説明

自己炎症性疾患を処置するためのIL−1アンタゴニストを使用する方法

【課題】自己炎症性障害、疾患または状態を処置、阻害または改善する方法の提供。
【解決手段】治療量のインターロイキン1(IL−1)アンタゴニストを、処置、阻害または改善を必要とする被験体に投与する工程を包含し、この自己炎症性障害、疾患または状態が処置、阻害または改善される、方法。IL−1アンタゴニストは、IL−1に結合し得、かつIL−1を阻害し得る分子である。この治療方法は、新生児発症性多系統炎症障害(NOMID/CINCA)、マックル−ウェルズ症候群(MWS)、家族性低温自己炎症性症候群(FCAS)、家族性地中海熱(FMF)、腫瘍壊死因子レセプター関連性周期熱症候群(TRAPS)または全身発症性若年性特発性関節炎(スティル病)を有するヒト成人またはヒト小児を処置するために有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(背景)
(発明の分野)
本発明は、例えば、家族性地中海熱(FMF)、NOMID/CINCA、マックル−ウェルズ症候群、FCASおよび腫瘍壊死因子レセプター関連性周期熱症候群(tumour necrosis factor receptor−associated periodic fever syndrome)(TRAPS)を含むような自己炎症性(autoinflammatory)疾患を処置するためのインターロイキン−1(IL−1)アンタゴニストを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連分野の説明)
自己炎症性障害の重要な一群は、CIAS−1(ピリン関連タンパク質(「クライオピリン(cryopyrin)」と呼ばれる)をコードする遺伝子)の突然変異に関連する常染色体優性の状態を包含する(非特許文献1;非特許文献2)。これらの障害としては、新生児発症性多系統炎症障害(Neonatal Onset Multisystem Inflammatory Disorder)(NOMID/CINCA)、マックル−ウェルズ症候群(MWS)および家族性低温自己炎症性症候群(Familial Cold Autoinflammatory Syndrome)(FCAS)が挙げられる。これらの障害は、最も軽度のFCASからNOMID/CINCAの重度な障害性疾患までにおよぶ臨床症状の範囲を示す。じんま疹様の皮膚の発疹は、これらの疾患の全範囲に共通する。MWSまたはNOMIDを有する大半の患者が、多くの異なる刺激により一貫して引き起こされる日常的な発疹を示す一方で、FCASを有する患者において、この発疹は、低温暴露により誘導され得る。結膜炎は、疾患の発現の全形態において存在するが、難聴、無菌性髄膜炎および関節炎は、主にMWSおよびNOMID/CINCAを有する患者において見られる。骨端および膝蓋骨における、異常形成性(disfigure)かつ障害性の身体の過成長は、NOMID/CINCAを有する患者においてのみ見られる。
【0003】
FMFは、発熱および漿膜炎または滑膜炎の発症に特徴を有する劣性遺伝の状態である;いくつかの被験体はまた、全身性アミロイド症を発症する(非特許文献3)。FMF遺伝子は、アポトーシス(細胞死)および炎症の制御に関与する分子ファミリーの代表例である、ピリンと呼ばれる新規タンパク質をコードする。これらのタンパク質が機能し、そして突然変異が疾患を引き起こす正確な生化学的機構は、依然として未知である。
【0004】
スティル病(全身発症性若年性特発性(systemic onset juvenile idiopathic)関節炎)は、スパイク熱(spiking fever)、一過性のサーモン色(salmon color)の発疹、関節炎、関節痛および肝脾腫大症(非特許文献4;非特許文献5)により明白になる。今までのところ、スティル病の決定的な遺伝的関連性が存在せず、その病因は、十分に理解されていない。興味深いことに、スティル病の多くの徴候および症状は、自己炎症性疾患の徴候および症状に類似する。代表的に、スティル病は、まず小児期の間に発症するが、成人期でのその発症も有し得る。
【0005】
同様に、川崎病は、発熱、腫大した関節および関節炎の関節および発疹、ならびに罹患した小児の約15%〜25%において永続的な冠状動脈の損傷を引き起こし得る血管の炎症を伴う、小児に罹患する疾患である。2つの他の類似の疾患は、ブラウ症候群(Blau’s syndrome)および早期発症サルコイドーシス(EOS)であり、それらの両方が、NOD2(ピリンに類似するタンパク質)の機能獲得型(gain of function)突然変異により引き起こされ、そして発疹,肉芽腫症、関節炎およびブドウ膜炎を引き起こす。自己炎症ともみなされている他の疾患としては、汗腺膿瘍、ベーチェット症候群(Behcet’s)、周期熱症候群を伴う高免疫グロブリン血症D(HIDS)、腫瘍壊死因子レセプター関連性周期熱症候群(TRAPS)および発熱性無菌(Pyogenic sterile)関節炎、壊疽性膿皮症およびざ瘡(PAPA症候群)が挙げられる。
【0006】
自己炎症性疾患の病因は、完全には理解されていない。インターロイキン−1(IL−1)が多くのこれらの状態で役割を果たし、このサイトカインを標的化することは重要な利益を提供し得るという多数の証拠が増えつつある(非特許文献6)。これらの自己炎症性疾患の改善した治療処置を開発するための、明確な必要性が存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Feldmannら、Am.J.Hum.Genet.(2002)71:198〜203
【非特許文献2】Hoffmanら、Nat.Genet.(2001)29:301〜305
【非特許文献3】Balowら、Genomics(1997)44:280〜291
【非特許文献4】Massonら、Rev.Rhum.Engl.Ed.(1995)62:748〜757
【非特許文献5】Spiegelら、Arthritis Rheum.(2000)43:2402〜2409
【非特許文献6】Hoffmanら、Arthritis Rheum.(2004)50:345〜349
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(本発明の簡潔な要旨)
