説明

自発光パネル及びその製造方法

【課題】 補助配線電極を設けて上部電極の配線抵抗を低減させる自発光パネルにおいて、良好な封止性能を確保する。
【解決手段】 基板10上に直接又は他の層を介して形成される下部電極11と、下部電極11上に形成された発光機能層12と、発光機能層12上に形成された上部電極13とからなる自発光素子2が、基板10上に配列された自発光パネル1であって、自発光素子2上に配置される封止部材20と、封止部材20を自発光素子2上に接着する接着層21と、上部電極13に接続される補助配線電極22とを備え、接着層21の自発光素子2側表面に形成された補助配線電極22が、接着層21を上部電極13に密着させることで、上部電極13に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自発光パネル及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機EL(OEL;Organic Electroluminescence)素子等の自発光素子を発光要素として備える自発光パネルは、フラットパネルディスプレイを可能にし、バックライトを要する液晶ディスプレイに比べて低消費電力且つ高輝度の表示が可能であると共に、ペーパーディスプレイ等の新たな表示形態を可能にするものとして期待を集めている。
【0003】
この自発光パネルの発光要素となる自発光素子は、アノード(陽極、或いは正孔注入電極)とカソード(陰極、電子注入電極)との間にpn接合を有する半導体層を挟み込んだ基本構造を有しており、この半導体層が、低分子型有機EL素子の場合には発光層を含む有機層の積層構造で形成され、高分子型有機EL素子の場合にはバイポーラ性の材料を単層または複数層積層した構造の有機層で形成されている。そして、アノード,カソードの両電極に電圧を印加することにより、アノードから有機層内に注入・輸送された正孔とカソードから有機層内に注入・輸送された電子が、この有機層(例えば発光層)内にて再結合し、この再結合によって得られる励起状態からのエネルギー放出によって発光を呈するものである。
【0004】
このような自発光パネルは、基板上に直接又は他の層を介して前述したアノード又はカソードの一方を下部電極としてパターニングし、これを絶縁膜で区画した発光領域上に発光機能層を積層した後、この発光機能層の上に前述したアノード又はカソードの他方を上部電極として積層することで形成される。この際に、自発光素子のドットマトリクスを構成しようとすると、前述した上部電極が一ラインの配線電極を兼用することになるので、上部電極の抵抗が高いとこの抵抗による電圧降下でパネルの中央と端部で各自発光素子に印加される電圧が異なることになり、良好な表示画像を得ることができない。
【0005】
また、上部電極は、この上部電極側から光と取り出すトップエミッション方式にする場合には良好な光透過性が要求され、この上部電極と逆側の基板側から光を取り出すボトムエミッション方式にする場合には良好な光反射性が要求されることになるので、それぞれに応じて選択される材料に制限があり、電気抵抗の低い材料を必ずしも採用することができない問題がある。
【0006】
特に、トップエミッション方式の場合、上部電極として採用される薄い金属膜、或いは薄い金属膜とITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)等の透明導電膜との積層膜は金属電極と比較して電気抵抗が高く、また、この透明導電膜は成膜温度を高くすることによって抵抗値を下げることができることは知られているものの、下層の発光機能層への影響を考慮すると高温での成膜は困難であり、前述したように、パネルの端部と中央部で自発光素子に印加される電圧に差が生じて表示性能が低下する問題が生じる。
【0007】
これを解消するために、下記特許文献1に記載の従来技術が提案されている。これによると、図1に示すように、絶縁体J1からなる基板上に反射面を含む電極J2,有機EL層J3,透明電極J4からなる有機EL素子を形成し、この有機EL素子の上には、封止体J5,封止体J5の表面に設けられた補助電極J6が設けられ、この補助電極J6を異方性導電膜からなる導電体J7を介して透明電極J4に接続することが記載されている。
【0008】
