説明

自発光型素子及び照明装置並びに表示装置

【課題】経年劣化等による自発光型素子の異常発熱を個別に且つ安価に防止すると共に、省スペース化を図ることができる自発光型素子及び照明装置並びに表示装置を提供する。
【解決手段】電極層13と、電極層14と、これらの電極層13,14間に配置されこれらの電極層間に電流を流すことにより発光する発光層15と、を備えた有機EL素子1であって、温度上昇に基づいて電極層間を流れる電流量を制限する機能性層16を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自発光型素子及び照明装置並びに表示装置に係り、特に、電極層間に配置された発光層による発光を利用した自発光型素子及びこの自発光型素子を用いた照明装置並びに表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、多層構造を有する自発光型素子は、定電流又は定電圧駆動されている。図9に、このような自発光型素子としての有機発光ダイオード(OLED)100の構成を示す。この有機発光ダイオード100は、電極層103,発光層105,電極層104がこの順で基板101,102の間に積層された構成を有している。
発光層105は、正孔注入層105a,正孔輸送層105b,有機発光層105c,電子輸送層105d,電子注入層105eがこの順に積層された構成となっている。
【0003】
この有機発光ダイオード100は、電極層103と電極層104との間に電圧を印加すると発光層105が発光し、これにより基板101又は基板102側から外部へ光を照射するようになっている。
【0004】
この有機発光ダイオード100では、初期不良,経年劣化等による不具合や発光効率低下に起因して発光層105自体が異常発熱したり、過電流の発生により素子自体が異常発熱したりして、素子全体を破損させてしまうおそれがあった。このような異常発熱から保護するため、有機発光ダイオード100を用いた照明装置並びに表示装置では、外付けでPTCサーミスタやヒューズ等からなる保護回路を設けていた(PTCサーミスタとして、例えば、特許文献1乃至5参照)。
【0005】
図10にPTCサーミスタの概略構造を示す。PTCサーミスタ110は、電極111,112の間にPTC素材113を配置した構成を有している。PTC素材113は、温度が上昇すると、電気抵抗値が大きくなり、これにより電極111,112間に電流を流れ難くすることができる。
【0006】
したがって、このようなPCTサーミスタ等を含む保護回路を、自発光型素子,多数の自発光型素子からなる照明装置及び表示装置に適用することにより、素子の温度上昇時に電流を流れ難くして異常発熱を防止することができる。
【0007】
【特許文献1】特許第2936057号公報
【特許文献2】特許第3214546号公報
【特許文献3】特許第3701113号公報
【特許文献4】特開2000−109615号公報
【特許文献5】特許第3683113号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述のような保護回路を外付けで設けると、製造コストが上がってしまうと共に、装置全体が大型化してしまうという問題があった。
【0009】
また、多数の自発光型素子からなる配列を有する照明装置や表示装置では、発光領域によって平均出力が異なることや、多数の自発光型素子間で製造バラツキがあること等により、自発光型素子毎に経年劣化の進行度合が異なり、同じ装置内で発光効率低下に起因する発熱が顕著になっていく領域と、そうでない領域とが生じる。
【0010】
そして、多数の自発光型素子をアレイ配列した自発光型素子アレイ配列を有する照明装置や表示装置において、上記外付けの保護回路を設けたとしても、個別の発熱領域に対応して異常発熱を防止することができない。すなわち、ある個別領域での電流値や温度が基準値を超えていても、装置全体の電流値や温度が基準値を超えていなければ、保護回路を作動させることができない。したがって、上記照明装置や表示装置では、単に保護回路を設けても、特定領域の異常発熱を防止することができないという問題があった。
【0011】
また、上記照明装置や表示装置に単に保護回路を設けた場合、保護回路が作動すると、異常発熱を起こした個別領域を含め、全領域の作動が停止される。このため、正常に作動する領域のみで全体としての明るさを確保して使用を継続することができるような場合であっても、装置全体の照明機能が失われてしまうという問題があった。