第1の局面において、本発明は、自己炎症性障害を処置、阻害または改善する方法に特徴を有し、この方法は、インターロイキン1(IL−1)アンタゴニストを、この処置、阻害または改善を必要とする被験体に投与する工程を包含する。IL−1アンタゴニストは、IL−1の生物学的作用をブロックまたは阻害し得る化合物であり、IL−1結合融合タンパク質を含む。好ましい実施形態において、このIL−1アンタゴニストは、2つのIL−1レセプター成分と多量体化成分(例えば、2003年7月31日に公開された米国特許公開第2003/0143697に記載のIL−1融合タンパク質捕捉体(trap)アンタゴニスト(「IL−1捕捉体」))を含む、IL−1特異的融合タンパク質である。特定の実施形態において、このIL−1アンタゴニストは、配列番号4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26に示される融合タンパク質である。好ましい融合タンパク質は、配列番号10に示される。本発明は、配列番号4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26のタンパク質と実質的に同一であり(すなわち、配列番号4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26のタンパク質と少なくとも95%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性を有するタンパク質)かつ、IL−1に結合し得、かつIL−1を阻害し得る、IL−1結合融合タンパク質の使用を包含する。さらに、特定の実施形態において、このIL−1アンタゴニストは、1つ以上のレセプター成分の代わりに、1つ以上の免疫グロブリン由来の成分を含む融合タンパク質である。特定の実施形態において、このIL−1アンタゴニストは、IL−1に特異的な1つ以上の免疫グロブリン由来の成分および/またはIL−1レセプターを含む。
【0009】
処置される被験体は、最も好ましくは、自己炎症性障害に罹患していると診断されるヒトである。より具体的には、被験体は、CIAS−1内の突然変異に関連する自己炎症性障害(例えば、新生児発症性多系統炎症障害(NOMID/CINCA)、マックル−ウェルズ症候群(MWS)、家族性低温自己炎症性症候群(FCAS)、家族性地中海熱(FMF)、全身発症性若年性特発性関節炎(スティル病)、腫瘍壊死因子レセプター関連性周期熱症候群(TRAPS)または川崎病)を有すると診断されるヒト成人またはヒト小児である。
【0010】
本発明の方法は、当該分野で公知の任意の手段(例えば、皮下投与、筋肉内投与、鼻腔内投与、静脈内投与、経皮投与または口内経路の投与)によるIL−1アンタゴニストの投与を包含する。好ましくは、投与は、皮下または静脈内である。
【0011】
第2の局面において、本発明は、NOMID/CINCA、MWS、FCAS、FMF、スティル病、TRAPSおよび川崎病からなる群より選択される疾患または状態を処置、阻害または改善する方法に特徴を有し、この方法は、インターロイキン1(IL−1)アンタゴニストを、処置、阻害または改善を必要とする被験体に投与する工程を包含する。好ましい実施形態において、このIL−1アンタゴニストは、IL−1を捕捉し得る融合タンパク質である。特定の実施形態において、このIL−1アンタゴニストは、配列番号4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26に示される融合タンパク質、またはIL−1に結合し得、かつIL−1を阻害し得る、実質的に同一のタンパク質である。好ましいIL−1アンタゴニストは、配列番号10に示される。好ましくは、処置される被験体は、この疾患または状態を有すると診断される、小児ヒトまたは成人ヒトである。
【0012】
第3の局面において、本発明は、新生児発症性多系統炎症障害(NOMID/CINCA)を処置、阻害または改善する方法に特徴を有し、この方法は、インターロイキン1(IL−1)アンタゴニストを、処置、阻害または改善を必要とする被験体に投与する工程を包含する。好ましい実施形態において、このIL−1アンタゴニストは、IL−1を捕捉し得る融合タンパク質である。特定の実施形態において、このIL−1アンタゴニストは、配列番号4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26に示される融合タンパク質、またはIL−1に結合し得、かつIL−1を阻害し得る、実質的に同一のタンパク質である。好ましいIL−1アンタゴニストは、配列番号10に示される。
【0013】
第4の局面において、本発明は、マックル−ウェルズ症候群(MWS)を処置、阻害または改善する方法に特徴を有し、この方法は、インターロイキン1(IL−1)アンタゴニストを、処置、阻害または改善を必要とする被験体に投与する工程を包含する。好ましい実施形態において、このIL−1アンタゴニストは、IL−1を捕捉し得る融合タンパク質である。特定の実施形態において、このIL−1アンタゴニストは、配列番号4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26に示される融合タンパク質、またはIL−1に結合し得、かつIL−1を阻害し得る、実質的に同一のタンパク質である。好ましいIL−1アンタゴニストは、配列番号10に示される。
【0014】
第5の局面において、本発明は、家族性低温自己炎症性症候群(FCAS)を処置、阻害または改善する方法に特徴を有し、この方法は、インターロイキン1(IL−1)アンタゴニストを、処置、阻害または改善を必要とする被験体に投与する工程を包含する。好ましい実施形態において、このIL−1アンタゴニストは、IL−1を捕捉し得る融合タンパク質である。特定の実施形態において、このIL−1アンタゴニストは、配列番号4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26に示される融合タンパク質、またはIL−1に結合し得、かつIL−1を阻害し得る、実質的に同一のタンパク質である。好ましいIL−1アンタゴニストは、配列番号10に示される。
【0015】
第6の局面において、本発明は、家族性地中海熱(FMF)を処置、阻害または改善する方法に特徴を有し、この方法は、インターロイキン1(IL−1)アンタゴニストを、処置、阻害または改善を必要とする被験体に投与する工程を包含する。好ましい実施形態において、このIL−1アンタゴニストは、IL−1を捕捉し得る融合タンパク質である。特定の実施形態において、このIL−1アンタゴニストは、配列番号4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26に示される融合タンパク質、またはIL−1に結合し得、かつIL−1を阻害し得る、実質的に同一のタンパク質である。好ましいIL−1捕捉体は、配列番号10に示される。
【0016】
