観察される。このNODマウスは、例えば、ジャクソンラボラトリーズ(バーハーバー,Me)から購入できる。代表的な具体例では、DPIV阻害剤又は対照物を含む処方物でこのマウスを処置するために、眼窩下洞の血液試料をそれぞれの動物の投与前及びその後しばらくして(例えば60分)採取する。血中グルコースの測定値は、グルコース測定器を使用するようないくつかの慣用技術のうち任意のものによって得ることができる。対照及びDPIV阻害剤を投与された動物の血中グルコースのレベルを比較する。
【0127】
また、外因性GLP−1の体内動態も非糖尿病及び1型糖尿病被検体のいずれにおいてそれに続き、そして候補のDPIV阻害剤を決定することができる。例えば、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)と、特異的放射性免疫測定法(RIA)と、酵素免疫測定法(ELISA)との組合せが使用でき、それによってそのままの生物学的に活性なGLP−1及びその代謝物が検出できる。例えば、Deacon外,Diabetes,44:1126−1131(1995)を参照されたい。例示のために、GLP−1投与後、そのままのペプチドは、NH2指示RIA又はELISAを使用して検出できると共に、これらのアッセイとCOOH末端特異的RIAとの間の濃度の差によりNH2末端切断代謝物の決定が可能になる。阻害剤がなければ、皮下GLP−1は時間依存の態様で迅速に分解され、HPLCでGLP−I(9〜36)アミドと共に溶離し且つ同一の免疫反応性プロファイルを有する代謝物を形成する。例えば、皮下GLP−1を糖尿病患者に投与した後30分で(n=8)、その代謝物は、COOH末端特異的RIAによって決定される血漿内免疫活性の増加の88.5+1.9%を占め、これは健康な被験者で測定されるレベルよりも高かった(78.4+3.2%、n=8、P<0.05)。例えば、上記Deacon外参照。また、静脈内に注入されたGLP−1もよく分解された。
【0128】
D.医薬処方物
これらの阻害剤は、処置されるべき疾患、患者の年齢、状態及び体重に応じて、斯界に周知であるような様々な形で投与できる。例えば、これらの化合物が経口で投与されるべき場合には、これらのものは、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、粉末剤又はシロップ剤として処方でき、又は非経口投与のために、これらのものは、注射剤(脊椎内、筋肉内又は皮下)、点滴製剤又は座剤として処方できる。目粘膜経路による適用のために、これらのものは、点眼剤又は眼軟膏剤として処方できる。これらの処方物は慣用の手段で製造でき、また、所望ならば、この活性成分は、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑剤、矯味矯臭剤、溶解剤、懸濁助剤、乳化剤又は被覆剤のような任意の慣用の添加剤と混合できる。投与量は、患者の症状、年齢及び体重、治療又は予防されるべき疾患の性質及び厳しさ、投与経路及び薬剤の剤形に応じて変化するであろうが、一般に、0.01〜2000mgである該化合物の毎日の投与量が成人の患者のために推薦され、そしてこれは単回投与又は分割投与で投与できる。
【0129】
グルコース代謝及び/又は1型糖尿病についての1種以上の適切な指標、例えば、耐糖能、グルコースレベル、インスリンレベル、インスリン感受性、グリコシル化ヘモグロビンを使用して処置(投与量及び/又はタイミング)の有効性を評価できるDPIV阻害剤の「時限」投与に従って、グルコース代謝が改変でき、そして1型糖尿病に関わる症状が低減又は除去できる。
【0130】
DPIV阻害剤を投与するための有効時間を確認することが必要である。これは、以下に記載されるような日常の実験によって、動物の1個体以上の群(好ましくは1群当たり少なくとも5個体の動物)を使用して達成できる。
【0131】
動物では、DPIV阻害剤処理によるインスリン分泌活性は、該阻害剤を1日の特定の時間に投与し、そしてグルコース代謝に関わる1種以上の指標を測定することによってこの投与の影響(もしあるならば)を測定し、そして処理後のこれらの指標の値と処理前のこれらの指標の値とを比較することによって評価できる。
【0132】
所定の患者における処置の有効性の点で最も有効な結果を生じさせるDPIV阻害剤の正確な投与時間及び/又はその量は、特定の化合物の活性、体内動態及び生物学的利用能、患者の生理的状態(年齢、性別、病気のタイプ、病期、一般の身体的状態、所定量の投与に対する応答性及び薬剤投与のタイプを含む)、投与経路などに依存するであろう。しかしながら、上記指針は、この処置を微調整するための、例えば、最適な投与時間及び/又は最適な投与量を決定するための基礎として使用できるが、これは被検体を監視し且つ投与量及び/又はタイミングを調節することからなる日常の実験しか必要としないであろう。
【0133】
被検体が処置されている間中、グルコース代謝が24時間中の所定の時間に適切な指標のうち1種以上を測定することによって監視される。処置(薬剤の投与量、投与時間及び剤形)は、このような監視の結果に従って調整(最適化)できる。患者は、改善の程度を決定するために同一のパラメーターを測定することによって定期的に再評価され、ここで、最初のこのような再評価は、治療の開始から4週間の終了時に典型的に行い、そしてその後の再評価は、治療中4〜8週毎、次いでその後3ヶ月毎に行う。治療は、数ヶ月又は数年にわたって続行され得るが、6ヶ月がヒトのための治療の典型的な長さである。
【0134】
薬剤の投与量の調節及びことによると投与時間の調節は、これらの再評価に基づいてなされ得る。例えば、治療の4週間後に、代謝指標の1つが改善されなかったが、少なくとも1つの他の指標が改善された場合には、この投与量は、投与時間を変化させることなく1/3ずつ増加できる。
【0135】
処置は、化合物の最適な投与量以下である少量の投与量で開始できる。その後、この投与量は、その状況下で最適な効果が達成されるまで少量の増加量で増加されるべきである。便宜のために、全毎日投与量は、所望ならばその日の間に分割でき、そして部分で投与できる。
【0136】
ここで使用するときに、語句「治療上有効な量」とは、例えば、ペプチドホルモンの蛋白質加水分解を任意の内科的治療に適用できる適当な利益/危険性の比で阻害することによっていくらかの所望の治療効果を生じさせるために有効な量、例えばDPIV阻害剤の量を意味する。
【0137】
ここで、語句「製薬上許容できる」は、音響医学的判定の範囲内にあり、過剰毒性、刺激性、アレルギー応答又はその他の問題又は合併症を伴うことなくヒト及び動物の組織と接触させる用途のために好適であり、適当な利益/危険性の比に対応する、DPIV阻害剤、材料、組成物及び/又は剤形をいうために使用される。
【0138】
ここで使用するときに、語句「製薬上許容できるキャリヤー」とは、主題の化学物質をある器官又は身体の部分を別の器官又は身体の部分に運ぶ又は輸送する際に必要とされる、液状又は固体充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒又はカプセル化材料のような製薬上許容できる材料、組成物又はベヒクルを意味する。それぞれのキャリヤーは、処方物の他の成分と相溶性があり且つ患者に対して有害でないという意味で「許容できる」ものでなけらばならない。製薬上許容できるキャリアーとしての役割を果たすことができる材料のいくつかの例としては、(1)ラクトース、グルコース及びスクロースのような糖質、(2)トウモロコシ澱粉及び馬鈴薯澱粉のような澱粉、(3)ナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロース及び酢酸セルロースのようなセルロース及びその誘導体、(4)粉末トラガカント、(5)麦芽、(6)ゼラチン、(7)タルク、(8)ココアバター及び座薬用ワックスのような賦形剤、(9)落花生油、綿実油、紅花油、胡麻油、オリーブ油、トウモロコシ油及び大豆油のようなオイル、(10)プロピレングリコールのようなグリコール、(11)グリセリン、ソルビット、マンニット及びポリエチレングリコールのようなポリオール、(12)オレイン酸エチル及びラウリン酸エチルのようなエステル、(13)寒天、(14)水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムのような緩衝剤、(15)アルギン酸、(16)発熱物質を含まない水、(17)等張食塩水、(18)リンガー溶液、(19)エチルアルコール、(20)燐酸塩緩衝液並びに(21)医薬処方物に使用されるその他の非毒性相溶性物質が挙げられる。
【0139】
用語「製薬上許容できる塩」とは、DPIV阻害剤の比較的非毒性の無機及び有機酸付加塩をいう。これらの塩は、DPIV阻害剤の最後の単離及び精製中にその場で製造でき、又は遊離塩基の形の精製DPIV阻害剤と好適な有機若しくは無機酸とを別々に反応させ、そしてこのようにして形成された塩を単離することによって製造できる。代表的な塩としては、臭化水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、燐酸塩、硝酸塩、酢酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、燐酸塩、トシル酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、琥珀酸塩、酒石酸塩、ナフチル酸塩、メシル酸塩、グルコヘプトン酸塩、ラクトビオン酸塩及びラウリルスルホン酸塩などが挙げられる(例えば、Berge外,「Pharmaceutical Salts」,J.Pharm.Sci.66:1−19(1977)を参照されたい)。
【0140】
その他の場合において、本発明の方法に有用なDPIV阻害剤は、1個以上の酸性官能基を含有することができ、そのため製薬上許容できる塩基により製薬上許容できる塩を形成させることができる。これらの場合において、用語「製薬上許容できる塩」とは、DPIV阻害剤の比較的非毒性の無機及び有機塩基付加塩をいう。これらの塩は、同様に、DPIV阻害剤の最後の単離及び精製中にその場で製造でき、或いは遊離酸の形の精製DPIV阻害剤と、製薬上許容できる金属陽イオンの水酸化物、炭酸塩若しくは重炭酸塩のような好適な塩基とを、アンモニアとを、又は製薬上許容できる有機第一、第二若しくは第三アミンとを別々に反応させることによって製造できる。代表的なアルカリ又はアルカリ土類金属塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム及びアルミニウム塩などが挙げられる。塩基付加塩の生成のために有用である代表的な有機アミンとしては、エチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジンなどが挙げられる(例えば、Berge外の上記を参照されたい)。
【0141】
また、ラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウムのような湿潤剤、乳化剤及び滑剤並びに着色剤、剥離剤、被覆剤、甘味剤、香味剤及び賦香剤、防腐剤及び酸化防止剤も組成物中に存在できる。
【0142】
