説明

自己収容性乳酸桿株

本発明は、環境中で限定された増殖および生存率を有する、ラクトバシラス・サリバリウスLactobacillus salivariusの組換え菌株に関するものである。より詳しくは、本発明は、チミジンが存在する培地中でのみ生存することができるにすぎない組換えラクトバシラスに関するものである。チミジンへのこの厳格な依存性によって、この組換え菌株には、チミジン欠乏死が急速に誘導される。好適実施態様は、チミジンが存在する宿主生物内でのみ生存し得るにすぎないが、この培地化合物が不在である宿主生物外では生存することができないラクトバシラスである。その上、該ラクトバシラス株は、予防および/または治療用の分子で形質転換することができ、そのようなものとして、炎症性腸疾患のような、しかしそれに限られない疾患を処置するのに用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、環境中で限定された増殖および生存率を有する、組換えラクトバシラス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)菌株に関する。より詳しくは、本発明は、チミジンが存在する培地中でのみ生存することができるにすぎない組換えラクトバシラスに関するものである。チミジンへのこの厳格な依存性によって、この組換え菌株には、チミジン欠乏死が急速に誘導される。好適実施態様は、チミジンが存在する宿主生物内でのみ生存し得るにすぎないが、この培地化合物が不在である宿主生物外では、生存することができないラクトバシラスである。その上、該ラクトバシラス株は、予防および/または治療用の分子で形質転換することができ、そのようなものとして、炎症性腸疾患のような、しかしそれに限られない疾患を処置するのに用いることができる。
【0002】
発明の背景
乳酸菌は、長い間、非常に様々な工業的発酵法に用いられてきた。それらは、安全であると広く考えられている状態を有して、商業的に重要なタンパク質を生産するのに潜在的に役立つ生物となっている。実際、いくつかの異種タンパク質、たとえばインターロイキン2は、乳酸球菌内で成功裡に産生される[Steidlerら(1995)]。しかし、そのような遺伝的に改変された微生物が環境中で生存かつ拡散することは、望ましくない。
【0003】
遺伝的に改変された微生物の意図されない放出を避けるには、物理的閉じ込めのための安全な取扱いおよび技術的要件のための特別な指針が用いられる。これは、工業的な発酵には役立つものの、物理的閉じ込めは、充分であるとは一般に考えられず、追加的な生物学的閉じ込めの手段が講じられて、遺伝的に改変された微生物が環境中で生存する可能性を低減している。生物学的閉じ込めは、物理的閉じ込めが困難であるか、または適用不能でさえある場合に、極めて重要である。とりわけ、このことは、遺伝的に改変された微生物が生ワクチンとしてか、または治療化合物の送達のための担体として用いられる用途に該当する。そのような用途は、たとえば、生物学的活性を有するペプチド、たとえばサイトカインを非侵襲性または非病原性の組換え細菌による対象者への送達を開示する、国際公開第97/14808号公報(WO 97/14806)に記載されている。国際公開第96/11277号公報(WO 96/11277)は、治療用タンパク質をコード化している組換え細菌の投与による、動物(ヒトを包含する)への治療用化合物の送達を記載している。Steidlerら(2000)は、インターロイキン10を分泌する組換えラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)の投与による大腸炎の処置を記載している。そのような送達は、実際に、冒されたヒトまたは動物の疾患を処置するのに極めて有用であるが、組換え細菌は、冒されていない対象者に侵入したときは、有害かつ病原性の微生物として作用することがあり、微生物のそのような意図されない拡散を回避する、効率的な生物学的閉じ込めが必要とされる。
【0004】
乳酸球菌を用いれば、充分な処置を達成することができるものの、それは、該細菌がコロニーを形成せず、効果を確保するには、投薬を連続的な方法で適用しなければならないことを主な短所として有する。ラクトバシラスのようなコロニー形成菌株は、一回の投与分、または限られた数の投与分で、類似の効果を用いることができるという利点を有するであろう。しかし、乳酸球菌の場合と同様に、環境中での細菌の拡散を避けるには、厳格な生物学的閉じ込めシステムを必要とする。
【0005】
宿主生物のための生物学的閉じ込めシステムは、外部環境に存在しないか、または低濃度で存在する、特異的な増殖因子もしくは栄養素に対する宿主の厳格な必要条件に基づいて受動的であるか、あるいは特異的な環境条件下でのみ発現されるにすぎないプロモーターの制御下にある遺伝子がコード化している、細胞致死機能によって外部環境中で宿主を殺す、宿主内のいわゆる自殺性遺伝的要素に基づいて能動的であり得る。
【0006】
受動的な生物学的閉じ込めシステムは、大腸菌Escherichia coliまたはサッカロミセス・セレビシエSaccharomyces cerevisiaeのような微生物では周知である。そのような大腸菌株は、たとえば米国特許第4100495号明細書(US4100495)に開示されている。国際公開第95/10621号公報(WO 95/10621)は、乳酸菌のサプレッサー突然変異株、および乳酸菌における閉じ込めの手段としてのその使用を開示しているが、その場合、閉じ込めは、宿主菌株のレベルではなくて、プラスミドのレベルでのものであり、宿主菌株のプラスミドを安定化するが、遺伝的に改変された宿主菌株自体に対する閉じ込めを与えない。