第7の局面において、本発明は、全身発症性若年性特発性関節炎(スティル病)を処置、阻害または改善する方法に特徴を有し、この方法は、インターロイキン1(IL−1)アンタゴニストを、処置、阻害または改善を必要とする被験体に投与する工程を包含する。好ましい実施形態において、このIL−1アンタゴニストは、IL−1を捕捉し得る融合タンパク質である。特定の実施形態において、このIL−1アンタゴニストは、配列番号4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26に示される融合タンパク質、またはIL−1に結合し得、かつIL−1を阻害し得る、実質的に同一のタンパク質である。好ましいIL−1捕捉体は、配列番号10に示される。
【0017】
第8の局面において、本発明は、腫瘍壊死因子レセプター関連性周期熱症候群(TRAPS)を処置、阻害または改善する方法に特徴を有し、この方法は、インターロイキン1(IL−1)アンタゴニストを、処置、阻害または改善を必要とする被験体に投与する工程を包含する。好ましい実施形態において、このIL−1アンタゴニストは、IL−1を捕捉し得る融合タンパク質である。特定の実施形態において、このIL−1アンタゴニストは、配列番号4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26に示される融合タンパク質、またはIL−1に結合し得、かつIL−1を阻害し得る、実質的に同一のタンパク質である。好ましいIL−1捕捉体は、配列番号10に示される。
【0018】
本発明の治療方法の特定の実施形態において、被験体は、第一のIL−1結合融合タンパク質捕捉分子と第二の治療剤との組み合わせにより処置される。この第二の治療剤は、例えば、別のIL−1結合融合タンパク質捕捉体、アナキンラ(anakinra)(Kineret(登録商標)、Amgen)、ヒトIL−1レセプターアンタゴニスト(IL1Ra)の組換え非グリコシル化形態、または抗IL−18薬物(例えば、IL−18BPまたは誘導体)、IL−18結合融合タンパク質捕捉体(「IL−18捕捉体」)、抗IL−18、抗IL−18R1もしくは抗IL−18Racp抗体もしくは抗体フラグメントのような、第2のIL−1アンタゴニストであり得る。他の同時療法(co−therapy)としては、FMFのための低用量のコルヒチン(colchine)、アスピリンもしくは他のNSAID、プレドニゾロンのようなステロイド、メトトレキサート、低用量のシクロスポリンA、TNFインヒビター(例えば、Enbrel(登録商標)またはHumira(登録商標))、他の阻害性インヒビター(例えば、カスパーゼ−1、p38、IKK1/2、CTLA−4Igのインヒビター、抗IL−6または抗IL6Raなど)が挙げられる。
【0019】
第9の局面において、本発明は、自己炎症性疾患または状態を処置する治療方法に特徴を有し、この方法は、IL−1結合融合タンパク質捕捉体と薬学的に受容可能なキャリアとを含む薬学的組成物を投与する工程を包含する。一実施形態において、このIL−1結合融合タンパク質捕捉体は、1週間から1年以上の間の処置期間の週毎の基準に基づいて1〜20mg/kgの用量範囲で投与される。別の実施形態において、IL−1結合融合タンパク質の総量は、50〜2000mgの範囲で投与され、これは、期間(例えば、数週間または数ヶ月の期間)にわたって単回用量または連続用量で提供されてもよい。
【0020】
他の目的および利点は、続く詳細な説明の再検討から明らかになる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(詳細な説明)
本方法が記載される前に、本発明は、特定の方法および記載される実験条件に限定されないことが理解されるべきである。何故なら、このような方法および条件は変動し得るからである。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるので、本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態を記載する目的のためのみであって、かつ限定することを意図しないこともまた理解されるべきである。
【0022】
本明細書および添付の特許請求の範囲に使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明確にその他を指示しない限り、複数の言及を含む。したがって、例えば、「方法」への言及は、本明細書に記載の1つ以上の方法および/もしくは1つ以上の工程の型を含み、そして/または、これらは、本開示などを読むことにより、当業者に明らかになる。
【0023】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者により通常理解される意味と同一の意味を有する。本明細書に記載される方法および材料と類似するか、または同等なあらゆる方法および材料は、本発明の実施または試験において使用され得るが、好ましい方法および材料は、これから記載される。
【0024】
(一般的な説明)
現在、遺伝子CIAS1内の突然変異は、3つの希少な遺伝的症候群(新生児発症性多系統炎症障害(NOMID)、マックル−ウェルズ症候群(MWS)および家族性低温自己炎症性症候群(FCAS))の原因であることが認識される(Hoffmanら、2001 Naure 29:301〜305;Feldmannら、2002 Am J Hum Genet 71:198〜203;Aksentijevichら、2002 Arthritis Rheum 46:3340〜3348)。全体として、これらの状態は、「CAPS」(「CIAS1関連性周期性症候群(CIAS1 Associated Periodic Syndromes)」についての頭字語)として公知である。CAPS障害は、非常に希少である:米国内で約200〜300人の成人および小児がFCASを有し、そしてNOMIDまたはMWSを有する有意により少ない成人が、これらCAPSの状態を有することが公知である。これらの状態(特に、NOMIDおよびMWS)の希少度は、おそらく生存または生殖適正に対する疾患の重症度の影響に起因する。
【0025】
CAPSは、散発性パターンまたは家族性パターンを伴う、常染色体優性の様式で遺伝される。CIAS1は、「インフラメソーム(inflammasome)(カスパーゼ1の活性を調節する非細胞性酵素複合体)」の成分であるNALP3と呼ばれるタンパク質をコードする。カスパーゼ1は、炎症性サイトカインであるIL−1の不活性な前駆体(pro−form)を切断して、生物学的に活性な形態にする酵素である(Agostiniら、2004、上記)。CIAS1内の突然変異は、IL−1の産生の増大、そして多くの病理的結果を導く(Aksentijevichら、2002、上記)。IL−1は、肝臓内で、急性期反応物質(例えば、C反応性タンパク質(CRP)および血清アミロイドA(SAA))の産生を強力に誘導する。
