説明

自己集合性ペプチドと相互作用することが可能な繊維造形性ペプチド

本発明は、タンパク質構造を形成するように自己集合性ペプチドと相互作用することが可能である繊維造形性ペプチドに関する。本発明はまた、本発明の繊維造形性ペプチドを用いて、タンパク質構造を形成する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質構造を形成するように自己集合性ペプチドと相互作用することが可能である繊維造形性ペプチド(fiber-shaping(FiSh)peptide)に関する。本発明はまた、本発明の繊維造形性ペプチドを用いて、タンパク質構造を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生物における集合構造体は、各種用途のための新たな物質を開発するに当たってのヒントになる(Holmes, Trends Biotechnol., 20, 16-21, 2002およびYeates et al., Curr. Opin. Struct. Biol., 12, 464-470, 2002)。しかしながら、天然の生体物質を生産および操作する際の、ならびにそれらをデノボで設計する際の困難さが足かせになり、この潜在力の実現化は難しい。近年、本発明者等は、2つの短い合成ポリペプチド(本明細書中で平坦化(dubbed)自己集合性ペプチド(またストレートとも称される))を含む自己集合系について記載しており、該2つの短い合成ポリペプチドは、組み合わさって伸長繊維を形成する(国際特許出願WO01/21646およびPandya et al., Biochemistry, 39,
8728-8734, 2000を参照)。WO01/21646に記載される繊維は、直径約50nmであり、数十〜数百ミクロンにわたって分岐することなくまっすぐに伸長する。繊維形態に影響を及ぼすことおよび繊維形態を制御することが望ましい。
【0003】
以前に本発明者等は、DNAの構築(assembly)に関しては十分な証明がなされている付着末端支配型の分子集合の概念を、ペプチドに応用した。これが、自己集合性ペプチド繊維(SAF)系の概念へとつながった(Pandya et al., Biochemistry, 39, 8728-8734, 2000)。この系は、デノボ設計の2つの短ペプチド(SAF−p1およびSAF−p2)を含む。SAF−p1およびSAF−p2配列は、平行へテロ二量体コイルドコイル、すなわちロイシンジッパーに関して認められている設計原理に基づいた(Harbury et al.,
Science, 262, 1401-1407, 1993; O'Shea et al., Curr. Biol., 3, 658-667, 1993; Woolfson et al., Prot. Sci., 4, 1596-1607, 1995; Ciani et al., J. Biol. Chem., 277, 10150-10155, 2002)。しかしながら、SAFペプチドは、それぞれ2つの別個の領域またはサブユニット:それぞれSAF−p1中ではAおよびB、ならびにSAF−p2中ではCおよびD(ここで、AはDに相補的であり、BはCに相補的である)を用いて設計された。したがって、図1aに表すように、2つのペプチドを同時に会合させることにより、付着末端同士の会合したヘテロ二量体が導かれ、それらがさらに会合して繊維を構成するはずである(図1b参照)。これらの設計の特徴は、分光法、X線繊維回折および顕微鏡検査法を組み合わせて用いて実験的に確認されたが、興味深いことに、繊維は本来予想していたよりも太かった。例えば、SAFペプチドは水中で混合して短時間成熟させると、何ミクロンにもわたって伸長する直径40〜50nmの線状構造を生産することが、透過型電子顕微鏡(TEM)法により明らかとなった(図2a)。稀に繊維が曲がった幾つかの例もあるが、それらを除き、非線状または分岐状構造に関する徴候は見られなかった。より最近では、本発明者等は、SAF−p2の再設計によりSAF−p2aを作製した。SAF−p2aは、より効率よくSAF−p1と結合し、元の設計と比較して有意に改善された安定性および内部秩序を有する繊維を生産する。それ以外の点については、十分に伸長した繊維の外観には変化は認められなかった。
【0004】
米国特許US−A−5,229,490号および国際特許出願WO92/18528は、分岐状ペプチドに関するが、該分岐状ペプチドは、自己集合性ペプチドと相互作用してタンパク質構造を形成することはない。分岐状ポリペプチドは、抗原の提示に使用される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
合理的設計により繊維サイズおよび形態を変更することは、非常に興味深いことである。例えば、特定の目的に合わせて繊維を調製でき、かつ/または、パターン化された表面または成長中の細胞培養に応じた繊維の集合体を製造できる、等である。1つの可能性は、ストレートなSAF構成単位(自己集合性ペプチド)と相補的で、かつそれと会合するが、規則的な反復線状構造に対して不連続点を挿入する特殊なペプチド(本明細書中では繊維造形性ペプチドと称される)を導入することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ハブおよびそれぞれが一方の末端でハブに結合された複数のペプチドモノマー単位を含む繊維造形性ペプチドであって、少なくとも2個のペプチドモノマー単位の遊離末端はN末端またはC末端であり、それら少なくとも2個のペプチドモノマー単位はそれぞれ、自己集合性ペプチドのサブユニットと相互作用して重複ねじれ(overlapping staggered)構造を形成することができる繊維造形性ペプチドを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の繊維造形性ペプチドにより、自己集合性ペプチドを含むタンパク質繊維の形態を変化させることができる。特に、繊維造形性ペプチドは、タンパク質繊維中に分岐、分割、屈曲およびねじれを組み込むことが可能である。タンパク質繊維中においてかかる形態的変化を組み込むことが可能であるため、マトリックス、フィルター、網目構造、グリッド、足場構造等を含む一般的な集合構造体のような各種タンパク質構造を生成することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