製薬上許容できる酸化防止剤の例としては、(1)アスコルビン酸、システイン塩酸塩、硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなどのような水溶性酸化防止剤、(2)パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α−トコフェロールなどのような油溶性酸化防止剤、(3)クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビット、酒石酸、燐酸などのような金属キレート化剤が挙げられる。
【0143】
本発明の方法に有用な処方物としては、経口投与、経鼻投与、局所投与(口腔及び舌下を含む)、直腸内投与、膣内投与、噴霧投与及び/又は非経口投与のために好適なものが挙げられる。この処方物は、好都合なことに、単位投薬形態で与えることができ且つ調剤分野の当業者に周知の任意の方法で製造できる。単回投薬形態を生じさせるためにキャリヤー材料と組み合わせることができる活性成分の量は、処置されるべき宿主、投与の特定の形態に応じて変化するであろう。単回投薬形態を生じさせるためにキャリヤー材料と組み合わせることができる活性成分の量は、一般に、治療効果を生じさせる化合物の量であろう。一般には、100%は除外して、この量は、活性成分の約1%〜約99%、好ましくは約5%〜約70%、最も好ましくは約10%〜約30%の範囲にあるであろう。
【0144】
これらの処方物又は組成物を製造する方法は、DPIV阻害剤をキャリヤー及び随意として1種以上の副成分と結合した状態にする工程を含む。一般に、処方物は、DPIV阻害剤を液状キャリヤー若しくは細かく分割した固体キャリヤー又はその両方と均一且つ密接に結合した状態にもたらし、必要ならば、次いでその生成物を成形することによって製造される。
【0145】
経口投与に好適な処方物は、カプセル剤、カシェ剤、丸剤、錠剤、トローチ剤(風味を付けた基剤、通常はスクロース及びアラビアガム又はトラガカントを使用する)、粉末剤、顆粒剤の形又は水性若しくは非水性液体の溶液若しくは懸濁液又は水中油型若しくは油中水型エマルジョン又はエリキシル若しくはシロップ剤又はパステル剤(ゼラチン及びグリセリン又はスクロース及びアラビアガムのような不活性基剤を使用する)及び/又はうがい液としての形であることができ、それぞれは活性成分として所定量のDPIV阻害剤を含有する。また、化合物は、巨丸剤、舐剤又は軟膏としても適用できる。
【0146】
経口投与のための固体剤形(カプセル剤、錠剤、丸剤、糖剤、粉末剤、顆粒剤など)では、活性成分は、クエン酸ナトリウム若しくは燐酸二カルシウムのような1種以上の製薬上許容できるキャリヤー及び/又は次のうち任意のもの:(1)澱粉、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニット及び/又は珪酸のような充填剤又は増量剤、(2)例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニリルピロリドン、スクロース及び/又はアラビアガムのような結合剤、(3)グリセリンのような吸湿剤、(4)寒天、炭酸カルシウム、馬鈴薯澱粉又はタピオカ澱粉、アルギン酸塩、ある種の珪酸塩及び炭酸ナトリウムのような崩壊剤、(5)パラフィンのような溶解遅延剤、(6)第四アンモニウム化合物のような吸収促進剤、(7)例えば、アセチルアルコール及びグリセリンモノステアレートのような湿潤剤、(8)カオリン及びベントナイトクレーのような吸収剤、(9)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固形ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム及びこれらの2種以上の混合物のような滑剤並びに(10)着色剤と混合される。カプセル剤、錠剤及び丸剤の場合には、医薬組成物は、緩衝化剤も含むことができる。また、同様のタイプの固体組成物は、ラクトース又は乳糖並びに高分子量ポリエチレングリコールなどのような賦形剤を使用した軟質充填剤及び硬質充填ゼラチンカプセルの充填剤としても使用できる。
【0147】
錠剤は、随意として1種以上の副成分と共に打錠又は成形することによって作ることができる。打錠された錠剤は、結合剤(例えば、ゼラチン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース)、滑剤、不活性希釈剤、保存剤、崩壊剤(例えば、ナトリウムスターチグリコレート又は架橋ナトリウムカルボキシメチルセルロース)、界面活性剤又は分散剤を使用して製造できる。成形錠剤は、不活性液状希釈剤で湿らせた粉末ペプチド又はペプチドミメティックの混合物を好適な機械で成形することによって作ることができる。
【0148】
錠剤及び糖剤、カプセル剤、丸剤、顆粒剤その他の固体剤形は、随意として刻み目を入れることができ、又は医薬処方分野に周知の腸溶コーティング及びその他のコーティングのようなコーティング及びシェルで製造できる。また、これらのものは、活性成分の徐放又は制御された放出を与えるように、例えば、所望の放出プロファイルを与えるために変化する割合のヒドロキシプロピルメチルセルロース、その他の重合体マトリックス、リポソーム及び/又はミクロスフェアを使用して処方されることもできる。これらのものは、例えば、細菌保持膜によるろ過によって、又は使用直前に滅菌水又はいくつかの他の滅菌注射用媒体に溶解できる滅菌固体組成物の形の滅菌剤を取り入れることによって滅菌できる。また、これらの組成物は、随意として不透明剤を含有することができ、またこれらのものが活性成分のみを又はこれを優先的に消化管のある部分で、随意として遅延した態様で放出する組成のものであることができる。使用できる包埋組成物の例としては、重合体物質及びワックスが挙げられる。また、活性成分は、適切ならば、上記賦形剤の1種以上によりマイクロカプセル化された形であることもできる。
【0149】
経口投与のための液状投薬形態としては、製薬上許容できるエマルジョン、ミクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ及びエリキシルが挙げられる。活性剤の他に、液状投薬剤は、例えば、水又はその他の溶媒のような斯界に一般的に使用されている不活性希釈剤、溶解剤及び乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、オイル(特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ひまし油及び胡麻油)、グリセリン、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール及びソルビタン脂肪酸エステル並びにこれらの2種以上の混合物を含有できる。
【0150】
不活性希釈剤の他に、この経口組成物は、湿潤剤、乳化剤と沈殿防止剤、甘味剤、香味剤、着色剤、賦香剤及び防腐剤のような補助剤を含むこともできる。
【0151】
懸濁液は、活性DPIV阻害剤に加えて、ある種の沈殿防止剤、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビット及びソルビタンエステル、微結晶セルロース、アルミニウムメトキシド、ベントナイト、寒天及びトラガカント並びにこれらの2種以上の混合物を含有できる。
【0152】
腸内又は膣内投与のための処方物は、1種以上のDPIV阻害剤と、例えば、ココアバター、ポリエチレングリコール、座剤ワックス若しくはサリチル酸塩を含む1種以上の安定な非刺激性賦形剤又はキャリヤーとを混合させることによって製造でき且つ室温では固体であるが体温では液体であり、そのため直腸又は膣腔で溶解し、そして活性剤を放出する座剤として与えられ得る。
【0153】
また、膣内投与に好適な処方物としては、好適であることが斯界に知られているようなキャリヤーを含有する膣座剤、綿球、乳剤、ゲル剤、軟膏、発泡剤又は噴射処方物も挙げられる。
【0154】
DPIV阻害剤の局所又は経皮投与のための剤形としては、粉末剤、噴霧剤、軟膏剤、糊剤、乳剤、ローション剤、ゲル剤、溶液、パッチ及び吸入剤が挙げられる。活性成分は、滅菌条件下で製薬上許容できるキャリヤー及び任意の防腐剤、緩衝液又は必要ならば噴射剤と混合できる。
【0155】
軟膏剤、糊剤、乳剤及びゲル剤は、DPIV阻害剤の他に、動物性及び植物性油脂、オイル、ワックス、パラフィン、澱粉、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、珪酸、タルク及び酸化亜鉛並びにこれらの2種以上の混合物のような賦形剤を含有することができる。
【0156】
粉末剤及び噴霧剤は、DPIV阻害剤の他に、ラクトース、タルク、珪酸、水酸化アルミニウム、珪酸カルシウム及びポリアミド粉末又はこれらの物質の混合物を含有できる。噴霧剤は、クロロフルオロヒドロカーボン及び揮発性の非置換炭化水素、例えばブタン及びプロパンのような慣例の噴射剤をさらに含有できる。
【0157】
DPIV阻害剤は、別法では、エーロゾルによって投与できる。これは、該化合物を含有する水性エーロゾル、リポソーム製剤又は固体粒子を製造することによって達成される。非水性(例えば、フルオロカーボン噴射剤)懸濁液を使用してもよい。音響式噴霧器が好ましい。なぜならば、これらのものは、この薬剤を該化合物の分解を生じさせ得る剪断に曝すのを最小限にするからである。
【0158】
通常、水性エーロゾルは、慣用型の製薬上許容できるキャリヤー及び安定剤と共に薬剤の水溶液又は懸濁液を処方することによって作られる。このキャリヤー及び安定剤は、特定の化合物の条件によって様々であるが、典型的には、非イオン性界面活性剤(トウィーン、プルロニクス又はポリエチレングリコール)、血清アルブミンのような無害の蛋白質、ソルビタンエステル、オレイン酸、レシチン、グリシンのようなアミノ酸、緩衝剤、塩、糖質又は糖アルコールを含む。一般に、エーロゾルは、等張溶液から調製される。
【0159】
貼付剤は、制御されたDPIV阻害剤の身体への送達を与えるというさらなる利点を有する。このような投薬剤は、薬剤を適切な媒体に溶解又は分散させることによって作られ得る。また、吸収促進剤を使用して皮膚にわたるペプチドミメティックの流動を増大させることもできる。このような流動速度は、律速膜を与えること又はペプチドミメティックを重合体マトリックス若しくはゲルに分散させることのいずれかによって制御できる。
【0160】
また、眼処方物、眼軟膏、粉剤、溶液なども本発明の範囲内にあることが意図される。
【0161】
非経口投与に好適な本発明の医薬組成物は、1種以上のDPIV阻害剤を、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤、該処方物を意図された受容者の血液と等張にする溶質又は懸濁剤又は増粘剤を含有できる1種以上の製薬上許容できる滅菌等張水溶液若しくは非水性溶液、分散液、懸濁液若しくはエマルジョン又は使用直前に滅菌注射用溶液若しくは分散液に復元できる滅菌粉末と共に含む。
【0162】
本発明の医薬組成物に使用できる好適な水性及び非水性キャリヤーの例としては、水、エタノール、ポリオール(グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどのような)及びこれらの好適な混合物、オリーブ油のような植物性オイル並びにオレイン酸エチルのような注射用有機エステルが挙げられる。適当な流動性は、例えば、レシチンのような被覆材料の使用によって、分散液の場合には必要とされる粒度の維持によって、及び界面活性剤の使用によって維持できる。
