説明

自発光標識灯

【課題】海洋と陸地の境界に設置されて、視認性を長期に亘り持続することができる自発光式標識灯を提供する。
【解決手段】岸壁、埠頭、突堤等の海洋と陸地の境界の陸地側に自発光式標識灯10を設置すれば、海洋方向と陸地方向に光L1、L2を出射し、この光L1、L2によって境界が明示されるので、陸地上の歩行者や車両運転者等には陸地の縁端を認識させることができ、且つ海洋側の船舶操舵者等には海洋と陸地の境界を認識させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、岸壁、埠頭、突堤等の海洋と陸地の境界に設置されて、陸地上の人や車両の安全を確保し、且つ船舶等の安全な航行を確保する自発光式標識灯に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、船舶等の航行を支援するものとして、船舶等に向けて投光する投光手段と、この投光手段の近傍に設けられた発光手段とを具備し、光を投射する方向が一定の速さで変化するよう構成されてなり、前記投光手段は、全方位に向けて閃光を発するよう構成されてなる信号灯がが開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平10−157699号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の信号灯を岸壁、埠頭、突堤等に設置した場合、該信号灯は全方位に向けて閃光を発する回転機構を備えているため、塩水による腐食や回転軸の摩耗等により回転機構が破損し、一方向にしか発光しなくなる恐れがあった。
【0005】
本発明は上記の如き課題に鑑みてなされたものであり、海洋と陸地の境界に設置されて、視認性を長期に亘り持続することができる自発光式標識灯を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は以下のような構成としている。すなわち、本発明に係わる自発光式標識灯は、岸壁、埠頭、突堤等の海洋と陸地の境界に設置される標識灯であって、ケース本体内に太陽電池によって発光する発光体が内蔵され、前記発光体はその光が海洋方向を指向するものと、陸地方向を指向するものとからなることを特徴とするものである。
【0007】
また前記海洋方向を指向する発光体はその光が、陸地方向を指向する発光体に比べ、広角となされていてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係わる自発光式標識灯によれば、岸壁、埠頭、突堤等の海洋と陸地の境界の陸地側に設置すれば、海洋方向と陸地方向に光を出射し、この光によって境界が明示されるので、陸地上の歩行者や車両運転者等には陸地の縁端を認識させることができ、且つ海洋側の船舶操舵者等には海洋と陸地の境界を認識させることができる。更に、ケース本体内に内蔵された発光体は太陽電池によって発光するため、手間の掛かる配線工事が不要であり、岸壁、埠頭、突堤等の地表面や車両落下防止用タイヤ止め等の上に簡便に設置することができる。
【0009】
また前記海洋方向に指向する発光体の光を広角にすれば、潮位によっては陸地上よりもやや低い位置に位置することになる海洋上の船舶操舵者等からの視認性が、更に向上するため好ましい。
尚、海洋が示す意味としては、海、河川、湖沼、池等、水が存在する場所とするものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に係わる最良の実施の形態について、図面に基づき以下に具体的に説明する。
図1〜図6は、本発明に係わる自発光式標識灯の、実施の一形態を示すもので、まず斜め上方からの斜視図である図1において、1はカバーであって、前後の側面が傾斜面11となされ、傾斜面11には発光体4から発光される光の通路111が穿設され、上面12は平坦となされ、該上面12には、太陽電池3に入射する太陽光の通路121が穿設されている。更にカバー1の左右の側面は傾斜面13となされ、その前後方向の中間部に切欠き131が設けられ、その切欠き131には、自発光式標識灯10を路面に取り付けるボルト孔132が穿設されている。2は透光性を有するケース本体であって、太陽電池3及び発光体4を内蔵し、該発光体4からの光の通路111及び太陽光の通路121以外でカバー1により覆われている。
【0011】
