説明

自己固定型トライアル股関節ソケット方式の位置決め補助具

【課題】本発明は、寛骨における対応するキャビティ内への解放可能な挿入のための自己固定型トライアルソケットに関する。
【解決手段】自己固定型トライアルソケットは、寛骨におけるキャビティに適合される外面と、インレー特にトライアルインレー及び/又はボールジョイントヘッドに適合され、股関節ソケット特に自己固定型トライアルソケットで後者を受けるための内面と、キャビティ内に股関節ソケットを固定するための少なくとも一つの保持エレメントとを備え、上記少なくとも一つの保持エレメントは少なくとも一つのバネ要素を有し、該少なくとも一つのバネ要素は、上記股関節ソケットの解放可能な固定のために、挿入した状態で、上記バネ要素が、少なくとも一部の領域では、外向きのスプリング力を寛骨におけるキャビティに及ぼすように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己固定型トライアル股関節ソケット方式の位置決め補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
股関節ソケットは、従来型の股関節人工器官の構成要素であり、大腿骨に埋め込まれる大腿骨ステム及び該大腿骨ステムに固定されるボールジョイントヘッドを備える。該ボールジョイントヘッドは、股関節ソケットに回転自在に取り付けられている。通常、股関節ソケットは骨盤に埋め込まれており、そこにシェル様の金属製アンカーリングボディーが埋め込まれている。該アンカーリングボディー内に、その中にヒップボールが関節接合されているプラスチックボディーが挿入されている。
【0003】
上記の股関節ソケットは、たとえば、特許文献1において、通常、一つまたは複数のアンカーリングピン、あるいは一つまたは複数のネジによって寛骨にしっかりと接合される。骨にソケットを固定する更なる形態は、ネジによるシェル上への固定(特許文献2)、または、骨の中に準備されたシートに対する金属製シェルボディーの特定の過剰寸法によって達成される、圧入による固定である。
【0004】
股関節ソケット及び股関節ステムの相対位置は、ジョイントがシャンクネック(shank neck)とソケットエッジとの間で衝撃なしで動かすことができるジョイントの可動範囲を決定する。一方、股関節ステムは、基本的に大腿骨の形態的状態によってその位置に固定され、骨盤におけるソケットの方向付けは自由に選択できる。股関節ヘッドの転位、またはシャンクネックとソケットエッジとの間の衝撃によるソケットに対する損傷を防ぐ、または少なくともこれらのリスクを低減するため、人工股関節の個々のコンポーネントを埋め込む際に、衝撃及び転位テストが行われる。シャンクネックの長さを変更することにより衝撃のリスクを和らげることもできる。これに関して、例として、調整可能なシャンクネックが記載されている特許文献3について述べる。金属製ソケットシェルが埋め込まれた後、衝撃及び転位のリスクは、異なって構成されたエッジを有するインレーの使用により、影響を限られた程度のみにすることができる。最終的なインレーの位置を選択し且つ決定するため、簡単に解放可能な方法で埋め込まれたソケットシェル中に配置される、再使用できるトライアルインレーが使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】DE 19714050 A1
【特許文献2】EP 0601 224 B1
【特許文献3】DE 102006045358 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
調整可能なシャンクネックの使用または異なるインレーの使用は、結果的に、十分でない股関節ソケットの位置決めあるいは方向付けを、ある程度だけ修正することができる。しかし、このような修正は、比較的困難であり、全般的に見れば不十分であると考えられている。修正が異なるインレーの使用と関連する場合、インレーの選択がその変化範囲を制限する基準に基づいてなされることは、さらに、不利であると考えられている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、手術中に患者がさらされるストレスを可能な限り小さくすると共に、転位のリスクを効果的に低減させる、股関節人工器官のソケットインプラントの埋め込みのための位置決め補助具を提供するという問題を基にしている。その問題は、請求項1に基づく、操作器具によって操作できる自己固定型トライアル股関節ソケット(以下、「トライアルソケット」という)方式の位置決め補助具により解決される。この問題は、さらに、請求項9に基づく、自己固定型トライアルソケット及び操作器具を備えるアレンジメント、請求項10に基づく、自己固定型トライアルソケット及び位置決め補助具及び/又は方向決定補助具を有するナビゲーションシステムを備えるアレンジメント、自己固定型トライアルソケットとインレー、特にトライアルインレーとを備えるアレンジメント、請求項12に基づく、複数のトライアルソケットによって構成されるセットにより解決される。
