説明

自走式ケーブル装置

【課題】曲げ剛性が比較的小さく細長のケーブルの自走において、方向転換機能および障害乗り越え機能を向上させる。
【解決手段】ケーブル1の少なくとも先端領域6に所定の曲げ形状6aを設け、振動により加振されて所定方向の推進力を得る推進装置をケーブル1の外部に配設する。そして電動モータ3とてこクランク機構4とにより構成される加振装置により、ケーブル1を加振し、推進装置11の推進力でケーブル1を推進させる。またケーブル1を軸方向に回動して、曲げ形状の向きを変え、ケーブル1先端の進行方向を転換する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自立的に推進するケーブル装置に関し、特に、該ケーブルの推進方向を容易に転換させるケーブル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラント検査、レスキュー活動、敷設工事、清掃作業などの人間が到達困難な箇所への接近、あるいは、医療行為として体腔管路内に細長の内視鏡を挿入するような場合など、湾曲した狭路へ柔軟なケーブルを挿入してその先端に取り付けた機能装置を目的位置にまで到達させる必要がある。しかし柔軟なケーブルが屈曲したり、障害物に引っ掛かったりすると、ケーブル基端に作用する力が先端まで十分に伝わらないために、深部まで進入することが困難となる。
【0003】
これに対し、ケーブルに推進機能を持たせてケーブル先端を目的位置にまで容易に進入させる工夫をなした発明例がある。
例えば、第1の従来例として提示した特許文献1では、細長の挿入部に螺旋構造を設け、該挿入部を所定の軸方向に沿って進退可能に保持する保持部を挿入部の軸周りに回転駆動して、挿入部を安定させた状態で体腔内に確実に推進させる医療器具挿入装置がある。
【0004】
また、第2の従来例として提示した非特許文献1は、本発明者らの創案によるものであるが、工業用スコープカメラを先端に取り付けたケーブルのカメラ挿入部外周面に、その軸芯と傾斜を設けて植毛したナイロン製の繊毛群を巻き付け、該挿入部に離散的に配置した振動モータを駆動して、挿入部のケーブル全体を振動させる。これにより、ケーブル先端の繊毛群が地面と接触した時の摩擦と繊毛群のたわみおよび伸びの方向性に基づいて、ケーブルを微小距離だけ移動させ、その運動を繰り返すことにより、ケーブル先端を軸方向前進方向に推進駆動させる。
【特許文献1】特開2006−305320号公報(オリンパス株式会社)
【非特許文献1】昆陽雅司、 畑崎計成、伊崎和也、田所諭、“繊毛振動によって駆動する能動スコープカメラの開発”、第12回ロボティクスシンポジア予稿集、pp.460-465、 2007
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記第1の従来例および第2の従来例では、パイプ状管路や狭路、体腔管路などでは、ケーブルの先端部さえ管路に進入すれば、ケーブルの進路は管路の形状に沿って定まるものである。しかしながら、挿入空間が、ケーブルの外径に対して十分に広い場合などは繊毛群の接触面積が少なくなり、ケーブル先端の進路方向を転換させることは困難である。また、ケーブル先端の進路に段差や進路方向に対して横方向に傾斜する面がある場合には、ケーブルが細長くかつ曲げ剛性が小さいために、段差や斜面などを乗り越えることが困難で、ケーブル先端の座屈、転倒、すべりなどが発生し、目的位置への到達は困難であった。
【0006】
本発明は上述の問題点を改善すべくなされたもので、曲げ剛性が小さく細長のケーブルに対し、簡易な構成によって、ケーブルの方向転換機能および障害物の乗り越え機能を容易になした自走式ケーブル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、少なくとも先端領域に所定の曲げ形状を備えかつ曲げ弾性を有する剛線材を含んで構成されたケーブルに対し、振動を付与することにより、ケーブルの外部に設けられた所定方向の推進力を得る推進装置を作動して、ケーブルを推進する構成とした。
上記の構成によれば、ケーブルを軸方向に押し引きするなどの運動を加えることにより、ケーブルを軸方向に進退させると共に、ケーブルに振動を付与すると、ケーブルの外部に設けられた推進装置が作動して、ケーブルを軸方向に沿って推進させる。この場合、ケーブルの少なくとも先端領域に所定の曲げ形状を設けたため、ケーブル先端の推進力が前記ケーブルの曲げ形状に沿って作用し、進行する。
【0008】
進行方向を変える際は、ケーブルを軸周りに回動させる。すると、その先端が曲げ形状に応じて進行方向を用意に変換される。
ケーブル先端が障害物に当接して動きが停滞するような時でも、曲げ弾性によりケーブル先端が容易に湾曲しまたは弾性復帰する。
これらの作動を繰り返し行うことにより、推進装置との接触面が少ない広領域の外部物体を進行する場合でも、ケーブル先端の方向転換を容易にし、所定の目的位置にケーブル先端を進行させて、その先端に取り付けたスコープカメラなどの機能装置を円滑に機能させる。
