説明

自発光平面表示装置

【課題】ナノチューブを発光素子として用いた自発光平面表示装置において、ナノチューブからの高効率発光を実現可能とする自発光平面表示装置を提供する。
【解決手段】絶縁層を介して交差された垂直走査電極VLと水平走査電極HLとの交差部分の近傍にそれぞれ一体的に櫛型電極VLC,HLCを組み合わせ形成し、これらの両櫛型電極VLC,HLC間には多数本のナノチューブNTを橋絡させて橋渡し構造のナノチューブ発光素子EMSを構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自発光平面表示装置に係り、特にナノチューブで構成した発光素子を具備した自発光平面表示装置に関し、詳細にはナノチューブへの電流注入によるバンド間発光を利用した自発光平面表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高輝度、高精細に優れたディスプレイデバイスとして従来からカラー陰極線管が広く用いられている。しかし、近年の情報処理装置やテレビ放送の高画質化に伴い、高輝度、高精細の特性をもつと共に軽量、省スペースの平面型表示装置の要求が高まっている。
【0003】
その典型例として液晶表示装置、プラズマ表示装置などが実用化されている。また、特に高輝度化が可能なものとして、電子源から真空への電子放出を利用した電子放出型表示装置、低消費電力を特徴とする有機ELディスプレイなど、種々の型式のパネル型表示装置の実用化も近い。なお、補助的な照明光源を必要としないプラズマ表示装置、電子放出型表示装置あるいは有機EL表示装置を自発光型平面表示装置と称する。
【0004】
このような平面型の表示装置のうち、上記電子放出型の表示装置には、C.A.Spindtらにより発案されたコーン状の電子放出構造を有するもの、メタル−インシュレータ−メタル(MIM)型の電子放出構造を有するもの、量子論的トンネル効果による電子放出現象を利用する電子放出構造(表面伝導型電子源とも呼ばれる)を有するもの、さらにはダイアモンド膜、グラファイト膜またはカーボンナノチューブに代表されるナノチューブなどが有する電子放出現象を利用するもの等が知られている。
【0005】
自発光型平面表示装置の一例である電子放出型の表示装置は、内面に電子放出型の電子源と制御電極であるゲート電極とを形成した背面パネルと、この背面パネルと対向する内面に複数色の蛍光体層とアノード電極(陽極)とを備えた前面パネルの両者の内周縁に封止枠を介挿して封止し、当該背面パネルと前面パネルと封止枠とで形成される真空外囲器の内部を真空に保持して構成される。
【0006】
背面パネルは、ガラスまたはセラミックス等を好適とする背面基板の上に第1の方向に延在しこの第1の方向と交差する第2の方向に並設されて電子源をもつ複数のカソード電極と、第2の方向に延在し第1の方向に並設して設けたゲート電極を有する。そして、カソード電極とゲート電極との間の電位差で電子源からの電子の放出量(放出のオン・オフを含む)を制御する。
【0007】
また、前面パネルはガラス等の光透過性の材料で形成された前面基板の上に蛍光体層とアノード電極とを有する。封止枠は背面パネルと前面パネルの内周縁にフリットガラスなどの接着材で固着される。背面パネルと前面パネルと封止枠とで形成される真空容器の内部の真空度は、例えば10-5〜10-7Torr程度である。表示面サイズが大きいものでは、背面パネルと前面パネルの間に間隙保持部材(スペーサまたは隔壁とも称する)を介挿して固定し、両基板間の間を所定の間隔に保持している。
【0008】
なお、ナノチューブとしての典型例であるカーボンナノチューブを電子源として用いた自発光平面表示装置が数多く報告されている。例えば、電子源構造をフォトリソグラフィープロセスにより形成し、5インチ型の自発光平面表示装置を作製した例が下記「非特許文献1」に報告されている。
【0009】
【非特許文献1】Applied Physics Lettersのvol.80(21), pp.4045-4047 (2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記非特許文献1では、カーボンナノチューブを含有する感光性ペーストを用いて電子源を任意の位置にフォトリソグラフィープロセスを用いて形成することにより、自発光平面表示装置を実現可能としている。
【0011】
しかしながら、ナノチューブを電子源として用いた自発光平面表示装置は、多く報告されている中でナノチューブへの電流注入によるエネルギーバンド間の発光を利用した自発光平面表示装置の報告例は存在していない。
【0012】