上述のように、本発明の繊維造形性ペプチドは、ペプチドモノマー単位が結合されるハブを含む。ペプチドモノマー単位は、ハブに共有結合される。ハブは、少なくとも2個の誘導体化可能部位を有し(したがって、少なくとも2個のペプチドモノマー単位を結合することが可能である)、かつ少なくとも2個のペプチドモノマー単位が自己集合性ペプチドのサブユニットと相互作用して重複ねじれ構造を形成するのを妨げなければどのような分子であっても良い。ハブは、3個以上のペプチドモノマー単位の結合および/または1個またはそれ以上の活性分子の結合を可能にする3個以上の誘導体化可能な部位を有することがさらに好ましい。ハブは、3個または4個の誘導体化可能な基を有することが特に好ましい。
【0009】
好ましい実施形態では、繊維造形性ペプチドは、ハブに結合される1個またはそれ以上の活性分子を含む。活性分子は、少なくとも2個のペプチドモノマー単位が自己集合性ペプチドのサブユニットと相互作用し重複ねじれ構造を形成するのを妨げない限り、望ましい機能を有する任意の分子であり得る。適切な活性分子としては、抗体分子(すなわち、モノクローナル抗体またはそれらの機能性部分(Fab、Fv、F(ab’)2断片および単鎖Fv断片を含む))、受容体、リガンド、酵素、抗原、標識、金属イオンまたは核酸分子が挙げられる。特に好ましい実施形態では、活性分子はビオチンである。ビオチン分子は、ストレプトアビジンを結合するのに使用することができる。ストレプトアビジンは、遊離していても、あるいは標識または他の活性分子のような望ましい分子に結合されていてもよい。活性分子は、溶液から所望の物質を結合するに使用できる。例えば、抗体分子は、相当する抗原を結合するに使用することができる。あるいは、受容体は、相当するリガンドを結合するに使用できる。活性分子が核酸である場合、転写因子、またはさらには相補的な核酸を結合するに使用され得る。活性分子がRGDベースのペプチドであることが特に好ましい。RGDペプチドは、溶液から細胞を単離するに使用できる。
【0010】
ハブは、好ましくは1個またはそれ以上のアミノ酸、より好ましくは1個〜6個のアミノ酸、最も好ましくは1個のアミノ酸である。好ましい実施形態では、ハブはリシンである。ハブがリシンである場合、2個のペプチドモノマー単位を、それらのC末端を介してアミノ基に結合することが可能である。さらなるペプチドモノマー単位または活性分子を、カルボン酸基に結合させることができる。
【0011】
さらに好ましい実施形態では、ハブは、グルタミン酸である。ハブがグルタミン酸である場合、2個のペプチドモノマー単位を、それらのN末端を介してカルボン酸基に結合することが可能である。さらなるペプチドモノマー単位または活性分子を、アミノ基に結合させることができる。
【0012】
好ましくは、ペプチドモノマー単位および機能性分子は、可撓性リンカーによりハブに連結される。可撓性リンカーは、適切なリンカーであればどのようなものでも良い。好ましくは、可撓性リンカーは、グリシン、セリン、アラニンおよびβ−アラニンのようなアミノ酸から構成される。可撓性リンカーは、2〜10残基、より好ましくは約3〜5残基を含むポリ−β−アラニンペプチドであることが特に好ましい。可撓性リンカーは、ペプチドモノマー単位と自己集合性ペプチドとの相互作用を容易にし、かつ任意の機能性分子がそれらの機能を発揮するのを可能にする。
【0013】
本明細書中で使用する場合、「ペプチドモノマー単位」という用語は、自己集合性ペプチドのサブユニットと相互作用することができるペプチドを指す。換言すると、ペプチドモノマー単位は、自己集合性ペプチドのサブユニットに相補的である。繊維造形性ペプチドのペプチドモノマー単位は、自己集合性ペプチドと相互作用して重複ねじれ構造を形成し、続いてWO01/21646号に記載されるような、かつ図1に示すようなタンパク質構造へと自己集合する。自己集合性ペプチドのサブユニットは、ペプチドモノマー単位と特異的に相互作用する領域である。一般に、サブユニットは自己集合性ペプチドの一方の末端であり、その結果、相互作用すると重複ねじれ構造が形成される。好ましくは、繊維造形性ペプチドのペプチドモノマー単位および自己集合性ペプチドは、7残基および/または11残基反復モチーフを含む。また、ペプチドモノマー単位の少なくとも1個は、繊維造形性ペプチドと自己集合性ペプチドがねじれ平行(staggered parallel)へテロ二量体を形成するのを促進するように、自己集合性ペプチドのサブユニット中の残基に相補的であるアミノ酸残基を含むことが好ましい。ペプチドモノマー単位中のアミノ酸残基は、自己集合性ペプチドのサブユニット中の相補的アミノ酸と対を形成することができる任意の残基であり得る。好ましくは、相補的アミノ酸は、アスパラギン、アルギニンまたはリシンの対である。また、相補的アミノ酸は、ペプチド上の界面部位に存在することが好ましい。好ましくは、相補的アミノ酸は、ペプチドモノマー単位上の、および自己集合性ペプチドのサブユニット中の7残基または11残基反復モチーフ内の「a」位置に存在する。
【0014】
本発明の繊維造形性ペプチドは、3個以上のペプチドモノマー単位を含んでもよい。繊維造形性ペプチドは、2個〜10個のペプチドモノマー単位、より好ましくは2個〜5個のペプチドモノマー単位、最も好ましくは2個のペプチドモノマー単位を含むことが好ましい。上述のように、繊維造形性ペプチド中のペプチドモノマー単位の数は、ハブ上の誘導体化可能な基の数に依存する。
【0015】