【0009】
前記曲げ形状は、予め所望の形状に湾曲整形しておくことが可能である。また複数のケーブル部材を線形に連接して前記のケーブルを構成し、その連接された少なくとも1つの節の連接角度を可変に構成することによっても同様な効果を達成することが出来る。
ケーブルの上記の曲げ形状は、初期の曲げ方向を、ケーブルの推進方向が直線となる位置(以下、中立位置と称する。)において接触面に垂直方向等の重力方向に向けておくことが効果的である。このようにすることで、自重とケーブルの弾性によって曲げ形状が平坦に延伸され、接触面との接触面積が増加される。そのためケーブルは曲げ形状の影響を大きく受けることなく直進することが可能になる。
【0010】
ケーブルへの加振は、保持部およびその周辺のケーブル基端部領域などに集中して行っても良いし、あるいは軸方向に分布的に振動させても良い。
ケーブル基端部領域などに集中して加振を行う場合は、ケーブル全域に亘って加振装置を設ける必要がないから、ケーブルおよび推進装置の直径をより細く形成することを可能とし、従来よりも狭い経路に侵入が可能となる。これは、加振装置部分が狭い経路に引っ掛かったり、経路の段差、斜面などに引っ掛かったり、ケーブルが絡まったりすることを防止することにも大きく寄与する。又、ケーブルに対して繰り返し行う加振および先端の進行方向転換は、ケーブルの先端部分に疲労を与え易いが、この先端領域に加振装置を配設しなくとも済むため、その配線関係も不要で、ケーブル先端構造の荷重負担が軽減され、耐久性および耐水性にも優れたものとなる。
【0011】
他方、ケーブルに対し分布的に振動を付与する場合は、ケーブルの振動の減衰を補償できるから、ケーブル全体の振動に基づく大きな前進力が得られる。
ケーブルの加振方向は、ケーブルが捻り剛性の大きな線材であるから、曲げ方向よりも軸周り(捩り)方向の方が、ケーブル基端部から距離がある部分であっても、振動減衰が小さいので有利である。その場合、捩り振動の角速度または角加速度の大きさを振動の往復で異ならせる偏加速度運動または偏角速度運動を行わせると、推進装置と搬送面との接触摩擦と滑りの大きさを異ならせることが出来る。振動の往路と復路で、一方の角速度または角加速度を大きくして接触面での滑りを大きくする一方、遅い角速度または角加速度では滑りを生じにくいようにするので、特にケーブル先端領域の進行方向を、軸直角方向に転換し易くなる。
【0012】
なおこの場合は、必ずしも、上記のようにケーブル先端部の曲げ形状を同時に構成しなくとも、この捩り偏角速度または偏角加速度の捻り振動単独で、ケーブルの進行方向の転換を効果的に行うことが出来る。
また、前記加振装置は、ケーブルが曲げ形状を持つかどうかに係わらす、前記推進力の大小および方向の少なくとも一方を分布的に制御するように構成することが出来る。ケーブルの推進速度との関係から、推進力の大小および方向によっては、推進力および方向に対してプラスに作用し、あるいはマイナスに作用する。従ってこれらの総合は、実際のケーブルの推進力及び推進方向に大きな影響を与える。前記推進力の大小および方向の少なくとも一方を分布的に制御するように構成することで、所望の推進力もしくは方向の少なくとも一方を得ることが可能とする。
【0013】
ケーブルの曲げ剛性は、これを予め定めておく以外に、ケーブルの曲げ方向の剛性を局所的に異ならせる機構を設けることが出来る。これにより、自走するケーブルが障害物に乗り上がる場合や、斜面を横切る場合に、ケーブルを所望の方向に容易に曲がり易いように剛性を選択制御出来、乗り上げや方向転換を容易かつ確実に行うことができる。
前記推進装置は、前記ケーブルの外部に設けられ、外部物体との接触に基づいて前進方向と後退方向に滑りやすさの異方性を持つ弾性摩擦材を含んで構成することが出来る。これにより、線材群の接地面に対する摩擦力、摩擦力の作用方向を総合的に組み合わせ、推進装置の適当な推進方向および推進力を得ることができる。弾性摩擦材の好適な一例としては、前記ケーブルの軸方向に所定角度で傾斜し、内端が前記ケーブルの外部に固定して設けられ、外端が外部物体に接触する構成の、弾性を有する金属または合成樹脂の線材群または面材群を挙げることが出来る。
【0014】
弾性摩擦材は、異なった大きさまたは異なった方向性の摩擦力を持ち、前記ケーブルの加振に応じて異なる推進特性を持つ複数の部分を含んで構成することが出来る。摩擦力の大きさまたは方向性により、ケーブルに特定の推進力および推進方を与えるが、異なった大きさまたは異なった方向性の摩擦力を持ち、前記ケーブルの加振に応じて異なる推進特性を持つ複数の部分を配設すれば、これら摩擦力および方向が分布的に分布的な差異が生じ、総合的にケーブルの所望の方向転換を効率的に行うことが出来る。この場合の「部分」とは、全体の弾性摩擦材が単一材で複数の部分領域に分布して構成されても良いし、複数の弾性摩擦材部分の集合で全体の弾性摩擦材を構成しても良い。
【0015】
この場合、ケーブルの推進方向と曲げ方向の少なくとも一方の摩擦の大きさを変える機構を含んで構成しても良い。これにより、意識的に局所的な摩擦力および方向の少なくとも一方を可変にすることが出来、状況に見合った推進力の大きさおよび推進方向を得ることが出来る。