したがって、本発明は、前述した従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、ナノチューブを発光素子として用いた自発光平面表示装置において、ナノチューブへの電流注入によるバンド間発光を利用してナノチューブからの高効率発光を実現可能とする自発光平面表示装置を提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、発光効率の高い発光素子を実現することにより、高輝度で高品位の画像表示が得られる自発光平面表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このような目的を達成するために本発明による自発光平面表示装置は、発光素子が垂直電極ストライプと水平電極ストライプとの間にナノチューブを橋絡させて電気的に接続された橋渡し構造を有して形成されることにより、ナノチューブへの電流注入によるバンド間発光を利用することができるので、背景技術の課題を解決することができる。
【0015】
また、本発明では、画素内部の各ピクセルが赤色,緑色及び青色またはそれ以上のサブピクセルから構成され、赤色サブピクセルは電流注入により赤色に発光するナノチューブを含有し、緑色サブピクセルは電流注入により緑色に発光するナノチューブを含有し、青色サブピクセルは電流注入により青色に発光するナノチューブを含有し、それ以外のサブピクセルは電流注入により所望の色で発光するナノチューブを含有させて発光素子アレイを形成する。
【0016】
本発明では、赤色,緑色及び青色に対応するバンドギャップを有する半導体的性質のナノチューブをそれぞれ赤色のサブピクセル,緑色のサブピクセル及び青色のサブピクセルに配した発光素子アレイを形成する。そして、線順次駆動またはアクティブマトリックス駆動により発光素子アレイを駆動することにより、ナノチューブからの高効率発光が実現できる。
【0017】
また、本発明では、ナノチューブにダブルヘテロ構造を導入することにより、電子とホールを効率的に閉じ込め、高効率発光を実現する。
【0018】
また、本発明では、ナノチューブを例えば電気泳動法等の手法で電極を橋渡しするように配向させることにより、有効なナノチューブの本数を増すことにより発光効率を高めることができる。さらに電極を櫛形構造とすることで、有効なナノチューブの本数を増すことにより発光効率を高めることができる。
【0019】
また、本発明では、ナノチューブが炭素,窒素及び硼素のうちの少なくとも1種類を構成元素として含有したシングルウォールナノチューブまたはマルチウォールを発光素子として用いる。
【0020】
炭素以外に硼素や窒素を構成元素として含有したナノチューブは、平均的な結合エネルギーが通常のカーボンナノチューブに対して増加するために耐熱性が向上する。さらに、結合エネルギーが強いために電界による破壊が緩和され、電子放出の長寿命化が期待できる。
【0021】
また、電気伝導性に関しては、通常のカーボンナノチューブがカイラリティーによる金属または半導体的性質を示すのに対して硼素と炭素または窒素と炭素との二元素により構成されるナノチューブは金属的性質を示す。また、硼素,窒素,炭素の三元素から構成されるナノチューブは半導体であり、硼素+窒素の比率が大きくなるほどバンドギャップが大きくなる。
【0022】
硼素と窒素とにより構成されたナノチューブは、大気中で約1000℃程度の耐熱性が期待できる。しかしながら、硼素+窒素ナノチューブは、チューブ径が約5nm以上ではバンドギャップエネルギーが2eV以上の半導体であり、発光素子としては電気伝導性不足となる可能性がある。硼素+窒素ナノチューブは、多層ナノチューブの最外層の保護層として有用であると考えられる。
【0023】
これに対して硼素,窒素,炭素を構成元素として含有するナノチューブは、構成元素の比率により、耐熱性及び電気電導性の優れたナノチューブが実現可能であり、発光素子として大いに期待できる。また、硼素と炭素または窒素と炭素とを構成元素として含有するナノチューブは、耐熱性及び電気電導性の優れたナノチューブが実現可能であり、発光素子として大いに期待できる。すなわち、現行のカーボンナノチューブに比較して耐熱性に優れ、電気電導性に関しても遜色のないナノチューブを硼素,窒素,炭素を構成元素として含有するナノチューブにより実現することができる。
【0024】
なお、本発明は、上記各構成及び後述する実施の形態に記載される構成に限定されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱することなく、種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ナノチューブへの電流注入によるバンド間発光を利用して効率的な発光が得られるので、発光効率の高い自発光平面表示装置を実現できるという極めて優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、実施例の図面を参照して詳細に説明する。