【0007】
能動的な自殺システムは、数名の著者が記載している。そのようなシステムは、二つの要素;すなわち、致死遺伝子、および許されない条件下で致死遺伝子の発現を起動する制御配列からなる。国際公開第95/10614号公報(WO 95/10614)は、細胞質レベルで活性を有する、断端された、かつ/または突然変異させた黄色ブドウ球菌Staphylococcus aureusのヌクレアーゼを致死遺伝子として用いることを開示している。国際公開第96/40947号公報(WO 96/40957)は、必須遺伝子(許された環境中に細胞が存在するときに発現され、許されない環境中に細胞が存在するときには発現されないか、または一時的に発現される)および/または致死遺伝子(遺伝子の発現が、細胞に対して致死的であり、その発現は、許されない環境中に細胞が存在するときに発現されるが、許された環境中に細胞が存在するときは発現されない)のいずれかの発現に基づいて、環境的に制限された生存率を有する、組換え細菌系を開示している。国際公開第99/58652号公報(WO 99/58652)は、relEなる細胞毒素に基づく生物学的閉じ込めシステムを記載している。しかし、ほとんどのシステムは、大腸菌に対して[Tedinら(1995);Knudsenら(1995);Schwederら(1995)]か、またはシュードモナス属Pseudomonasに対して[Kaplanら(1999);Molinaら(1998)]工夫されている。
【0008】
興味深い代替策は、チミジル酸シンターゼの遺伝子における突然変異を閉じ込めシステムとして用いることである。そのような突然変異を有する原核細胞および真核細胞は、ともに、低濃度のチミジンまたはチミンでは増殖することができず、この飢餓に応答して細胞死を生じる。この現象は、チミン欠乏死として公知である[Goulianら(1986);Ahmadら(1998)]。この突然変異に基づく閉じ込めシステムは、FuおよびXu(2000)が、ラクトバシラス・カゼイL. caseiからのthyAなる遺伝子を選別マーカーとして用いる、ラクトバシラス・アシドフィルスL. acidophilusについて記載している。用いられたthyA突然変異株は、自然突然変異およびトリメトプリム選別によって選別された。そのような突然変異は、復帰しやすく、もう一つのラクトバシラス種のthyA遺伝子を用いて、マーカー遺伝子のインリコンビネーションによる突然変異の復帰を回避している。実際、thyA突然変異の復帰は、問題であり、特に培地中のチミンまたはチミジンの不在下では、突然変異は、高い頻度で復帰することになって、この菌株は、その閉じ込めの特徴性を失いつつある。許容され得る生物学的閉じ込めのためには、復帰しない突然変異株が求められている。
【0009】
非復帰性突然変異株は、遺伝子破壊によって得ることができる。この破壊に基づく閉じ込めシステムは、乳酸球菌について記載されている[Steidlerら(2003)]。しかし、ラクトバシラス・カゼイのthyA遺伝子は、クローニングされ、部位指定突然変異誘発によって突然変異されているものの、大腸菌でのみ試験されたにすぎず、ラクトバシラス株における遺伝子交換には決して用いられていない。ラクトバシラスのための形質転換手法は、当業者に公知であるが、ラクトバシラスにおけるthyAの遺伝子破壊は、成功したことがなく、明らかに証拠付けられいない。
【0010】
驚異的にも、本発明者らは、ラクトバシラスにおけるthyA破壊を構成することができた。はるかに驚異的にも、本発明者らは、この破壊突然変異株の生存は、厳格にチミジン依存性であり、該突然変異株は、培地へのチミンの添加によっては救済できないことを見出した。後者は、thyA突然変異株は、培地へのチミジンまたはチミンのいずれかの添加によって救済できることが一般的に容認されている[FuおよびXu(2000);Ahmadら(1998)]ことから、特に驚異的である。そのような菌株の生存率は、チミジンの不在下で(チミンの存在下であってさえ)急速に低下し、そのため、生物学的閉じ込めが必要なときは理想的な宿主菌株となる。チミジン欠乏死の急速な誘導(以前に記載された乳酸球菌株に対してより高速である)、および該菌株がチミンによっては救済できないことの双方によって、それは、ヒトをはじめとする生存動物体内への予防および/または治療用の分子の送達のための理想的な菌株となる。
【0011】
発明の説明
ラクトバシラスのための適切な生物学的閉じ込めシステムを提供することが、本発明の目的である。
【0012】
本発明の第一の態様は、チミジル酸シンターゼの組換え欠陥遺伝子(thyA)を含むラクトバシラス種の単離株であって、その生存がチミジンの存在に厳格に依存する菌株である。好ましくは、該組換え欠陥遺伝子は、染色体中に位置し、遺伝子破壊によって不活性化される。遺伝子破壊は、本明細書に用いられる限りで、DNAフラグメントの挿入による破壊、遺伝子またはその一部の欠失はもとより、もう一つのDNAフラグメントによる遺伝子またはその一部の交換による破壊を包含し、該破壊は、組換えDNAの手法によって誘導され、自然突然変異によって誘導されない。好ましくは、破壊は、もう一つの機能的遺伝子による遺伝子またはその一部の交換である。好ましくは、チミジル酸シンターゼの組換え欠陥遺伝子は、非復帰性突然変異株の遺伝子である。
【0013】