加振制御要素としては、ケーブルを、軸方向の押し引き、軸方向に交差する方向の横揺らしおよび縦揺らし、軸周りのロール、ピッチ、ヨウのうち少なくとも1つの振動運動を選択することが出来る。
【0016】
本発明では、前記加振装置をケーブル分布的に配置し、推進力の大きさおよび方向のいずれか一方を分布的に制御する機構を備えても良い。これによって、ケーブルの推進力に分布的な差が生じ、推進力の小さい部分は後方の推進力の大きい部分から押されることによって、ケーブルが屈曲し、推進方向、およびケーブルの形状が変化する。また、推進力の方向を分布的に変えることによっても、同様の効果が得られる。かかる構成を、既述した方向転換を可能とする装置と組み合わせることで、方向転換性能、および、障害物乗り越え性能をさらに向上させることができる。
【0017】
なお、ケーブルは、金属または合成樹脂製の線材もしくはパイプ材を使用すれば良い。
【発明の効果】
【0018】
以上述べたように、本発明のケーブル駆動装置によれば、ケーブルに対し、十分に広い空間においても、所望の推進力および推進方向を得ることが可能となる。これによって、環境に応じて容易に進行方向を転換することが可能であるから、ケーブルが段差や斜面などを乗り越える際に、重力方向に対して自重を支えきれずに転倒する危険性がある場合でも、確実に障害物を乗り越え、目的物に向けて深部に挿入させることができる。また、所望の推進力および推進方向を任意に変更する構成を採用した場合は、環境に対してより柔軟に推進力および推進方向を所望の局所でまたは全体的に得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して本発明を詳述する。
図1は、災害時のレスキュー用スコープカメラに本発明を適用した本発明の第1の実施形態にかかる自走ケーブル装置を示す。図に示す自走ケーブル装置10は、ケーブル1の基端部2に対し、電動モータ3からてこクランク機構4を介して集中的に軸周り方向(捩り方向)の振動が与えられる。ここで電動モータ3とてこクランク機構4は加振装置を構成する。
【0020】
ケーブル1は、その先端にスコープカメラ5が取り付けられており、少なくとも先端領域6は、Rの角度領域において予め所定の局率半径rで湾曲された曲げ形状6aが形成されている。局率半径rは、ケーブル1の推進方向が直線となる中立位置で、ケーブル1が接地面7上で転倒しない程度のなだらかな値としている。なお、曲げ形状は正円である必要はない。
【0021】
ケーブル1の基端部2は、回転軸受け8において軸周り(捻り方向)に回動自由に保持されていて、必要に応じ、ケーブルクランプ9を緩めて軸方向にケーブル1を押し引きすることが可能である。
ケーブル1は所定の曲げ弾性を有していて、容易には屈曲しない程度の剛性を備え、金属製または合成樹脂性の単線、あるいは複数の線材の撚線、これらに外被を被せたものなどを含み、中実、中空(パイプ材)を問わない。本実施形態では、金属製または合成樹脂性のパイプ材であって、内部空間はスコープカメラ5などの配線用に用いている。
ケーブル1の外部には、ケーブル1の振動に応じて振動することにより、ケーブル1に軸方向など所定方向の推進力を付与する推進装置11が設けられる。具体的には、図2(a)に模型的に示すように、ケーブル1の外周面に、ケーブル1の軸心に対して所望の角度で傾斜する金属、合成樹脂、天然繊維製などの弾性を有する多数の線材群12(図2(b)の実例写真を参照)を、その内端でケーブル1と同時成形、植毛或いは固着などして弾性摩擦材を形成する。弾性摩擦材の外端は、接地面7に対しその下端で弾性力をもって摩擦接触する。弾性摩擦体に傾斜を持たせることによって、ケーブル軸に直交する向きの振動、または、ケーブル軸周りの振動に対して、摩擦力の異方性が生じ、特定の方向に推進力を発生する。
【0022】
電動モータ3は、ケーブル1の基端部2に集中的に振動を付与する加振装置として機能し、ケーブル1を軸周り方向(捻り方向またはロール方向)に回動させるもので、加振時には、ロール運動の振幅、周波数、方向、位相差、波形のうち少なくとも1つの要素を制御する。
上記の構成による作用を次に述べる。電動モータ3を起動して、てこクランク機構4を介し、ケーブル1に数Hz〜数100Hzの捻り(ロール)振動を付与すると、線材群12が振動して、線材群12の先端では、接地面7との摩擦と滑りのため、たわみと急激な回復が生じる。そして、たわみ時に蓄えたひずみエネルギーを使い、たわみの回復時にケーブルを軸方向(図でy方向)に沿って推進させる。
【0023】
この場合、ケーブルが捻り剛性の大きな線材であるから、曲げ方向よりも軸周り(捩り)方向の方が、ケーブル基端部から距離がある部分であっても、振動減衰が小さいので有利である。