【特許文献1】特開2002−33198号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述した従来技術によると、補助電極J6が透明導電膜からなる透明電極J4に並列に接続されて配線電極として機能し、また、補助電極J6は封止体J5側に形成されるため、有機EL層J3の耐熱性の制約を受けずに抵抗値を低くすることができる。これによって、透明電極J4に均一な電圧を加えることが可能になり、画質の良い画像を得ることができる。
【0010】
しかしながら、前述の従来技術では、図1に示すように、封止体J5上に直接補助電極J6を形成し、これを異方性導電膜からなる導電体J7を介して上部電極である透明電極J4に接続しているので、透明電極J4と封止体J5の間に微小空隙が形成されやすくなり、封止体J5の接着性が悪く、封止体J5の側部から水分等の素子劣化因子が進入しやすい状態になっている。また、封止体J5に補助電極J6と導電体J7のパターンを形成した後、封止体J5を有機EL素子が形成された基板側に接着する封止工程を別途行う必要がある。従来技術の明細書には空隙内に樹脂を充填しても良いという記載もあるが、新たな工程を設ける必要があるので、製造工程が煩雑になる問題がある。また、充填している最中に気泡などが樹脂内に混入してしまい、封止性能を損なってしまう問題がある。
【0011】
また、封止体J5側から光を取り出すトップエミッション方式にする場合には、前述した微小空隙が屈折率の差として出射光路に存在するので、有機EL素子の発光領域と導電体J7で区画される出射開口との間に微妙なずれが視認されることになり、出射画像が見難くなるという問題が生じる。
【0012】
本発明は、このような問題に対処することを課題の一例とするものである。すなわち、補助配線電極を設けて上部電極の配線抵抗を低減させる自発光パネルにおいて、良好な封止性能を確保できること、製造工程の煩雑さを解消できること、トップエミッションを採用する場合にも良好な画像表示が可能であること、等が本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このような目的を達成するために、本発明による自発光パネル及びその製造方法は、以下の各独立請求項に係る構成を少なくとも具備するものである。
【0014】
[請求項1]基板上に直接又は他の層を介して形成される下部電極と、該下部電極上に形成された少なくとも一層以上の発光機能層と、該発光機能層上に形成された上部電極とからなる自発光素子が、前記基板上に配列された自発光パネルであって、前記自発光素子上に配置される封止部材と、該封止部材を前記自発光素子上に接着する接着層と、前記上部電極に接続される補助配線電極とを備え、前記封止部材の前記自発光素子との対向面に前記接着層が形成され、該接着層の前記自発光素子側表面に形成された前記補助配線電極が、前記接着層を前記上部電極に密着させることで、前記上部電極に接続されることを特徴とする自発光パネル。
【0015】
[請求項4]基板上に直接又は他の層を介して形成される下部電極と、該下部電極上に形成された少なくとも一層以上の発光機能層と、該発光機能層上に形成された上部電極とからなる自発光素子が、前記基板上に配列された自発光パネルの製造方法であって、前記基板上に前記自発光素子を形成する工程と、前記自発光素子上に配置される封止部材の前記自発光素子との対向面に接着層を形成すると共に、該接着層の前記自発光素子側表面に補助配線電極を形成する工程と、前記接着層を前記自発光素子上に密着させて、前記補助配線電極を前記上部電極に接続するように、前記基板と前記封止部材とを貼り合わせる工程と、を有することを特徴とする自発光パネルの製造方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図2は本発明の一実施形態に係る自発光パネルの構造を示す断面図である。本発明の実施形態に係る自発光パネル1は、基板10上に直接又は他の層を介して形成される下部電極11と、下部電極11上に形成された少なくとも一層以上の発光機能層12と、発光機能層12上に形成された上部電極13とからなる自発光素子2が、基板10上に配列されたものである。
【0017】
より詳しくは、基板10上にアクティブ駆動用のTFT素子3が形成されており、それを覆うように接続孔4Aを有する平坦化膜4が形成されている。この平坦化膜4の上に下部電極11がパターニングされて、接続孔4Aを介してTFT素子3と接続されている。更には、この下部電極11の縁部を覆って発光領域を区画するように絶縁膜5がパターニングされている。