【0012】
一方、このような装置において、個別の発熱領域に対応するように、分割された発光領域毎,自発光型素子アレイ配列毎,さらには多数の自発光型素子毎等の保護単位毎に上記外付けの保護回路を配設すると、製造コストが大幅に増大し現実的ではなく、また、装置が大型化してしまうという問題があった。
【0013】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、経年劣化等による自発光型素子の異常発熱を個別に且つ安価に防止すると共に、省スペース化を図ることができる自発光型素子及び照明装置並びに表示装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するために、本発明は、第1の電極層と、第2の電極層と、これらの電極層間に配置されこれらの電極層間に電流を流すことにより発光する発光層と、を備えた自発光型素子であって、温度上昇に基づいて前記第1及び第2の電極層間を流れる電流量を制限する機能性層を備えたことを特徴としている。
【0015】
このように構成された本発明によれば、自発光型素子は、通常の作動状態では、第1の電極層と第2の電極層との間に電流が流れることにより、発光層が発光して発光素子として機能することができる。すなわち、この通常の作動状態では、機能性層が通常の設定温度範囲内の比較的低温に保持されるため、第1の電極層と第2の電極層との間の導通状態が良好に維持される。
【0016】
しかしながら、経年変化による発光効率の低下等により、発光層等の温度が設定範囲以上に上昇したり、周囲温度が上昇したりしたような場合、この温度上昇により、機能性層が、第1の電極層と第2の電極層間の電流量を制限するようになる。これにより、素子温度の上昇を抑制することができ、素子が異常発熱することを個別且つ安価に防止することが可能となる。
そして、本発明では、この電流制限機能を機能性層によって実現することができるので、従来のように外付け保護回路を設ける場合と比べて、発光装置全体の省スペース化を図ることができる。
【0017】
また、本発明において好ましくは、さらに、第1の電極層と前記第2の電極層との間に、金属,導電性の金属酸化物膜,半透明の金属薄膜及び導電性の有機化合物から選択された材料からなる導電層が設けられる。このように構成された本発明によれば、導電層により、隣接する層に正孔又は電子の注入を促進することができる。特に、導電層は、発光層と機能性層との間に有することが好ましく、発光層への正孔又は電子の注入を促進し、発光効率を向上させることができる。
【0018】
また、本発明において好ましくは、第2の電極層が機能性層である。このように構成された本発明によれば、第2の電極層を別途設けなくてもよいので、構成を簡単化することができる。
【0019】
また、本発明において、具体的には、第1及び第2の電極層間に、発光層と、機能性層がこの順に積層されている。また、別の形態では、第1及び第2の電極層間に、発光層と、導電層と、機能性層がこの順に積層されている。また、別の形態では、第1の電極層と、発光層と、導電層と、機能性層である第2の電極層がこの順に積層されている。また、別の形態では、第1の電極層と、発光層と、機能性層である第2の電極層がこの順に積層されている。
【0020】
また、本発明において好ましくは、発光層が、有機発光層又は無機発光層を含む。このように構成された本発明によれば、自発光型素子を有機発光層又は無機発光層を有するタイプのいずれかで構成することができる。
【0021】
また、上記の目的を達成するために、本発明の照明装置は、上記自発光型素子を備えている。このように構成された本発明によれば、上記自発光型素子と同様に素子の異常発熱を個別且つ安価に防止することが可能であると共に、発光装置全体の省スペース化を図ることができる。
そして、照明装置を複数の自発光型素子で構成した場合においても、各自発光型素子が個別に電流制限機能を有しているので、各自発光型素子に対して個別に外付け保護回路を設けることなく、個別且つ安価に、さらに装置の省スペース化を図りつつ、各自発光型素子を発熱から保護することができる。
【0022】