【0027】
本発明による自発光平面表示装置の実施例を説明する前提として発光素子に用いられるナノチューブに代表されるカーボンナノチューブについて説明する。カーボンナノチューブは、そのカイラリティーにより、半導体的性質または金属的性質を示す。カーボンナノチューブのカイラリティーは、(n,m)で表わされ、n-mが3の倍数でない場合に半導体的性質を有する。半導体的性質を有する場合、電流注入によりバンド間発光を得ることができる。特にカーボンナノチューブは、その形状から量子細線であるため、最低量子準位間だけでなく、第二準位間あるいはさらに高準位間の発光も高効率で得ることができる。
【0028】
図1に示すように半導体の第一準位間のエネルギーギャップをEg1、第二準位間のエネルギーギャップをEg2と表記する。エネルギーギャップEg1,Eg2およびより高準位間のエネルギーギャップは、ナノチューブの直径が小さくなるにつれて大きくなることが知られている。波長約700nm付近の赤色発光は、直径が約0.42nm付近のカーボンナノチューブのエネルギーギャップEg1遷移または直径が約0.96nm付近のエネルギーギャップEg2遷移を利用することができる。また、波長約550nm付近の緑色発光は、直径が約0.35nm付近のエネルギーギャップEg1遷移または直径が約0.70付近のエネルギーギャップEg2遷移を利用することができる。さらに、波長約460nm付近の青色発光は、直径が約0.57nm付近のエネルギーギャップEg2遷移を利用することが可能である。
【0029】
ナノチューブへの電流注入による効率的な発光を得るためには、図1に示すようにナノチューブの長さ方向にダブルヘテロ構造を導入することが有効である。すなわち、バンドギャップの狭い領域Te2を遷移領域Te3を介してバンドギャップの広い領域Te1で挟むことにより、電子とホールとを閉じ込めて、効率的な発光を得ることができる。カーボンナノチューブの場合は、同位準位の場合は、直径が細いほどバンドギャップエネルギーが大きくなるので、直径の大きいナノチューブを直径の小さいナノチューブで挟むことにより、ダブルヘテロ構造を実現することができる。このダブルヘテロ構造の考え方は、エネルギーギャップEg1とエネルギーギャップEg2等の異なる準位間でも適応可能である。
【実施例1】
【0030】
図2及び図3は、本発明による自発光平面表示装置の実施例1の構成を説明する模式図であり、図2は、自発光平面表示装置を斜め上方から見た要部展開斜視図、図3は、自発光平面表示装置を斜め下方から見た要部展開斜視図である。この自発光平面表示装置は、背面パネルPNL1を構成する背面基板SUB1と、前面パネルPNL2を構成する前面基板SUB2とが封止枠MFLを介して貼り合わせて構成される。
【0031】
図4は、背面パネルPNL1を構成する背面基板SUB1の内面側の要部平面図である。図4において、背面基板SUB1の内面には、一方向に延在し、この一方向と交差する他方向に並設された多数の垂直走査電極VLと、上記他方向に延在し、上記一方向に並設された多数の水平走査電極HLとが形成されている。垂直走査電極VLと水平走査電極HLとは、図示しない絶縁層を介して交差し、それぞれの交差部分の近傍には上述したナノチューブを含有したナノチューブ発光素子が形成されている。
【0032】
個々のナノチューブ発光素子は、単位画素を構成する。通常は、赤(R),緑(G),青(B)の3色の単位画素で一つの画素(カラー画素、ピクセル)が構成される。なお、カラー画素の場合、単位画素は複画素(サブピクセル)とも称される。赤(R),緑(G),青(B)色で発光する3種類のサブピクセルで一つの画素を形成することにより、フルカラーの表示が可能である。
【0033】
図5は、上記ナノチューブ発光素子の構成を説明するサブピクセル構造を示す平面図である。図5において、絶縁層(図示しない)を介在させて形成された垂直走査電極VLと水平走査電極HLとの交差部分近傍には、垂直走査電極VLに複数本の櫛型電極VLCが一体的に形成され、水平走査電極HLCには枝電極HLBを介して複数本の櫛型電極HLCが一体的に形成されている。そして、垂直走査電極VLの櫛形電極VLCと水平走査電極HLの櫛型電極HLCとが交互に組み合わされ、これらの櫛型電極VLCと櫛型電極HLCとの間には多数本のナノチューブNTが橋絡された橋渡し構造のナノチューブ発光素子EMSが形成されている。