本明細書に用いられる限りでの非復帰性突然変異株は、復帰頻度が10-8未満であり、好ましくは復帰頻度が10-10未満であり、はるかに好ましくは該復帰頻度が10-12未満であり、はるかに好ましくは該復帰頻度が10-14未満であり、最も好ましくは該復帰頻度が、当業者には公知の常套的方法を用いて検出できないことを意味する。好ましくは、該ラクトバシラス種は、ラクトバシラス・サリバリウスである。はるかに好ましくは、該ラクトバシラスは、ラクトバシラス・サリバリウス亜種サリバリウスUCC118株である。非復帰性thyA突然変異株は、チミジン飢餓に応答して細胞死を生じる[Ahmadら(1998)]ことから、能動的な閉じ込めの一形態と考えることができる。
【0014】
以前に記載されたすべてのthyA突然変異株とは対照的に、該突然変異株は、チミンによって救済することができず、たとえチミンが培地中に存在しても細胞死を生じることになる。救済されるとは、本明細書に用いられる限りで、該菌株が、その増殖に必要な、チミジン以外のすべての化合物が存在する場合に、一定濃度のチミンを培地に添加しても増殖できないことを意味する。好ましくは、該突然変異株は、25μg/ml、より好ましくは30μg/ml、より好ましくは40μg/ml、はるかに好ましくは50μg/ml、最も好ましくは100μg/mlの濃度でのチミンの存在下でさえ、チミジン欠乏死を生じることになる。この突然変異株は、更に、培地中のチミジンの不在下での生存率の急速な低下を特徴とする。好ましくは、チミジンの不在下での生存率の初期低下は、16時間で2log単位のコロニー形成単位(cfu)という速さであり、はるかに好ましくは、初期低下は、12時間で2log単位のcfuであり、最も好ましくは、初期低下は、8時間で2log単位のcfuという速さである。生存率の初期低下は、菌株を、チミジンを欠くMRS培地中で37℃に保ったとき、0時間でのコロニー形成単位と比しての、X時間(ここではそれぞれ16、12または8)後のcfuとして測定される。
【0015】
以前に記載されたラクトバシラスのthyA突然変異株は、他のthyA突然変異株と同様に、培地へのチミンまたはチミジンの添加によって常に救済することができた。しかし、特にチミンおよび/またはチミジンの濃度を注意深く制御することができない場合に、培地中のチミジンへの厳格な依存は、生物学的閉じ込めのための強力な利点である。非限定的な例として、これは、痕跡量のチミンが混入し得る大量の培地を用いる工業的発酵に該当得る。更に、本発明は、そのような菌株は、それを人体をはじめとする動物体内への送達担体として用いるような場合には、特に役立つ。そのような形質転換された菌株が、たとえば経口的に動物(ヒトを包含する)に与えられたとき、それは、腸内で生存し、該動物に有益であり得る同種および/または異種タンパク質、非限定的にたとえば、ヒトインターロイキン10を産生する。この突然変異株がチミジンによって救済できないという事実は、特に、糞便中のチミジンまたはチミンの残留濃度を制御することができない、人体および動物体に用いたとき、より優れた閉じ込めを与える。
【0016】
したがって、本発明のもう一つの態様は、予防および/または治療用の子を送達するための生物学的な閉じ込められた菌株としての、本発明による乳酸菌株の使用である。好ましくは、該送達は、チミジンおよび/またはチミン濃度を厳密に制御することができない条件、非限定的にたとえば、疾患を予防かつ/または治療するための、ヒトを包含する動物への該予防用および/または治療用の分子の送達の下での生物学的閉じ込めを必要とする。チミジンおよび/またはチミン濃度を厳密に制御することができない条件とは、本明細書に用いられる限りで、該濃度に対する直接的な制御、たとえばチミンまたはチミジンの能動的な、かつ制御された添加または除去による濃度の制御が皆無であることを意味する。好ましくは、チミンまたはチミジン欠乏状態は、自然な過程、たとえば腸内でのチミジンの摂取によるチミジンの枯渇によって形成される。予防および/または治療用の分子の送達は、非限定的な例として、国際公開第97/14806号公報(WO 97/14806)および国際公開第98/31786号公報(WO 98/31786)に開示されている。予防および/または治療用の分子は、インスリン、成長ホルモン、プロラクチン、カルシトニン、第1群サイトカイン、第2群サイトカイン、第3群サイトカイン、神経ペプチドおよび抗体、ならびに病原性細菌からの多糖類抗体のようなポリペプチドを非限定的に包含する。
【0017】
好適実施態様では、ラクトバシラス種の株、好ましくはラクトバシラス・サリバリウスのthyA遺伝子を、破壊し、機能的なヒトインターロイキン10発現カセットで置き換え、この菌株は、IL−10の送達に用いることができる。該インターロイキン10発現ユニットは、好ましくは、ヒトのインターロイキン10発現ユニット、またはヒトインターロイキン10をコード化している遺伝子であるが、これらに限られない。したがって、好適実施態様は、ヒトインターロイキン10を送達するための本発明によるラクトバシラス種の株の使用である。該分子を送達する方法、および炎症性腸疾患のような疾患を処置する方法は、Steidlerらへの国際公開第97/14808号および第00/23471(WO 00/23471)、ならびにSteidlerら(2000)に詳しく説明されている(引用によって本明細書に援用される)。本発明は、本発明による菌株が、驚異的にも、対照菌株と同じ速度で消化管を通過し、その生存率の減損が、対照菌株のそれと実際上異ならないことを示すことを立証している。しかし、該菌株は、環境中、たとえば糞便中に分泌されたならば、もはやそれ以上生存することができない。欠失突然変異種が腸内、より具体的には回腸でも生存することができ、そのようなものとして、生物学的に閉じ込められた送達菌株として用いることができるという事実は、それがもっぱらチミジンにのみ依存することから、特に驚異的である。