上述のように、ペプチドモノマー単位の少なくとも2個は、遊離N末端または遊離C末端のいずれかを有さなくてはならない。繊維造形性ペプチドを、同一種の遊離末端(すなわち、ともにC末端またはともにN末端)を持つ2個のペプチドモノマー単位を含むように確実に設計することで、2個の自己集合性ペプチドは強制的に一点に収束され、自己集合性ペプチドにより形成されるタンパク質構造が不連続性を持つようになる(図1cおよ
び図1dを参照)。
【0016】
本明細書中で使用する場合、「自己集合性ペプチド」という用語は、他の自己集合性ペプチドと相互作用して、実質的に線状の構造、好ましくはストレートなタンパク質繊維を形成することができるペプチドを指す。自己集合性ペプチドは、好ましくは同方向かつ連続的に会合する。適切な自己集合性ペプチドは、WO01/21646号に記載されている。好ましくは、自己集合性ペプチドは、7残基または11残基反復モチーフを含み、ここで異なる自己集合性ペプチド上の相補的アミノ酸残基の対は、自己集合性ペプチドがねじれ平行へテロ二量体コイルドコイルを形成するのを促進する。相補的アミノ酸残基は、対を形成することができる任意の残基であり得る。好ましくは、相補的アミノ酸は、アスパラギン、アルギニンまたはリシンの対である。また、相補的アミノ酸は、ペプチド上の界面部位にあることが好ましい。好ましくは、相補的アミノ酸は、自己集合性ペプチド中の7残基または11残基反復モチーフ内の「a」位置に存在する。
【0017】
自己集合性ペプチドは、配列NH3−KIAALKQKIASLKQEIDALEYENDALEQ−COOH(SAF−p1)または配列NH3−KIRRLKQKNARLKQEIAALEYEIAALEQ−COOH(SAF−p2a)を有することが特に好ましい。
【0018】
本発明はまた、配列NH3−KIRRLKQKNARLKQEIAALEYEIAALEQ−COOH(SAF−p2a)を有する自己集合性ペプチドを提供する。
【0019】
アミノ酸の標準的な一文字表記が、本願で提供される配列において使用される。
【0020】
「突出ねじれ構造」という用語は、2個のペプチドが集合して突出末端を持つヘテロ二量体を形成する構造において、ヘテロ二量体内でそれらの突出末端が相互作用しないものを指す。
【0021】
繊維造形性ペプチドおよび自己集合性ペプチドを含む本発明のペプチドは、好ましくは15〜100アミノ酸長、より好ましくは20〜50アミノ酸長、最も好ましくは約30アミノ酸長である。ペプチドは、天然アミノ酸、合成アミノ酸、および天然アミノ酸の改変物を含むことができる。
【0022】
本明細書中で使用する場合「繊維」という用語は、突出末端を通じて相互作用する重複ねじれ構造から構築されるタンパク質構造を指す。多数の繊維が、横方向に相互作用してもよく、それにより、より厚い繊維を形成する。この用語は、ヘテロ二量体コイルドコイル構造を指すことが特に好ましい。
【0023】
本明細書中で使用する場合「アミノ酸」という用語は、天然アミノ酸、合成アミノ酸、および天然アミノ酸の改変物を指す。
【0024】
本発明の好ましい実施形態では、本発明の繊維造形性ペプチドは、
下記式:
(NH3−g(abcdefg)q abcde−(X)mn−Y−((X)m−Z)p
(I)
または
(Z−(X)mp−Y−((X)m−g(abcdefg)q abcdef−COOH)n (II)
(式中、abcdefgは、7残基反復モチーフであり、
Xは、可撓性リンカーであり、
Yは、ハブであり、
Zは、機能性分子であり、
qは、1〜15であり、
mは、0または3であり、
nは、2〜10であり、
pは、0〜4である)
を有する。
【0025】
本発明の特に好ましい実施形態では、本発明の繊維造形性ペプチドは、
下記式:
(NH3−g(abcdefg)q abcde−(X)mn−Y−((X)m−Z)p
(I)
または
(Z−(X)mp−Y−((X)m−g(abcdefg)q abcdef−COOH)n (II)
(式中、abcdefgは、7残基反復モチーフであり、
Xは、可撓性リンカーであり、
Yは、ハブであり、
Zは、機能性分子であり、
qは、1〜15であり、
mは、0または1であり、
nは、2〜10であり、
pは、0〜4である)
を有する。
【0026】
好ましくは、Xは、上述のような可撓性リンカーである。
【0027】
好ましくは、Yは、式(I)においてリシンである。
【0028】
好ましくは、Yは、式(II)においてグルタミン酸である。
【0029】
好ましくは、qは、1〜5である。
【0030】
好ましくは、nは、2である。
【0031】
本発明はまた、
下記配列:
(NH3−KIRRLKQKNARLK(βA)32−K
を有する繊維造形性ペプチドを提供する。
【0032】
本発明はまた、
下記配列:
E−((βA)3EIAALEYEIAALEQ−COOH)2
を有する繊維造形性ペプチドを提供する。
【0033】
上記配列中で使用される場合のβAは、β−アラニンを表す。
【0034】
本発明はまた、本発明の繊維造形性ペプチドを含むタンパク質構造を提供する。
【0035】
好ましくは、タンパク質構造は、本発明による複数の繊維造形性ペプチド、および上述
により定義されるような自己集合して線状タンパク質構造を形成することができる複数の自己集合性ペプチドを含み、ここで、繊維造形性ペプチドおよび自己集合性ペプチドは、自己集合してタンパク質構造を形成する。
【0036】
当業者に明らかであるように、タンパク質構造を形成するためには、自己集合性ペプチドは複数種、すなわち実際に相互作用して線状構造を形成する第1の自己集合ペプチドのセットおよび第2の自己集合ペプチドのセットを含む。好ましくは、本発明のタンパク質構造中における繊維造形性ペプチド:第1の自己集合ペプチド:第2の自己集合ペプチドの比は、約1×10-6:1:1〜10:1:1、より好ましくは約1×10-4:1:1〜2:1:1である。
【0037】
「タンパク質構造」という用語は、ヘリックスおよびβ鎖のような二次タンパク質構造の任意の組合せを指す。タンパク質構造は、1個またはそれ以上のタンパク質繊維であるか、またはそれらを含むことが特に好ましく、ここでタンパク質繊維は上述により定義される通りである。
【0038】
好ましくは、本発明のタンパク質構造は屈曲および波状繊維を含む。