特に、捩り振動の角速度または角加速度の大きさを振動の往復で異ならせる偏角速度運動または偏加速度運動を行わせると、推進装置11と接地面7との接触摩擦と滑りの大きさを、振動の往復で異ならせることが出来る。振動の往路と復路で、一方の角速度または角加速度を大きくして接触面での滑りを大きくする一方、遅い角速度または角加速度では滑りを生じにくいようになるので、特にケーブル先端領域の進行方向を、軸直角方向に転換し易くなる。なおこの捻り振動の偏角速度または偏角加速度の制御の場合は、必ずしも、上記のようにケーブル先端部の曲げ形状を同時に構成しなくとも、この捩り偏角速度または偏角加速度の捻り振動単独で、ケーブルの進行方向の転換を容易とする。
【0024】
本実施形態では、ケーブルの少なくとも先端領域6に所定の曲げ形状6aを設けた。このため、加振装置により加振されたケーブル1は、分布的な振動を受けて、xy平面上の接地面7をケーブル1の軸心方向、即ちy軸上に推進しようとするが、ケーブル1の基端部2を軸周り(図で白矢印)に回動させれば、図4に示すようにケーブル1の先端の曲げ形状6aが所望の方向に向くことが出来、方向転換を容易に行うことが可能である。
【0025】
初期の曲げ形状は、曲げを大きくするほど、転回角度は大きくなる。しかし、曲げを大きくした場合、前記中立位置において、重力方向に向けても曲げが残留するため、安定して直進できないことになることから、ケーブル材料の剛性、質量、および必要な転回角度によって、曲げ形状を最適に設計することが好ましい。
上記の曲げ形状については、操作性の観点から、例えば、図4で中立位置Nを0度として、操作者が進路を−90度から+90度までの回転量で選択する場合、ケーブルを90度、あるいは−90度回転させたときに最も転回角度が大きくなるようにする等、の設計をすることが好ましい。また、回転量に対して、線形的に転回角度が変化する、あるいは、不感帯を設ける等の非線形的な転回角度の変化などでも、操作性を向上させることができる。
【0026】
上記の曲げ形状については、障害物を乗り越える際の乗り上げ易さを、ケーブル先端部の曲げ角度によって設計可能である。また、ケーブルが障害物に乗り上げたのち、例えば、ケーブル1に軸周りの回転を加えて、曲げ方向を重力方向に向ける動作を行うことで、障害物を容易に乗り越えることが可能である。
これに加えて、ケーブル軸方向に押し引きするなどの運動を行えば、ケーブル先端の進行深さを変えることが可能となる。
【0027】
ケーブル1の先端は、その中立位置の初期の曲げ形状が、図5の2点鎖線で示すように、地面等の重力方向に向けることが出来る。実施に際しては、自重とケーブルの弾性によって実線示のように曲げが伸ばされ、ケーブル1は曲げ形状の影響を受けずに直進することが可能である。
このようにして、ケーブル先端が障害物に当接して動きが停滞するような時でも、ケーブル1の先端の曲げ形状の回動および曲げ弾性によるケーブル1の先端の湾曲および弾性復帰の繰り返しにより、推進装置との接触面が少ない広領域の外部物体を進行する場合でも、ケーブル先端の方向転換を容易にし、所定の目的位置にケーブル先端を進行させて、その先端に取り付けたスコープカメラなどの機能装置を円滑に機能させる。
【0028】
加振装置は、本実施形態の場合、ケーブル1の基端部領域に集中して加振を行うから、ケーブル全域に亘って加振装置を設ける必要がない。このためケーブル1および推進装置11の直径をより細く形成することを可能とし、従来よりも狭い経路に侵入が可能となる。これは、加振装置部分が狭い経路に引っ掛かったり、経路の段差、斜面などに引っ掛かったり、ケーブルが絡まったりすることを防止することにも大きく寄与する。又、ケーブルに対して繰り返し行う加振および先端の進行方向転換は、ケーブルの先端部分に疲労を与え易いが、この先端領域に加振装置を配設しないため、その配線関係も不要で、ケーブル先端構造の荷重負担が軽減され、耐久性および耐水性にも優れたものとなる。
【0029】
ケーブルへの加振は、本実施形態のようにケーブルの一部領域などに集中して行っても良いし、あるいは軸方向に分布的に振動させても良い。ケーブルに対し分布的に振動を付与する場合は、ケーブルの振動の減衰を補償できるから、ケーブル全体の振動に基づく大きな前進力が得られる。
前記推進装置11は、図2に示されたような金属製で弾性を有する線材群12を含む異方性を持った弾性摩擦材の他に、図3(a)に示す傘状の面材群14、図3(b)に示す鱗状の面材群15を軸方向に多数配設した異方性ある弾性摩擦材、または、弾性摩擦材に溝、スリット、突起などを設け、あるいは車輪などを含んで構成しても良い。上記鱗状の弾性摩擦材の場合は、一方向への移動は接触面との係りが多くなり、摩擦力が大となる。金属製弾性線材群12を含む弾性摩擦材の具体的製造方法としては、図6(a)に見られるように、予め線材群12が植毛又は同時成形により形成された基帯13をケーブル1の外周面に巻回固着するなどで形成出来る。
【0030】
