説明

自立可能な平パウチ

【課題】主に、医療現場等で用いられる平パウチであっても、平パウチを自立させることを可能とし、使用性の高い自立可能な平パウチを提供することを課題とし、さらには、内容物の充填性、操作性、注出性などを向上した、自立可能な平パウチを提供することを課題とする。
【解決手段】上記課題を解決するため、積層フィルムの周囲をシールしてなる平パウチ(20)の底部分を円弧状下膨れ形状(D−E間)にし、平パウチの上部に給水口(10)を設けて、前記平パウチを座屈させた際に、前記円弧状下膨れの部分に略水平面(H)を形成した自立可能な平パウチである。
該平パウチの形状について、給水口(10)近傍から該円弧状下膨れ形状の端部(E−F間)までを、直線状として前記給水口を起立させると良い。
該平パウチの形状について、給水口近傍から該円弧状下膨れ形状の端部(A−B−C−D間)までを、S字形状として、給水口(10)を斜め上向きにさせることが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルムの周囲をシールしてなる平パウチであって、該平パウチの底部分を円弧状下膨れ形状にし、平パウチの上部に給水口を設けたもので、該平パウチを置いた際に、前記円弧状下膨れの部分が略水平面を形成した自立可能な平パウチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、略四角形状を有するパウチの底部分が、略舟底形状からなる自立可能な底部を有するスタンドパウチが知られている。
【0003】
このようなスタンドパウチは、該パウチの底部分のフィルムを折り返した状態で形成することにより、パウチの内容物の充填に伴い、前記折り返したフィルムが開放するとともに、パウチの底部分に舟底形状からなる自立面を形成して、パウチを直立した状態で自立させることが可能である。そして、パウチの上部のフィルムを切除することにより、パウチの上部に開口を形成してパウチの初期開封を行うものである。
【0004】
しかしながら、このようなスタンドパウチは、底部分に、折り返したフィルムを形成する必要があり、スタンドパウチの製造に手間がかかる、高コストを要するといった問題があった。
【0005】
このため、流動食や点滴液等のパウチを取り扱う医療現場等においては、比較的低コストの平パウチを用いることが多い。
しかしながら、このような注出口付き平パウチは、平パウチの開口へと希釈液や飲料水を注入する際に、平パウチを自立させることができず、平パウチを手で持った状態で作業を行う必要があるため、希釈液等の注入作業が困難である。
【0006】
本出願人は、このような従来のスタンドパウチ及び注出口付き平パウチの問題点を十分に検討して、特許文献1を提案した。
即ち、特許文献1の発明は、自立可能な平パウチ60は、該平パウチ60の底部分55に複数のコーナーC5、C6、C7からなるシール部分を形成することにより、前記平パウチ60を置いた際に、前記複数のコーナーからなる底部分55が略水平面Hを形成して、前記平パウチ60を自立させることが可能である。よって、通常の平パウチ60であっても、従来のスタンドパウチ同様に自立させることが可能であり、平パウチ60を自立させた状態で、両手を用いて種々の作業を行うことが可能な、使用性の高い自立可能な平パウチ60を提案した(図4、5参照)。
また、前記平パウチ形状が、略L字形状を有することにより、前記平パウチ60の自立時の形状が略V字形状をなり、L字形状の平パウチ60の各頂点C1、C3、C4等が、左回転してそれぞれ略上方を向き、例えば、平パウチ60に開口51と注出口59とを形成することにより、開口51と注出口59とがそれぞれ上方を向く。これにより、平パウチ60を自立させた状態で、内容物を充填することが可能であり、注出口59が床面Wに触れることなく、常に清潔な状態で注出口59を用いることが可能である(図4、5参照)。
【0007】
また、前記平パウチ60の、前記注出口59との対称位置に、前記平パウチ60を吊下げるための吊下げ孔58を形成することにより、平パウチ60を吊下げた際に、注出口59が下方を向くため、内容物を良好に注出することが可能である。
なお、前記平パウチ60の吊下げ時において、前記平パウチ60の形状が略く字形状をなすため、平パウチ60を吊下げた際に、注出口59が下方を向き内容物を安定して注出可能である(図6参照)。
【特許文献1】特願2007−113464
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、特許文献1で提案した発明が、平パウチ60に開口61と注出口59とを形成したものであり、給水と液供給が共に給水口一箇所で行なう方法には適用できないという問題があり、本発明の課題は、主に、医療現場等で用いられる平パウチであり、しかも給水口が一箇所である平パウチを自立させることを可能とした、使用性および実用性の高い自立可能な平パウチを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の構成は、積層フィルムの周囲をシールしてなる平パウチであって、該平パウチの底部分を円弧状下膨れ形状にし、平パウチの上部に給水口を設けて、前記平パウチを座屈させた際に、前記円弧状下膨れの部分に略水平面を形成したことを特徴とする自立可能な平パウチである。