【0018】
そして、絶縁膜5で区画された発光領域内の下部電極11上に前述した発光機能層12が積層され、その上を覆うように上部電極13が積層されている。ここでは、TFT素子3を駆動素子とするアクディブ駆動の構成例を示しているが、本発明の実施形態としてはこれに限定されるものではなく、ストライプ状の下部電極11と上部電極13とをクロス配置するパッシブ駆動の構成を備えるものであってもよい。
【0019】
このような前提構成を有する自発光パネル1において、本発明の実施形態では、自発光素子2上に配置される封止部材20と、封止部材20を自発光素子2上に接着する接着層21と、上部電極13に接続される低抵抗の補助配線電極22とを備え、封止部材20の自発光素子2との対向面に接着層21が形成され、接着層21の自発光素子2側表面に形成された補助配線電極22が、接着層21を上部電極13に密着させることで、上部電極13に接続されている。
【0020】
すなわち、上部電極13の配線抵抗を低減させる補助配線電極22は、接着層22内に埋め込まれた状態で上部電極13に接続されている。そして、接着層21は所定の厚みをもって上部電極13上の凹凸を吸収するように上部電極13の上面に密着して封止部材20を自発光素子2上に貼り付けている。
【0021】
また、本発明の実施形態に係る自発光パネル1は、下部電極11又は上部電極13の光透過性或いは光反射性、或いは光を取り出す側の各部材の光透過性を適宜選択することで、基板10側から光を取り出すボトムエミッション方式にすることもできるし、その逆に封止部材20側から光を取り出すトップエミッション方式にすることもできる。
【0022】
このような実施形態に係る自発光パネル1によると、自発光素子2上には封止部材20を接着する接着層21が密着しているので、空隙部の形成を抑えることができる。したがって、封止部材20の接着力を高めることができると共に、自発光素子2の劣化因子の進入を確実に遮断して、自発光素子2に対する封止性能を高めることができる。
【0023】
また、封止部材20側から光を取り出すトップエミッション方式にする場合にも、光の出射経路に空隙が存在しないので、出射画像が見難くなることもない。
【0024】
そして、低抵抗の補助配線電極22を設けることで、上部電極13として抵抗値の高い材料を採用した場合であっても、各自発光素子2に均一な電圧を加えることができ、画質の良い画像を得ることができる。
【0025】
また、本発明の実施形態に係る自発光パネル1の一つの形態としては、補助配線電極22を、自発光素子2の発光領域を区画する絶縁膜5上に形成することができる。これによると、例えば封止部材20側から光を取り出すトップエミッション方式にする場合に、光放出経路に補助配線電極22が形成されないので、その光透過性を考慮する必要がなく、補助配線電極22の材料選択の自由度を高めることができる。また、補助配線電極22の材料を光吸収性の高いもの(黒色材料等)にすれば、絶縁膜5上部に応じて形成した補助配線電極22をブラックマトリクスとして機能させることができ、鮮鋭度の高い画像を表示させることが可能になる。
【0026】
また、本発明の実施形態に係る自発光パネル1の他の形態としては、補助配線電極22を、接着層21と同材料の樹脂に導電性材料を分散させて形成することができる。これによると、補助配線電極22が形成される部分も接着層21と同様に接着力を有するように形成できるので、封止部材20の接着性を更に高めることができ、自発光素子2に対する封止性能をより向上させることができる。
【0027】
図3は、本発明の実施形態に係る自発光パネルの製造方法を説明する説明図である(図2と同一箇所には同一符号を付して一部重複説明を省略する)。この製造方法では、先ず、基板10上に前述した自発光素子2を形成する素子形成工程S1がなされる。これは、既知の工程であり、基板10上或いは前述した平坦化膜4の上に下部電極11のパターンを形成すると共に、その下部電極11上に発光領域の開口を区画するように絶縁膜5をパターニングした後、成膜工程で発光機能層12及び上部電極13を成膜するものである。
【0028】
その素子形成工程S1と並行して、封止部材準備工程S2がなされる。この封止部材準備工程S2では、自発光素子2上に配置される封止部材20の自発光素子2との対向面に接着層21を形成すると共に、接着層21の自発光素子2側表面に補助配線電極22を形成する。