弾性摩擦材は、異なった大きさまたは異なった方向性(異方性)の摩擦力を持ち、前記ケーブルの加振に応じて異なる推進特性を持つ複数の部分を含んで構成することが出来る。摩擦力の大きさまたは方向性により、ケーブルに特定の推進力および推進方向を与えるが、異なった大きさまたは異なった方向性の摩擦力を持ち、前記ケーブルの加振に応じて異なる推進特性を持つ複数の部分を配設すれば、これら摩擦力および方向が分布的に分布的な差異が生じ、総合的にケーブルの所望の方向転換を効率的に行うことが出来る。この場合の「部分」とは、全体の弾性摩擦材が単一材で複数の部分領域に分布して構成されても良いし、複数の弾性摩擦材部分の集合で全体の弾性摩擦材を構成しても良い。
【0031】
この場合、ケーブルの推進方向と曲げ方向の少なくとも一方の摩擦の大きさを変える機構を含んで構成しても良い。これにより、意識的に局所的な摩擦力および方向の少なくとも一方を可変にすることが出来、状況に見合った推進力の大きさおよび推進方向を得ることが出来る。
前記推進装置は、前記ケーブルの外部に設けられ、外部物体との接触に基づいて前進方向と後退方向に滑りやすさの異方性を持つ弾性摩擦材を含んで構成することが出来る。これにより、推進方向の総合的なバランスにおいて、推進装置に適当な推進方向および推進力を得ることができる。
【0032】
上記実施形態においては、ケーブル1に予め所定の曲げ形状を与え、あるいは剛性を付与しておく構成としたが、線材群12を設けた複数のケーブル部材1a、1bをコネクタ18により線形的に連接し、この節に設けたコネクタ18の連接角度を変えることにより、ケーブル1の曲げ形状あるいは剛性を必要に応じ能動的に設計することが出来る。
なお、図6(a)、(b)に示すように、複数のケーブル部材1a、1bを振動アクチュエータ21により線形的に連接し、このそれぞれの振動アクチュエータ21に所望の振動を付与することにより、上記のケーブル1の振動の大きさおよび方向、ケーブル1の特定方向の剛性、異なった摩擦係数・方向を持つ弾性摩擦材の選択的な振動などの少なくとも1つを選択でき、ケーブル1の接地面7および進路に併せてケーブル1を進行させることが出来る。
【0033】
ケーブル基端部2への運動の与え方については、上記のように、図7(a)で示すケーブルを軸周りに回転させる例の他に、図7(b)に示すようなケーブルの軸方向への押し引き、図7(c)に示すような半径方向への横揺らしと縦揺らし、あるいは、ピッチ運動、ヨー運動、および、上記運動の組み合わせによっても、進路を容易に選択し、あるいは、障害物との絡まりを解除する等の動作が可能である。
【0034】
次に、本発明の第2の実施形態を図8に示す。ここで先の実施形態におけるケーブル1と推進装置11とを含んで構成されたケーブル装置を、以下、自走式ケーブルと称する。本実施形態は、自走式ケーブル31をケーブル軸方向に分布的に(離間して)配設し、自走式ケーブルに分布的に振動を与える例を示す。
接地面7上でy軸方向に推進する自走式ケーブル31に対し、自走式ケーブル31のロール方向に周期的な編速度の揺動運動を加えることによって、ケーブル軸方向に直交するxy平面内の向きに推進力を付与し、自走式ケーブル31の推進方向を転換する。
【0035】
前記の周期的な偏速度の揺動運動は、電動モータ3の回転速度を半周期毎に速度の大きさを変化させることによって、自走式ケーブル31に矢印で示すy軸周りに回転させ、異なる偏速度の揺動運動を生成する。
自走式ケーブル31の外部に取り付けた推進装置11の弾性摩擦材は、前記図2(a)と同様の構成である。弾性摩擦材はケーブル軸周りに放射状に配置されることで、軸周りの角速度、または角加速度の変化によって、ケーブル軸方向と直交する特定の向きに推進力Fを発生する。
【0036】
加振装置としては、図9に示すように、自走式ケーブル31に配置した複数の振動アクチュエータ(偏芯モータ)33と配線35によって、複数に分布させた振動アクチュエータをケーブルの軸周りに沿って回転させることで、ケーブルの軸方向と直行する方向に遠心力を発生させ、自走式ケーブル31に軸周りの分布的な振動を付与する。
自走式ケーブル31に軸方向に推進するために加えられる振動は、揺動振動を速度一定で周期的に与えることでケーブル全体に振動させることで付与される。なお、自走式ケーブル31に軸方向を推進させるための振動を生成する加振装置は図9の複数の振動アクチュエータ33を用いることも可能である。
【0037】
本実施形態で用いられる偏速度運動(または偏加速度運動)を付与する振動装置は、ケーブル1の基端部2に集中的に配設される以外にも、ケーブルに分布的に配設することで、振動の減衰の防止や運動自由度の拡張を行うことができる。
本発明の第3の実施形態は、災害時のレスキュー用スコープカメラや内視鏡等に実装されているケーブル先端の局所的な首振り機構に加えて、自走式ケーブルの推進力の分布を適宜制御することによって、本来実装されていた局所的な首振り機構による曲げ角以上の方向転換を可能にする例である。
【0038】
図10は、既存のスコープカメラに自走機能を加えた自走式ケーブルを用いて、接地面7上でy軸方向に推進する自走式ケーブル41に対し、予めスコープカメラに備えられた首振り機構43を用いて生成したx軸方向への局所的な曲げ形状と、接地面7で生成する分布的な推進力の大きさを適宜制御することによって、推進方向が首振り機構43のみで変化する変化量よりも急角度で方向転換する状態を示す。
