自走式画像形成装置
【課題】 自走式画像形成装置において、振動や慣性力などの影響による画像形成不良を低減することのできる自走式画像形成装置を提供すること。
【解決手段】 画像形成手段2と自走手段3を有し、自走可能な自走式画像形成装置1において、画像形成装置1の移動状態を検知する移動状態検知手段(タコメータ35)と、該移動状態検知手段の計測値に基づいて、画像形成手段2を制御する複数の画像形成モードの中から最適な画像形成モードを選択する画像形成モード制御手段5を設ける。
【解決手段】 画像形成手段2と自走手段3を有し、自走可能な自走式画像形成装置1において、画像形成装置1の移動状態を検知する移動状態検知手段(タコメータ35)と、該移動状態検知手段の計測値に基づいて、画像形成手段2を制御する複数の画像形成モードの中から最適な画像形成モードを選択する画像形成モード制御手段5を設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、それらの複合機等の電子写真方式、又はインクジェット方式等の自走式画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ユーザが指定する任意の場所まで移動して、その場所でプリント作業等を行ってユーザの作業効率を高めることができる自走式画像形成装置が知られている(例えば、特許文献1、2)。このような自走式画像形成装置は、ユーザが画像形成装置のある場所まで移動しなくても、ユーザに印刷物等を届けてくれたり、原稿を持っていかなくてもよかったりするなどの点で便利である。また、自走式のロボットに画像形成装置を搭載した場合、一般のオフィスでの利用による利便性向上だけでは止まらず、例えば、駅前等での人が集まる場所で必要な広告物を必要な量だけ印刷して配布する等の様々な有用な使用方法が考えられる。
近年、ロボット技術の躍進はめざましく、今後オフィス、生産現場等への画像形成装置を搭載したロボットの登場が期待されている。
【0003】
しかし、移動手段を備えたロボットに画像形成装置を搭載したような自走式画像形成装置では、移動の際に生じる振動や、慣性力などの影響によって形成する画像に乱れが生じてしまうという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、前記問題を解決するべく、自走式画像形成装置において、振動や慣性力などの影響による画像形成不良を低減することのできる自走式画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、画像形成手段と自走手段を有し、自走可能な自走式画像形成装置において、前記画像形成装置の移動状態を検知する移動状態検知手段と、該移動状態検知手段の計測値に基づいて、前記画像形成手段を制御する複数の画像形成モードの中から最適な画像形成モードを選択する画像形成モード制御手段が設けられていることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、複数の画像形成モードは、所定の画像形成速度で画像を形成するモードと、画像形成を停止するモードを有することを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項2において、移動状態検知手段の計測値が所定値以下となった場合には、画像形成を停止するモードから所定の画像形成速度で画像を形成するモードへ復帰することを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3において、複数の画像形成モードは、更に、所定の画像形成速度より低速で画像を形成するモードを有することを特徴とする。
【0009】
請求項5に記載の発明は、請求項3又は4において、画像形成手段は、画像形成を停止するモードに入る前の作像プロセスの状態を記憶する記憶手段を有し、画像を形成するモードに復帰する際に、前記記憶手段に記憶された情報を基に画像を形成することを特徴とする。
【0010】
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれかにおいて、移動状態検知手段は、タコメータであることを特徴とする。
【0011】
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれかにおいて、移動状態検知手段は、加速度センサであることを特徴とする。
【0012】
請求項8に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれかにおいて、移動状態検知手段は、光学センサであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
この発明は、前記のようであって、請求項1の発明によれば、画像形成手段と自走手段を有し、自走可能な自走式画像形成装置において、前記画像形成装置の移動状態を検知する移動状態検知手段と、該移動状態検知手段の計測値に基づいて、前記画像形成手段を制御する複数の画像形成モードの中から最適な画像形成モードを選択する画像形成モード制御手段が設けられているので、振動や慣性力などの影響による画像形成不良を低減することができる。
【0014】
請求項2の発明によれば、請求項1において、複数の画像形成モードは、所定の画像形成速度で画像を形成するモードと、画像形成を停止するモードを有するので、移動時の画像形成モードと停止時の画像形成モードを分けることができるため、移動時の画像形成不良を解消することができる。
【0015】
請求項3の発明によれば、請求項2において、移動状態検知手段の計測値が所定値以下となった場合には、画像形成を停止するモードから所定の画像形成速度で画像を形成するモードへ復帰するので、移動が終了すれば自動的に画像形成を再スタートすることができるため、ユーザが指定する任意の場所まで移動して、その場所でプリント作業等を行うなどユーザの利便性を向上することができるだけでなく、移動の際に生じる振動や、慣性力などの影響によって形成する画像に乱れが生じてしまうという問題を解消することができる。
【0016】
請求項4の発明によれば、請求項2又は3において、複数の画像形成モードは、更に、所定の画像形成速度より低速で画像を形成するモードを有するので、移動の際の画像形成ストップの時間的ロスを最小限とすることができ、よりユーザの利便性を向上させることができる。
【0017】
請求項5の発明によれば、請求項3又は4において、画像形成手段は、画像形成を停止するモードに入る前の作像プロセスの状態を記憶する記憶手段を有し、画像を形成するモードに復帰する際に、前記記憶手段に記憶された情報を基に画像を形成するので、更に画像形成ストップの時間的ロスを軽減することができる。
【0018】
請求項6の発明によれば、請求項1ないし5のいずれかにおいて、移動状態検知手段は、タコメータであるので、安価に前記効果を奏することができ、耐久性にも優れている。
【0019】
請求項7の発明によれば、請求項1ないし5のいずれかにおいて、移動状態検知手段は、加速度センサであるので、移動時の振動だけでなく、地震時などの外力による振動や慣性力による画像形成不良にも対応することができる。
【0020】
請求項8の発明によれば、請求項1ないし5のいずれかにおいて、移動状態検知手段は、光学センサであるので、安価に構成できると共に、傾斜等による画像形成不良にも対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例1に係る自走式画像形成装置を示す斜視図である。
【図2】実施例1に係る自走式画像形成装置の概略構成を正面透視状態で示す構成説明図である。
【図3】実施例1に係る自走式画像形成装置の主に画像形成モード制御手段、移動状態検知手段等を示すブロック図である。
【図4】同上の自走式画像形成装置のパターン1の画像形成モード選択の手順を示すフローチャートである。
【図5】同上のパターン2の画像形成モード選択の手順を示すフローチャートである。
【図6】実施例1に係る消耗品供給装置を示す斜視図である。
【図7】実施例1に係る自走式画像形成装置と消耗品供給装置の接続状態を示す斜視図である。
【図8】同上の右側面から見た構成説明図である。
【図9】実施例1に係る自走式画像形成装置を右後方から見た斜視図である。
【図10】実施例2に係る自走式画像形成装置の主に画像形成モード制御手段、移動状態検知手段等を示すブロック図である。
【図11】同上のパターン1の画像形成モード選択の手順を示すフローチャートである。
【図12】同上のパターン2の画像形成モード選択の手順を示すフローチャートである。
【図13】実施例3に係る自走式画像形成装置の主に画像形成モード制御手段、移動状態検知手段等を示すブロック図である。
【図14】同上の光学センサの構成を示す構成説明図である。
【図15】同上のパターン1の画像形成モード選択の手順を示すフローチャートである。
【図16】同上のパターン2の画像形成モード選択の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、この発明の実施の形態について説明する。
【実施例1】
【0023】
(自走式画像形成装置の全体構成)
先ず、実施例1に係る自走式画像形成装置の全体構成について図1及び図2を用いて説明する。符号1は、本発明に係る自走式画像形成装置の一実施例として示す装置であり、この自走式画像形成装置1は、上部の画像形成手段2と下部の自走手段3とから主に構成され、画像形成手段2には、後述の無線装置29が取り付けられており、ユーザの指令をパソコンやPDAなどの他の情報機器から無線装置29を介して受信し、その指令に基づいて画像形成を行うと共に、その指令で指定された位置まで自走してユーザに出力した画像(印刷物)を配送する機能を有したロボット型の画像形成装置である。