【0034】
ここで、垂直走査電極VL及び水平走査電極HLは、印刷法または金属蒸着法とフォトリソグラフィー法とを組み合わせた方法により作製することができる。また、電極材質は、銀等に導電性の高い金属,その合金または多層金属等を使用することができる。
【0035】
これらの櫛型電極VLCと櫛型電極HLCとの間にナノチューブNTを橋絡させる橋渡し構造の形成方法として、電着法,配向膜貼り付け法または印刷法等の手法を利用することができる。この電着法とは、所望の直径を有するナノチューブを分散した溶液に垂直走査電極VL及び水平走査電極HLを形成した背面基板を浸漬する。そして、垂直走査電極VLと水平走査電極HLとの間に直流または交流電圧を印加することにより、印加電界による電界配列効果によりナノチューブNTの橋渡し構造を実現することができる。
【0036】
そして、垂直走査電極VLと水平走査電極HLとの両方に電圧印加したピクセルのみに橋渡し構造を形成できるので、上記手法を3回行なうことにより、赤(R),緑(G),青(B)色のサブピクセルを形成することが可能となる。
【0037】
また、配向膜貼り付け法とは、所望の直径のナノチューブをポリマーに分散させ、薄膜を形成した後、引張り応力を印加することにより、ナノチューブを応力方向に配向させた配向膜を櫛型電極部分に貼り付ける方法である。これにより、ナノチューブの橋渡し構造を実現することが可能である。
【0038】
また、印刷法とは、所望の直径のナノチューブを用いてペーストを作製し、そのペーストを櫛型電極部分に印刷する方法である。この場合、ナノチューブが一定方向に配向していないので、橋渡し構造の歩留まりは上記方法に比較して低いことが考えられるが、この印刷法を用いても実現可能である。
【0039】
また、この背面基板SUB1上に形成された垂直走査電極VLには、垂直走査信号源Vから垂直方向の走査信号が印加され、水平走査電極HLには、水平走査信号源Hから水平方向の走査信号が印加される。そして、垂直走査信号と水平走査信号とにより選択されたナノチューブ発光素子EMSから発光される。
【0040】
図6は、前面パネルPNL2を構成する前面基板SUB2の内面側の要部平面図である。図6において、前面基板SUB2の内面の表示領域の全面には任意の保護膜が形成されている。
【0041】
なお、画面サイズが大きい自発光平面表示装置では、背面基板SUB1に有する発光素子と前面基板SUB2との間隔を所定値に保持させるために封止枠MFLの内部に薄いガラス板などからなる複数の間隔保持部材(隔壁またはスペーサとも称する)が所定の間隔で設置される。
【0042】
図7は、背面パネルPNL1を構成する背面基板1の構成例を模式的に説明する平面図であり、図7(a)は全体構成図、図7(b)は図7(a)のA部の拡大平面図である。図7では、背面パネルPNLを構成する背面基板SUB1の内面には同図垂直方向に複数本の垂直走査電極VLが形成され、同図水平方向には複数本の水平走査電極HLが形成されている。垂直走査電極VLと水平走査電極HLとは図示しないが、絶縁層を介して交差し、各交差部分(A部)の近傍には図5で示したナノチューブ発光素子EMSが形成されている。
【0043】
発光素子EMSに走査信号を供給する垂直走査電極VLは、各垂直走査電極を複数組に分割して各組毎の垂直走査電極が垂直走査電極バスラインに電気的に接続されている。また、水平走査電極HLは、各水平走査電極が複数組に分割して各組毎の水平走査電極を水平走査電極バスラインに電気的に接続されている。垂直走査電極バスライン及び水平走査電極バスラインのうちの一部分をそれぞれ選択することにより、指定された位置の発光素子EMSから発光させるように構成されている。
【0044】
上述したナノチューブ発光素子EMSは、上述したように水平走査電極HLと、垂直走査電極VLとの交差部分付近に形成されている。個々のナノチューブ発光素子EMSは、カラー表示の場合の1画素(ピクセル)を構成する副画素(サブピクセル)に対応する。垂直走査電極VLの一端は垂直電極引出線VLTに接続され、垂直走査信号源Vから垂直走査信号が供給される。また、水平走査電極HLの一端は水平走査電極引出線HLTに接続され、水平走査信号源Hから水平走査信号が供給されて所望の画素を発光させることができる。
【0045】
図8は、前面パネルPNL2を構成する前面基板SUB2の構成例を模式的に説明する平面図である。この前面パネルPNL2は、前面基板SUB2の内面に膜厚が数十nm乃至数百nmに成膜されて保護膜ADが形成されている。
【0046】