【0039】
分布的な推進力44を有する自走式ケーブル41において、先端の首振り機構43の後方位置45の推進力を局所的に停止することによって、推進方向と逆方向の摩擦力を発生させ、その逆方向の摩擦力が後方から推進してくるケーブルの進行を制動し、これによって生じるケーブルの大域的な曲げ形状を利用して、ケーブル先端の進行方向を急角度で転換する。
【0040】
なお、本実施形態ではスコープカメラの首振り機構を利用したが、首振り機構が存在しない場合でも、環境との接触によって生じるケーブルの受動的な曲げ形状を利用して、分布的な推進力を制御することによって、受動的な曲げ形状の曲がり具合を能動的に拡大したり、進行方向の転換に利用したりすることが可能である。
第4の実施形態として、自走式ケーブルが障害物に乗り上げたり、乗り越える際に有効となる、剛性を局所的に変化させる機構の実施形態を図11に示す。図に示す剛性可変機構は剛線材51にワイヤ式テンショナ52(52a〜52cd)を上下左右4カ所に配置したものである。剛線材51を挟んで対向する2本1対のワイヤ式テンショナに張力を付与することで、この対抗する方向のケーブルの曲げ剛性を大きくする効果がある。また、1本のテンショナに張力を加えることで、見かけ上、張力を加えた方向にケーブルの剛性を小さくすることができる。具体的には、テンショナ51aとテンショナ51cに張力を加えることで左右方向の剛性を大きくし、テンショナ51bとテンショナ51dに張力を加えることで上下方向の剛性を大きくする。また、テンショナ51aとテンショナ51bのように隣接する2本のテンショナに張力を加えることで斜め方向の剛性を大きくすることができる。また、テンショナ51aのみに張力を加えた場合は、右方向に剛性が小さくなる。
【0041】
図12(a)〜図12(c)は図11の剛性可変機構を用いた効率的な段差乗り越えの手順を示したものである。図12(a)において、自走式ケーブル61が段差67にぶつかったとき、自走式ケーブル61の進行方向に向かって上部の剛性Eを小さくすることで、上方に自走式ケーブルが曲がりやすくなり、段差に自走式ケーブルが乗り上げやすくなる。
次に、図12(b)のように、自走式ケーブル61が段差67に乗り上げている最中には、自走式ケーブル61の左右の曲げ方向の剛性を大きくすることで、自走式ケーブル61が重力によって左右に転倒しないようにする。
【0042】
また、図12(c)のように、自走式ケーブル61が段差67を乗り越えた後には、自走式ケーブル61の下部の剛性を小さくすることによって、自走式ケーブル61が重力によって、段差67の上面に折れ曲がり、安定した形状で段差を乗り越えることができる。
第5の実施形態を、図13に示す。剛線材71に前後方向に滑りやすさの異方性をもつ摩擦材74a、74bを配置し、それぞれの摩擦材付近に振動を加える振動アクチュエータ(偏芯モータ)73を配置した状態を示す。このとき、いずれか一方または双方の振動アクチュエータ73を動作させることにより、その近傍の摩擦材が発生する推進力の方向の違いを利用して、自走式ケーブル71の推進方向を制御することが可能である。双方の振動アクチュエータ73を動作させる場合は、振動モードを異ならせると良い。滑り易さの異方性の実施方法としては例えば、74a、74bのように、弾性体線群の傾斜方向を前後に変える方法がある。
【0043】
第5の実施形態の他の形態として、図14に、自走式ケーブル81の曲げ方向に滑りやすさの異方性のもつ摩擦材84を用いる場合を示す。この例では、摩擦材として弾性体線群をケーブルの曲げ方向に傾斜させている。滑りやすさの異方性をもつ摩擦材が発生する推進力を効果的に分離するためには、摩擦材が有する機械インピーダンスに差を持たせて、共振帯域の違いを利用するなど、振動アクチュエータ83の振動周波数、位相、波形、振幅などを分布的に制御することが有効である。
【0044】
第6の実施形態を図15(a)および図15(b)に示す。図15(a)は弾性体線群94を剛線材91下部に配置した自走式ケーブルの断面図であり、剛線材91の側面の一部に前記弾性体線群94よりも摩擦力が大きくなる摩擦材95を具備した形態を示す。図15bは図15aの平面図である。この自走式ケーブルを軸周りに90°回転させることで、摩擦力が大きくなる摩擦材95を接地面と接触させると、推進方向の逆方向に大きな摩擦力が発生する。この摩擦力を利用することでケーブルの方向転換を効率的に行うことができる。
【0045】
第7の実施形態を図16に示す。図16は第2の実施形態に対し、自走式ケーブル101の基端部にピッチ運動を行う回転機構102を設けたものである。これにより、ケーブルの軸周りのロール運動とピッチ運動を同時に制御することができる。自走式ケーブルの基端部にピッチ運動を加えることによって、自走式ケーブルケーブル101と接地面7の間の接触圧が変化し、摩擦力が変化にともなって推進力が変化する。また、この回転機構102によって自走式ケーブル101の軸方向の押し引き運動を与えることが可能である。このピッチ運動を効果的に使うことによって、自走式ケーブル101のスタックの回避や、効果的な方向転換を行うことができる。