【0024】
画像形成手段2は、複写機、プリンタ、ファクシミリの機能が搭載された複合型の電子写真方式のモノクロ用画像形成装置であり、図2に示すように、筐体である装置本体20と、この装置本体20の最上部に配置され、原稿画像を読取るスキャナ機能を有する画像読取部21と、この画像読取部21の直下に配置され、後述の感光体ドラム上に静電潜像を書き込む光学ユニット22と、この光学ユニット22の直下に配置され、画像を形成する画像形成部23と、この画像形成部23の直下に配置され、画像形成部で形成されたトナー像をコピー用紙に転写する転写部24と、この転写部24の用紙搬送方向下流側となる装置本体20の一側寄りに配置され、トナー像をコピー用紙に定着する定着部25と、この定着部25の下部に配置され、動力源としての蓄電池を有する内部電源26と、装置本体20の最下部に配置され、シート材であるコピー用紙を複数枚収容して一枚ずつ給紙する給紙部27と、装置本体20の一側面の外側に配置され、画像が定着された用紙を積層載置して収容する排紙部28などから構成されている。
【0025】
画像読取部21は、原稿を載置する載置台である透明なコンタクトガラス(図示せず)を通して光学的に画像を読み取るスキャナ21aと、コンタクトガラスを被って開閉自在に設けられ、コンタクトガラス上に原稿を自動搬送する自動原稿搬送装置21b(ADF:オートドキュメントフィーダ)などから主に構成されている。このスキャナ21aは、移動する露光ランプなどの光源、及びこの光源と共に移動するミラーなどの移動光学系を有し、光源から原稿に光を照射し、反射光をミラー、結像レンズなどを介してCCDなどの画像読み取り素子に結像させて画像を読み取る画像読取装置である。そして、画像読取部21は、ユーザがコンタクトガラス上にセットするか、又は自動原稿搬送装置21bからコンタクトガラス上に送致される原稿の画像をスキャナ21aで自動的に読み取り、読み取った画像情報を電気信号に変換して図示しない制御手段へ送信する機能を有している。
【0026】
光学ユニット22は、LD(レーザダイオード)等の光源と、走査用の回転多面鏡であるポリゴンミラー、それらを走査するポリゴンモータ、fθレンズ、ミラー等の走査光学系などから主に構成され、光源から後述の感光体ドラムの表面にレーザ光を照射して選択的に露光させ、静電潜像を書き込む露光装置(書き込み装置)である。
【0027】
画像形成部23は、主に作像ユニット230から構成され、作像ユニット230を作動させて作像プロセスを実行し、画像を作像する機能を有している。この作像ユニット230は、ドラム形状の潜像担持体である回転駆動可能な感光体ドラム23aを備え、この感光体ドラム23aを中心に、その外周に沿って、感光体ドラム23aの外周表面を所定の電圧に一様に帯電して初期化する帯電装置23b、感光体ドラム23aの外周表面上に光学ユニット22により形成された静電潜像にトナーを転移させてトナー像に現像する現像装置23c、クリーニングブレードを有し、後述の転写部24で転写され残った感光体ドラム23aの外周表面上の残留トナーをクリーニングするクリーニング装置23dが配設されている。
【0028】
転写部24は、転写搬送ベルト24aを有し、この転写搬送ベルト24aで後述の給紙部27から搬送されてくるコピー用紙を搬送すると共に、転写搬送ベルト24aが感光体ドラム23aと接触する転写ニップにおいて転写搬送ベルト24aを介してコピー用紙にトナー像と逆極性の転写バイアスを印加して静電引力によりコピー用紙にトナー像を転写する機能を有している。
【0029】
定着部25は、内部にハロゲンヒータなどの発熱手段が設けられた定着ローラ25aと、この定着ローラ25aに付勢手段で付勢されて圧接し、定着ニップを形成する加圧ローラ25bと、から主に構成され、この定着ニップで未定着のトナー像を担持した用紙に、熱と圧力を加えて定着する定着装置である。また、この定着部25は、樹脂などの断熱性を有する材質からなるハウジング25cで装置本体20内の他の部位と区画され、熱が他の部分に伝播して悪影響を及ぼすのを低減するように構成されている。
【0030】
内部電源26は、蓄電池としてリチウムイオン二次電池を有し、後述の消耗品供給装置100(図6参照)の給電部130から充電されて繰り返し蓄電可能となっており、装置本体20内の各装置及び後述の移動手段に電力を供給する機能を有する蓄電装置である。
なお、蓄電池としてリチウムイオン電池等の二次電池の他に、電気二重層キャパシタ等の大容量キャパシタなども用いることができる。しかし、大容量キャパシタは、リチウムイオン電池等の二次電池と比較して、蓄電容量が小さく、内部電源26の充電を頻繁に行う必要がある。但し、大容量キャパシタは、蓄電容量は小さいが、充放電による劣化が少なく急速充放電特性に優れているため、短時間で充電作業(給電動作)を終えることができるとともに、蓄電池がメンテナンスフリーとなるメリットがある。
【0031】
給紙部27は、シート材である所定の大きさの複数枚のコピー用紙Pの束を収容する給紙カセット270と、この給紙カセット270に収容されたコピー用紙を1枚ずつ搬送路Rに分離・給送する分離装置27aと、を備え、コピー用紙を転写ニップへ続く搬送路Rに供給する機能を有している。また、搬送路Rには、所定間隔毎に設けられた複数の搬送ローラ対R1や、転写ニップへ用紙を搬送するタイミングを調整するレジストローラ対R2なども設けられている。
【0032】
排紙部28は、定着部25を通過して画像が定着されたコピー用紙を装置本体20から排紙ローラ対(図示せず)で排紙してコピー用紙を積載・載置して収容する排紙トレイ28aから主に構成され、画像形成・定着後の用紙を載置してストックしておく部位(スペース)である。
【0033】
無線装置29は、本実施例では、無線LAN規格の802.11gに対応するインターフェイスカード(NIC)を備え、本規格の無線通信によりユーザの各情報機器や後述の消耗品供給装置100などと双方向通信可能となっている。勿論、他の規格、例えば、IEEE802.11a/IEEE802.11b/IEEE802.11nなどのいわゆる汎用の無線LAN規格で通信可能であればよく、その場合は、データの送受信を担うIEEE802.11a/IEEE802.11b規格のネットワークボード等を備え、これらを制御する通信制御プログラムを用い、無線LANを構築すればよい。また、他の無線規格としてBluetooth(R)規格を採用することもできる。なお、インターフェイスカードを拡張カードとして備えるのではなく、最初から標準装備して無線通信可能としてもよいことは云うまでもない。
【0034】
このように自走式画像形成装置1は、無線装置29により汎用無線LANを介してパソコン等の情報機器からプリント指令を受けて画像を形成したり、原稿を複写したりすることができる。したがって、ユーザが画像形成装置の設置場所まで移動しなくても、印刷物を獲得することができて、オフィスでの業務が効率化される。
【0035】
(画像形成動作)
次に、実施例1に係る自走式画像形成装置1の画像形成動作(作像プロセス)について図2を用いて説明する。
先ず、画像形成部23では、帯電装置23bにより感光体ドラム23aの外周表面が一様に帯電されて初期化される。そして、画像読取部21で読み取った画像情報やパソコンなど他の装置から制御手段(図示せず)に送られてきた画像情報を基に、一様に帯電された感光体ドラム23aの外周表面が、光学ユニット22により選択的に露光されて帯電電位のレベルが低下することで静電潜像が形成される。次に、現像装置23cにより現像バイアスが印加されることでトナーを静電潜像に転移させ、静電潜像がトナー像に現像される。
【0036】
一方、給紙部27では、制御手段(図示せず)により給紙カセット270から分離装置27aによりコピー用紙が一枚ずつ分離されて搬送路Rに送り出される。そして、搬送路Rに送り出されたコピー用紙は、搬送ローラ対R1により搬送されてレジストローラ対R2まで到達して一旦停止する。そして、感光体ドラム23a上のトナー像が担持されている部分の到達時間に合わせて、レジストローラ対R2の駆動が開始され、転写のタイミングが調整されてコピー用紙が転写ニップへ給紙される。
【0037】
転写部24の転写ニップでは、転写搬送ベルト24aを介してコピー用紙にトナー像と逆極性の転写バイアスが印加され、感光体ドラム23aの外周面上のトナー像が静電引力によりコピー用紙に転写される。次に、定着部25では、定着ニップにおいて、この未定着のトナー像を担持するコピー用紙に熱と圧力が加えられ、溶融したトナーが用紙に浸透圧着されて定着する。画像が定着されたコピー用紙は、排紙ローラ対により排紙トレイ28aに排紙されてスタックされる。また、転写後も感光体ドラム23a上に残留・付着する転写残トナーは、クリーニング装置23dのクリーニングブレードで掻き取ってクリーングされ、次の画像形成に備えられる。
【0038】
(自走手段)
次に、自走手段について図1及び図3を用いて説明する。
自走手段3は、自走手段の筐体30と、移動手段31と、この移動手段31を駆動する駆動機構32と、この駆動機構32を制御する駆動機構制御部33と、から主に構成されており、筐体30の上方に前記画像形成手段2を搭載して、無線装置29を介してユーザから指示された指定場所まで自走する機能を有している。
【0039】
本実施例では、図1に示すように、移動手段31が、前輪31a,後輪31bを有する2対の4輪駆動の走行用車輪31a,31bとなっており、これらの走行用車輪31a,31bを駆動する駆動機構32は、走行用車輪31a,31bを回転駆動する駆動モータ32aと、走行用車輪31a,31b(又は前輪31aのみ)のステアリング動作(操舵)を行うステアリング機構32bなどから構成されている。なお、移動手段は、4輪駆動のものに限られず、2輪駆動や車輪が3輪のものでもよく、勿論、もっと多くの多輪式のものやキャタピラ式のものであっても構わない。