また、上記の目的を達成するために、本発明の表示装置は、上記自発光型素子のアレイ配列を備えている。このように構成された本発明によれば、上記照明装置と同様に、各自発光型素子に対して個別に外付け保護回路を設けることなく、個別且つ安価に、さらに装置の省スペース化を図りつつ、各自発光型素子を発熱から保護することができる。具体的に本発明の表示装置では、保護回路の内蔵化により携帯電話等のモバイル機器の更なる省スペース化を行うことが可能となり、また、表示素子全体,個別の表示領域又は画素単位での過電流保護を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、経年劣化等による自発光型素子の異常発熱を個別に且つ安価に防止すると共に、省スペース化を図ることができる自発光型素子及び照明装置並びに表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。先ず、図1,図2により、本発明の第1実施形態による自発光型素子を説明する。第1実施形態では、本発明の自発光型素子を有機EL素子に適用した例を示す。
図1は本発明の第1実施形態による自発光型素子の断面図、図2は図1のより詳細な断面図である。
【0025】
図1に示すように、第1実施形態の有機EL素子1は、基板12上に、電極層14,機能性層16,発光層15,電極層13が積層され、さらに電極層13が基板11で覆われた構成となっている。
基板11,12は、ガラス基板である。基板11,12は、少なくとも一方が可視光を透過することのできるものであり、ガラス基板以外に、プラスチック、高分子フィルム、シリコン基体(基板)等を使用することができる。基板の厚みは、有機EL素子1の用途(例えば、ディスプレイ、照明、フレキシブルディスプレイ等)により異なるが、通常、50μm〜2mm程度である。
【0026】
電極層13,14は、層状に形成された陽極,陰極であり、発光層15に電流を流す役割を担う。なお、電極層13,14は、それぞれ層状であるが、発光層15に電流を流す役割を担うのであれば層状でなくてもよい。電極層13,14のうち、少なくとも光を照射する方向に位置するものは、透明又は半透明である。また、電極層13,14以外に補助電極層を設けてもよい。
【0027】
電極層13,14を構成する材料は、金属、導電性の金属酸化物膜、半透明の金属薄膜等である。具体的には、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、インジウム・スズ・オキサイド(ITO)、インジウム・亜鉛・オキサイド、金、白金、銀、銅、バリウム、カルシウム、マグネシウム又はマグネシウム/銀合金等の金属又はそれらの酸化物である。また、これらの金属等にさらにアルミニウム、銀、クロム等を形成した多層構造をとってもよい。また、ポリアニリン若しくはその誘導体、ポリチオフェン若しくはその誘導体等の有機の透明導電膜を用いてもよい。
【0028】
電極層13,14の厚みは、目的に応じて適宜設定することができるが、3nm〜10μm程度であり、好ましくは20nm〜1μm、さらに好ましくは20nm〜500nmである。電極層13,14は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法、インクジェット塗布法、スクリーン印刷法等によって形成することができる。
【0029】
発光層15、電極層13,14によって電圧が印加されることによって発光する。
具体的には、図2に示すように、発光層15は、正孔注入層15a,正孔輸送層15b,有機発光層15c,電子輸送層15d,電子注入層15eが順に積層された構成を有する。各層を構成する材料は、公知の材料を使用することができる。
【0030】
正孔注入層15aは、正孔注入の効果を向上させるため、電極層13に接して配置されている。
正孔注入層15aを形成するための正孔注入層材料は、特に制限されず、公知の材料を適宜用いることができる。具体的には、例えば、銅フタロシアニン等のフタロシアニン錯体、4,4',4”−トリス(3―メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン等の芳香族アミン誘導体、ヒドラゾン誘導体、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、アミノ基を有するオキサジアゾール誘導体、ポリチオフェン等を用いることができる。
【0031】
正孔注入層15aの厚みは、5〜300nm程度であることが好ましい。厚みが5nm未満では製造が困難になる傾向にあり、厚みが300nmを超えると印加される電圧が大きくなる傾向にあるからである。
【0032】