【0008】
本発明は、寛骨における対応するキャビティ内への解放可能な挿入のための自己固定型トライアルソケットを提供するという概念を基にしている。自己固定型トライアルソケットは、骨キャビティに適合される外面と、インレー特にトライアルインレー及び/又はボールジョイントヘッド(ball joint head)に適合され、自己固定型トライアルソケットで後者を受けるための内面と、上記キャビティに自己固定型トライアルソケットを固定するための少なくとも一つの保持エレメントとを備え、該少なくとも一つの保持エレメントは、少なくとも一つのバネ要素を有し、該少なくとも一つのバネ要素は、自己固定型トライアルソケットの解放可能な固定のために、挿入した状態で、バネ要素が、少なくとも一部の領域では、外向きのスプリング力を寛骨におけるキャビティに及ぼすように構成されている。
【0009】
自己固定型トライアルソケットは、股関節ステムのボールヘッドと関節接合するトライアルインレーを備えることができる。異なる直径のボールヘッドが用いられるため、たとえば、自己固定型トライアルソケットのポールにおけるネジによって交換できるように、トライアルインレーを自己固定型トライアルソケットに接合することができる。通常、22mm、28mm、32mmまたは36mmの直径のボールヘッドが利用できる。したがって、異なる自己固定型トライアルソケットに挿入できる、それらの直径を有するトライアルインレーを提供することができる。
【0010】
当該トライアルインレーの選択及び取り付けによって、自己固定型トライアルソケットは、操作器具により、準備された骨キャビティに位置付けられ、一つまたは複数のバネ要素、たとえば一つまたは複数のリーフスプリングの弛緩によって固定されることができる。
【0011】
自己固定型トライアルソケットを寛骨におけるキャビティの内部に固定するように、バネ要素は自己固定型トライアルソケットに保持力を及ぼす。操作器具を用いて、スプリング力、すなわち該保持力に対抗する力を加えることにより、容易に、自己固定型トライアルソケットを寛骨におけるキャビティに配置し、また、そこから再び取り外すことができる。結果的に、自己固定型トライアルソケットを、非常に正確に、繰り返し配置し且つ方向付けることができる。たとえば、操作器具により自己固定型トライアルソケットが寛骨におけるキャビティ内に挿入された後、たとえば、衝撃及び転位テスト、または大腿骨の可動範囲のテスト等、さまざまなテストを行うことができる。テストの結果が肯定的なものであった場合、これらのテストの結果に基づいて、自己固定型トライアルソケットの最終的な位置及び方向付けを確定でき、または、テストの結果が十分なものでなかった場合、位置及び/又は方向付けを適宜に変更することができる。十分な結果が得られるまで、この手順を何回でも繰り返すことができ、バネ要素の使用により寛骨の損傷が回避される。特に、たとえばピンまたはネジなどの寛骨に損傷を与える固定要素の必要はない。自己固定型トライアルソケットを用いて最終的な位置及び方向付けが確定された後、ソケットインプラントはそのようにして決定された位置及び方向付けに埋め込まれる。
【0012】
そのようにして決定された位置及び方向付けのインプラントへの移行は、たとえば、手術ナビゲーションシステムを用いて確実に行うことができる。この目的を達成するため、たとえば、適切な位置表示器を、自己固定型トライアルソケットに取り付けることができる操作器具に装着する。そして、同様に、位置表示器をソケットインプラントのための操作器具に取り付けることができる。それゆえに、ソケットインプラントの位置を、最適であると判明した自己固定型トライアルソケットの位置に厳密に類似するように選択することができる。また、骨キャビティに適用されたマークに基づいて位置を複製することができる。このようなマークは、たとえば、最適であると判明した位置における自己固定型トライアルソケットのエッジのコースを示す。そして、マークに一致させるように、最終的なソケットインプラントのエッジを選択することができる。
【0013】
したがって、当該自己固定型トライアルソケットは、患者にほとんどストレスをもたらさない、効果的な方法で、転位または衝撃のリスクを回避することに役に立つ。
【0014】