【0029】
ここで、補助配線電極22は、前述したように、絶縁膜5のパターンに応じてパターン形成してもよく、また、この補助配線電極22を接着層21と同材料の樹脂に導電性材料を分散させて形成することもできる。
【0030】
具体的には、封止部材20上に接着剤を封止領域に対応するサイズで膜化して接着層21を形成する。この際には、接着剤ペーストをスクリーン印刷して接着層21を形成することもできるし、或いはフィルム状の接着剤シートを封止部材20に貼り付けて接着層21を形成することもできる。フィルム状の接着剤シートを用いる場合には、工程の簡略化が可能になる。
【0031】
そして、この接着層21上に補助配線電極22として働く導電性ペーストをパターン塗布する。その方法としては、スクリーン印刷や転写等のドライ(乾式)プロセスを採用することが好ましい。上部電極13上に直接接触する補助配線電極22をドライプロセスでパターニングすることで、水分などの素子劣化因子を排除することができる。ここで用いられる導電性ペーストは、樹脂に導電性材料を分散させたものであり、主材となる樹脂は前述したように接着層21と同一であっても良い。
【0032】
また、接着層21の一方の面に補助配線電極22を形成した後に、もう一方の面にバリア層を形成することもできる。この場合には、例えば、樹脂フィルムを接着層21として、その一方の面に乾式の印刷,転写法で補助配線電極22を形成し、金属箔等の封止部材20を樹脂フィルムの他方の面に貼り付ける。
【0033】
その後に、基板10と封止部材20とを貼り合わせる工程S3がなされる。この貼り合わせ工程S3では、接着層21を自発光素子2上に密着させて、補助配線電極22を上部電極13に接続する。この際には、補助配線電極22のパターンが所望の位置(例えば絶縁膜5上)に合致するように基板10と封止部材20を位置合わせすることが必要になる。そして、貼り合わせは加熱・加圧しながら行われ、接着層21を完全に自発光素子2上に密着させる。
【0034】
この際に、前述した補助配線電極22を形成するために用いられる導電性ペーストと接着層21の接着剤とは、導電性材料の分散によって流動化温度が異なることになり、貼り合わせ時の加熱加圧で導電性ペーストのパターン形状は維持したまま、接着層21に埋め込まれることになる。
【0035】
貼り合わせ後には、加熱硬化工程S4が施され、接着層21の硬化処理がなされる。これによって自発光素子2を確実に封止することが可能になる。
【0036】
図4は、前述した製造工程を平面的に示す説明図である。同図(a)に示すように、基板10上の平坦化膜4上に下部電極11のパターニングがなされる。平坦化膜4の下には下部電極11と接続されるTFT素子(図示省略)の駆動配線Lが形成されている。また、基板10の端部には引出配線Lが形成されている。
【0037】
そして、同図(b)に示すように、発光領域Sを開口して区画する絶縁膜5がパターニングされる。この発光領域Sに応じて発光機能層(図示省略)のマスク成膜がなされ、最終的に全面を覆うように上部電極13の成膜がなされる。この際、上部電極13の端部が引出配線Lに接続されることになる。
【0038】
一方、封止部材20に対しては、前述したように接着層21の形成がなされて、その上に、同図(d)に示すような補助配線電極22のパターニングが成される。ここでは、補助配線電極22は絶縁膜5のパターンに応じたパターンを有すると共に、端部において貼り合わせ時に引出配線Lと重なるようにパターニングされている。
【0039】
このように自発光素子2が形成された基板10と封止部材20とを前述したように貼り合わせることで、本発明の実施形態に係る自発光パネル1を得ることができる。
【0040】
図5は、本発明の実施形態に係る自発光パネル1であって、パッシブ駆動を前提としてボトムエミッション方式を採用する場合の構成例を示した説明図である(同図(a)が同図(b)のI−I断面図、同図(b)が同図(a)のII−II断面図を示し、前述した説明と同一部分には同一符号を付している)。この実施形態に係る自発光パネル1は、基板10上にストライプ状の下部電極11を形成し、この下部電極11上に発光領域を区画するように絶縁膜5を形成して、絶縁膜5で区画された発光領域上に発光機能層12を積層している。そして、下部電極11のストライプ方向と直交するように、上部電極13をストライプ状にパターニングして成膜している。
【0041】