正孔輸送層15bは、有機EL材料である有機発光層15cへの正孔の輸送効果の効率を向上させるため、正孔注入層15aに接して配置されている。
正孔輸送層15bを形成するための正孔輸送層材料は、特に制限されず、公知の材料を適宜用いることができる。具体的には、例えば、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(3−メチルフェニル)4,4’−ジアミノビフェニル(TPD)、NPB(4,4'−bis[N−(1−naphthyl)−N−phenylamino]biphenyl)等の芳香族アミン誘導体等を用いることができる。
【0033】
正孔輸送層15bの厚みは、特に制限されず、目的の設計に応じて適宜変更することができるが、5〜100nm程度であることが好ましい。厚みが5nm未満では、製造が困難になったり、正孔輸送の効果が十分に得られなくなったりする傾向にあり、厚みが100nmを超えると印加される電圧が大きくなる傾向にあるからである。
【0034】
有機発光層15cは、正孔輸送層15b及び電子輸送層15dに接して配置されており、両側の層から輸送された正孔と電子が再結合し励起されることにより、外部に向けて発光する。有機発光層15cを構成する材料は、低分子化合物でも高分子化合物でもよい。
【0035】
具体的に、有機発光層15cを構成する低分子化合物は、ナフタレン誘導体、アントラセンもしくはその誘導体、ペリレンもしくはその誘導体、ポリメチン系、キサンテン系、クマリン系、シアニン系などの色素類、8−ヒドロキシキノリンもしくはその誘導体の金属錯体、芳香族アミン、テトラフェニルシクロペンタジエンもしくはその誘導体、またはテトラフェニルブタジエンもしくはその誘導体等である。
【0036】
また、具体的に、有機発光層15cを構成する高分子化合物は、ポリフルオレン、その誘導体および共重合体、ポリアリーレン、その誘導体および共重合体、ポリアリーレンビニレン、その誘導体および共重合体、ポリアリールアミン、その誘導体および共重合体等である。
【0037】
また、発光層15を構成する有機発光層15cの構成材料に、イリジウムを中心金属とするIr(ppy)3、Btp2Ir(acac)、白金を中心金属とするPtOEP、ユーロピウムを中心金属とするEu(TTA)3phen等、三重項発光を示すことのできる材料を使用してもよい。
【0038】
電子輸送層15dは、有機EL材料である有機発光層15cに電子輸送効果の効率を向上させるため、有機発光層15cに接して配置されている。
電子輸送層15dを形成する材料は、特に制限されず、電子輸送性を備えた公知の材料を用いることができる。具体的には、例えば、ポリサイクリックハイドロカーボン系列誘導体、ヘテロサイクリック化合物、トリス(8−キノリノライト)アルミニウム等を用いることができる。
【0039】
電子注入層15eは、電子注入の効果を向上させるため、電極層14に接して配置されている。
電子注入層15eを形成するための電子注入層材料は、特に制限されず、公知の材料を適宜用いることができる。具体的には、例えば、Ba、Ca、CaF、LiF、Li、NaF等を用いることができる。
また、電子注入層15eの厚みは、3〜50nm程度であることが好ましい。厚みが3nm未満では、製造が困難になる傾向にあり、50nmを超えると印加される電圧が大きくなる傾向にあるからである。
【0040】
なお、本実施形態では、発光層15が、正孔注入層/正孔輸送層/有機発光層/電子輸送層/電子注入層(「/」は隣合う層が接していることを示す。以下同じ。)で構成されていたが、これに限らず、以下のような構成としてもよい。
a)有機発光層
b)正孔輸送層/有機発光層
c)有機発光層/電子輸送層
d)正孔輸送層/有機発光層/電子輸送層
e)正孔注入層/有機発光層
f)有機発光層/電子注入層
g)正孔注入層/有機発光層/電子注入層
h)正孔注入層/正孔輸送層/有機発光層
i)正孔輸送層/有機発光層/電子注入層
j)正孔注入層/正孔輸送層/有機発光層/電子注入層
k)正孔注入層/有機発光層/電子輸送層
l)有機発光層/電子輸送層/電子注入層
m)正孔注入層/有機発光層/電子輸送層/電子注入層
n)正孔注入層/正孔輸送層/有機発光層/電子輸送層
o)正孔輸送層/有機発光層/電子輸送層/電子注入層
p)正孔注入層/正孔輸送層/有機発光層/電子輸送層/電子注入層
なお、上記構成pは、第1実施形態の構成である。
【0041】