【0039】
好ましくは、本発明のタンパク質構造は分裂および分岐状繊維を含む。
【0040】
本発明はまた、本発明の複数の繊維造形性ペプチドおよび複数の自己集合性ペプチドを、該ペプチドの会合によってタンパク質構造が形成されるような条件下で混合することを含む、本発明のタンパク質構造を生産する方法を提供する。
【0041】
ペプチドを混合することによりタンパク質構造を形成するのに適した条件は、特にWO01/21646号に付与される情報を鑑みて、当業者に明らかであろう。
【0042】
本発明はまた、本発明のタンパク質構造を生産するためのキットであって、本発明の複数の繊維造形性ペプチドおよび複数の自己集合性ペプチドを含み、該複数の繊維造形性ペプチドおよび複数の自己集合性ペプチドは、会合してタンパク質構造を形成することができるキットを提供する。
【0043】
タンパク質構造における繊維造形性ペプチドの量を制御することにより、タンパク質構造の形態を変化させることができる。したがって、生成されるタンパク質構造に対して幾つかの制御を行うことが可能である。特に、タンパク質繊維は、グリッド、足場構造、フィルター、網目構造およびマトリックスのような2次元および3次元構築物を形成するように配列させることができる。かかるタンパク質構造は、血液のような生体液の精製、または細胞工学および組織工学を目的とした細胞の構築のような複数の用途で使用することができる。タンパク質構造は、表面工学にも使用できる(Zhang et al., Biomaterials, 16, 1385-1393, 1995を参照)。
【0044】
さらに、繊維造形性ペプチドには機能性分子を含ませることができるため、タンパク質構造に機能を付与することができる。例えば、機能性分子が所望の構成成分または混入物を特異的に結合できる場合、そのマトリックスは、所望の構成成分を単離するための、あるいは混入物を除去するための親和性マトリックスとして使用することができる。例えば、血液サンプルからウイルスを除去する場合では、標的混入物用のバインダー(例えば、ウイルスのコートタンパク質に対して天然の親和性、または工学的に改変された親和性を有するペプチドあるいはタンパク質)が、繊維造形性ペプチドに結合される機能性分子である。その後、マトリックスは、軽い遠心分離により任意の結合された混入物と一緒に血液から除去することができる。
【0045】
本願のタンパク質構造は、以下のものを含む複数の他の用途を有する:
i.X線結晶学用の生体分子の結晶化の核となる組織化網目構造の調製、
ii.組織の工学的使用における細胞成長を促進するためのタンパク質構造の使用、
iii.ナノスケール分子ふるいおよび他のデバイスの構築、
iv.各種機能性分子用に支持体として使用することができるナノスケール分子グリッド/足場構造の調製、
v.機能化されたタンパク質構造は、例えば、触媒、生体液および他の研究用溶液の親和性に基づくふるいわけ/精製、内因性分子および補因子の動員による組織修復および組織工学全般の促進に使用できる。
【0046】
本発明の繊維造形性ペプチドは、1個またはそれ以上の機能性分子から構成されていれば良いが、追加の機能性分子は、標準的なカップリング技法を用いて任意の適切な部位で本発明のタンパク質構造に結合させることができる。
【0047】
ここで、本発明を、ほんの一実施例として添付した図面を参照しながら記述する。
【実施例】
【0048】
材料および方法
ペプチド合成
ペプチドは、標準的な固相Fmoc化学を用いて合成し、RP−HPLCで精製して、MALDI−TOF質量分析で確認した。
【0049】
繊維の構築
繊維のサンプルはすべて、Pandya et al., 2000(上述)に記載する技法に従って、指定量のFiShペプチドを用いて、SAF−p1およびSAF−p2a(それぞれ濃度100μM)により調製し、22℃で一晩インキュベートした。
【0050】
電子顕微鏡
Pandya et al., 2000(上述)にすでに記載されているように、繊維懸濁液を炭素グリッド上で乾燥させ、電子顕微鏡観察用に酢酸ウラニルで染色した。
【0051】
金粒子の捕集
ストレプトアビジンナノ金複合体(コロイド状金ナノ粒子(5または10nm)で標識したストレプトアビジン)は、SIGMAから入手した。ビオチン化Fmocリシンを含むペプチド合成試薬はすべて、Merck Biosciences(Novabiochem)から購入した。ペプチドは、上述のように標準的なFmoc化学を用いて、Pioneerペプチド合成システムで合成した。
【0052】
ストレプトアビジンナノ金複合体(SNC)を、バックグラウンドを最低限に抑えるため、0.05% TWEEN20を含有する10mM MOPS(pH7)を希釈用緩衝液として2〜10倍に希釈した。希釈した複合体を室温に30分間放置し、この低グリセロール含有量と平衡化させた。最適濃度は、インキュベーション時間30〜45分で経験的に(SIGMAによる推奨手順に従って)A520=0.25であると決定した。
【0053】
繊維サンプルは、上述のように調製した(但し、ビオチン化Fmocリシンを用いて、ペプチドにビオチンを組み込んだ)。側鎖(ε)アミノ基を結合したビオチンを有する市販のFmoc−リシンを用いて、ストレートなペプチドおよび繊維造形性ペプチドの両方にビオチンを導入した。ストレートなペプチドについては、標準的な線状合成を用いた。ビオチンを組み込んでいる繊維造形性ペプチドは、リシン二量体ハブ、すなわちLys−
Lys(ビオチン)を用いて作出した。第1のリシンは、2個のペプチドアームを結合、伸長させるハブとして働いた。このリシンのαおよびεアミノ基を用いて、ペプチド合成を開始した。第1のリシンのαカルボキシ基を、ビオチンを含有する第2のリシンにカップリングさせた。続いて指定量(2μL)のSNCを繊維調製物に添加した。幾つかの適用においては、SNCによる繊維表面のより良好な被覆率を達成するために、より大きい容量(最大20μL)またはより高い濃度(最大2倍希釈)のいずれかを使用した。
【0054】