これに対して、封止部材20には前述したように接着層21が形成され、この接着層21の自発光素子2側の表面に補助配線電極22がパターニングされている。ここでは、基板10側から光を取り出すボトムエミッション方式を前提としているので、発光領域上の上部電極13上に補助配線電極22が接続するように、補助配線電極22のパターニングがなされている。
【0042】
以下に、前述した自発光素子2として有機EL素子を採用する場合の具体例を説明する。
先ず、有機EL素子について説明すると、一般的に有機EL素子は、アノード(陽極、正孔注入電極)とカソード(陰極、電子注入電極)との間に有機EL機能層を挟み込んだ構造をとっている。両電極に電圧を印加することにより、アノードから有機EL機能層内に注入・輸送された正孔とカソードから有機EL機能層内に注入・輸送された電子がこの層内(発光層)で再結合することで発光を得るものである。基板10上に、下部電極11,有機EL機能層からなる発光機能層12,上部電極13を積層した有機EL素子(自発光素子2)の具体的構造及び材料例を示すと以下のとおりである。
【0043】
基板10については、特に、図5に示すボトムエミッション方式の構造を採用する場合には、透明性を有する平板状、フィルム状のものが好ましく、材質としてはガラス又はプラスチックを用いることができる。前述したトップエミッション方式の構造を採用する場合には、基板10の透明性は特に要求されない。
【0044】
下部電極11,上部電極13については、一方が陰極、他方が陽極に設定されることになる。この場合、陽極は仕事関数の高い材料で構成されるのがよく、クロム(Cr),モリブデン(Mo),ニッケル(Ni),白金(Pt)等の金属膜、或いはITO,IZO等の酸化金属膜等による透明導電膜が用いられる。そして、陰極は仕事関数の低い材料で構成されるのがよく、特に、アルカリ金属(Li,Na,K,Rb,Cs),アルカリ土類金属(Be,Mg,Ca,Sr,Ba),希土類金属といった仕事関数の低い金属、その化合物、又はそれらを含む合金を用いることができる。また、下部電極11、上部電極13ともに透明な材料により構成した場合には、光の放出側と反対の電極側に反射膜を設けた構成とすることもできる。
【0045】
また、下部電極11又は上部電極13から引き出される引出電極Lは、自発光パネル1とそれを駆動するIC,ドライバ等の駆動手段とを接続するために設けられる配線電極であって、好ましくはAg,Cr,Al等の低抵抗金属材料やそれらの合金を用いるのがよい。
【0046】
一般に、下部電極11と引出電極Lの形成は、ITO,IZO等によって下部電極11及び引出電極Lのための薄膜を蒸着或いはスパッタリング等の方法で形成し、フォトリソグラフィ法などによってパターン形成がなされる。下部電極11と引出電極L(特に低抵抗化の必要な引出電極)に関しては、前述のITO,IZO等の下地層にAg,Ag合金,Al,Cr等の低抵抗金属を積層した2層構造にしたもの、或いは、Ag等の保護層としてCu,Cr,Ta等の耐酸化性の高い材料を更に積層した3層構造にしたものを採用することができる。
【0047】
発光領域を区画する絶縁膜5としては、ポリイミド、感光性樹脂やSiO等の無機材料等をスピンコート法、スパッタリング法等で成膜し、フォトリソ法や印刷法等でパターニングを行うことができる。
【0048】
下部電極11と上部電極13の間に成膜される有機EL機能層(発光機能層12)としては、下部電極11を陽極、上部電極13を陰極とした場合には、正孔輸送層/発光層/電子輸送層の積層構成が一般的であるが(下部電極11を陰極、上部電極13を陽極とした場合にはその逆の積層順になる)、発光層,正孔輸送層,電子輸送層はそれぞれ1層だけでなく複数層積層して設けてもよく、正孔輸送層,電子輸送層についてはどちらかの層を省略しても、両方の層を省略して発光層のみにしても構わない。また、有機EL機能層としては、正孔注入層,電子注入層,正孔障壁層,電子障壁層等の有機機能層を用途に応じて挿入することができる。
【0049】
有機EL機能層の材料は、有機EL素子の用途に合わせて適宜選択可能である。以下に例を示すがこれらに限定されるものではない。
【0050】