【0040】
また、本実施例に係る自走手段3には、図3に示すように、自走手段3自体の移動状態を検知する移動状態検知手段としてタコメータ35が装着されており、このタコメータ35により駆動機構32の駆動モータ32aの時間当たりの回転数が計測され、電子情報として後述の画像形成手段2の画像形成モード制御手段5に送信される。そして、その画像形成モード制御手段5で自走手段の移動状態を判定して、複数の画像形成モードの中から最適な画像形成モードを選択し、選択された画像形成モードが、画像形成部23の作像ユニット230(図2も参照)により実行される。
なお、移動状態検知手段として、単純に電力源から駆動モータ32aへの通電量や通電時間を検知する構成とし、画像形成モード制御手段5へ送信するようにしても構わない。
【0041】
(画像形成モード制御手段)
次に、画像形成モード制御手段ついて図3を用いて説明する。
自走式画像形成装置1には、前記構成に加え、タコメータ35に接続され、このタコメータ35から送信される測定値を基に後述の複数の画像形成モードの中から最適なモードを選択する画像形成モード制御手段5と、この画像形成モード制御手段5と双方向通信可能な記憶手段であるメモリ6と、が更に備えられている。この画像形成モード制御手段5は、図示しないCPUやROMなどを有し、ROM内に記憶されているプログラムに従ってタコメータ35の測定値から画像形成モードを判定・選択する機能を有する制御手段であり、メモリ6は、RAMなどの高速アクセスが可能な半導体記憶装置であり、画像形成モード制御手段5の指令により、作像ユニット230で作像する画像情報などの作像プロセスの状態を記憶する機能を有している。
【0042】
(画像形成モード選択のフローチャート パターン1)
次に、この画像形成モード制御手段による画像形成モード選択のフローチャートを図4に示して説明する。本フローチャートでは、画像形成モードは、静止モード、駆動モード1、駆動モード2の3つのモードからなり、画像形成モード制御手段5により図4のフローチャートに従って最適な画像形成モードが選択されて作像ユニット230で作像プロセスが実行される。
【0043】
図4に示すように、先ず、ユーザから、例えば、パソコンなどの情報機器からプリント出力指示などの画像形成要求信号が画像形成手段2の無線装置29に受信され(step1)、そして、インターフェイスを介してその信号が電子情報として画像形成モード制御手段5に送信される(step2)。次に、移動状態検知手段であるタコメータ35から送信されてくる計測値が所定値A1以下か否かで分岐し(step3)、計測値が所定値A1以下であれば、画像形成モード制御手段5は、静止モードで画像形成を行うよう指令を出し、作像ユニット230において静止モードで画像形成が実行される(step4)。そして、タコメータ35から送信されてくる計測値が所定値A1を超えている場合は、後述の(step7)へ進む。
【0044】
ここで、静止モードとは、画像形成モード制御手段5が、自走式画像形成装置1(自走手段3)の静止時、又は超低速走行時などの移動の際に生じる振動や慣性力などの影響によって形成する画像に乱れが生じるおそれがほとんどないと判断した場合の画像形成モードであり、通常の速度で作像ユニット230を駆動させて画像を形成するモードのことである。本実施例では、この静止モードでは、PPM(page per minute)=10枚(PPMS)の速度で画像を形成する。
【0045】
図4に示すように、画像形成動作が終了するまで、(step3)〜(step5)のループを繰り返し、画像が完成した場合は、画像形成動作が終了する(step6)。しかし、途中で、例えば、ユーザからの指令で自走手段3の駆動機構32が駆動し始めた場合には、タコメータ35により、駆動モータ32aの駆動状態が検知され、その計測値が所定値A1を超えた場合は、(step3)から(step7)に進むこととなる。
【0046】
次に、(step7)では、タコメータ35から送信されてくる計測値が所定値A2以下か否かで分岐し、計測値が所定値A2以下であれば、画像形成モード制御手段5は、駆動モード1で画像形成を行うよう指令を出し、作像ユニット230において駆動モード1で画像形成が実行される(step8)。そして、タコメータ35から送信されてくる計測値が所定値A2を超えている場合は、画像形成モードは、駆動モード2が選択される(step11)。
【0047】
ここで、駆動モード1とは、自走式画像形成装置1の自走時の移動の際に生じる振動や慣性力などの影響を低減するため、通常の速度より遅い速度で画像を形成する場合の画像形成モードであり、本実施例では、通常速度の半分、即ち、PPM=5枚(PPMK)の速度で画像を形成する。
【0048】
また、駆動モード2とは、自走式画像形成装置1が所定の速度を超えて走行しているため、振動や慣性力などの影響が大きく画像形成を一旦中止すべきであると判断された場合の画像形成モードであり、画像形成モード制御手段5の指令により作像ユニット230での画像形成は即時に停止される。このとき、排紙は行わず、復帰する際に中断した状態から直ぐに再開できるように、画像形成中の画像データなどの出力情報は、メモリ6に保存される。
【0049】
図4のフローチャートに戻って説明すると、(step9)では、画像が完成したか否かで分岐し、画像が完成していなければ、(step3)に戻り、画像形成モード制御手段5により、前記のように、タコメータ35から送信されてくる計測値に応じて、適切な画像形成モード(静止モードor駆動モード1)が選択されて作像ユニット230で画像形成が実行され、画像が完成した場合には、画像形成が終了する(step10)。
【0050】
また、タコメータ35から送信されてくる計測値が所定値A2を超えており、(step11)に進んで、画像形成が一旦停止されている場合でも、(step3)に戻るため、タコメータ35から送信されてくる計測値がA2以下となった場合には、画像形成モード制御手段5により、前述のように、タコメータ35から送信されてくる計測値に応じて、適切な画像形成モード(静止モードor駆動モード1)が選択されて作像ユニット230で画像形成が実行され、(step6)か(step10)のいずれかで画像形成が終了する。
【0051】
なお、前述のA1は、本実施例では、0rpm(revolutions per minute:回転毎分(r/min))であるが、誤検知を考慮して0より大きい正の数である所定値としてもよい。また、A2は、自走時の振動等の影響が大きくなりすぎて画像形成が困難になる場合の閾値を実験等から求めて設定することが望ましい。
【0052】
以上のように、本実施例に係る自走式画像形成装置1によれば、自走手段3を備えてユーザが指定する任意の場所まで移動することができるので、その場所でプリント作業等を行うなどユーザの利便性を向上することができるだけでなく、移動状態検知手段(タコメータ35)により、駆動機構32の駆動状態、即ち、画像形成装置の移動状態を検知し、その移動状態に応じて画像形成モード制御手段5で適切な画像形成モードを選択することができるので、移動の際に生じる振動や、慣性力などの影響によって形成する画像に乱れが生じてしまうという問題を解消又は低減することができる。
また、画像データなどの出力情報をメモリ6に保存するので、静止モードや駆動モード1により、画像形成を再開する際に直ぐに、停止した状態から画像形成を再開して出力することができ、プリント時間の短縮を図ることができる。
【0053】
(画像形成モード選択のフローチャート パターン2)
次に、画像形成モード制御手段による画像形成モード選択までの別例に係るフローチャートを図5を用いて説明する。図5に示すフローチャートが図4のフローチャートと相違する点は、画像形成モードのうち前述の低速で作像ユニット230を駆動する駆動モード1が無く、タコメータ35から送信されてくる計測値がA1を超えた場合には、駆動モード2が選択され、作像ユニット230での画像形成動作を停止する点である(step12)。停止した後は、(step3)に戻り、タコメータ35から送信されてくる計測値がA1以下となった場合には、静止モードで画像形成が実行される。
【0054】
このように、図5に示すフローチャートに従って自走式画像形成装置1が動作する場合、前記実施例と比べて、移動時には、画像形成を行わないので、プリント指令を受けてから画像を出力し終わるまでの時間は余計に掛かることとなる場合もあるが、移動の際に生じる振動や、慣性力などの影響によって形成する画像に乱れが生じてしまうという問題を確実に解消することができる。
【0055】
(消耗品供給装置)
次に、実施例1に係る自走式画像形成装置1の付属装置である消耗品供給装置について、図6〜図9を用いて簡単に説明する。図中の符号100は、自走式画像形成装置1の付属装置であり、自走式画像形成装置1に消耗品を供給する消耗品供給装置である。この消耗品供給装置100は、自走式画像形成装置1に消耗品であるトナーを供給するトナー供給部110と、自走式画像形成装置1に消耗品であるコピー用紙(シート材)を供給する用紙供給部120と、自走式画像形成装置1の蓄電池(蓄電素子)に電力を供給する給電部130と、自走式画像形成装置1のホームポジションとなる停止ステージ140と、から主に構成されている。
【0056】
このトナー供給部110は、上下に開閉するスライドドア111を有し、新品のトナー容器T’を収容している部位であり、図7及び図8に示すように、自走式画像形成装置1が消耗品供給装置100に接続されている時において、このスライドドア111と対向する位置の画像形成手段2の筐体20には、スライドドア20aが設けられており(図9も参照)、これらのスライドドア111、スライドドア20aを開放した状態で画像形成手段2内の使用済みのトナー容器Tをトナー供給部110内に収容されている新品のトナー容器T’に容器ごと交換する機能を有している。