図2は、ケース本体を示す下面からの斜視図である。ケース本体2は、上面板21と、上面板21の周縁の外縁全周に亘り、下方に向かって、傾斜されて設けられた前後の仕切板22と左右の仕切板23により前後方向の外形は台形状、左右方向の外形はコ字状である筺状の形状となされて、中空部24が形成されている。仕切板22及び23の下端は高さが一定となされて外周部25が形成され、中空部24内には、中空部24を仕切るように強度保持用のリブ26が配設されている。
【0012】
図3は、底板を示す上面からの斜視図である。底板5は平坦な板状の下板51の前後方向及び左右方向の外縁に縦板52及び53が設けられて筺状の形状となされ、左右方向の縦板53の上端には、カバー1への取付用のボルト孔54が穿設された取付部55が、それぞれ2ヶ所ずつ設けられている。
【0013】
図4及び図5は、カバー1へのケース本体2及び底板5の取り付けを示す底面側の斜視図である、図4において、カバー1には前後の傾斜面11及び上板12にケース本体2へ、またはケース本体2からの光を透過する光の通路111及び121が設けられ、傾斜面11及び13、上板12により空間15が形成されている。空間15の上縁には、底板を取り付ける切欠き部16が穿設され、切欠き部16の底部にねじ山が螺刻されたねじ孔17が穿設されている。またカバー1の下面14は高さが一定となされ、ボルト孔132を用いて路面に設置したときに安定するようになされている。前記の空間15に、リブ26により仕切られた中空部24内の一部に、太陽電池3、発光体4等からなる機器6が配置されたケース本体2が配置される。
【0014】
更に図5において、ケース本体2の中空部24を覆うように底板5がカバー1に対して取り付けられる。底板5は、図3に示した状態と上下が逆とされて取り付けられる。カバー1の下面に設けられた切欠き部16は、底板5の取付部55が挿入可能な形状となされ、その切欠き部16に取付部55が挿通され、ボルト孔54に挿通されたボルト、ねじ等の締結手段Tが切欠き部16の底部にに穿設されたねじ孔17に螺着されることでカバー1と底板5は固着される。カバー1と底板5とが固着されると共に、ケース本体2はカバー1と底板5とにより保持され、且つ底板5の下板51とケース本体2の外周部25の全周とが接するようになされる。底板5の下板51は、取り付けられた状態においてその下面はカバー1の下面14の高さと同程度となされている。
【0015】
また図5における底板5の下板51とケース本体2の外周部25との間に、図6に示す如く止水材7を挟んで、下板51と外周部25を止水材7を介して接するようにしてもよい。止水材7を設けることで、締結手段Tを締め付けることで止水材7が下板51及び外周部25に押しつけられ、機器6は水や塵埃からより確実に保護される。止水材7は塩水に対しての耐性が高いものであれば特に限定されるものではないが、締結手段Tを締め付けることにより変形及び反発力を生じる弾性体を用いて形成したものであれば、下板51と外周部25との間の微細な隙間を塞ぐことができるため、長期に亘って機器6を保護でき好ましい。
【0016】
止水材7を形成するのに用いられる弾性体としては、塩水に対しての耐性の高い天然ゴムやブタジエンスチレンゴム、ネオプレン、ブタジエンアクリロニトリルゴム、クロロプレン重合体、ブチルゴム、エチレンプロピレンターポリマー、ウレタン樹脂、ポリイソブチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、シリコン樹脂、軟質及び硬質塩化ビニール樹脂、エラストマー等の各種合成ゴムや合成樹脂等からなる弾性材やそれらを発泡させたもの等を用いてよい。また、アクリル樹脂等を基材として両面に接着層が形成された両面テープを用いれば、塩水や塵埃の侵入を更に確実に防止でき好ましい。
【0017】
図7は、締結手段T螺着後の状態の一例を示すもので、イ)は図5におけるA−A断面図、ロ)はB−B断面図である。イ)において、透光性のケース本体2を覆うカバー1は、ケース本体2の上面板21部分に光の通路121が設けられ、ケース本体2内に収納された太陽電池3への太陽光の入射が妨げられないようになされている。ケース本体2の中空部24には、太陽電池3、基板61に取り付けられた発光体4、蓄電手段62等の機器が収納され、ケース本体2の外周部25が底板5の下板51に接するようになされていることで、塩水や塵埃等の侵入が防止されて中空部24に収納された機器は保護される。中空部24に上面板21から下方にリブ26が立設されていることで、車両の乗り上げ等の上方からの衝撃や荷重に対する強度が高められている。またケース本体2の上面板21には凸部211が設けられ、カバー1の光の通路121と嵌着可能とされていることで、ケース本体2の位置決めが容易となり、またケース本体2の動揺を抑えることができる。