正孔輸送層としては、正孔移動度が高い機能を有していればよく、その材料としては従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。具体例としては、銅フタロシアニン等のポルフィリン化合物、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]−ビフェニル(NPB)等の芳香族第三アミン、4−(ジ−p−トリルアミノ)−4’−[4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル]スチルベンゼン等のスチルベン化合物や、トリアゾール誘導体、スチリルアミン化合物等の有機材料が用いられる。また、ポリカーボネート等の高分子中に低分子の正孔輸送用の有機材料を分散させた、高分子分散系の材料も使用できる。好ましくは、ガラス転移温度が封止用樹脂を加熱硬化させる温度より高い材料が好ましく、例えば4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]−ビフェニル(NPB)が挙げられる。
【0051】
発光層は、公知の発光材料が使用可能であり、具体例としては、4,4’−ビス(2,2’−ジフェニルビニル)−ビフェニル(DPVBi)等の芳香族ジメチリディン化合物、1,4−ビス(2−メチルスチリル)ベンゼン等のスチリルベンゼン化合物、3−(4−ビフェニル)−4−フェニル−5−t−ブチルフェニル−1,2,4−トリアゾール(TAZ)等のトリアゾール誘導体、アントラキノン誘導体、フルオレノン誘導体等の蛍光性有機材料、(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム錯体(Alq)等の蛍光性有機金属化合物、ポリパラフェニレンビニレン(PPV)系、ポリフルオレン系、ポリビニルカルバゾール(PVK)系等の高分子材料、白金錯体やイリジウム錯体等の三重項励起子からのりん光を発光に利用できる有機材料(特表2001−520450)を使用できる。上述したような発光材料のみから構成したものでもよいし、正孔輸送材料、電子輸送材料、添加剤(ドナー、アクセプター等)または発光性ドーパント等が含有されてもよい。また、これらが高分子材料又は無機材料中に分散されてもよい。
【0052】
電子輸送層は、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよく、その材料としては従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。具体例としては、ニトロ置換フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体等の有機材料、8−キノリノール誘導体の金属錯体、メタルフタロシアニン等が使用できる。
【0053】
必要に応じて、フッ化リチウム、酸化リチウム等の材料からなる電子注入層を電子輸送層と上部電極の間に挿入しても構わないし、上部電極成膜時での発光機能層へのダメージを抑制する目的でアルカリ土類金属やアルカリ土類金属酸化物などの材料からなる保護層を設けても構わない。
【0054】
上記の正孔輸送層、発光層、電子輸送層は、スピンコーティング法、ディッピング法等の塗布法、インクジェット法、スクリーン印刷法等の印刷法等のウェットプロセス、又は、蒸着法、後述するレーザ転写法等のドライプロセスで形成することができる。
【0055】
そして、有機EL素子からなる自発光素子2は、単一の有機EL素子を形成するものであってもよいし、所望のパターン構造を有して複数の画素を構成するものであってもよい。後者の場合には、その表示方式は、単色発光でも2色以上の複数色発光でもよく、特に複数色発光の有機ELパネルを実現するためには、RGBに対応した3種類の発光機能層を形成する方式を含む2色以上の発光機能層を形成する方式(塗り分け方式)、白色や青色等の単色の発光機能層にカラーフィルタや蛍光材料による色変換層を組み合わせた方式(CF方式、CCM方式)、単色の発光機能層の発光エリアに電磁波を照射する等して複数発光を実現する方式(フォトブリーチング方式)、異なる発光色の低分子有機材料を予め異なるフィルム上に成膜してレーザによる熱転写で一つの基板上に転写するレーザ転写方式等によって行うことができる。
【0056】
封止部材20としては、ガラス基板や金属基板或いは金属箔、または、封止膜として、SiN,AIN,GaN等の窒化物、SiO,Al,Ta、ZnO,GeO等の酸化物、SiON等の酸化窒化物、SiCN等の炭化窒化物、金属フッ素化合物、金属膜等を用いることができる。
【0057】