【0018】
本発明のもう一つの態様は、ラクトバシラス種の本発明によるthyA破壊突然変異株を含む薬学的組成物である。非限定的な例として、該細菌は、腸への送達を改善するために、カプセルに封入してもよい。カプセル封入の方法は、当業者に公知であり、とりわけ欧州特許出願公開第0450176号公報(EP 0450176)に開示されている。
【0019】
本発明の更にもう一つの態様は、医薬を製造するための本発明による菌株の使用である。好ましくは、該医薬は、クローン病または炎症性腸疾患を処置するのに用いられる。
【0020】
実施例
実施例のための材料および方法
培地
別途記述されない限り、ラクトバシラス株は、MRS(Merck)中で培養した。
【0021】
用いた特別な培地:
BM9:Na2HPO46g/KH2PO43g/NH4Cl1g/NaCl0.5g/1mmolのMgSO4/0.1mmolのCaCl2/0.5%のグルコース/カシトン(casitone、difco)で強化した、pH8.5の50mMCO3-緩衝液1リットル。
MRSΔT(チミジンを欠くMRS):MRS粉末(Merck)を、適切な量(製造者による)の蒸留水に溶解した。溶液を、100℃に1分間加熱し、室温まで冷えるに任せた。チミジンホスホリラーゼ(SIGMA)1.2単位を、1mlについて加えた。溶液を、37℃に20時間温置し、次いでオートクレーブ処理した。
【0022】
菌株
ラクトバシラス・サリバリウスUCC118株[Dunneら(2001)]を、thyA突然変異株を構成するための受容菌株として用いた。
【0023】
実施例1:thyA突然変異株の構成
ラクトバシラス・サリバリウスthyA突然変異株の構成は、基本的には、ラクトコッカス・ラクチスについて記載されたとおりに[Steidlerら(2003)]、変更を加えて実施した。この構成は、図1に要約されている。ラクトバシラス・サリバリウス亜種サリバリウスのUCC118株を、コーディング配列の上流および下流配列も含めて配列決定した。これらの配列の知識は、下記に記載するような方法でのいかなるラクトバシラス株の遺伝子工学についても決定的に重要なものであって、それは、この方針が、thyAの5’末端の1,000bpおよび3’末端の1,000bpの部域、すなわち「thyA標的」における二重相同組換えを用いることになるからである。
【0024】
UCC118株で、thyA遺伝子を、分泌リーダーを有するタンパク質をコード化している合成遺伝子と置き換えたが、この分泌リーダーは、2位のプロリンが、ラクトコッカス・ラクチスのthyAプロモーター(PthyA;Genバンク、AF462070)に機能的に結合した、アラニンと置き換えられた、hIL−10の成熟部分と同一のアミノ酸配列を有するタンパク質と融合させた、ラクトバシラス中で機能を有する。プロモーターおよびhIL−10遺伝子のいかなる組合せも、hIL−10発現カセットと呼ばれる。形質転換は、1.5kV、25mF、400Ω、2mmの間隙長での電気穿孔法によった。
【0025】
thyA置換えは、基本的にはBiwasら(1993)が記載したとおりに、相同組換えによって実施した。下記に記載されるとおり、thyA標的のプラスミド保有バージョン内での適切な置換えを実施した。
【0026】
この方針は、予め標的となるラクトバシラス株に持ち込まれたヘルパープラスミド(クロラムフェニコール選別マーカーを有する)と、上記のとおり、染色体thyA遺伝子の上流および下流配列が隣接するhIL−10発現カセットをコード化しているキャリアープラスミド(エリスロマイシン耐性マーカーを有する)とを必要とする。
【0027】
ヘルパープラスミドのpTGB019は、pVE6007の修正バージョンである。pTGB019を構成するために、オリゴヌクレオチドGCGAAGCTTCAAATAGGGGTTCCGCGCおよびGCGACTAGTGGGAAAACTGTCCATACCCを用い、3,221bpの挿入断片を、PCR増幅によってpKD20から生成し、HindIIIおよびSpeIで切断した。このフラグメントは、大腸菌アラビノースプロモーターの制御下で、Redγ、βおよびエキソ遺伝子をコード化しており、HindIII−SpeI開放pVE6007内に結合させた。しかし、この発現系は、L.サリバリウス内では機能的であることを示さなかった。様々なRED組換え酵素遺伝子のmycタグ標識化バージョンを有する菌株へのアラビノースの添加は、ウエスタンブロット分析によって顕在化したとき、いかなる発現も示さず、pTGB019を有するラクトバシラスも、SDS−PAGEおよびクーマシーブリリアントブルー染色による細胞内タンパク質分析によって判定される限りで、RED遺伝子のいずれか一方の発現も示さなかった。挿入断片は、むしろ、ヘルパープラスミドpTGB019を、pVE6007と比較したとき、ラクトバシラス中での複製に対して、より不安定にさせることになった。
【0028】
キャリアープラスミドを、pTGB019を保持するラクトバシラス株内に電気穿孔させた。両プラスミドとも、安定的に共存しなかった。この時点では、組込みの機序が機能する仕方が不明確であった。電気穿孔混合物を、10μg/mlでのエリスロマイシンおよび200μMでのチミジンを含有する固体寒天MRSプレートに播種し、42℃で24時間温置した。