【0026】
CAPSの遺伝学は、これらの症候群に関連する、CIAS1内の多くの異なる点突然変異が存在し得るという点で興味深い(Sarrauste de Menthiereら、2003 Nucleic Acids Res 31:282〜285;Aksentijevichら、2002、上記)。これらの突然変異のいくつかは、ただ1つの症候群に関連し、他のものは2つに関連する。例えば、いくつかの突然変異はFCASおよびMWSに関連し得;他の突然変異はMWSおよびNOMIDに関連し得る。NOMIDを有する患者の約50%が、CIAS1のコード領域内に認識される突然変異を有さない。これらの患者において、この疾患は、CIAS1の調節領域もしくはCIAS1のタンパク質内またはこの経路の近縁のタンパク質をコードする別の遺伝子内の、未だ認識されていない突然変異に起因し得る。FCASは、NOMIDよりも遺伝的に均質である;FCASを有するほとんど全ての患者は、共通の突然変異を共有する(Sarrauste de Menthiereら、2003、上記;Hoffmanら、2001、上記)。
【0027】
CAPS障害は、共通の臨床徴候を共有し、そして臨床的な重症度の範囲として現れる。NOMIDは、最も重度に障害性であり、MWSは、ある程度障害性が軽く、そしてFCASは、最も軽度である。CAPS障害は、重複する特徴を有し、そして徴候および症状の固有の群を有する個体および家系が存在する。全てのこれらの状態に共通する特徴としては、発熱、じんま疹様発疹、関節炎または関節痛、筋肉痛、倦怠感および結膜炎が挙げられる。しかしながら、CAPS障害を有するあらゆる患者についての症状の範囲は、同一の障害を有する別の患者のものと異なり得る。活発なCAPS疾患の普遍的な特徴は、急性期反応物質(例えば、CRP、SAA)および/または赤血球沈降速度(ESR)の実験室試験における上昇である。
【0028】
NOMIDにおいて、慢性無菌髄膜炎は、精神遅滞を導き得、そしてこれらの患者はまた、骨端および膝蓋骨における、異常形成性かつ障害性の骨の過成長に苦しみ得る。これらの患者はまた、頭蓋内圧の上昇から生じる視神経萎縮症に起因する失明に苦しみ得る。MWSおよびNOMIDは、共通して、聴覚系、髄膜および関節を含み得る重度の炎症に関連する。これらの患者は、分布および強度が頻繁に変動する、日常的な高いスパイク熱および慢性の発疹に苦しみ得る。患者は、難聴(hearing loss)または難聴(deafness)に苦しみ得る。結膜炎および乳頭水腫は、頻繁に観察される。慢性の炎症および急性期反応物質(特に、SAA)の過剰産生に起因して、アミロイド症が発症し得、そして腎不全を導き得る。MWSはまた、「アミロイド症難聴症候群」としても公知である。
【0029】
FCASの臨床徴候および臨床症状は、適度な冷気(例えば、季節的な温度変化、空調)への暴露により誘発される。患者は、寒い月の間にか、または空調が普及している場所において、有痛性またはそう痒性の発疹、発熱、疲労、倦怠感、頭痛、吐き気および渇きの頻繁な発症(時折、日常的)を有し得る。多くの場合において、これは、大半の仕事場を含み得る。FCASは、患者への頻繁な痛みの供給源であり、彼らの雇用、社会および娯楽の機会を制限し得る。FCASを有する患者の2%までが、アミロイド症(生命を脅かす状態)を発症する。この頻度は、一般社会におけるアミロイド症の率よりもかなり高い。FCASの遺伝学的な歴史および自然歴は、Hoffmanら、2001 Nature 29:301〜305およびHoffmanら、2001 J Allergy clin Immunol 108:615〜620に詳細に記載される。
【0030】
(定義)
用語「ブロッカー」、「インヒビター」または「アンタゴニスト」により、化学的な反応もしくは応答または生理学的な反応もしくは応答を遅延または防止する物質が意味される。一般的なブロッカーまたはインヒビターとしては、アンチセンス分子、抗体、アンタゴニストおよびそれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。より詳しくは、IL−1ブロッカーまたはIL−1インヒビターの例は、IL−1アンタゴニスト(IL−1に結合し、かつIL−1を阻害するIL−1融合タンパク質捕捉体アンタゴニストが挙げられるが、これに限定されない)である。
【0031】
用語「治療有効用量」により、投与されると、所望の効果を生成する用量が意味される。正確な用量は、処置の目的に依存し、これは、公知の技術を使用して当業者により確かめられる(例えば、Lloyd(1999)The Art,Science and Technology of Pharmaceutical Compoundingを参照のこと)。
【0032】
用語「実質的に同一な」により、配列番号4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24および26のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも95%の同一性を有し、かつIL−1に結合し得、かつIL−1の生物学的な活性を阻害し得るタンパク質配列が意味される。
【0033】
用語「同一性」または「相同性」は、配列を整列し、必要に応じて、その配列全体についての最大のパーセント同一性を達成するためにギャップを導入した後での、候補配列が比較される、対応する配列の残基と一致する、その候補配列内のアミノ酸残基のパーセンテージを意味することが解釈され、いかなる保存的置換も配列同一性の一部としてみなさない。N末端伸長もC末端伸長もN末端挿入もC末端挿入も、同一性または相同性を減少させるとは解釈されない。アラインメントのための方法およびコンピュータプログラムは、当該分野において周知である。配列同一性は、配列分析ソフトウェアを使用して測定され得る(例えば、Sequence Analysis Software Package、Genetics Computer Group、University of Wisconsin Biotechnology Center、1710 University Ave.、Madison,Wis.53705)。このソフトウェアは、種々の置換、欠失および他の改変に対する相同性の程度を割り当てることにより、類似の配列を一致させる。