【0018】
ロ)において、カバー1には更にケース本体2の左右に設けた傾斜面22部分に、それぞれ光の通路111が設けられ、ケース本体2内の発光体4からの発光が妨げられないようになされている。発光体4は左右に、反対方向に水平に設けられ、発光体4から出射された光L1及びL2は、透光性のケース本体2及び光の通路111を通過して左右方向に出射される。したがって、岸壁、埠頭、突堤等に自発光式標識灯10を設置する際、ケース本体2の傾斜面22を海洋側と陸地側に向けて設置すれば、海洋側及び陸地側に向けて発光することで、海洋と陸地の境界を明確にすることができる。
尚、上記形態においては、海洋側の発光体4と陸地側の発光体4とは同じものが使用され、且つそれらの光の仰角や広角も同じになされているが、海洋側からの視認性と陸地側からの視認性とは必ずしも同じであるとは限らないため、適宜それらを変更するのが好ましい。例えば、海洋側の発光体の光を陸地側のものに比べて広角にしたり、発光色を変えたり、数を変更したり、また必要に応じて仰角を変更できるようにしても良い。更に、海洋側の発光体4の前方に凹型レンズを設け、発光体4から出射された光を拡張させることにより、自発光式標識灯10の視認性を更に向上させてもよい。
【0019】
上述の構造により、ケース本体2はカバー1及び底板5により保持されるが、ケース本体2を保持するに当たり、ケース本体2に直接ビス孔等を穿設して固定する必要がなく、温度変化によるケース本体2の膨張収縮や、車両の乗り上げ等によるビス孔等への応力集中により、ケース本体2に割れや変形が生じるのを防止できる。また、ケース本体2の外周部25と底板5の下板51とが接することにより機器6を保護しているので、機器6のメンテナンスが必要となった場合にもボルト孔132に挿通して自発光式標識灯10を路面に固定するボルトを外し、更にカバー1のねじ孔17に螺着された締結手段Tを外すことで容易に機器6を取り出してメンテナンスが可能である。
【0020】
また、締結手段Tを用いることで、締結手段Tの締付けトルクにより底板5の下板51がケース本体2の外周部25へ接する力を調整することができ、中空部24への水や塵埃の侵入はより確実に防止できる。また、止水効果を更に向上させるため、締結手段Tを螺着後、カバー1の切欠き部16をシーリング剤で充填しても良い。更に、底板5を縦板52及び53により筺状の形状とし、縦板53の上端にボルト孔54が穿設された取付部55が設けられていることで、縦板52及び53の高さを適宜設定してカバー1の底面14より取付ボルト等が突出することなく、且つ中空部24の上下方向の空間を広いものとできる。また、自発光式標識灯10をボルト孔132を用いずに接着剤を用いて地表面等に固定する場合でも、下面が平坦となされて接着を円滑なものとでき、更にはカバー1と底板5との隙間によるアンカー効果も期待できる。
【0021】
カバー1は、金属材料により形成するのが車両の乗り上げや悪戯等による衝撃や荷重に対抗し、カバー1としての効果を高めることができ好ましい。形成においては、金属からなる複数の部品を組み立てる等により行ってもよいが、アルミニウム、亜鉛等を用いた鋳造品、ダイカスト品を用いることで上述の如き複雑な形状のものを一体で容易に形成することができ好ましい。また、岸壁、埠頭、突堤等に設置されることから、防錆面を考慮して、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミド、ポリウレタン、ポリメタクリレート、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ABS等の合成樹脂材料の成形品を用いてもよいが、中でも衝撃や荷重に対して割れや変形が起こりにくいポリカーボネートを好適に用いることができる。
【0022】