【0029】
キャリアープラスミドは、ラクトバシラス内で複製することができない。したがって、与えられた菌株にエリスロマイシン耐性を移転するための唯一の方途は、thyA標的の5’の1,000bpまたは3’の1,000bpのいずれかでの最初の相同組換えを実施するときである。エリスロマイシン陽性のコロニーは、図1に示したとおり、そのような相同組換えの発生についてのPCRによって確認した。
【0030】
エリスロマイシン耐性クローンの一サブセットは、依然としてpTGB019を保有した。これらのクローンを、第二のクロスオーバーを示すクローンを単離するのに利用した。適切な希釈を、MRS固体寒天プレート上で42℃で平板培養し、これらのコロニーから、エリスロマイシンおよびクロラムフェニコール感受性クローンを、チミジン不在MRS中での増殖不能、上流および下流双方での組換えはもとより、thyA遺伝子の不在についてふるい分けした。
【0031】
thyA標的の3’の1,000bpまたは5’の1,000bpでの第二の相同組換えは、望みの菌株を生じた。エリスロマイシンの不在下、および50μg/mlのチミジンの存在下での反復的増殖によって、第二の組換えについての選別を実施した。コロニーは、図1に示したようなPCRによって試験した。
【0032】
得られた菌株を、TGB078(ヒトIL−10)およびTGB(thyAプロモーターに機能的に結合したヒトIL−10)と呼んだ。
【0033】
実施例2:thyA-およびIL−10+ラクトバシラスの同定
PCRによる第一次thyA-およびIL−10+の確認
hIL−10挿入断片を有するラクトバシラスコロニーの第一次確認を、図2に提示したとおり、PCR試験によって実施した。thyA(図2、1)またはIL−10(図2,2)の検出、IL−10のフランキング配列(図2、3〜6)およびthyAのフランキング配列(図2、7および8)の検出のために、数セットのプライマーを用いた。
【0034】
結果は、突然変異菌株TGB078およびTGB092では、thyAのコーディング配列が、ヒトIL−10配列に置き換えられていることを明確に示している。
【0035】
【表1】

【0036】
サザンブロット分析によるラクトバシラスのthyA-およびIL−10+特性の確認
ゲノム以外のどこにもthyAまたはIL−10のコピーが存在しないことを確かめるため、サザンブロット分析によって組込みを試験した。ラクトバシラスの異なる菌株から、ゲノムDNA標品を作成した。ラクトバシラスのゲノムDNAを、EcoRIによって消化し、サザンブロット分析に付した。ブロットは、thyA(thyAプローブ;PCRプライマー対1で得た)またはhIL−10(IL−10プローブ;PCRプライマー対2で得た)を同定するためのジゴキシゲニン標識化プローブを用いて顕在化した。PCRの結果に基づいて予測されたとおり、突然変異株についてのブロット上のthyAプローブのシグナルは陰性であり、hIL−10プローブのシグナルは陽性であったのに対し、親株についてのthyAプローブのシグナルは陽性であり、hIL−10のシグナルは陰性であった。結果を表2に要約する。
【0037】
【表2】

【0038】
実施例3:thyA-およびIL−10+ラクトバシラスによるヒトIL−10の産生
hIL−10分泌を評価するため、各菌株の単一コロニーを、50μg/mlのチミジンで強化したMRS中で増殖させた。37℃での増殖の40時間後に、細菌を遠心単離によって採集し、50μg/mlのチミジンで強化した緩衝M9(BM9)に再懸濁させた。懸濁液を37℃で5時間温置し、次いで、ヒトIL−10の普及をELISA(Becton Dickinson)によって決定した。結果を図4に要約する。ヒトIL−10コーディング配列を含む両菌株は、確かにIL−10を産生したが、ヒトIL−10コーディング配列を、ラクトコッカス・ラクチスのthyAプロモーターに機能的に結合したときは、産生がはるかに高まった。IL−10の産生は、ラクトコッカス・ラクチスについて記載された[Steidlerら(2003)]のより低かったが、量は、慢性腸炎症を処置するためにin vivoで効果的であるには充分に多かった。
【0039】
実施例4:チミジン不在下での生存
チミジン不在培地中での生存を、二つの突然変異菌株および親菌株について試験した。生存は、培養体1mlあたりのコロニー形成単位(CFU)として、時間の関数として測定した。結果を図5および6に提示する。
【0040】
すべての菌株の単一コロニーを、25μg/mlのチミジンで強化したMRSΔT中に接種し、37℃で20時間温置した。細菌を、遠心単離によって採集し、1容のMRSΔTで2回洗浄し、1容のMRSΔTに再懸濁させ、MRSΔT中で1:20に希釈し、37℃で温置した。適切な時点で、1mlあたりのCFUを、50μg/mlのチミジンで強化したMRS固体寒天プレート上で平板培養することによって決定した。
【0041】
理解できるとおり、CFUは、500分後には2log単位を上回って減少した。1,000分未満の後には、3log単位の減少が達成された。これらの結果は、ラクトコッカス・ラクチスについてSteidlerら(2003)が達成したもの(2log単位での減少を達成するのに約2倍の時間を要し、3log単位での減少を達成するのに50時間を要した)よりはるかに優れている。これらの結果は、チミンの存在下で得られたことに注目するのが重要である。実際、チミジンは、チミジンをチミンに転換する酵素処理によって培地から除去されている。チミンの残留濃度にもかかわらず、チミジン飢餓によって誘導される死は、極めて迅速であって、この菌株がチミンの存在によって救済できないことを示している。