接着層21に用いられる材料としては、主に接着機能を有するもので下地の凹凸を平坦化する機能を有するものを採用することができ、具体的には、高分子材料からなる接着剤を採用することができる。材料例を挙げると、エポキシ樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン樹脂等の光硬化型、熱硬化型、二液硬化型、熱可塑性樹脂、ポリイミド、ポリ尿素、アクリレート含有ポリマー、等を例示することができるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0058】
補助配線電極22の形成材料としては、乾式の印刷法,転写法で形成できる材料を用いることが好ましく、例えば、樹脂バインダ中にカーボンやグラファイト等を混ぜた導電性ペースト等を挙げることができる。しかしながら、上部電極13よりも電気抵抗値の低いものであれば特に材料にこだわりなく採用できる。
【0059】
以下に、本発明の実施例に係る自発光パネルの製造方法の具体例を示す。当然ながら、本発明がこの実施例に限定されることはない。
【0060】
ガラス製の基板上に反射膜として200nmのCrと、110nmのITOをスパッタ法で成膜し、フォトリソ法によりストライプパターンの下部電極を得た。ついで、下部電極上にフォトレジストAZ6112(東京応化工業製)を発光領域を区画する絶縁膜としてパターン形成した。
【0061】
この基板を、界面活性剤を含んだ水溶液及び純水にて洗浄した後、サムコインターナショナル研究所性UVオゾンストリッパーUV−1にてUVオゾン洗浄を10分間行ったのち、基板を真空槽に投入した。到達真空度1×10−6Torrに達してから、抵抗加熱真空成膜でホール注入層としてCuPcを毎秒0.5nmの成膜速度にて25nm成膜した。次いで、ホール輸送層としてα−NPDを、同じく毎秒0.5nmの成膜速度にて抵抗加熱真空成膜した。次いで、発光層としてAlqを毎秒0.5nmの成膜速度で60nm抵抗加熱真空成膜した。次いで、電子注入層としてLiFを毎秒0.01nmの成膜速度で0.5nmの厚さに抵抗加熱真空成膜した。
【0062】
以上の有機層とLiFは下部電極のストライプを覆うように形成され、一貫して1×10−6Torr以下の高真空で成膜されている。
【0063】
最後に、真空中にて陰極用のシャドウマスクを施し、下部電極のストライプパターンと直交するようなストライプ状のアルミニウムとIZOの積層膜を上部電極として、アルミニウムは毎秒1nmの速度で5nmの厚さに抵抗加熱真空成膜、IZOは毎秒10nmの速度で100nmの厚さにスパッタ法にて成膜した。
このように基板上に複数の有機EL素子を形成した。
【0064】
一方、基板とは別の工程で、厚さ約0.16mmのガラス基板からなる封止部材上に防湿性の高い約50μmの厚みを有する樹脂フィルム、例えば、エポキシ樹脂を貼り付けて接着層を形成した。この接着層上に、カーボンを混ぜ込んだ導電性ペーストを用い、格子パターン状に脱気しながらスクリーン印刷することで補助配線電極を形成した。
【0065】
そして、窒素雰囲気で満たされた封止作業用グローブボックス内に、封止部材と基板とを搬入し、基板上の上部電極と封止部材上の補助配線電極が接続できるように位置合わせを行って、貼り合わせ装置を用い、基板と封止部材とを貼り合わせた。その後、加熱して接着層を硬化させた。
【0066】
以上説明した本発明の実施形態及び実施例によると、補助配線電極を設けて上部電極の配線抵抗を低減させることで自発光パネルの表示性能を向上させることができる。また、封止部材に形成された接着層を上部電極に密着させて補助配線電極と上部電極を接続するので、上部電極上に空隙が形成されないで封止部材の接着力を高めることができ、良好な封止性能を確保することができると共に、補助配線電極と上部電極との接続を確実に行うことができる。
【0067】
また、補助配線電極と上部電極との接続を、基板と封止部材との貼り合わせと同時に行うことができるので、製造工程の煩雑さを解消することができる。更には、発光領域を区画する絶縁膜上に補助配線電極を接続することで、トップエミッションを採用する際にも発光領域に障害無く補助配線電極を設けることができ、補助配線電極をブラックマトリクスとして機能させることができる。更に、上部電極上の光出射光路に空隙が存在しないので、発光領域を良好に視認することができ、トップエミッションを採用する場合にも良好な画像表示が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】従来技術の説明図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る自発光パネルの構造を示す断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る自発光パネルの製造方法を説明する説明図である。