好ましい実施形態において、バネ要素または複数のバネ要素のうちの少なくとも一つは、リーフスプリングの形であり、該リーフスプリングは、好ましくは少なくとも一部の領域では、自己固定型トライアルソケットの外面を形成する。このようなバネ要素は、特に製造が簡単であり、自己固定型トライアルソケットの内部ではほんの少しの場所のみを占める。
【0015】
好ましくは、リーフスプリング/複数のリーフスプリングの近位端は、自己固定型トライアルソケットの対称軸の貫通点の付近に固定され、自己固定型トライアルソケットのエッジ領域に位置する遠位端の位置は、圧力を受けることにより変化する。このようなリーフスプリングのアレンジメントにおいて、挿入操作中に、後者が応力を受ける。結果的に、二つの操作、すなわち、自己固定型トライアルソケットの挿入及びリーフスプリングの圧迫が同時に行われることができる。
【0016】
好ましくは、一つまたは複数の保持エレメントは、自己固定型トライアルソケットの外面の表面部に、突起部、特に鋸歯状の突起部を備え、該表面部は寛骨に面する。これは、寛骨におけるキャビティ内の自己固定型トライアルソケットの固定を改善する。
【0017】
突起部は、好ましくはリーフスプリングの遠位端に配置される。遠位端の領域に比較的高い圧力が作用し、そのため、その領域では突起部が特に効果的である。
【0018】
自己固定型トライアルソケットの特定の開発では、好ましくは、挿入された状態において、その一部は寛骨におけるキャビティ壁を越えて、少なくとも0.5cm、特に1.0cm突出する。操作器具を用いて大きな労力なしに、寛骨におけるキャビティから自己固定型トライアルソケットを取り外せるように、このような突出部は係合面を提供する。
【0019】
好ましくは、保持エレメントは、突起部の領域内に、それらが保持エレメントを解放するための対応する操作器具に係合できるように構成される。これは自己固定型トライアルソケットの取り外しを容易にする。
【0020】
好ましい実施形態において、格子状構造が形成されるように自己固定型トライアルソケットは貫通開口部を備える。結果的に、外科医は、自己固定型トライアルソケットが準備された骨キャビティにぴったりと接触しているか、後に埋め込まれる金属シェルを支えるのに十分な骨が利用可能であるかを視覚的に評価することができる。
【0021】
上記の問題は、自己固定型トライアルソケットと操作器具とを備えるアレンジメントによりさらに解決される。操作器具は、人または装置が操作器具を操作して、自己固定型トライアルソケットの内部に向かう力を保持エレメントに加えることができるよう、特に鉗子のように、構成される。操作器具の使用により、特に操作器具が鉗子のような構造である場合、相対的に強い力を保持エレメントに加えることができ、相対的に「強力な」リーフスプリングの使用が可能となる。
【0022】
言い換えれば、上記の問題は、自己固定型トライアルソケットと、位置決め補助具及び/又は方向決定補助具を有するナビゲーションシステムとを備えるアレンジメントにより解決される。該位置決め補助具及び/又は方向決定補助具は、それの位置及び/又は方向付けを測定し且つ保存するために、自己固定型トライアルソケットに固定できる。このようなアレンジメントにより、自己固定型トライアルソケットの位置及び/又は方向付けを正確に測定することができる。自己固定型トライアルソケットがトライアル機能のみを果たし、すなわち、適切な位置及び方向付けが確定された後に、それが長期使用により適するソケットインプラントによって代替される場合では、有利である。そして、寛骨への上記言及されたソケットインプラントの長期取り付けは、ネジ、アンカーリングピンなどにより行うこともできる。
【0023】
また、この問題は、自己固定型トライアルソケットと、自己固定型トライアルソケットに挿入可能なまたは挿入されたインレー、特にトライアルインレーとを備えるアレンジメントによっても解決される。このようなアレンジメントは、異なるトライアルインレーをテストするのに用いることもできる。
【0024】
最後に、この問題は、個々の自己固定型トライアルソケットのサイズが異なり、特にそれらのボール半径が異なる、複数の自己固定型トライアルソケットにより構成されるセットによっても解決される。このようなセットの提供は、自己固定型トライアルソケットの位置及び方向付け、そして最終的にソケットインプラントの正確なセッティングを達成させるのみでなく、それらの幾何学的なデザインに異なるテストを受けさせることも可能にする。異なるインレー、特にトライアルインレーの提供により、このようなセットを増加させることができる。
【0025】
更なる実施形態は従属請求項に示される。
【0026】