【0042】
実施例5:ラクトバシラスThyA突然変異株は、チミンによって救済することができない
ラクトバシラス・サリバリウスUCC118(thyA野生型)、TGB078およびTGB092(ともにthyA欠如)を、MRS、200μMのチミジンを加えたMRS(MRSTd)、または800μMのチミンを加えたMRS(MRSTm)中で増殖させた。37℃での29時間の増殖後に、600nmにおける光学密度を測定した。
【0043】
得られたデータ(図7)は、UCC118は、増殖培地にかかわりなく、匹敵する光学密度に到達することを示す。MRS中のチミジンの濃度は、TGB078およびTGB092の増殖を限定する。200μMのチミジンをMRSに加えたとき、TGB078およびTGB092は、UCC118と同じ光学密度に到達する。MRSへの800μMのチミンの添加は、より高い光学密度へのTGB078およびTGB092の増殖を支援することができない。
【0044】
図7から認識することができるとおり、MRSは、実質的な量のチミジンを含有する。チミジンは、チミジンホスホリラーゼによってチミンに転換することができる。したがって、チミジンホスホリラーゼで消化されたMRSは、MRSΔTを与える。ラクトバシラス・サリバリウスUCC118(thyA野生型)、TGB078およびTGB092(ともにthyA欠如)を、ある範囲のチミジンまたはチミン濃度を加えたMRSΔT中で増殖させた。37℃での増殖の24時間後、培養体は、飽和に達した。24時間におけるOD600を、チミジンまたはチミン濃度に対してプロットした(図8および9)。
【0045】
これらの結果は、両thyA欠如株ともに、増殖のために外来性チミジンを用いることができるが、チミンについてはそれができないのに対し、野生型の増殖は、チミジンまたはチミンのいずれの添加によっても影響されない(図10)ことを示して、増殖の欠如は、チミン毒性によらないことを証明している。
【0046】
【表3】



【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】ラクトバシラス・サリバリウスのすべての菌株は、該当する場合にその菌株コード(UCC118、TGB078、TGB092)で示される。 パネルA:UCC118thyA(斜線)とhIL−10(黒)との間の遺伝子交換の模式的全体図である。大きさが1Kbの相同組換えの標的DNA(灰色)は、UCC118の染色体はもとより、複製しない、エリスロマイシン(Em)耐性マーカー陽性プラスミドにも、それぞれ、thyAおよびhIL−10の上流および下流の双方に存在する。UCC118の染色体DNA(太い黒線)は、上流および下流双方の標的DNAに隣接している。複製しないプラスミドをUCC118に導入した後(1)、形質転換混合物をEmの存在下で温置した。これは、1F/1Rまたは2F/2Rのオリゴヌクレオチドを用いたPCRによって区別することができる、上流または下流のいずれかの標的における相同組換え事象の選択を可能にする(2)。Emの不在下、および50μg/mlのチミジンの存在下での反復的な増殖は、組み合わせた1F/1Rおよび2F/2RのPCRによって検出することができる、第二の組換えが発生するのを可能にする(3)。Em陰性である、1F/1R2F/2RのPCRで陽性のクローンが、望みの遺伝的構造を有する(4)。 パネルB:親菌株のラクトバシラス・サリバリウスUCC118、ならびに得られる菌株のラクトバシラス・サリバリウスTGB078およびラクトバシラス・サリバリウスTGB092の詳細を示す。TGB092は、ラクトコッカス・ラクチスのthyAプロモーターを保有する(PthyA、GenBank第AF462070番)。
【図2】ラクトバシラス・サリバリウスTGB078およびラクトバシラス・サリバリウスTGB092なる菌株を生じる、ラクトバシラス・サリバリウスUCC118のthyA(斜線)とhIL−10(黒)との間の遺伝子交換のPCRによる同定を示す。菌株は、すべて、その菌株コード(UCC118、TGB078、TGB092)によって示されている。パネルAは、異なるPCR反応の模式的全体図を示す。パネルBは、該当する分子サイズ間隔のアガロースゲル電気泳動によるデータを示す。1〜8の数字は、両パネルにおける異なるPCR反応を示す。 PCR1:UCC118におけるthyAの検出(TGB078およびTGB092では検出されない)。 PCR2:TGB078およびTGB092におけるhIL10の検出(UCC118では検出されない)。 PCR3:TGB078およびTGB092の標的領域外の上流ゲノムDNAに結合したhIL10の検出(UCC118では検出されない)。大きさの差は、図1Bで詳述したとおり、hIL−10プロモーター領域の差の結果である。 PCR4:TGB078およびTGB092の標的領域外の下流ゲノムDNAに結合したhIL−10の検出(UCC118では検出されない)。 PCR5:TGB078およびTGB092の標的領域外の上流ゲノムDNAに結合したhIL−10の検出(UCC118では検出されない)。大きさの差は、図1Bで詳述したとおり、hIL−10プロモーター領域の差の結果である。 PCR6:TGB078およびTGB092の標的領域外の下流ゲノムDNAに結合したhIL−10の検出(UCC118では検出されない)。 PCR7:UCC118の標的領域外の上流ゲノムDNAに結合したthyAの検出(TGB078およびTGB092では検出されない)。 PCR8:UCC118の標的領域外の下流ゲノムDNAに結合したthyAの検出(TGB078およびTGB092では検出されない)