【0057】
用紙供給部120は、上下に開放するスライドドア121を有し、内部に、シート材である所定の大きさのコピー用紙Pを大量に収容しており、前述の給紙カセット270は、その一側面(接続時に消耗品供給装置100側となる面)が筐体20の外部に露出している。そして、用紙供給部120は、自走式画像形成装置1が、消耗品供給装置100に接続されている時に、スライドドア121を開放し、給紙カセット270を内部に引き込んで、収容するコピー用紙Pを消費された分だけ補充する仕組みとなっている。
【0058】
給電部130は、その外装面から突設する接続端子131(図6参照)を有し、この接続端子131を介して、自走式画像形成装置1の内部電源26と接続し、内部電源26の蓄電池を充電する機能を有している。このため、自走式画像形成装置1の筐体20にも、内部電源26と接続する接続端子26aが設けられており、この接続端子26aは、図9に示すように、接続端子131と嵌合する凹部内に設けられているため、ユーザが誤って接続端子26aに触れてしまうおそれが少なくなっている。
【0059】
停止ステージ140には、自走式画像形成装置1の走行用車輪31a,31bを案内する2本のレール141,142が設けられており、これらのレール141,142には、それぞれ、ストッパ143,144が設けられている。そして、レール141,142に沿って自走式画像形成装置1が案内され、ストッパ143,144により停止位置が定められるとともに、消耗品供給装置100への接続(ドッキング)が行われる。なお、ストッパ143,144には感圧センサ(図示せず)が設けられており、この感圧センサによって自走式画像形成装置1がストッパ143,144の位置に達した状態、即ち、自走式画像形成装置1がホームポジションにあることを検知することができるようになっている。
【実施例2】
【0060】
次に、実施例2に係る自走式画像形成装置について図10〜図12を用いて説明する。
図示する実施例2に係る自走式画像形成装置1’が実施例1に係る自走式画像形成装置1と相違する点は、主に、移動状態検知手段がタコメータ35ではなく加速度センサ36となっている点だけであるので、同一構成は同一符号を付して説明を省略する。
【0061】
図10に示すように、自走式画像形成装置1’では、加速度センサ36は、画像形成手段2の装置本体20内に設けられている。加速度センサ36は、加速度を感知するものなので、自走手段3内に設けなくてもよいため、このような配置となっているが、勿論、自走手段3内に設けられていても構わない。つまり、加速度を感知してその測定値を画像形成モード制御手段5に送信可能であればよい。
【0062】
この自走式画像形成装置1’の画像形成モード制御手段5による画像形成モード選択のフローチャートは、図11に示すように、図4で示したパターン1のフローチャートと略同様となっている。つまり、移動状態検知手段が加速度センサ36となっているので、その計測値が所定の加速度a1,a2以下か否かで分岐するようstep3,step7が、step3',step7'となっている点だけ相違する。このとき、加速度センサ36は、自走式画像形成装置1’の傾きの変化や、振動による加速度の変化も計測してしまうので、加速度a1は、実施例1と相違し、0ではなく、微振動等を考慮して所定の正の所定値としておくことが望ましい。
また、当然、図12に示すように、図5で示したパターン2のフローチャートと略同様なフローチャートに従って動作するようにしてもよい。
【0063】
以上のように、実施例2に係る自走式画像形成装置1’によれば、実施例1に係る自走式画像形成装置1と同様な作用効果を奏することができるだけでなく、移動状態検知手段である加速度センサ36で駆動機構32の駆動状態だけでなく、自走式画像形成装置1’に対する地震などの外力に起因する振動による移動や装置の傾斜などの慣性力の変化も検知することができるので、より確実に画像形成時の画像不良を解消することができる。
【実施例3】
【0064】
次に、実施例3に係る自走式画像形成装置について図13〜図16を用いて説明する。
図示する実施例3に係る自走式画像形成装置1”が実施例1に係る自走式画像形成装置1と相違する点は、主に、移動状態検知手段がタコメータ35ではなく光学センサ37となっている点だけであるので、同一構成は同一符号を付して説明を省略する。
【0065】
図14に示すように、光学センサ37は、投光素子37aと、受光素子37bと反射板37cとにより主に構成され、投光素子37aと受光素子37bは、樹脂等からなる部材により内部に空間ができるように素子ケース370として一体化されている。
本実施例に係る光学センサ37では、投光素子37aにはLEDが使用され、受光素子37bには、エリアセンサが用いられている。
【0066】
また、素子ケース370は、自走手段3の筐体30の底部に固着されており(図13も参照)、即ち、投光素子37aと受光素子37bは、自走式画像形成装置1”の自走手段と同期して一緒に移動するが、反射板37cは、慣性力により少し遅れて移動し、且つ、常に水平になるよう構成されている。このため、受光素子37cが受光する光の位置のズレや、その位置の振動により、自走式画像形成装置1”の変位や傾斜、振動等を検出することができるようになっている。
【0067】
この自走式画像形成装置1”の画像形成モード制御手段5は、図15、16に示すように、図4、5で示したパターン1及びパターン2のフローチャートと略同様なフローチャートに従って動作する。
【0068】
以上のように、実施例に係る自走式画像形成装置の画像形成手段としてモノクロ用の複写機を例に挙げて説明したが、必ずしもこのようなものに限られず、例えば、カラー用の複合機などにも本発明を適用することができる。特に、無線手段を介してユーザの情報機器と情報交換するものを示したが、情報を伝達する情報伝達手段として天井や床に配線された有線の専用回線で接続された場合でも、自走式画像形成装置の移動範囲を決められた所定範囲とすれば適用可能である。要するに、画像形成手段と自走手段を有し、自走可能な画像形成装置には適用することができる。
【0069】
そして、実施例の説明における光学読取装置、自動原稿搬送装置、光学ユニット、画像形成部、転写部、定着部、給紙部、排紙部等などは、あくまでも一例を示したものであって、他の公知の装置・手段などの構成を採用することができる。その場合でも、前記課題に対して同様の作用効果を奏することは明らかである。また、自走手段は、4足歩行、2足歩行のロボット型の自走手段を採用することも可能である。この場合は、移動状態検知手段としては、ロボットの駆動機構の駆動源となるアクチュエータなどの駆動状態を検知するようにすればよい。
【0070】
また、画像形成モードとして、3つのモードを例示して説明したが、これらのモードに限られずもっと多くのモードを設定することもできる。更に、駆動モードを固定するのではなく、移動状態検知手段が自走手段の駆動信号を検知し、その駆動信号に従って、画像形成手段の作像プロセスをフィードフォワード制御することで画像形成モードを変化させて画像形成不良を防止するようにしても構わない。画像形成手段の作像プロセスをサーボ系の駆動源で動作させ、2足歩行のロボット型の自走手段を採用し、その位置、姿勢などを制御量としてフィードバック制御を用いて画像形成モードを変化させて画像形成不良を防止することも可能である。
【符号の説明】
【0071】
1,1’,1” 自走式画像形成装置
2 画像形成手段
3 自走手段
35 タコメータ(移動状態検知手段)
36 加速度センサ(移動状態検知手段)
37 光学センサ(移動状態検知手段)
5 画像形成モード制御手段
6 メモリ(記憶手段)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0072】
【特許文献1】特開2003−110779号公報
【特許文献2】特開2001−125646号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、それらの複合機等の電子写真方式、又はインクジェット方式等の自走式画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ユーザが指定する任意の場所まで移動して、その場所でプリント作業等を行ってユーザの作業効率を高めることができる自走式画像形成装置が知られている(例えば、特許文献1、2)。このような自走式画像形成装置は、ユーザが画像形成装置のある場所まで移動しなくても、ユーザに印刷物等を届けてくれたり、原稿を持っていかなくてもよかったりするなどの点で便利である。また、自走式のロボットに画像形成装置を搭載した場合、一般のオフィスでの利用による利便性向上だけでは止まらず、例えば、駅前等での人が集まる場所で必要な広告物を必要な量だけ印刷して配布する等の様々な有用な使用方法が考えられる。
近年、ロボット技術の躍進はめざましく、今後オフィス、生産現場等への画像形成装置を搭載したロボットの登場が期待されている。
【0003】