機能性層16は、通常は抵抗値が低く、電極層13,14間の良好な導電状態を確保する。しかしながら、機能性層16は、周囲温度の上昇又は機能性層16自体の発熱により層温度が上昇すると、抵抗値が通常の値と比べて相当程度まで大きくなり、電流量を制限する温度依存型の電流制限素子として機能する。すなわち、機能性層16は、温度上昇に応じて抵抗値が上昇するPTC(positive temperature coefficient)サーミスタ機能、又は温度上昇に応じて導電体から絶縁体に変化するヒューズ機能を有している。
【0042】
PTCサーミスタ機能を有するPTC素体からなる機能性層16は、素子温度が所定の閾値以下では、機能性層16全体の抵抗値が数mΩ〜数十Ω、好ましくは数mΩ〜数百mΩという非常に低い値を保つが、素子温度が上昇し所定の閾値を超えると、急激に抵抗値が上昇する特性を有する。温度Tのときの機能性層16の抵抗値Rは次式で表すことができる。
R=R0・exp{α(1/T−1/T0
ただし、R0は温度T0のときの抵抗値であり、αはサーミスタ係数である。
【0043】
機能性層16の設計抵抗特性は、有機EL素子1の使用目的と環境に応じて幅を持たせることができる。機能性層16は、閾値温度以下ではその抵抗値が好ましくは数mΩ〜数百mΩの間に収まり、閾値温度以上になると抵抗値が急激に又は徐々に上昇していき、最終的に閾値温度以下の抵抗値の108倍以上に達する。閾値温度は、60〜100℃であることが好ましく、60〜80℃であることがより好ましい。機能性層16の抵抗値は、閾値温度以上では、温度上昇に伴って、指数関数的又は線形的に上昇する。
【0044】
機能性層16を構成するPTC素体は、ポリマー中に導電性微粒子がほぼ均一に分散された構成である。この構成により、安定したサーミスタ特性を得ることができる。
PTC素体を構成するポリマーは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、アイオノマー樹脂、ポリオレフィン等である。PTC素体を構成する導電性微粒子は、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、導電性ウィスカー、導電性セラミック紛、ニッケル、銅、金、銀、鉄、クロム等である。
【0045】
また、機能性層16は、上記構成に限らず、表面に多数の微小な凹凸を設けた上記導電性微粒子からなる層の間に上記ポリマーからなる薄膜層を配置した積層体であってもよい。この積層体では、表面に形成された導電性微粒子の微小な凹凸により、擬似的に導電性微粒子の分散状態を形成している。
また、機能性層16は、上記構成に限らず、PTCサーミスタ特性を有する材料で形成することができる。
【0046】
なお、機能性層16は、閾値温度以下ならば数mΩ〜数百mΩの間の抵抗値を有するため、電極層13,14の代わりに機能性層16を配置して、これを電極層として使用する構成としてもよい。
【0047】
次に、上述した実施形態による自発光素子の作用(効果)を説明する。
有機EL素子1の電極層13と電極層14に外部電源を接続し、定電流駆動により、電極層13と電極層14の間に定電流を印加すると、発光層15が発光する。有機EL素子1では、設定範囲内の電流が流れるときには、機能性層16が数mΩ〜数百mΩの間の抵抗値を保持する。
【0048】
しかしながら、経年劣化等により有機EL素子1の発光効率が下がると、発光層15の発熱量が増し、発光層15の熱が機能性層16に伝播してくる。また、発光効率の低下により、定電流駆動された有機EL素子1では、電極層13,14間の電圧が上昇する。これにより、機能性層16の温度がある閾値を超えると、機能性層16の抵抗値が急激に上昇し有機EL素子1への電力供給を制限(遮断を含む)する。このように有機EL素子1への電力供給が制限されることにより、有機EL素子1は、異常発熱を防止することができる。
【0049】
このように、本実施形態では、有機EL素子1の異常発熱を防止することができる機能性層16を、有機EL素子1の層構造中に形成したので、有機EL素子1を含む照明装置並びに表示装置の製造が容易であり、且つ、従来のように外付け保護回路を設ける必要がない。これにより、有機EL素子1の発光装置の省スペース化を図ることができる。
【0050】
次に、図3,4に基づいて、本発明の第2実施形態による自発光型素子を説明する。なお、以下の実施形態では、第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、相違する部分を主に説明して重複する説明は省略する。