【0163】
また、これらの組成物は、防腐剤、湿潤剤、乳化剤及び分散剤のようなある種の補助剤を含有することもできる。微生物の活動の防止は、様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロルブタノール、フェノールソルビン酸などを包含させることによって確実にできる。また、糖質、塩化ナトリウムなどのような等張剤を組成物に含めることも望ましいかもしれない。さらに、注射用投薬剤の長期の吸収は、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンのような吸収を遅延させる薬剤を含めることによって達成できる。
【0164】
場合によっては、薬剤の効果を引き延ばすために、皮下又は筋肉内注射からの薬剤の吸収を緩慢にすることが望ましい。これは、乏しい水溶性を有する結晶又は非晶質物質の液状懸濁液の使用によって達成できる。このときの薬剤の吸収速度はその溶解速度に依存し、この速度は同様に結晶寸法及び結晶形態に依存し得る。別法では、非経口的に投与された製剤の遅延した吸収は、薬剤をオイルベヒクルに溶解又は分散させることによって達成される。
【0165】
注射用デポー製剤は、ポリアクチド−ポリグリコリドのような生物分解性重合体でDPIV阻害剤のマイクロカプセルマトリックスを形成させることによって作られる。薬剤対重合体の比率及び使用される特定の重合体の性質によって、薬剤放出速度を制御できる。その他の生物分解性重合体の例としては、ポリオルトエステル及びポリ無水物が挙げられる。また、デポー注射用処方物は、薬剤を体組織と相容性のあるリポソーム又はミクロエマルション中に取り入れることによっても製造される。
【0166】
本発明のDPIV阻害剤が薬剤としてヒト及び動物に投与されるときに、これらのものは、それ自体で又は、例えば、0.1〜99.5%(より好ましくは、0.5〜90%)の活性成分を製薬上許容できるキャリヤーと共に含有する医薬組成物として与えられ得る。
【0167】
製剤は、経口的に、非経口的に、局所に、又は直腸に与えられ得る。これらのものは、勿論、それぞれの投与経路に好適な形式で与えられる。例えば、これらのものは、錠剤又はカプセル剤の形式で投与され、注射、吸入、点眼、軟膏、座剤などによって投与される(注射、点滴、吸入が投与で、点眼又は軟膏が局所で、座剤が腸である)。経口投与が好ましい。
【0168】
ここで使用するときに、語句「非経口投与」及び「非経口的に投与された」とは、通常は注射による経腸及び局所投与以外の投与の方式を意味し、これには、静脈内、筋肉内、動脈内、硬膜内、包内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、気管内、皮下、表皮下、関節内、被膜下、クモ膜下、脊椎内及び胸骨内注射及び点滴が含まれるが、これらに限定されない。
【0169】
ここで使用するときに、語句「全身投与」、「全身的に投与された」、「末梢投与」及び「末梢的に投与された」とは、DPIV阻害剤、薬剤又はその他の材料を中枢神経系に、このものが当該患者の系に入り、しかして代謝及びその他の同様のプロセスに付されるように直接的にではなく投与すること、例えば、皮下投与を意味する。
【0170】
これらのDPIV阻害剤は、治療のために、経口、例えば噴射によるような経鼻、直腸内、膣内、非経口、大そう内及び粉末剤、軟膏又は滴剤によるような局所(頬内及び舌下を含む)を含めて任意の好適な投与経路によってヒト及びその他の動物に投与できる。
【0171】
選択される投与経路に関わらず、本発明の好適な水和した形で使用できるDPIV阻害剤及び/又は医薬組成物は、当業者に周知の慣用方法によって製薬上許容できる剤形に処方できる。
【0172】
本発明の医薬組成物中における活性成分の実際の薬量レベルは、特定の患者、組成物及び投与形式に対する所望の治療反応を達成するのに有効な活性成分の量を、その患者にとって毒性となることなく得るように変更できる。
【0173】
E.共同投与
本発明の別の側面は、1種以上の他の治療剤をプロテアーゼ阻害剤と共に投与する共同療法を提供する。このような共同治療は、個々の治療成分の同時、連続又は分離投薬の手段によって達成できる。
【0174】
一具体例では、DPIV阻害剤を、例えば、シクロスポリン、若しくはアザチオプリン、ステロイド若しくはその両方のいずれかと併用したシクロスポリン、FK506タクロリムス(プログラフト)又はミコフェノレートモフェチル(Cellcept)のような免疫抑制剤と共に投与する。
【0175】
iv.商業的方法
本発明の一側面は、患者の、好ましくはヒトの自己免疫疾患、例えば、1型糖尿病、敗血症ショック、多発性硬化症、IBD又はクローン病の治療用又は予防用のDPIV阻害剤のようなここに記載されるような化合物を、1型糖尿病、敗血症ショック、多発性硬化症、IBD又はクローン病のような自己免疫疾患の治療及び予防のための処方物の使用を説明する説明書(書面及び/又は挿絵)及び随意として想定される副作用と薬物・薬物相互作用又は薬物・食品相互作用についての注意と共に含むキットに関する。
【0176】
さらに、本発明は、(a)滅菌医薬賦形剤及びここに記載されるような化合物、例えばDPIV阻害剤を含む医薬製剤を製造する手段と、(b)医師、病院、診療所などのような医療サービス提供者に、1型糖尿病、敗血症ショック、多発性硬化症、IBD又はクローン病のような自己免疫疾患の治療又は予防用の医薬製剤を使用する利益を売り込む手段(例えば、販売促進及び/又は情報提供のためのプレゼンテーション(例えば、展示、電話勧誘販売活動及び講義)、製品(例えば、該製剤の試験用サンプル)及び/又は資料(小冊子、パンフレット、ウェブサイト、ポスターなどを含む))とを含む医薬ビジネスを行うための方法を意図する。
【0177】
本発明の別の側面は、(a)滅菌医薬用賦形剤及びここに記載されるような化合物、例えばDPIV阻害剤を含む医薬組成物を販売するための流通網を提供する手段と、(b)患者又は医師に1型糖尿病、敗血症ショック、多発性硬化症、IBD又はクローン病のような自己免疫疾患の治療又は予防用の該医薬組成物を使用するための取り扱い資料を提供する手段とを含む医薬ビジネスを行うための方法を提供する。
【0178】
本発明のさらに別の側面は、(a)1型糖尿病、敗血症ショック、多発性硬化症、IBD又はクローン病のような自己免疫疾患の治療又は予防用のここに記載されるような化合物、例えばDPIV阻害剤の適切な医薬製剤及び投与量を決定する手段と、(b)動物における効能及び毒性についての該医薬製剤の治療プロファイリングを実施する手段と、(c)許容できる治療上の特徴を有する医薬組成物を販売するための流通網を提供する手段と、随意として(d)該製剤を医療サービス提供者に売り込むための販売部門を提供する手段とを含む医薬ビジネスを行うための方法を提供する。
【実施例】
【0179】
本発明を一般的に説明してきたが、単に本発明のある種の側面及び具体例を例示する目的のために挙げられる次の実施例を参照すればさらに容易に理解されるであろう。この実施例は、本発明を限定することを意図するものではない。
【0180】
例1:ボロプロリンの合成
図1を参照すると、出発化合物Iを、基本的にMatteson外(Organometallics,3:1284,1984)の手順によって調製するが、ただしピナンジオールをピナコールで置換している。ボロピペコリン酸及び2−アゼトジンボロン酸のような類似の化合物は、化合物Iのペンチル及びプロピルアナログを生じさせるように出発原料を適切に選択することによって調製できる。さらに、式中のBrをClで置換することができ、また式中のピナコールを他のジオール保護基、例えば、2,3−ブタンジオール及びα−ピナンジオールで置換することができる。
【0181】
化合物IIを、化合物Iと[(CH3)O3Si]2N−Li+とを反応させることによって調製する。この反応では、ヘキサメチルジシラザンをテトラヒドロフランに溶解させ、そして1当量のn−ブチルリチウムを−78℃で添加する。室温(20℃)にまで暖め、そして−78℃にまで冷却した後、1当量の化合物Iをテトラヒドロフランに添加する。この混合物をゆっくりと室温にし、そして一晩撹拌する。α−ビス(トリメチルシラン)保護アミンを、溶媒を蒸発させ、そして無水条件下でヘキサンを添加することによって単離する。不溶性残留物を窒素ブランケット下で濾過することにより除去し、化合物IIのヘキサン溶液を生じさせる。
【0182】
ボロプロリンのN−トリメチルシリル保護の形である化合物IIIを、化合物IIを100〜150℃に加熱し、そして0.06〜0.10mm圧力で66〜62℃の沸点の蒸留物を集める蒸留方法中に化合物IIの熱環化によって得る。
【0183】
ボロプロリン−ピナコール塩酸塩である化合物IVを、化合物IIIをHCl:ジオキサンで処理することによって得る。過剰のHCl及び副生成物をエーテルで粉砕することによって除去する。最終生成物を酢酸エチルからの再結晶化によって高純度で得る。
【0184】
また、ボロプロリンエステルは、化合物IIの調製の際に得られた反応混合物を無水酸で処理して1−アミノ−4−ブロムブチルボロン酸ピナコールを塩として生じさせることによって得ることもできる。環化は、この塩を塩基で中和し且つその反応物を加熱した後に生じる。
【0185】
例2:ボロプロリン−ピナコールの調製
中間体である4−ブロム−1−クロルブチルボロン酸ピナコールをMatteson外(Organometallics,3:1284,1984)の方法によって調製したが、ただし、条件を大量調整のために改変し、そしてピナンジオール保護基をピナコールで置換した。
【0186】
3−ブロムプロピルボロン酸ピナコールを、臭化アリル(173mL、2.00モル)をカテコールボラン(240mL、2.00モル)で水素化硼素化することによって調製した。カテコールボランを臭化アリルに添加し、この反応物を窒素雰囲気下で100℃で4時間にわたって加熱した。生成物である3−ブロムプロピルボロン酸カテコール(bp95〜102℃、0.25mm)を蒸留によって49%の収率で単離した。このカテコールエステル(124g、0.52モル)を、この成分を50mLのTHF中で混合し、そしてこれらのものを0℃で0.5時間及び室温で0.5時間にわたって撹拌することによってピナコール(61.5g、0.52モル)とエステル交換した。溶媒を蒸発によって除去し、そして250mLのヘキサンを添加した。カテコールを結晶状固形物として除去した。定量的除去をヘキサンで500mL及び1000mLに連続的に希釈し、そしてそれぞれの希釈液で結晶を除去することによって達成した。ヘキサンを蒸発させ、そしてこの生成物を収量177gまで蒸留した(bp60〜64℃、0.35mm)。
【0187】
4−ブロム−1−クロルブチルボロン酸ピナコールを相当するプロピルボロネートの同族体化によって調製した。塩化メチレン(50.54mL、0.713モル)を500mLのTHFに溶解させ、1.54Nのn−ブチルリチウムのヘキサン溶液(480mL、0.780モル)を−100℃でゆっくりと添加した。3−ブロムプロピルボロン酸ピナコール(178g、0.713モル)を500mLのTHGに溶解させ、該溶液の凝固点にまで冷却し、そしてこれを反応混合物に添加した。塩化亜鉛(54.4g、0.392モル)を250mLのTHGに溶解させ、0℃に冷却し、そしてこれを反応混合物にいくつかに分けて添加した。この反応混合物を室温にまでゆっくりと暖め、そして一晩撹拌した。溶媒を蒸発させ、その残留物をヘキサン(1リットル)に溶解させ、そして水で洗浄した(1リットル)。不溶性物質を捨てた。無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、そして濾過した後、溶媒を蒸発させた。この生成物を収量147gまで蒸留した(bp110〜112℃、0.200mm)。