【0046】
第7の実施形態においては、ケーブルの軸周りのロール、ピッチ運動に加えて、ヨウ運動装置、前後左右の直動運動装置の組み合わせによっても効率的な推進を実現できる。
自走式ケーブルとして、工業用スコープカメラの挿入ケーブル(直径6mm、全長3m)の外部にナイロン製の弾性体線群(直径0.13mm、密度6.2本/mm2程度)を配置し、偏芯モータ(遠心力約0.95N、回転数約9000rpm)を300mm間隔でケーブルに配置してある。この自走式ケーブルには図17aに示すような初期曲げ形状を付与してある。この曲げ形状を有する自走式ケーブルをビニル製の床面の上で2500mm接触させた状態で方向転換をさせたところ、側壁がない広い経路においても180°の方向転換が可能であった。このとき最小回転半径は図17のように約1mであった。
【0047】
図18は第3の実施形態を実装した結果の一例を示す。自走式ケーブルは前記と同様の装置を用い、工業用スコープカメラの首振り機構を用いて自走式ケーブル先端部約60mmを、約80°曲げた状態で固定する。この状態で、自走式ケーブルを推進させたときの様子を2秒ごとに重ねて表示したものが図18(a)である。一方、ケーブル先端から約80cmの位置にある偏芯モータを停止させ、推進力の分布を制御した場合の結果が図18(b)である。両者を比較すると、推進力の分布を制御した図18bの方が急角度で上方向に進路が変わっていく様子が確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】第1の実施形態における自走ケーブル装置の構成を示す概略説明図。
【図2】第1の実施形態における推進装置を示し、(a)は概略側面図、(b)は弾性摩擦材を示す断側面写真。
【図3】それぞれ(a)、(b)、(c)は、推進装置の他の形態の概略正面図。
【図4】第1の実施形態におけるケーブルの作動を示す説明図。
【図5】第1の実施形態におけるケーブルの曲げ形状の作用を示す説明図。
【図6】第1の実施形態における線材群の製造方法の一例を示す説明図で、(a)は線材群を施した基帯をケーブルに巻回した図、(b)は複数のケーブル部材を線形的に接続した振動アクチュエータの正面図
【図7】加振装置の加振運動の与え方を示す模式図で、(a)、(b)、(c)はそれぞれに異なる加振モードの模式説明図。
【図8】第2の実施形態を示すにおける自走ケーブル装置の構成を示す概略説明図。
【図9】振動アクチュエータを自走式ケーブルの軸方向に分布的に配設した説明図。
【図10】第3の実施形態を示す自走式ケーブルの作動状況説明図。
【図11】剛性を局所的に変化させる機構の実施形態を示す斜視説明図。
【図12】剛性可変機構を用いてそれぞれ効率的な段差乗り越えの手順を示す斜視説明図。
【図13】前後方向に滑りやすさの異方性をもつ摩擦材と、振動アクチュエータとを複数配置した状態を示す説明図。
【図14】ケーブルの曲げ方向に滑りやすさの異方性のもつ摩擦材の実施例を示す説明図。
【図15】複数の弾性摩擦材を配置した自走式ケーブルを示し、(a)は断面説明図、(b)は側面説明図。
【図16】ピッチ運動を行う実施態様の説明図。
【図17】図1に示す実施態様の実施例を示す平面図で、(a)は断面説明図、(b)は側面説明図。
【図18】図10に示す実施態様の実験結果を示すグラフ。
【符号の説明】
【0049】
1…ケーブル
2…基端部
3…電動モータ
4…てこクランク機構
5…スコープカメラ
6…先端領域
7、67…接地面
8…回転軸受け
9…ケーブルクランプ
10…自走ケーブル装置
11…推進装置
12…線材群
13…基帯
21、33,73,83…振動アクチュエータ
31、41,61、101…自走式ケーブル
43…首振り機構
51、71、81,91…剛線材
52、52a〜52d…ワイヤ式テンショナ
74a、74b、83,84,95…摩擦材
94…弾性体線群

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも先端領域に所定の曲げ形状を備え、曲げ弾性を有する剛線材を含んで構成されたケーブルと、
前記ケーブルに振動を付与する加振装置と、
前記ケーブルの外部に設けられ、前記ケーブルの加振に応じて前記ケーブルに所定方向の推進力を付与する推進装置と、
を含んで構成されたことを特徴とする自走式ケーブル装置。
【請求項2】
前記加振装置は、ケーブルに対し集中的にまたは分布的に振動を付与することを特徴とする請求項1に記載の自走ケーブル装置。
【請求項3】
前記曲げ形状は、前記ケーブルの少なくとも先端領域が予め湾曲して形成されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の自走式ケーブル装置。
【請求項4】
前記曲げ形状は、複数のケーブル部材を線形に連接して前記のケーブルを構成し、その連接された少なくとも1つの節の連接角度を可変に構成したことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載の自走式ケーブル装置。