【図4】本発明の実施形態に係る自発光パネルの製造方法を説明する説明図(製造工程を平面的に示す説明図)である。
【図5】本発明の他の実施形態に係る自発光パネルの構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0069】
1 自発光パネル
2 自発光素子
3 TFT素子
4 平坦化膜
5 絶縁膜
10 基板
11 下部電極
12 発光機能層
13 上部電極
20 封止部材
21 接着層
22 補助配線電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に直接又は他の層を介して形成される下部電極と、該下部電極上に形成された少なくとも一層以上の発光機能層と、該発光機能層上に形成された上部電極とからなる自発光素子が、前記基板上に配列された自発光パネルであって、
前記自発光素子上に配置される封止部材と、該封止部材を前記自発光素子上に接着する接着層と、前記上部電極に接続される補助配線電極とを備え、
前記封止部材の前記自発光素子との対向面に前記接着層が形成され、該接着層の前記自発光素子側表面に形成された前記補助配線電極が、前記接着層を前記上部電極に密着させることで、前記上部電極に接続されることを特徴とする自発光パネル。
【請求項2】
前記補助配線電極は、前記自発光素子の発光領域を区画する絶縁膜上に形成されることを特徴とする請求項1に記載された自発光パネル。
【請求項3】
前記補助配線電極は、前記接着層と同材料の樹脂に導電性材料を分散させて形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載された自発光パネル。
【請求項4】
基板上に直接又は他の層を介して形成される下部電極と、該下部電極上に形成された少なくとも一層以上の発光機能層と、該発光機能層上に形成された上部電極とからなる自発光素子が、前記基板上に配列された自発光パネルの製造方法であって、
前記基板上に前記自発光素子を形成する工程と、
前記自発光素子上に配置される封止部材の前記自発光素子との対向面に接着層を形成すると共に、該接着層の前記自発光素子側表面に補助配線電極を形成する工程と、
前記接着層を前記自発光素子上に密着させて、前記補助配線電極を前記上部電極に接続するように、前記基板と前記封止部材とを貼り合わせる工程と、を有することを特徴とする自発光パネルの製造方法。
【請求項5】
前記補助配線電極は、前記自発光素子の発光領域を区画する絶縁膜のパターンに応じてパターン形成されることを特徴とする請求項4に記載された自発光パネルの製造方法。
【請求項6】
記補助配線電極は、前記接着層と同材料の樹脂に導電性材料を分散させて形成されることを特徴とする請求項4又は5に記載された自発光パネルの製造方法。
【請求項7】
前記補助配線電極の形成は、乾式印刷又は転写法によって行われることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載された自発光パネルの製造方法。
【請求項8】
前記接着層の形成は、前記封止部材の前記自発光素子との対向面にフィルム状の接着層を貼り付けることを特徴とする請求項4〜7のいずれかに記載された自発光パネルの製造方法。
【請求項9】
前記基板と前記封止部材とを加熱加圧しながら前記貼り合わせる工程を行い、その後、熱硬化によって前記接着層を硬化させることを特徴とする請求項4〜8のいずれかに記載された自発光パネルの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−278241(P2006−278241A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−98386(P2005−98386)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000221926)東北パイオニア株式会社 (474)
【Fターム(参考)】