インキュベーション後、ペプチド溶液の8μL滴をカーボン被覆した銅試験片グリッド(Agar Scientific Ltd)に塗布して、濾紙で乾燥させた後、標準的なMOPS緩衝液で2〜3回(それぞれ3〜5分)洗浄して、非特異的に結合しているSNCを除去した。グリッドを、電子顕微鏡用に、濾過した0.5%酢酸ウラニル水で20℃にて染色した。
【0055】
本明細書中に記載する新規タンパク質構造は、Pandya et al., 2000(上述)に記載される技法に従って、SAF−p2a配列に基づいた繊維造形性ペプチドの存在下でSAF−p1およびSAF−p2aを組み合わせることにより作製された。
【0056】
本発明は、2種の新規ペプチドであるCCNNおよびDDCCを用いた一実施例のみに基づき実証される。ここで、CCNNおよびDDCCはそれぞれ、屈曲/波および分裂/分岐をSAF繊維に導入する。
【0057】
CCNNおよびDDCCペプチドに関する設計原理を、図1cおよび図1dに図示する。ペプチドは、SAF−p2a配列に基づいた(図1a)。例えば、CCNNでは、SAF−p2aのN末端「C」サブユニットは、尾−尾様式で二つ組にされる。すなわち、C配列の2つのコピー(したがって、「CC」という表現)は、それらのC末端を介して、構築物の末端でN末端が遊離状態のまま連結される(したがって、「NN」という上付き文字)。これは、単一の二官能性ハブ、すなわち固相ペプチド合成樹脂にそのカルボキシ末端で結合されたL−リシンの2つのアミノ基から2つのCサブユニットを同時に合成することにより達成された。リシンとの結合部位により高い可撓性を付与するために、C配列の合成に先だって、3個のβ−アラニンモノマーをリシンのアミノ基に付加した。図1cで示すように、これにより、CCNNがSAF−p1の2つのコピーと相互作用することが可能になるはずである。しかしながら、この相互作用は、自己集合性ペプチド(ストレート)のSAF−p2aおよびSAF−p1について元々規定された相互作用とは全く異なる。これらの会合は、平行かつ連続的であり(図1aおよび図b)、線状かつ潜在的には無限長の構築物をもたらす(Pandya et al., Biochemistry, 39, 8728-8734, 2000)。対比して、CCNNの付加は、2つの隣接しているSAF−p1ペプチドを収束させることを目的としている。β−アラニンリンカーを含む理由は、どのような不連続性が生じた場合にも対応して2個のSAF−p1ペプチドからの効率的な原繊維形成を可能にするためである(図1c)。同様の原理がDDCC設計でも使用されるが、但し、SAF−p2aのDサブユニットの2つのコピーは、それらのN末端を介して、ハブとして用いられるL−グルタミン酸に連結される(図1d)。同様に、3個のβ−アラニン残基を用いて、Dペプチド配列それぞれをハブから離して結合させた。CおよびDユニットの配列には微妙な違いがあり(図1a)、以下に論述するように、SAF集合体において異なる形態的変化をもたらした。
【0058】
CCNNをSAF−p1/SAF−p2aの新鮮混合物に添加した場合、設計の通り、得られた成熟繊維はストレートではなく、屈曲しているか、または波状であった(図2b、図2cおよび図2d)。出発混合物におけるCCNNの比を変えることにより、繊維単位長当たりの屈曲数が変化した(図3a)。しかしながら、これは、繊維の完全性を犠牲にして成り立つ。すなわち、より多くのCCNNを包含することにより、形成される繊維長が減少した(図3b)。幾つかの線状繊維が観察されたが、これらは稀であり、その数はCC
NNの量を増加させるのに伴って急速に減少した。
【0059】
これらの観察結果はCCNNFiShペプチドの設計と一致するが、それらの屈曲した繊維が非常に硬質に見えることは、おそらく驚くべきことである。上述のような、繊維が厚さを増すという現象は、繊維を安定化し、その結果として屈曲を制限すると考えられる。これを試験するために、本発明者等は、CCNNを入れずに元のSAF−p1:SAF−p2設計のサンプルを調製した。元のSAFペプチドおよび再設計したSAFペプチドならびにFiShペプチドのコイルドコイルの界面は変更されず、したがって相互の親和性が保たれていたことに留意されたい。SAF−p2の配列は、KIRALKAKNAHLLKQEIAALEQEIAALEQであり、SAF−p2aとは4つの残基が異なる。SAF−p2とSAF−p1とを会合させた場合、再設計したSAF−p1:SAF−p2a繊維のおよそ2/3倍の直径で、より熱安定性の低い繊維が得られる(A.M. Smith & D.N. Woolfson、結果は公表されていない)。サンプルは、SAF−p1およびSAF−p2を、CCNN存在下、あるいは非存在下(ペプチドの濃度は、それぞれ、100μMであった)、5℃にて1時間インキュベートした後、電子顕微鏡用の標準的な前処理を行った。CCNNが存在しない場合では、SAF−p1+SAF−p2は、線状の伸長繊維を生じた(図4a)が、FiShペプチドを用いた場合では、多数の屈曲が見られた(図4b)。SAF−p1:SAF−p2バックグラウンドにおける屈曲の程度および頻度は、SAF−p1+SAF−p2aで観察されるものよりも大きかった。このことは、SAFの可撓性が屈曲において役割を果たすことを示唆している。すなわち、より薄く安定性の低いSAF−p1:SAF−p2繊維は、より多くの屈曲を含有する。これと一致して、再設計したSAF−p1:SAF−p2aバックグラウンドにおけるFiShペプチドに関して観察される繊維の短縮(図3b)は、元のSAF−p1:SAF−p2バックグラウンドではより低頻度で認められた(図4)。
【0060】
興味深いことに、SAF−p1/SAF−p2aの新鮮混合物にDDCCを加える場合、成熟繊維は2つの異なる形態を持つ。即ち、少量のFiShペプチドを用いる場合(DDCC:SAF−p1:SAF−p2が10-4:1:1)、繊維はCCNNで観察されるように屈曲した。しかしながら、DDCCの比が増加するにつれ(最大1:1:1)、屈曲はあまり観察されなくなり、代わって、繊維は分裂または分岐する傾向にあった(図2eおよび図2f、ならびに図3a)。