【0188】
N−トリメチルシリル−ボロプロリンピナコールを、まず、ヘキサメチルジシリザン(20.0g、80.0ミリモル)を30mLのTHFに溶解させ、該溶液を−78℃に冷却し、そして1.62Nのn−ブチルリチウムのヘキサン溶液(49.4mL、80.0ミリモル)を添加することによって調製した。この溶液を室温にまでゆっくりと暖めた。このものを−78℃に再冷却した。そして4−ブロム−1−クロルブチルボロン酸ピナコール(23.9g、80.0ミリモル)を20mLのTHFに添加した。この混合物を室温にまでゆっくりと暖め、そして一晩撹拌した。溶媒を蒸発によって除去し、そして乾燥ヘキサン(400mL)を添加して沈殿物を生じさせ、このものを窒素雰囲気下で濾過することによって除去した。この濾過液を蒸発させ、その残留物を蒸留し、所望の生成物を19.4g得た(bp60〜62℃、0.1〜0.06mm)。
【0189】
H−ボロプロリン−ピナコール・HCl(ボロプロリン−ピナコール・HCl)を、N−トリメチルシリル−ボロプロリンピナコール(16.0g、61.7ミリモル)を−78℃に冷却し、そして4NのHCl:ジオキサン(46mL、185ミリモル)を添加することによって調製した。この混合物を−78℃で30分間及び室温で1時間撹拌した。溶媒を蒸発させ、そしてその残留物をエーテルで突き砕いて固形物を生じさせた。この粗製生成物をクロロホルムに溶解させ、そして不溶性物質を濾過によって除去した。この溶液を蒸発させ、そしてその生成物を酢酸エチルから再結晶化させて所望の化合物を11.1g得た(mp156.5〜157℃)。
【0190】
例3:ボロプロリンペプチドの合成
好適な側鎖保護基を有するN末端保護ペプチド及びアミノ酸をH−ボロプロリン−ピナコールに結合させる一般的な方法が適用できる。必要ならば、側鎖保護基及びN末端保護基は、無水HCl、HBr、トリフルオル酢酸で処理することによって、又は触媒による水素化によって除去できる。これらの手順はペプチド合成の分野において通常の知識を有するものに周知である。
【0191】
Anderson外(J.Am.Chem.Soc.89:5012,1984)の混合無水物の手順は、ペプチドの結合にとって好ましい。再度図1を参照すると、N末端保護アミノ酸又はペプチドの混合無水物は、該ペプチドをテトラヒドロフランに溶解させ、そして1当量のN−メチルモルホリンを添加することによって調製される。この溶液を−20℃に冷却し、そして1当量のクロル蟻酸イソブチルを添加する。5分後に、この混合物及び1当量のトリエチルアミン(又はその他の立体障害塩基)を、H−ボロプロリン−ピナコールを冷却クロロホルム又はテトラヒドロフランのいずれかに溶解してなる溶液に添加する。
【0192】
この反応混合物を−20℃で1時間及び室温(20℃)で1〜2時間にわたって定期的に撹拌する。溶媒を蒸発によって除去し、そしてその残留物を酢酸エチルに溶解させる。この有機溶液を0.20Nの塩酸、5%の水性重炭酸ナトリウム及び飽和水性塩化ナトリウムで洗浄する。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、そして蒸発させる。生成物をシリカゲルクロマトグラフィー又はSephadex TM LH−20及び溶媒としてメタノールを使用するゲル透過クロマトグラフィーのいずれかによって精製する。
【0193】
これまでの研究により、ピナコール保護基は、生物学的実験を実施する前に燐酸塩緩衝液中でプレインキュベートすることによってその場で除去できることが示されている(Kettner外,J.Biol.Chem.,259:15106,1984)。また、いくつかの他の方法もボロプロリンを含むペプチドからピナコールを除去し且つ最終生成物を特徴付けるために適用できる。まず、ペプチドをジエタノールアミンで処理して相当するジエタノールアミンボロン酸エステルを生じさせることができ、このものは、Kettner外(前述)に記載されるように、水性の酸又はスルホン酸置換ポリスチレン樹脂で処理することによって容易に加水分解できる。ピナコール及びピナンジオール保護基の両方は、Kinder外(J.Med.Chem.,28:1917)によって説明されるように、BC13の塩化メチレン溶液で処理することによって除去できる。最後に、遊離のボロン酸は、Kinder外(前述)によって説明されるように水性HFで処理することによってジフルオル硼素誘導体(−BF2)に変換できる。
【0194】
同様に、異なるエステル基も遊離のボロン酸と様々なジヒドロキシ化合物(例えば、S又はNのようなヘテロ原子を含有するもの)とを不活性溶媒中で反応させることによって誘導できる。
【0195】
例4:H−Ala−ボロプロリンの調製
Boc−Ala−ボロプロリンをN−Boc保護アラニンと上記のように調製されたH−ボロプロリンの混合無水物結合によって調製した。H−Ala−ボロプロリン(Ala−ボロプロリン)を、0℃でBoc保護基を3.5Mの過剰の4NのHCl−ジオキサンで除去することによって調製した。この結合及び脱保護反応を標準的な化学反応で実行した。Ala−ボロプロリンは、ナノモルの範囲のDP−IVについてのKiを有している。Boc保護Ala−ボロプロリンはDP−IVに対する親和性がない。
【0196】
Ala−ボロプロリン−ピナコール、L−Ala−D−ボロプロリン−ピナコール及びL−Ala−L−ボロプロリン−ピナコールの2種のジアステレオマーは、溶離剤として20%メタノール/酢酸エチルを使用するシリカゲルクロマトグラフィーによって部分的に分離できる。初期の画分は、NMR分析によって1種の異性体で95%富化されたものであるように見える。この画分は、DP−IVを後期の画分よりも大いに阻害したため、これは、おそらくL−ボロプロリン(L−Ala−L−ボロプロリン−ピナコール)異性体で富化されていると思われる。
【0197】
例5:シクロヘキシルグリシンボロアラニンの合成
図1を参照すると、515mg(2.00ミリモル)のBoc−L−2−(シクロヘキシル)グリシン1(Chem−Impex International)、587mg(2.26ミリモル)のHCl・ボロアラニンピナン2、332mg(2.46ミリモル)のHOBT及び671μL(4.84ミリモル)のトリエチルアミンを6mLの無水DMFに溶解してなる溶液を498mg(2.60ミリモル)のEDCで処理し、そして得られた溶液をアルゴン雰囲気下で18時間にわたって室温で撹拌した。この反応混合物を200mLの10%水性クエン酸で希釈し、そして得られた混合物を2×100mLの酢酸エチルで抽出した。一緒にした抽出液を食塩水で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、ろ過し、濃縮して透明なオイルを得た。この粗製オイルを酢酸エチル/ヘキサンを溶離剤として使用してシリカゲルでクロマトグラフィーして生成物のエステルを透明なオイルとして得た。次いで、このオイルを塩化水素のジエチルエーテル溶液(1.0M溶液、25mL)に溶解させ、そして室温で48時間撹拌した。この混合物を真空下で乾燥するまで蒸発させ、そして25mLのpH2(0.01NのHCl)のフェニルボロン酸溶液(244mg、2ミリモル)及びエーテル(25mL)に再溶解させた。30分間撹拌後、エーテル相を除去し、そして新たなエーテル(25mL)と取り替えた。この工程を4回繰り返した。次いで、水性相を凍結乾燥させ、そしてHPLCで精製して目的の化合物3を170mg(37%)得た。
【0198】
例6:ラットからの血清試料によるDPIVアッセイ
実験により、DPIVの酵素活性がシクロヘキシルグリシン−ボロアラニンで処理されたラットで有意に減少したことが示された。図4を参照されたい。4個体のラットをこの実験で使用した。2個体が雌(#3及び#9)で、2個体が雄(#10及び#11)である。血液及び血漿の試料をシクロヘキシルグリシン−ボロアラニンで処理した後1時間のラットから採取した。採取した血漿試料をシクロヘキシルグリシン−ボロアラニンのDPPIV活性について以下のように評価した。
【0199】
1.2mgのAla−Pro−p−ニトロアニリド(基質)を20mLの0.1MのHEPES,pH8,0.14MのNaCl(緩衝液)に溶解させた。
2.血清試料をマイクロタイタープレートのウェル中の基質溶液に希釈した。それぞれの試料について、10μLの血清を150μLの基質に希釈した。
3.それぞれのウェルにおけるA410の読みを血清を基質に希釈した直後に記録し、そしてほぼ1時間後に再度記録した。それぞれの読みについてのデータ収集の時間をマイクロプレート読み取りプログラムによってデータファイルに記録した。
【0200】
吸光度変化の速度を、第2の読みから第1の読みを引き、そしてそれを反応時間で割ってΔA410/時間を与えることによって得た。DPIV活性をΔA410時間-1μL-1を単位にしてプロットした。
【0201】
例7:DPIV阻害剤で処理したNODマウスにおける糖尿病の発生率
この実験を生後8〜10週間のNODマウスで開始した。マウスをVAF/SPF条件下で保持し、Val−ボロ−Pro(0.034mg/kg)又はシクロヘキシル−ボロ−Ala(0.34mg/kg)のいずれかを60日間にわたって毎日与え、そのときに自発的糖尿病の発生について観察した。このマウスを尿中の糖の排泄について検査し、糖が尿中に検出されたときには糖尿病について陽性であるとみなした。
【0202】
グラフは、時間を通して糖尿病の発生率が次第に増加することを示している(図5)。Val−ボロ−Proで処理されたNODマウスの興味深い特徴の一つは、糖尿病の兆候を示したマウスのうち数匹が一層良好になり且つ回復したことである。この実験の終了時には、Val−ボロ−Pro群のマウスは低い糖尿病発生率を有していた(図6)だけでなく、その他の群と比較して一般に良好な健康状態をも示した。
【0203】
上で引用した文献及び刊行物の全ては参考としてここに示されている。
【0204】
均等
当業者であれば、単なる日常的な実験を使用してここに記載された発明の特定の具体例に対する多くの均等物を確認することができることが分かるであろう。このような均等物は請求の範囲に包含されるものと思われる。
【0205】
本発明は、米国国立保健研究所によって与えられるNS35685のもとに米国政府の補助によってなされた。米国政府は、本発明においてある一定の権利を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1型糖尿病治療のための経口投与用の医薬組成物の製造におけるDPIV阻害剤の使用であって、該DPIV阻害剤がDPIVの高親和性阻害剤であり、しかも耐糖能障害を軽減しかつ膵臓組織再生を促進させるのに十分な量で1日1回の投与用に処方される、前記使用。
【請求項2】
阻害剤がPro−Pro、Ala−Pro及び(D)−Ala−(L)−Alaよりなる群から選択される請求項1に記載の使用。
【請求項3】
阻害剤が7500amu以下の分子量を有する請求項1に記載の使用。
【請求項4】
阻害剤が経口で有効である請求項1に記載の使用。
【請求項5】
阻害剤が次の一般式:
【化1】