図3に示すように、第2実施形態の有機EL素子1では、発光層15と機能性層16との間に接して導電層17が設けられている。
【0051】
導電層17は、電子及び正孔の層間の移動を補助し、発光層15での発光を促進するために発光層15と機能性層16との間に設けられている。導電層17に含まれる材料としては、金属,導電性の金属酸化物膜,半透明の金属薄膜,導電性の有機化合物があげられ、このうち特に金属,導電性の金属酸化物膜,半透明の金属薄膜が好ましい。金属,導電性の金属酸化物膜,半透明の金属薄膜の具体例は、前述の電極層13,14と同じ材料があげられる。また、導電性の有機化合物の具体例としては、前述の正孔注入層材料,正孔輸送層材料,電子輸送層材料で説明した材料と同じ材料があげられる。この導電層17により、発光層15の発光効率を向上させることができる。
【0052】
図4に示すように、発光層15は、第1実施形態と同様の層構成とすることができる。
このように構成された第2実施形態の有機EL素子1においても、第1実施形態の有機EL素子と同様の作用効果を奏することができる。
【0053】
次に、図5に基づいて、本発明の第3実施形態による自発光型素子を説明する。
図5に示すように、第3実施形態の有機EL素子1では、第2実施形態と同様に発光層15と機能性層16との間に接して導電層17が設けられているが、第1及び第2実施形態と異なり電極層14が設けられていない。また、発光層15の構成は、第1実施形態と同様にすることができる。
【0054】
第3実施形態では、電極層14を省略した構成とし、機能性層16を電極層14の代わりに用いている。これにより、有機EL素子1の層構成を簡単化することができる。
このように構成された第3実施形態の有機EL素子1においても、第1実施形態の有機EL素子と同様の作用効果を奏することができる。
【0055】
次に、図6に基づいて、本発明の第4実施形態による自発光型素子を説明する。
図6に示すように、第4実施形態の有機EL素子1では、第3実施形態の構成から導電層17を省略した構成であり、第1及び第2実施形態と異なり電極層14が設けられていない。また、発光層15の構成は、第1実施形態と同様にすることができる。
【0056】
第4実施形態の構成においても、第3実施形態の構成と同様に、機能性層16を電極層14の代わりに用いることができる。このように第4実施形態では、電極層14及び導電層17を省略することにより、構成を簡単化している。
このように構成された第4実施形態の有機EL素子1においても、第1実施形態の有機EL素子と同様の作用効果を奏することができる。
【0057】
次に、図7に基づいて、本発明の第5実施形態による有機EL素子1を説明する。
図7に示すように、第5実施形態の有機EL素子1は、基板12上に電極層13,発光層15を積層すると共に、絶縁層18を挟んで、基板12上に電極層14,機能性層16を積層させ、さらに発光層15と機能性層16を覆うように導電層17を形成し、これらを基板11で覆った構成を有している。機能性層16と発光層15は、絶縁層18によって両端部が区画されている。絶縁層18によって隣接する層は、電気的に絶縁されている。この有機EL素子1は、フォトリソグラフィ技術等によって形成することができる。
【0058】
図7に示した有機EL素子1は、図1に示した有機EL素子を構成する各層を高さ方向のみに積層するのではなく、平面的に展開して形成した構成である。
本実施形態の有機EL素子1では、電極層13と電極層14の間に定電流を印加すると、発光層15が発光する。
【0059】
経年劣化等により発光層15の発光効率が低下して発熱量が増すと、定電流駆動のため電極層13と電極層14間の電圧は上昇し、さらに機能性層16に発光層15の熱が伝播してくる。機能性層16の温度がある閾値を超えると、急激に抵抗値が上昇するため、有機EL素子1への電力供給を制限することができる。これにより、有機EL素子1の異常発熱を防止することができる。
また、本実施形態の有機EL素子1では、従来のように外付け保護回路を設ける必要がないので、発光装置の省スペース化を図ることができる。
【0060】
次に、図8に基づいて、本発明の第6実施形態による照明装置2を説明する。