しかし、移動手段を備えたロボットに画像形成装置を搭載したような自走式画像形成装置では、移動の際に生じる振動や、慣性力などの影響によって形成する画像に乱れが生じてしまうという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、前記問題を解決するべく、自走式画像形成装置において、振動や慣性力などの影響による画像形成不良を低減することのできる自走式画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、画像形成手段と自走手段を有し、自走可能な自走式画像形成装置において、前記画像形成装置の移動状態を検知する移動状態検知手段と、該移動状態検知手段の計測値に基づいて、前記画像形成手段を制御する複数の画像形成モードの中から最適な画像形成モードを選択する画像形成モード制御手段が設けられていることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、複数の画像形成モードは、所定の画像形成速度で画像を形成するモードと、画像形成を停止するモードを有することを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項2において、移動状態検知手段の計測値が所定値以下となった場合には、画像形成を停止するモードから所定の画像形成速度で画像を形成するモードへ復帰することを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3において、複数の画像形成モードは、更に、所定の画像形成速度より低速で画像を形成するモードを有することを特徴とする。
【0009】
請求項5に記載の発明は、請求項3又は4において、画像形成手段は、画像形成を停止するモードに入る前の作像プロセスの状態を記憶する記憶手段を有し、画像を形成するモードに復帰する際に、前記記憶手段に記憶された情報を基に画像を形成することを特徴とする。
【0010】
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれかにおいて、移動状態検知手段は、タコメータであることを特徴とする。
【0011】
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれかにおいて、移動状態検知手段は、加速度センサであることを特徴とする。
【0012】
請求項8に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれかにおいて、移動状態検知手段は、光学センサであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
この発明は、前記のようであって、請求項1の発明によれば、画像形成手段と自走手段を有し、自走可能な自走式画像形成装置において、前記画像形成装置の移動状態を検知する移動状態検知手段と、該移動状態検知手段の計測値に基づいて、前記画像形成手段を制御する複数の画像形成モードの中から最適な画像形成モードを選択する画像形成モード制御手段が設けられているので、振動や慣性力などの影響による画像形成不良を低減することができる。
【0014】
請求項2の発明によれば、請求項1において、複数の画像形成モードは、所定の画像形成速度で画像を形成するモードと、画像形成を停止するモードを有するので、移動時の画像形成モードと停止時の画像形成モードを分けることができるため、移動時の画像形成不良を解消することができる。
【0015】
請求項3の発明によれば、請求項2において、移動状態検知手段の計測値が所定値以下となった場合には、画像形成を停止するモードから所定の画像形成速度で画像を形成するモードへ復帰するので、移動が終了すれば自動的に画像形成を再スタートすることができるため、ユーザが指定する任意の場所まで移動して、その場所でプリント作業等を行うなどユーザの利便性を向上することができるだけでなく、移動の際に生じる振動や、慣性力などの影響によって形成する画像に乱れが生じてしまうという問題を解消することができる。
【0016】
請求項4の発明によれば、請求項2又は3において、複数の画像形成モードは、更に、所定の画像形成速度より低速で画像を形成するモードを有するので、移動の際の画像形成ストップの時間的ロスを最小限とすることができ、よりユーザの利便性を向上させることができる。
【0017】
請求項5の発明によれば、請求項3又は4において、画像形成手段は、画像形成を停止するモードに入る前の作像プロセスの状態を記憶する記憶手段を有し、画像を形成するモードに復帰する際に、前記記憶手段に記憶された情報を基に画像を形成するので、更に画像形成ストップの時間的ロスを軽減することができる。
【0018】
請求項6の発明によれば、請求項1ないし5のいずれかにおいて、移動状態検知手段は、タコメータであるので、安価に前記効果を奏することができ、耐久性にも優れている。
【0019】
請求項7の発明によれば、請求項1ないし5のいずれかにおいて、移動状態検知手段は、加速度センサであるので、移動時の振動だけでなく、地震時などの外力による振動や慣性力による画像形成不良にも対応することができる。
【0020】
請求項8の発明によれば、請求項1ないし5のいずれかにおいて、移動状態検知手段は、光学センサであるので、安価に構成できると共に、傾斜等による画像形成不良にも対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例1に係る自走式画像形成装置を示す斜視図である。
【図2】実施例1に係る自走式画像形成装置の概略構成を正面透視状態で示す構成説明図である。
【図3】実施例1に係る自走式画像形成装置の主に画像形成モード制御手段、移動状態検知手段等を示すブロック図である。
【図4】同上の自走式画像形成装置のパターン1の画像形成モード選択の手順を示すフローチャートである。
【図5】同上のパターン2の画像形成モード選択の手順を示すフローチャートである。
【図6】実施例1に係る消耗品供給装置を示す斜視図である。
【図7】実施例1に係る自走式画像形成装置と消耗品供給装置の接続状態を示す斜視図である。
【図8】同上の右側面から見た構成説明図である。
【図9】実施例1に係る自走式画像形成装置を右後方から見た斜視図である。
【図10】実施例2に係る自走式画像形成装置の主に画像形成モード制御手段、移動状態検知手段等を示すブロック図である。
【図11】同上のパターン1の画像形成モード選択の手順を示すフローチャートである。
【図12】同上のパターン2の画像形成モード選択の手順を示すフローチャートである。
【図13】実施例3に係る自走式画像形成装置の主に画像形成モード制御手段、移動状態検知手段等を示すブロック図である。
【図14】同上の光学センサの構成を示す構成説明図である。
【図15】同上のパターン1の画像形成モード選択の手順を示すフローチャートである。
【図16】同上のパターン2の画像形成モード選択の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、この発明の実施の形態について説明する。
【実施例1】
【0023】
(自走式画像形成装置の全体構成)
先ず、実施例1に係る自走式画像形成装置の全体構成について図1及び図2を用いて説明する。符号1は、本発明に係る自走式画像形成装置の一実施例として示す装置であり、この自走式画像形成装置1は、上部の画像形成手段2と下部の自走手段3とから主に構成され、画像形成手段2には、後述の無線装置29が取り付けられており、ユーザの指令をパソコンやPDAなどの他の情報機器から無線装置29を介して受信し、その指令に基づいて画像形成を行うと共に、その指令で指定された位置まで自走してユーザに出力した画像(印刷物)を配送する機能を有したロボット型の画像形成装置である。
【0024】
画像形成手段2は、複写機、プリンタ、ファクシミリの機能が搭載された複合型の電子写真方式のモノクロ用画像形成装置であり、図2に示すように、筐体である装置本体20と、この装置本体20の最上部に配置され、原稿画像を読取るスキャナ機能を有する画像読取部21と、この画像読取部21の直下に配置され、後述の感光体ドラム上に静電潜像を書き込む光学ユニット22と、この光学ユニット22の直下に配置され、画像を形成する画像形成部23と、この画像形成部23の直下に配置され、画像形成部で形成されたトナー像をコピー用紙に転写する転写部24と、この転写部24の用紙搬送方向下流側となる装置本体20の一側寄りに配置され、トナー像をコピー用紙に定着する定着部25と、この定着部25の下部に配置され、動力源としての蓄電池を有する内部電源26と、装置本体20の最下部に配置され、シート材であるコピー用紙を複数枚収容して一枚ずつ給紙する給紙部27と、装置本体20の一側面の外側に配置され、画像が定着された用紙を積層載置して収容する排紙部28などから構成されている。
【0025】
画像読取部21は、原稿を載置する載置台である透明なコンタクトガラス(図示せず)を通して光学的に画像を読み取るスキャナ21aと、コンタクトガラスを被って開閉自在に設けられ、コンタクトガラス上に原稿を自動搬送する自動原稿搬送装置21b(ADF:オートドキュメントフィーダ)などから主に構成されている。このスキャナ21aは、移動する露光ランプなどの光源、及びこの光源と共に移動するミラーなどの移動光学系を有し、光源から原稿に光を照射し、反射光をミラー、結像レンズなどを介してCCDなどの画像読み取り素子に結像させて画像を読み取る画像読取装置である。そして、画像読取部21は、ユーザがコンタクトガラス上にセットするか、又は自動原稿搬送装置21bからコンタクトガラス上に送致される原稿の画像をスキャナ21aで自動的に読み取り、読み取った画像情報を電気信号に変換して図示しない制御手段へ送信する機能を有している。
【0026】
光学ユニット22は、LD(レーザダイオード)等の光源と、走査用の回転多面鏡であるポリゴンミラー、それらを走査するポリゴンモータ、fθレンズ、ミラー等の走査光学系などから主に構成され、光源から後述の感光体ドラムの表面にレーザ光を照射して選択的に露光させ、静電潜像を書き込む露光装置(書き込み装置)である。
【0027】