【0034】
(IL−1結合融合タンパク質捕捉体アンタゴニスト)
インターロイキン−1(IL−1)捕捉体は、IL−1レセプター成分と、別の融合タンパク質に存在する多量体化成分と相互作用し得、より高次の構造(例えば、二量体)を形成し得る多量体化成分とを含む融合タンパク質の多量体である。本発明の方法において有用なIL−1結合融合タンパク質は、単一のサイトカインに結合する2つの異なるレセプター成分を含み、これらの成分は、単一の成分の試薬により提供される親和性よりも、劇的に増加した親和性を有するアンタゴニストの生成をもたらす。IL−1結合融合タンパク質捕捉体は、ヒトIL−1RI型(IL−1RI)またはII型(IL−1RII)の細胞外ドメイン、続いてヒトIL−1補助タンパク質(accessory protein)(IL−1AcP)の細胞外ドメイン、続いて多量体化成分から構成される。好ましい実施形態において、多量体化成分は、例えば、ヒンジ領域の一部、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含むヒトIgGのFc領域のような、免疫グロブリン由来のドメインである。免疫グロブリン由来のドメインは、任意の免疫グロブリンの主要クラス(IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMが挙げられる)ならびに任意のサブクラスまたはアイソタイプ(例えば、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4;IgA−1およびIgA−2)から選択され得る。あるいは、本発明の方法において有用なIL−1結合融合タンパク質は、ヒトIL−1AcPの細胞外ドメイン、続いてヒトIL−1RIまたはIL−1RIIの細胞外ドメイン、続いて多量体化成分から構成される。IL−1結合融合タンパク質捕捉体のより詳細な説明については、WO 00/18932を参照のこと。好ましいIL−1アンタゴニストは、配列番号4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24および26に示されるアミノ酸配列を有するか、または配列番号4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24および26の配列に対して、少なくとも95%の同一性で実質的に同一であり、かつIL−1に結合し得、かつIL−1を阻害し得るタンパク質を有する。
【0035】
(処置集団)
本発明の治療方法は、CIAS−1突然変異障害(NOMID、MWS、FCAS)、FMF、TRAPSまたはスティル病に罹患した個体を処置するのに有用である。CIAS−1突然変異関連性疾患(NOMID、MWS、FCAS)、家族性地中海熱またはスティル病(成人発症または若年発症)について一般的に受け入れられる診断基準は、当業者に公知である。FMFを有すると診断される患者の場合、本発明の治療方法は、コルヒチンによる治療に無反応性の疾患を有する患者のために特に有用であり得る。
【0036】
(投与方法)
本発明は、処置方法を提供し、この方法は、有効量の本発明の因子を被験体に投与する工程を包含する。好ましい局面において、この因子は、実質的に精製される(例えば、この因子の効果を制限するか、または望ましくない副作用を生成する物質を実質的に含まない)。
【0037】
種々の送達系(例えば、リポソームによる被包、微粒子、マイクロカプセル、化合物を発現し得る組換え細胞、レセプター媒介性エンドサイトーシス(例えば、WuおよびWu、1987、J.Biol.Chem.262:4429〜4432を参照のこと)、レトロウイルスベクターまたは他のベクターの一部としての核酸の構築、など)が公知であり、本発明の因子を投与するために使用され得る。導入方法は、経腸的または非経口的であり得、そしてこれらの方法としては、皮内経路、筋肉内経路、腹腔内経路、静脈内経路、皮下経路、鼻腔内経路、硬膜外経路および口内経路が挙げられるが、これらに限定されない。化合物は、任意の好都合な経路(例えば、注入もしくはボーラス注射、上皮内層または粘膜皮膚上皮(lining)(例えば、口腔粘膜、直腸粘膜および腸粘膜など)を通しての吸収)により投与され得、他の生物学的に活性な因子とともに投与され得る。投与は、全身投与または局所投与であり得る。さらに、任意の適切な経路(脳室内注射および髄腔内注射が挙げられる)により、中枢神経系へ本発明の薬学的組成物を導入することが望ましくあり得る;脳室内注射は、例えば、Ommayaレザバのようなレザバに装着された脳室内カテーテルにより容易にされ得る。肺投与もまた、例えば、吸入器または噴霧器およびエアロゾル化剤を含む処方物の使用により、利用され得る。
【0038】
特定の実施形態において、本発明の薬学的組成物を、処置を必要とする領域に局所的に投与することが望ましくあり得る:このことは、例えば、(非限定的に)、手術中の局所注入、局所適用(例えば、注射、カテーテルの手段または移植物(この移植物は多孔質物質、非多孔質物質またはゼラチン様物質からなり、シアラスティック(sialastic)メンブレンのようなメンブレン、ファイバー、市販の皮膚代替物または血管形成用バルーンもしくは血管形成用ステントが挙げられる)の手段による)によって達成され得る。
【0039】
別の実施形態において、活性因子は、小胞(特に、リポソーム)により送達され得る(Langer(1990)Science 249:1527〜1533を参照のこと)。なお別の実施形態において、活性因子は、制御放出系により送達され得る。一実施形態において、ポンプが使用され得る(Langer(1990)上記を参照のこと)。別の実施形態において、ポリマー性物質が使用され得る(Howardら(1989)J.Neurosurg.71:105を参照のこと)。本発明の活性因子がタンパク質をコードする核酸である別の実施形態において、核酸にコードされるタンパク質の発現を促進するために、適切な核酸発現ベクターの一部として核酸を構築し、細胞内在性になるように(例えば、レトロウイルスベクターの使用(例えば、米国特許第4,980,286号を参照のこと)、または直接注入、または微粒子ボンバードメントの使用(例えば、遺伝子銃;Biolistic,Dupont)、または脂質もしくは細胞表面レセプターもしくはトランスフェクション剤によるコーティング、または核に侵入することが公知のホメオボックス様ペプチドへ結合させて核酸を投与すること(例えば、Joliotら、1991、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:1864〜1868を参照のこと)などによって)、それを投与することによって、核酸はインビボに投与され得る。あるいは、核酸は、細胞内に導入され得、発現のために相同組換えにより宿主細胞DNA内に取り込まれ得る。