【0061】
2つのFiShペプチドの挙動の差は、CおよびDサブユニットの異なる配列に起因するにちがいない(図1a)。元のSAF設計では、SAF−p2のCサブユニットはSAF−p1のBサブユニットとパートナーになるように作製された。これは、具体的には、各々のペプチドにおける重要な界面部位に、相補的なアスパラギン残基を含ませることによってなされる(Pandya et al., Biochemistry, 39, 8728-8734, 2000)。この特徴は、SAF−p2a設計でも同様に維持された。これは、いわゆるネガティブ設計原理であり(Beasley et al., J. Biol. Chem., 277, 10150-10155, 2002)、すなわち、ある一定の構造の構築を導き、かつ考え得る他産物の生成を防ぐために取り入れられた特徴である。SAFの場合では、アスパラギン残基は、平行へテロ二量体形成を確実にするために含まれ(Harbury et al., Science, 262, 1401-1407, 1993, O'Shea et al., Curr. Biol., 3, 658-667, 1993, woolfson et al., Prot. Sci., 4, 1596-1607, 1995, O'Shea et al., Science, 254, 539-44, 1991, Lumb et al., Biochemistry, 34, 8642-8648, 1995、およびGonzalez et al., Nature Struct. Biol., 3, 1011-1018, 1996)、2つのペプチドの会合部位を補正し、その結果原繊維形成を促進する(Pandya et al., Biochemistry, 38, 8728-8734, 2000)。アスパラギンの包含は、ロイシン−ジッパーペプチドにおいて二量体および会合部位の特異性を増大させるが、これによって概して安定性は犠牲になる(Harbury et al., Science, 262, 1401-1407, 1993, Lumb et al., Biochemistry, 34, 8642-8648,
1995、およびGonzalez et al., Nature Struct. Biol., 3, 1011-1018, 1996)。CCNN
ペプチドは2つのかかるアスパラギンを有し、DDCCは有さない。したがって、本発明者等は、DDCCが、より強力なロイシン−ジッパー相互作用を形成し、かつ標準的なSAFペプチドと潜在的により無差別的に相互作用し、さらにこれは、幾つかの繊維における分裂および/または肥厚した外観をもたらすと考える(図2eおよび図2f)。換言すると、CCNNは、それが行う相互作用においてより選択的である。これは、A:D相互作用と比較してB:C相互作用において推定されるより低い安定性と併せて、より数少なく、かつより容易に修正できる欠陥(分裂や肥厚)につながる。
【0062】
図1のスキームに従って、SAF−p2aのCおよびDのサブユニットの16個の考え得る組合せが存在する。本発明者等は、これらのうちの2つ、すなわちCDNCおよびCCNCを対照ペプチドとして合成した。CDNCは、単にCサブユニットとDサブユニットとの間にスペーサーが挿入されたSAF−p2a配列であり、CCNCでは、Cの2つの連続コピーが、スペーサーにより分離されており、両方の場合で、スペーサーは、3つのβ−アラニン残基、中心ε−アミノヘキサン酸残基(CCNNおよびDDCCで使用されるL−リシンおよびL−グルタミン酸ハブに代わる置換基として)、続いてさらなる3つのβ−アラニン残基を含んでいた。CDNCもCCNCも、CCNNおよびDDCCに関して観察されるような成熟繊維の屈曲、波状、分裂または分岐は引き起こさなかった。しかしながら、10-2:1:1(対照:SAF−p1:SAF−p2a)以上の比で、CDNCおよびCCNCはともに、繊維集合を完全に阻害した。より少量の対照ペプチドを有する混合物は、繊維を生じたが、これらは、短く(20mm未満)かつ稀であった(FiShペプチドCCNNおよびDDCCを含有する混合物における場合よりも500倍少ない)。換言すると、CDNCおよびCCNCは、原繊維形成における終結因子として作用した。
【0063】
要約すると、本発明者等は、元来専ら線状かつ未分岐構造を形成するように設計された自己集合繊維の形状を変更させるための実験データを提示した。繊維造形性(FiSh)ペプチドを、FiShペプチド無添加では線状構築物を形成するはずのペプチドの混合物に添加した。試験した2つのFiShペプチドは、繊維形態に異なる影響を及ぼした:一方は、繊維を屈曲させたのに対して、他方は、繊維を分裂または分岐させた。FiShペプチド:標準物質ペプチドの比が、観察される屈曲および分岐の数を決定した。
【0064】
繊維形態を変化させる能力を用いて、周囲環境からの信号に応答する生体物質の開発が可能になる。かかる信号が、ある表面上のパターンとして提示されるかもしれない。これは、タンパク質アレイ技術に利用できるタンパク質により機能化された表面、および新規なタンパク質に基づく診断用デバイスまたはセンサーデバイスの開発につながるかも知れない。別の可能性は、細胞および組織工学における足場構造として使用され得る網目構造の構築である。この場合では、自己集合繊維は、細胞成長に応答し、その結果細胞成長を支持するように誘導され得る。
【0065】
上述のように、FiShペプチドは、他の機能性分子を含んでもよい。このようにして、FiShペプチドを用いて、生理活性ペプチド、タンパク質および小分子を、集合繊維に捕集することができる。例えば、付加部分はペプチド抗原であってもよく、これは、いったん繊維に組み込まれれば、繊維表面に特異的抗体をプルダウンする(すなわち、捕集する)のに用いることができる。あるいは、機能性分子が核酸配列である場合、核酸配列と相互作用する転写因子が単離され得る。これらの観点で、FiShペプチドは、官能基を結合できる中心点とみなされるべきである。
【0066】