以下、添付の図面を参照し、詳細に説明される例示的な実施形態に基づき、本発明の更なる特徴及び利点について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は第一実施形態に基づく自己固定型トライアルソケットの斜視図(oblique view)である。
【図2】図2はトライアルインレーが挿入された、第一実施形態に基づく自己固定型トライアルソケットの斜視図である。
【図3】図3は図1及び2に基づく実施形態の断面図である。
【図4】図4は保持エレメントが第一位置にある状態で、図3のラインIII-IIIに沿う断面図である。
【図5】図5は保持エレメントが第二位置にある状態で、図3のラインIII-IIIに沿う断面図である。
【図6】図6はトライアルインレーの斜視図である。
【図7】図7は図6によるトライアルインレーの断面図である。
【図8a】図8aはトライアルインレーの異なる実施形態の断面図である。
【図8b】図8bは、図8aによるトライアルインレーの断面図である。
【図9a】図9aはトライアルインレーの異なる実施形態の断面図である。
【図9b】図9bは、図9aによるトライアルインレーの断面図である。
【図10a】図10aはトライアルインレーの異なる実施形態の断面図である。
【図10b】図10bは、図10aによるトライアルインレーの断面図である。
【図11a】図11aはトライアルインレーの異なる実施形態の断面図である。
【図11b】図11bは、図11aによるトライアルインレーの断面図である。
【図12】図12はトライアル股関節ソケット及び操作器具(一部を断面図に示される)を示している。
【図13】図13はフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0028】
下記の説明において、同一のパーツまたは同様に作用するパーツに、同一の参照番号が用いられる。
【0029】
図1は自己固定型トライアルソケットの斜視図である。自己固定型トライアルソケットの形状は、中空半球にほぼ相当する。自己固定型トライアルソケットが挿入された状態である場合、外面10は、少なくとも一部の領域では、寛骨におけるキャビティ(図示せず)に接触する。内面11は、インレーまたはボールジョイントヘッド(インレー及びボールジョイントヘッドは図示せず)を受ける役割を果たす。
【0030】
自己固定型トライアルソケットは本体12と三つの保持エレメント13とを備える。また、四つまたは五つ、または任意の数の保持エレメント(図示せず)を備えることが可能である。
【0031】
本体12は、好ましくは、金属または金属合金で作られ、特にスチール、好ましくはインストルメントスチール、または適しているばね特性を有するチタン合金で作られ、ほぼ円形のポール部分18及び三つのさらなるポーション14を形成する。ポール部分18は、たとえば、インレー(図示せず)を固定するのに用いられる円形の凹部19を有する。上記三つのポーション14は、四つのリブ15a〜15dにより構成される。リブ15a〜15cはほぼ経線方向に伸び、且つリブ15dにより互いに接合される。該リブ15dはソケット開口16の範囲内で赤道方向に伸びる。本体12の三つのポーション14は、互いに間隔をおいて設けられ、保持エレメント13は、外側がポーション14によって囲まれる中間領域17に位置する。
【0032】
図2において、保持エレメント13は、半径方向の断面図で、単独に再度示される。保持エレメント13の近位端20は、本体12のポール部分18(図1参照)に、しっかりと接合されている。遠位端21は結合されず、自己固定型トライアルソケットのエッジ領域22に位置する。
【0033】
保持エレメント13(図3も参照)はリーフスプリング23を備える。保持エレメント13は鋸歯状の突起部24と凹部25とを更に備える。鋸歯状の突起部24は保持エレメント13の遠位端21に設けられ、寛骨におけるキャビティの方向に面する。凹部25は、自己固定型トライアルソケットの突出部の領域内で(挿入された状態で)、保持エレメントの遠位端21に配置される。
【0034】
鋸歯状の突起部24は、自己固定型トライアルソケット及び自己固定型トライアルソケットが挿入される寛骨におけるキャビティの間の保持力を増大する。凹部25は、たとえば、対応する鉗子状の操作器具1(図12参照)に対応する物として機能し、該操作器具1を用いて、三つの保持エレメント13に(半径方向に)内側方向の力を及ぼすことができる。また、ナビゲーションシステムの構成要素としての位置決め及び/または方向決定補助具を、保持エレメント13の凹部25に固定することができる。しかし、何かほかの方法で位置決め及び方向決定補助具を取り付けることもでき、たとえば、ポーション14のリブ15dに設置することができる。