【0040】
(併用治療)
多くの実施形態において、本発明の方法において有用なIL−1アンタゴニストは、1つ以上のさらなる化合物または治療と組み合わせて投与され得る。併用治療は、同時的かまたは連続的であり得る。本発明のIL−1結合融合タンパク質は、例えば、TNF阻害因子(例えば、エタネルセプト(etanercept)(Enbrel(登録商標)、Amgen)、インフリキシマブ(Remicade(登録商標)、Centocor)、Humira(登録商標)(Abbott)、サリドマイド、ステロイド、アナキンラ(anakinra)(Kinaret(登録商標)、Amgen)またはコルヒチン)と組み合わされ得る。コルヒチンは、FMFを有する被験体のための治療の主力である;本研究において、被験体は、この医薬による治療から解除されない。スティル病(および古典的な自己炎症性疾患)のために、化合物(例えば、メトトレキサート、シクロスポリン、クロラムブシル、シクロホスファミド(DMARD))は、一貫しない応答に関して単剤療法としてか、または組み合わせて使用されている。数人の被験体は高用量のステロイドに応答する。DMARD、およびより近年の抗TNF因子が使用され、種々の程度の成功を収めている。本発明のIL−1結合融合タンパク質はまた、例えば、IL−18BPまたは誘導体、IL−18結合融合タンパク質、抗IL−18、抗IL−18R1または抗IL−18Racpのような抗IL−18薬物と組み合わされ得る。他の同時治療としては、FMFのための低用量のコルヒチン、アスピリンまたは他のNSAID、ステロイド(例えば、プレドニゾロン)、メトトレキサート、低用量のシクロスポリンA、TNFインヒビター(例えば、Enbrel(登録商標)またはHumira(登録商標))、他の炎症インヒビター(例えば、カスパーゼ−1インヒビター、p38インヒビター、IKK1/2インヒビター、CTLA−4Igインヒビター、抗IL−6または抗IL6Raインヒビター)などが挙げられる。
【0041】
(薬学的組成物)
本発明はまた、薬学的組成物も提供する。このような組成物は、治療有効量の活性因子と薬学的に受容可能なキャリアとを含む。用語「薬学的に受容可能な」は、動物(より特には、ヒト)での使用について、連邦政府または州政府の管理機関により認可されるか、または、米国薬局方もしくは他の一般的に認識される薬局方に列挙されることを意味する。用語「キャリア」は、治療剤とともに投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤またはビヒクルをいう。このような薬学的なキャリアは、水および油(石油起源の油、動物起源の油、植物起源の油または合成起源の油(例えば、ピーナッツ油、大豆油、鉱油およびゴマ油など)が挙げられる)のような無菌液体であり得る。適切な薬学的賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、ショ糖、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水およびエタノールなどが挙げられる。所望される場合、組成物はまた、少量の湿潤剤、乳化剤またはpH緩衝化剤を含み得る。これらの組成物は、溶液、懸濁物、エマルジョン、錠剤、丸剤、カプセル、粉末および持続放出性処方物などの形態を取り得る。組成物は、伝統的な結合剤およびキャリア(例えば、トリグリセリド)とともに坐剤として処方され得る。経口処方物は、標準的なキャリア(例えば、製薬等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなど)を含み得る。適切な薬学的なキャリアの例は、E.W.Martinによる「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に記載される。
【0042】
好ましい実施形態において、組成物は、ヒトへの静脈内投与に適合された薬学的組成物として、慣用的な手順にしたがって処方される。必要に応じて、組成物はまた、可溶化剤と、注射部位における痛みを和らげるための局所麻酔薬(例えば、リドカイン)とを含み得る。組成物が注入により投与されるべき場合、組成物は、無菌の製薬等級の水または生理食塩水を含む注入ボトルにより投薬され得る。組成物が注射により投与される場合、投与の前に成分が混合され得るように、注射のための無菌水または生理食塩水のアンプルは提供され得る。
【0043】
本発明の活性因子は、中性の形態または塩の形態として処方され得る。薬学的に受容可能な塩としては、遊離のアミノ基とともに形成したもの(例えば、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などに由来するもの)および遊離のカルボキシル基とともに形成したもの(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニウム、水酸化カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどに由来するもの)が挙げられる。
【0044】
遅延型過敏症の処置において有効な本発明の活性因子の量は、本説明に基づいて、標準的な臨床技術により決定され得る。さらに、インビトロアッセイは、必要に応じて、最適投薬量の範囲の同定を促進するために利用され得る。処方において使用されるべき正確な用量はまた、投与の経路および状態の重症度にも依存し、そして開業医の判断および各被験体の状況にしたがって決定されるべきである。しかしながら、静脈内投与のための適切な投薬量範囲は、一般的に約2gまでの活性化合物である。有効用量は、インビトロ試験系または動物モデル試験系から得られる用量−応答曲線より推定され得る。
【0045】
全身投与のために、初めに、治療有効用量は、インビトロアッセイから推定され得る。例えば、用量は、細胞培養において決定されたIC50を含む循環濃度範囲を動物モデルにおいて達成するように、処方され得る。このような情報は、ヒトにおける有用な用量を、より正確に決定するために使用され得る。最初の投薬量もまた、当該分野において周知の技術を使用して、インビボデータ(例えば、動物モデル)から推定され得る。当業者は、動物データに基づいてヒトへの投与を容易に最適化し得る。
【0046】
投薬量および間隔は、治療効果を維持するのに十分な化合物の血漿レベルを提供するように、個別に調整され得る。局所投与または選択的取り込みの場合、化合物の有効な局所濃度は、血漿濃度に関連し得ない。当業者は、過度の実験をすることなしに、治療上有効な局所投薬量を最適化し得る。