上述のように、標準的なビオチン/ストレプトアビジン化学を用いて、10nmの金粒子を、本発明のストレートな繊維および屈曲繊維の両方に捕集した。特に、ビオチンは、合成段階で自己集合性ペプチドに組み込み、金粒子はストレプトアビジンでコーティングした。金粒子は、ストレートな繊維上では無作為に分布する(図5〜図7を参照)が、屈
曲繊維のハブでは特異的に捕集されること(図8参照)がわかった。
【0067】
ストレートな繊維では、7残基の「f」位でのアミノ酸の1つをビオチンで誘導体化した。屈曲繊維では、ハブをビオチンで誘導体化した。本発明の屈曲繊維内の特定の部位に、金粒子のような機能性分子を特異的に捕集できることは好都合である。
【0068】
上述に引用した文書はすべて、参照により本明細書に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】自己集合性繊維(SAF)ペプチドおよび繊維造形性(FiSh)ペプチドに関する設計原理ならびに配列を示す図である。a.それぞれ2つのブロックに分けて示した標準的なSAFペプチド配列:SAF−p1に関してAおよびB、SAF−p2aに関してCおよびD。aおよびb.ブロックAは、Dに相補的であり、Bは、Cに相補的である。これは、付着末端二量体を導き、それらはさらに会合して繊維を形成する。集合体の会合部位の精度は、アスタリスクで強調した重要なアスパラギン残基により部分的に保たれる。cおよびd.それぞれFiShペプチドCCNNおよびDDCCの設計により導入される不連続性。b、cおよびdでは、ポリペプチド鎖の方向(N末端からC末端へ)は、矢印で示す。これは、FiShペプチドの名称に関連する。例えば、CCNNは、SAF−p2aのブロックCの2つのコピーを有し、それらはC末端により連結され、その構築物の両末端に遊離のN末端を有するため、そのように呼ばれる。FiShペプチドは、リンカーが可撓性β−アラニン残基を含有するため、ストレートというよりは屈曲して示される。
【図2】SAFおよびSAF−FiSh系から形成される繊維の酢酸ウラニル染色したTEM画像を示す図である。a,SAF−p1およびSAF−p2aを1:1の比で混合することにより形成されるストレートな繊維。b〜d,CCNNFiShペプチドをSAF−p1/SAF−2aの新鮮混合物に1:1:1(b)、0.1:1:1(c)および<0.1:1:1(d)(FiSh:SAF−p1:SAF−p2a)の比で添加することにより形成される屈曲繊維ならびに波状繊維。eおよびf,DDCCFiShペプチドを新鮮なSAF−p1/SAF−2a混合物に0.01:1:1の比で添加することにより形成される分裂繊維ならびに分岐状(fでは四角形で囲んである)繊維。
【図3】自己集合性繊維に導入される形態的変化の分析結果を示す図である。aは、繊維10μm長当たりの特徴(屈曲または分裂)の平均数を示す。bは、FiSh対SAFペプチドの比の関数として、成熟繊維の平均長を示す。CCNNを含有する繊維に関するデータ点は丸で示す一方で、DDCCを含有する繊維に関するデータ点は四角で示す。パネルaでは、DDCCにより生産される屈曲および分裂の数は、それぞれ実線および破線で区別している。分析:付与した数は、80〜100個の繊維に関して測定した平均値である。aでの測定に対する標準偏差は、CCNNを含有する繊維に関して2.6(0.01:1:1に関して)および0.2(<0.01:1:1に関して)であり、DDCCを含有する分裂繊維に関して0.4(0.01:1:1に関して)および0.1(<0.01:1:1に関して)であり、屈曲繊維に関して0.4(0.01:1:1に関して)および0.1(>0.01:1:1に関して)であった。bでの測定に対する標準偏差は、両方のFiShペプチドからのデータに関して5.6μm(0.01:1:1に関して)および1.6μm(>0.01:1:1に関して)であった。
【図4】CCNN非存在下(a)、およびCCNN存在下(b)での元のSAF−p1:SAF−p2をベースとする繊維の透過型電子顕微鏡画像を示す図である。
【図5】自己集合性ペプチドに組み込まれたビオチンにより、ストレプトアビジンを介して繊維に捕集された金ペプチドを有する、ストレートなペプチド繊維マトリックスの透過型電子顕微鏡画像を示す図である。
【図6】自己集合性ペプチドに組み込まれたビオチンにより、ストレプトアビジンを介して繊維に捕集された金ペプチドを有する、単一のストレートなペプチド繊維の透過型電子顕微鏡画像を示す図である。
【図7】自己集合性ペプチドに組み込まれたビオチンにより、ストレプトアビジンを介して繊維に捕集された金ペプチドを有する、単一のストレートなペプチド繊維の高倍率透過型電子顕微鏡画像を示す図である。
【図8】ペプチドのハブ部位で特異的に捕集された金粒子を有する屈曲ペプチド繊維の透過型電子顕微鏡画像を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハブおよびそれぞれが一方の末端でハブに結合された複数のペプチドモノマー単位を含む繊維造形性ペプチドであって、少なくとも2個のペプチドモノマー単位の遊離末端はN末端またはC末端であり、少なくとも2個のペプチドモノマー単位はそれぞれ重複ねじれ構造を形成するように自己集合性ペプチドのサブユニットと相互作用することが可能である繊維造形性ペプチド。
【請求項2】
前記ハブは、前記ペプチドモノマー単位が結合され得る複数の誘導体化可能な部位を有する1個またはそれ以上のアミノ酸残基である、請求項1に記載の繊維造形性ペプチド。
【請求項3】
前記ハブは、リシンまたはグルタミン酸である、請求項2に記載の繊維造形性ペプチド。
【請求項4】
2個〜4個のペプチドモノマー単位を含む、前記請求項のいずれか1項に記載の繊維造形性ペプチド。
【請求項5】
2個のペプチドモノマー単位を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の繊維造形性ペプチド。
【請求項6】
ペプチドモノマー単位はそれぞれ可撓性リンカーにより前記ハブに結合される、前記請求項のいずれか1項に記載の繊維造形性ペプチド。
【請求項7】