図8は、照明装置2の正面図である。照明装置2は、同一の基板12上に配置された有機EL素子1(1a乃至1p)のn×m(図8では4×4)のアレイ配列と、端子部2a,2bとを備えている。有機EL素子1は、上記実施形態記載と同様のものである。端子部2a,2bは、それぞれ各有機EL素子1の電極層13,14に接続されており、外部電源を給電することができるようになっている。なお、図8では基板11の図示を省略している。
【0061】
照明装置2は、定電流駆動により、端子部2a,2b間に定電流が流れて発光する。
照明装置2を長期間使用すると経年変化等により、全体的に発光効率が低下し、熱へ変換される割合が大きくなっていく。例えば、有機EL素子1a,1e,1i,1m,1n,1o,1pが、それ以外のものに比べて劣化が早い場合、端子部2a,2b間に定電流が流れているため、劣化が遅い有機EL素子1b,1c,1d,1f,1g,1h,1j,1k,1lに電流が集中する。
【0062】
電流が集中した有機EL素子1は、輝度が上昇すると共に、発熱が顕著となる。このとき、電流が集中した有機EL素子1の温度がある閾値を超えると、その機能性層16の抵抗値が急激に上昇する。これにより、機能性層16の抵抗値が上昇した有機EL素子1は、電流が流れにくくなり、劣化が早い有機EL素子1と発熱が均衡する部分で安定し、すべての有機EL素子1が閾値以下の温度を保つ輝度で発光するようになる。
【0063】
また、有機EL素子1iに明点が発生し電流が集中した場合、この有機EL素子1iは急激に発熱する。照明装置2が定電流駆動されているので、有機EL素子1i以外の有機EL素子1は、電流供給が制限され、意図した輝度レベルで発光することができなくなる。しかしながら、有機EL素子1iの温度がある閾値を超えると、機能性層16の抵抗値が急激に上昇する。抵抗値が上昇した有機EL素子1iは電流供給が大幅に制限され、有機EL素子1iに集中していた電流は、周辺の有機EL素子1へ均等に分配される。これにより、有機EL素子1iは閾値以下の温度を保つ輝度で発光し、その周辺の有機EL素子1は意図した輝度で発光するようになる。
【0064】
このように、本実施形態の照明装置2では、経年劣化等による明点やリークパスの発生により特定の有機EL素子1に電流が集中したとき、電流が集中した有機EL素子1の機能性層16の抵抗値が上昇する。これにより、その他の有機EL素子1へ電流が分配されるようになり、電流が集中していた有機EL素子1の異常発熱を抑えることができる。
また、本実施形態の照明装置2では、各有機EL素子1の層構造中に機能性層16を形成したので、各有機EL素子1の異常発熱を個別に且つ安価に防止することができる。
本発明の照明装置は、経年劣化した素子に流れる電流のみが制限(遮断)され、他の素子は発光し続けるため、長寿命となる。また、経年劣化しても異常発熱が防止されるため、長期間安全に使用することが可能である。
【0065】
なお、上記実施形態では、照明装置2が有機EL素子1のアレイ配列を有し、このアレイ配列により1つの発光領域を構成していたが、これに限らず、1素子のみの有機EL素子1からなるタイプや、1素子又は複数素子の配列からなる発光領域が複数に分割配置されたタイプ等の照明装置を構成することができる。
【0066】
また、図8に示した有機EL素子1のアレイ配列構造を表示装置に適用することができる。すなわち、この場合、端子部2a,2bは、それぞれアレイ配列の行方向,列方向の各有機EL素子1に対応した複数のサブ端子を有する。そして、端子部2a,2b中のサブ端子を適宜に組合せることにより、有機EL素子1を選択的に点灯することができる。これにより、有機EL素子1のアレイ配列構造を表示装置として用いることができる。
【0067】
このように構成することにより、表示装置内に、保護回路を内蔵化することができ、例えば、携帯電話等のモバイル機器の更なる省スペース化を行うことが可能となる。また、表示素子全体,個別の表示領域又は画素単位での過電流保護を行うことが可能となる。
【0068】