【0047】
投与される化合物の量は、もちろん、処置される被験体、被験体の体重、苦痛の重症度、投与様式、投与頻度および処方する医師の判断に依存する。治療は、症状が検出可能である間、または症状が検出不能である場合でさえも断続的に反復され得る。治療は、単独で提供され得るか、または他の薬物と組み合わせて提供され得る。
【0048】
(キット)
本発明はまた、包装材料と、この包装材料内に収容される薬学的因子とを含む製品も提供し、この薬学的因子は、少なくとも1つの本発明のIL−1特異的融合タンパク質を含み、この包装材料は、このIL−1特異的融合タンパク質が自己炎症性疾患または状態を処置するために使用され得ることを示すラベルまたは添付文書を含む。
【0049】
本発明の他の特徴は、例示的な実施形態の以下の説明を進めると明らかになる。この説明は、本発明の例証のために示され、本発明を限定するとは意図されない。
【実施例】
【0050】
以下の実施例は、当業者に、本発明の方法および組成物をどのようにして作製および使用するかの完全な開示および説明を提供するために示され、本発明者らが本発明者らの発明とみなすものの範囲を限定するとは意図されない。使用される数(例えば、量、温度など)に関して、精度を確保するために努力がなされたが、ある程度の実験誤差および偏差が占められるはずである。他に示されない限り、部分は、重量での部分であり、分子量は平均分子量であり、温度は摂氏度においてであり、そして圧力は大気圧か、またはその付近の圧力である。
【0051】
(実施例1.ヒト自己炎症性疾患に対するIL−1捕捉体の効果)
最初の研究は、IL−1遮断に応答することが公知の疾患(NOMID/MWS/FCAS)に罹患する15人の成人被験体ならびに成人スティル病およびコルヒチン耐性FMFを有する被験体において実行される。被験体は、適格、決定された臨床症状、確認された活発な疾患についてスクリーニングされ、ベースラインの血液は、炎症のベースラインレベルを決定するために、一週間間隔でおよそ3回、取り出される。全ての被験体について一様なデータ収集を確実にするため、注意深い、完全な標準化された病歴および健康診断が実行され、研究中の疾患に適切である。生命徴候および体重が、各来診毎に取得される。臨床データは、報告された全ての臨床発現を含む詳細なアンケートに基づく。以下の評価手順は、CIAS−1突然変異関連障害に特に関連し、そしてこの手順は、臨床的に示される、皮膚科学評価;眼科学評価;耳/鼻/喉の評価:神経学評価;腰椎穿刺;頭部MRI;X線写真、関節MRI;および薬物動態プロファイリングとして実行される。
【0052】
全ての研究被験体は、3日間連続で、一日一回、100mgの投薬レジメンによりIL−1結合融合タンパク質(配列番号10)を受容し、このレジメンは、2〜4週間の有意なIL−1阻害活性を提供することが予測される。初期結果は、この期間の間、測定され、それは、IL−1捕捉体による処置の開始から10日目における、薬物の安全性、臨床的な効能分析および選択された炎症のバイオマーカー(例えば、CRP、血清アミロイドAおよびESRのような急性期反応物質)における変化を含む。10日目において好ましい応答が観察される場合、被験体は、徴候および症状(発赤)が復帰するまで、(さらなる処置を受けずに)所定の時点においてモニタリングされる。発赤した場合、被験体は、負荷レジメン(3日間連続の、一日あたり100mgのIL−1捕捉体)による再処置と、それに続く最長1年間までの、100mgのIL−1捕捉体による週に一度の投薬を施す延長段階へと進めるのに望ましい。
【0053】
延長段階において、4週間の週あたり100mgの投薬後、被験体の1ヶ月の急性期反応物質レベルが正規化されなかった(CRP>0.5mg/dLおよび/またはSAA>10mg/L)場合、または疾患の持続性の徴候および/または症状に基づいた増大が確証される場合、研究者の臨床判断に基づいて、IL−1捕捉体の用量増大レジメンが実行され得る。最初の用量増大レベルは、週一回の160 s.c.であり得る。被験体は、4週間、観察される;用量増大のための診断基準に依然として適合する場合、次に、用量は、週一回の320mg s.c.に増大され得る。
【0054】
予備的な結果:CAPSを有する4人の被験体をまず登録した。全ての被験体が、IL−1捕捉体(配列番号10)による処置によって、炎症の徴候および症状の迅速かつ広範囲の改善(患者が報告した疾患の発現と医師が報告した疾患の発現の両方における改善を含む)を経験したことを、結果が示す。炎症のバイオマーカー(例えば、CRPおよびSAA)の大幅な低下もまた観察した。徴候および症状は、最初の投薬から21日間のメジアン(9〜26の範囲)以内で復帰し、それから再処置に迅速に応答した。表1は、毎日の日誌スコア、急性期反応物質の評価および臨床評価のまとめを提供する(‡3人の患者に対して実行した;p<0.1レベルでの、先の時点からの統計的に有意な差;**p<0.05レベルでの、先の時点からの統計的に有意な差)。医師および患者の全体的な評価、VASスコアは、ベースラインでの急性期反応物質(SAA、CRPおよびESR)の変化、発赤の時点での急性期反応物質の変化、そして最大の効能を反映すると示される時点での急性期反応物質の変化を反映した。
【0055】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己炎症性障害、疾患または状態を処置、阻害または改善するための医薬の製造における、2つのIL−1レセプター成分と多量体化成分とを含むインターロイキン1(IL−1)融合タンパク質アンタゴニストの使用。
【請求項2】
前記請求項1に記載の使用であって、融合タンパク質アンタゴニストが以下:
配列番号4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24および26に示されるアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列;または
配列番号4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24および26に記載の該配列と少なくとも95%の配列同一性を示し、かつIL−1に結合し得、かつIL−1を阻害し得るアミノ酸配列を含む、使用。
【請求項3】
前記融合タンパク質アンタゴニストが配列番号10に記載の配列を含む、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
自己炎症性障害、疾患または状態を処置、阻害または改善するための医薬の製造における、