前記可撓性リンカーは、グリシン、アラニン、セリンおよびβ−アラニンからなる群から選択されるアミノ酸を含むペプチドリンカーである、請求項6に記載の繊維造形性ペプチド。
【請求項8】
前記可撓性リンカーは、ポリ−β−アラニンペプチドである、請求項6に記載の繊維造形性ペプチド。
【請求項9】
前記ハブに結合された1個またはそれ以上の機能性分子をさらに含む、前記請求項のいずれか1項に記載の繊維造形性ペプチド。
【請求項10】
前記機能性分子は、抗体分子、受容体、リガンド、酵素、抗原、標識、金属イオンまたは核酸分子である、請求項9に記載の繊維造形性ペプチド。
【請求項11】
前記機能性分子は、可撓性リンカーにより前記ハブに結合される、請求項9または10に記載の繊維造形性ペプチド。
【請求項12】
前記可撓性リンカーは、グリシン、アラニン、セリンおよびβ−アラニンからなる群から選択されるアミノ酸を含むペプチドリンカーである、請求項11に記載の繊維造形性ペプチド。
【請求項13】
前記可撓性リンカーは、ポリ−β−アラニンペプチドである、請求項11に記載の繊維造形性ペプチド。
【請求項14】
前記少なくとも2個のペプチドモノマー単位は、7残基反復モチーフおよび/または11残基反復モチーフを含む、前記請求項のいずれか1項に記載の繊維造形性ペプチド。
【請求項15】
7残基反復モチーフおよび/または11残基反復モチーフを含む自己集合性ペプチドと
ともに、ねじれ平行コイルドコイル構造を形成することが可能である、請求項14に記載の繊維造形性ペプチド。
【請求項16】
下記式:
(NH3−g(abcdefg)q abcde−(X)mn−Y−((X)m−Z)p
(I)
または
(Z−(X)mp−Y−((X)m−g(abcdefg)q abcdef−COOH)n (II)
(式中、abcdefgは、7残基反復モチーフであり、
Xは、可撓性リンカーであり、
Yは、ハブであり、
Zは、機能性分子であり、
qは、2〜15であり、
mは、0または1であり、
nは、2〜4であり、
pは、1〜4である)
を有する、請求項1に記載の繊維造形性ペプチド。
【請求項17】
Xは、ポリ−β−アラニンペプチドである、請求項16に記載の繊維造形性ペプチド。
【請求項18】
Yは、式中(I)においてリシンである、請求項16または17に記載の繊維造形性ペプチド。
【請求項19】
Yは、式中(II)においてグルタミン酸である、請求項16または17に記載の繊維造形性ペプチド。
【請求項20】
qは、1〜5である、請求項16から19のいずれか1項に記載の繊維造形性ペプチド。
【請求項21】
nは、2である、請求項16から20のいずれか1項に記載の繊維造形性ペプチド。
【請求項22】
下記配列:
(NH3−KIRRLKQKNARLK(βA)32−K
を有する繊維造形性ペプチド。
【請求項23】
下記配列:
E−((βA)3EIAALEYEIAALEQ−COOH)2
を有する繊維造形性ペプチド。
【請求項24】
前記請求項のいずれか1項に記載の繊維造形性ペプチドを含むタンパク質構造。
【請求項25】
複数の請求項1から23のいずれか1項に記載の繊維造形性ペプチドおよび複数の自己集合性ペプチドを含むタンパク質構造であって、第1のペプチドモノマーおよび第2のペプチドモノマーが、非線状タンパク質構造を形成するように自己集合するタンパク質構造。
【請求項26】
繊維造形性ペプチド:第1の自己集合性ペプチド:第2の自己集合性ペプチドの比が、約1×10-6:1:1〜10:1:1である、請求項23に記載のタンパク質構造。
【請求項27】
屈曲および波状タンパク質繊維を含む、請求項25に記載のタンパク質構造。
【請求項28】
分裂および分岐状タンパク質繊維を含む、請求項25に記載のタンパク質構造。
【請求項29】
マトリックス、グリッド、足場構造、フィルターまたは網目構造である、請求項25に記載のタンパク質構造。
【請求項30】
前記複数の自己集合性ペプチドは、配列NH3−KIAALKQKIASLKQEIDALEYENDALEQ−COOHを有するペプチドおよび配列NH3−IRRLKQKNARLKQEIAALEYEIAALEQ−COOHを有するペプチドを含む、請求項25から29のいずれか1項に記載のタンパク質構造。
【請求項31】
複数の請求項1から23のいずれか1項に記載の繊維造形性ペプチドおよび複数の自己集合性ペプチドを、前記ペプチドが会合して、タンパク質構造を形成するような条件下で混合することを含む、請求項25から30のいずれか1項に記載のタンパク質構造を生産する方法。
【請求項32】
請求項25から30のいずれか1項に記載のタンパク質構造を生産するためのキットであって、複数の請求項1から23のいずれか1項に記載の繊維造形性ペプチドおよび複数の自己集合性ペプチドを含み、第1のペプチドモノマーおよび第2のペプチドモノマーは、会合して、タンパク質構造を形成することができるキット。
【請求項33】
生体液の精製における請求項24から30のいずれか1項に記載のタンパク質構造の使用。
【請求項34】
細胞および組織工学用に細胞を集合させるための請求項24から30のいずれか1項に記載のタンパク質構造の使用。
【請求項35】
表面の工学的処置における請求項24から30のいずれか1項に記載のタンパク質構造の使用。
【請求項36】
配列NH3−KIRRLKQKNARLKQEIAALEYEIAALEQ−COOH(SAF−p2a)を有する自己集合性ペプチド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2006−513985(P2006−513985A)
【公表日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−533672(P2004−533672)
【出願日】平成15年9月8日(2003.9.8)
【国際出願番号】PCT/GB2003/003900
【国際公開番号】WO2004/022584
【国際公開日】平成16年3月18日(2004.3.18)
【出願人】(502096808)ザ ユニバーシティ オブ サセックス (5)
【Fターム(参考)】