(式中、
AはN及びCα炭素を含む4〜8員の複素環を表し、
ZはC又はNを表し、
Wは、−CN、−CH=NR5
【化2】

を表し(ここで、
5は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、−C(X1)(X2)X3、−(CH2m−R7、−(CH2n−OH、−(CH2n−O−アルキル、−(CH2n−O−アルケニル、−(CH2n−O−アルキニル、−(CH2n−O−(CH2m−R7、−(CH2n−SH、−(CH2n−S−アルキル、−(CH2n−S−アルケニル、−(CH2n−S−アルキニル、−(CH2n−S−(CH2m−R7、−C(O)C(O)NH2、−C(O)C(O)OR'7を表し、
7は、それぞれの存在について独立して、置換又は非置換のアリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル又は複素環を表し、
R'7は、それぞれの存在について、水素又は置換若しくは非置換のアルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル又は複素環を表し、
1及びY2は、独立して、OH又は、Y1とY2が共に環であってその環構造中に5〜8個の原子を有するものを形成する場合には環状誘導体を含めて、ヒドロキシル基に加水分解され得る基であることができ、
50はO又はSを表し、
51はN3、SH2、NH2、NO2又はOR'7を表し、
52は、水素、低級アルキル、アミン、OR'7若しくは製薬上許容できる塩を表し、又はR51とR52は、これらのものが結合する燐原子と共に複素環であってその環構造に5〜8個の原子を有するものを完成させ、
1はハロゲンを表し、
2及びX3は、それぞれ独立して水素又はハロゲンを表す。)、
1は、C末端結合アミノ酸残基若しくはアミノ酸アナログ又はC末端結合ペプチド若しくはペプチドアナログ又はアミノ保護基又は
【化3】

を表し、
2は存在せず又は環Aに対する1個以上の置換基を表し、そのそれぞれは、独立してハロゲン、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、カルボニル、チオカルボニル、アミノ、アシルアミノ、アミド、シアノ、ニトロ、アジド、スルフェート、スルホネート、スルホンアミド、−(CH2m−R7、−(CH2m−OH、−(CH2m−O−低級アルキル、−(CH2m−O−低級アルケニル、−(CH2n−O−(CH2m−R7、−(CH2m−SH、−(CH2m−S−低級アルキル、−(CH2m−S−低級アルケニル、−(CH2n−S−(CH2m−R7であることができ、
XがNであるならば、R3は水素を表し、XがCであるならば、R3は水素又はハロゲン、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、カルボニル、チオカルボニル、アミノ、アシルアミノ、アミド、シアノ、ニトロ、アジド、スルフェート、スルホネート、スルホンアミド、−(CH2m−R7、−(CH2m−OH、−(CH2m−O−低級アルキル、−(CH2m−O−低級アルケニル、−(CH2n−O−(CH2m−R7、−(CH2m−SH、−(CH2m−S−低級アルキル、−(CH2m−S−低級アルケニル、−(CH2n−S−(CH2m−R7を表し、
6は、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、−(CH2m−R7、−(CH2m−OH、−(CH2m−O−アルキル、−(CH2m−O−アルケニル、−(CH2m−O−アルキニル、−(CH2m−O−(CH2m−R7、−(CH2m−SH、−(CH2m−S−アルキル、−(CH2m−S−アルケニル、−(CH2m−S−アルキニル又は−(CH2m−S−(CH2m−R7
【化4】

を表し、
7は、それぞれの存在について独立して、置換又は非置換のアリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル又は複素環を表し、
8及びR9は、それぞれ独立して、水素、アルキル、アルケニル、−(CH2m−R7、−C(=O)−アルキル、−C(=O)−アルケニル、−C(=O)−アルキニル、−C(=O)−(CH2m−R7を表し、又はR8とR9は、これらのものが結合するN原子と共に複素環であってその環構造中に4〜8個の原子を有するものを完成させ、
mはゼロ又は1〜8の範囲の整数であり、
nは1〜8の範囲の整数である)
で表される、請求項1に記載の使用。
【請求項6】
環Aが次の一般式;
【化5】