該平パウチの形状について、該給水口近傍から該円弧状下膨れ形状の端部までを、直線状として前記給水口を起立させると良い。
該平パウチの形状について、該給水口近傍から該円弧状下膨れ形状の端部までを、S字形状として、前記給水口を上向きにさせることが出来る。
又、該平パウチの該円弧状下膨れの部分に吊り下げ用穴を設けると良い。
更に該給水口近傍から該円弧状下膨れ形状の端部までをS字形状の部分とし、該吊り下げ用穴で該平パウチを吊り下げた際に、該S字形状の部分で液溜りを発生させないよう構成する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の請求項1記載の発明は、積層フィルムの周囲をシールしてなる平パウチであって、該平パウチの底部分を円弧状下膨れ形状にし、平パウチの上部に給水口を設けて、前記平パウチを座屈させた際に、前記円弧状下膨れの部分に略水平面を形成したものであり、通常の平パウチであっても、従来のスタンドパウチ同様に自立させることが可能である。よって、平パウチを自立させた状態で、両手を用いて種々の作業を行うことが可能であり、使用性の高い自立可能な平パウチを提供することが可能である。
【0011】
また、請求項2記載の発明は、平パウチの形状について、該給水口近傍から該円弧状下膨れ形状の端部までを、直線状とすると前記給水口を起立させることが出来る。
【0012】
また、請求項3記載の発明は、平パウチ形状について、給水口近傍から円弧状下膨れ形状の端部までを、S字形状とすると、給水口を斜め上向きにさせることが出来、給水口から注射針等を使用して、平パウチに内容物を充填できる。
【0013】
また、請求項4記載の発明は、平パウチの円弧状下膨れの部分に吊り下げ用穴を設けると給水口から内容物を円滑に外部に供給できる。
【0014】
また、請求項5記載の発明は、給水口近傍から円弧状下膨れ形状の端部までをS字形状の部分とし、吊り下げ用穴で平パウチを吊り下げた際に、S字形状の部分で液溜りを発生させないよう構成すると内容物が所定の量を患者等に供給できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明に係る自立可能な平パウチ20の一例としては、図1に示すように、積層フィルムの周囲をシールしてなる平パウチ20であり、シール部は24であり、平パウチの頂部を除いてシールが施されている。平パウチ20の形状は、下膨れ形状であり、平パウチ20の頂部は、ストレート切断線22となっており、該部分にはシール部は設けられていず、ここには給水口10が挿入・固定されている。即ち給水口の周囲は図3で図示されているように、別途ヒートシールされている。又、給水口には、ゴム栓が挿入・固定されている。
26は吊り下げ用穴であり、28は吊り上げ用穴26の補強のための巾広シール部である。Tは、平パウチ20が座屈した場合の想定線である。
【0016】
平パウチ20のシール内部の形状は、A−B−C−D間がS字形状であり、D−E間は弦が上を向いた円弧状であり、E−F間が直線形状である。
先ず、E−F間が直線形状になっており、給水口はこの部分でのシール部に補強されるので、起立された状態になる。
【0017】
D−E間は弦が上を向いた円弧状であるので、平パウチ20が自立した時に、下部のD−E間は弦が上を向いた円弧状の部分が、座屈想定線Tの部分で座屈し、図2の水平面Hのように平パウチ20の下部が、楕円状の面になる。
【0018】
A−B−C−D間のS字形状部分は、平パウチ20が自立した時、Bの部分付近で屈曲し、給水口10が斜め上向きになり、給水口10から注射器等で内容物を注入する時には、注入が容易な方向に給水口10が向けられる。
【0019】
図2は、平パウチ20が自立したときの状態を説明した図面であり、内容物の自重により、座屈想定線Tの部分で座屈し、図2の水平面Hのように平パウチ20の下部が、楕円状の面になっている。また、厚肉シール部28及び吊り上げ用穴26は図示した状態で折れ曲がっている。
【0020】
図3は、フック30により、平パウチ20を吊り上げ用穴26から、吊り下げた状態を説明した図面であり、給水口10に内容物を供給するための針型びん針などを刺して、内容物を平パウチ20から流出させる。針型びん針などは、使用者の体内に予め先端部が挿入された供給チューブの他端に取り付けられている。
【0021】
このような平パウチ20を吊り下げた状態の時、B点がC点より水平レベルで高いと、内容物が、Cの部分に取り残され、所定の内容物の量を使用者に供給できない。従って平パウチの吊り下げ状態時にB点はC点より水平レベルで低くなるように設定する。
図3中14は、オーバーラップシール部であり、前記A点及びF点とオーバーラップさせて、シールからリークしないように構成してある。
【0022】
なお、内容物に薬品等を付加する際に、若しくは内容物を投与し終わった後、飲料水などの液体を投与する際には、平パウチ10の給水口10のゴム栓12より、注射針を使用して、飲料水等の内容物を注入することが可能である。
【0023】
以上の構成により、前記平パウチ10を置いた際に、平パウチ10の底部分5が略水平面Hを形成して、該水平面Hにより平パウチ10を自立させることが可能である。よって、平パウチ10を自立させた状態で、希釈液等の注入作業を、両手を用いて安定かつスムースに行なうことが可能であり、使用性に優れた自立可能な平パウチ10を提供することが可能である。