ケース本体2は、透光性のものであれば特に限定されるものではなく、ガラス、強化ガラスや、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミド、ポリウレタン、ポリメタクリレート、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ABS等の透明の合成樹脂材料を用いてよいが、車両の乗り上げ等が考え得ることから、透明度が高く、衝撃や荷重に対して割れや変形が起こりにくいポリカーボネートを好適に用いることができる。また成形は、上記材料からなる部材を嵌合や接着等によりケース本体の形状としてもよいが、車両の乗り上げ等による衝撃や荷重により隙間が生じる恐れがあり、合成樹脂材料を用いて射出成形や真空成形等により一体に成形するのが好ましい。
【0023】
発光体4は、発光ダイオード、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、陰極管、エレクトロルミネッセンス、キセノンランプ等が適宜使用されるが、一般には高輝度かつ長期に亘る寿命を有する発光ダイオードが好適に使用される。また、広角タイプの発光ダイオードを用いて、指向角を拡げてもよい。
【0024】
底板5は、カバー1と固着され、ケース本体2を保持するものであるから強度の高い金属材料を用いて形成されても良い。形成は、鋳造、ダイカスト等で形成してもよいが、金属板を適宜形状に切断し、折り曲げにより形成することで、鋳造やダイカストによる成形品の如き凸部の切削や防水のための含浸処理といった後処理が必要でなくなり、またケース本体2との組み合わせにより確実にケース本体2の中空部24への水や塵埃の侵入を防止できる。また、岸壁、埠頭、突堤等に設置されることから、防錆面を考慮して、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミド、ポリウレタン、ポリメタクリレート、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ABS等の合成樹脂材料の成形品を用いてもよいが、中でも衝撃や荷重に対して割れや変形が起こりにくいポリカーボネートを用いることで、長期に亘り自発光式標識灯10の機能を維持することができ好ましい。
【0025】
前述のように、ケース本体2内への止水効果を向上させるために用いるカバー1の切欠き部16を充填するためのシーリング剤は、カバー1、ケース本体2及び底板5がポリカーボネート樹脂材料で形成される場合を想定し、ポリカーボネート樹脂にクラックを生じさせる等の悪影響を及ぼしにくい、アルコール型のシリコーン樹脂系シーリング剤を用いるのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係わる自発光式標識灯の、実施の一形態を示す斜視図である。
【図2】本発明に係わるケース本体の一例を示す斜視図である。
【図3】本発明に係わる底板の一例を示す斜視図である。
【図4】カバーへのケース本体の配設を示す説明図である。
【図5】カバーへの底板の取り付けを示す説明図である。
【図6】止水材のケース本体への取り付けを示す説明図である。
【図7】図5の、A−A及びB−B断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 カバー
111、121 光の通路
2 ケース本体
21 上面板
22 前後の仕切板
23 左右の仕切板
24 中空部
25 外周部
3 太陽電池
4 発光体
5 底板
6 機器
10 自発光式標識灯
L1、L2 光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
岸壁、埠頭、突堤等の海洋と陸地の境界に設置される標識灯であって、ケース本体内に太陽電池によって発光する発光体が内蔵され、前記発光体はその光が海洋方向を指向するものと、陸地方向を指向するものとからなることを特徴とする自発光式標識灯。
【請求項2】
前記海洋方向を指向する発光体はその光が、陸地方向を指向する発光体に比べ、広角となされていることを特徴とする請求項1に記載の自発光式標識灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−19086(P2006−19086A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−194364(P2004−194364)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000002462)積水樹脂株式会社 (781)
【Fターム(参考)】