このようにして製作した前面パネルPNL2を図2に示すように封止枠MFLを介して上述した背面パネルPNL1と重ね合わせ、内部を真空引きして封止し、表示パネルを製作し、駆動回路等を付加して自発光平面表示装置を完成する。なお、前面パネルPNL2と封止枠MFLと背面パネルPNL1との封着にはフリットガラスを用いた。この封着は、封着面にフリットガラスを印刷法またはディスペンサー塗布法を用いて塗布し、約450°Cに加熱して溶融接着する。また、前面パネルPNL2と封止枠MFLと背面パネルPNL1とを封着した内部空間の真空引きは、前面パネルPNL2,封止枠MFLまたは背面パネルPNL1の何れか(通常は、背面パネルPNL1の表示領域外かつ封止枠MFL内の適当な場所)に取り付けた排気管から排気し、所定の真空度に達した状態で排気管を封じ切ることで表示パネルが形成される。
【0047】
このようにして作製した自発光平面表示装置は、表示パネルに垂直走査電極VLに垂直走査信号を、水平走査電極HLに水平走査信号をそれぞれ印加して線順次駆動させることにより、ナノチューブNTの電流流入によるバンド間発光に起因する高効率の発光が得られるので、輝度の高い高品位の画像を表示させることができる。本実施例では、線順次駆動について説明したが、サブピクセル毎にTFTを設けることによりアクティブマトリクス駆動することも可能である。
【0048】
このような構成において、ナノチューブ発光素子EMSを構成するナノチューブNTとしてその軸方向にバンドギャップの小さな領域が両端のバンドギャップの大きな領域で挟まれたダブルヘテロ構造を導入することにより、電子とホールとが効率的に封じ込められるので、高効率の発光が得られる。
【0049】
また、ナノチューブ発光素子EMSは、ナノチューブNTを電気泳動法等の手法により垂直走査電極VLと水平走査電極HLとの間にナノチューブNTを橋渡し構造で配向させることにより、有効なナノチューブNTの本数を増やすことができるので、発光効率を高めることができる。
【0050】
さらに、ナノチューブ発光素子EMSは、垂直走査電極VL及び水平走査電極HLにそれぞれ櫛型電極VLC及び櫛型電極HLCを一体的に形成して櫛型電極VLCと櫛型電極HLCとの間に多数本のナノチューブNTを橋絡させて橋渡し構造としたことにより、有効なナノチューブNTの本数を増やすことができるので、発光効率を高めることができる。
【実施例2】
【0051】
図9は、本発明による自発光平面表示装置の他の実施例を説明するナノチューブ発光素子の構成を示すサブピクセル構造の平面図である。図9において、図5と異なる点は、垂直走査電極VLと水平走査電極HLとの交差部分の近傍には、垂直走査電極VLに枝電極VLBが一体的に形成され、この枝電極VLBと水平走査電極HCLとの間には多数本のナノチューブNTを橋絡させて電気的に接続されてナノチューブ発光素子EMSが形成されている。ナノチューブ発光素子EMSは、上記実施例1と同様の手段により形成することができる。
【0052】
このような構成においてもナノチューブNTに垂直走査電極VL及び水平走査電極HLから電流注入可能な構造が形成されるので、ナノチューブNTの電流流入によるバンド間発光に起因する高効率の発光が得られる
【実施例3】
【0053】
図10は、本発明による自発光平面表示装置のさらに他の実施例を説明するナノチューブ発光素子の構成を示すサブピクセル構造の平面図である。10において、図5と異なる点は、垂直走査電極VLと水平走査電極HLとの交差部分の近傍には、垂直走査電極VLと水平走査電極HLとの間に多数本のナノチューブNTを橋絡させて電気的に接続されてナノチューブ発光素子EMSが形成されている。なお、このナノチューブ発光素子EMSも上記実施例1と同様の手段により形成される。
【0054】
このような構成においても、ナノチューブ発光素子EMSは、上記同様にナノチューブNTに垂直走査電極VL及び水平走査電極HLから電流注入可能な構造が形成されるので、ナノチューブNTの電流流入によるバンド間発光に起因する高効率の発光が得られる
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】ナノチューブのダブルヘテロ構造を説明する図である。
【図2】自発光平面表示装置の実施例1による構成を示す要部展開斜視図である。
【図3】図2の自発光平面表示装置を斜め下方から見た要部展開斜視図である。
【図4】図2の背面パネルの構成例を模式的に示す要部平面図である。
【図5】図4の垂直走査電極VLと水平走査電極HLと交差部分の近傍に形成されるナノチューブを含有したナノチューブ発光素子の構成例を示すサブピクセル構造の拡大平面図である。
【図6】図2の前面パネルの構成例を模式的に示す要部平面図である。