画像形成部23は、主に作像ユニット230から構成され、作像ユニット230を作動させて作像プロセスを実行し、画像を作像する機能を有している。この作像ユニット230は、ドラム形状の潜像担持体である回転駆動可能な感光体ドラム23aを備え、この感光体ドラム23aを中心に、その外周に沿って、感光体ドラム23aの外周表面を所定の電圧に一様に帯電して初期化する帯電装置23b、感光体ドラム23aの外周表面上に光学ユニット22により形成された静電潜像にトナーを転移させてトナー像に現像する現像装置23c、クリーニングブレードを有し、後述の転写部24で転写され残った感光体ドラム23aの外周表面上の残留トナーをクリーニングするクリーニング装置23dが配設されている。
【0028】
転写部24は、転写搬送ベルト24aを有し、この転写搬送ベルト24aで後述の給紙部27から搬送されてくるコピー用紙を搬送すると共に、転写搬送ベルト24aが感光体ドラム23aと接触する転写ニップにおいて転写搬送ベルト24aを介してコピー用紙にトナー像と逆極性の転写バイアスを印加して静電引力によりコピー用紙にトナー像を転写する機能を有している。
【0029】
定着部25は、内部にハロゲンヒータなどの発熱手段が設けられた定着ローラ25aと、この定着ローラ25aに付勢手段で付勢されて圧接し、定着ニップを形成する加圧ローラ25bと、から主に構成され、この定着ニップで未定着のトナー像を担持した用紙に、熱と圧力を加えて定着する定着装置である。また、この定着部25は、樹脂などの断熱性を有する材質からなるハウジング25cで装置本体20内の他の部位と区画され、熱が他の部分に伝播して悪影響を及ぼすのを低減するように構成されている。
【0030】
内部電源26は、蓄電池としてリチウムイオン二次電池を有し、後述の消耗品供給装置100(図6参照)の給電部130から充電されて繰り返し蓄電可能となっており、装置本体20内の各装置及び後述の移動手段に電力を供給する機能を有する蓄電装置である。
なお、蓄電池としてリチウムイオン電池等の二次電池の他に、電気二重層キャパシタ等の大容量キャパシタなども用いることができる。しかし、大容量キャパシタは、リチウムイオン電池等の二次電池と比較して、蓄電容量が小さく、内部電源26の充電を頻繁に行う必要がある。但し、大容量キャパシタは、蓄電容量は小さいが、充放電による劣化が少なく急速充放電特性に優れているため、短時間で充電作業(給電動作)を終えることができるとともに、蓄電池がメンテナンスフリーとなるメリットがある。
【0031】
給紙部27は、シート材である所定の大きさの複数枚のコピー用紙Pの束を収容する給紙カセット270と、この給紙カセット270に収容されたコピー用紙を1枚ずつ搬送路Rに分離・給送する分離装置27aと、を備え、コピー用紙を転写ニップへ続く搬送路Rに供給する機能を有している。また、搬送路Rには、所定間隔毎に設けられた複数の搬送ローラ対R1や、転写ニップへ用紙を搬送するタイミングを調整するレジストローラ対R2なども設けられている。
【0032】
排紙部28は、定着部25を通過して画像が定着されたコピー用紙を装置本体20から排紙ローラ対(図示せず)で排紙してコピー用紙を積載・載置して収容する排紙トレイ28aから主に構成され、画像形成・定着後の用紙を載置してストックしておく部位(スペース)である。
【0033】
無線装置29は、本実施例では、無線LAN規格の802.11gに対応するインターフェイスカード(NIC)を備え、本規格の無線通信によりユーザの各情報機器や後述の消耗品供給装置100などと双方向通信可能となっている。勿論、他の規格、例えば、IEEE802.11a/IEEE802.11b/IEEE802.11nなどのいわゆる汎用の無線LAN規格で通信可能であればよく、その場合は、データの送受信を担うIEEE802.11a/IEEE802.11b規格のネットワークボード等を備え、これらを制御する通信制御プログラムを用い、無線LANを構築すればよい。また、他の無線規格としてBluetooth(R)規格を採用することもできる。なお、インターフェイスカードを拡張カードとして備えるのではなく、最初から標準装備して無線通信可能としてもよいことは云うまでもない。
【0034】
このように自走式画像形成装置1は、無線装置29により汎用無線LANを介してパソコン等の情報機器からプリント指令を受けて画像を形成したり、原稿を複写したりすることができる。したがって、ユーザが画像形成装置の設置場所まで移動しなくても、印刷物を獲得することができて、オフィスでの業務が効率化される。
【0035】
(画像形成動作)
次に、実施例1に係る自走式画像形成装置1の画像形成動作(作像プロセス)について図2を用いて説明する。
先ず、画像形成部23では、帯電装置23bにより感光体ドラム23aの外周表面が一様に帯電されて初期化される。そして、画像読取部21で読み取った画像情報やパソコンなど他の装置から制御手段(図示せず)に送られてきた画像情報を基に、一様に帯電された感光体ドラム23aの外周表面が、光学ユニット22により選択的に露光されて帯電電位のレベルが低下することで静電潜像が形成される。次に、現像装置23cにより現像バイアスが印加されることでトナーを静電潜像に転移させ、静電潜像がトナー像に現像される。
【0036】
一方、給紙部27では、制御手段(図示せず)により給紙カセット270から分離装置27aによりコピー用紙が一枚ずつ分離されて搬送路Rに送り出される。そして、搬送路Rに送り出されたコピー用紙は、搬送ローラ対R1により搬送されてレジストローラ対R2まで到達して一旦停止する。そして、感光体ドラム23a上のトナー像が担持されている部分の到達時間に合わせて、レジストローラ対R2の駆動が開始され、転写のタイミングが調整されてコピー用紙が転写ニップへ給紙される。
【0037】
転写部24の転写ニップでは、転写搬送ベルト24aを介してコピー用紙にトナー像と逆極性の転写バイアスが印加され、感光体ドラム23aの外周面上のトナー像が静電引力によりコピー用紙に転写される。次に、定着部25では、定着ニップにおいて、この未定着のトナー像を担持するコピー用紙に熱と圧力が加えられ、溶融したトナーが用紙に浸透圧着されて定着する。画像が定着されたコピー用紙は、排紙ローラ対により排紙トレイ28aに排紙されてスタックされる。また、転写後も感光体ドラム23a上に残留・付着する転写残トナーは、クリーニング装置23dのクリーニングブレードで掻き取ってクリーングされ、次の画像形成に備えられる。
【0038】
(自走手段)
次に、自走手段について図1及び図3を用いて説明する。
自走手段3は、自走手段の筐体30と、移動手段31と、この移動手段31を駆動する駆動機構32と、この駆動機構32を制御する駆動機構制御部33と、から主に構成されており、筐体30の上方に前記画像形成手段2を搭載して、無線装置29を介してユーザから指示された指定場所まで自走する機能を有している。
【0039】
本実施例では、図1に示すように、移動手段31が、前輪31a,後輪31bを有する2対の4輪駆動の走行用車輪31a,31bとなっており、これらの走行用車輪31a,31bを駆動する駆動機構32は、走行用車輪31a,31bを回転駆動する駆動モータ32aと、走行用車輪31a,31b(又は前輪31aのみ)のステアリング動作(操舵)を行うステアリング機構32bなどから構成されている。なお、移動手段は、4輪駆動のものに限られず、2輪駆動や車輪が3輪のものでもよく、勿論、もっと多くの多輪式のものやキャタピラ式のものであっても構わない。
【0040】
また、本実施例に係る自走手段3には、図3に示すように、自走手段3自体の移動状態を検知する移動状態検知手段としてタコメータ35が装着されており、このタコメータ35により駆動機構32の駆動モータ32aの時間当たりの回転数が計測され、電子情報として後述の画像形成手段2の画像形成モード制御手段5に送信される。そして、その画像形成モード制御手段5で自走手段の移動状態を判定して、複数の画像形成モードの中から最適な画像形成モードを選択し、選択された画像形成モードが、画像形成部23の作像ユニット230(図2も参照)により実行される。
なお、移動状態検知手段として、単純に電力源から駆動モータ32aへの通電量や通電時間を検知する構成とし、画像形成モード制御手段5へ送信するようにしても構わない。
【0041】
(画像形成モード制御手段)
次に、画像形成モード制御手段ついて図3を用いて説明する。
自走式画像形成装置1には、前記構成に加え、タコメータ35に接続され、このタコメータ35から送信される測定値を基に後述の複数の画像形成モードの中から最適なモードを選択する画像形成モード制御手段5と、この画像形成モード制御手段5と双方向通信可能な記憶手段であるメモリ6と、が更に備えられている。この画像形成モード制御手段5は、図示しないCPUやROMなどを有し、ROM内に記憶されているプログラムに従ってタコメータ35の測定値から画像形成モードを判定・選択する機能を有する制御手段であり、メモリ6は、RAMなどの高速アクセスが可能な半導体記憶装置であり、画像形成モード制御手段5の指令により、作像ユニット230で作像する画像情報などの作像プロセスの状態を記憶する機能を有している。
【0042】
(画像形成モード選択のフローチャート パターン1)
次に、この画像形成モード制御手段による画像形成モード選択のフローチャートを図4に示して説明する。本フローチャートでは、画像形成モードは、静止モード、駆動モード1、駆動モード2の3つのモードからなり、画像形成モード制御手段5により図4のフローチャートに従って最適な画像形成モードが選択されて作像ユニット230で作像プロセスが実行される。
【0043】
図4に示すように、先ず、ユーザから、例えば、パソコンなどの情報機器からプリント出力指示などの画像形成要求信号が画像形成手段2の無線装置29に受信され(step1)、そして、インターフェイスを介してその信号が電子情報として画像形成モード制御手段5に送信される(step2)。次に、移動状態検知手段であるタコメータ35から送信されてくる計測値が所定値A1以下か否かで分岐し(step3)、計測値が所定値A1以下であれば、画像形成モード制御手段5は、静止モードで画像形成を行うよう指令を出し、作像ユニット230において静止モードで画像形成が実行される(step4)。そして、タコメータ35から送信されてくる計測値が所定値A1を超えている場合は、後述の(step7)へ進む。