【図3】ラクトバシラス・サリバリウスUCC118、ラクトバシラス・サリバリウスTGB078およびラクトバシラス・サリバリウスTGB092のサザンブロットハイブリダイゼーションを示す。菌株は、すべて、その菌株コード(UCC118、TGB078、TGB092)によって示されている。完全な染色体DNAは、製造者が記載したとおりにQiagen Dneasy組織キットを用い、プロトコールの最初の工程の間に、細菌の細胞壁をリゾチームで消化するよう適合させて製造した。このDNA標品を、EcoRIで切断し、RocheのDIG標識化DNA分子量マーカーVIIとともに1.2%アガロースゲル上で単離した。DNAを、ナイロン膜に移し、DIG標識化thyAおよびhIL−10プローブで顕在化した。DIG標識化および検出は、すべて、製造者(Roche)が記載したとおりに実施した。UCC118は、thyAプローブによる適切な大きさのシグナルを示し、hIL−10プローブでは示さない。TGB078およびTGB092は、thyAプローブではシグナルを示さないが、hIL−10プローブでは適切な大きさのシグナルを示す。後者の大きさの差は、図1に概説したとおり、TGB078およびTGB092の双方のプロモーター構造の差に起因する。
【図4】ラクトバシラス・サリバリウスUCC118、ラクトバシラス・サリバリウスTGB078およびラクトバシラス・サリバリウスTGB092によるIL−10産生を示す。菌株は、すべて、その菌株コード(UCC118、TGB078、TGB092)によって示されている。すべての菌株の単一コロニーを、50μg/mlのチミジンで強化したMRSに接種し、37℃で40時間温置した。細菌を、遠心単離によって採集し、50μg/mlのチミジンで強化したBM9(緩衝M9増殖培地)に再懸濁させ、37℃で5時間温置した。培養上清中のIL−10を、ELISA(Becton Dickinson)によって決定した。
【図5】ラクトバシラス・サリバリウスUCC118、ラクトバシラス・サリバリウスTGB078およびラクトバシラス・サリバリウスTGB092のチミジンの不在下での生存を示す。菌株は、すべて、その菌株コード(UCC118、TGB078、TGB092)によって示されている。培養体の1mlあたりのコロニー形成単位(CFU)を、時間に対してプロットした。
【図6A】ラクトコッカス・ラクチスMG1363およびそのThyA突然変異株であるThy12と比較した、ラクトバシラス・サリバリウスUCC118およびラクトバシラス・サリバリウスTGB092のチミジンの不在下での生存を示す。図示された菌株のいずれかの18コロニーを、(A)ラクトバシラス・サリバリウスUCC118(野生型)またはL.サリバリウスTGB092(thyA欠如)の場合に、ラクトバシラス・サリバリウスUCC118MRSΔT(チミジン不在MRS;すべてのチミジンのチミンへの転換によって酵素的に調製)、(B)L.ラクチスMG1363(野生型)またはL.ラクチスThy12(thyA欠如)の場合に、GM17ΔT(チミジンおよびチミン不在GM17;thyA欠如ラクトコッカス・ラクチスによるGM17からのチミジンおよびチミンの細菌学的枯渇、濾過、ならびにオートクレーブ処理およびグルコース再添加によって調製)のそれぞれ87ml中に接種した。 懸濁液を分割し、いずれか一方の懸濁液の半分に、チミジンを1μMに達するよう加えた。 懸濁液を、すべて、適切数のバイアルにアリコートとして採り、これらのバイアルを、37℃(ラクトバシラス)または30℃(乳酸球菌)でインキュベーションした。適切な希釈の三重平板培養によって実施される限りでの1mlあたりのコロニー形成単位(cfu)を決定するため、バイアルを一度だけ開いた。この実験の途中で、thyA欠如株は、すべて、0cfuに達した(すなわち、1:1希釈100μlを平板培養した3枚のプレートに、0個のコロニーが存在した)。TGB092は、24時間および48時間後に、ほぼ0cfuの値に達し(1:1希釈100μlを平板培養したときの最大値は、1プレートあたり1コロニー)、0μMおよび1μMのチミジンの設定では、それぞれ、96時間および72時間後に0cfuの値に達した。
【図6B】ラクトコッカス・ラクチスMG1363およびそのThyA突然変異株であるThy12と比較した、ラクトバシラス・サリバリウスUCC118およびラクトバシラス・サリバリウスTGB092のチミジンの不在下での生存を示す。図示された菌株のいずれかの18コロニーを、(A)ラクトバシラス・サリバリウスUCC118(野生型)またはL.サリバリウスTGB092(thyA欠如)の場合に、ラクトバシラス・サリバリウスUCC118MRSΔT(チミジン不在MRS;すべてのチミジンのチミンへの転換によって酵素的に調製)、(B)L.ラクチスMG1363(野生型)またはL.ラクチスThy12(thyA欠如)の場合に、GM17ΔT(チミジンおよびチミン不在GM17;thyA欠如ラクトコッカス・ラクチスによるGM17からのチミジンおよびチミンの細菌学的枯渇、濾過、ならびにオートクレーブ処理およびグルコース再添加によって調製)のそれぞれ87ml中に接種した。 懸濁液を分割し、いずれか一方の懸濁液の半分に、チミジンを1μMに達するよう加えた。 懸濁液を、すべて、適切数のバイアルにアリコートとして採り、これらのバイアルを、37℃(ラクトバシラス)または30℃(乳酸球菌)でインキュベーションした。適切な希釈の三重平板培養によって実施される限りでの1mlあたりのコロニー形成単位(cfu)を決定するため、バイアルを一度だけ開いた。この実験の途中で、thyA欠如株は、すべて、0cfuに達した(すなわち、1:1希釈100μlを平板培養した3枚のプレートに、0個のコロニーが存在した)。TGB092は、24時間および48時間後に、ほぼ0cfuの値に達し(1:1希釈100μlを平板培養したときの最大値は、1プレートあたり1コロニー)、0μMおよび1μMのチミジンの設定では、それぞれ、96時間および72時間後に0cfuの値に達した。