【図7】図2の背面パネルの構成例を模式的に示す平面図であり、図7(a)は全体構成図、図7(b)は図7(a)のA部の拡大平面図である。
【図8】図2の前面パネルの構成例を模式的に示す要部平面図である。
【図9】本発明による自発光平面表示装置の他の実施例を示すナノチューブ発光素子の構成例を示すサブピクセル構造の拡大平面図である。
【図10】図9は、本発明による自発光平面表示装置のさらに他の実施例を示すナノチューブ発光素子の構成例を示すサブピクセル構造の拡大平面図である。
【符号の説明】
【0056】
PNL1・・・背面パネル、PNL2・・・前面パネル、SUB1・・・背面基板、SUB2・・・前面基板、MFL・・・封止枠、SPC・・・間隔保持部材、VL・・・垂直走査電極、VLC・・・櫛型電極、VLB・・・枝電極、VLT・・・垂直走査電極引き出し線、V・・・垂直走査信号源、HL・・・水平走査電極、HLB・・・枝電極、HLC・・・櫛型電極、HLT・・・水平走査電極引き出し線、H・・・水平走査信号源、EMS・・・ナノチューブ発光素子、NT・・・ナノチューブ、AD・・・保護膜、E・・・高電圧源。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に延在し、前記第1の方向と交差する第2の方向に並設された複数の垂直電極ストライプと、前記第2の方向に延在し、前記第1の方向に前記垂直電極ストライプと絶縁層を介在させて並設された複数の水平電極ストライプとを有し、前記垂直電極ストライプと前記水平電極ストライプとの交差部に前記垂直電極ストライプと前記水平電極ストライプとに接続された複数の発光素子からなる画素で表示領域を構成し、
前記画素内部のサブピクセルは、前記垂直電極ストライプと前記水平電極ストライプとの交差部にナノチューブを橋絡させて電気的に接続された橋渡し構造を有して形成されたことを特徴とする自発光平面表示装置。
【請求項2】
前記画素内部のサブピクセルは、前記垂直電極ストライプと前記水平電極ストライプとの交差部でそれぞれ一体的に櫛歯電極を設け、前記両櫛歯電極間に前記ナノチューブを橋絡させたことを特徴とする請求項1に記載の自発光平面表示装置。
【請求項3】
前記画素内部のサブピクセルは、前記垂直電極ストライプと前記水平電極ストライプとの交差部で当該垂直電極ストライプに一体的に櫛歯電極を設け、当該櫛歯電極と前記水平電極ストライプとの間にナノチューブを橋絡させたことを特徴とする請求項1に記載の自発光平面表示装置。
【請求項4】
前記発光素子は、前記垂直電極ストライプと前記水平電極ストライプとの交差部で当該垂直電極ストライプと当該水平電極ストライプとの間にナノチューブを橋絡させたことを特徴とする請求項1に記載の自発光平面表示装置。
【請求項5】
前記画素内部の各ピクセルは、赤色,緑色及び青色またはそれ以上のサブピクセルから構成され、当該赤色サブピクセルは電流注入により赤色に発光するナノチューブを含有し、当該緑色サブピクセルは電流注入により緑色に発光するナノチューブを含有し、当該青色サブピクセルは電流注入により青色に発光するナノチューブを含有し、それ以外のサブピクセルは電流注入により所望の色で発光するナノチューブを含有することを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の自発光平面表示装置。
【請求項6】
前記ナノチューブは、炭素,窒素及び硼素のうちの少なくとも一つの元素を含むシングルウォールナノチューブであることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかに記載の自発光平面表示装置。
【請求項7】
前記ナノチューブは、炭素,窒素及び硼素のうちの少なくとも一つの元素を含むマルチウォールナノチューブであることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れかに記載の自発光平面表示装置。
【請求項8】
前記ナノチューブは、その軸方向にバンドギャップの小さな領域が両端のバンドギャップの大きな領域で挟まれたダブルヘテロ構造を有することを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れかに記載の自発光平面表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−112644(P2008−112644A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−295071(P2006−295071)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【Fターム(参考)】