【0035】
自己固定型トライアルソケットは、単に手術中のテスト目的で作られている。そして、ソケットインプラントは患者体内の長期間取り付けに使われる。このようなソケットインプラントは、たとえば、接着により、寛骨に非解放的に接合することができる。
【0036】
図2〜5は、トライアルインレー2が挿入された、図1による股関節ソケットを示している。これにより、トライアルインレーを使用して、衝撃監視下で接合テストを行うことができる。よって、好ましくは、トライアルソケットをトライアルインレーと組み合わせて使用する。
【0037】
図4及び5は、リーフスプリング23を有する保持エレメント13の二つの異なる位置を示している。図4では、保持エレメント13の遠位端21はトライアルインレー2から離れている。たとえば、トライアルソケットが寛骨におけるキャビティ内に取り付けられる場合、トライアルソケット及びトライアルインレー2により構成されるアレンジメントはこの位置に位置する。図5では、図4と比べ、保持エレメント13の遠位端21が、順に、半径方向に内方に向けて押される。全部三つの保持エレメント13(図4及び5では、それらのうちの一つのみが見える)がこの位置に位置する場合、トライアルインレーを含めてトライアルソケットは寛骨におけるキャビティから取り外せる。
【0038】
トライアルインレー2(図3〜5参照)は、好ましくは、固定要素3によって、トライアルソケットのポール部分18の凹部19に固定される。この場合において、固定要素3は、トライアルインレー2とトライアルソケットとをネジ込むことができる雄ネジ4を備える。雄ネジ4は、たとえば、スチールで作ることができる。
【0039】
図6及び7では、トライアルインレー2は単独に再び示される。これらの図は、雄ネジ4及び空洞7を有する固定要素3に加え、エッジ5を有する本体6の構成も示されている。該本体6は、トライアルソケット(図6及び7に図示なし)の本体12と同様に、中空半球の形状を有しており、開口を備えていない。エッジ5は、内方に向いて半径方向に傾いている。
【0040】
図8a〜11a、図8b〜11bは、トライアルインレー2の四つの異なる実施形態を示している。四つ全ての実施形態において、本体6の外面8が同じであるため、示されている四つのトライアルインレーは同じトライアルソケットに挿入されることができる。原理的には、さまざまなトライアルソケットに言及されたテストを受けさせることができるように、異なる外面8を備えるトライアルインレーを提供することも、当然ながら考えられる。
【0041】
好ましくは、カップ内径(cup diameter)が22mm、28mm、32mmまたは36mmを有するインレーが製造される。22mmのカップ内径を有するインレーは最小の可動範囲を提供し、36mmのカップ内径を有するインレーは最大の可動範囲を提供する。異なるトライアルインレーの1セット全部が同時に利用可能であることは、たとえば、手術中に、特に有利である。手術中、好ましくは、特製のマニピュレーションヒップボール(図示せず)はトライアルインレーに挿入される。
【0042】
図12は、挿入されたトライアルインレーを有するトライアルソケットを示しており、操作器具1は該トライアルソケットと係合している。具体的には、挟持要素41は保持エレメント13の凹部25に取り付けられている。よって、操作器具1は、挿入されたトライアルインレーと共にトライアルソケットを位置付ける、及び取り外すことができるように構成されている。したがって、更なる利点は、ポール部分18におけるネジ込み接合により達成できる安定した位置(図3〜5参照)に加え、操作器具1による簡単な交換性である。操作器具1を利用して、半径方向に内方に向けて、トライアルソケットに力を与えることができる。
【0043】
図13は、図1及び2に示されている自己固定型トライアルソケットを用いて、臀部の手術の典型的な経過を説明するフローチャートを示す。本明細書に記載されている手術は、八つのサブステップ(ブロック31〜38に表される)に分けることができる。
【0044】
ステップ1(ブロック31)
最初のステップでは、患者の股関節部は測定され、手術テーブルに関する個々のコンポーネントの位置及び方向付けが保存される。以下、用語方向付け/位置は常に参考としての手術テーブルに関連する。
【0045】
ステップ2(ブロック32)
この(任意の)ステップでは、自己固定型トライアルソケットが挿入可能となるように、患者の寛骨に予備作業を受けさせる。
【0046】
ステップ3(ブロック33)