【請求項5】
前記曲げ形状は、前記ケーブルの推進方向が直線となる中立位置において、重力方向に湾曲する形状であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載の自走式ケーブル装置。
【請求項6】
前記加振装置は、前記ケーブルに周期的な偏速度運動または偏加速度運動を加えることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1つに記載の自走式ケーブル装置。
【請求項7】
曲げ弾性を有する剛線材を含んで構成されたケーブルと、
前記ケーブルに分布的に振動を付与する加振装置と、
前記ケーブルの外部に設けられ、前記ケーブルの加振に応じて前記ケーブルに所定方向の推進力を付与する推進装置と、
を含んで構成され、
前記加振装置は、前記推進力の大小および方向の少なくとも一方を分布的に制御することを特徴とする自走式ケーブル装置。
【請求項8】
曲げ弾性を有する剛線材を含んで構成されたケーブルと、
前記ケーブルに振動を付与する加振装置と、
前記ケーブルの外部に設けられ、前記ケーブルの加振に応じて前記ケーブルに所定方向の推進力を付与する推進装置と、
を含んで構成され、
前記加振装置は、前記ケーブルに周期的な偏速度運動または偏加速度運動を加えることを特徴とする自走式ケーブル装置。
【請求項9】
前記ケーブルの曲げ剛性を局所的に変化させる機構を設けたことを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1つに記載の自走式ケーブル装置。
【請求項10】
曲げ弾性を有する剛線材を含んで構成されたケーブルと、
前記ケーブルに振動を付与する加振装置と、
前記ケーブルの外部に設けられ、前記ケーブルの加振に応じて前記ケーブルに所定方向の推進力を付与する推進装置と、
前記ケーブルの曲げ剛性を局所的に変化させる機構と、
を含んで構成されたことを特徴とする自走式ケーブル装置。
【請求項11】
前記推進装置は、前記ケーブルの外部に設けられ、外部物体との接触に基づいて前進方向と後退方向、または曲げ方向に滑り易さの異方性を持つ弾性摩擦材を含んで構成されたことを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか1つに記載の自走式ケーブル装置。
【請求項12】
前記弾性摩擦材は、前記ケーブルの軸方向に所定角度で傾斜し、内端が前記ケーブルの外部に固定して設けられ、外端が外部物体に接触する構成の、弾性を有する線材群または面材群であることを特徴とする請求項11に記載の自走式ケーブル装置。
【請求項13】
前記弾性摩擦材が異なった大きさまたは異なった方向性の摩擦力を持ち、前記ケーブルの加振に応じて異なる推進特性を持つ複数の部分を含んで構成されたことを特徴とする請求項11または請求項12に記載の自走式ケーブル装置。
【請求項14】
前記弾性摩擦材の、ケーブルの推進方向と曲げ方向の少なくとも一方の摩擦の大きさを変える機構を含んで構成されたことを特徴とする請求項11ないし請求項13のいずれか1つに記載の自走式ケーブル装置。
【請求項15】
前記加振装置は、前記ケーブルを、軸方向の押し引き、軸方向に交差する方向の横揺らしおよび縦揺らし、軸周りのロール、ピッチ、ヨウのうち少なくとも1つの振動運動を行うことを特徴とする請求項1ないし請求項14のいずれか1つに記載の自走式ケーブル装置。
【請求項16】
前記ケーブルは、金属又は合成樹脂製の線材もしくはパイプ材であることを特徴とする請求項1ないし請求項16のいずれか1つに記載の自走式ケーブル装置。
【請求項17】
前記加振装置は、前記推進力の大小および方向の少なくとも一方を分布的に制御する機構を含んで構成されたことを特徴とする請求項1ないし請求項16のいずれか1つに記載の自走式ケーブル装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図2】
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【図6】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−66167(P2009−66167A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−237332(P2007−237332)
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度、独立行政法人防災科学技術研究所、「大都市大震災軽減化特別プロジェクト レスキューロボット等次世代防災基盤技術の開発」委託研究、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【出願人】(503132280)特定非営利活動法人 国際レスキューシステム研究機構 (6)
【Fターム(参考)】