【0044】
ここで、静止モードとは、画像形成モード制御手段5が、自走式画像形成装置1(自走手段3)の静止時、又は超低速走行時などの移動の際に生じる振動や慣性力などの影響によって形成する画像に乱れが生じるおそれがほとんどないと判断した場合の画像形成モードであり、通常の速度で作像ユニット230を駆動させて画像を形成するモードのことである。本実施例では、この静止モードでは、PPM(page per minute)=10枚(PPMS)の速度で画像を形成する。
【0045】
図4に示すように、画像形成動作が終了するまで、(step3)〜(step5)のループを繰り返し、画像が完成した場合は、画像形成動作が終了する(step6)。しかし、途中で、例えば、ユーザからの指令で自走手段3の駆動機構32が駆動し始めた場合には、タコメータ35により、駆動モータ32aの駆動状態が検知され、その計測値が所定値A1を超えた場合は、(step3)から(step7)に進むこととなる。
【0046】
次に、(step7)では、タコメータ35から送信されてくる計測値が所定値A2以下か否かで分岐し、計測値が所定値A2以下であれば、画像形成モード制御手段5は、駆動モード1で画像形成を行うよう指令を出し、作像ユニット230において駆動モード1で画像形成が実行される(step8)。そして、タコメータ35から送信されてくる計測値が所定値A2を超えている場合は、画像形成モードは、駆動モード2が選択される(step11)。
【0047】
ここで、駆動モード1とは、自走式画像形成装置1の自走時の移動の際に生じる振動や慣性力などの影響を低減するため、通常の速度より遅い速度で画像を形成する場合の画像形成モードであり、本実施例では、通常速度の半分、即ち、PPM=5枚(PPMK)の速度で画像を形成する。
【0048】
また、駆動モード2とは、自走式画像形成装置1が所定の速度を超えて走行しているため、振動や慣性力などの影響が大きく画像形成を一旦中止すべきであると判断された場合の画像形成モードであり、画像形成モード制御手段5の指令により作像ユニット230での画像形成は即時に停止される。このとき、排紙は行わず、復帰する際に中断した状態から直ぐに再開できるように、画像形成中の画像データなどの出力情報は、メモリ6に保存される。
【0049】
図4のフローチャートに戻って説明すると、(step9)では、画像が完成したか否かで分岐し、画像が完成していなければ、(step3)に戻り、画像形成モード制御手段5により、前記のように、タコメータ35から送信されてくる計測値に応じて、適切な画像形成モード(静止モードor駆動モード1)が選択されて作像ユニット230で画像形成が実行され、画像が完成した場合には、画像形成が終了する(step10)。
【0050】
また、タコメータ35から送信されてくる計測値が所定値A2を超えており、(step11)に進んで、画像形成が一旦停止されている場合でも、(step3)に戻るため、タコメータ35から送信されてくる計測値がA2以下となった場合には、画像形成モード制御手段5により、前述のように、タコメータ35から送信されてくる計測値に応じて、適切な画像形成モード(静止モードor駆動モード1)が選択されて作像ユニット230で画像形成が実行され、(step6)か(step10)のいずれかで画像形成が終了する。
【0051】
なお、前述のA1は、本実施例では、0rpm(revolutions per minute:回転毎分(r/min))であるが、誤検知を考慮して0より大きい正の数である所定値としてもよい。また、A2は、自走時の振動等の影響が大きくなりすぎて画像形成が困難になる場合の閾値を実験等から求めて設定することが望ましい。
【0052】
以上のように、本実施例に係る自走式画像形成装置1によれば、自走手段3を備えてユーザが指定する任意の場所まで移動することができるので、その場所でプリント作業等を行うなどユーザの利便性を向上することができるだけでなく、移動状態検知手段(タコメータ35)により、駆動機構32の駆動状態、即ち、画像形成装置の移動状態を検知し、その移動状態に応じて画像形成モード制御手段5で適切な画像形成モードを選択することができるので、移動の際に生じる振動や、慣性力などの影響によって形成する画像に乱れが生じてしまうという問題を解消又は低減することができる。
また、画像データなどの出力情報をメモリ6に保存するので、静止モードや駆動モード1により、画像形成を再開する際に直ぐに、停止した状態から画像形成を再開して出力することができ、プリント時間の短縮を図ることができる。
【0053】
(画像形成モード選択のフローチャート パターン2)
次に、画像形成モード制御手段による画像形成モード選択までの別例に係るフローチャートを図5を用いて説明する。図5に示すフローチャートが図4のフローチャートと相違する点は、画像形成モードのうち前述の低速で作像ユニット230を駆動する駆動モード1が無く、タコメータ35から送信されてくる計測値がA1を超えた場合には、駆動モード2が選択され、作像ユニット230での画像形成動作を停止する点である(step12)。停止した後は、(step3)に戻り、タコメータ35から送信されてくる計測値がA1以下となった場合には、静止モードで画像形成が実行される。
【0054】
このように、図5に示すフローチャートに従って自走式画像形成装置1が動作する場合、前記実施例と比べて、移動時には、画像形成を行わないので、プリント指令を受けてから画像を出力し終わるまでの時間は余計に掛かることとなる場合もあるが、移動の際に生じる振動や、慣性力などの影響によって形成する画像に乱れが生じてしまうという問題を確実に解消することができる。
【0055】
(消耗品供給装置)
次に、実施例1に係る自走式画像形成装置1の付属装置である消耗品供給装置について、図6〜図9を用いて簡単に説明する。図中の符号100は、自走式画像形成装置1の付属装置であり、自走式画像形成装置1に消耗品を供給する消耗品供給装置である。この消耗品供給装置100は、自走式画像形成装置1に消耗品であるトナーを供給するトナー供給部110と、自走式画像形成装置1に消耗品であるコピー用紙(シート材)を供給する用紙供給部120と、自走式画像形成装置1の蓄電池(蓄電素子)に電力を供給する給電部130と、自走式画像形成装置1のホームポジションとなる停止ステージ140と、から主に構成されている。
【0056】
このトナー供給部110は、上下に開閉するスライドドア111を有し、新品のトナー容器T’を収容している部位であり、図7及び図8に示すように、自走式画像形成装置1が消耗品供給装置100に接続されている時において、このスライドドア111と対向する位置の画像形成手段2の筐体20には、スライドドア20aが設けられており(図9も参照)、これらのスライドドア111、スライドドア20aを開放した状態で画像形成手段2内の使用済みのトナー容器Tをトナー供給部110内に収容されている新品のトナー容器T’に容器ごと交換する機能を有している。
【0057】
用紙供給部120は、上下に開放するスライドドア121を有し、内部に、シート材である所定の大きさのコピー用紙Pを大量に収容しており、前述の給紙カセット270は、その一側面(接続時に消耗品供給装置100側となる面)が筐体20の外部に露出している。そして、用紙供給部120は、自走式画像形成装置1が、消耗品供給装置100に接続されている時に、スライドドア121を開放し、給紙カセット270を内部に引き込んで、収容するコピー用紙Pを消費された分だけ補充する仕組みとなっている。
【0058】
給電部130は、その外装面から突設する接続端子131(図6参照)を有し、この接続端子131を介して、自走式画像形成装置1の内部電源26と接続し、内部電源26の蓄電池を充電する機能を有している。このため、自走式画像形成装置1の筐体20にも、内部電源26と接続する接続端子26aが設けられており、この接続端子26aは、図9に示すように、接続端子131と嵌合する凹部内に設けられているため、ユーザが誤って接続端子26aに触れてしまうおそれが少なくなっている。
【0059】
停止ステージ140には、自走式画像形成装置1の走行用車輪31a,31bを案内する2本のレール141,142が設けられており、これらのレール141,142には、それぞれ、ストッパ143,144が設けられている。そして、レール141,142に沿って自走式画像形成装置1が案内され、ストッパ143,144により停止位置が定められるとともに、消耗品供給装置100への接続(ドッキング)が行われる。なお、ストッパ143,144には感圧センサ(図示せず)が設けられており、この感圧センサによって自走式画像形成装置1がストッパ143,144の位置に達した状態、即ち、自走式画像形成装置1がホームポジションにあることを検知することができるようになっている。
【実施例2】
【0060】
次に、実施例2に係る自走式画像形成装置について図10〜図12を用いて説明する。
図示する実施例2に係る自走式画像形成装置1’が実施例1に係る自走式画像形成装置1と相違する点は、主に、移動状態検知手段がタコメータ35ではなく加速度センサ36となっている点だけであるので、同一構成は同一符号を付して説明を省略する。
【0061】
図10に示すように、自走式画像形成装置1’では、加速度センサ36は、画像形成手段2の装置本体20内に設けられている。加速度センサ36は、加速度を感知するものなので、自走手段3内に設けなくてもよいため、このような配置となっているが、勿論、自走手段3内に設けられていても構わない。つまり、加速度を感知してその測定値を画像形成モード制御手段5に送信可能であればよい。