ステップ1からの測定値を考慮し、自己固定型トライアルソケットは次に寛骨におけるキャビティに挿入される。位置及び方向付け測定装置またはナビゲーションシステムによって、自己固定型トライアルソケットの位置及び方向付けが測定され且つ保存される。自己固定型トライアルソケットの位置がステップ1で計算された位置と一致しない場合、適切な操作器具を用いて、自己固定型トライアルソケットを取り外して再配置することができる。
【0047】
ステップ4(ブロック34)
大腿骨ステムは、大腿骨内に押し込まれ、そしてシャンクネックを通ってボールジョイントヘッドに接合される。
【0048】
ステップ5(ブロック35)
その後、ボールジョイントヘッドは自己固定型トライアルソケット内に挿入される。種々のインレーから適切なインレーを事前に選択し、自己固定型トライアルソケットに挿入することができる場合がある。
【0049】
ステップ6(ブロック36)
大腿骨及び自己固定型トライアルソケットが接合されると、多様なテスト、たとえば、さまざまな運動テスト、衝撃テスト及び脱臼テストなどが行われる。これらのテストの結果が十分なものである場合、ステップ7に進む。上記結果が十分ではない場合、外科医はステップ3に戻って、自己固定型トライアルソケットの位置を変更する。
【0050】
ステップ7(ブロック37)
次いで、自己固定型トライアルソケットの位置決めにも利用できる、適切な操作器具を用いて、該トライアルソケットを取り外す。ここに、自己固定型トライアルソケットの正確な位置及び方向付けを決定することが、特に重要であることが理解されるだろう。
【0051】
ステップ8(ブロック38)
このステップにおいて、すでに確定された自己固定型トライアルソケットの理想的な位置を維持しながら、ソケットインプラントが埋め込まれる。このソケットインプラントは、たとえば、所定の位置に接着される、及び/又は寛骨と螺合される。
【0052】
ステップ3(自己固定型トライアルソケットの位置決め)では、異なる自己固定型トライアルソケット、たとえば、異なる半径を有する自己固定型トライアルソケットがステップ6で挿入され且つテストされることも考えられる。同様に、ステップ6でそれらをテストできるために、ステップ5では、異なるインレー、特にトライアルインレーを提供することが考えられる。
【0053】
また、寛骨におけるキャビティに、自己固定型トライアルソケット及び/又はソケットインプラントが配置される中間シェルを挿入することも可能である。
【0054】
自己固定型トライアルソケットが寛骨におけるキャビティに対して一定量で突出することが、特に有利である。これによって、操作器具及び/又は位置測定補助具及び/又は方向決定補助具を自己固定型トライアルソケットと噛み合わせることがより簡単になる。
【0055】
本発明は特に人体に使用するためのものだが、動物、特に犬に使用されることもでき、且つ動物に応じて構成されることができる。
【0056】
ここで、上述のすべてのパーツ、それら自身またはあらゆる組み合わせ、特に図面において詳細を示したとみなされるパーツは、本発明にとって重要なものとして主張されることが注目されるべきである。それらの変更は当業者にとって周知である。
【符号の説明】
【0057】
1 操作器具
2 トライアルインレー
3 固定要素
4 雄ネジ
5 (トライアルインレーの)エッジ
6 (トライアルインレーの)本体
7 (トライアルインレーの)空洞
8 (トライアルインレーの)外面
9 (トライアルインレーの)内面
10 外面
11 内面
12 本体
13 保持エレメント
14 ポーション
15a〜d リブ
16 ソケット開口
17 中間領域
18 ポール部分
19 (ポール部分における)凹部
20 近位端
21 遠位端
22 エッジ領域
23 リーフスプリング
24 突起部
25 (保持エレメントにおける)凹部
30〜38 ブロック
41 挟持要素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
寛骨における対応するキャビティ内への解放可能な挿入のための自己固定型トライアルソケットであって、
前記寛骨におけるキャビティに適合される外面(10)と、
インレー特にトライアルインレー及び/又はボールジョイントヘッドに適合され、股関節ソケットで後者を受けるための内面(11)と、
前記キャビティ内に前記股関節ソケットを固定するための少なくとも一つの保持エレメント(13)とを備え、
前記少なくとも一つの保持エレメント(13)は、少なくとも一つのバネ要素を有し、該少なくとも一つのバネ要素は、前記股関節ソケットの解放可能な固定のために、挿入した状態で、前記バネ要素が、少なくとも一部の領域では、外向きのスプリング力を寛骨におけるキャビティに及ぼすように構成されていることを特徴とする自己固定型トライアルソケット。
【請求項2】