【0024】
本発明の自立可能な平パウチ10の製造方法としては、基本的には平パウチ形式に応じて、それに対応する製袋機を利用し、それに必要な加工装置を付加することにより容易に製造することができ、既設のヒートシール装置のシールヘッドの形状のみをそれぞれのシールパターンに合わせて変更することにより、複数のコーナー部分Cからなるシール部分を簡単に形成することが可能である。
【0025】
また、本発明の自立可能な平パウチ10に用いるフィルムとしては、主にプラスチックフィルムを主体とする積層フィルムが用いられ、例えば、液体を含む各種食品用平パウチに用いられている従来公知の積層フィルムを用いることもでき、特にフィルムの種類が限定されるものではない。積層フィルムの構成は、充填される内容物の種類や充填後の加圧加熱殺菌時に加えられる加熱条件などによって適宜選定することができる。
【0026】
例えば、本発明の自立可能な平パウチ10に好適に用いられる積層フィルムとして、下記のような構成の積層フィルムが挙げられる。
(1)PETフィルム/接着剤/アルミニウム箔/接着剤/ONフィルム/接着剤/CPPフィルム(シーラント層)
(2)PETフィルム/接着剤/ONフィルム/接着剤/アルミニウム箔/接着剤/CPPフィルム(シーラント層)
(3)PETフィルム/接着剤/EVOHフィルム/接着剤/ONフィルム/接着剤/CPPフィルム(シーラント層)
(4)PETフィルム/接着剤/一軸延伸PPフィルム/接着剤/アルミニウム箔/接着剤/CPPフィルム(シーラント層)
(5)PETフィルム/接着剤/(シリカまたはアルミナ蒸着層)ONフィルム/接着剤/CPPフィルム(シーラント層)
などが挙げられるが、これらに限定されるものではなく様々な組み合わせの積層フィルムを使用することができる。
【0027】
上記構成において、PETフィルムは2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、ONフィルムは2軸延伸ナイロンフィルム、PPフィルムはポリプロピレンフィルム、CPPフィルムは無延伸ポリプロピレンフィルム、EVOHフィルムはエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物フィルム、(シリカまたはアルミナ蒸着層)ONフィルムはシリカまたはアルミナを蒸着した2軸延伸ナイロンフィルムを指すものである。
【0028】
本発明の自立可能な平パウチは、上記例において、医療用の吊下げ平パウチに点滴液を充填した適用した例を示したが、これに限らず、各種医薬品や栄養剤のみならず粉体と液体との混合物、さらには、粉体と液体とを使用時において平パウチ内で混合して用いてもよく、平パウチの使用用途は、特に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の自立可能な平パウチの一例を示す図である。
【図2】本発明の自立可能な平パウチが座屈した状態を示す説明図である。
【図3】本発明の自立可能な平パウチを吊り上げ用穴に吊り下げた状態の説明図である。
【図4】従来の自立可能な平パウチの一例示す説明図である。
【図5】図4の自立可能な平パウチが座屈した状態を示す説明図である。
【図6】図4の自立可能な平パウチを吊り上げ用穴に吊り下げた状態の説明図である。
【符号の説明】
【0030】
10 給水口
12 ゴム栓
20 平パウチ
22 ストレート切断線
24 シール部
26 吊り下げ穴
28 厚肉シール部
30 フック
H 水平面(自立面)
T 座屈想定線
A、B、C、D、E、Fは何れも平パウチ内部のシール端部の各点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層フィルムの周囲をシールしてなる平パウチであって、該平パウチの底部分を円弧状下膨れ形状にし、該平パウチの上部に給水口を設けて、該平パウチを座屈させた際に、前記円弧状下膨れの部分に略水平面を形成したことを特徴とする自立可能な平パウチ
【請求項2】
前記平パウチの形状について、前記給水口近傍から前記円弧状下膨れ形状の端部までを、直線状として前記給水口を起立させたことを特徴とする請求項1記載の自立可能な平パウチ
【請求項3】
前記平パウチの形状について、前記給水口近傍から前記円弧状下膨れ形状の端部までを、S字形状として、前記給水口を斜め上向きにさせたことを特徴とする請求項1記載の自立可能な平パウチ
【請求項4】
前記平パウチの前記円弧状下膨れの部分に吊り下げ用穴を設けた請求項1記載の自立可能な平パウチ
【請求項5】
前記給水口近傍から前記円弧状下膨れ形状の端部までをS字形状の部分とし、前記吊り下げ用穴で前記平パウチを吊り下げた際に、前記S字形状の部分で液溜りを発生させないように構成した請求項4記載の自立可能な平パウチ

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−262936(P2009−262936A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−111100(P2008−111100)
【出願日】平成20年4月22日(2008.4.22)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】