【0062】
この自走式画像形成装置1’の画像形成モード制御手段5による画像形成モード選択のフローチャートは、図11に示すように、図4で示したパターン1のフローチャートと略同様となっている。つまり、移動状態検知手段が加速度センサ36となっているので、その計測値が所定の加速度a1,a2以下か否かで分岐するようstep3,step7が、step3',step7'となっている点だけ相違する。このとき、加速度センサ36は、自走式画像形成装置1’の傾きの変化や、振動による加速度の変化も計測してしまうので、加速度a1は、実施例1と相違し、0ではなく、微振動等を考慮して所定の正の所定値としておくことが望ましい。
また、当然、図12に示すように、図5で示したパターン2のフローチャートと略同様なフローチャートに従って動作するようにしてもよい。
【0063】
以上のように、実施例2に係る自走式画像形成装置1’によれば、実施例1に係る自走式画像形成装置1と同様な作用効果を奏することができるだけでなく、移動状態検知手段である加速度センサ36で駆動機構32の駆動状態だけでなく、自走式画像形成装置1’に対する地震などの外力に起因する振動による移動や装置の傾斜などの慣性力の変化も検知することができるので、より確実に画像形成時の画像不良を解消することができる。
【実施例3】
【0064】
次に、実施例3に係る自走式画像形成装置について図13〜図16を用いて説明する。
図示する実施例3に係る自走式画像形成装置1”が実施例1に係る自走式画像形成装置1と相違する点は、主に、移動状態検知手段がタコメータ35ではなく光学センサ37となっている点だけであるので、同一構成は同一符号を付して説明を省略する。
【0065】
図14に示すように、光学センサ37は、投光素子37aと、受光素子37bと反射板37cとにより主に構成され、投光素子37aと受光素子37bは、樹脂等からなる部材により内部に空間ができるように素子ケース370として一体化されている。
本実施例に係る光学センサ37では、投光素子37aにはLEDが使用され、受光素子37bには、エリアセンサが用いられている。
【0066】
また、素子ケース370は、自走手段3の筐体30の底部に固着されており(図13も参照)、即ち、投光素子37aと受光素子37bは、自走式画像形成装置1”の自走手段と同期して一緒に移動するが、反射板37cは、慣性力により少し遅れて移動し、且つ、常に水平になるよう構成されている。このため、受光素子37cが受光する光の位置のズレや、その位置の振動により、自走式画像形成装置1”の変位や傾斜、振動等を検出することができるようになっている。
【0067】
この自走式画像形成装置1”の画像形成モード制御手段5は、図15、16に示すように、図4、5で示したパターン1及びパターン2のフローチャートと略同様なフローチャートに従って動作する。
【0068】
以上のように、実施例に係る自走式画像形成装置の画像形成手段としてモノクロ用の複写機を例に挙げて説明したが、必ずしもこのようなものに限られず、例えば、カラー用の複合機などにも本発明を適用することができる。特に、無線手段を介してユーザの情報機器と情報交換するものを示したが、情報を伝達する情報伝達手段として天井や床に配線された有線の専用回線で接続された場合でも、自走式画像形成装置の移動範囲を決められた所定範囲とすれば適用可能である。要するに、画像形成手段と自走手段を有し、自走可能な画像形成装置には適用することができる。
【0069】
そして、実施例の説明における光学読取装置、自動原稿搬送装置、光学ユニット、画像形成部、転写部、定着部、給紙部、排紙部等などは、あくまでも一例を示したものであって、他の公知の装置・手段などの構成を採用することができる。その場合でも、前記課題に対して同様の作用効果を奏することは明らかである。また、自走手段は、4足歩行、2足歩行のロボット型の自走手段を採用することも可能である。この場合は、移動状態検知手段としては、ロボットの駆動機構の駆動源となるアクチュエータなどの駆動状態を検知するようにすればよい。
【0070】
また、画像形成モードとして、3つのモードを例示して説明したが、これらのモードに限られずもっと多くのモードを設定することもできる。更に、駆動モードを固定するのではなく、移動状態検知手段が自走手段の駆動信号を検知し、その駆動信号に従って、画像形成手段の作像プロセスをフィードフォワード制御することで画像形成モードを変化させて画像形成不良を防止するようにしても構わない。画像形成手段の作像プロセスをサーボ系の駆動源で動作させ、2足歩行のロボット型の自走手段を採用し、その位置、姿勢などを制御量としてフィードバック制御を用いて画像形成モードを変化させて画像形成不良を防止することも可能である。
【符号の説明】
【0071】
1,1’,1” 自走式画像形成装置
2 画像形成手段
3 自走手段
35 タコメータ(移動状態検知手段)
36 加速度センサ(移動状態検知手段)
37 光学センサ(移動状態検知手段)
5 画像形成モード制御手段
6 メモリ(記憶手段)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0072】
【特許文献1】特開2003−110779号公報
【特許文献2】特開2001−125646号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成手段と自走手段を有し、自走可能な自走式画像形成装置において、前記画像形成装置の移動状態を検知する移動状態検知手段と、該移動状態検知手段の計測値に基づいて、前記画像形成手段を制御する複数の画像形成モードの中から最適な画像形成モードを選択する画像形成モード制御手段が設けられていることを特徴とする自走式画像形成装置。
【請求項2】
前記複数の画像形成モードは、所定の画像形成速度で画像を形成するモードと、画像形成を停止するモードを有すること特徴とする請求項1に記載の自走式画像形成装置。
【請求項3】
前記移動状態検知手段の計測値が所定値以下となった場合には、画像形成を停止するモードから所定の画像形成速度で画像を形成するモードへ復帰することを特徴とする請求項2に記載の自走式画像形成装置。
【請求項4】
前記複数の画像形成モードは、更に、前記所定の画像形成速度より低速で画像を形成するモードを有することを特徴とする請求項2又は3に記載の自走式画像形成装置。
【請求項5】
前記画像形成手段は、画像形成を停止するモードに入る前の作像プロセスの状態を記憶する記憶手段を有し、画像を形成するモードに復帰する際に、前記記憶手段に記憶された情報を基に画像を形成することを特徴とする請求項3又は4に記載の自走式画像形成装置。
【請求項6】
前記移動状態検知手段は、タコメータであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の自走式画像形成装置。
【請求項7】
前記移動状態検知手段は、加速度センサであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の自走式画像形成装置。
【請求項8】
前記移動状態検知手段は、光学センサであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の自走式画像形成装置。
【請求項1】
画像形成手段と自走手段を有し、自走可能な自走式画像形成装置において、前記画像形成装置の移動状態を検知する移動状態検知手段と、該移動状態検知手段の計測値に基づいて、前記画像形成手段を制御する複数の画像形成モードの中から最適な画像形成モードを選択する画像形成モード制御手段が設けられていることを特徴とする自走式画像形成装置。
【請求項2】
前記複数の画像形成モードは、所定の画像形成速度で画像を形成するモードと、画像形成を停止するモードを有すること特徴とする請求項1に記載の自走式画像形成装置。
【請求項3】
前記移動状態検知手段の計測値が所定値以下となった場合には、画像形成を停止するモードから所定の画像形成速度で画像を形成するモードへ復帰することを特徴とする請求項2に記載の自走式画像形成装置。
【請求項4】
前記複数の画像形成モードは、更に、前記所定の画像形成速度より低速で画像を形成するモードを有することを特徴とする請求項2又は3に記載の自走式画像形成装置。
【請求項5】
前記画像形成手段は、画像形成を停止するモードに入る前の作像プロセスの状態を記憶する記憶手段を有し、画像を形成するモードに復帰する際に、前記記憶手段に記憶された情報を基に画像を形成することを特徴とする請求項3又は4に記載の自走式画像形成装置。
【請求項6】
前記移動状態検知手段は、タコメータであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の自走式画像形成装置。
【請求項7】
前記移動状態検知手段は、加速度センサであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の自走式画像形成装置。
【請求項8】
前記移動状態検知手段は、光学センサであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の自走式画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−20316(P2011−20316A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−166214(P2009−166214)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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