(nは1又は2の整数である)
で表される請求項5に記載の使用。
【請求項7】
Wが次式:
【化6】

を表す請求項5に記載の使用。
【請求項8】
1が次式:
【化7】

(式中、
36は低級アルキル又はハロゲンであり、R38は水素であり、又はR36とR38は、Aについて上に定義したように、共にN及びCα炭素を含む4〜7員の複素環を形成し、
40はC末端結合アミノ酸残基若しくはアミノ酸アナログ又はC末端結合ペプチド若しくはペプチドアナログ又はアミノ保護基を表す)
を表す請求項5に記載の使用。
【請求項9】
2が存在せず又は低級アルキル又はハロゲンを表す請求項5に記載の使用。
【請求項10】
3が水素又は低級アルキル又はハロゲンである請求項5に記載の使用。
【請求項11】
5が水素又はハロゲン化低級アルキルである請求項5に記載の使用。
【請求項12】
1が弗素であり、X2とX3がハロゲンである場合には弗素である請求項5に記載の使用。
【請求項13】
阻害剤が次の一般式:
【化8】

(式中、
1は、C末端結合アミノ酸残基若しくはアミノ酸アナログ又はC末端結合ペプチド若しくはペプチドアナログ又はアミノ保護基又は
【化9】

を表し、
6は、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、−(CH2m−R7、−(CH2m−OH、−(CH2m−O−アルキル、−(CH2m−O−アルケニル、−(CH2m−O−アルキニル、−(CH2m−O−(CH2m−R7、−(CH2m−SH、−(CH2m−S−アルキル、−(CH2m−S−アルケニル、−(CH2m−S−アルキニル、−(CH2m−S−(CH2m−R7、次式:
【化10】

を表し、
7はアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル又は複素環を表し、
8及びR9は、それぞれ独立して、水素、アルキル、アルケニル、−(CH2m−R7、−C(=O)−アルキル、−C(=O)−アルケニル、−C(=O)−アルキニル、−C(=O)−(CH2m−R7を表し、又はR8とR9は、これらのものが結合するN原子と共に複素環であってその環構造中に4〜8個の原子を有するものを完成させ、
11及びR12は、それぞれ独立して、水素、アルキル若しくは製薬上許容できる塩を表し、又はR11とR12は、これらのものが結合するO−B−O原子と共に複素環であってその環構造中に5〜8個の原子を有するものを完成させ、
mはゼロ又は1〜8の範囲の整数であり、
nは1〜8の範囲の整数である)
で表される請求項1に記載の使用。
【請求項14】
阻害剤が次の一般式:
【化11】

(式中、
1は、C末端結合アミノ酸残基若しくはアミノ酸アナログ又はC末端結合ペプチド若しくはペプチドアナログ又はアミノ保護基又は
【化12】

を表し、
6は、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、−(CH2m−R7、−(CH2m−OH、−(CH2m−O−アルキル、−(CH2m−O−アルケニル、−(CH2m−O−アルキニル、−(CH2m−O−(CH2m−R7、−(CH2m−SH、−(CH2m−S−アルキル、−(CH2m−S−アルケニル、−(CH2m−S−アルキニル、−(CH2m−S−(CH2m−R7、次式:
【化13】

を表し、
7はアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル又は複素環を表し、
8及びR9は、それぞれ独立して、水素、アルキル、アルケニル、−(CH2m−R7、−C(=O)−アルキル、−C(=O)−アルケニル、−C(=O)−アルキニル、−C(=O)−(CH2m−R7を表し、又はR8とR9は、これらのものが結合するN原子と共に複素環であってその環構造中に4〜8個の原子を有するものを完成させ、
mはゼロ又は1〜8の範囲の整数であり、
nは1〜8の範囲の整数である)
で表される請求項1に記載の使用。
【請求項15】
阻害剤が次の一般式:
【化14】

(式中、
1は、C末端結合アミノ酸残基若しくはアミノ酸アナログ又はC末端結合ペプチド若しくはペプチドアナログ又はアミノ保護基又は
【化15】

を表し、
6は、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、−(CH2m−R7、−(CH2m−OH、−(CH2m−O−アルキル、−(CH2m−O−アルケニル、−(CH2m−O−アルキニル、−(CH2m−O−(CH2m−R7、−(CH2m−SH、−(CH2m−S−アルキル、−(CH2m−S−アルケニル、−(CH2m−S−アルキニル、−(CH2m−S−(CH2m−R7又は次式:
【化16】

を表し、
7は、それぞれの存在について独立して、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル又は複素環を表し、
8及びR9は、それぞれ独立して、水素、アルキル、アルケニル、−(CH2m−R7、−C(=O)−アルキル、−C(=O)−アルケニル、−C(=O)−アルキニル、−C(=O)−(CH2m−R7を表し、又はR8とR9は、これらのものが結合するN原子と共に複素環であってその環構造中に4〜8個の原子を有するものを完成させ、
1、X2及びX3は、それぞれ水素又はハロゲンを表し、
mはゼロ又は1〜8の範囲の整数であり、
nは1〜8の範囲の整数である)
で表される請求項1に記載の使用。
【請求項16】
阻害剤が次の一般式:
【化17】

(式中、
Aは5、6又は7員環であり、
Wは、−CN、−CH=NR5
【化18】

を表し(ここで、
5は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、−C(X1)(X2)X3、−(CH2m−R7、−(CH2n−OH、−(CH2n−O−アルキル、−(CH2n−O−アルケニル、−(CH2n−O−アルキニル、−(CH2n−O−(CH2m−R7、−(CH2n−SH、−(CH2n−S−アルキル、−(CH2n−S−アルケニル、−(CH2n−S−アルキニル、−(CH2n−S−(CH2m−R7、−C(O)C(O)NH2、−C(O)C(O)OR'7を表し、
7は、それぞれの存在について独立して、置換又は非置換のアリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル又は複素環を表し、
R'7は、それぞれの存在について、水素又は置換若しくは非置換のアルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル又は複素環を表し、
1及びY2は、独立して、OH又は、Y1とY2が共に環であってその環構造中に5〜8個の原子を有するものを形成する場合には環状誘導体を含めて、ヒドロキシル基に加水分解され得る基であることができ、
50はO又はSを表し、
51はN3、SH2、NH2、NO2又はOR'7を表し、
52は、水素、低級アルキル、アミン、OR'7若しくは製薬上許容できる塩を表し、又はR51とR52は、これらのものが結合する燐原子と共に複素環であってその環構造に5〜8個の原子を有するものを完成させ、
1はハロゲンを表し、
2及びX3は、それぞれ独立して水素又はハロゲンを表す。)、
2は存在せず、又は低級アルキル若しくはハロゲンであり、
3は水素又は低級アルキル若しくはハロゲンであり、
32は低級アルキル又はハロゲンであり、
30はC末端結合アミノ酸残基若しくはアミノ酸アナログ又はC末端結合ペプチド若しくはペプチドアナログ又はアミノ保護基を表す)
で表される請求項1に記載の使用。
【請求項17】
阻害剤が次の一般式:
【化19】

(式中、
Wは、−CN、−CH=NR5、次式:
【化20】

を表し、
1は、C末端結合アミノ酸残基若しくはアミノ酸アナログ又はC末端結合ペプチド若しくはペプチドアナログ又は
【化21】

を表し、
3は、水素又はハロゲン、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、カルボニル、チオカルボニル、アミノ、アシルアミノ、アミド、シアノ、ニトロ、アジド、スルフェート、スルホネート、スルホンアミド、−(CH2m−R7、−(CH2m−OH、−(CH2m−O−低級アルキル、−(CH2m−O−低級アルケニル、−(CH2n−O−(CH2m−R7、−(CH2m−SH、−(CH2m−S−低級アルキル、−(CH2m−S−低級アルケニル、−(CH2n−S−(CH2m−R7を表し、
5は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、−C(X1)(X2)X3、−(CH2m−R7、−(CH2n−OH、−(CH2n−O−アルキル、−(CH2n−O−アルケニル、−(CH2n−O−アルキニル、−(CH2n−O−(CH2m−R7、−(CH2n−SH、−(CH2n−S−アルキル、−(CH2n−S−アルケニル、−(CH2n−S−アルキニル、−(CH2n−S−(CH2m−R7、−C(O)C(O)NH2、−C(O)C(O)OR'7を表し、
6は、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、−(CH2m−R7、−(CH2m−OH、−(CH2m−O−アルキル、−(CH2m−O−アルケニル、−(CH2m−O−アルキニル、−(CH2m−O−(CH2m−R7、−(CH2m−SH、−(CH2m−S−アルキル、−(CH2m−S−アルケニル、−(CH2m−S−アルキニル、−(CH2m−S−(CH2m−R7、次式:
【化22】

を表し、
7は、それぞれの存在について、置換又は非置換のアリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル又は複素環を表し、
8及びR9は、それぞれ独立して、水素、アルキル、アルケニル、−(CH2m−R7、−C(=O)−アルキル、−C(=O)−アルケニル、−C(=O)−アルキニル、−C(=O)−(CH2m−R7を表し、又はR8とR9は、これらのものが結合するN原子と共に複素環であってその環構造中に4〜8個の原子を有するものを完成させ、
R'7は、それぞれの存在について、水素又は置換若しくは非置換のアルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル又は複素環を表し、
61及びR62は、独立して、低級アルキル又はハロゲンを表し、
1及びY2は、独立して、OH又は、Y1とY2が共に環であってその環構造中に5〜8個の原子を有するものを形成する場合には環状誘導体を含めて、ヒドロキシル基に加水分解され得る基であり、
50はO又はSを表し、
51はN3、SH2、NH2、NO2又はOR'7を表し、
52は、水素、低級アルキル、アミン、OR'7若しくは製薬上許容できる塩を表し、又はR51とR52は、これらのものが結合する燐原子と共に複素環であってその環構造に5〜8個の原子を有するものを完成させ、
1はハロゲンを表し、
2及びX3は、それぞれ独立して水素又はハロゲンを表し、
mはゼロ又は1〜8の範囲の整数であり、
nは1〜8の範囲の整数である)
で表される請求項1に記載の使用。
【請求項18】
ボロニルペプチドミメティックが次の一般式:
【化23】