第一の治療剤として請求項1、2または3に規定されるインターロイキン−1(IL−1)融合タンパク質アンタゴニストと、1つ以上のさらなる治療剤との使用であって、該1つ以上のさらなる治療剤が、
該第一の治療剤とは異なるIL−1融合タンパク質、エタネルセプト(Enbrel(登録商標)、Amgen)、インフリキシマブ(Remicade(登録商標)、Centocor)、Humira(登録商標)(Abbott)、サリドマイド、ステロイド、アナキンラ(Kinaret(登録商標)、Amgen)、コルヒチン、IL−18BPまたは誘導体、IL−18結合融合タンパク質、抗IL−18、抗IL−18R1、抗IL−18Racp、アスピリン、プレドニゾロン、メトトレキサート、シクロスポリンA、カスパーゼ−1、p38、IKK1/2、CTLA−4Ig、抗IL−6および抗IL6Raから選択される、使用。
【請求項5】
前記自己炎症性障害、疾患または状態が、新生児発症性多系統炎症障害(Neonatal Onset Multisystem Inflammatory Disorder)(NOMID/CINCA)、マックル−ウェルズ症候群(MWS)、家族性低温自己炎症性症候群(Familial Cold Autoinflammatory Syndrome)(FCAS)、家族性地中海熱(FMF)、腫瘍壊死因子レセプター関連性周期熱症候群(tumor necrosis factor receptor−associated periodic fever syndrome)(TRAPS)もしくは全身発症性若年性特発性(systemic onset juvenile idiopathic)関節炎(スティル病)である;および/または該自己炎症性障害、疾患または状態がCIAS−1内の突然変異に関連する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
第一の治療剤として請求項1、2または3に規定されるインターロイキン−1(IL−1)融合タンパク質アンタゴニストと、1つ以上のさらなる治療剤と、薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤とを含む、薬学的組成物であって、
該1つ以上のさらなる治療剤が、
該第一の治療剤とは異なるIL−1融合タンパク質、エタネルセプト(Enbrel(登録商標)、Amgen)、インフリキシマブ(Remicade(登録商標)、Centocor)、Humira(登録商標)(Abbott)、サリドマイド、ステロイド、アナキンラ(Kinaret(登録商標)、Amgen)、コルヒチン、IL−18BPまたは誘導体、IL−18結合融合タンパク質、抗IL−18、抗IL−18R1、抗IL−18Racp、アスピリン、プレドニゾロン、メトトレキサート、シクロスポリンA、カスパーゼ−1、p38、IKK1/2、CTLA−4Ig、抗IL−6および抗IL6Raから選択される、
薬学的組成物。
【請求項7】
第一の治療剤として請求項1、2または3に規定されるインターロイキン−1(IL−1)融合タンパク質アンタゴニストと、
ヒト身体または動物身体の自己炎症性障害、疾患または状態の処置における個別の使用、同時の使用または連続使用のための、1つ以上のさらなる治療剤とを含む、
製品。
【請求項8】
前記さらなる治療剤(単数または複数)が、請求項4に規定される、請求項7に記載の製品。
【請求項9】
前記自己炎症性障害、疾患または状態が、請求項5に規定される、請求項7または8に記載の製品。
【請求項10】
請求項4に規定されるさらなる治療剤との同時投与による、自己炎症性障害、疾患または状態を処置、阻害または改善するための医薬の製造における、請求項1、2または3に規定されるインターロイキン−1(IL−1)融合タンパク質アンタゴニストの、使用。
【請求項11】
請求項1、2または3に規定されるインターロイキン−1(IL−1)融合タンパク質アンタゴニストとの同時投与による、自己炎症性障害、疾患または状態を処置、阻害または改善するための医薬の製造における、請求項4に規定されるさらなる治療剤の使用。
【請求項12】
前記医薬が皮下投与、筋肉内投与、静脈内投与、局所投与、経皮投与または経口投与のためである、請求項1〜5、10または11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
前記医薬が1mg/kg〜20mg/kgの用量での、治療有効量の前記融合タンパク質アンタゴニストの投与のためである、請求項1〜5、10〜12のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
自己炎症性障害、疾患または状態を処置、阻害または改善する方法であって、該方法は、請求項1、2または3に規定される治療量のインターロイキン−1(IL−1)アンタゴニストを、該処置、阻害または改善を必要とする被験体に投与する工程を包含する、方法。
【請求項15】
前記自己炎症性障害、疾患または状態が、請求項5に規定される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項4に規定される1つ以上のさらなる治療剤を、前記被験体に投与する工程をさらに包含する、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
前記自己炎症性障害、疾患または状態が、CIAS−1内の突然変異に関連し、かつ前記IL−1アンタゴニストが配列番号10のアミノ酸配列を含む、請求項14、15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記医薬融合タンパク質アンタゴニストが、1mg/kg〜20mg/kgの用量で投与される、請求項15、16、17または18に記載の方法。

【公開番号】特開2012−111768(P2012−111768A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−12800(P2012−12800)
【出願日】平成24年1月25日(2012.1.25)
【分割の表示】特願2007−515646(P2007−515646)の分割
【原出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【出願人】(597160510)リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド (50)
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
【Fターム(参考)】