前記バネ要素または前記複数のバネ要素のうちの少なくとも一つは、リーフスプリング(23)の形であり、該リーフスプリング(23)は、好ましくは少なくとも一部の領域では、前記股関節ソケットの前記外面(10)を形成することを特徴とする請求項1に記載の自己固定型トライアルソケット。
【請求項3】
前記保持エレメント(13)の近位端(20)は、前記股関節ソケットの対称軸の貫通点の付近に固定され、前記股関節ソケットのエッジ領域(22)に位置する遠位端(21)の位置は、圧力を受けることにより変化することを特徴とする前記請求項のいずれか一つに記載の自己固定型トライアルソケット。
【請求項4】
前記一つまたは複数の保持エレメント(13)は、前記外面の表面部に、突起部(24)、特に鋸歯状の突起部を備え、該表面部が前記寛骨に面することを特徴とする前記請求項のいずれか一つに記載の自己固定型トライアルソケット。
【請求項5】
前記突起部(24)は前記保持エレメント(13)の遠位端(21)に配置されることを特徴とする前記請求項のいずれか一つに記載の自己固定型トライアルソケット。
【請求項6】
前記股関節ソケットが挿入された状態において、その一部は前記寛骨におけるキャビティのエッジを越えて、好ましくは、少なくとも0.5cm、特に1.0cm突出することを特徴とする前記請求項のいずれか一つに記載の自己固定型トライアルソケット。
【請求項7】
前記一つまたは複数の保持エレメント(13)は、前記突起部の領域内で、該一つまたは複数の保持エレメント(13)を解放するための対応する工具にそれらが係合できるように構成されることを特徴とする前記請求項のいずれか一つに記載の自己固定型トライアルソケット。
【請求項8】
格子状構造が形成されるように前記股関節ソケットは貫通開口部を備えることを特徴とする前記請求項のいずれか一つに記載の自己固定型トライアルソケット。
【請求項9】
前記請求項のいずれか一つに記載の自己固定型トライアルソケットと操作器具とを備えるアレンジメントであって、
前記操作器具は、人または装置が該操作器具を操作して、前記股関節ソケットの内部に向かう力を前記保持エレメント(13)に加えることができるよう、特に鉗子のように、構成されることを特徴とするアレンジメント。
【請求項10】
前記請求項のいずれか一つに記載の自己固定型トライアルソケットと、位置決め補助具及び/又は方向決定補助具とを備えるアレンジメントであって、
前記位置決め補助具及び/又は方向決定補助具は、股関節ソケットの位置及び/又は方向付けを測定及び/又は保存するために、該股関節ソケットに固定できることを特徴とするアレンジメント。
【請求項11】
前記請求項のいずれか一つに記載の自己固定型トライアルソケットと、該自己固定型トライアルソケット内に挿入できるインレー、特にトライアルインレーとを備えることを特徴とするアレンジメント。
【請求項12】
前記請求項のいずれか一つに記載の自己固定型トライアルソケットを複数備えるセットであって、
前記個々の股関節ソケットのサイズが異なり、特にそれらのボール半径が異なることを特徴とするセット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【図9a】
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【図9b】
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【図10a】
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【図10b】
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【図11a】
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【図11b】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2011−529710(P2011−529710A)
【公表日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−520435(P2011−520435)
【出願日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際出願番号】PCT/EP2009/059502
【国際公開番号】WO2010/012648
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(508132436)スミス アンド ネフュー オーソペディックス アーゲー (5)
【Fターム(参考)】