(式中、
それぞれのAは独立してN及びCα炭素を含む4〜8員の複素環を表し、
2は存在せず又は環Aに対する1個以上の置換基を表し、そのそれぞれは、独立してハロゲン、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、カルボニル、チオカルボニル、アミノ、アシルアミノ、アミド、シアノ、ニトロ、アジド、スルフェート、スルホネート、スルホンアミド、−(CH2m−R7、−(CH2m−OH、−(CH2m−O−低級アルキル、−(CH2m−O−低級アルケニル、−(CH2n−O−(CH2m−R7、−(CH2m−SH、−(CH2m−S−低級アルキル、−(CH2m−S−低級アルケニル、−(CH2n−S−(CH2m−R7であることができ、
3は水素又はハロゲン、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、カルボニル、チオカルボニル、アミノ、アシルアミノ、アミド、シアノ、ニトロ、アジド、スルフェート、スルホネート、スルホンアミド、−(CH2m−R7、−(CH2m−OH、−(CH2m−O−低級アルキル、−(CH2m−O−低級アルケニル、−(CH2n−O−(CH2m−R7、−(CH2m−SH、−(CH2m−S−低級アルキル、−(CH2m−S−低級アルケニル、−(CH2n−S−(CH2m−R7を表し、
5は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、−C(X1)(X2)X3、−(CH2m−R7、−(CH2n−OH、−(CH2n−O−アルキル、−(CH2n−O−アルケニル、−(CH2n−O−アルキニル、−(CH2n−O−(CH2m−R7、−(CH2n−SH、−(CH2n−S−アルキル、−(CH2n−S−アルケニル、−(CH2n−S−アルキニル、−(CH2n−S−(CH2m−R7、−C(O)C(O)NH2、−C(O)C(O)OR'7を表し、
6は、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、−(CH2m−R7、−(CH2m−OH、−(CH2m−O−アルキル、−(CH2m−O−アルケニル、−(CH2m−O−アルキニル、−(CH2m−O−(CH2m−R7、−(CH2m−SH、−(CH2m−S−アルキル、−(CH2m−S−アルケニル、−(CH2m−S−アルキニル、−(CH2m−S−(CH2m−R7、次式:
【化24】

を表し、
7はそれぞれの存在について置換又は非置換のアリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル又は複素環を表し、
8及びR9は、それぞれ独立して、水素、アルキル、アルケニル、−(CH2m−R7、−C(=O)−アルキル、−C(=O)−アルケニル、−C(=O)−アルキニル、−C(=O)−(CH2m−R7を表し、又はR8とR9は、これらのものが結合するN原子と共に複素環であってその環構造中に4〜8個の原子を有するものを完成させ、
30はC末端結合アミノ酸残基若しくはアミノ酸アナログ又はC末端結合ペプチド若しくはペプチドアナログ又はアミノ保護基又は
【化25】

を表し、
32及びR62は、独立して、低級アルキル又はハロゲンを表し、
1及びY2は、独立して、OH又は、Y1とY2が共に環であってその環構造中に5〜8個の原子を有するものを形成する場合には環状誘導体を含めて、ヒドロキシル基に加水分解され得る基であり、
mはゼロ又は1〜8の範囲の整数であり、
nは1〜8の範囲の整数である)
で表される請求項2に記載の使用。
【請求項19】
阻害剤が次の一般式:
【化26】

(式中、
1は、水素、ハロゲン、低級アルキル、低級アルケニル又は低級アルキニルを表し、
2は、分岐低級アルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、ヘテロアリール、シクロアルキル又はシクロアルキルアルキルを表し、
3は、水素又はアミノ保護基を表し、
4は、水素、C末端結合アミノ酸残基若しくはアミノ酸アナログ、C末端結合ペプチド若しくはペプチドアナログ、アミノ保護基又は次式:
【化27】

を表し、
6は、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、−(CH2m−R7、−(CH2m−OH、−(CH2m−O−アルキル、−(CH2m−O−アルケニル、−(CH2m−O−アルキニル、−(CH2m−O−(CH2m−R7、−(CH2m−SH、−(CH2m−S−アルキル、−(CH2m−S−アルケニル、−(CH2m−S−アルキニル、−(CH2m−S−(CH2m−R7を表し、
7は、それぞれの存在について、置換又は非置換のアリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル又は複素環を表し、
R'7は、それぞれの存在について、水素又は置換若しくは非置換のアルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル又は複素環を表し、
Uは存在せず、又は−C(=O)−、−C(=S)−、−P(=O)(OR8)−、−S(O2)−又は−S(O)−を表し、
Wは、標的プロテアーゼの活性部位残基と反応する官能基を表し、
mはゼロ又は1〜8の範囲の整数である)
で表される請求項1に記載の使用。
【請求項20】
前記式において、
Wは、−CN、−CH=NR53
【化28】

を表し、
1及びY2は、独立して、OH又はヒドロキシル基に加水分解され得る基であり、
Uは−C(=O)−、−C(=S)−又は−S(O2)−を表し
50はO又はSを表し、
51はN3、SH、NH2、NO2又はOR'7を表し、
52は、水素、低級アルキル、アミン、OR'7若しくは製薬上許容できる塩を表し、又はR51とR52は、これらのものが結合する燐原子と共に複素環であってその環構造中に5〜8個の原子を有するものを完成させ、
53は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、−C(X1)(X2)X3、−(CH2m−R7、−(CH2n−OH、−(CH2n−O−アルキル、−(CH2n−O−アルケニル、−(CH2n−O−アルキニル、−(CH2n−O−(CH2m−R7、−(CH2n−SH、−(CH2n−S−アルキル、−(CH2n−S−アルケニル、−(CH2n−S−アルキニル、−(CH2n−S−(CH2m−R7、−C(O)C(O)NH2、−C(O)C(O)OR'7を表し、
1はハロゲンを表し、
2及びX3は、それぞれ水素又はハロゲンを表し、
mはゼロ又は1〜8の範囲の整数であり、
nは1〜8の整数である
請求項19に記載の使用。
【請求項21】
阻害剤が次の一般式:
【化29】

(式中、
1は、水素、ハロゲン、低級アルキル、低級アルケニル又は低級アルキニルであり、
2は、分岐低級アルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、ヘテロアリール、シクロアルキル又はシクロアルキルアルキルであり、
3は水素又はアミノ保護基、好ましくは水素を表し、
4は、水素、C末端結合アミノ酸残基若しくはアミノ酸アナログ、C末端結合ペプチド若しくはペプチドアナログ、アミノ保護基又は
【化30】

を表し、ここで、R6は、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、−(CH2m−R7、−(CH2m−OH、−(CH2m−O−アルキル、−(CH2m−O−アルケニル、−(CH2m−O−アルキニル、−(CH2m−O−(CH2m−R7、−(CH2m−SH、−(CH2m−S−アルキル、−(CH2m−S−アルケニル、−(CH2m−S−アルキニル、−(CH2m−S−(CH2m−R7を表し、R7は、それぞれの存在について、置換又は非置換のアリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル又は複素環を表し、
Wは、−CN、−CH=NR53
【化31】

を表し、
1及びY2は、独立して、OH又はヒドロキシル基に加水分解され得る基であり、
50はO又はSを表し、
51はN3、SH、NH2、NO2又はOR'7を表し、
52は、水素、低級アルキル、アミン、OR'7若しくは製薬上許容できる塩を表し、又はR51とR52は、これらのものが結合する燐原子と共に複素環であってその環構造中に5〜8個の原子を有するものを完成させ、
53は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、−C(X1)(X2)X3、−(CH2m−R7、−(CH2n−OH、−(CH2n−O−アルキル、−(CH2n−O−アルケニル、−(CH2n−O−アルキニル、−(CH2n−O−(CH2m−R7、−(CH2n−SH、−(CH2n−S−アルキル、−(CH2n−S−アルケニル、−(CH2n−S−アルキニル、−(CH2n−S−(CH2m−R7、−C(O)C(O)NH2、−C(O)C(O)OR'7を表し、
1はハロゲンを表し、
2及びX3はそれぞれ水素又はハロゲンを表し
mはゼロ又は1〜8の範囲の整数であり、
nは1〜8の範囲の整数である)
で表される請求項1に記載の使用。
【請求項22】
1とY2が環であってその環構造中に5〜8個の原子を有するものを介して結合している請求項21に記載の使用。
【請求項23】
1及びY2がピナコールである請求項22に記載の使用。
【請求項24】
前記式において、
Wは、次式:
【化32】

を表し、
53は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、−C(X1)(X2)X3、−(CH2m−R7、−(CH2n−OH、−(CH2n−O−アルキル、−(CH2n−O−アルケニル、−(CH2n−O−アルキニル、−(CH2n−O−(CH2m−R7、−(CH2n−SH、−(CH2n−S−アルキル、−(CH2n−S−アルケニル、−(CH2n−S−アルキニル、−(CH2n−S−(CH2m−R7、−C(O)C(O)NH2、−C(O)C(O)OR'を表し、
7は、それぞれの存在について、置換又は非置換のアリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル又は複素環を表し、
R'7は、それぞれの存在について、水素又は置換若しくは非置換のアルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル又は複素環を表し、
1はハロゲンを表し、
2及びX3は、独立して且つそれぞれの存在について、水素又はハロゲンを表し、
mはゼロ又は1〜8の範囲の整数であり、
nは1〜8の範囲の整数である
請求項21に記載の使用。
【請求項25】
1が弗素を表し、X2及びX3がそれぞれ独立して水素又は弗素を表す、請求項24に記載の使用。
【請求項26】
4が次式:
【化33】