上記実施形態では、発光層15が有機発光材料を用いて形成された有機発光層であり、自発光型素子が有機EL素子又は有機発光ダイオードである例を示したが、これに限らず、発光層を無機発光材料を用いて形成した無機発光層として、自発光型素子を無機発光ダイオードとしてもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、機能性層16の抵抗値が、ある温度閾値を境に急激に変化するように設定されていたが、これに限らず、温度上昇と共に徐々に、例えば線形関係で抵抗値が上昇していくように設定してもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、機能性層16が温度上昇に基づく可変抵抗特性を有するサーミスタ機能を有していたが、これに限らず、機能性層16が閾値温度を超えたときに絶縁状態となるヒューズ機能を有していてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の第1実施形態による自発光型素子の断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態による自発光型素子のより詳細な断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態による自発光型素子の断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態による自発光型素子のより詳細な断面図である。
【図5】本発明の第3実施形態による自発光型素子の断面図である。
【図6】本発明の第4実施形態による自発光型素子の断面図である。
【図7】本発明の第5実施形態による自発光型素子の断面図である。
【図8】本発明の第6実施形態による自発光型素子の平面図である。
【図9】従来例の自発光型素子の断面図である。
【図10】従来例のPTCサーミスタの断面図である。
【符号の説明】
【0072】
1 有機EL素子
2 照明装置
2a,2b 端子部
11,12 基板
13,14 電極層
15 発光層
15a 正孔注入層
15b 正孔輸送層
15c 有機発光層
15d 電子輸送層
15e 電子注入層
16 機能性層
17 導電層
18 絶縁層
100 有機発光ダイオード
101,102 基板
103,104 電極層
105 発光層
105a 正孔注入層
105b 正孔輸送層
105c 有機発光層
105d 電子輸送層
105e 電子注入層
110 サーミスタ
111,112 電極
113 PTC素材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極層と、第2の電極層と、これらの電極層間に配置されこれらの電極層間に電流を流すことにより発光する発光層と、を備えた自発光型素子であって、
温度上昇に基づいて前記第1及び第2の電極層間を流れる電流量を制限する機能性層を備えたことを特徴とする自発光型素子。
【請求項2】
さらに、前記第1の電極層と前記第2の電極層との間に、金属,導電性の金属酸化物膜,半透明の金属薄膜及び導電性の有機化合物から選択された材料からなる導電層が設けられたことを特徴とする請求項1に記載の自発光型素子。
【請求項3】
前記第2の電極層が前記機能性層であることを特徴とする請求項1又は2に記載の自発光型素子。
【請求項4】
前記第1及び第2の電極層間に、前記発光層と、前記機能性層がこの順に積層されていることを特徴とする請求項1に記載の自発光型素子。
【請求項5】
前記第1及び第2の電極層間に、前記発光層と、前記導電層と、前記機能性層がこの順に積層されていることを特徴とする請求項2に記載の自発光型素子。
【請求項6】
前記第1の電極層と、前記発光層と、前記導電層と、前記機能性層である第2の電極層がこの順に積層されていることを特徴とする請求項3に記載の自発光型素子。
【請求項7】
前記第1の電極層と、前記発光層と、前記機能性層である第2の電極層がこの順に積層されていることを特徴とする請求項3に記載の自発光型素子。
【請求項8】
前記発光層が、有機発光層又は無機発光層を含むことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の自発光型素子。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の自発光型素子を備えた照明装置。
【請求項10】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の自発光型素子のアレイ配列を備えた表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−21073(P2009−21073A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−182171(P2007−182171)
【出願日】平成19年7月11日(2007.7.11)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】