【図7】チミンおよびチミジンの存在下での、ラクトバシラスの野生型およびThyA突然変異株の29時間後の成長を示す。MRS、200μMのチミジンを加えたMRS(MRSTd)、または800μMのチミンを加えたMRS(MRSTm)中のUCC118、TGB078およびTGB092の600nmにおける光学密度(OD600)を、37℃での増殖の29時間後に測定した。37℃での増殖の29時間後のMRS、MRSTdおよびMRSTmのOD600は、0.000であった。
【図8】上昇する濃度のチミンおよびチミジンの存在下での、異なる二つのラクトバシラスThyA突然変異株の成長曲線である。24時間におけるOD600を、チミジンまたはチミンの濃度に対してプロットした。同じ濃度範囲にわたって測定したときのUCC118の24時間におけるOD600は、チミジンまたはチミン濃度と無関係に完全な飽和に到達した。
【図9】上昇する濃度のチミンおよびチミジンの存在下での、異なる二つのラクトバシラスThyA突然変異株の成長曲線:低濃度での詳細を示す。24時間におけるOD600を、チミジンまたはチミンの濃度に対してプロットした。同じ濃度範囲にわたって測定したときのUCC118の24時間におけるOD600は、チミジンまたはチミン濃度と無関係に完全な飽和に到達した。
【図10】チミンおよびチミジンの異なる濃度におけるラクトバシラス・サリバリウスUCC118の増殖(24時間におけるOD600)であって、突然変異株の増殖の欠如が、チミン毒性によらないことを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換え欠陥遺伝子thyAを含むラクトバシラス種の単離株であって、該株の生存がチミジンの存在に厳格に依存する菌株。
【請求項2】
該ラクトバシラス種がラクトバシラス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)である、請求項1記載のラクトバシラス種の単離株。
【請求項3】
該ラクトバシラス種がラクトバシラス・サリバリウス亜種サリバリウス(salivarius)UCC118株である、請求項1または2記載のラクトバシラス種の単離株。
【請求項4】
さらに、16時間で少なくとも2logcfuである、チミジンの不在下での生存率の初期低下を特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のラクトバシラス種の単離株。
【請求項5】
予防および/または治療用の分子の送達のための、請求項1〜4のいずれか一項に記載のラクトバシラス種の単離株の使用。
【請求項6】
該送達が、チミジンおよび/またはチミン濃度を厳密に制御することができない条件下での生物学的閉じ込めを必要とする、請求項5記載のラクトバシラス種の単離株の使用。
【請求項7】
該予防および/または治療用の分子がインターロイキン10である、請求項5または6記載のラクトバシラス種の単離株の使用。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のラクトバシラス種の単離株を含む薬学的組成物。
【請求項9】
医薬を製造するための、請求項5〜7のいずれか一項に記載のラクトバシラス種の単離株の使用。
【請求項10】
炎症性腸疾患の処置のための医薬を製造するための、請求項5〜7のいずれか一項に記載のラクトバシラス種の単離株の使用。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−537741(P2007−537741A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−517259(P2007−517259)
【出願日】平成17年5月18日(2005.5.18)
【国際出願番号】PCT/EP2005/052296
【国際公開番号】WO2005/111194
【国際公開日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(301034267)フラームス・インテルウニフェルシタイル・インステイチュート・フォール・ビオテヒノロヒー・ヴェーゼットウェー(ヴェーイーベー・ヴェーゼットウェー) (10)
【氏名又は名称原語表記】VLAAMS INTERUNIVERSITAIR INSTITUUT VOOR BIOTECHNOLOGIE VZW(VIB VZW)
【出願人】(500454769)ウニフェルジテイト・ヘント (9)
【氏名又は名称原語表記】Universiteit Gent
【出願人】(591197426)ユニバーシティ・カレッジ・コーク (2)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY COLLEGE CORK
【Fターム(参考)】