(式中、
36は低級アルキル又はハロゲンであり、R38は水素であり、又はR36とR38は共に4〜7員の複素環を形成し、
40はC末端結合アミノ酸残基若しくはアミノ酸アナログ又はC末端結合ペプチド若しくはペプチドアナログ又はアミノ酸保護基である)
を表す請求項21に記載の使用。
【請求項27】
1が低級アルキルを表す請求項21に記載の使用。
【請求項28】
1がメチルを表す請求項27に記載の使用。
【請求項29】
2が分岐アルキル、分岐アルケニル、分岐アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、ビシクロアルキル、ビシクロアルケニル又はビシクロアルキニルである請求項21に記載の使用。
【請求項30】
2がt−ブチル又はシクロヘキシルである請求項29に記載の使用。
【請求項31】
3が水素を表す請求項21に記載の使用。
【請求項32】
53が水素又はハロゲン化低級アルキルを表す請求項21に記載の使用。
【請求項33】
1が弗素であり、X2及びX3がハロゲンである場合には弗素である、請求項21に記載の使用。
【請求項34】
次の一般式:
【化34】

(式中、
1は、水素、ハロゲン、低級アルキル、低級アルケニル又は低級アルキニルを表し、
2は、分岐低級アルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、ヘテロアリール、シクロアルキル又はシクロアルキルアルキルを表し、
3は水素又はアミノ保護基を表し、
4は、水素、C末端結合アミノ酸残基若しくはアミノ酸アナログ、C末端結合ペプチド若しくはペプチドアナログ、アミノ保護基又は次式:
【化35】

を表し、
6は、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、−(CH2m−R7、−(CH2m−OH、−(CH2m−O−アルキル、−(CH2m−O−アルケニル、−(CH2m−O−アルキニル、−(CH2m−O−(CH2m−R7、−(CH2m−SH、−(CH2m−S−アルキル、−(CH2m−S−アルケニル、−(CH2m−S−アルキニル、−(CH2m−S−(CH2m−R7を表し、ここで、R7は、それぞれの存在について、置換又は非置換のアリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル又は複素環を表し、
7は、それぞれの存在について、置換又は非置換のアリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル又は複素環を表し、
R'7は、それぞれの存在について、水素又は置換若しくは非置換のアルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル又は複素環を表し、
11及びR12は、それぞれ独立して、水素、アルキル若しくは製薬上許容できる塩を表し、又はR11とR12は、これらのものが結合するO−B−O原子と共に複素環であってその環構造中に5〜8個の原子を有するものを完成させ、
mはゼロ又は1〜8の範囲の整数である)
で表される、請求項21に記載の使用。
【請求項35】
1がメチルを表し、R2がシクロヘキシルを表し、R3、R4、R11及びR12が独立して且つそれぞれの存在について水素を表す、請求項34に記載の使用。
【請求項36】
次の一般式:
【化36】

(式中、
1は、水素、ハロゲン、低級アルキル、低級アルケニル又は低級アルキニルを表し、
2は、分岐低級アルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、ヘテロアリール、シクロアルキル又はシクロアルキルアルキルを表し、
3は水素又はアミノ保護基を表し、
4は、水素、C末端結合アミノ酸残基若しくはアミノ酸アナログ、C末端結合ペプチド若しくはペプチドアナログ、アミノ保護基又は次式;
【化37】

を表し、
6は、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、−(CH2m−R7、−(CH2m−OH、−(CH2m−O−アルキル、−(CH2m−O−アルケニル、−(CH2m−O−アルキニル、−(CH2m−O−(CH2m−R7、−(CH2m−SH、−(CH2m−S−アルキル、−(CH2m−S−アルケニル、−(CH2m−S−アルキニル、−(CH2m−S−(CH2m−R7を表し、ここで、R7は、それぞれの存在について、置換又は非置換のアリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル又は複素環を表し、
7は、それぞれの存在について、置換又は非置換のアリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル又は複素環を表し、
R'7は、それそれの存在について、水素、置換若しくは非置換のアルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル又は複素環を表す)
で表される、請求項21に記載の使用。
【請求項37】
次の一般式:
【化38】

(式中、
1は、水素、ハロゲン、低級アルキル、低級アルケニル又は低級アルキニルを表し、
2は、分岐低級アルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、ヘテロアリール、シクロアルキル又はシクロアルキルアルキルを表し、
3は水素又はアミノ保護基を表し、
4は、水素、C末端結合アミノ酸残基若しくはアミノ酸アナログ、C末端結合ペプチド若しくはペプチドアナログ、アミノ保護基又は次式;
【化39】

を表し、
6は、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、−(CH2m−R7、−(CH2m−OH、−(CH2m−O−アルキル、−(CH2m−O−アルケニル、−(CH2m−O−アルキニル、−(CH2m−O−(CH2m−R7、−(CH2m−SH、−(CH2m−S−アルキル、−(CH2m−S−アルケニル、−(CH2m−S−アルキニル、−(CH2m−S−(CH2m−R7を表し、ここで、R7は、それぞれの存在について、置換又は非置換のアリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル又は複素環を表し、
7は、それぞれの存在について、置換又は非置換のアリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル又は複素環を表し、
R'7は、それぞれの存在について、水素又は置換若しくは非置換のアルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル又は複素環を表し、
1、X2及びX3は、それぞれ水素又はハロゲンを表す)
で表される、請求項21に記載の使用。
【請求項38】
阻害剤の(L)−Ala、(L)−Xaaジアステレオマーが次の一般式:
【化40】

(式中、
2は、例えば、随意としてハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシなどのような1個以上の置換基で置換された分岐低級アルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、ヘテロアリール、シクロアルキル又はシクロアルキルアルキルを表し、
3は水素又はアミノ保護基を表し、
4は、水素、C末端結合アミノ酸残基若しくはアミノ酸アナログ、C末端結合ペプチド若しくはペプチドアナログ、アミノ保護基又は次式;
【化41】

を表し、
6は、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、−(CH2m−R7、−(CH2m−OH、−(CH2m−O−アルキル、−(CH2m−O−アルケニル、−(CH2m−O−アルキニル、−(CH2m−O−(CH2m−R7、−(CH2m−SH、−(CH2m−S−アルキル、−(CH2m−S−アルケニル、−(CH2m−S−アルキニル、−(CH2m−S−(CH2m−R7を表し、
7は、それぞれの存在について、置換又は非置換のアリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル又は複素環を表し、
R'7は、それぞれの存在について、水素又は置換若しくは非置換のアルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル又は複素環を表し、
Wは、−CN、−CN=NR53
【化42】

を表し、
1及びY2は、独立して、OH又はヒドロキシル基に加水分解され得る基であり、
50はO又はSを表し、
51はN3、SH、NH2、NO2又はOR'7を表し、
52は、水素、低級アルキル、アミン、OR'7若しくは製薬上許容できる塩を表し、又はR51とR52は、これらのものが結合する燐原子と共に複素環であってその環構造中に5〜8個の原子を有するものを完成させ、
53は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、−C(X1)(X2)X3、−(CH2m−R7、−(CH2n−OH、−(CH2n−O−アルキル、−(CH2n−O−アルケニル、−(CH2n−O−アルキニル、−(CH2n−O−(CH2m−R7、−(CH2n−SH、−(CH2n−S−アルキル、−(CH2n−S−アルケニル、−(CH2n−S−アルキニル、−(CH2n−S−(CH2m−R7、−C(O)C(O)NH2、−C(O)C(O)OR'7を表し、
1はハロゲンを表し、
2及びX3はそれぞれ水素又はハロゲンを表し、
mはゼロ又は1〜8の範囲の整数であり、
nは1〜8の範囲の整数である)
で表される請求項21に記載の使用。
【請求項39】
Wが次式:
【化43】

を表し、Y1及びY2がそれぞれ独立してヒドロキシルを表し、R2がシクロヘキシルを表し、R3及びR4が独立して且つそれぞれの存在について水素を表す、請求項38に記載の使用。
【請求項40】
DPIV阻害剤が、ナノモルの範囲内のDPIV阻害定数(Ki)を有する、請求項1に記載の使用。
【請求項41】
DPIV阻害剤が膵臓組織に対する細胞性免疫反応を低減させる、請求項1に記載の使用。
【請求項42】
1型糖尿病治療用の医薬組成物であって、耐糖能障害を軽減し、かつ、膵臓組織再生を促進させるのに十分な量で1日1回の投与用に処方される高親和性DPIV阻害剤を含む、1型糖尿病治療用の医薬組成物。
【請求項43】
DPIV阻害剤が、ナノモルの範囲内のDPIV阻害定数(Ki)を有する、請求項42に記載の医薬組成物。
【請求項44】
DPIV阻害剤が膵臓組織に対する細胞性免疫反応を低減させる、請求項42に記載の医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−248251(P2010−248251A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172410(P2010−172410)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【分割の表示】特願2003−546737(P2003−546737)の分割
【原出願日】平成14年11月26日(2002.11.26)
【出願人】(303043726)トラスティーズ オブ タフツ カレッジ (26)
【出願人】(501471493)
【Fターム(参考)】